JP2006111797A - 光学フィルム、偏光板及び液晶表示装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 主として酢酸イソ酪酸セルロース、または酢酸ピバリン酸セルロースからなることを特徴とする光学フィルム。
【選択図】 なし
Description
主として酢酸イソ酪酸セルロース、または酢酸ピバリン酸セルロースからなることを特徴とする光学フィルム。
前記酢酸イソ酪酸セルロースまたは酢酸ピバリン酸セルロースが、下記式(1)および(2)を満たすセルロースエステルであることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
式(2) 0.3≦Y≦2.0
(式中、Xは酢酸による置換度であり、Yはイソ酪酸又はピバリン酸による置換度を表す。)
(請求項3)
前記セルロースエステルの重量平均分子量が、20万以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルム。
前記酢酸イソ酪酸セルロースまたは酢酸ピバリン酸セルロースを含有するフィルム形成材料を、150℃以上250℃以下の溶融温度で加熱溶融し、溶融流延法によって製造したことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の光学フィルム。
前記フィルム形成材料中に、1%質量減少温度Td(1.0)が、250℃以上である可塑剤を含有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の光学フィルム。
前記フィルム形成材料中に、安定化剤として、1%質量減少温度Td(1.0)が、250℃以上である酸捕捉剤または酸化防止剤の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の光学フィルム。
前記セルロースエステルの置換度が、下記式(3)、(4)を満たすセルロースエステルであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学フィルム。
式(4) 0.5≦Y≦1.0
(式中、X,Yは前記式(1),(2)における各々X,Yと同義である。)
(請求項8)
前記可塑剤が、多価アルコールエステルであることを特徴とする請求項5〜7の何れか1項に記載の光学フィルム。
前記フィルム形成材料中に、前記安定化剤としてさらに、Td(1.0)が250℃以上であるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含有することを特徴とする請求項6〜8の何れか1項に記載の光学フィルム。
前記溶融流延法によって製造された光学フィルムのセルロースエステルの重量平均分子量が15万以上であることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の光学フィルム。
請求項1〜10の何れか1項に記載の光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いたことを特徴とする偏光板。
液晶表示セルの両面に請求項11に記載の偏光板が配置されたことを特徴とする液晶表示装置。
マルチドメイン型の垂直配向モードであることを特徴とする請求項12に記載の液晶表示装置。
本発明の光学フィルムは、下記のセルロースエステルを80質量%〜99質量%含有するフィルム形成材料を用いて形成されたことを特徴とする。
式(2) 0.3≦Y≦2.0
即ち、セルロースエステルのアシル基として酢酸とイソ酪酸或いは酢酸とピバリン酸とのセルロースエステルを用いることにより、溶融流延法において優れた光学フィルムが得られることを見いだしたものである。従来技術として、酢酸とプロピオン酸のセルロースエステル(CAP)や酢酸と酪酸のセルロースエステル(CAB)が溶融流延法により製膜し得るものであることは知られていたが、本発明は一方のアシル基のアルキル基を分岐アルキル基とすることにより、より溶融流延法に適し、優れた光学フィルムが得られることを見いだしたものである。
また分岐鎖有機酸による置換度であるYの値は、0.1より大きく2.0より小さい範囲が好ましい。0.1以下ではセルロースエステルの溶融温度低下の効果が小さく、2.0以上では得られるセルロースエステルの力学強度が不足する。より好ましくは0.5以上1.0以下の範囲である。
安定化剤とは、高分子が熱や酸素、水分、酸などによって分解されることを化学的な作用によって抑制する材料のことである。本発明の光学フィルムは、200℃程度の高温下で成形されるため、高分子の分解・劣化が起きやすい系であり、安定化剤をフィルム形成材料中に含有させることが好ましい。
セルロースエステルは高温下では熱だけでなく酸素によっても分解が促進されるため、本発明の光学フィルムにおいては安定化剤として酸化防止剤を含有することが好ましい。本発明において有用な酸化防止剤としては、酸素によるフィルム形成材料の劣化を抑制する化合物であれば制限なく用いることができるが、中でも有用な酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、耐熱加工安定剤、酸素スカベンジャー等が挙げられ、これらの中でもフェノール系酸化防止剤、特にヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。これらの酸化防止剤を配合することにより、透明性、耐熱性等を低下させることなく、溶融成型時の熱や熱酸化劣化等による成形体の着色や強度低下を防止できる。これらの酸化防止剤は、それぞれ単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、本発明に係る重合体100質量部に対して好ましくは0.001〜5質量部、より好ましくは0.01〜2質量部である。
セルロースエステルは高温下では酸によっても分解が促進されるため、本発明の光学フィルムにおいては安定化剤として酸捕捉剤を含有することが好ましい。本発明において有用な酸捕捉剤としては、酸と反応して酸を不活性化する化合物であれば制限なく用いることができるが、中でも米国特許第4,137,201号明細書に記載されているような、エポキシ基を有する化合物が好ましい。このような酸捕捉剤としてのエポキシ化合物は当該技術分野において既知であり、種々のポリグリコールのジグリシジルエーテル、特にポリグリコール1モル当たりに約8〜40モルのエチレンオキシドなどの縮合によって誘導されるポリグリコール、グリセロールのジグリシジルエーテルなど、金属エポキシ化合物(例えば、塩化ビニルポリマー組成物において、及び塩化ビニルポリマー組成物と共に、従来から利用されているもの)、エポキシ化エーテル縮合生成物、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(即ち、4,4′−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン)、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル(特に、2〜22この炭素原子の脂肪酸の4〜2個程度の炭素原子のアルキルのエステル(例えば、ブチルエポキシステアレート)など)、及び種々のエポキシ化長鎖脂肪酸トリグリセリドなど(例えば、エポキシ化大豆油など)の組成物によって代表され例示され得るエポキシ化植物油及び他の不飽和天然油(これらはときとしてエポキシ化天然グリセリドまたは不飽和脂肪酸と称され、これらの脂肪酸は一般に12〜22個の炭素原子を含有している)が含まれる。また、市販のエポキシ基含有エポキシド樹脂化合物として、EPON 815C、及び下記一般式(2)の他のエポキシ化エーテルオリゴマー縮合生成物も好ましく用いることができる。
(ヒンダードアミン光安定剤)
本発明において、フィルム構成材料の熱溶融時の安定化剤、また製造後に偏光子保護フィルムとして晒される外光や液晶ディスプレイのバックライトからの光に対する安定化剤として、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)化合物が挙げられ、これは既知の化合物であり、例えば、米国特許第4,619,956号明細書の第5〜11欄及び米国特許第4,839,405号明細書の第3〜5欄に記載されているように、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン化合物、またはそれらの酸付加塩もしくはそれらと金属化合物との錯体が含等まれる。このような化合物としては、下記一般式(3)で表される化合物が挙げられる。
本発明の光学フィルムを液晶セルに対して外側に用いる偏光子保護フィルムとして用いる場合には、安定化剤として更に紫外線吸収剤を含有することが好ましい。紫外線吸収剤とは、製造後に使用される環境下で紫外線によってフィルムを構成する材料が分解することを防ぐ効果のある材料である。セルロースエステル自体は比較的紫外線に対して強い材料であるが、その他の添加剤については紫外線に対して弱い化合物である場合もあるし、偏光子や液晶セルも紫外線に対して弱い化合物から形成されているため、少なくとも外光があたる側の偏光子保護フィルムや、液晶ディスプレイのバックライトが入射する側の偏光子保護フィルムに付いては紫外線吸収剤を含有することが好ましい。
本発明の溶融流延による光学フィルムに形成においては、フィルム形成材料中に少なくとも1種の可塑剤を添加することが必要である。
なお可塑剤も、上記のように添加によってセルロースエステルの熱溶融プロセスにおける劣化を抑制する効果があるが、その効果は物理的な効果によるものであり、化学的な効果に起因するものではないため、本発明においては安定化剤としては分類しない。
本発明においては、セルロースエステルに安定化剤、可塑剤や紫外線吸収剤の他、種々の添加剤を含有することができる。
本発明の光学フィルムは、例えば、特許第3341134号公報に記載されているような、通常の溶液流延法によって製膜することも可能であるが、溶融流延法を用いて製膜することで、より寸法安定性の高く高品質な光学フィルムを得ることができる。
溶融流延法としては、例えば、米国特許第2,492,978号、同第2,739,070号、同第2,739,069号、同第2,492,977号、同第2,336,310号、同第2,367,603号、同第2,607,704号、英国特許第64,071号、同第735,892号、特公昭45−9074号、同49−4554号、同49−5614号、同60−27562号、同61−39890号、同62−4208号に記載の方法を参照して製膜できる。
本発明の光学フィルム製造に際し、延伸の前及び/または後で帯電防止層、透明導電層、ハードコート層、反射防止層、防汚層、易滑性層、易接着層、防眩層、ガスバリア層、光学補償層等の機能性層を塗設してもよい。特に、帯電防止層、ハードコート層、反射防止層、易接着層、防眩層及び光学補償層から選ばれる少なくとも1層を設けることが好ましい。この際、コロナ放電処理、プラズマ処理、薬液処理等の各種表面処理を必要に応じて施すことができる。
本発明の光学フィルムは、延伸操作により屈折率制御を行うことができる。延伸操作としては、セルロースエステルの1方向に1.0〜2.0倍及びフィルム面内にそれと直交する方向に1.01〜2.5倍延伸することで好ましい範囲の屈折率に制御することができる。
液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、本発明の光学フィルムを適用した偏光子保護フィルムは寸法安定性が高いため、どの部位に配置しても優れた表示性が得られる。液晶表示装置の表示側最表面の偏光子保護フィルムには、クリアハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられた偏光子保護フィルムをこの部分に用いることが好ましい。また光学補償層を設けた偏光子保護フィルムや、延伸操作等によりそれ自身に適切な光学補償能を付与した偏光子保護フィルムの場合には、液晶セルと接する部位に配置することで、優れた表示性が得られる。特にマルチドメイン型の液晶表示装置、より好ましくは複屈折モードによってマルチドメイン型の液晶表示装置に使用することが本発明の効果をより発揮することが出来る。
〈セルロースエステルの分子量測定〉
セルロースエステルの平均分子量及び分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーを用い測定できるので、これを用いて重量平均分子量(Mw)を算出することができる。
カラム: Shodex K806,K805,K803(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
ASTM D817−96に基づき、下記のようにして置換度DSを求めた。
乾燥したセルロースエステル1.90gを精秤し、アセトン70mlとジメチルスルホキシド30mlを加え溶解した後、さらにアセトン50mlを加えた。攪拌しながら1モル/L水酸化ナトリウム水溶液30mlを加え、2時間ケン化した。熱水100mlを加え、フラスコ側面を洗浄した後、フェノールフタレインを指示約として0.5モル/L硫酸で滴定した。別に試料と同じ方法で空試験を行なった。滴定が終了した溶液の上澄み液を100倍に希釈し、イオンクロマトグラフを用いて、常法により有機酸の組成を測定した。測定結果とイオンクロマトグラフによる酸組成分析結果から、下記式により置換度を計算した。
X=(162.14×TA)/{1−42.14×TA+(1−SA×TA)×(Y/X)}
Y=X×(Y/X)
DS=X+Y
A:試料滴定量(ml)
B:空試験滴定量(ml)
F:0.5モル/L硫酸の力価
W:試料質量(g)
TA:全有機酸量(mol/g)
Y/X:イオンクロマトグラフで測定した酢酸と酢酸以外の酸とのモル比
X:酢酸による置換度
Y:イソ酪酸又はピバリン酸による置換度
SA:Yがイソ酪酸のとき70.09、ピバリン酸のとき84.12
〈セルロースの分取〉
Indian J.Chem.Tech.,vol.3(1996)p333に記載の方法を参考にして分子量の異なるセルロースの分取を行った。
Polymers for Advanced Technologies,vol.14(2003),p478を参考にして、各種のセルロースエステルを合成した。
セルロースMを100質量部(100モル部)と、塩化リチウム420質量部(1600モル部)と、酢酸30質量部(80モル部)、ピバリン酸を138質量部(220モル部)とを、ジメチルアセトアミド1000質量部(体積で10倍)に混合した溶液に、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を380質量部(300モル部)、ジメチルアミノピリジン130質量部(170モル部)、ジメチルアミノピリジン−トシル酸塩130質量部(70モル部)を室温で加え、DCCが完全に消費されるまで24時間攪拌した。反応終了後、5000質量部の蒸留水を加えて生成した白色沈殿を濾別した。濾別した固形物を純水で数回洗浄した後、メタノールで24時間ソックスレー抽出を行い、最後に70℃で真空乾燥することでセルロースエステルa1を得た。得られたセルロースエステルの置換度、分子量は後述の測定法にしたがって実施し、測定結果については表1に記載した。
酢酸30質量部(80モル部)を63質量部(170モル部)に、ピバリン酸138質量部(220モル部)を82質量部(130モル部)に変更した以外はセルロースエステルa1と同様にして合成を行い、セルロースエステルa2を得た。
酢酸30質量部(80モル部)を81質量部(220モル部)に、ピバリン酸138質量部(220モル部)を50質量部(80モル部)に変更した以外はセルロースエステルa1と同様にして合成を行い、セルロースエステルa3を得た。
酢酸30質量部(80モル部)を93質量部(250モル部)、ピバリン酸138質量部(220モル部)を31質量部(50モル部)と変更した以外はセルロースエステルa1と同様にして合成を行い、セルロースエステルa4を得た。
酢酸81質量部(220モル部)を74質量部(200モル部)に、DCCを380質量部(300モル部)を355質量部(280モル部)に変更した以外はセルロースエステルa3同様にして合成を行い、セルロースエステルa5得た。
酢酸81質量部(220モル部)を93質量部(250モル部)に、DCCを380質量部(300モル部)を418質量部(330モル部)に変更した以外はセルロースエステルa3同様にして合成を行い、セルロースエステルa6を得た。
セルロースエステルの原料、セルロースMをセルロースHとした以外は、セルロースエステルa3と同様にして合成を行い、セルロースエステルa5を得た。
セルロースエステルの原料、セルロースMをセルロースLとした以外は、セルロースエステルa3と同様にして合成を行い、セルロースエステルa6を得た。
ピバリン酸138質量部(220モル部)をイソ酪酸120質量部(220モル部)に変更した以外は、セルロースエステルa1と同様にして合成を行い、セルロースエステルb1を得た。
ピバリン酸82質量部(130モル部)をイソ酪酸71質量部(130モル部)に変更した以外は、セルロースエステルa2と同様にして合成を行い、セルロースエステルb2を得た。
ピバリン酸50質量部(80モル部)をイソ酪酸43質量部(80モル部)に変更した以外は、セルロースエステルa3と同様にして合成を行い、セルロースエステルb3を得た。
ピバリン酸12質量部(20モル部)をイソ酪酸10質量部(20モル部)に変更した以外は、セルロースエステルa4と同様にして合成を行い、セルロースエステルb4を得た。
セルロースエステルの原料、セルロースMをセルロースHに変更した以外は、セルロースエステルb3と同様にして合成を行い、セルロースエステルb5を得た。
セルロースエステルの原料、セルロースMをセルロースLに変更した以外は、セルロースエステルb3と同様にして合成を行い、セルロースエステルb6を得た。
ピバリン酸50質量部(80モル部)をプロピオン酸36質量部(80モル部)に変更した以外は、セルロースエステルa3と同様にして合成を行い、セルロースエステルc1を得た。
イソ酪酸43質量部(80モル部)を酪酸43質量部(80モル部)に変更した以外は、セルロースエステルb3と同様にして合成を行い、セルロースエステルc2を得た。
合成例で合成したセルロースエステル(a1〜a8、b1〜b6、c1〜c2)を90質量部、可塑剤を10質量部、酸化防止剤を1.0質量部、紫外線吸収剤を1.0質量部と粉体のまま混合後、2軸押し出し機へフィードした。酸捕捉剤は常温で液体であるため、別途液体用のフィーダによってバレル内にフィードした。バレル内の温度(溶融温度)は表1に記載の温度、スクリュ回転数は200rpmとし、最終的に得られる光学フィルムの膜厚が80μmとなるように製膜した。なお各試料における添加剤の種類等の実験処方についても表1に記載した。
・多価アルコールエステル系可塑剤 TMPTB(旭電化製 トリメチロールプロパントリベンゾエート):262℃、EPEG(東京化成製 エチルフタリルエチルグリコレート):200℃
・リン酸エステル系可塑剤 PFR(旭電化社製 アデカスタブPFR):273℃、TPP(東京化成製 トリフェニルホスフェート):237℃
・ヒンダードフェノール系酸化防止剤 I1010(チバスペシャルティケミカルズ社製 イルガノックス1010):295℃
・ヒンダードアミン光安定剤 C2020(チバスペシャルティケミカルズ社製 チマソーブ2020):278℃
・エポキシ系酸捕捉剤 V7190(アトフィナ社製 バイコフレックス7190):286℃
・ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 T360(チバスペシャルティケミカルズ製 チヌビン360):323℃
・ベンゾフェノン系紫外線吸収剤 MBHMB(アルドリッチ製 5,5′−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4メトキシベンゾフェノン)):303℃
A1〜A7、B1〜B5、C1〜C3、E1〜E4、について、以下の評価を行った。
上記作製した各フィルム試料を、幅手方向(TD方向)で10mm、搬送方向(MD方向)で200mm切り出し、23℃、相対湿度55%の雰囲気下で12時間調湿を行った後、オリエンテック社製のテンシロン(RTA−100)を用い、搬送方向(MD方向)の上下端をチャックで固定し、チャック間の距離を100mmに設定して、引張り速度100mm/minで引張り、MD方向の弾性率(GPa)を測定した。数値が大きいほど、引張りに対する強度が高いことを表す。
23℃55%RH環境下で王子計測機器(株)製自動複屈折計KOBRA−21ADHを用いて測定し、各透明フィルムの面内のX方向、Y方向の屈折率の差に、厚みを80μmと仮定して乗じた値を複屈折(nm)として表した。
フィルム試料について、長手方向150mm×幅手方向120mmサイズに断裁し、該フィルム表面に100mm間隔で長手方向(MD)および幅手方向(TD)の各々2ヶ所にカミソリ等の鋭利な刃物で十文字型の印を付し、23℃55%RHの環境下で24時間以上調湿し、工場顕微鏡で処理前の長手方向、及び幅手方向のそれぞれの印間距離L1を測定する。次に、該試料を電気高温槽中で高温処理(条件;90℃の環境下で120時間放置する)あるいは高温高湿処理(条件;80℃90%RHの環境下で120時間放置する)する。再び、該試料を23℃55%RHの環境下で24時間調湿し、工場顕微鏡で処理後の長手方向及び幅手方向のそれぞれの印間距離L2を測定する。この処理前後の変化率を次式によって求める。
(式)寸法変化率(%)=(L2−L1)/L1×100
L1:処理前の印間距離
L2:処理後の印間距離
〈耐光性評価〉
前記作製したセルロースエステルフィルムをスガ社製耐光性評価試験機に500時間投入し、投入前後での380nmにおける光の透過率を測定し、減衰率△T(%)を評価した。
〇:変化度2%以上10%未満(偏光子保護フィルムとして問題ないレベル)
△:変化度10%以上20%未満(偏光子保護フィルムとして何とか使えるレベル)
×:変化度20%以上(偏光子保護フィルムとして問題のあるレベル)
また、以下の手順に従って、得られた偏光子保護フィルムを偏光子の両面に貼合し、偏光板としての耐久性を評価した。
(偏光板の作製)
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを沃素1質量部、沃化カリウム2質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液に浸漬し、50℃で4倍に延伸して偏光子を作製した。
実施例または比較のフィルムA1〜E6を、40℃の2.5M/L−水酸化ナトリウム水溶液で60秒間アルカリ処理し、更に水洗乾燥して表面をアルカリ処理した。
500mm×500mmの偏光板試料2枚を熱処理(条件:90℃で100時間放置する)し、直行状態にした時の縦又は横の中心線部分のどちらか大きいほうの縁の白抜け部分の長さを測定して辺の長さ(500mm)に対する比率を算出し、その比率に応じて下記のように判定した。縁の白抜けとは直行状態で光を通さない偏光板の縁の部分が光を通す状態になることで、目視で判定できる。偏光板の状態では縁の部分の表示が見えなくなる故障となる。
○:縁の白抜けが5%以上10%未満(偏光板として問題ないレベル)
△:縁の白抜けが10%以上20%未満(偏光板として何とか使えるレベル)
×:縁の白抜けが20%以上(偏光板として問題のあるレベル)
評価結果を表2に示す。
(液晶表示装置としての特性評価)
32型TFT型カラー液晶ディスプレーベガ(ソニー社製)の偏光板を剥がし、上記で作製した各々の偏光板を液晶セルのサイズに合わせて断裁した。液晶セルを挟むようにして、前記作製した偏光板2枚を偏光板の偏光軸がもとと変わらないように互いに直交するように貼り付け、32型TFT型カラー液晶ディスプレーを作製し、セルロースエステルフィルムの偏光板としての特性を評価したところ、本発明の偏光板A3〜A6、B2〜B4、E2〜E4はコントラストも高く、優れた表示性を示した。これにより、液晶ディスプレーなどの画像表示装置用の偏光板として優れていることが確認された。
Claims (13)
- 主として酢酸イソ酪酸セルロース、または酢酸ピバリン酸セルロースからなることを特徴とする光学フィルム。
- 前記酢酸イソ酪酸セルロースまたは酢酸ピバリン酸セルロースが、下記式(1)および(2)を満たすセルロースエステルであることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
式(1) 2.4≦X+Y≦2.9
式(2) 0.3≦Y≦2.0
(式中、Xは酢酸による置換度であり、Yはイソ酪酸又はピバリン酸による置換度を表す。) - 前記セルロースエステルの重量平均分子量が、20万以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルム。
- 前記酢酸イソ酪酸セルロースまたは酢酸ピバリン酸セルロースを含有するフィルム形成材料を、150℃以上250℃以下の溶融温度で加熱溶融し、溶融流延法によって製造したことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の光学フィルム。
- 前記フィルム形成材料中に、1%質量減少温度Td(1.0)が、250℃以上である可塑剤を含有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の光学フィルム。
- 前記フィルム形成材料中に、安定化剤として、1%質量減少温度Td(1.0)が、250℃以上である酸捕捉剤または酸化防止剤の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の光学フィルム。
- 前記セルロースエステルの置換度が、下記式(3)、(4)を満たすセルロースエステルであることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の光学フィルム。
式(3) 2.5≦X+Y≦2.7
式(4) 0.5≦Y≦1.0
(式中、X,Yは前記式(1),(2)における各々X,Yと同義である。) - 前記可塑剤が、多価アルコールエステルであることを特徴とする請求項5〜7の何れか1項に記載の光学フィルム。
- 前記フィルム形成材料中に、前記安定化剤としてさらに、Td(1.0)が250℃以上であるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含有することを特徴とする請求項6〜8の何れか1項に記載の光学フィルム。
- 前記溶融流延法によって製造された光学フィルムのセルロースエステルの重量平均分子量が15万以上であることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の光学フィルム。
- 請求項1〜10の何れか1項に記載の光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いたことを特徴とする偏光板。
- 液晶表示セルの両面に請求項11に記載の偏光板が配置されたことを特徴とする液晶表示装置。
- マルチドメイン型の垂直配向モードであることを特徴とする請求項12に記載の液晶表示装置。
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