JP2004086100A - 偏光ガラス及びその製造方法 - Google Patents

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前田 一男
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Abstract

【課題】可視領域や赤外領域の広帯域で高消光比となる偏光特性を発揮する偏光ガラスを提供するものである。
【解決手段】所定粒径分布を有するハロゲン化金属粒子群が混合せしめられたガラスを延伸した後にハロゲン化金属粒子を還元して金属とすることにより所定の偏光特性が発揮される偏光ガラスであって、前記延伸前の所定粒径分布を有するハロゲン化金属粒子群は、その粒径分布の標準偏差が少なくとも20nmのものである。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、偏光ガラス及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
偏光ガラスは、400nm〜700nm帯の可視領域において、青色半導体レーザーの実用化に伴い、高密度光記録装置やLCDプロジェクターに用いられる偏光素子として期待されている。
【0003】
また、偏光ガラスは、赤外領域において、光通信用途として、特に偏波依存型の光アイソレーターに使用されている。
【0004】
また、偏光ガラスは、アイソレーションする半導体レーザーの波長によって種々のものがあり、代表的なものに1310nm用,1480nm用,1550nm用がある。
【0005】
ところで、近年光通信におけるWDM伝送技術では、Cバンド(1530nm〜1565nm)だけでは十分な容量を提供することができないことから、Lバンド(1565nm〜1625nm),Sバンド(1460nm〜1530nm)へ伝送帯域が拡大し、これに伴い、偏光ガラスにも広帯域化が求められている。更に、コストダウンの面からも広帯域化の要求があり、その方策の一つとして、1300nm帯〜1600nm帯まで1種類の偏光ガラスを用いることが検討されている。それに加えて、光通信用途では、偏光ガラスに50dB以上の高い消光比が必要である。
【0006】
このように偏光ガラスには、可視領域及び赤外領域共に広帯域化と高消光比化が求められている。
【0007】
一方、広帯域と高消光比を実現する方法として「USP6,221,480」には、偏光ガラス製造における水素を用いた還元工程において、少なくとも10気圧で水素還元を行う方法が開示されている。
【0008】
しかし、この方法は約250℃〜約400℃の温度下で行われるため、水素が爆発する可能性があり非常に危険である。更に、爆発を防ぐために装置の強度を高くする必要がある上に、爆発に備えて装置自体を防爆ブースに入れる必要があるなどの問題があった。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するもので、可視領域や赤外領域の広帯域で高消光比となる偏光特性を発揮する偏光ガラスを提供するものである。
【0010】
また、可視領域や赤外領域の広帯域で高消光比となる偏光特性を発揮する偏光ガラスを安全性の高い方法で製造できる技術を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨を説明する。
【0012】
所定粒径分布を有するハロゲン化金属粒子群が混合せしめられたガラスを延伸した後にハロゲン化金属粒子を還元して金属とすることにより所定の偏光特性が発揮される偏光ガラスであって、前記延伸前の所定粒径分布を有するハロゲン化金属粒子群は、その粒径分布の標準偏差が少なくとも20nmのハロゲン化金属粒子群であることを特徴とする偏光ガラスに係るものである。
【0013】
また、請求項1記載の偏光ガラスにおいて、ハロゲン化金属粒子として銀若しくは銅のハロゲン化物が採用されていることを特徴とする偏光ガラスに係るものである。
【0014】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の偏光ガラスにおいて、該偏光ガラスは、少なくとも300nmの帯域で少なくとも50dBの消光比を発揮するものであることを特徴とする偏光ガラスに係るものである。
【0015】
また、請求項1〜3いずれか1項に記載の偏光ガラスにおいて、延伸前のハロゲン化金属粒子の粒径が20nm乃至500nmであることを特徴とする偏光ガラスに係るものである。
【0016】
また、ハロゲン化金属粒子を金属に還元して所定の偏光特性を発揮する偏光ガラスを製造する方法であって、ガラス原料とハロゲン化金属とを溶解混合せしめた後に固化させて第一母材ガラスを形成し、この第一母材ガラスを熱処理してハロゲン化金属粒子を粒径分布を有し且つその粒径分布の標準偏差が少なくとも20nmとなるように析出せしめることにより第二母材ガラスを形成し、この第二母材ガラスを延伸することにより前記粒径分布のハロゲン化金属粒子を延伸し、この延伸されたハロゲン化金属粒子を金属に還元して偏光ガラスを製造することを特徴とする偏光ガラスの製造方法に係るものである。
【0017】
また、請求項5記載の偏光ガラスの製造方法において、第一母材ガラスを熱処理して所定粒径のハロゲン化金属粒子を析出せしめる際、第一母材ガラスの温度を不均一にすることで前記所定粒径のハロゲン化金属粒子が、粒径分布を有し且つその粒径分布の標準偏差が少なくとも20nmとなるようにすることを特徴とする偏光ガラスの製造方法に係るものである。
【0018】
また、請求項5,6いずれか1項に記載の偏光ガラスの製造方法において、第一母材ガラスを熱処理することにより所定粒径のハロゲン化金属粒子を析出せしめる際、該第一母材ガラスの表面と内部とで温度が異なる状態となるように加熱することを特徴とする偏光ガラスの製造方法に係るものである。
【0019】
また、請求項5〜7いずれか1項に記載の偏光ガラスの製造方法により、少なくとも600nmの帯域で少なくとも40dBの消光比を発揮する偏光ガラスを製造することを特徴とする偏光ガラスの製造方法に係るものである。
【0020】
【発明の作用及び効果】
偏光ガラスの消光比は、延伸金属粒子のアスペクト比(長径と短径の比)に依存する。また帯域は、延伸金属粒子群のアスペクト比分布に依存する。延伸金属粒子群のアスペクト比分布が広ければ帯域は広くなるし、狭ければ帯域も狭くなる。
【0021】
延伸金属粒子のアスペクト比は延伸応力によって変化する。そのため、析出したハロゲン化金属粒子の粒径が同じであれば、アスペクト比は変化するが、その分布は同じままである。即ち、消光比は変化するが帯域は変わらない。従って、ハロゲン化金属粒子群のアスペクト比に分布がなければ、広帯域の偏光ガラスを得ることは難しい。
【0022】
本発明の偏光ガラスは、ハロゲン化金属粒子群として粒径分布を有するハロゲン化金属粒子群を採用しているので、その後の延伸工程において、種々の長さにハロゲン化金属粒子が引き伸ばされ、通常の加熱水素還元処理によってもアスペクト比の分布を持った偏光ガラスを製造できる。このように、アスペクト比に分布が与えられた偏光ガラスは広帯域の特性を示すことができる。
【0023】
ハロゲン化金属粒子群の粒径分布の標準偏差が少なくとも20nmである偏光ガラスは、400nm〜700nmの可視領域若しくは、1300nm〜1650nmの赤外領域において代表される少なくとも300nmの帯域において、少なくとも50dBの消光比となる偏光特性を発揮する。
【0024】
尚、粒径の分布を絶対値の範囲で考える方法は、実際には絶対値の範囲内に全てが収まることがなく、非現実的である(仮に、範囲を非常に大きくすれば全てが収まることになるが、これでは偏光ガラスの特性を特定することができない。)。また、粒径の分布を平均値で考える方法は、分布が左右非対称の場合(正規分布でない場合)、結局は分布を適正に把握することはできず、これでも偏光ガラスの特性を特定することができない。
【0025】
本発明は上述のようにするから、可視領域や赤外領域の広帯域で高消光比となる偏光特性を発揮する実用性に秀れた偏光ガラスとなる。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施例について、以下に説明する。
【0027】
本実施例の偏光ガラスは、「USP4,479,819」に開示された偏光ガラス製造方法(以下、従来法という。)を利用して製造できる。
【0028】
従来法では、銀、銅、または銅−カドミウムなどのハロゲン化金属原料をSiO、B、Alなどから成るガラス原料と共に溶解し、第一母材ガラスを作製する。次に第一母材ガラスを熱処理することによって、所定の大きさのハロゲン化金属粒子を析出させた第二母材ガラスを作製する。そして、第二母材ガラス(ハロゲン化金属粒子析出ガラス)を加熱し且つ応力を加えてハロゲン化金属粒子を延伸し、水素雰囲気で加熱還元処理することによって、延伸ハロゲン化金属粒子を使用波長に適したアスペクト比を持った延伸金属粒子にしている。
【0029】
本実施例では、従来法の工程を母材ガラスを熱処理する工程を除いて変更なしに実施することができる。
【0030】
また、本実施例のハロゲン化金属粒子群の粒度分布及びその粒度分布の標準偏差が少なくとも20nmであるという特性は、例えば、母材ガラスを熱処理する際に、母材ガラスに温度分布をつけ、析出されるハロゲン化金属粒子の粒径に分布を形成することで達成できる。
【0031】
以下、更に詳述する。
【0032】
本実施例は、ガラス原料とハロゲン化金属原料とを溶解混合せしめた後に固化させて第一母材ガラスを形成し、この第一母材ガラスを熱処理して所定粒径のハロゲン化金属粒子を析出せしめることにより第二母材ガラスを形成し、この第二母材ガラスを延伸することにより前記所定粒径のハロゲン化金属粒子を延伸し、続いて、該延伸されたハロゲン化金属粒子を金属に還元して所定の偏光特性を発揮する偏光ガラスを製造する方法であって、前記第一母材ガラスを熱処理して前記所定粒径のハロゲン化金属粒子を析出せしめる際、ハロゲン化金属粒子群が、粒径分布を有し且つその粒径分布の標準偏差が少なくとも20nmとなるようにするものである。
【0033】
ガラス原料としては、「USP4,190,451」及び「USP5,252,524」に開示されたものを例示することができる。この組成を有するガラスを溶解するに先立ち、先ずプリメルトを行ってガラスを作製する。次にプリメルトしたガラスをくだいてカレットにする。そして、カレットを用いて本メルトを行うことによって第一母材ガラスを作製する。プリメルトの際、ハロゲン化金属原料を溶解混合する。カレットを溶解することによって溶解時のノウハウが減り、良質な第一母材ガラスを得ることができる。また、ハロゲンは溶融中に揮発しやすいので、本メルト時に蓋のついた溶解ルツボを別の蓋付き容器に入れて溶解を行えば、揮発による組成ずれを防ぐことができる。
【0034】
溶解後の第一母材ガラスは電気炉内で熱処理され、ハロゲン化金属粒子が析出される。ハロゲン化金属の存在状態については、まだ解明されていないが、母材ガラス中に金属イオンとハロゲンイオンが別々に存在しており、そこに光や熱エネルギーを与えるとハロゲン化金属粒子になると考えられている。
【0035】
このハロゲン化金属粒子の粒径は熱処理時のガラス温度に依存しており、ガラス温度が低いと小さい粒径が、高いと大きい粒径が析出する。熱処理温度は、好ましくは、640℃〜800℃である。
【0036】
偏光ガラスの特性に影響を与えるアスペクト比は、延伸工程において引き伸ばされたハロゲン化金属粒子、若しくは還元処理後の延伸金属粒子の長径と短径の比である。従って、偏光ガラスの特性を安定化させるためには、析出したハロゲン化金属粒子群の粒径は揃っている方が好ましいとされ、そのため、熱処理時の第一母材ガラス温度は重要であり、従来法では第一母材ガラス表面と内部の温度が均一となり目標とする粒径で均一に析出するように制御されている。制御の方法としては、電気炉内にファンを設置して撹拌を行うこと、電気炉の昇温,処理及び降温時間を最適化すること、母材ガラスの設置方法を工夫することなどが上げられる。これによって析出したハロゲン化金属粒子群の粒径分布の標準偏差は従来法では10nm以下である。
【0037】
本実施例では、熱処理時の第一母材ガラス温度を逆に不均一にすることによって、析出したハロゲン化金属粒子の粒径の標準偏差を少なくとも20nm(最大100nm)にする。
【0038】
第一母材ガラス温度を不均一にする方法としては、電気炉の雰囲気温度より低い若しくは高い温度のガスを第一母材ガラス近傍に流す方法、輻射板を設置する方法、電気炉ヒーターを最適に配置する方法などが上げられる。また、理由はわからないが、第一母材ガラス表面と内部の温度が均一になるように制御された電気炉において、第一母材ガラス温度が不均一になるものがある。この場合も、析出したハロゲン化金属粒子の粒径に分布をつけることができる。
【0039】
延伸は、ハロゲン化金属粒子が析出した第二母材ガラスを電気炉内に一定速度で送り込み、この第二母材ガラスの粘度が1×10ポアズ〜1×1010ポアズになる温度に加熱して、電気炉下方に設置された引っ張り装置で100kg/cm〜600kg/cmの引っ張り応力を加えて行う。加える応力はガラスの粘度以外に、第二母材ガラスの送り速度及び引っ張り速度によって制御できる。
【0040】
加える応力は第二母材ガラスが破断しない範囲で、目標のアスペクト比が与えられる値に設定される。20nm程度の粒径の小さいハロゲン化金属粒子は、応力を高くしなければ延伸されにくく、また、100nm程度の粒径の大きいハロゲン化金属粒子は小さい応力でも延伸され易い。従って、粒径の異なるハロゲン化金属粒子が分布している第二母材ガラスを均一な応力で延伸すると、粒径の大きさによって種々のアスペクト比を有する延伸ハロゲン化金属粒子群を含むものを作製することができる。
【0041】
延伸した第二母材ガラスに偏光特性を与えるためには、ガラス中の延伸ハロゲン化金属粒子の少なくとも一部を還元処理して延伸金属粒子にする必要がある。
【0042】
尚、偏光特性には消光比と挿入損失がある。両者とも還元処理された厚さに関係する。厚さが長いと延伸金属粒子の数が増加し、消光比は高くなる。しかし、延伸金属粒子による散乱も増加して、挿入損失は高くなる。このように消光比と挿入損失は表裏の関係にあり、良好な偏光特性を与えるために、最適な厚さに制御される。この厚さとして1μm〜100μm、アスペクト比にもよるが20μm〜50μmが好ましい。
【0043】
この還元は通常、水素雰囲気でガラスを熱処理することによって行われる。還元反応は雰囲気温度と還元時間に依存する。特に雰囲気温度は重要である。雰囲気温度が高いと還元処理時間は短縮されるが、延伸されたハロゲン化金属粒子に再球状化が起こり、アスペクト比の低下を引き起こし消光比が悪化する。雰囲気温度が低いと再球状化は起きないが、還元処理に時間がかかり、コストアップになる。また、雰囲気温度によっては、一部の延伸ハロゲン化金属粒子のアスペクト比が低下することによって、アスペクト比分布の広がりが狭くなり、結果として帯域も狭くなる。これらのことから、雰囲気温度としては400℃以上、好ましくは410℃〜470℃の温度範囲で1時間〜12時間還元することが好ましい。
【0044】
還元に用いる還元炉は水素フローの大気圧で稼動している。また還元処理に使用した水素は、還元炉の試料チャンバーを出た後、トーチを用いて燃焼するので、爆発などの危険はなく安全性が高い。
【0045】
以上の本実施例によれば、可視領域や赤外領域の広帯域で高消光比となる偏光特性を発揮する偏光ガラスが得られる。
【0046】
特に、帯域が少なくとも300nmで消光比が50dB以上の偏光ガラスが得られる。
【0047】
また、帯域を600nm以上と超広帯域とした場合でも消光比が40dB以上と秀れた偏光特性を発揮する。
【0048】
また、折出するハロゲン化金属粒子の粒径を該粒径の分布を適正に把握できる標準偏差を用いて管理しているから、所望の帯域で所望の消光比となる偏光ガラスを確実に製造することができる。
【0049】
以下、本実施例の効果を確認した実験例について説明する。
【0050】
実験例1
原料として、SiO 56.3wt%、B 18.1wt%、Al 6.2wt%、KO 5.7wt%、LiO 1.8wt%、NaO 4.1wt%、ZrO 5.0wt%、TiO 2.3wt%、AgCl 0.15wt%、KCl 0.43wt%、AgBr 0.19wt%、KBr 0.18%、CuO 0.006wt%をアルミナルツボに入れて、約1370℃でプリメルトを行った。プリメルトで作製したガラスをキャンディ大に砕いてカレットにした。そして、このカレットを蓋つきの白金ルツボに入れ、約1450℃で本メルトを行った。この時、白金ルツボは別の蓋付き容器に入れた。本メルト後、溶解したガラスはキャスト型に流し込み成形し、室温まで徐冷し第一母材ガラスとした。
【0051】
電気炉に入れた第一母材ガラスに約710℃±30℃の温度分布をつけて2時間熱処理を行った。これによって析出したハロゲン化銀粒子の粒径は約50nm〜約110nmであった。また、析出粒子の粒径分布の標準偏差は約20nmであった。
【0052】
ハロゲン化銀粒子析出ガラス(第二母材ガラス)を電気炉内に送りに込み、粘度が1×10ポアズになる温度に加熱し、且つ引っ張り装置を用いて約400kg/cmの応力を加えて延伸した。
【0053】
このガラスを約415℃で8時間、水素還元処理して約40μm厚の延伸銀粒子からなる還元層を形成した。この時のアスペクト比は3:1〜28:1であった。
【0054】
図1に消光比特性を示す。波長1300nm〜1650nmの広い帯域において、50dB以上の高い消光比を示すことがわかる。
【0055】
実験例2
原料として、SiO 57.2wt%、B 18.4wt%、Al 6.3wt%、KO 5.8wt%、LiO 1.8wt%、NaO 4.1wt%、ZrO 5.1wt%、AgCl 0.15wt%、KCl 0.43wt%、AgBr 0.2wt%、KBr 0.17wt%、CeO 0.61wt%、をアルミナルツボに入れて、実験例1と同様の方法で第一母材ガラスを作製した。そして、電気炉に入れた第一母材ガラスに約690℃±30℃の温度分布をつけて2時間熱処理を行った。これによって析出したハロゲン化銀粒子の粒径は約25nm〜約80nmであった。また、析出粒子の粒径分布の標準偏差は約22nmであった。
【0056】
次に、ハロゲン化銀粒子析出ガラスを電気炉内に送り込み、粘度が1×10ポアズになる温度に加熱して、引っ張り装置を用いて約430kg/cmの応力を加えて延伸した。このガラスを約415℃で8時間、水素還元処理して約40μm厚の延伸銀粒子からなる還元層を形成した。この時のアスペクト比は1.5:1〜20:1であった。
【0057】
図2に消光比特性を示す。波長400nm〜700nmの可視領域において、50dB以上の高い消光比を示すことがわかる。
【0058】
実験例3
原料として、SiO 57.2wt%、B 18.4wt%、Al 6.3wt%、KO 5.8wt%、LiO 1.8wt%、NaO 4.1wt%、ZrO 5.1wt%、AgCl 0.15wt%、KCl 0.43wt%、AgBr 0.2wt%、KBr 0.17wt%、CeO 0.61wt%をアルミナルツボに入れて、実験例1と同様の方法で第一母材ガラスを作製した。そして、電気炉に入れた第一母材ガラスに約700℃±30℃の温度分布をつけて2時間熱処理を行った。これによって析出したハロゲン化銀粒子の粒径は約25nm〜約100nmであった。また、析出粒子の粒径分布の標準偏差は約31nmであった。
【0059】
次に、ハロゲン化銀粒子析出ガラスを電気炉内に送り込み、粘度が1×10ポアズになる温度に加熱して、引っ張り装置を用いて約430kg/cmの応力を加えて延伸した。このガラスを約415℃で8時間、水素還元処理して約40μm厚の延伸銀粒子からなる還元層を形成した。この時のアスペクト比は2.5:1〜25:1であった。
【0060】
図3に消光比特性を示す。図1および図2と比較すると、消光比は40dBと低いが、波長400nm〜1200nmまで、すなわち可視領域から赤外領域までの広い帯域を有していることがわかる。
【0061】
実験例4
原料として、SiO 56.3wt%、B 18.1wt%、Al 6.2wt%、KO 5.7wt%、LiO 1.8wt%、NaO 4.1wt%、ZrO 5.0wt%、TiO 2.3wt%、AgCl 0.15wt%、KCl 0.43wt%、AgBr 0.19wt%、KBr 0.18wt%、CuO 0.006wt%をアルミナルツボに入れて、実験例1と同様の方法で第一母材ガラスを作製した。そして、電気炉に入れた第一母材ガラスに約725℃±30℃の温度分布をつけて2時間熱処理を行った。これによって析出したハロゲン化銀粒子の粒径は約60nm〜約130nmであった。また、析出粒子の粒径分布の標準偏差は約22nmであった。
【0062】
次に、ハロゲン化銀粒子析出ガラスを電気炉内に送り込み、粘度が1×10ポアズになる温度に加熱して、引っ張り装置を用いて約380kg/cmの応力を加えて延伸した。このガラスを約415℃で8時間、水素還元処理して約40μm厚の延伸銀粒子からなる還元層を形成した。この時のアスペクト比は4:1〜31:1であった。
【0063】
図4に消光比特性を示す。波長1400nm〜1900nmにおいて、50dB以上の高い消光比を示すことがわかる。
【0064】
実験例5
原料として、SiO 56.3wt%、B 18.1wt%、Al 6.2wt%、KO 5.7wt%、LiO 1.8wt%、NaO 5.5wt%、ZrO 5.0wt%、TiO 2.3wt%、AgCl 0.16wt%、KCl 0.25wt%、AgBr 0.21wt%、KBr 0.11wt%、CuO 0.006wt%をアルミナルツボに入れて、実験例1と同様の方法で第一母材ガラスを作製した。そして、電気炉に入れた第一母材ガラスに約690℃±30℃の温度分布をつけて2時間熱処理を行った。これによって析出したハロゲン化銀粒子の粒径は約30nm〜約100nmであった。また、析出粒子の粒径分布の標準偏差は約25nmであった。
【0065】
次に、ハロゲン化銀粒子析出ガラスを電気炉内に送り込み、粘度が1×10ポアズになる温度に加熱して、引っ張り装置を用いて約410kg/cmの応力を加えて延伸した。このガラスを約415℃で8時間、水素還元処理して約40μm厚の延伸銀粒子からなる還元層を形成した。この時のアスペクト比は2:1〜24:1であった。
【0066】
図5に消光比特性を示す。波長900nm〜1450nmにおいて50dB以上の高い消光比を示すことがわかる。
【0067】
以上の実験例1〜5により、ハロゲン化金属粒子の粒径に分布を形成することによって、通常の水素還元処理法を用いて安全且つ確実に、広い波長域で高い消光比を与える偏光ガラスを製造できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【図1】実験例1の偏光ガラスの消光比特性を示す説明図である。
【図2】実験例2の偏光ガラスの消光比特性を示す説明図である。
【図3】実験例3の偏光ガラスの消光比特性を示す説明図である。
【図4】実験例4の偏光ガラスの消光比特性を示す説明図である。
【図5】実験例5の偏光ガラスの消光比特性を示す説明図である。

Claims (8)

  1. 所定粒径分布を有するハロゲン化金属粒子群が混合せしめられたガラスを延伸した後にハロゲン化金属粒子を還元して金属とすることにより所定の偏光特性が発揮される偏光ガラスであって、前記延伸前の所定粒径分布を有するハロゲン化金属粒子群は、その粒径分布の標準偏差が少なくとも20nmのハロゲン化金属粒子群であることを特徴とする偏光ガラス。
  2. 請求項1記載の偏光ガラスにおいて、ハロゲン化金属粒子として銀若しくは銅のハロゲン化物が採用されていることを特徴とする偏光ガラス。
  3. 請求項1,2いずれか1項に記載の偏光ガラスにおいて、該偏光ガラスは、少なくとも300nmの帯域で少なくとも50dBの消光比を発揮するものであることを特徴とする偏光ガラス。
  4. 請求項1〜3いずれか1項に記載の偏光ガラスにおいて、延伸前のハロゲン化金属粒子の粒径が20nm乃至500nmであることを特徴とする偏光ガラス。
  5. ハロゲン化金属粒子を金属に還元して所定の偏光特性を発揮する偏光ガラスを製造する方法であって、ガラス原料とハロゲン化金属とを溶解混合せしめた後に固化させて第一母材ガラスを形成し、この第一母材ガラスを熱処理してハロゲン化金属粒子を粒径分布を有し且つその粒径分布の標準偏差が少なくとも20nmとなるように析出せしめることにより第二母材ガラスを形成し、この第二母材ガラスを延伸することにより前記粒径分布のハロゲン化金属粒子を延伸し、この延伸されたハロゲン化金属粒子を金属に還元して偏光ガラスを製造することを特徴とする偏光ガラスの製造方法。
  6. 請求項5記載の偏光ガラスの製造方法において、第一母材ガラスを熱処理して所定粒径のハロゲン化金属粒子を析出せしめる際、第一母材ガラスの温度を不均一にすることで前記所定粒径のハロゲン化金属粒子が、粒径分布を有し且つその粒径分布の標準偏差が少なくとも20nmとなるようにすることを特徴とする偏光ガラスの製造方法。
  7. 請求項5,6いずれか1項に記載の偏光ガラスの製造方法において、第一母材ガラスを熱処理することにより所定粒径のハロゲン化金属粒子を析出せしめる際、該第一母材ガラスの表面と内部とで温度が異なる状態となるように加熱することを特徴とする偏光ガラスの製造方法。
  8. 請求項5〜7いずれか1項に記載の偏光ガラスの製造方法により、少なくとも600nmの帯域で少なくとも40dBの消光比を発揮する偏光ガラスを製造することを特徴とする偏光ガラスの製造方法。
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