JP2006221166A - 偏光ガラス、及び偏光ガラスの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】消光比の面内分布が少なく、偏光軸の向きが均一な偏光ガラスを製造する。
【解決手段】均一な方向に配向して分散した延伸金属粒子を含む偏光ガラスの製造方法は、ハロゲン化金属粒子を内部に析出させた短冊形状のガラス母材を準備する母材準備工程と、ガラス母材の周囲に配したヒータでガラス母材を加熱しながら、ヒータよりもガラス母材の長手方向の外側に設けられた引張手段でガラス母材を長手方向に引っ張ることにより、ガラス母材とハロゲン化金属粒子とを延伸する延伸工程と、延伸工程で延伸された延伸ガラスに含まれるハロゲン化金属粒子を還元処理する工程とを備え、延伸工程において、ガラス母材が延伸する延伸部の外形が、ガラス母材の長手方向に対して5°から20°の傾斜角度をなして収縮するようにヒータの出力を制御する。
【選択図】図1
【解決手段】均一な方向に配向して分散した延伸金属粒子を含む偏光ガラスの製造方法は、ハロゲン化金属粒子を内部に析出させた短冊形状のガラス母材を準備する母材準備工程と、ガラス母材の周囲に配したヒータでガラス母材を加熱しながら、ヒータよりもガラス母材の長手方向の外側に設けられた引張手段でガラス母材を長手方向に引っ張ることにより、ガラス母材とハロゲン化金属粒子とを延伸する延伸工程と、延伸工程で延伸された延伸ガラスに含まれるハロゲン化金属粒子を還元処理する工程とを備え、延伸工程において、ガラス母材が延伸する延伸部の外形が、ガラス母材の長手方向に対して5°から20°の傾斜角度をなして収縮するようにヒータの出力を制御する。
【選択図】図1
Description
本発明は、偏光ガラス、及び偏光ガラスの製造方法に関する。
偏光ガラスは、光通信用途として、近赤外領域における偏波依存型の光アイソレータに用いられる。光アイソレータは2枚の偏光ガラスの間に磁性ガーネット膜を挟んで構成されている。光アイソレータは、光源であるレーザーダイオード(LD)から入射する光を透過し、LDに戻る光を遮断する。
偏光ガラスは、延伸された金属粒子が一定の方向に配向した状態で分散している。延伸された金属粒子は、長径方向と短径方向とで分光吸収係数が大きく異なる性質(二色性)を有する。偏光ガラスの消光比は、この延伸金属粒子の二色性によって実現される。一般に、長径の軸を偏光軸と呼ぶ。光アイソレータは、2枚の偏光ガラスの偏光軸を45°の角度差で精度よく配置することによって高い遮断性能を実現する。2枚の偏光ガラスの交差角度が45°からずれるほど、光アイソレータの遮断性能が低下する。遮断性能が低下すると、LDに戻る光を完全に遮断することができないので、LDの発振が不安定になるという問題を生じる。
光アイソレータにおいて2枚の偏光ガラスの偏光軸がなす角度を45°で精度よく確保するために、偏光ガラスには、偏光軸の向きが面内で均一であることが求められる。すなわち、偏光ガラスに分散している延伸金属粒子の配向方向のばらつきを低減することが要求される。
従来、偏光ガラスは短冊状に成形されたガラス母材であるプリフォームを延伸して延伸ガラスを作製した後に、当該延伸ガラスを所定の厚さに研磨加工していた。研磨後の延伸ガラスの厚さは通常0.5mm以下であるため、高精度な研磨加工が要求される。このため、偏光ガラスはコストダウンが困難であるという課題があった。
偏光ガラスの偏光軸のばらつきを低減し、同時に研磨工程のコストを削減する方法として、プリフォームに所定の温度分布をつけて延伸する技術がある(例えば、特許文献1参照。)。当該技術によれば、偏光軸のばらつき低減に一定の効果が得られる。また、プリフォームを延伸して得られる延伸ガラスの平面度(互いに平行な二つの平面の間の空間を表す:JIS規格)が高まるので、研磨加工のコストが低減し、これにより偏光ガラスのコストダウンが実現される。
また、延伸ガラスの表面粗さを低減する方法として、予め両面を研磨したプリフォームを延伸して延伸ガラスを得る方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
また、ヒータによって加熱される延伸部分の温度、及び延伸ガラスに加えられる引っ張り応力を調節することにより、延伸方向への引っ張り応力を延伸ガラスの幅方向に渡って均一に制御し、これにより偏光軸のばらつきを低減する技術も知られている(例えば、特許文献3参照)。
特開2004−224660号公報
特許第3105491号公報
US2004/0172974号公報
しかしながら、従来の、プリフォームに所定の温度分布をつけて延伸する技術では、偏光軸の方向のばらつきが十分に低減できないという課題があった。また、延伸前に予めプリフォームを研磨しても、プリフォームが延伸時に反った場合には延伸ガラスの平面度が低下してしまうという課題があった。また、従来は偏光ガラスの消光比の面内のばらつきを低減する技術が知られていないという課題があった。また、偏光軸のばらつきを十分に低減する具体的な製造方法は知られていなかった。
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態においては、均一な方向に配向して分散した延伸金属粒子を含む偏光ガラスの製造方法は、ハロゲン化金属粒子を内部に析出させた短冊形状のガラス母材を準備する母材準備工程と、ガラス母材の周囲に配したヒータでガラス母材を加熱しながら、ヒータよりもガラス母材の長手方向の外側に設けられた引張手段でガラス母材を長手方向に引っ張ることにより、ガラス母材とハロゲン化金属粒子とを延伸する延伸工程と、延伸工程で延伸された延伸ガラスに含まれるハロゲン化金属粒子を還元処理する工程とを備え、延伸工程において、ガラス母材が延伸する延伸部の外形が、前記ガラス母材の長手方向に対して5°から20°の傾斜角度をなして収縮するようにヒータの出力を制御する。
このような製造方法によれば、延伸工程において、ハロゲン化金属粒子がガラス母材の幅方向に関してほぼ均一な応力で引き延ばされ、かつガラス母材の長手方向に均一に配向する。これにより、消光比の面内分布が少なく、偏光軸の向きが均一な偏光ガラスを製造できる。さらに、延伸部の幅方向に関する粘度差が小さい状態でガラス母材を延伸するので、延伸後の平面度の高い偏光ガラス製品を製造できる。
上記の製造方法において、ヒータは、ガラス母材の延伸部における短冊形状の正面から、延伸部の幅方向の中心付近を加熱するメインヒータと、延伸部における短冊形状の側方から、延伸部の側面を加熱するサイドヒータとを有し、延伸工程において、ガラス母材の短冊形状の幅方向の中心の温度が幅方向の外側の温度と同等以下になるように、メインヒータ及びサイドヒータの出力を制御してもよい。この場合、サイドヒータの出力は、前記メインヒータの出力よりも大きいことが好ましい。これにより、延伸部におけるガラス母材の幅方向に関する温度分布を容易に制御することができ、長手方向への引っ張り応力を延伸部の幅方向に関して均一に揃えることができる。
上記の製造方法は、延伸工程において、ガラス母材の温度がガラス母材の歪点温度以上且つ軟化点温度以下となるように、ヒータの出力を制御してもよい。このようなヒータ制御により、ガラス母材及びハロゲン化金属粒子をスムーズに延伸することができる。
上記の製造方法は、延伸工程において、引張手段は、200kg/cm2以上500kg/cm2以下の応力であって、短冊形状の幅方向に関して均一な応力でガラス母材を引っ張ってもよい。これにより、近赤外領域の波長に対する消光比が高い偏光ガラスが得られる。
本発明の第2の形態によれば、均一な方向に配向して分散した延伸金属粒子を含む偏光ガラスであって、ハロゲン化金属粒子を内部に析出させた短冊形状のガラス母材を準備する母材準備工程と、ガラス母材の周囲に配したヒータでガラス母材を加熱しながら、ヒータよりもガラス母材の長手方向の外側に設けられた引張手段でガラス母材を長手方向に引っ張ることにより、ガラス母材とハロゲン化金属粒子とを延伸する延伸工程と、延伸工程で延伸された延伸ガラスに含まれるハロゲン化金属粒子を還元処理する工程とを備える製造方法で製造され、延伸工程は、ガラス母材が延伸する延伸部の外形が、ガラス母材の長手方向に対して5°から20°の傾斜角度をなして収縮するようにヒータの出力を制御し、延伸ガラスは、延伸ガラスの延伸方向に対する偏光軸の傾きのばらつきの範囲が0.5°以下である偏光ガラスが得られる。
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
本実施形態にかかる偏光ガラスの製造方法は、少なくとも母材準備工程、延伸工程、及び還元工程を備える。母材準備工程では、ハロゲン化金属粒子を内部に析出させたガラス母材を準備する。延伸工程では、ヒータでガラス母材を加熱しながらガラス母材とハロゲン化金属粒子とを延伸する。還元工程では、延伸工程で延伸された延伸ガラスに含まれるハロゲン化金属粒子を還元処理することにより、延伸された金属粒子が均一な方向に配向して分散した偏光ガラスを得る。
母材準備工程は、例えばUSP4479819号公報に開示された技術を利用して製造できる。すなわち、母材準備工程は、ガラス溶融工程及び熱処理工程を含む。ガラス溶融工程は、金属とそのハロゲン化物とを含有するガラスを溶融する。本実施形態では、金属として銀を、銀のハロゲン化物として塩化物、臭化物、及びヨウ化物の少なくとも一つを用いる。ガラスの組成は例えばUSP4190451号に開示された組成の中から選択できる。なお、金属として銅を、銅とのハロゲン化物としてCuClを用いてもよい。
熱処理工程は、溶融ガラスを加熱処理して、ハロゲン化金属粒子を析出させる。析出するハロゲン化金属粒子は、AgCl、AgBr、及びAgAglであり、その粒径(粒子の直径)は約20nm〜500nmである。熱処理工程はさらに、結晶核を生成する核生成過程と、結晶核が粒成長する粒成長過程の二つの過程を含む。核生成速度と粒成長速度は処理温度によって異なる。核生成は、ガラスの転移点温度より高く軟化点温度より低い温度域のうち、核生成速度が比較的速い温度で少なくとも1時間処理する。一方、粒成長はガラスの軟化点温度より高く、軟化点温度+70℃未満の温度域のうち、粒成長速度が比較的速い温度で少なくとも2時間処理する。この熱処理によって析出するハロゲン化金属粒子はAgCl及びAgBrである。また、析出粒子の粒径は20nm〜200nmであり、好ましくは100nm以下である。
析出粒子の粒径や量を間接的に知る値としてhaze(曇度)を用いる。熱処理はガラスのhazeが2%〜35%になるように調整する。hazeが高い場合、析出粒子の粒径が大きいことを示す。析出粒子の粒径が大きい場合、延伸工程において、ハロゲン化金属粒子をより小さい応力で所望のアスペクト比に引き延ばすことができる。従って、ガラス母材及び延伸ガラスの破断を防ぐことができる。一方で、析出粒子の粒径が大きい場合消光比が小さくなりやすく、また挿入損失の増加を引き起こしやすい。従って、hazeは2%から35%、特に好ましくは5%〜20%の範囲に管理する。熱処理後のガラスは、所定の短冊形状にプリフォーム加工する。プリフォーム形状は、例えば幅70mm、長さ215mm、厚さ2mmである。なお、金属として銅を、銅とのハロゲン化物としてCuClを用いる場合にも熱処理内容は同様である。
図1は、本実施形態の延伸工程を行う延伸装置100の構成を示す。また、図2は、ハロゲン化金属粒子22が延伸される様子を示す概念図である。延伸装置100は、電気炉6と、電気炉6の内部に設けられたガラス支持具5と、同じく電気炉6の内部に設けられた各種ヒータ10、12、14、16、及び20と、プリフォーム1の長手方向に関して上記の各種ヒータより下方に設けられた引張手段40とを備える。
延伸工程では、プリフォーム1をガラス支持具5に固定し、プリフォーム1の周囲に配した各種ヒータでプリフォーム1を加熱しながら、引張手段40でプリフォーム1を長手方向に引っ張る。本実施形態では、ガラス支持具5で短冊形状に加工されたプリフォーム1の長手方向の一端を上方から固定し、ヒータの下方に設けられた引張手段40でプリフォーム1の他端を下方に引っ張る。以下、図1の位置関係を用いて本実施形態を説明する。しかしながら、プリフォーム1を延伸する方向は下方向には限られない。例えば、ガラス支持具5でプリフォーム1の下端を固定し、ヒータよりも上方に設けた引張手段40でプリフォーム1の上側を上方に引っ張ってもよい。
プリフォーム1の加熱は、該プリフォーム1の周囲に設けた各種ヒータ10、12、14、16、及び20で行う。ヒータは、プリフォーム1の幅方向の収縮が生じる延伸部3における短冊形状の正面から、延伸部3の幅方向の中心付近を加熱するメインヒータ10と、延伸部3における短冊形状の側方から、延伸部3の側面を加熱するサイドヒータ20と、メインヒータ10の上方に所定の間隔で配されるサブヒータ12、14、及び16を有する。
メインヒータ10と、サブヒータ12、14、及び16は、プリフォーム1よりやや幅が広い。複数のヒータ10、12、14、16、及び20の出力は、それぞれ独立して制御される。これにより、プリフォーム1は延伸に適した温度分布で加熱される。すなわち、プリフォーム1の延伸が良好に行われ、かつ該プリフォーム1の延伸によるハロゲン化金属粒子の延伸が良好に行われる温度分布に加熱される。サブヒータ12、14、及び16は、延伸部3の上方を段階的に加熱する。
プリフォーム1の粘度が1×109ポイズから1×1014ポイズとなる温度に加熱した状態で、プリフォーム1に200Kg/cm2〜500Kg/cm2の応力を加えることにより、ハロゲン化金属粒子(AgCl、AgBr)が2:1〜100:1のアスペクト比に延伸された延伸ガラス7を生成する。より好ましくは、プリフォーム1の粘度は1×1010ポイズ〜1×1012ポイズの範囲で管理する。さらにプリフォーム1に加える応力は、プリフォーム1の幅方向に関してほぼ均一に加える。また、プリフォーム1に加えるベクトル成分は、プリフォーム1の延伸方向、即ちプリフォーム1の長手方向にほぼ平行になるようにする。応力の大きさは、300Kg/cm2〜450Kg/cm2が特に好ましい。
上記の延伸工程において、プリフォーム1の温度がプリフォーム1のガラス転移点以上且つ軟化点温度以下となるように、各種ヒータ10、12、14、16、及び20の出力を制御する。更に、プリフォーム1の短冊形状の幅方向の中心の温度が外側の温度と同等以下になるように、メインヒータ10及びサイドヒータ20の出力を制御する。本実施形態では、プリフォーム1が延伸する延伸部3の外形が、プリフォーム1の長手方向に対して所定の傾斜角度をなして収縮するように、各ヒータの出力を制御する。例えば、延伸部3の外形が、プリフォーム1の長手方向に対して5°から20°の傾斜角度をなして収縮するように、メインヒータ10、サイドヒータ20、及びサブヒータ12、14、16の出力を制御する。サイドヒータ20の出力は、メインヒータ10の出力よりも大きいことが好ましい。延伸部3の傾斜角度が上記の条件を満足している場合、延伸部3の幅方向における両端部は中心部よりも強く加熱される。これにより、メインヒータ10及びサイドヒータ20よりも下方で延伸部3が徐々に冷やされる場合に、冷やされやすい両端部と冷やされにくい中心部の粘度差が小さい状態でガラス及びハロゲン化金属粒子22が延伸される。さらに冷却が進み、ガラス転移点以下の温度においてガラスの延伸が行われなくなった時点でハロゲン化金属粒子22の延伸も終わる。尚、図2において、プリフォーム1に対するハロゲン化金属粒子22の大きさは実際よりも大きく示している。
以上のような延伸工程によれば、ハロゲン化金属粒子22がプリフォーム1の幅方向に関してほぼ均一な応力で引き延ばされ、かつプリフォーム1の長手方向に均一に配向する。さらに、延伸部の幅方向に関する粘度差が小さい状態でガラス母材を延伸するので、延伸後の平面度の高い偏光ガラス製品を製造できる。なお、延伸工程において、プリフォーム1の幅方向に関する温度分布は均一であってもよい。
次に、延伸工程で得られた延伸ガラス7の残留歪みを除去する。即ち、ガラスの歪点温度以上、転移点温度以下の温度で延伸ガラス7へのアニール処理を行う。転移点温度より高い、例えば徐冷点温度でアニールを行うと、延伸したハロゲン化金属粒子22が再球状化する可能性があるので好ましくない。
還元工程では、水素ガス雰囲気でハロゲン化金属粒子22の一部または全部を金属粒子にする。還元温度が高いほど水素がガラス内部に深く拡散していくため処理時間を短くできる。しかし、上述のアニール処理と同様に、転移点温度より高いと、ハロゲン化金属粒子22が再球状化する可能性がある。また、還元温度が十分に高くない場合、還元処理の時間が長くなるので経済的でない。そのため、還元温度はガラスの歪点温度より高く、転移点温度より低い温度で行う。還元工程が終了すると偏光ガラスが得られる。
本実施形態によれば、消光比の面内分布が少なく、偏光軸の向きが均一な偏光ガラスを製造できる。例えば、ガラス母材から生成した延伸ガラスの延伸方向に対する延伸金属粒子の配向方向の傾き、すなわち偏光軸の傾きは、延伸ガラスの少なくとも11mm×11mmの範囲において、0.5°以下である。
また、本実施形態で得られる偏光ガラスの少なくとも長さ11mm×幅11mmの範囲における消光比のばらつきは、10dB以下である。
また、本実施形態で得られる偏光ガラスの厚さのばらつきは、短冊形状の幅方向に関して0.03mm以下である。
また、本実施形態で得られる偏光ガラスの消光比は、少なくとも300nmの波長帯域において50dB以上である。
また、本実施形態で得られる偏光ガラスの少なくとも長さ11mm×幅11mmの範囲における消光比のばらつきは、10dB以下である。
また、本実施形態で得られる偏光ガラスの厚さのばらつきは、短冊形状の幅方向に関して0.03mm以下である。
また、本実施形態で得られる偏光ガラスの消光比は、少なくとも300nmの波長帯域において50dB以上である。
重量%で、Li2O:1.8wt%、Na2O:5.5wt%、K2O:5.7wt%、B2O3:18.2wt%、Al2O3:6.2wt%、SiO2:56.3wt%、Ag:0.24wt%、Cl:0.16wt%、Br:0.16wt%、CuO:0.01wt%、ZrO2:5.0wt%、TiO2:2.3wt%を有するガラス原料を白金るつぼに入れて約1350℃でプリメルトを行った。プリメルトで得られたガラスをキャンディ大に砕いてカレットとして、再び白金るつぼに入れて約1450℃で本メルトを行い、グラファイトの型に流し込んで成型し、徐冷炉に入れてアニールを行った後取り出し母材ガラスとした。
次に母材ガラスを、610℃で1時間核生成させた後、740℃で4時間粒成長の条件で熱処理を行った。析出したハロゲン化銀粒子AgCl,AgBrの平均粒径は60nmであった。また、このガラスの一部を2mm厚にしてhazeを測定したところ約10%であった。そして、熱処理した母材ガラスを70×250×2mm(幅×長さ×厚さ)の実験用プリフォームに成形した後に延伸工程を行う。
延伸工程では、ガラスの粘度が約1×1010〜1×1011ポイズとなるようにプリフォームを加熱して、引張応力が350Kg/cm2の大きさでプリフォームの幅方向でほぼ均一になるようにプリフォームを延伸し、延伸ガラスを作製した。この間、プリフォームの延伸部の外形が、延伸ガラスの長手方向に対して約11°の傾斜角度をなして収縮するようにメインヒータ10、サイドヒータ20、及びサブヒータ12、14、16の出力を制御した。この時プリフォームの送り速度は2.0mm/分、延伸ガラスの引取り速度は35mm/分であった。
この結果、延伸したハロゲン化銀粒子のアスペクト比は20:1であり、得られた延伸ガラスは幅17mmであった。また厚さは延伸ガラスの中央部分と両端部分とで、それぞれ0.495mm,0.499mmであり、ばらつきは0.01mm以下であった。
次に、延伸ガラスを水素ガス雰囲気に置き、470℃、4時間で還元処理を行った。還元後、消光比を測定したところ、16mm×16mmの領域において55±2dBであった。さらに偏光軸の傾きを延伸ガラス幅17mmの中央から±8mmで360°の角度で調べたところ、図3に示すように、全ての方角で0.4°(±0.20°)以下であった。なお、図中、横軸は延伸ガラスの幅方向の位置を示し、0は幅方向の中心を示す。また縦軸は、延伸ガラスの幅方向の中心における偏光軸を基準(傾き0°)とした場合の、幅方向の各点における偏光軸の傾きを示す。以下、図4−6についても同様である。
実施例1の母材ガラスに、実施例1と同じ熱処理を施し、同じ形状の実験用プリフォームを用意した。プリフォームに応力を、引取り装置を用いてプリフォームの長さ方向軸にほぼ平行に加えて延伸ガラスを作製した。本実施例では、プリフォームの延伸部の外形が、延伸ガラスの長手方向に対して約14°の傾斜角度をなして収縮するようにメインヒータ10、サイドヒータ20、及びサブヒータ12、14、16の出力を制御した。この時、プリフォームに加えた引っ張り応力と、プリフォーム送り速度と延伸ガラスの引取り速度は実施例1と同じにした。
この結果、得られた延伸ガラス幅は17mmであり、厚さは中央が0.475mm、両端部が0.486mmであり、ばらつきは0.02mm以下であった。実施例1と同じ条件で水素還元して消光比を測定したところ、16mm×16mmの領域において、55±3dBであった。また偏光軸の傾きは、図4に示すように、0.5°(±0.25°)以下であった。
<比較例1>
<比較例1>
次に、実施例1の母材ガラスに、実施例1と同じ熱処理を施し、同じ形状の実験用プリフォームを用意した。プリフォームに応力を、引取り装置を用いてプリフォームの長さ方向軸にほぼ平行に加えて延伸ガラスを作製した。本比較例では、プリフォームの延伸部の外形が、延伸ガラスの長手方向に対して約24°の傾斜角度をなして収縮するようにメインヒータ10、サイドヒータ20、及びサブヒータ12、14、16の出力を制御した。この時、プリフォームに加えた応力と、プリフォーム送り速度と延伸ガラスの引取り速度は実施例1と同じにした。
この結果、得られた延伸ガラス幅は17mmであった。厚さは中央が0.463mm、両端部が0.485mmであり、ばらつきは0.03mm以下であった。実施例1と同じ条件で水素還元して消光比を測定したところ、16mm×16mmの領域において、50±5dBであった。また偏光軸の傾きは、図5に示すように、0.6°(±0.30°)であった。
<比較例2>
<比較例2>
実施例1の母材ガラスに、実施例1と同じ熱処理を施し、同じ形状の実験用プリフォームを用意した。プリフォームに応力を、引取り装置を用いてプリフォームの長さ方向軸にほぼ平行に加えて延伸ガラスを作製した。本比較例では、プリフォームの延伸部の外形が、延伸ガラスの長手方向に対して約32°の傾斜角度をなして収縮するようにメインヒータ10、サイドヒータ20、及びサブヒータ12、14、16の出力を制御した。この時、プリフォームに加えた応力と、プリフォーム送り速度と延伸ガラスの引取り速度は実施例1と同じにした。
この結果、得られた延伸ガラス幅は16.6mmであり、断面が「S」字に曲がっていた。厚さは中央部分が0.446mmであり、両端部分はそれぞれ0.489mm、0.491mmであった。しかし、幅方向全体の厚さは「S」字に曲がり、山と谷が存在するため、約0.6mmであった。実施例1と同じ条件で水素還元を行い、消光比と偏光軸の傾きを測定した。その結果、消光比は14mm×14mmの領域において50±5dBであり、偏光軸の傾きは、図6に示すように、幅14mmにおいて0.8°(±0.40°)であった。
以上の説明から明らかなように、本実施形態によれば、延伸工程において、ハロゲン化金属粒子がガラス母材の幅方向に関してほぼ均一な応力で引き延ばされ、かつガラス母材の長手方向に均一に配向する。これにより、消光比の面内分布が少なく、偏光軸の向きが均一な偏光ガラス製品を製造できる。さらに、延伸部の幅方向に関する粘度差が小さい状態でガラス母材を延伸するので、延伸後の平面度の高い偏光ガラス製品を製造できる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
1 プリフォーム、3 延伸部、5 ガラス支持具、6 電気炉、7 延伸ガラス、10 メインヒータ、12、14、16 サブヒータ、20 サイドヒータ、40 引張手段、100 延伸装置
Claims (6)
- 均一な方向に配向して分散した延伸金属粒子を含む偏光ガラスの製造方法であって、
ハロゲン化金属粒子を内部に析出させた短冊形状のガラス母材を準備する母材準備工程と、
前記ガラス母材の周囲に配したヒータで前記ガラス母材を加熱しながら、前記ヒータよりも前記ガラス母材の長手方向の外側に設けられた引張手段で前記ガラス母材を長手方向に引っ張ることにより、前記ガラス母材と前記ハロゲン化金属粒子とを延伸する延伸工程と、
前記延伸工程で延伸された前記ガラス母材に含まれる前記ハロゲン化金属粒子を還元処理する工程と
を備え、
前記延伸工程において、前記ガラス母材が延伸する延伸部の外形が、前記ガラス母材の長手方向に対して5°から20°の傾斜角度をなして収縮するように前記ヒータの出力を制御する偏光ガラスの製造方法。 - 前記ヒータは、
前記ガラス母材の延伸部における短冊形状の正面から、前記延伸部の幅方向の中心付近を加熱するメインヒータと、
前記延伸部における前記短冊形状の側方から、前記延伸部の側面を加熱するサイドヒータと
を有し、
前記延伸工程において、前記ガラス母材の前記短冊形状の幅方向の中心の温度が前記幅方向の外側の温度と同等以下になるように、前記メインヒータ及び前記サイドヒータの出力を制御する、請求項1に記載の偏光ガラスの製造方法。 - 前記サイドヒータの出力は、前記メインヒータの出力よりも大きい、請求項2に記載の偏光ガラスの製造方法。
- 前記延伸工程において、前記ガラス母材の温度が前記ガラス母材のガラス転移点以上且つ軟化点温度以下となるように、前記ヒータの出力を制御する、請求項1に記載の偏光ガラスの製造方法。
- 前記延伸工程において、前記引張手段は、200kg/cm2以上500kg/cm2以下の応力であって、前記短冊形状の幅方向に関して均一な応力で前記ガラス母材を引っ張る、請求項1に記載の偏光ガラスの製造方法。
- 均一な方向に配向して分散した延伸金属粒子を含む偏光ガラスであって、
ハロゲン化金属粒子を内部に析出させた短冊形状のガラス母材を準備する母材準備工程と、
前記ガラス母材の周囲に配したヒータで前記ガラス母材を加熱しながら、前記ヒータよりも前記ガラス母材の長手方向の外側に設けられた引張手段で前記ガラス母材を長手方向に引っ張ることにより、前記ガラス母材と前記ハロゲン化金属粒子とを延伸する延伸工程と、
前記延伸工程で延伸された延伸ガラスに含まれる前記ハロゲン化金属粒子を還元処理する工程と
を備える製造方法で製造され、
前記延伸工程は、前記ガラス母材が延伸する延伸部の外形が、前記ガラス母材の長手方向に対して5°から20°の傾斜角度をなして収縮するように前記ヒータの出力を制御し、
前記延伸ガラスは、前記延伸ガラスの延伸方向に対する偏光軸の傾きのばらつきの範囲が0.5°以下である偏光ガラス。
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