JP2012051789A - ガラス条の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】母材ガラス板を、加熱炉内で加熱して軟化させ、所望の厚さに延伸してガラス条を成形する場合に、平坦度の優れた薄肉棒状のガラス条を製造することができるガラス条の製造方法を提供する。
【解決手段】母材ガラス板を加熱炉内で加熱して軟化させ、所望の厚さに延伸してガラス条を成形する加熱延伸工程を含み、前記加熱延伸工程は、前記母材ガラス板の溶け始めの位置から、前記延伸の際に形成される前記母材ガラス板の輪郭線における変曲点の位置までの長さ、つまりメニスカス長22が、前記母材ガラス板の幅23の2/3以上となるように加熱する。
【選択図】図6

Description

本発明は、厚肉板状の母材ガラス板を加熱延伸して薄肉棒状のガラス条を製造するガラス条の製造方法に関するものである。
従来から、半導体素子の基板、電界効果型のフラットパネルディスプレイに用いるスペーサや磁気ディスク基板等に使用されるガラス板は、平坦度、表面粗さを良くすることが最重要である。しかしながら、現状ガラス板の製法として一般的に用いられているフロート法や成型法では、厚さの薄いガラス板を製造する場合、でき上がるガラス板の平坦度が悪いため、上記用途に適応した平坦度に仕上げるために、ガラス板の表面の相当な量を研削・研磨しなければならなかった。このため、研削後のガラス板は、その表面粗さが非常に悪くなってしまうという問題がある。
この問題を解決するため、研削後のガラス板に対して2回のポリッシュを行うのが一般的であり、表面粗さを、1次ポリッシュ後に0.5nm、2次ポリッシュ後に0.1nm程度としている。さらに、次世代には、一層精度の高いものが要求されてくることから、これに加えてさらに3次ポリッシュが必要になってくると予想される。したがって、検索・研磨のみによってガラス板の平坦度を上げようとすると、研削・研磨の時間と労力とがかかり、結果的に、設備コストがかかってしまう。
そこで、所定の厚みを有して且つ表面粗さを良くした母材ガラス板を用いて、これを加熱軟化させ、軟化した状態のガラス板に延伸することによって、所望の厚さの薄ガラス板を作製する方法が考案されている(特許文献1参照)。
また、このような板ガラスの作製方法において、板幅方向に沿って複数の冷却手段を配置した構成として、板ガラスの局部的な肉厚の不均一に対して、対応する位置のヒータのパワーを調整するか、あるいは幅方向を部分的に冷却することにより、局部的な肉厚の不均一を解消する手段が開示されている(特許文献2参照)。
特開平11−199255号公報 特開平8−183627号公報
しかしながら、たとえば母材ガラス板を加熱軟化させて延伸し、厚さが0.7mm以下の薄いガラス条を成形する場合、ガラス条の厚さを幅方向に均一にすることは難しく、従来の加熱延伸後のガラス条は平坦度の劣ったものとなっていた。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、母材ガラス板を、加熱炉内で加熱して軟化させ、所望の厚さに延伸してガラス条を成形する場合に、平坦度の優れた薄肉棒状のガラス条を製造することができるガラス条の製造方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るガラス条の製造方法は、母材ガラス板を加熱炉内で加熱して軟化させ、所望の厚さに延伸してガラス条を成形する加熱延伸工程を含み、前記加熱延伸工程は、前記母材ガラス板の溶け始めの位置から、前記延伸の際に形成される前記母材ガラス板の輪郭線における変曲点の位置までの長さが、前記母材ガラス板の幅の2/3以上となるように加熱することを特徴とする。
また、本発明に係るガラス条の製造方法は、上記の発明において、前記加熱延伸工程は、前記母材ガラス板の溶け始めの位置から、前記延伸の際に形成される前記母材ガラス板の輪郭線における変曲点の位置までの長さが、前記母材ガラス板の幅の1.5倍以下となるように加熱することを特徴とする。
また、本発明に係るガラス条の製造方法は、上記の発明において、前記加熱延伸工程は、少なくとも前記母材ガラス板の溶け始めの位置から、前記延伸の際に形成される前記母材ガラス板の輪郭線における変曲点の位置までの部分において、幅方向に凹状の温度分布を有するように加熱することを特徴とする。
また、本発明に係るガラス条の製造方法は、上記の発明において、前記加熱延伸工程は、前記母材ガラス板の幅方向の中央部と端部との粘度比が、1より大きく20以下となるように加熱することを特徴とする。
また、本発明に係るガラス条の製造方法は、上記の発明において、前記加熱延伸工程は、前記母材ガラスの幅方向の中央部に相対する位置に非発熱部を有し、該非発熱部の両側に発熱部を有する加熱体を用いて加熱することを特徴とする。
また、本発明に係るガラス条の製造方法は、上記の発明において、前記加熱延伸工程は、少なくとも前記母材ガラス板の溶け始めの部分から該母材ガラス板の歪み点温度の部分までが、前記加熱炉内に含まれるように加熱することを特徴とする。
また、本発明に係るガラス条の製造方法は、上記の発明において、前記母材ガラス板として、熱膨張係数が32×10-7(1/k)以下のものを用いることを特徴とする。
また、本発明に係るガラス条の製造方法は、上記の発明において、前記母材ガラス板として、ホウ珪酸ガラスまたは石英ガラスからなるものを用いることを特徴とする。
また、本発明に係るガラス条の製造方法は、上記の発明において、前記加熱延伸工程は、前記ガラス条の断面アスペクト比が50以上になるように延伸することを特徴とする。
また、本発明に係るガラス条の製造方法は、上記の発明において、前記加熱延伸工程は、前記ガラス条の厚さが0.7mm以下になるように延伸することを特徴とする。
本発明によれば、加熱延伸工程において、母材ガラス板の溶け始めの位置から、延伸の際に形成される母材ガラス板の輪郭線における変曲点の位置までの長さが、母材ガラス板の幅の2/3以上となるように加熱することにより、母材ガラス板の中央部と端部でガラスの流れる速度の差が大きくならないので、ガラス条の幅方向の厚さが均一になり、平坦度の優れたガラス条を製造できるという効果を奏する。
図1は、本発明の実施の形態に係るガラス条の製造方法に用いる加熱延伸装置の斜視図である。 図2は、図1に示す加熱炉の断面図である。 図3は、図1に示す加熱炉の平面図である。 図4は、母材ガラス板の幅方向の温度分布を示すグラフと、母材ガラス板に対応するヒータの配置の概略を示す概略図である。 図5は、中央部のヒータの代わりにカーボンのブロックを設置したヒータの概略図である。 図6は、本発明の別の実施の形態に係るガラス条の製造方法を説明する説明図である。 図7は、本発明のさらに別の実施の形態に係るガラス条の製造方法に用いる加熱炉の平面図である。 図8は、本発明のさらに別の実施の形態に係るガラス条の製造方法に用いる加熱炉の平面図である。 図9は、実施例1〜5および比較例1を示す図である。 図10は、実施例6〜8および比較例2を示す図である。 図11は、実施例9〜11を示す図である。
以下に、図面を参照して本発明に係るガラス条の製造方法の実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態に係るガラス条の製造方法に用いる加熱延伸装置の斜視図である。加熱延伸装置50は、母材ガラス板1を加熱する電気抵抗炉である加熱炉10と、この加熱炉10に母材ガラス板1を送り込む母材送り機構20と、この加熱炉10からガラス条11を引き出す引き取り機構30とを有している。加熱炉10には、母材ガラス板1を加熱する加熱手段として、図示しない複数のヒータが設けられる。また、加熱炉10の下部には、ガラス条11の外形を測定するための外形測定器7、ガラス条11の表面に保護膜を形成する保護膜被覆装置8、ガラス条11を引き取るテンションを測定するテンション測定器9、ガラス条11のよじれを防止するガイドロール5が設けられる。また、引き取り機構30の下部には、ガラス条の表面に溝を形刻して、所定の長さに折るためのカッター21が設けられる。外形測定器7の計測した計測値は、フィードバック経路13を経由して母材送り機構20にフィードバックされる。母材送り機構20は、このフィードバック値に基づいて母材送り速度をコントロールする。また、この計測値は、フィードバック経路14を経由して引き取り機構30にもフィードバックされる。引き取り機構30は、このフィードバック値に基づいて引き出し速度をコントロールする。
図2は、図1に示す加熱炉10の断面図であり、図3は、図1に示す加熱炉10の平面図である。母材ガラス板1は、炉体16の内部において、矩形の炉心管17内に配置される。炉心管17の外側には複数のヒータ15a、15b、15cが設置されている。ヒータとしては、例えばカーボン抵抗発熱体を用いる。また、ヒータが消耗しないように、ヒータの周囲を不活性ガスで保護する。
母材ガラス板は、軟化点以上の温度に加熱されると軟化して溶け始め、その幅が収縮し、延伸される。延伸の際に、母材ガラス板の輪郭線は変曲点を形成し、その後所望の厚さと幅とを有するガラス条が形成される。この母材ガラス板の溶け始めの位置から変曲点の位置までをメニスカス部、この部分の長さをメニスカス長という。メニスカス部では、母材ガラス板の幅方向の中央部と端部とでガラスの流れの差が生じる。
本発明では、加熱延伸工程において、母材ガラス板が幅方向に凹状の温度分布を有するように加熱する。すると、母材ガラス板の端部においては、中央部に比べて高温であるため、ガラスの粘度が一層低くなり、ガラスの流れる速度が速くなる。このように、母材ガラス板のメニスカス部において、その幅方向の中央部と端部とで生じていたガラスの流れの差が、ガラスの粘度に差がつくことによって補償され、ガラスの流れる速度がつりあうので、ガラス条の幅方向の厚さが均一になり、平坦度の優れたガラス条を製造できる。
図4は、図2に示す加熱炉における母材ガラス板の幅方向の温度分布を示すグラフと、母材ガラス板に対応するヒータの配置の概略を示す概略図である。グラフの横軸は母材ガラス板における温度の測定位置を示し、縦軸は測定位置での母材ガラス板の相対温度を示す。そして、グラフの下部には、母材ガラス板に対応するヒータの配置を示す。母材ガラス板の中央部に相対する位置のヒータ15bを、その両側のヒータ15a、15cより低温にすることにより、母材ガラス板が、幅方向に、グラフに示すような凹型の温度分布を有するように加熱できる。
上記のように、母材ガラス板が幅方向に凹状の温度分布を有するように加熱するには、図2において中央部のヒータ15bのパワーを投入しないことにより実施してもよいし、図5のように、ヒータ15bの代わりにカーボンのブロック18を設置してもよい。このように、母材ガラスの幅方向の中央部に相対する位置に非発熱部を有し、この非発熱部の両側に発熱部を有するような加熱体を用いて加熱すれば、母材ガラス板の中央部と端部との温度差をより大きくして、ガラスの粘度に一層差をつけることができる。また、炉心管の外側の炉の断熱材として熱伝導率の一層大きいものを用いても、この温度差をより大きくすることができる。そのような断熱材として、例えばカーボンのブロックで構成した箱体にカーボン繊維質を詰め込んだものを用いることができる。このような断熱材は、熱伝導率が0.4〜4W/mkあるいはそれ以上の値とすることができる。
(実施の形態2)
次に、本発明の別の実施の形態について説明する。上述の実施の形態1は、母材ガラス板の幅方向の温度分布を規定することにより、平坦度の優れたガラス条を製造できるというものであるが、本実施の形態は、母材ガラス板の延伸方向における加熱炉内の温度分布と母材ガラス板の幅との関係を規定することにより、平坦度の優れたガラス条を製造できるというものである。
図6は、本発明の別の実施の形態に係るガラス条の製造方法を説明する説明図である。本実施の形態によれば、加熱延伸工程は、母材ガラス板の溶け始めの位置から、延伸の際に形成される母材ガラス板の輪郭線における変曲点の位置までの長さ、すなわちメニスカス長22が、母材ガラス板の幅23の2/3以上となるように加熱する。このようにすれば、母材ガラス板のメニスカス部の長さが十分に長いので、ガラス板の幅の収縮に伴う端部の傾斜勾配が小さくなり、中央部と端部とのガラスの流れる速度の差が大きくならない。したがって、ガラス条の幅方向の厚さが均一になり、平坦度の優れたガラス条を製造できる。
メニスカス長22はヒータの長さを調整し、加熱炉内の母材ガラス板の延伸方向におけるヒートゾーンの長さを調整することで適宜調整することができ、ヒートゾーンを長くすれば、メニスカス長22も長くできる。また、引き出し速度を速くすることによっても、メニスカス長を長くできる。ここで、ヒートゾーンとは、図6に示すように加熱炉内の温度が、使用するガラスの軟化点以上の温度になっている部分のことをいい、母材ガラス板の延伸方向におけるヒートゾーンの長さ24をヒートゾーン長とする。母材ガラス板は、それが最高温度となる部分で粘度が最小となり、その輪郭が変曲点を形成する。ガラスが最高温度になる位置は、ヒートゾーンと引き出し速度の組み合わせで決まる。
したがって、ヒータ15a、15b、15cの長さや配置を適宜調整することにより、ヒートゾーンの上端部から最高温度の部分までの長さやヒートゾーン長を調節して、上記のように母材ガラス板の溶け始めの位置から、延伸の際に形成される母材ガラス板の輪郭線における変曲点の位置までの長さが母材ガラス板の幅の2/3以上となるように加熱できる。また、本実施の形態の場合は、ヒータ15a、15b、15cを同一の温度に設定し、母材ガラス板が幅方向に均一の温度分布を有するように加熱してもよいが、ヒータ15bを、ヒータ15a、15cより低温に設定したり、ヒータ15bのパワーを投入しなかったり、ヒータ15bの代わりにカーボンのブロックを設置したりすることにより、母材ガラス板が幅方向に凹型の温度分布を有するように加熱すれば、ガラス条の幅方向の厚さが一層均一になり、平坦度の一層優れたガラス条を製造できる。
(実施の形態3)
次に、本発明のさらに別の実施の形態について説明する。上述の実施の形態1は、母材ガラス板の幅方向の温度分布を規定することにより、平坦度の優れたガラス条を製造できるというものであり、実施の形態2は、母材ガラス板の延伸方向における加熱炉内の温度分布と母材ガラス板の幅との関係を規定することにより、平坦度の優れたガラス条を製造できるというものである。本実施の形態は、これらを組み合わせた上に、さらに上記幅方向の温度分布を規定する位置を規定することにより、平坦度の一層優れたガラス条を、加熱効率よく製造できるというものである。
図7は、本発明のさらに別の実施の形態に係るガラス条の製造方法に用いる加熱炉の平面図である。このように、比較的ヒータ長の短いヒータ15d、15e、15fを備えた加熱炉40を用い、ヒータ15d、15fにより、少なくとも母材ガラス板の溶け始めの位置から、延伸の際に形成される母材ガラス板の輪郭線における変曲点の位置までの部分、すなわち、メニスカス部25が、母材ガラス板の幅方向に凹状の温度分布を有するように加熱する。そして、さらに、比較的ヒータ長の短いヒータ15eを、部分25より下部に配置することにより、母材ガラス板の溶け始めの位置から、延伸の際に形成される母材ガラス板の輪郭線における変曲点の位置までの長さが母材ガラス板の幅の2/3以上となるように加熱する。このようにすれば、個々のヒータ長が短くても、ガラス条の幅方向の厚さが一層均一になり、平坦度の一層優れたガラス条を製造できる。
すなわち、母材ガラス板の輪郭線の変曲点の位置が、延伸方向においてガラスの粘度が極小となる点であり、そこから下ではガラスは冷却固化されるので、変曲点から下の部分では、両端部のヒータの長さを長くして幅方向に凹状の温度分布を形成しても、成形するガラス条の平坦度に与える影響は比較的少ない。つまり、母材ガラス板の溶け始めの位置から、輪郭線の変曲点の位置までを、幅方向に凹状の温度分布を有するように加熱することが重要であるから、それに必要な長さのヒータを両端に用いればよいのである。一方、母材ガラス板の中央部であってヒートゾーンの上部は、両端のヒータにより十分に加熱できるので、中央のヒータについては、上部に至るまで長くなくてもよく、両端のヒータよりも低い位置であってヒートゾーンの最高温度の部分をより下方に形成できるような位置に配置すれば、ヒータ長が比較的短いヒータであっても、母材ガラス板の溶け始めの位置から、延伸の際に形成される母材ガラス板の輪郭線における変曲点の位置までの長さが母材ガラス板の幅の2/3以上となるように加熱できるのである。
(実施の形態4)
次に、本発明のさらに別の実施の形態について説明する。上述の実施の形態1〜3は、ガラス条の幅方向の厚さを均一にし、平坦度の優れたガラス条を製造できるものであるが、本実施の形態は、上記実施の形態のいずれにも組み合わせることができ、それによってガラス条にひずみが生じないようにする製造方法に係るものである。
図8は、本発明のさらに別の実施形態に係るガラス条の製造方法に用いる加熱炉の平面図である。このように、加熱炉10に、加熱炉下部を延長した構造体19で囲った加熱炉60を用いて、母材ガラス板の溶け始めの部分から母材ガラス板の歪み点温度の部分までが、加熱炉内に含まれるように加熱する。このようにすれば、ガラス条が加熱炉から大気中に引き出される際に、ガラス条が歪み点温度以下の温度に急冷されてひずみが生じるおそれがなくなる。また、ガラス条の引き出し速度を速くすることもできる。また、母材ガラス板の溶け始めの部分から、母材ガラス板の歪み点温度より50℃、さらに好ましくは100℃低い温度の部分までが、加熱炉内に含まれるように加熱すれば、ひずみが確実に生じないのでより好ましい。
以下に、本発明にかかるガラス条の製造方法の実施例を詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
(実施例1〜5、比較例1)
本発明の実施例として、ホウ珪酸ガラス(ショット社製テンパックス フロート(登録商標))又は石英からなる、幅328mm、厚さ5mm、長さ約1.5mの母材ガラス板を準備し、これを加熱延伸してガラス条を製造した。加熱炉については、図2のように3枚のヒータを母材ガラス板の両側に配置したものを使用するか、または、図8のように炉下部を延長した構造体で囲ったものを使用した。ヒータは、長さ620mm、幅256mmのものを使用し、ヒータ中心線の距離が互いに277mmとなるように配置した。延伸条件としては、引き出し速度4mm/min、延伸後の幅25mm、厚さ0.38mmとした。このときの断面アスペクト比は66である。なお、断面アスペクト比とは、ガラス板の断面における幅と厚さの比である。また、このようにガラス条の断面アスペクト比が50以上であるか、または、厚さが0.7mm以下である場合、あるいはその両方である場合に、本発明の平坦度を改善するという効果がより顕著なものとなる。
以下、図9に示した実施例1〜5および比較例1について説明する。実施例1は、図2の加熱炉において、中央部のヒータの温度を900℃、両端のヒータの温度を1010℃にそれぞれ設定した場合である。このとき、母材ガラス板の中央部の温度は915℃、両端部の温度は945℃であり、これらの温度差が30℃の凹状温度分布となった。このような条件で製造したガラス条は、その断面が凹レンズ状となっていたが、平坦度は板幅20mmに対して5μmであり、良好であった。なお、平坦度とは、ガラス条を必要な面積の基板として切り取った後、それ全体を水平面上に置いたとき、基板面上の任意の単位長さ離れた二点での垂直方向の最高点と最低点との差を指す。上記の場合は板幅20mmを単位長さとした。
一方、比較例1は、図2の加熱炉において、中央部と両端のヒータの温度を同一の1000℃に設定した場合である。このとき、母材ガラス板の中央部の温度は985℃、両端部の温度は980℃であり、温度差はほとんどなかった。このような条件で製造したガラス条は、その断面が顕著な凹レンズ状となっており、平坦度は板幅20mmに対して40μmと大きかった。
実施例2は、図2の加熱炉において、中央部のヒータはパワーを投入せず、さらに、炉心管の炉の外側の断熱材として、カーボンのブロックで構成した箱体にカーボン繊維質を詰め込んだものを用いた。この断熱材の熱伝導率は0.4〜4W/mkであった。こうして、母材ガラス板の幅方向の中央部と両端部との温度差を、実施例1の場合より大きい60℃とした。このとき、母材ガラス板の幅方向の中央部と両端部とのガラスの粘度の比は、11.6であった。このような条件で製造したガラス条は、平坦度が板幅20mmに対して3μmであり、良好であった。
一方、実施例3では、実施例2と同様に中央部のヒータはパワーを投入せず、さらに断熱材として熱伝導率が4W/mk以上のものを用いた。こうして、母材ガラス板の幅方向の中央部と両端部との温度差を、実施例1、2の場合より大きい80℃とした。このとき、母材ガラス板の幅方向の中央部と両端部とのガラスの粘度の比は、26.3であった。このような条件で製造したガラス条は、平坦度が板幅20mmに対して10μmであり、比較例1に比べて改善されているが、実施例1、2よりは大きかった。さらに、ガラス条の断面積は凸状であった。すなわち、母材ガラス板の中央部の温度を下げすぎると、粘度が上がりすぎて、逆に平坦度が悪化する傾向が見られた。これらの結果から、母材ガラス板の幅方向の中央部と端部との粘度比が、1より大きく20以下となるように加熱することが好ましいことがわかった。
実施例4は、石英からなる母材ガラス板を用いた場合である。図2の加熱炉において、中央部のヒータの温度を2020℃、両端のヒータの温度を1780℃にそれぞれ設定した場合である。このとき、母材ガラス板の中央部の温度は1790℃、両端部の温度は1950℃であり、これらの温度差が160℃の凹状温度分布となった。このような条件で製造したガラス条は、平坦度が板幅20mmに対して2μmであり、良好であった。このように、テンパックス フロート(登録商標)や石英のような、熱膨張係数が32×10-7(1/k)以下の材質からなる母材ガラス板を用いれば、矩形の炉を用いる場合のようにガラス板の表裏で温度差が生じ易い場合であっても、表面と裏面の伸びの差が小さいので、ガラス板の熱膨張による曲がりが生じにくく、より平坦なガラス条ができる。また、急加熱、急冷をしても割れないので、ガラス条の引き出し速度を大きくできる。
実施例5は、図8に示すように、炉下部を延長した構造体で囲った場合である。引き出し速度は7m/minとした。この場合、炉のヒータ下端から1.5mだけ下まで構造体で囲われており、延伸されたガラス条が加熱炉から出て、大気により急冷されるまでの間を徐冷することができる。これにより、テンパックス フロート(登録商標)の歪み点温度である510℃までを徐冷することができた。このように、炉下部を延長した構造体を用いることにより、引き出し速度を速くしても、ガラス条にひずみは生じておらず、また平坦度も、板幅20mmに対して5μmであり、良好であった。
(実施例6〜8、比較例2)
本発明の実施例として、軟化点が820℃のテンパックス フロート(登録商標)からなる、幅328mm、厚さ5mm、長さ約1.5mの母材ガラス板を準備し、これを加熱延伸してガラス条を製造した。加熱炉については、図2のように3枚のヒータを母材ガラス板の両側に配置したものを使用した。ヒータの温度は、いずれも1000℃に設定した。このとき、母材ガラス板の中央部の温度は985℃、両端部の温度は980℃であり、温度差はほとんどなかった。延伸条件としては、引き出し速度7mm/minとした。
以下、図10に示した実施例6〜8および比較例2について説明する。実施例6は、ヒータの長さを適当な長さにすることによってヒートゾーン長を調整し、メニスカス長が、母材ガラス板の幅(母材幅)の1.2倍となるように加熱した場合である。このような条件で製造したガラス条は、平坦度が板幅20mmに対して5μmであり、良好であった。
一方、比較例2は、メニスカス長が、母材幅の0.61倍となるように加熱した場合である。このような条件で製造したガラス条は、平坦度が板幅20mmに対して40μmであり、大きかった。
実施例7は、母材ガラス板の幅が大きい場合であって、メニスカス長が、母材幅の0.68倍となるように加熱した場合である。このような条件で製造したガラス条は、平坦度が板幅60mmに対して5μmであり、良好であった。すなわち、母材ガラス板の幅にかかわらず、母材ガラス板の溶け始めの位置から、延伸の際に形成される母材ガラス板の輪郭線における変曲点の位置までの長さ(メニスカス長)が、母材ガラス板の幅の2/3以上となるように加熱すれば、平坦度が優れたガラス条を製造することができることがわかった。
実施例8は、メニスカス長が、母材ガラス板の幅(母材幅)の1.5倍となるように加熱した場合である。このような条件で製造したガラス条は、平坦度が板幅20mmに対して5μmであり、良好であった。しかしこの場合、製造条件の調整に対するガラス条の形状の応答が遅くなり、引き出し速度の微調整でガラス条の幅の平均値や厚さの平均値を調整することが困難となる場合があった。この結果から、母材ガラス板の溶け始めの位置から、延伸の際に形成される母材ガラス板の輪郭線における変曲点の位置までの長さ(メニスカス長)が、母材ガラス板の幅の1.5倍以下となるように加熱すれば、幅や厚さが精度よく制御されたガラス条を製造することができることがわかった。
(実施例9〜11)
本発明の実施例として、テンパックス フロート(登録商標)からなる、幅328mm、厚さ5mm、長さ約1.5mの母材ガラス板を準備し、これを加熱延伸してガラス条を製造した。加熱炉については、図2のように3枚のヒータを母材ガラス板の両側に配置したものを使用するか、または、図7のように比較的ヒータ長の短いヒータを用いたものを使用した。ヒータは、いずれも幅256mmのものを使用した。延伸条件としては、引き出し速度7mm/min、延伸後の幅25mm、厚さ0.38mmとした。このときの断面アスペクト比は66である。
以下、図11に示した実施例9〜11について説明する。実施例9は、図2の加熱炉において、中央部のヒータの温度を875℃、両端のヒータの温度を1055℃にそれぞれ設定し、かつ、ヒータの長さを適当な長さにすることによってヒートゾーン長を調整し、メニスカス長が、母材ガラス板の幅(母材幅)の0.88倍となるように加熱した場合である。このとき、母材ガラス板の中央部の温度は920℃、両端部の温度は980℃であり、これらの温度差が60℃の凹状温度分布となった。このような条件で製造したガラス条は、平坦度は板幅20mmに対して1μmであり、きわめて良好であった。
実施例10は、実施例9と同様に、図2の加熱炉において、中央部のヒータの温度を875℃、両端のヒータの温度を1055℃にそれぞれ設定するが、ヒータの長さをやや短くし、メニスカス長が、母材幅の0.61倍となるように加熱した場合である。このような条件で製造したガラス条は、平坦度は板幅20mmに対して3μmであり、良好であるものの、実施例9の値よりはやや大きかった。すなわち、母材ガラス板が幅方向に凹状の温度分布を有するように、かつ、母材ガラス板の溶け始めの位置から、延伸の際に形成される母材ガラス板の輪郭線における変曲点の位置までの長さ(メニスカス長)が、母材ガラス板の幅の2/3以上となるように加熱すれば、平坦度が一層優れたガラス条を製造することができることがわかった。
実施例11は、図7に示すような比較的ヒータ長の短いヒータを用いた加熱炉により加熱を行った場合である。この場合、実施例9と同様の温度設定を行うことにより、母材ガラス板の中央部と両端部のとの温度差が60℃の凹状温度分布となった。また、ヒータ長が実施例9の場合の約1/2にもかかわらず、ヒートゾーン長は実施例9と同様の長さとでき、メニスカス長も、実施例9と同様に母材幅の0.88倍となった。このような条件で製造したガラス条は、実施例9と同様に、平坦度は板幅20mmに対して1μmであり、きわめて良好であった。しかも、ヒータ長の短いヒータを用いたので、少ない電力量で効率よく加熱を行うことができた。
以上のように、本発明にかかるガラス条の製造方法により製造されたガラス条は、その平坦性と表面性を活かした商品群に展開可能である。たとえば半導体素子、電界効果型のフラットパネルディスプレイに用いるスペーサや回路基板の材料に有用であり、特に、半導体素子の基板、電界効果型のフラットパネルディスプレイに用いるスペーサや小型の磁気ディスク基板等に好適なものである。
また、石英ガラスを用いた場合は、その高温耐性を利用して、熱CVDなどによって表面に機能性膜を堆積して使用することもできる。さらに、多成分ガラスを用いた場合は、低温プロセスを用いて表面に機能性膜を堆積して使用することもできる。
さらに、目的用途に合わせて、本発明のガラス条を多角形、円形、あるいは円盤状に切り取り、ガラス基板として用いても良く、さらに得られた基板を研磨して用いても良い。本発明のガラス条を用いて作製されたガラス基板は、医療分析等に用いられるDNAチップのガラス基板にも好適なものである。また、本発明のガラス条を平面状に並べることにより、どのようなサイズの二次元基板にも拡張できる。
1 母材ガラス板
5 ガイドロール
7 外形測定器
8 保護膜被覆装置
9 テンション測定器
10、40、60 加熱炉
11 ガラス条
13、14 フィードバック経路
15a〜15f ヒータ
16 炉体
17 炉心管
18 カーボンブロック
19 構造体
20 母材送り機構
21 カッター
22 メニスカス長
23 母材ガラス板の幅
24 ヒートゾーン長
25 メニスカス部
30 引き取り機構
50 加熱延伸装置

Claims (10)

  1. 母材ガラス板を加熱炉内で加熱して軟化させ、所望の厚さに延伸してガラス条を成形する加熱延伸工程を含み、前記加熱延伸工程は、前記母材ガラス板の溶け始めの位置から、前記延伸の際に形成される前記母材ガラス板の輪郭線における変曲点の位置までの長さが、前記母材ガラス板の幅の2/3以上となるように加熱することを特徴とするガラス条の製造方法。
  2. 前記加熱延伸工程は、前記母材ガラス板の溶け始めの位置から、前記延伸の際に形成される前記母材ガラス板の輪郭線における変曲点の位置までの長さが、前記母材ガラス板の幅の1.5倍以下となるように加熱することを特徴とする請求項1に記載のガラス条の製造方法。
  3. 前記加熱延伸工程は、少なくとも前記母材ガラス板の溶け始めの位置から、前記延伸の際に形成される前記母材ガラス板の輪郭線における変曲点の位置までの部分において、幅方向に凹状の温度分布を有するように加熱することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガラス条の製造方法。
  4. 前記加熱延伸工程は、前記母材ガラス板の幅方向の中央部と端部との粘度比が、1より大きく20以下となるように加熱することを特徴とする請求項3に記載のガラス条の製造方法。
  5. 前記加熱延伸工程は、前記母材ガラスの幅方向の中央部に相対する位置に非発熱部を有し、該非発熱部の両側に発熱部を有する加熱体を用いて加熱することを特徴とする請求項3または請求項4に記載のガラス条の製造方法。
  6. 前記加熱延伸工程は、少なくとも前記母材ガラス板の溶け始めの部分から該母材ガラス板の歪み点温度の部分までが、前記加熱炉内に含まれるように加熱することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のガラス条の製造方法。
  7. 前記母材ガラス板として、熱膨張係数が32×10-7(1/k)以下のものを用いることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のガラス条の製造方法。
  8. 前記母材ガラス板として、ホウ珪酸ガラスまたは石英ガラスからなるものを用いることを特徴とする請求項7に記載のガラス条の製造方法。
  9. 前記加熱延伸工程は、前記ガラス条の断面アスペクト比が50以上になるように延伸することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のガラス条の製造方法。
  10. 前記加熱延伸工程は、前記ガラス条の厚さが0.7mm以下になるように延伸することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のガラス条の製造方法。
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