JP4851995B2 - サイレントチェーン伝動装置 - Google Patents
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Description
サイレントチェーン伝動装置は、例えば、自動車のエンジンのクランクシャフトとカムシャフトの間の動力伝達機構として広く用いられている。
しかしながら、リンク歯を弾性変形させることによる騒音低減効果には、リンク歯の強度の関係から限界があった。
つまり、スプロケットホイールの回転に伴い、一方のリンク歯が、一の歯部のサイクロイド歯形部分に、他方のリンク歯に先行して接触する。そして、スプロケットホイールがさらに回転すると、一方のリンク歯と一の歯部のサイクロイド歯形部分とが滑り接触しながら、他方のリンク歯が他の歯部に接触し、リンクプレートが着座する。そのため、着座時の衝撃を予め吸収した上でリンクプレートをスプロケットホイールに着座させて、騒音を低減することができる。
そこで、サイレントチェーンのチェーンピッチPφとスプロケットホイールのピッチPsとの差Pφ−PsをクリアランスC以上クリアランスCの2倍以下の範囲にすれば、騒音を低減しつつ、サイレントチェーンをスプロケットホイールに確実に巻きつけることができる。
本実施形態に係るサイレントチェーン伝動装置1は、サイレントチェーン2と、このサイレントチェーン2が巻き掛けられる駆動側スプロケットホイール3及び従動側スプロケットホイール(図示省略)と、から構成されている。駆動側スプロケットホイール3は、従動側スプロケットホイールに対して間隔を隔てて配置されている。
なお、駆動側スプロケットホイール3と従動側スプロケットホイールとは、略同じ構成を有することから、ここでは、駆動側スプロケットホイール3(以下、単に「スプロケットホイール3」という)について説明し、従動側スプロケットホイールの説明は省略する。
図2(a)に示すように、リンクプレート20は、前後(図2の左右)対称の構造を呈する金属製のプレートである。リンクプレート20は、チェーン走行方向に沿って、前後一対のリンク歯21と、前後一対の連結孔22と、を備えている。
なお、本実施形態においては、連結孔22を円形に形成したが、連結孔22の形状は円形に限定されるものではない。例えば、連結孔22を小判型や楕円形に形成してチェーン走行方向にのみクリアランスCを設けるようにしてもよい。
また、歯部31の側部32のうち、サイクロイド歯形とする部分の長さは、滑り接触時に着座時の衝撃を吸収できる長さであればよく、着座までの途中で他の歯形形状としてもよい。このとき、サイクロイド歯形部分と他の歯形形状とする部分とは、滑りを円滑にするために、連続的に滑らかに形成するのが好ましい。
スプロケットホイール3のピッチPsは、後記するサイレントチェーン2のピッチPφよりも小さくなるように構成されている。
図3(a)は、スプロケットホイールを創成するためのラックを示す図であり、(b)はラックによってスプロケットホイールを創成している状態を示す図である。
図3(a)に示すように、ラック5は、スプロケットホイール3を創成するためのカッタである。ラック5のピッチPsは、創成すべきスプロケットホイール3のピッチPsに等しいものを用いる。
図3(b)に示すように、ラック5の基準ピッチ線P1と、スプロケットホイール3の基準ピッチ円P2との間に滑りのない転がり運動をさせることにより、スプロケットホイール3’の歯部31’が創成される。これにより、ラック5のピッチPsがスプロケットホイール3に転写されるので、両者のピッチPsが等しくなる。
このあと、スプロケットホイール3’の歯部31’の歯元に凹部33を形成することにより、スプロケットホイール3が完成する。
したがって、リンクプレート20単体の連結孔22同士の間隔をPl(以下、「リンクプレート20のピッチPl」という),連結孔22の内径d1と連結ピン4の外径d2のクリアランスをCとすると、サイレントチェーン2のチェーンピッチPφは、
Pφ=Pl+C ・・・・ 式(1)
となる。
Pφ’=Pl−C ・・・・ 式(2)
まで、小さくなることができる。
これを踏まえると、サイレントチェーン2がスプロケットホイール3に巻き付くことができる最小のスプロケットホイール3のピッチPsは、
Pl−C≦Ps ・・・・ 式(3)
となる。
Pφ−2C≦Ps ・・・・ 式(4)
となる。
Ps≦Pl ・・・・ 式(5)
となる。
Pφ−2C≦Ps≦Pφ−C ・・・・ 式(6)
となる。すなわち、スプロケットホイール3のピッチPsは、サイレントチェーン2のチェーンピッチPφよりも、クリアランスC以上クリアランスCの2倍以下の範囲で小さくするのが好ましい。なお、Pφ−2C≦Ps≦Pφ−1.5Cとすれば、騒音低減効果を確実に発揮することができるため、さらに好ましい。
実施例1では、サイレントチェーン2のチェーンピッチPφを8.06mmに設定するとともに、スプロケットホイール3のピッチPsを7.94mmに設定した。また、リンクプレートのピッチPlを8.00mmに設定するとともに、連結孔22と連結ピン4とのクリアランスCを0.06mmに設定した。つまり、Ps=Pφ−2Cとした。
図5及び図6に、実施例1に係るサイレントチェーン2(リンクプレート20)及びスプロケットホイール3の主要部の寸法を示す。
実施例2では、サイレントチェーン102のチェーンピッチPφを8.00mmに設定するとともに、スプロケットホイール103のピッチPsを7.94mmに設定した。また、リンクプレートのピッチPlを7.94mmに設定するとともに、連結孔122と連結ピン104とのクリアランスCを0.06mmに設定した。つまり、Ps=Pφ−Cとした。
なお、実施例2に係るサイレントチェーン102(リンクプレート120)及びスプロケットホイール103の主要部の寸法は、実施例1と略同様であるので、詳細な説明を省略する。
図示は省略するが、比較例1では、サイレントチェーンのチェーンピッチPφを8.00mmに設定するとともに、スプロケットホイール103のピッチPsを8.00mmに設定した。また、リンクプレートのピッチPlを7.94mmに設定するとともに、連結孔122と連結ピン104とのクリアランスCを0.06mmに設定した。つまり、Ps=Pφとした。
なお、比較例1に係るサイレントチェーン(リンクプレート)及びスプロケットホイールの主要部の寸法は、実施例1と略同様であるので、詳細な説明を省略する。
その結果、θ=0.1°となった時点でリンクプレートの後側のリンク歯の外側フランクが、スプロケットホイールの歯部の側部と接触した。なお、このとき、リンクプレートの前側のリンク歯の外側フランクは、まだ歯部の側部に接触していない。
そして、θ=0°となった時点で、リンクプレートの前側のリンク歯の外側フランクが歯部の側部に接触し、リンクプレートがスプロケットホイールに着座した。
実施例2のスプロケットホイール及びサイレントチェーンを作成するとともに、比較例1のスプロケットホイール及びサイレントチェーンを作成し、それぞれをテスト用エンジンにカム・クランクスプロケット及びタイミングチェーンとして取り付け、クランク軸の回転数と騒音との関係を測定した。
騒音の測定は、チェーンケースの前方500mmの地点で行った。測定した騒音は、チェーン走行方向後側のリンク歯とスプロケットホイールとが噛合う際の騒音である「噛合い1次側」と、チェーン走行方向前側のリンク歯とスプロケットホイールとが噛合う際の騒音である「噛合い2次側」と、にそれぞれ分析し、図13のグラフに上下に分けて表示した。
これにより、後側のリンク歯21Bと歯部31Bとが滑り接触する距離及び時間が長くなり、前側のリンク歯21Aが歯部31Aに接触する際の衝撃吸収効果、ひいては騒音低減効果が向上することが分かる。
2 サイレントチェーン
20 リンクプレート
21 リンク歯
21a 外側フランク
21b 内側フランク
21d 凹部
22 連結孔
3 スプロケットホイール
31 歯部
4 連結ピン
C クリアランス
Ps スプロケットホイールのピッチ
Pφ サイレントチェーンのチェーンピッチ
Claims (3)
- チェーン走行方向に沿って前後一対のリンク歯と前後一対の連結孔とを有する複数のリンクプレートが相互に重ね合わされつつ前記連結孔にそれぞれ挿入される連結ピンで無端状に連結されてなるサイレントチェーンと、前記リンク歯と噛み合う複数の歯部を有するスプロケットホイールと、を備えるサイレントチェーン伝動装置において、
前記リンクプレートは、前記前後一対のリンク歯の互いに対向する内側フランクの先端寄りの部分に、円弧状の凹部がそれぞれ形成されており、
前記スプロケットホイールは、前記各歯部の少なくとも前記サイレントチェーンの前記リンク歯と当接する側部がサイクロイド歯形で構成され、この側部において一方の前記リンク歯と滑り接触しながら、他方の前記リンク歯と当接するように構成されているとともに、
前記スプロケットホイールのピッチPsは、前記サイレントチェーンのチェーンピッチPφよりも小さいことを特徴とするサイレントチェーン伝動装置。 - 前記連結孔は、前記連結ピンに対してクリアランスCを有し、
前記スプロケットホイールのピッチPsは、前記サイレントチェーンのチェーンピッチPφよりもクリアランスC以上クリアランスCの2倍以下の範囲で小さいことを特徴とする請求項1に記載のサイレントチェーン伝動装置。 - 前記スプロケットホイールは、前記各歯部の歯元に凹部が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のサイレントチェーン伝動装置。
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