JP6519119B2 - 偏光ガラス板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は光アイソレータに使用される偏光ガラス板の製造方法に関する。
光通信分野において、偏光ガラス板は偏光依存型光アイソレータに用いられている。光アイソレータは、LD(レーザダイオード)等の発振光を一方向にのみ通過させ、反射戻り光を遮断する装置であり、ファラデー回転子(ガーネット単結晶膜等)を2枚の偏光ガラス板で挟持してなる光学素子と、当該光学素子に磁界を印加するための磁気部材(磁石)と、から構成されている。
近年の市場ニーズから、光アイソレータは小型化への対応と、工程簡便化によるコストダウンとを目的に、例えば10mm角程度のファラデー回転子と、略同サイズの偏光ガラス板とを貼り合わせて大型の光学素子を作製した後、0.5〜2.0mm角のチップに切断するという製造方法が採用されている。
ところで、偏光ガラス板は、ガラスマトリクス中に延伸した銀や銅等の金属粒子が配向して分散されてなる構造を有している。種々の方向に振動する光が偏光ガラス板に入射した場合、その振動方向によって透過量が異なることが知られている。例えば、延伸金属粒子の延伸方向に対して平行方向に振動する光は、延伸金属粒子に吸収されやすく、透過量は最小となる。一方、延伸金属粒子の延伸方向に対して垂直方向に振動する光は、延伸金属粒子に吸収されにくく、透過量は最大となる。偏光ガラス板を透過する光の最大透過量と最小透過量の比は消光比と呼ばれ、消光比が大きいほど偏光ガラス板としての特性に優れている。
一般に、偏光ガラス板は次のようにして製造される。まず、銀や銅等の金属元素とハロゲン元素を含有する原料バッチを調製し、溶融、成形することによりガラス板を作製する。得られたガラス板を加熱処理することにより、内部にハロゲン化金属粒子を析出させ、ガラスプリフォーム板を得る。ガラスプリフォーム板を加熱しながら延伸成形することにより、ガラスマトリクス中に延伸ハロゲン化金属粒子が配向して分散されてなるガラス部材を得る。さらに、ガラス部材に還元処理を施すことにより、延伸ハロゲン化金属粒子を還元して延伸金属粒子に変化させ、偏光ガラス板を得る。
上記の製造方法において、各延伸ハロゲン化金属粒子の間で角度ばらつき(以下、「偏光軸ずれ」ともいう)が生じる傾向がある。具体的には、ガラスプリフォーム板の延伸成形によって得られたガラス部材の幅方向において、中央部から両端部にかけて、延伸ハロゲン化金属粒子の角度が、延伸成形方向と平行な方向から徐々に傾く傾向がある。偏光軸ずれが大きくなると、偏光ガラス板の消光比の面内ばらつきが大きくなる傾向がある。そのため、上記の通り大型の光学素子を作製して切断した際に、各チップ間の消光比のばらつきが大きくなったり、場合によっては所望の消光比に達しない不良チップが生じたりして、歩留りが低下するおそれもある。
偏光ガラス板における偏光軸ずれを抑制するために、種々の方法が提案されている。特許文献1には、ガラスプリフォーム板を加熱軟化させた状態で荷重を付加することにより所定方向に変形させる工程を、180°異なる方向から複数回繰り返す方法が記載されている。また、特許文献2には、ガラスプリフォーム板の移動速度や、延伸されたガラスシートの引き取り速度を適宜調整する方法が記載されている。
国際公報第2011/122500号公報 特許第4685901号公報
特許文献1に記載の方法は、工程が複雑であり、製造コストが高くなりやすい。一方、特許文献2に記載の方法は比較的容易に行うことが可能であるが、偏光軸ずれの低減効果が不十分である。
以上に鑑み、本発明は、偏光軸ずれが小さい偏光ガラス板を容易に製造する方法を提供することを目的とする。
本発明の偏光ガラス板の製造方法は、ガラスマトリクス中に延伸金属粒子が配向して分散されてなる偏光ガラス板を製造するための方法であって、ハロゲン化金属粒子を含有する所定幅Wを有するガラスプリフォーム板を加熱しながら延伸成形することにより、ガラスマトリクス中に延伸ハロゲン化金属粒子が配向して分散されてなるガラス部材を得る延伸成形工程、及び、ガラス部材に還元処理を施すことにより、延伸ハロゲン化金属粒子を還元して偏光ガラス板を得る還元工程、を含み、ガラスプリフォーム板の延伸成形工程において、延伸成形中のガラスプリフォーム板の形状が下記式(1)の関係を満たすように、加熱しながら延伸成形することを特徴とする。
/W≧1.0 ・・・(1)
=ガラスプリフォーム板の幅が、元の幅Wの0.8倍に変形した部分から0.2倍に変形した部分の間の長さ
=ガラスプリフォーム板の元の幅Wの0.5倍の長さ
本発明者等が検討した結果、ガラスプリフォーム板の延伸成形工程において、ガラスプリフォーム板の幅が、元の幅Wの0.8倍に変形した部分から0.2倍に変形した部分の間(軟化変形部)が上記の形状となるように制御することによって、延伸ハロゲン化金属粒子、さらには延伸金属粒子が延伸成形方向に配向しやすくなり、偏光軸ずれを低減できることを見出した。
本発明の偏光ガラス板の製造方法において、式(1)におけるLの値が60mm以上であることが好ましい。
本発明の別の局面の偏光ガラス板の製造方法は、ガラスマトリクス中に延伸金属粒子が配向して分散されてなる偏光ガラス板を製造するための方法であって、ハロゲン化金属粒子を含有する所定幅Wを有するガラスプリフォーム板を加熱しながら延伸成形することにより、ガラスマトリクス中に延伸ハロゲン化金属粒子が配向して分散されてなるガラス部材を得る延伸成形工程、及び、ガラス部材に還元処理を施すことにより、延伸ハロゲン化金属粒子を還元して偏光ガラス板を得る還元工程、を含み、ガラスプリフォーム板の延伸成形工程において、延伸成形中のガラスプリフォーム板の形状が下記式(2)の関係を満たすように、加熱しながら延伸成形することを特徴とする。
/W≧0.5 ・・・(2)
=前記ガラスプリフォーム板の幅が、元の幅Wの0.8倍に変形した部分から0.5倍に変形した部分の間の長さ
=前記ガラスプリフォーム板の元の幅Wの0.5倍の長さ
本発明の偏光ガラス板の製造方法において、式(2)におけるLの値が30mm以上であることが好ましい。
本発明の偏光ガラス板の製造方法において、ガラスプリフォーム板の幅Wが100mm以上であることが好ましい。
本発明の偏光ガラス板の製造方法において、延伸成形中の前記ガラスプリフォーム板の幅が、元の幅Wの0.8倍に変形した部分から0.2倍に変形した部分の間において、前記ガラスプリフォーム板の粘度が10〜1011dPa・sの範囲内となるように加熱することが好ましい。
ガラスプリフォーム板の軟化変形部における粘度が10dPa・s以上となるように加熱温度を低くすることにより、ハロゲン化金属粒子の球状化を抑制しやすくなる。一方、ガラスプリフォーム板の粘度が1011dPa・s以下となるように加熱温度を高くすることにより、ガラスプリフォーム板を十分に軟化変形させ、軟化変形部を上記式(1)の形状としやすくなる。以上のように、軟化変形部のガラスプリフォーム板の粘度を所定範囲内に規制することにより、ハロゲン化金属粒子の球状化を抑制しながら、軟化変形部を上記式(1)の形状とすることができ、偏光ガラス板における偏光軸ずれを抑制しやすくなる。
本発明の偏光ガラス板の製造方法において、金属が銀または銅であることが好ましい。
本発明の偏光ガラス板は、ハロゲン化金属粒子を含有するガラスプリフォーム板を加熱しながら延伸成形した後、還元処理を施すことにより、ガラスマトリクス中に延伸金属粒子が配向して分散されてなる偏光ガラス板であって、延伸成形方向と垂直な方向の幅8mmにおける延伸金属粒子の角度ばらつきが0.0065°/mm以内であることを特徴とする。
本発明の偏光ガラス板は、近赤外域における消光比が40dB以上であることが好ましい。
本発明の偏光ガラス板は、延伸成形方向と垂直な方向の幅8mmにおける消光比の面内ばらつきが±5dB以内であることが好ましい。
本発明の光アイソレータは、上記の偏光ガラス板を用いたことを特徴とする。
本発明によれば、偏光軸ずれが小さい偏光ガラス板を容易に製造することが可能となる。
本発明の一実施形態におけるガラスプリフォーム板の延伸成形工程を示す模式的正面図である。 実施例において、偏光軸ずれ及び消光比の測定方法を説明するための偏光ガラス板の模式的平面図である。
以下、本発明の実施形態を図面を用いて詳細に説明する。
(ガラスプリフォーム板の準備)
まず、延伸成形母材となるガラスプリフォーム板を準備する。ガラスプリフォーム板を構成するガラスは、ハロゲン化金属粒子がガラス中で十分軟化変形する温度域(例えば480℃以上)において所定の粘度を有するものが選択される。それにより、ハロゲン化金属粒子を所望の長さに延伸することが可能となる。そのようなガラスとしては、ホウケイ酸ガラスが挙げられる。
ガラスプリフォーム板は次のようにして製造することができる。まず、所望のガラス組成が得られるように原料を調合する。後の工程でハロゲン化金属粒子をガラスマトリクス中に析出させるため、原料としては、ハロゲン元素原料と金属元素原料を含有している。ハロゲン元素としては塩素、臭素またはヨウ素が使用可能である。ただし、ヨウ素は環境負荷が大きいため、塩素または臭素を用いることが好ましい。また、金属元素としては、所望の消光比が得られやすい観点から、銀または銅を使用することが好ましい。なお、臭化銀は融点が塩化銀より融点が低く、延伸成形工程で球状化しやすいため、金属粒子として銀を用いる場合は、ハロゲン元素としては塩素を用いることが好ましい。
次に、原料を所定温度で均質になるまで溶融し、その後、溶融ガラスを板状に成形する。板状に成形したガラスに対し、例えば600〜700℃で加熱処理を施すことにより、ガラスマトリクス中にハロゲン化金属粒子を析出させる。なお、加熱処理時の雰囲気は特に限定されず、大気雰囲気でも構わない。その後、必要に応じて切断や研磨等の加工を施すことにより、所定幅を有するガラスプリフォーム板を得る。
ガラスプリフォーム板の幅は、目的とする偏光ガラス板のサイズに応じて適宜選択される。例えば、ガラスプリフォーム板の幅は、目的とする偏光ガラス板の幅の2.5倍以上であることが好ましく、5倍以上であることがより好ましく、10倍以上であることがさらに好ましく、12倍以上であることが特に好ましく、15倍以上であることが最も好ましい。上限は特に限定されないが、大きすぎると、偏光ガラス板面内における偏光軸ずれが大きくなる傾向がある。よって、ガラスプリフォーム板の幅は、目的とする偏光ガラス板の幅の50倍以下であることが好ましく、30倍以下であることがより好ましく、25倍以下であることがさらに好ましい。具体的には、ガラスプリフォーム板の幅は100〜500mmであることが好ましく、120〜300mmであることがより好ましく、150〜250mmであることがさらに好ましい。
ガラスプリフォーム板の厚みは特に限定されないが、小さすぎると、偏光ガラス板の機械的強度が低下する傾向があり、一方、大きすぎると、偏光ガラス板の厚みが大きくなって光透過率が低下しやすくなったり、デバイスが大型化する傾向がある。以上に鑑み、ガラスプリフォーム板の厚みは、目的とする偏光ガラス板の厚みの10〜50倍であることが好ましく、12〜30倍であることがより好ましく、15〜25倍であることがさらに好ましい。具体的には、ガラスプリフォーム板の厚みは0.5〜10mmであることが好ましく、1〜5mmであることがより好ましい。
(ガラスプリフォーム板の延伸成形)
ガラスプリフォーム板を加熱しながら延伸成形することにより、ガラスマトリクス中に延伸ハロゲン化金属粒子が配向して分散されてなるガラス部材を得る。図1は、本実施形態におけるガラスプリフォーム板の延伸成形工程を示す模式的正面図である。ガラスプリフォーム板1は発熱体2による加熱により軟化し、引張りローラ3により延伸される。これにより、ハロゲン化金属粒子4も延伸成形方向Dの方向に延伸され、ガラスマトリクス中に延伸ハロゲン化金属粒子4’が配向して分散されてなるガラス部材5を得る。図1において、発熱体2は円柱状であり、それぞれ紙面と垂直な方向に設置されている。また、発熱体2は、ガラスプリフォーム板1の前面側及び裏面側にも複数配置されている(図示せず)。例えば、各発熱体2はやぐら状に配置することが好ましい。
ガラスプリフォーム板1の延伸成形工程において、延伸成形中のガラスプリフォーム板1の形状は下記式(1)の関係を満たす。
/W≧1.0 ・・・(1)
=ガラスプリフォーム板1の幅が、元の幅Wの0.8倍に変形した部分aから0.2倍に変形した部分bの間(軟化変形部S)の長さ
=ガラスプリフォーム板1の元の幅Wの0.5倍の長さ
上記式(1)において、L/Wは1.2以上であることがより好ましく、1.5以上であることがさらに好ましく、1.8以上であることが特に好ましく、2以上であることが最も好ましい。L/Wが小さすぎると、偏光ガラス板における偏光軸ずれが大きくなる傾向がある。上限は特に限定されないが、大きすぎると、設備が大型化する傾向があるため、現実的にはL/Wは10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましい。
軟化変形部Sの長さLの値は上記式(1)の関係を満たすように適宜選択されるが、具体的には、Lの値は60mm以上であることが好ましく、100mm以上であることがより好ましく、120mm以上であることがさらに好ましく、150mm以上であることが特に好ましい。Lの値が小さすぎると、偏光ガラス板における偏光軸ずれが大きくなる傾向がある。
また別の局面として、ガラスプリフォーム板1の延伸成形工程において、延伸成形中のガラスプリフォーム板1の形状は下記式(2)の関係を満たす。
/W≧0.5 ・・・(2)
=ガラスプリフォーム板1の幅が、元の幅Wの0.8倍に変形した部分aから0.5倍に変形した部分cの間(軟化変形部S)の長さ
=ガラスプリフォーム板1の元の幅Wの0.5倍の長さ
上記式(2)において、L/Wは0.5以上であることがより好ましく、0.8以上であることがさらに好ましく、1.0以上であることが特に好ましい。L/Wが小さすぎると、偏光ガラス板における偏光軸ずれが大きくなる傾向がある。上限は特に限定されないが、大きすぎると、設備が大型化する傾向があるため、現実的にはL/Wは20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。
軟化変形部Sの長さLの値は上記式(2)の関係を満たすように適宜選択されるが、具体的には、Lの値は30mm以上であることが好ましく、50mm以上であることがより好ましく、60mm以上であることがさらに好ましく、75mm以上であることが特に好ましい。Lの値が小さすぎると、偏光ガラス板における偏光軸ずれが大きくなる傾向がある。
最上段の発熱体2と最下段の発熱体2の延伸成形方向Dにおける中心間距離(以下、「発熱部の長さ」という)は、ガラスプリフォーム板1の幅Wに応じて適宜調整すればよい。例えば、発熱部の長さはガラスプリフォーム板1の幅Wの1.5倍以上であることが好ましく、2倍以上であることがより好ましく、2.5倍以上であることがさらに好ましい。上限は特に限定されないが、発熱部の長さが大きすぎる場合は、エネルギーロスにつながるため、ガラスプリフォーム板1の幅Wの10倍以下であることが好ましく、8倍以下であることがより好ましい。具体的には、発熱部の長さは250〜1000mmであることが好ましく、300〜800mm以上であることがより好ましく、400〜800mmであることがさらに好ましい。
ガラスプリフォーム板1の軟化変形部Sにおいて、ガラスプリフォーム板1の粘度が10〜1011dPa・sとなるように加熱することが好ましく、10〜1010dPa・sとなるように加熱することがより好ましい。軟化変形部Sにおけるガラスプリフォーム板1の粘度が低すぎると、ハロゲン化金属粒子4の粘度も低下して球状化してしまい、所望の長さの延伸ハロゲン化金属粒子4’が得られにくくなる。一方、軟化変形部Sにおけるガラスプリフォーム板1の粘度が高すぎると、ガラスプリフォーム板1が十分に軟化変形せず、延伸成形中の形状が上記式(1)の関係を満たしにくくなる。また、場合によってはガラスプリフォーム1が破断してしまうおそれがある。
(ガラス部材の還元)
上記で得られたガラス部材5に還元処理を施すことにより、延伸ハロゲン化金属粒子4’を還元して延伸金属粒子とする。還元処理は、例えば水素雰囲気中で加熱することにより行う。通常、ガラス部材5の表層(例えば、深さ10〜100μm、さらには20〜80μm)に存在する延伸ハロゲン化金属粒子4’のみ還元して延伸金属粒子に変化させればよい。
偏光ガラス板の消光波長域は、延伸金属粒子の長さに応じて変化する。よって、目的とする消光波長域に応じて、延伸金属粒子の長さを適宜調整すればよい。延伸金属粒子の長さは例えば50〜300nm、さらには80〜200nmの範囲で適宜調整される。また、延伸金属粒子のアスペクト比は例えば5〜20、さらには8〜15の範囲で適宜調整される。
還元処理を施したガラス部材5に対し、切断等の加工を施すことにより所望のサイズの偏光ガラス板を得る。なお、必要に応じて、偏光ガラス板の表面に誘電体多層膜等からなる反射防止膜等の機能性膜を形成してもよい。
(偏光ガラス板)
偏光ガラス板の大きさは例えば5mm角以上であることが好ましく、10mm角以上であることがより好ましく、15mm角以上であることがさらに好ましく、20mm角以上であることが特に好ましい。既述の通り、近年では大型の偏光ガラス板及びファラデー回転子を用いて大型の光アイソレータを作製した後、0.5〜2.0mm角のチップに切断するという製造方法が採用されているため、偏光ガラス板が大きいほど、大量生産が可能となりコストダウンを図ることが可能となる。ただし、偏光ガラス板が大きすぎると、面内の偏光軸ずれが大きくなり、歩留りが低下する傾向がある。そのため、偏光ガラス板の大きさは40mm角以下であることが好ましく、30mm角以下であることがより好ましい。
偏光ガラス板の厚みは特に限定されないが、小さすぎると、機械的強度が低下する傾向があり、一方、大きすぎると、光透過率が低下しやすくなったり、デバイスが大型化する傾向がある。以上に鑑み、偏光ガラス板の厚みは0.05〜1mmであることが好ましく、0.1〜0.5mmであることがより好ましい。
延伸成形方向Dと垂直な方向において、偏光ガラス板の幅8mmにおける延伸金属粒子の角度ばらつき(偏光軸ずれ)は0.0065°/mm以内であることが好ましく、0.0060°/mm以内であることがより好ましく、0.0055°/mm以内であることがさらに好ましく、0.0050°/mm以内であることが特に好ましい。偏光ガラス板の偏光軸ずれが大きすぎると、偏光ガラス板面内における消光比ばらつきが大きくなり、歩留りが低下する傾向がある。
偏光ガラス板の消光比は、赤外レーザーの波長1310nm及び/または1550nmにおいて40dB以上であることが好ましく、45dB以上であることがより好ましく、50dB以上であることがさらに好ましい。なお、消光比は以下の式(3)により算出される。
消光比(dB)=10×log10(P/P) ・・・(3)
=最大光透過量
=最小光透過量
なお、偏光ガラス板は、延伸成形方向と垂直な方向の幅8mmにおける消光比の面内ばらつきが±5dB以内であることが好ましく、±3dB以内であることがより好ましく、±2.5dB以内であることがさらに好ましい。
上記のようにして得られた偏光ガラス板は、略同サイズのファラデー回転子と貼り合わせることにより光アイソレータとして使用される。具体的には、ファラデー回転子を2枚の偏光ガラス板で挟持して貼り合わせ、必要に応じて所望の大きさ(例えば0.5〜2.0mm角)に切断することにより光アイソレータとして使用される。なお、高性能化を図るため、複数枚のファラデー回転子と3枚以上の偏光ガラス板を交互に積層して光アイソレータを作製しても良い。
以下に、本発明の偏光ガラス板の製造方法を実施例を用いて説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
表1は本発明の実施例及び比較例を示している。
各試料は次のようにして作製し、評価に供した。
(a)ガラスプリフォーム板の作製
質量%で、SiO 60%、B 18%、Al 8.5%、LiO 2%、NaO 2.5%、KO 9%、Ag 0.3%、Cl 0.5%を有するホウケイ酸ガラス(軟化点650℃)となるように原料バッチを調製した。原料バッチを溶融し、板状に成形した。板状ガラスに対し、675℃で2時間熱処理を施すことにより、ガラス内部に塩化銀粒子を析出させた。その後、板状ガラスに加工を施して幅170mm、厚み5mmのガラスプリフォーム板を得た。
(b)ガラスプリフォーム板の延伸成形工程
図1に準ずる装置を用いて、ガラスプリフォーム板を10dPa・sの粘度に相当する温度付近で加熱しながら延伸成形することにより、ガラスマトリクス中に延伸塩化銀粒子が配向して分散されてなるガラス部材(幅17mm)を得た。延伸成形条件を表1に示す。
(c)ガラス部材の還元処理工程
上記で得られたガラス部材を厚み0.2mmとなるように研磨加工した後、450℃の水素雰囲気下で24時間還元処理を施した。その結果、ガラス部材の表層に存在する延伸塩化銀粒子が還元されて延伸銀粒子となった。その後、ガラス部材を10mm角に切断することにより偏光ガラス板を得た。
(d)偏光ガラス板の特性評価
偏光ガラス板における偏光軸ずれ及び消光比を以下のようにして測定した。なお、図2は各特性の測定方法を説明するための偏光ガラス板の模式的平面図であり、P0は偏光ガラス板の中心を示し、P1及びP2は、P0から延伸成形方向と垂直な方向にそれぞれ4mm左右に離れた位置を示す。
偏光ガラス板を回転ステージ上に載置し、近赤外域波長発振レーザーの発振光(波長1310nm及び1550nm)をグラントムソンプリズムを通して直線偏光にし、P0、P1及びP2に照射した。各測定ポイントを中心に回転ステージを回転させながら、偏光ガラス板を透過した近赤外光の強度を光パワーメータを用いて測定した。測定された光強度が最大及び最小となった角度を読み取った。
P1及びP2において、それぞれ光強度が最小となった角度を各位置における偏光軸角度(延伸銀粒子の角度)とし、各偏光軸角度の差を8mmで除した値を偏光軸ずれとして評価した。
P0、P1及びP2において、光強度の最大値と最小値の比(光透過量の最大値と最小値の比に相当)を求め、上記式(2)に従い消光比を算出した。なお、消光比の面内ばらつきは下記式(4)に従って求めた。
面内ばらつき=±(消光比の最大値−消光比の最小値)/2 ・・・(4)
表1から明らかなように、実施例1及び2では、ガラスプリフォーム板の延伸成形工程において、ガラスプリフォーム板の0.5倍の長さに対するガラスプリフォーム板の軟化変形部Sの長さ(L/W)が1.65以上、ガラスプリフォーム板の0.5倍の長さに対するガラスプリフォーム板の軟化変形部Sの長さ(L/W)が0.56以上と大きいため、偏光ガラス板の偏光軸ずれが幅8mmにおいて0.0060°/mm以下と小さかった。また、消光比の面内ばらつきが±5dB以内と小さかった。一方、比較例1及び2では、L/Wが0.97以下、L/Wが0.48以下と小さかったため、偏光ガラス板の偏光軸ずれが幅8mmにおいて0.0125°/mm以上と大きかった。また、消光比の面内ばらつきが±7dB以上と大きく、また消光比の値が面内の一部において40dB未満となった。
1 ガラスプリフォーム板
2 発熱体
3 引張りローラ
4 ハロゲン化金属粒子
4’ 延伸ハロゲン化金属粒子
5 ガラス部材

Claims (7)

  1. ガラスマトリクス中に延伸金属粒子が配向して分散されてなる偏光ガラス板を製造するための方法であって、
    ハロゲン化金属粒子を含有する所定幅Wを有するガラスプリフォーム板を加熱しながら延伸成形することにより、ガラスマトリクス中に延伸ハロゲン化金属粒子が配向して分散されてなり、且つ、前記所定幅W の0.2倍以下の幅を有するガラス部材を得る延伸成形工程、及び、
    前記ガラス部材に還元処理を施すことにより、前記延伸ハロゲン化金属粒子を還元して偏光ガラス板を得る還元工程、
    を含み、
    前記ガラスプリフォーム板の延伸成形工程において、延伸成形中の前記ガラスプリフォーム板の形状が下記式(1)の関係を満たすように、加熱しながら延伸成形することを特徴とする偏光ガラス板の製造方法。
    /W≧1.0 ・・・(1)
    =前記ガラスプリフォーム板の幅が、元の幅Wの0.8倍に変形した部分から0.2倍に変形した部分の間の長さ
    =W×0.5
  2. 前記式(1)におけるLの値が60mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の偏光ガラス板の製造方法。
  3. ガラスマトリクス中に延伸金属粒子が配向して分散されてなる偏光ガラス板を製造するための方法であって、
    ハロゲン化金属粒子を含有する所定幅Wを有するガラスプリフォーム板を加熱しながら延伸成形することにより、ガラスマトリクス中に延伸ハロゲン化金属粒子が配向して分散されてなり、且つ、前記所定幅W の0.5倍以下の幅を有するガラス部材を得る延伸成形工程、及び、
    前記ガラス部材に還元処理を施すことにより、前記延伸ハロゲン化金属粒子を還元して偏光ガラス板を得る還元工程、
    を含み、
    前記ガラスプリフォーム板の延伸成形工程において、延伸成形中の前記ガラスプリフォーム板の形状が下記式(2)の関係を満たすように、加熱しながら延伸成形することを特徴とする偏光ガラス板の製造方法。
    0.5≦/W ≦0.71 ・・・(2)
    =前記ガラスプリフォーム板の幅が、元の幅Wの0.8倍に変形した部分から0.5倍に変形した部分の間の長さ
    =W×0.5
  4. 前記式(2)におけるLの値が30mm以上であることを特徴とする請求項3に記載の偏光ガラス板の製造方法。
  5. 前記ガラスプリフォーム板の幅Wが100mm以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の偏光ガラス板の製造方法。
  6. 延伸成形中の前記ガラスプリフォーム板の幅が、元の幅Wの0.8倍に変形した部分から0.2倍に変形した部分の間において、前記ガラスプリフォーム板の粘度が10〜1011dPa・sの範囲内となるように加熱することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の偏光ガラス板の製造方法。
  7. 前記金属が銀または銅であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の偏光ガラス板の製造方法。
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