JP2559125Y2 - タイミングチェーンケース構造 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、シリンダヘッドにタイ
ミングチェーンケースを一体構成したエンジンにおける
タイミングチェーンケース構造に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】エンジンのクランクシャフトとカムシャ
フトを連動連結するタイミングチェーンにはその弛み及
び回動時の振れを防止するためにチェーンガイドや張力
調整装置が適宜配設されており、かつ例えば実開昭６３
−１１５５６０号公報に開示されているように、通例そ
れらを覆うタイミングチェーンケースがシリンダブロッ
ク及びシリンダヘッドに取付けられている。このタイミ
ングチェーンケースは、クランクシャフトとカムシャフ
ト間にタイミングチェーンを張設した後取付けていた。

【０００３】これに対して部品点数の削減とコスト低下
のために、例えば実開昭６３−２０１２５９号公報に開
示されているように、シリンダヘッドにタイミングチェ
ーンケースを一体構成したものも知られており、その場
合にはクランクシャフトに取付けたスプロケットに巻き
掛けたタイミングチェーンを両側の固定チェーンガイド
と可動チェーンガイドに沿わせて上方に案内するととも
に、このタイミングチェーンの上部をカムシャフトに取
付けるべきスプロケットに巻き掛け、両チェーンガイド
の上端間でこのスプロケットとタイミングチェーンの上
部を保持させておき、その後シリンダヘッドをシリンダ
ブロック上に設置する際にそのタイミングチェーンケー
ス内にこれらタイミングチェーンを巻き掛けたスプロケ
ット及び両チェーンガイドの上端部を挿入し、次にカム
シャフトにスプロケットを取付けるという手順で組み立
てている。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】ところで、可動チェー
ンガイドは張力調整装置を作用させるまでは揺動自在で
あるため、固定チェーンガイドと可動チェーンガイドの
上端間の間隔が広がった状態となり、上記組立時にシリ
ンダヘッドのタイミングチェーンケース内に挿入するの
が簡単でないという問題がある。そのため、両チェーン
ガイドの上端間の間隔を狭めて治具等を用いて固定した
状態でシリンダヘッドを設置し、その後治具を取り除く
というような作業を行っていたが、面倒な作業が余分に
必要となって能率的でないという問題があった。

【０００５】本考案は、このような従来の問題点に鑑
み、タイミングチェーンケースを一体構成したシリンダ
ヘッドを治具を用いずに簡単に設置できるタイミングチ
ェーンケース構造を提供することを目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本考案は、シリンダヘッ
ドにタイミングチェーンケースを一体構成したエンジン
であって、クランクシャフトに取付けたスプロケットに
巻き掛けたタイミングチェーンを両側の固定チェーンガ
イドと可動チェーンガイドに沿わせて上方に案内すると
ともに、このタイミングチェーンの上部をカムシャフト
に取付けるべきスプロケットに巻き掛け、両チェーンガ
イドの上端間でこのスプロケットとタイミングチェーン
の上部を保持させておき、その後シリンダヘッドをシリ
ンダブロック上に設置する際にそのタイミングチェーン
ケース内にこれらタイミングチェーンを巻き掛けたスプ
ロケット及び両チェーンガイドの上端部を挿入し、次に
カムシャフトにスプロケットを取付けるという手順で組
立てられるエンジンにおいて、シリンダブロックのタイ
ミングチェーンケースから上方に突出する固定チェーン
ガイドの上端と下端部を揺動可能に枢支された可動チェ
ーンガイドの上端との間の前記組立て時における幅が、
シリンダヘッドのタイミングチェーンケースの最小幅よ
りも小さくなるように、可動チェーンガイドに係合して
その揺動範囲を規制するストッパをシリンダブロックの
タイミングチェーンケースに設けたことを特徴とする。

【０００７】

【作用】本考案によれば、シリンダヘッドにタイミング
チェーンケースを一体構成したエンジンにおいても、可
動チェーンガイドがストッパに係合して、固定チェーン
ガイドの上端と下端部を揺動可能に枢支された可動チェ
ーンガイドの上端との間の組立て時における幅が、シリ
ンダヘッドのタイミングチェーンケースの最小幅よりも
小さく設定されているため、シリンダヘッドを上記両チ
ェーンガイドに干渉することなくスムーズにシリンダブ
ロックに組付けることができ、治具などを用いて可動チ
ェーンガイドを固定する作業なしでシリンダヘッドをシ
リンダブロックに設置することができる。

【０００８】

【実施例】以下、本考案の一実施例を図１、図２を参照
して説明する。

【０００９】１はエンジン、２はそのシリンダブロック
であり、その上にシリンダヘッド３が設置されている。
シリンダブロック２の下部にクランクシャフト４が配設
され、シリンダヘッド３の上端にカムシャフト５が配設
されている。クランクシャフト４の一端部にカム駆動ス
プロケット６が、カムシャフト５の一端部にカムシャフ
トスプロケット７が取付けられ、これらスプロケット
６、７間にタイミングチェーン８が巻き掛けられてい
る。これらスプロケット６、７及びタイミングチェーン
８は、シリンダブロック２のタイミングチェーンケース
９及びシリンダヘッド３に一体構成されたタイミングチ
ェーンケース１０内に収容されている。

【００１０】タイミングチェーン８の回動経路の一側に
は、固定チェーンガイド１１が配設され、他側には可動
チェーンガイド１２が配設されている。固定チェーンガ
イド１１は、カム駆動スプロケット６の近傍からカムシ
ャフトスプロケット７の近傍まで延びる部材にて構成さ
れ、その下端近傍と中間部がシリンダブロック２に取付
けボルト１３にて固定されている。可動チェーンガイド
１２は、カム駆動スプロケット６の近傍からカムシャフ
トスプロケット７の近傍まで延びる内側に湾曲した部材
にて構成され、その下端部が枢支軸１４にて揺動可能に
枢支されている。また、シリンダヘッド３に配設された
張力調整装置１５にて可動チェーンガイド１２の上端部
近傍に設けられた受圧部材１６を内側に向けて押圧して
タイミングチェーン８に所定の張力を付与するように構
成されている。張力調整装置１５はシリンダ１７と先端
が受圧部材１６に当接するピストン１８にて構成されて
いる。

【００１１】さらに、シリンダブロック２のタイミング
チェーンケース９から上方に突出している固定チェーン
ガイド１１と可動チェーンガイド１２の上端間の幅Ａが
シリンダヘッド３のタイミングチェーンケース１０の最
小幅Ｂよりも小さくなるように、可動チェーンガイド１
２に係合してその揺動範囲を規制するストッパ１９がシ
リンダブロック２のタイミングチェーンケース９に設け
られている。

【００１２】尚、クランクシャフト４の一側部には近接
してオイルポンプ２０が配設され、その駆動軸に取付け
られたオイルポンプスプロケット２１とクランクシャフ
ト４に取付けられたポンプ駆動スプロケット２２の間に
ポンプ駆動チェーン２３が巻き掛けられ、固定チェーン
ガイド１１にポンプ駆動チェーン２３の上部の回動経路
を規制するガイド部２４が設けられている。

【００１３】以上の構成によると、エンジン１の組立時
には、シリンダブロック２のクランクシャフト４にカム
駆動スプロケット６を取付け、固定チェーンガイド１１
や可動チェーンガイド１２を取付けるとともにカム駆動
スプロケット６にタイミングチェーン８を巻き掛けてこ
のタイミングチェーン８を両側の固定チェーンガイド１
１と可動チェーンガイド１２に沿わせて上方に案内した
後、タイミングチェーンケース９を取付け、さらにこの
タイミングチェーン８の上部にカムシャフトスプロケッ
ト７を巻き掛けて配置し、両チェーンガイド１１、１２
の上端間でこのカムシャフトスプロケット７とタイミン
グチェーン８の上部を保持させておき、その状態でタイ
ミングチェーンケース１０を一体構成されたシリンダヘ
ッド３をシリンダブロック２上に設置し、次いでシリン
ダヘッド３上にカムシャフト５を配設する際にその一端
部にカムシャフトスプロケット７を取付ける。かくし
て、クランクシャフト４とカムシャフト５がタイミング
チェーン８を介して連動連結される。その後、可動チェ
ーンガイド１２の上端を、図２に実線で示す状態から仮
想線で示す状態に一旦逆方向に押し戻すことにより、張
力調整装置１５のロックが解除され、張力調整装置１５
が作動状態になって可動チェーンガイド１２が図２に破
線で示すように揺動してタイミングチェーン８に所定の
張力を付与され、クランクシャフト４とカムシャフト５
の連動機構の組立が完了する。

【００１４】この組立に際して、上記シリンダブロック
２上にシリンダヘッド３を設置する時に、シリンダヘッ
ド３のタイミングチェーンケース１０内にタイミングチ
ェーン８を巻き掛けたカムシャフトスプロケット８及び
両チェーンガイド１、１２の上端部が挿入されるが、シ
リンダブロック２のタイミングチェーンケース９に設け
たストッパ１９に可動チェーンガイド１２が係合して、
固定チェーンガイド１１と可動チェーンガイド１２の上
端間の幅Ａがシリンダヘッド３のタイミングチェーンケ
ース１０の最小幅Ｂよりも小さく設定されているため、
治具などを用いて可動チェーンガイド１２を固定する作
業なしで簡単かつ能率的にシリンダヘッド３を設置する
ことができる。

【００１５】

【考案の効果】本考案のタイミングチェーンケース構造
によれば、シリンダヘッドにタイミングチェーンケース
を一体構成したエンジンにおいても、可動チェーンガイ
ドがストッパに係合して、固定チェーンガイドの上端と
下端部を揺動可能に枢支された可動チェーンガイドの上
端との間の組立て時における幅が、シリンダヘッドのタ
イミングチェーンケースの最小幅よりも小さく設定され
ているため、シリンダヘッドを上記両チェーンガイドに
干渉することなくスムーズにシリンダブロックに組付け
ることができ、治具などを用いて可動チェーンガイドを
固定する作業なしでシリンダヘッドをシリンダブロック
に設置することができる結果、エンジンの組立作業の能
率化を図ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例のエンジンの部分断面正面図
である。

【図２】同実施例の要部の拡大断面図である。

【符号の説明】

１ エンジン ２ シリンダブロック ３ シリンダヘッド ８ タイミングチェーン ９ タイミングチェーンケース １０ タイミングチェーンケース １１ 固定チェーンガイド １２ 可動チェーンガイド １９ ストッパ

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 シリンダヘッドにタイミングチェーンケ
   ースを一体構成したエンジンであって、クランクシャフ
   トに取付けたスプロケットに巻き掛けたタイミングチェ
   ーンを両側の固定チェーンガイドと可動チェーンガイド
   に沿わせて上方に案内するとともに、このタイミングチ
   ェーンの上部をカムシャフトに取付けるべきスプロケッ
   トに巻き掛け、両チェーンガイドの上端間でこのスプロ
   ケットとタイミングチェーンの上部を保持させておき、
   その後シリンダヘッドをシリンダブロック上に設置する
   際にそのタイミングチェーンケース内にこれらタイミン
   グチェーンを巻き掛けたスプロケット及び両チェーンガ
   イドの上端部を挿入し、次にカムシャフトにスプロケッ
   トを取付けるという手順で組立てられるエンジンにおい
   て、 シリンダブロックのタイミングチェーンケースから上方
   に突出する固定チェーンガイドの上端と下端部を揺動可
   能に枢支された可動チェーンガイドの上端との間の前記
   組立て時における幅が、シリンダヘッドのタイミングチ
   ェーンケースの最小幅よりも小さくなるように、可動チ
   ェーンガイドに係合してその揺動範囲を規制するストッ
   パをシリンダブロックのタイミングチェーンケースに設
   けたことを特徴とするタイミングチェーンケース構造。