JP4149688B2 - サイレントチェーン伝動機構 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、歯数の相異なるスプロケット間で動力を伝達するサイレントチェーン伝動機構に関するものであって、特に、4サイクルエンジンのクランク軸からカム軸やバランサ軸を駆動するようなサイレントチェーン伝動機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図7に示すような4サイクルエンジンのクランク軸から吸気バルブ、排気バルブ、バランサなどを駆動する場合に用いられるサイレントチェーン伝動機構は、バルブ駆動用クランク軸スプロケットA11aと、吸気バルブ用カム軸スプロケットA12aと、排気バルブ用カム軸スプロケットA12bと、これらの間に掛け回されるバルブ開閉タイミング用サイレントチェーン20aと、このバルブ開閉タイミング用サイレントチェーン20aに張力を与えるテンショナ30aとで構成されるバルブ開閉タイミング伝動機構M1を備えているとともに、前記バルブ駆動用クランク軸スプロケットA11aと同心状に軸支されたバランサ駆動用クランク軸スプロケットA11bと、バランサ軸スプロケットA13と、これらの間に掛け回されるバランサ駆動用サイレントチェーン20bと、このバランサ駆動用サイレントチェーン20bに張力を与えるテンショナ30bとで構成されるバランサ伝動機構M2とを備えている。
【0003】
そして、前記バルブ開閉タイミング用サイレントチェーン20aとバランサ駆動用サイレントチェーン20bは、打ち抜き加工された一対の噛み合い歯を有する複数のリンクプレート21を表裏ランダムにチェーン幅方向に並列集合したリンク列22が連結ピン23で相互に指組み状に多数連結されている。
【0004】
他方、このような吸気バルブと排気バルブは、バルブ駆動用クランク軸スプロケットA11aが2回転すると、それぞれ1回作動するようになっている。そこで、クランク軸側の回転速度をカム軸側で1/2に減速する必要があり、吸気バルブ用カム軸スプロケットA12aと排気バルブ用カム軸スプロケットA12bの歯数は、バルブ駆動用クランク軸スプロケットA11aの歯数の2倍となるように設定されている。
【0005】
また、バランサ軸は、クランク軸の高次不釣り合いを相殺するため、バランサ駆動用クランク軸が1回転すると2回転するようになっている。そこで、バランサ駆動用クランク軸側の回転速度をバランサ軸側で2倍に増速する必要があり、バランサ駆動用クランク軸スプロケットA11bの歯数は、バランサ軸スプロケットA13の歯数の2倍となるように設定されている。
【0006】
そして、バルブ駆動用クランク軸スプロケットA11a、カム軸スプロケットA12、バランサ軸スプロケットA13には、同一の歯切り条件からなるインボリュート歯、すなわち、前述したようなサイレントチェーンのチェーン・ピッチPcと同一ピッチのホブ・ピッチPhを有するホブ・カッターHCで歯切りされたインボリュート歯が形成されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、このような従来のサイレントチェーン伝動機構に用いているバルブ開閉タイミング用サイレントチェーン20aとバランサ駆動用サイレントチェーン20bは、図8の(a)に示すように、リンクプレート21を精密に打ち抜き加工しても打ち抜き加工時の打ち抜き振動などによってピン孔21aの穿孔位置に僅かなズレ(A>B,C<D)を生じ、図8の(c)に示すように、必ずしもリンクプレート21の各部位が左右対象(A=B,C=D)とはならないため、チェーン組み立て時にこのような多数のリンクプレート21を表裏ランダムにチェーン幅方向に並列集合してリンク列22を形成すると、図8の(b)に示すように、チェーン幅方向に並列集合した全てのリンクプレート21の外形(w,h)を投影したリンク列22の外形(W,H)はリンク列22を構成する個々のリンクプレート21の外形(w,h)より僅かに大きくなる傾向がある。
【0008】
そうすると、これらのサイレントチェーンのリンクプレート21に打ち抜き加工された一対のピン孔21a間で設定されるチェーン・ピッチPcと同一ピッチのホブ・ピッチPhを有するホブ・カッターHCで歯切りされた最適な噛み合いを達成する筈のスプロケットであっても、図8の(b)に示すように、リンク列22の外形(W,H)が個々のリンクプレート21の外形(w,h)より大きくなっている分(δw,δh)だけ、両者の噛み合いが窮屈になって噛み合い不良を生じ、騒音と振動を発生させるという問題があり、このような騒音と振動をサイレントチェーン側の形状・構造のみで容易に解決することはできないという厄介な問題があった。
【0009】
また、このような従来のサイレントチェーン伝動機構は、歯数の相異なるバルブ駆動用クランク軸スプロケットA11a、カム軸スプロケットA12、バランサ軸スプロケットA13のインボリュート歯を全て同一のホブ・ピッチPhを有するホブ・カッターHCで歯切り加工しているため、これらのスプロケットにおいて最適な噛み合いを一律に達成することは至難の技であり、いずれかのスプロケットにおいて生じる噛み合い不良を回避することができず、この噛み合い不良が前述したような騒音と振動をより増大させるという問題があった。
【0010】
特に、小歯数のバルブ駆動用クランク軸スプロケットA11aよりも巻き付くリンクプレート21のリンク数が多い大歯数のカム軸スプロケットA12や、バランサ軸スプロケットA13より巻き付き角度が大きいバランサ駆動用クランク軸スプロケットA11bでは、前述したような窮屈な噛み合いがより多く累積してサイレントチェーンが本来のチェーンピッチラインLよりも外側に外れて走行することによって、チェーンピッチラインLに関するレイアウト設計上の許容範囲を逸脱して騒音特性、振動特性、摩耗特性、走行安定性などで様々な悪影響を生じるという問題があった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、チェーン組み立て時に複数のリンクプレートを表裏ランダムにチェーン幅方向に並列集合したリンク列が連結ピンによって相互に指組み状に連結され、前記チェーン幅方向に並列集合した全てのリンクプレートの外形(w,h)を投影したリンク列の外形(W,H)が前記リンク列を構成する個々のリンクプレートの外形(w,h)より僅かに大きくなっているサイレントチェーンであっても、レイアウト設計されたチェーンピッチライン上を外れることなく正確に走行することができ、優れた騒音特性、振動特性、摩耗特性、走行安定性を発揮することができるサイレントチェーン伝動機構を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明のサイレントチェーン伝動機構は、複数のリンクプレートを表裏ランダムにチェーン幅方向に並列集合したリンク列が連結ピンによって相互に指組み状に連結され、前記チェーン幅方向に並列集合した全てのリンクプレートの外形(w,h)を投影したリンク列の外形(W,H)が前記リンク列を構成する個々のリンクプレートの外形(w,h)より僅かに大きくなっているサイレントチェーンと、前記サイレントチェーンのチェーン・ピッチよりも小さいホブ・ピッチを有するホブ・カッターで歯切りされたスプロケットとを具備している。
【0013】
そして、前記サイレントチェーンのチェーン・ピッチに対するホブ・ピッチのピッチ比が、0.96以上1.00未満の範囲内であることによって、前記課題を解決したものである。
【0014】
ここで、本発明におけるサイレントチェーンの「チェーン・ピッチ」とは、リンクプレートに打ち抜き加工された一対のピン孔間の中心間隔、若しくは、リンクプレートに挿通された一対の連結ピン間の中心間隔を意味しており、ホブ・カッターの「ホブ・ピッチ」とは、ホブ・カッターの歯すじに直角な断面に形成されるラック歯間の相互間隔を意味している。
【0015】
また、本発明のサイレントチェーン伝動機構では、サイレントチェーンのチェーン・ピッチに対するホブ・ピッチのピッチ比が、0.96以上1.00未満の範囲内であると、低騒音かつ低振動の最適な噛み合いを実現することができるが、0.96未満では歯飛び不良を生じるとともに騒音と振動を低減することができず、1.00以上では噛み合いが窮屈となって噛み合い不良を生じやすく、騒音と振動を低減することができない。
【0016】
【作用】
本発明のサイレントチェーン伝動機構は、歯数の相異なるスプロケット間で動力を伝達するものであって、その最も特徴とする作用は以下のとおりである。
【0017】
まず、本請求項1に係る発明のサイレントチェーン伝動機構を構成する、サイレントチェーンのチェーン・ピッチよりも小さなピッチのホブ・ピッチを有するホブ・カッターで歯切りされたスプロケットは、サイレントチェーンのチェーン・ピッチと同一ピッチで歯切りされたスプロケットに比較すると、同一のスプロケット歯数であっても個々のスプロケット歯が僅かに薄く痩せたインボリュート歯形となり、スプロケット径も僅かに小さくなっている。
【0018】
したがって、複数のリンクプレートを表裏ランダムにチェーン幅方向に並列集合したリンク列が連結ピンによって相互に指組み状に連結され、前記チェーン幅方向に並列集合した全てのリンクプレートの外形(w,h)を投影したリンク列の外形(W,H)が前記リンク列を構成する個々のリンクプレートの外形(w,h)より僅かに大きくなっているサイレントチェーンを用いても、前述したような薄く痩せたスプロケット歯の相互間隙において、リンク列の外形が個々のリンクプレートの外形より大きくなっている分を十分に収容解消することができるので、サイレントチェーンがレイアウト設計されたチェーンピッチライン上を正確に走行してスプロケットと確実に噛み合う。
【0019】
特に、小歯数のスプロケットよりも巻き付くリンクプレートのリンク数が多い大歯数のスプロケットや、巻き付き角度が180度以上となるスプロケットであっても、前述したような薄く痩せたスプロケット歯の相互間隙において、順次、リンク列の外形が個々のリンクプレートの外形より大きくなっている分を収容解消することができるので、従来のような窮屈な噛み合いが過度に累積してサイレントチェーンが本来のチェーンピッチラインよりも外側に外れて走行するような不具合を回避する。
【0020】
そして、前記サイレントチェーンのチェーン・ピッチに対するホブ・ピッチのピッチ比が、0.96以上1.00未満の範囲内であることによって、サイレントチェーンとスプロケットとの噛み合い時に最適な噛み合い高さを確保することができるため、スプロケット歯の相互間隙において相互に連結されるリンク列が連結ピンを介して円滑に回動屈曲して、噛み合い不良や歯飛びを生じることがない。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のサイレントチェーン伝動機構の好ましい実施の形態である実施例を図面に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明に用いたスプロケットの歯切り加工を従来技術と比較したものであって、(a)は従来の歯切り加工を示し、(b)は本発明の歯切り加工を示した図であり、図2は、本発明の噛み合い状態を従来技術と比較したものであって、(a)は従来の噛み合い状態を示し、(b)は本発明の噛み合い状態を示した図である。そして、図3は、ホブ・ピッチを変化させた場合の騒音レベルを示した図であり、図4は、サイレントチェーンのチェーン・ピッチに対するホブ・ピッチのピッチ比が、1.00以上である場合の噛み合い状態を示した図であり、図5は、サイレントチェーンのチェーン・ピッチに対するホブ・ピッチのピッチ比が、0.96以上1.00未満の最適範囲内である場合の噛み合い状態を示した図であり、図6は、サイレントチェーンのチェーン・ピッチに対するホブ・ピッチのピッチ比が、0.96未満である場合の噛み合い状態を示した図であり、図7は、サイレントチェーン伝動機構の全体概要図であり、図8は、リンク列の外形と個々のリンクプレートの外形とを比較した図である。
【0022】
まず、本実施例のサイレントチェーン伝動機構は、図7に示された従来の4サイクルエンジンに設置したサイレントチェーン伝動機構と基本的には同様なものであって、自動車エンジンの吸気バルブと排気バルブをクランク軸の2回転につき1回転作動させるためにバルブ駆動タイミング用サイレントチェーン20aによって動力伝達されるバルブ駆動用クランク軸スプロケット11a、吸気バルブ・カム軸スプロケット12a、排気バルブ・カム軸スプロケット12bを備えて減速伝動するバルブ開閉タイミング伝動機構M1と、バランサをクランク軸の1回転につき2回転させるためにバランサ駆動用サイレントチェーン20bによって動力伝達されるバランサ駆動用クランク軸スプロケット11b、バランサ軸スプロケット13a、13bを備えて増速伝動するバランサ伝動機構M2とを具備している。
【0023】
そこで、本実施例のサイレントチェーン伝動機構で用いたバルブ駆動タイミング用サイレントチェーン20aとバランサ駆動用サイレントチェーン20bについて以下のとおり詳説する。
前記バルブ開閉タイミング用サイレントチェーン20aとバランサ駆動用サイレントチェーン20bは、ブランク鋼板から打ち抜き加工された一対の噛み合い歯を有する複数のリンクプレート21を表裏ランダムにチェーン幅方向に並列集合したリンク列22が連結ピン23で相互に指組み状に多数連結されて編成されており、リンク列22の連結個数以外は全て同一の形状・構造となっている。
【0024】
ここで、前記バルブ開閉タイミング用サイレントチェーン20aとバランサ駆動用サイレントチェーン20bに編成される個々のリンクプレート21は、図8の(a)に示すように、精密な打ち抜き加工しても打ち抜き加工時の打ち抜き振動などによってピン孔21aの穿孔位置に僅かなズレ(A>B,C<D)を生じ、図8の(c)に示すように、必ずしもリンクプレート21の各部位が左右対象(A=B,C=D)とはなっておらず、個々のリンクプレート21においてバラツキを生じている。
したがって、チェーン組み立て時に、このような多数のリンクプレート21を表裏ランダムにチェーン幅方向に並列集合してリンク列22を形成すると、それぞれのリンク列22におけるチェーン・ピッチPcは、所定ピッチに統制されているが、図8の(b)に示すように、チェーン幅方向に並列集合した全てのリンクプレート21の外形(w,h)を投影したリンク列22の外形(W,H)はリンク列22を構成する個々のリンクプレート21の外形(w,h)より僅かに大きくなっている。
【0025】
次に、本実施例のサイレントチェーン伝動機構で用いたスプロケットについて以下のとおり詳説する。
まず、図1に示すように、クランク軸スプロケット11a、カム軸スプロケット12、バランサ軸スプロケット13は、全て同一の歯切り条件、すなわち、サイレントチェーンのチェーン・ピッチPcよりも小さいピッチのホブ・ピッチPhを有するホブ・カッターHCでインボリュート歯が歯切りされており、サイレントチェーンのチェーン・ピッチPcと同一ピッチで歯切りされたスプロケットに比較すると、同一のスプロケット歯数であっても個々のスプロケット歯が僅かに薄く痩せたインボリュート歯形となり、スプロケット径も僅かに小さくなっている。
なお、図1の符号δh´は、従来の歯切り加工と本発明の歯切り加工とを比較した場合におけるホブ・カッターHCの追い込み量の差であって、前述した図8で示すようなδhを吸収解消し得る程度の差である。また、図1の符号Laは、噛み合いピッチラインである。
【0026】
このように構成された本実施例のサイレントチェーン伝動機構の基本的な作動状態を図2に基づいて説明すると、以下のとおりである。
複数のリンクプレート21を表裏ランダムにチェーン幅方向に並列集合したリンク列22が連結ピン23によって相互に指組み状に連結され、前記チェーン幅方向に並列集合した全てのリンクプレートの外形(w,h)を投影したリンク列の外形(W,H)が前記リンク列を構成する個々のリンクプレートの外形(w,h)より僅かに大きくなっているバルブ開閉タイミング用サイレントチェーン20aとバランサ駆動用サイレントチェーン20bを用いても、前述した歯切り条件で製造された薄く痩せたスプロケット歯の相互間隙において、リンク列22の外形(W,H)が個々のリンクプレート21の外形(w,h)より大きくなっている分(δw,δh)を十分に収容することができるので、バルブ開閉タイミング用サイレントチェーン20aとバランサ駆動用サイレントチェーン20bがエンジンルーム内でレイアウト設計されたチェーンピッチラインLc上を正確に走行してクランク軸スプロケット11a、カム軸スプロケット12、バランサ軸スプロケット13などと確実に噛み合う。
【0027】
特に、小歯数のクランク軸スプロケット11aより巻き付くリンクプレート21のリンク数が多い大歯数のカム軸スプロケット12や、巻き付き角度が大きいバランサ駆動用クランク軸スプロケット11bであっても、前述した薄く痩せたスプロケット歯の相互間隙において、順次、リンク列22の外形(W,H)が個々のリンクプレート21の外形(w,h)より大きくなっている分(δw,δh)を収容解消することができるので、従来のような窮屈な噛み合いがより多く累積してバルブ開閉タイミング用サイレントチェーン20aとバランサ駆動用サイレントチェーン20bが本来のチェーンピッチラインLcよりも外側に外れて走行することがない。
【0028】
そこで、図3ないし図6に基づいて本実施例のサイレントチェーン伝動機構における騒音レベルと噛み合い状態を説明すると、以下のとおりである。
図4に示すように、バルブ開閉タイミング用サイレントチェーン20aとバランサ駆動用サイレントチェーン20bのチェーン・ピッチPcに対するホブ・ピッチPhのピッチ比(Ph/Pc)が、1.00以上であるサイレントチェーン伝動機構では、スプロケットとの噛み合い時にこれらのサイレントチェーンの噛み合いが窮屈となってレイアウト設計されたチェーンピッチラインLc上を外側に外れて走行するため、最適な噛み合い高さを確保することができずに、噛み合い不良を生じやすく、騒音と振動を低減することができない。
図5に示すように、バルブ開閉タイミング用サイレントチェーン20aとバランサ駆動用サイレントチェーン20bのチェーン・ピッチPcに対するホブ・ピッチPhのピッチ比(Ph/Pc)が、0.96以上1.00未満の範囲内にある本実施例のサイレントチェーン伝動機構では、これらのサイレントチェーンとスプロケットとの噛み合い時に最適な噛み合い高さを確保することができるため、スプロケット歯の相互間隙において相互に連結されるリンク列22が連結ピン23を介して円滑に回動屈曲して、噛み合い不良や歯飛びを生じることがない。
図6に示すように、バルブ開閉タイミング用サイレントチェーン20aとバランサ駆動用サイレントチェーン20bのチェーン・ピッチPcに対するホブ・ピッチPhのピッチ比(Ph/Pc)が、0.96未満であるサイレントチェーン伝動機構では、スプロケットとの噛み合い時にこれらのサイレントチェーンがレイアウト設計されたチェーンピッチラインLc上を外側に外れて走行するため、騒音と振動を低減することができずに、歯飛びを生じる。
【0029】
以上のようにして得られた本実施例のサイレントチェーン伝動機構は、従来のサイレントチェーン伝動機構と比較すると、複数のリンクプレート21を表裏ランダムにチェーン幅方向に並列集合したリンク列22が連結ピン23によって相互に指組み状に連結され、前記チェーン幅方向に並列集合した全てのリンクプレートの外形(w,h)を投影したリンク列の外形(W,H)が前記リンク列を構成する個々のリンクプレートの外形(w,h)より僅かに大きくなっているバルブ開閉タイミング用サイレントチェーン20aとバランサ駆動用サイレントチェーン20bであっても、レイアウト設計されたチェーンピッチラインLc上を外れることなく正確に走行することができ、優れた騒音特性、振動特性、摩耗特性、走行安定性を発揮することができ、その効果は甚大である。
【0030】
なお、上述した本発明の一実施例であるサイレントチェーン伝動機構については、バルブ開閉タイミング伝動機構M1と、バランサ駆動用クランク軸スプロケット11b、バランサ軸スプロケット13a、13bを備えて増速伝動するバランサ伝動機構M2とを具備した機構を対象にして説明したが、本発明の他の実施例であるサイレントチェーン伝動機構が、バランサ伝動機構M2以外のオイルポンプ等の補機駆動用伝動機構を組み合わせた機構であっても、同様な作用効果が達成されることは言うまでもない。
【0031】
【発明の効果】
本発明のサイレントチェーン伝動機構は、歯数の相異なるスプロケット間で動力を伝達するものであって、以下のような特有の効果を奏することができる。すなわち、
【0032】
まず、本発明のサイレントチェーン伝動機構は、複数のリンクプレートを表裏ランダムにチェーン幅方向に並列集合したリンク列が連結ピンによって相互に指組み状に連結され、前記チェーン幅方向に並列集合した全てのリンクプレートの外形(w,h)を投影したリンク列の外形(W,H)が前記リンク列を構成する個々のリンクプレートの外形(w,h)より僅かに大きくなっているサイレントチェーンと、前記サイレントチェーンのチェーン・ピッチよりも小さいホブ・ピッチを有するホブ・カッターで歯切りされたスプロケットとで構成されていることにより、サイレントチェーンとスプロケットとの噛み合いにおいて、サイレントチェーンのチェーン・ピッチよりも小さいホブ・ピッチを有するホブ・カッターで歯切りされたスプロケットが、個々のリンクプレートより大きな外形となっているリンク列を確実かつ円滑に受け入れるため、サイレントチェーンがレイアウト設計されたチェーンピッチライン上を正確に走行して低騒音と低振動の噛み合いを実現でき、しかも、チェーン組み立て時にリンクプレートの表裏を問題視することなく簡便に並列集合させることができるのでチェーン生産性が著しく向上する。
【0033】
特に、小歯数のスプロケットより巻き付くリンクプレートのリンク数が多い大歯数のスプロケットや、巻き付き角度が大きいスプロケットであっても、順次、個々のリンクプレートより大きな外形となっているリンク列を確実かつ円滑に受け入れるため、従来のような窮屈な噛み合いがより多く累積してサイレントチェーンが本来のチェーンピッチラインよりも外側に外れて走行することがない。
【0034】
そして、前記サイレントチェーンのチェーン・ピッチに対するホブ・ピッチのピッチ比が、0.96以上1.00未満であることによって、サイレントチェーンとスプロケットとの噛み合い時に最適な噛み合い高さを確保することができるため、スプロケット歯の相互間隙において相互に連結されるリンク列が連結ピンを介して円滑に回動屈曲して、噛み合い不良や歯飛びを生じることがないので、最適な噛み合いを達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いたスプロケットの歯切り加工を従来技術と比較して示した図。
【図2】本発明の噛み合い状態を従来技術と比較して示した図。
【図3】ホブ・ピッチを変化させた場合の騒音レベルを示した図。
【図4】サイレントチェーンのチェーン・ピッチに対するホブ・ピッチのピッチ比が、1.00以上である場合の噛み合い状態を示した図。
【図5】サイレントチェーンのチェーン・ピッチに対するホブ・ピッチのピッチ比が、0.96以上1.00未満の最適範囲内である場合の噛み合い状態を示した図。
【図6】サイレントチェーンのチェーン・ピッチに対するホブ・ピッチのピッチ比が、0.96未満である場合の噛み合い状態を示した図。
【図7】サイレントチェーン伝動機構の全体概要図。
【図8】リンク列の外形と個々のリンクプレートの外形とを比較した図。
【符号の説明】
11a,A11a ・・・ バルブ駆動用クランク軸スプロケット
11b,A11b ・・・ バランサ軸駆動用クランク軸スプロケット
12a,A12a ・・・ 吸気バルブ用カム軸スプロケット
12b,A12b ・・・ 排気バルブ用カム軸スプロケット
13,A13 ・・・ バランサ軸スプロケット
20a・・・ バルブ開閉タイミング用サイレントチェーン
20b・・・ バランサ駆動用サイレントチェーン
21 ・・・ リンクプレート
21a・・・ ピン孔
22 ・・・ リンク列
23 ・・・ 連結ピン
30a・・・ テンショナ
30b・・・ テンショナ
Pc ・・・ チェーン・ピッチ
Ph ・・・ ホブ・ピッチ
HC ・・・ ホブ・カッター
Lc ・・・ チェーンピッチライン
La ・・・ 噛み合いピッチライン

Claims (1)

  1. 複数のリンクプレートを表裏ランダムにチェーン幅方向に並列集合したリンク列が連結ピンによって相互に指組み状に連結され、前記チェーン幅方向に並列集合した全てのリンクプレートの外形(w,h)を投影したリンク列の外形(W,H)が前記リンク列を構成する個々のリンクプレートの外形(w,h)より僅かに大きくなっているサイレントチェーンと、前記サイレントチェーンのチェーン・ピッチよりも小さいホブ・ピッチを有するホブ・カッターで歯切りされたスプロケットとを具備しているサイレントチェーン伝動機構であって、
    前記サイレントチェーンのチェーン・ピッチに対するホブ・ピッチのピッチ比が、0.96以上1.00未満の範囲内であることを特徴とするサイレントチェーン伝動機構。
JP2001223272A 2001-07-24 2001-07-24 サイレントチェーン伝動機構 Expired - Lifetime JP4149688B2 (ja)

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