JP3187802B1 - サイレントチェーン駆動機構 - Google Patents

サイレントチェーン駆動機構

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JP3187802B1
JP3187802B1 JP2000003816A JP2000003816A JP3187802B1 JP 3187802 B1 JP3187802 B1 JP 3187802B1 JP 2000003816 A JP2000003816 A JP 2000003816A JP 2000003816 A JP2000003816 A JP 2000003816A JP 3187802 B1 JP3187802 B1 JP 3187802B1
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勝敏 園田
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    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16GBELTS, CABLES, OR ROPES, PREDOMINANTLY USED FOR DRIVING PURPOSES; CHAINS; FITTINGS PREDOMINANTLY USED THEREFOR
    • F16G13/00Chains
    • F16G13/02Driving-chains
    • F16G13/04Toothed chains

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  • Gears, Cams (AREA)

Abstract

【要約】 【課題】 歯数の異なるスプロケット間で動力を伝達す
るサイレントチェーン駆動機構において、大歯数側スプ
ロケットと小歯数側スプロケット双方のサイレントチェ
ーンのコーダルアクションを抑制して振動と騒音を低減
でき、チェーン張力変動を抑制して優れた駆動性能と耐
久性を発揮できるサイレントチェーン駆動機構を提供す
る。 【解決手段】 サイレントチェーンの内側フランク歯面
を外側フランク歯面より多角形運動の振幅だけ膨出させ
るとともに、カム軸側スプロケットの圧力角をA1、ク
ランク軸側スプロケットの圧力角をA2、内側フランク
の圧力角をAcとしたとき、カム軸側スプロケットとク
ランク軸側スプロケットの歯面形状を、A1>Ac≧A
2を満足するようなインボリュート曲線でそれぞれ形成
したことによって、クランク軸側とカム軸側の双方にお
いてコーダルアクションを抑制したものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、4サイクルエンジ
ンにおいてクランク軸からカム軸を駆動する場合に用い
られるような、歯数の異なるスプロケット間で動力を伝
達するサイレントチェーン駆動機構に関する。
【0002】
【従来の技術】図6に示すような4サイクルエンジンに
おいて、クランク軸からカム軸を駆動する場合に用いら
れるサイレントチェーン駆動機構は、クランク軸側スプ
ロケット1b、吸気バルブと排気バルブを作動させるカ
ム軸側スプロケット1a、これらの間を伝動するサイレ
ントチェーンS、前記サイレントチェーンに張力を与え
るテンショナT、およびテンショナレバーL、前記サイ
レントチェーンの振れを押さえるチェーンガイドGなど
で構成されている。
【0003】このような吸気バルブと排気バルブは、ク
ランク軸側スプロケットが2回転するとそれぞれ1回作
動するようになっている。そこで、クランク軸側の回転
速度をカム軸側で1/2に減速する必要があり、カム軸
側スプロケット1aの歯数は、クランク軸側スプロケッ
ト1bの歯数の2倍となるように設定されている。
【0004】そして、このようなサイレントチェーン駆
動機構に用いるサイレントチェーンSは、特開平8−1
84348号公報に記載されており、図7、図8に示す
ように、チェーン長手方向に重なり合うリンクプレート
のリンク歯によってスプロケットと噛み合うことがで
き、このようなチェーンに張力を加えて直線状に張った
とき、それぞれのリンクプレートの外側に位置する直線
状の外側フランクは台形状の連続歯形を形成するように
なっている。
【0005】その具体的な従来例として、図7に示すよ
うなチェーンに張力を加えて直線状に張ったとき、リン
クプレートの内側に位置する内側フランクがこれと重な
り合うリンクプレートの外側に位置する外側フランクの
輪郭よりも内側に引っ込んでいるものと、図8に示すよ
うなチェーンに張力を加えて直線状に張ったとき、リン
クプレートの内側に位置する内側フランクがその中央部
を膨出して、これと重なり合うリンクプレートの外側に
位置する外側フランクの輪郭よりも外側にはみ出してい
るものがある。
【0006】一方、クランク軸側スプロケット1bとカ
ム軸側スプロケット1aは、特願平11−037745
号に開示されているような、図9に示すスプロケット歯
切り加工方法を用いて成形されている。すなわち、上述
したような外側フランクが集合して形成する台形状連続
歯形とおおむね相似な歯形を有するホブカッターによっ
て、スプロケットに巻き付いたサイレントチェーンが前
記チェーンのピッチを一辺とする正多角形を形成するよ
うな転移量に設定して歯切りされ、インボリュート曲線
の歯面形状が形成される。
【0007】そして、1/2に減速するために相互に歯
数の異なるスプロケットを歯切りする際には、クランク
軸側スプロケット1bとカム軸側スプロケット1aを一
律的にサイレンチェーンの外側フランクが画成する圧力
角Afと等しい圧力角の歯形を有するホブカッターによ
って歯切りするか、あるいは、クランク軸側スプロケッ
ト1bの歯数がカム軸側スプロケット1aの歯数の1/
2と少ないことに起因する切り下げやスプロケット歯元
の痩せを避けるために、クランク軸側スプロケット1b
はサイレンチェーンの外側フランクが画成する圧力角A
fよりも大きな圧力角の歯形を有するホブカッターによ
って歯切りしている。
【0008】したがって、従来のカム軸側スプロケット
1aとクランク軸側スプロケット1bの歯面形状は、カ
ム軸側スプロケット1aの圧力角をA1、クランク軸側
スプロケット1bの圧力角をA2、リンクプレートの外
側フランクが画成する圧力角をAfとしたとき、A2≧
A1=Af の大小関係となるようなインボリュート曲線で形成され
ている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】そこで、このようなサ
イレントチェーンSとカム軸側スプロケット1aとクラ
ンク軸側スプロケット1bとから構成されたカム軸駆動
用サイレントチェーン駆動機構は、図10、および、図
11に示すような噛み合い状態となる。
【0010】まず、図7に示すようなチェーンに張力を
加えて直線状に張ったとき、リンクプレートの内側フラ
ンクがリンクプレートの外側フランクよりも引っ込んで
いるサイレントチェーンSを使用した場合には、サイレ
ントチェーンSがこれらのスプロケット1に巻き付いた
時、リンクプレートの外側フランクは、スプロケットの
1歯おきにスプロケット歯面に着座して正多角形状の巻
き付き形態を呈する一方、リンクプレートの内側フラン
クは、外側フランクよりも引っ込んでいるためにカム軸
側スプロケット1aとクランク軸側スプロケット1bの
いずれのスプロケット歯面に対しても接触することがな
い。
【0011】しかしながら、このようなサイレントチェ
ーンSのリンクプレートは、外側フランクのみでスプロ
ケット1と噛み合うため、この噛み合い開始時にサイレ
ントチェーンSがスプロケットの半径方向に上下動を伴
う多角形運動を呈する。
【0012】そこで、このような多角形運動について定
量的に分析してみると、スプロケット1の歯のピッチ角
θと歯数zとが θ=360°/z の関係を有しているので、以下のことが明らかになる。
【0013】まず、図10に示すように、スプロケット
1の中心と連結ピン2aとリンクプレート3b以降のフ
リースパンのチェーンとが直角を成す場合の、スプロケ
ット1の中心からフリースパンのチェーン・ピッチライ
ンまでの距離は、リンクプレート3aの外側フランクが
スプロケット1の歯面に着座しているため、連結ピン2
aのスプロケット1の中心からの高さによって定まり、 U=P/2sin(θ/2) となる。
【0014】つぎに、図11に示すように、スプロケッ
ト1が図10の状態からピッチ角θの1/2だけ回転し
て、スプロケット1の中心とリンクプレート3bの中心
とフリースパンのチェーンとが直角を成す場合の、スプ
ロケット1の中心からフリースパンのチェーン・ピッチ
ラインまでの距離は、図10に示す場合と同様に、リン
クプレート3aの外側フランクがスプロケット1の歯面
に着座しているため、連結ピン2aのスプロケット1の
中心からの高さによって定まり、 V=P/2tan(θ/2) となる。
【0015】以上のとおりであるから、スプロケット1
と噛み合い始めるサイレントチェーンSは、スプロケッ
ト1がピッチ角θの半分(θ/2)回転する間に、 振幅Hs=U−V の上下動、すなわち、多角形運動を生じ、これによって
サイレントチェーンSは、いわゆる、コーダルアクショ
ンを呈することになる。したがって、このようなサイレ
ントチェーンSを使用した場合においては、振幅Hs=
U−Vのコーダルアクションがリンクプレート3a,3
b,3c・・の外側フランク面とスプロケット1の歯面
との衝突、すなわち、ビーティング・モーションを引き
起こし、高速回転させた場合には、振動と騒音を発生し
て4サイクルエンジンのカム軸駆動機構における振動と
騒音の主たる原因となるという問題があった。
【0016】また、このような多角形運動によるコーダ
ルアクションがサイレントチェーンの張力変動を惹起さ
せてサイレントチェーン自身の耐久性を悪化させるとい
う問題があった。
【0017】つぎに、図8に示すようなチェーンに張力
を加えて直線状に張ったとき、リンクプレートの内側フ
ランクがその中央部を膨出してリンクプレートの外側フ
ランクよりはみ出しているサイレントチェーンを使用し
た場合には、サイレントチェーンSがこれらのスプロケ
ット1に巻き付いた時、リンクプレートの外側フランク
は、スプロケットの1歯おきにスプロケット歯面に着座
して正多角形状の巻き付き形態を呈する一方、リンクプ
レートの内側フランクの中央部が外側フランクよりはみ
出しているために、フリースパンにあるリンクプレート
の内側フランク中央部の膨出がスプロケット歯面と接触
してリンクプレートの外側フランクがスプロケット歯面
に着座する前に、フリースパンのチェーンを一時的に持
ち上げ、これによって、図7に示すようなサイレントチ
ェーンを使用した場合に比較すると、コーダルアクショ
ンを少なくすることができる。
【0018】しかしながら、クランク軸側スプロケット
1bの歯数とカム軸側スプロケット1aの歯数が大きく
異なっているためピッチ角(θ=360°/z)が異な
っており、クランク軸側スプロケットの歯数とカム軸側
スプロケットの多角形運動の大きさも大きく異なって来
る。したがって、前述したようなリンクプレートの内側
フランクがその中央部を膨出しているサイレントチェー
ンを使用した場合には、フリースパンのチェーンを持ち
上げる高さが一定であるため、クランク軸側スプロケッ
トとカム軸側スプロケットのいずれかにおいて必ず多角
形運動を生じ、クランク軸側スプロケットとカム軸側ス
プロケットに生ずる双方のコーダルアクションを共に小
さくすることが困難となる。
【0019】したがって、このようなカム軸駆動機構で
は、クランク軸側、若しくは、カム軸側の一方において
コーダルアクションが抑制されたとしても、カム軸駆動
機構としてみるとコーダルアクションに伴う振動と騒音
を低減したことにはならなず、また、前記リンクプレー
トの内側フランク中央部の膨出がプロケット歯面と衝突
して、新たな振動・騒音やチェーンの張力変動を生じる
という厄介な問題があった。
【0020】そこで、本発明の目的は、4サイクルエン
ジンにおいて、サイレントチェーンによってクランク軸
からカム軸を駆動する場合に用いられるような、歯数の
異なるスプロケット間で動力を伝達するサイレントチェ
ーン駆動機構において、大歯数側スプロケットと小歯数
側スプロケット双方のサイレントチェーンのコーダルア
クションを抑制してこれによって引き起こされる振動と
騒音を低減するとともに、チェーンの張力変動を抑制し
て優れた駆動性能と耐久性を発揮することができるサイ
レントチェーン駆動機構を提供することである。
【0021】
【課題を解決するための手段】本発明のサイレントチェ
ーン駆動機構は、一対のリンク歯を有するリンクプレー
トを連結ピンで相互に連結して編成してなるサイレント
チェーンが、大歯数スプロケットと少歯数スプロケット
との間で動力を伝達するサイレントチェーン駆動機構に
おいて、前記サイレントチェーンのリンク歯を形成する
フランク形状が、チェーン・ピッチラインから内側フラ
ンク・ピッチラインまでの距離をHc、チェーン・ピッ
チラインから外側フランク・ピッチラインまでの距離を
Hfとし、前記少歯数スプロケットの歯数と等しいか、
あるいは前記少歯数スプロケットの歯数と前記大歯数ス
プロケットの歯数との間に設定された歯数を有する仮想
スプロケットにおける多角形運動の振幅をHsとしたと
き、 Hc=Hf+Hs を満足するように形成されているとともに、前記大歯数
スプロケットと少歯数スプロケットの歯面形状が、前記
大歯数側スプロケットの圧力角をA1、前記小歯数側ス
プロケットの圧力角をA2、前記サイレントチェーンに
形成された内側フランクの圧力角をAcとしたとき、 A1>Ac≧A2 を満足するようなインボリュート曲線でそれぞれ形成さ
れていることによって、前記課題を解決したものであ
る。
【0022】ここで、本発明のサイレントチェーン駆動
機構に用いるサイレントチェーンは、一対のリンク歯を
有するリンクプレートを丸ピン若しくはロッカーピンな
どの連結ピンで相互に多数連結して編成してなるもので
あり、また、このリンクプレートには、その外側に位置
する外側フランクと内側に位置する内側フランクをそれ
ぞれ備えている。
【0023】また、本発明における「チェーン・ピッチ
ライン」とは、リンクプレートにおけるピン中心の相互
を結ぶ直線のことである。
【0024】本発明における「内側フランク・ピッチラ
イン」とは、内側フランクとの交点同志の距離がチェー
ン・ピッチPの1/2となるような位置でチェーン・ピ
ッチラインに平行なラインのことである。
【0025】本発明における「外側フランク・ピッチラ
イン」とは、外側フランクとの交点同志の距離がチェー
ン・ピッチPの3/2となるような位置でチェーン・ピ
ッチラインに平行なラインのことである。
【0026】本発明における「仮想スプロケットにおけ
るチェーン多角形運動の振幅」とは、外側フランクのみ
で噛み合うサイレントチェーンがスプロケットと噛み合
い開始時にスプロケットの半径方向に生じる上下動の幅
のことである。
【0027】本発明における「スプロケットの圧力角」
とは、該スプロケットを歯切りする際に用いるホブカッ
ターの歯形の圧力角のことである。
【0028】
【作用】本発明のサイレントチェーン駆動機構は、リン
クプレートの内側フランク形状をHc=Hf+Hsを満
足するように形成したことによって、噛み合い開始時か
ら噛み合って着座するまでの噛み合い過程において、内
側フランクとスプロケットの間には、ラックとピニヨン
の間に成立すると同様の噛み合いが成立し、スプロケッ
トの中心からフリースパンのチェーンまでの高さが一定
の高さに維持されるので、従来のような多角形運動に伴
うコーダルアクションが抑制される。
【0029】すなわち、チェーン・ピッチラインから内
側フランク・ピッチラインまでの距離が、外側フランク
・ピッチラインよりも、少歯数スプロケットの歯数と等
しいか、あるいは少歯数スプロケットの歯数と大歯数ス
プロケットの歯数との間に設定された歯数を有する仮想
スプロケットにおける多角形運動の振幅Hsだけ遠い内
側フランクのリンクプレートを用いたことによって、多
角形運動を抑えることができる。
【0030】本発明のサイレントチェーン駆動機構は、
大歯数側スプロケットと小歯数側スプロケットの歯面形
状をA1>Ac≧A2を満足するようなインボリュート
曲線でそれぞれ形成したことによって、大歯数側スプロ
ケットが小歯数側スプロケットに対して2倍の歯数を備
えている場合であってもサイレンチェーンが小歯数側と
大歯数側の双方において噛み合い開始時に、内側フラン
クが着座したリンクプレートの外側フランクと同時に噛
み合ってフリースパンのチェーンを多角形運動の最高点
の高さまで持ち上げ保持するので、小歯数側スプロケッ
トと大歯数側スプロケットの双方においてサイレントチ
ェーンのコーダルアクションが抑制される。
【0031】
【実施例】以下、本発明の一実施例である4サイクルエ
ンジンにおいて、クランク軸からカム軸を駆動する場合
に用いられるサイレントチェーン駆動機構を、図面に基
づいて説明する。
【0032】まず、本実施例のサイレントチェーン駆動
機構は、図6に示された従来例と同様に、自動車エンジ
ンの吸気バルブと排気バルブをクランク軸の2回転につ
き1回転作動させるための減速駆動機構であって、一対
のリンク歯を有するリンクプレートを連結ピンで相互に
連結して編成してなるサイレントチェーンと、該サイレ
ントチェーンのリンク歯と噛み合うインボリュート曲線
で形成された歯面を有するクランク軸側スプロケット1
bとこれの2倍の歯数を有するカム軸側スプロケット1
aを備えている。
【0033】図1は、本実施例のサイレントチェーン駆
動機構に用いたサイレントチェーンのリンクプレートの
外形を示す図であり、図2は、図1のリンクプレートを
用いたサイレントチェーンの編成状態を示す図である。
【0034】そこで、本実施例に使用したサイレントチ
ェーンのリンク歯について、図1、および、図2に示す
歯面形状をみると、その歯面形状をなす直線状のフラン
ク形状は、チェーン・ピッチラインから内側フランク・
ピッチラインまでの距離をHc、チェーン・ピッチライ
ンから外側フランク・ピッチラインまでの距離をHf、
多角形運動の振幅をHsとしたとき、 Hc=Hf+Hs を満足するように形成されている。
【0035】なお、多角形運動の振幅Hsの具体的算出
方法は以下の通りである。 (1)まず、カム軸側スプロケット1aの歯数z1とク
ランク軸側スプロケット1bの歯数z2の間に、適当な
仮想スプロケットの歯数zcを定める。zcの値は、歯
数が少ない程多角形運動が大きいことを考慮して、z1
とz2の中間よりも少な目か、または、クランク軸側ス
プロケット1bの歯数z2と等しく設定する。 (2)前記歯数zcを備えた該仮想スプロケットの、多
角形運動の振幅Hsを求める。
【0036】また、図2に示すように、サイレントチェ
ーンを構成するリンクプレートは、全て同一形状のもの
を採用しており、外側フランクと内側フランクの歯形
は、双方とも直線である。また、隣り合うリンクプレー
トにおいてそれぞれ対応する内側フランクの相互間隔、
および、外側フランクの相互間隔は、リンクプレートに
おける一対のピン間の距離として定義されるチェーンピ
ッチPと等しい。
【0037】一方、本実施例に使用したカム軸側スプロ
ケット1aは、クランク軸側スプロケット1bに対して
2倍の歯数を備えており、クランク軸側からカム軸側に
回転速度が1/2に減速されるようになっている。
【0038】また、両者のスプロケット1a、1bと
も、前記サイレントチェーンに形成された内側フランク
に対して、スプロケットの中心からチェーン・ピッチラ
インまでの距離が、それぞれの歯数に対応して U=P/2sin(θ/2) なるように、ホブカッターを用いた歯切り方法によって
形成されている。
【0039】そして、カム軸側スプロケット1aとクラ
ンク軸側スプロケット1bの歯面形状は、前記Uの距離
を実現するために、カム軸側スプロケット1aの圧力角
をA1、クランク軸側スプロケット1bの圧力角をA
2、前記サイレントチェーンに形成された内側フランク
の圧力角をAcとしたとき、 A1>Ac≧A2 を満足するようなインボリュート曲線でそれぞれ形成さ
れている。
【0040】つぎに、本実施例に使用したカム軸側スプ
ロケット1aの圧力角A1とクランク軸側スプロケット
1bの圧力角A2は、ホブカッターの圧力角Ahによっ
て任意に設定することができる。
【0041】なお、カム軸側スプロケット1aの圧力角
A1とクランク軸側スプロケット1bの圧力角A2の具
体的算出方法は以下の通りである。 (1)図3の着座したリンクプレート3aの右側の連結
ピン2aがスプロケット中心の真上にあるときに、部分
拡大図に示すように、着座したリンクプレート3aの外
側フランクとフリースパンのリンクプレート3bのリン
ク進行方向の内側フランクが同時にスプロケット1の歯
と噛み合うこと (2)カム軸側スプロケット1aの歯数z1とクランク
軸側スプロケット1bの歯数z2が異なっていてもHc
の値が一定であることを条件として、カム軸側スプロケ
ット1aの圧力角A1とクランク軸側スプロケット1b
の圧力角A2を決定することができる。
【0042】そこで、図5は、前記算出方法によって求
めたスプロケットの歯数zとホブカッターの圧力角A
h、すなわち、スプロケットの圧力角との関係を図示し
たものである。前記歯数zcの仮想スプロケットの圧力
角は、内側フランクの圧力角Acに一致している。
【0043】図5から明らかなように、本実施例に使用
したカム軸側スプロケット1aとクランク軸側スプロケ
ット1bの歯面形状は、 A1>Ac≧A2 を満足するようにそれぞれ形成されている。
【0044】このように構成された本実施例のサイレン
トチェーン駆動機構の作動状態を図3、および、図4に
基づいて説明すると、以下のとおりである。
【0045】まず、図3は、スプロケット1の中心とピ
ン2aとフリースパンのチェーン3b、2b、3
c...とが直角を成す場合の噛み合い状態を示す。な
お、ここで、「フリースパンのチェーン」とは、スプロ
ケットと噛み合って着座する以前の噛み合い進行中のチ
ェーンであって、スプロケットに完全に拘束されていな
い比較的フリーな状態のチェーンのことである。
【0046】そこで、リンクプレート3aは、図10に
示すような従来の噛み合い状態と同様に、スプロケット
1に対してリンクプレート両側の外側フランクで噛み合
って着座しているから、スプロケット1の中心からフリ
ースパンのチェーンの連結ピン2aまでの距離は、 U=P/2sin(θ/2) となる。
【0047】リンクプレート3bに後続するフリースパ
ンのチェーンは、チェーン張力によって直線状に引っ張
られた状態において、内側フランクが外側フランクの輪
郭よりも外側に直線状態で膨出しているため、スプロケ
ット1をピニオンとした場合に多数の内側フランクで構
成された台形状連続歯型のラックと見做すことができ
る。すなわち、フリースパンのチェーンとスプロケット
1とは、一般的に良く知られたラックとピニヨンとの噛
み合い関係を呈することになる。
【0048】この時、リンクプレート3bと、リンクプ
レート3cは、リンク進行方向の内側フランクでスプロ
ケット1と噛み合っており、内側フランク・ピッチライ
ンは外側フランク・ピッチラインよりHsだけチェーン
・ピッチラインから相対的に遠い位置にあるため、スプ
ロケット1の中心からフリースパンのチェーンのリンク
プレート3bのチェーン・ピッチラインまでの距離は、
次のパラグラフに述べる理由によってUとなる。
【0049】次に、図4は、図3の噛み合い状態からス
プロケット1がピッチ角θの1/2だけ回転してリンク
プレートが半ピッチだけ進んだ噛み合い状態を示す。す
なわち、リンクプレート3aは、図11に示すような従
来の噛み合い状態と同様に、スプロケット1に対して両
側の外側フランクで噛み合って着座しているから、スプ
ロケット1の中心から連結ピン2aまでの距離は、 V=P/2tan(θ/2) である。
【0050】しかし、リンクプレート3cは、リンク進
行方向の内側フランクでスプロケット1と噛み合ってお
り、内側フランクのピッチラインがHc=Hf+Hsと
なっているため、噛み合い高さが前記VよりもHsだけ
高くなるので、スプロケット1の中心から連結ピン2b
までの距離は、 U=P/2sin(θ/2) となる。
【0051】すなわち、図3において、リンクプレート
3cの内側フランクがスプロケット1に噛み合い始めて
から、連結ピン2bが連結ピン2aのあった位置まで進
むまでの間、リンクプレート3cの高さは、常にUに保
たれる。
【0052】この間、リンクプレート3bの内側フラン
クは、連結ピン2aを中心とする屈曲運動によってスプ
ロケット1から離れ、他方、リンクプレート3bの外側
フランクは、まだ、スプロケット1と接触しないので、
リンクプレート3bは連結ピン2aと連結ピン2bに支
持されて滑らかにスプロケット1に噛み込んで行く。
【0053】したがって、サイレントチェーンの噛み合
い動作の全過程において、フリースパンのチェーンは、
常にUの高さにあり、多角形運動による上下動が抑制さ
れる。
【0054】また、本実施例のサイレントチェーン駆動
機構は、カム軸側スプロケット1aとクランク軸側スプ
ロケット1bの歯面形状をA1>Ac≧A2を満足する
ようなインボリュート曲線でそれぞれ形成したことによ
って、カム軸側スプロケット1aがクランク軸側スプロ
ケット1bに対して2倍の歯数備えている場合であって
もサイレンチェーンがクランク軸側とカム軸側の双方に
おいて噛み合い開始時に、内側フランクが着座したリン
クプレートの外側フランクと同時に噛み合ってフリース
パンのチェーンを多角形運動を生じない高さまで持ち上
げるので、クランク軸側とカム軸側の双方においてサイ
レントチェーンのコーダルアクションが抑制される。
【0055】以上のようにして得られた本実施例のサイ
レントチェーン駆動機構は、図7、または、図8に示す
ようなリンクプレートとA1≦A2のの関係を有するス
プロケットを備えた従来のサイレントチェーン駆動機構
と比較すると、クランク軸側とカム軸側のいずれにおい
ても、噛み合い開始時から噛み合って着座するまでの噛
み合い動作の全過程においてスプロケット1の中心から
チェーンまでの高さを一定に維持することができるた
め、サイレントチェーンのコーダルアクションを抑制し
てこれに伴う振動と騒音を低減するとともに、チェーン
張力変動を抑制して優れた駆動性能と耐久性を発揮する
ことができる。
【0056】
【発明の効果】本発明のサイレントチェーン駆動機構
は、以下のような特有の効果を奏することができる。す
なわち、 (1)リンクプレートの内側フランク形状をHc=Hf
+Hsを満足するように形成したことによって、如何な
る噛み合い時点であっても従来のようなサイレントチェ
ーンの多角形運動に伴うコーダルアクションを抑制する
ことができるので、このコーダルアクションによって引
き起こされる振動と騒音を大幅に低減することができる
とともに、チェーン張力変動の無い優れた駆動性能を発
揮することができる。
【0057】(2)大歯数側スプロケットと小歯数側ス
プロケットの歯面形状をA1>Ac≧A2を満足するな
インボリュート曲線でそれぞれ形成したことによって、
大歯数側スプロケットが小歯数側スプロケットに対して
2倍の歯数備えている場合であっても大歯数側スプロケ
ットと小歯数側スプロケット双方のサイレントチェーン
のコーダルアクションを共に最小にすることができるの
で、このようなコーダルアクションに伴う振動と騒音を
減速機構としてなお一層低減することができ、小歯数側
と大歯数側のいずれにおいても優れた駆動性能とサイレ
ントチェーンの耐久性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のサイレントチェーン駆動機構に採用
したサイレントチェーンのリンクプレートの外形図。
【図2】 本発明のサイレントチェーン駆動機構に採用
したサイレントチェーンの編成状態図。
【図3】 本発明のサイレントチェーン駆動機構におけ
る噛み合い状態図。
【図4】 図3の噛み合い状態からピッチ角θの半分
(θ/2)回転した時の噛み合い状態図。
【図5】 スプロケットの圧力角とホブカッターの圧力
角との関係を示した図。
【図6】 従来のサイレントチェーン駆動機構の全体概
要図。
【図7】 従来のサイレントチェーン駆動機構に採用し
たサイレントチェーンの編成状態図。
【図8】 従来のサイレントチェーン駆動機構に採用し
たサイレントチェーンの編成状態図。
【図9】 スプロケット歯切り加工の概念図。
【図10】従来のサイレントチェーン駆動機構における
噛み合い状態図。
【図11】図10の噛み合い状態からピッチ角θの半分
(θ/2)回転した時の噛み合い状態図。
【符号の説明】
1 スプロケット 1a カム軸側スプロケット 1b クランク軸側スプロケット 2a,2b 連結ピン 3a,3b,3c リンクプレート P チェーンピッチ Af 外側フランクの圧力角 Ac 内側フランクの圧力角 Ah ホブの圧力角 A1 大歯数(カム軸)スプロケットの圧力角 A2 少歯数(クランク軸)スプロケットの圧力角 z スプロケットの歯数 z1 大歯数(カム軸)スプロケットの歯数 z2 少歯数(クランク軸)スプロケットの歯数 θ スプロケットのピッチ角 Hf チェーン・ピッチラインから外側フランク・ピ
ッチラインまでの距離 Hc チェーン・ピッチラインから内側フランク・ピ
ッチラインまでの距離 Hs 仮想スプロケットにおける多角形運動の振幅 U 内側フランクの噛み合い高さ V 外側フランクの着座高さ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特許3108417(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16H 7/00 - 7/24 F16G 1/00 - 17/00

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一対のリンク歯を有するリンクプレート
    を連結ピンで相互に連結して編成してなるサイレントチ
    ェーンが、大歯数スプロケットと少歯数スプロケットと
    の間で動力を伝達するサイレントチェーン駆動機構にお
    いて、 前記サイレントチェーンのリンク歯を形成するフランク
    形状が、チェーン・ピッチラインから内側フランク・ピ
    ッチラインまでの距離をHc、チェーン・ピッチライン
    から外側フランク・ピッチラインまでの距離をHfと
    し、前記少歯数スプロケットの歯数と等しいか、あるい
    は前記少歯数スプロケットの歯数と前記大歯数スプロケ
    ットの歯数との間に設定された歯数を有する仮想スプロ
    ケットにおける多角形運動の振幅をHsとしたとき、 Hc=Hf+Hs を満足するように形成されているとともに、 前記大歯数スプロケットと少歯数スプロケットの歯面形
    状が、前記大歯数側スプロケットの圧力角をA1、前記
    小歯数側スプロケットの圧力角をA2、前記サイレント
    チェーンに形成された内側フランクの圧力角をAcとし
    たとき、 A1>Ac≧A2 を満足するようなインボリュート曲線でそれぞれ形成さ
    れていることを特徴とするサイレントチェーン駆動機
    構。
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