JP2005523163A - フラックスがコーティングされたブレージングシート - Google Patents

Abstract

ろう付け用混合物であって、ろう付け用フラックス、ポリビニルブチラール樹脂バインダー及び有機溶媒から構成され、アルミニウム合金ブレージングシートの全体に適用することができるし、又はブレージングシートの金属接合が必要な部分にのみ適用することもでき、加工工程で十分に耐えることができて、ろう付け工程において良好な金属接合を形成することができる。

Description

本発明は、２以上の金属物品をろう付けによって接合する技術に関する。より具体的には、本発明は、ろう付け用フラックス混合物並びに該ろう付け用フラックス混合物を用いてブレージングシートを製造する方法に関する。

アルミニウム合金は、その軽量性及びすぐれた伝熱特性により、エバポレータ、ラジエータ、ヒータ、コンデンサー等の熱交換器の構築に用いられる。熱交換器は、一般的には、圧延シート又は押出品から形成されたアルミニウム合金部品から作られる。これら部品(parts)は、組み立てられ、固定され、清浄化され、ろう付け工程で接合される。ろう付け工程では、各々がアルミニウム合金ろう材(例えば、Ａｌ−Ｓｉ合金)で被覆された２以上の部品が、接合される表面を互いに接近させて配置される。これら部品を加熱するときは、ろう材合金は溶けるが、基礎となる(underlying)部品のコア合金は溶けない温度で行われる。各部品のろう材合金は溶融して、部品の隙間が塞がれる。冷却されると、ろう材合金は凝固し、両部品間に金属接合が形成される。ろう材合金は、一般的には、圧延接合法にてアルミニウム素材の表面にクラッドとして施される。

ろう付け工程では、一般的に、ろう付けされる表面から油分等を除去するために、適当な溶剤を用いて、ろう付け部品の清浄作業が行われ、その後で、ろう付け前の部品に適当なフラックスが塗布される。フラックスが塗布された部品は、酸化を防止するために、ドライ窒素等の制御された雰囲気中で加熱される。フラックスは、ろう付けで接合される部品の接合面の酸化を防止するために用いられる。

最も一般的に行われているろう付け作業では、ろう付けを行なう前に、フラックスが塗布され、その塗布は、ろう付けされる個々の部品が作製された後、部品(例えば、ラジエータ、コンデンサー又はヒータ)に組み立てて固定した後か、又は内部でろう付けされた部品(エバポレータ)を有する熱交換器を組み立てる前に行われる。フラックスは、ワークピースの全体に、乾燥粉末として直接施されるか、又は、水、アルコール等のキャリヤーと混合されてスラリーとして施される。スラリーとして施される場合、キャリヤーは乾燥工程で除去され、フラックスは、ろう付けされる部品の表面に粉末として残される。

フラックスの塗布が必要とされるのは、金属接合が必要な領域のみである。しかしながら、これまでの製造法では、フラックスは組立品の全体に施され、ろう付け部品をろう付け炉の中へ装入するのに用いられる取付具にまで施されることがある。このため、フラックスの過剰使用又は無駄が生じ、取付具の清浄が必要となり、また、フラックスの腐食性による炉のメンテナンスが増す等の問題がある。さらに、余分なフラックスを塗布し除去するための工程に時間を要して、コスト高を招く。また、フラックスを粉末で使用すると、部品の接合不良を生ずることがある。それゆえ、フラックスが塗布された部品のろう付け作業前の取扱いについては、フラックスが脱落しないように注意を払う必要がある。

組み立てられた部品の全体にフラックスを塗布する代わりに、金属シートを部品に加工又は成形する前に、該シートにフラックスを塗布する方法がある。金属シートを所望部品へ成形する前に、該シートにフラックスを塗布する場合、フラックスは、部品と部品を接合するためのろう材合金クラッドにのみ施されるという利点がある。金属のクラッド無しの領域は、接合が不要であり、フラックスは塗布しなくてもよい。しかしながら、フラックスがコートされたブレージングシートがこれまで広く普及していないのは、フラックスコーティングに対する要請が厳しいためである。シートに予めフラックス処理されたフラックスは、スタンピング工程及びフォーミング工程に耐え得るもので、成形用潤滑剤に曝されても劣化せず、また、ろう付け工程を妨げるものであってはならない。

それゆえ、アルミニウム合金ブレージングシートの全体に適用することができるか、又は金属接合が必要な部分にのみブレージングシートに適用することができるろう付け用フラックス混合物であって、スタンピング、フォーミングのような加工工程及びろう付け前の取扱いに十分に耐えることができ、ろう付け工程において良好な金属接合を形成することができるろう付け用フラックス混合物に対する要請がある。

それゆえ、本発明の目的は、アルミニウム合金ブレージングシートの全体に適用することができるし、ブレージングシートの金属接合が必要な部分にのみ適用することができるろう付け用フラックス混合物であって、処理工程で十分に耐えることができ、ろう付け工程において良好な金属接合を形成することができるろう付け用フラックス混合物を提供することである。

本発明のさらなる目的及び利点については、当該分野の専門家であれば、具体的な望ましい実施例に関する以下の説明を参照することによって明らかになるであろう。

本発明は、所定形状に成形する前の未成形ブレージングシートをコーティングするために用いられるろう付け用フラックス混合物を提供する。混合物は、ろう付け用フラックス、ポリビニルブチラール樹脂バインダー、及び有機溶媒から構成される。

本発明はまた、ろう付け用フラックス混合物を製造する方法を提供するもので、ろう付け用フラックスをポリビニルブチラールバインダーと混ぜ合わせて、第１混合物を生成し、前記第１混合物を剪断して、バインダー中にろう付け用フラックス粒子が均一に分散された第２混合物を生成し、前記第２混合物と有機溶媒を混ぜ合わせて、ろう付け用フラックス混合物を生成するものである。

本発明はまた、フラックスがコートされたアルミニウムブレージングシートを製造する方法を提供するもので、(ａ)ろう付け用フラックス及びポリビニルブチラールバインダーに、有機溶剤を選択的に加え、これらを混合して第１混合物を生成し、(ｂ)前記第１混合物を剪断して、ろう付け用フラックス粒子が均一に分散された第２混合物を生成し、(ｃ)前記第２混合物と有機溶媒を混合して、ろう付け用フラックス混合物を生成し、(ｄ)アルミニウムブレージングシートの表面の少なくとも一部に、ろう付け用フラックス混合物のコーティングを形成し、(ｅ)アルミニウムブレージングシート上のろう付け用混合物を乾燥させることを含んでいる。

本発明は、アルミニウム合金ブレージングシートの全体に、又はブレージングシートの金属接合が必要な部分にのみ適用することができるろう付け用フラックス混合物を提供するものである。ろう付け用フラックス混合物は、アルミニウム合金ブレージングシートのフォーミング、スタンピング等の部品製造工程で十分耐えることができ、所定の金属ろう付け接合をもたらすことができるものである。

ろう付け用フラックス混合物は、ろう付け用フラックス、ポリビニルブチラール樹脂バインダー、及び有機溶媒から構成される。

ろう付けフラックスは、２以上のアルミニウム合金物体をろう付けによって接合するのに適したフラックス材であれば、どんなフラックス材でもよい。望ましいろう付け用フラックスは、フルオロアルミン酸カリウム(potassium fluoroaluminate)(Ｋ_1-3ＡｌＦ_4-6)から構成される。この望ましいフラックスとして、Solvay Fluor und Derivate GmbH製の商標名NOCOLOKフラックスがある。適当なろう付け用フラックスは、塩化物、基本金属の中のマグネシウムに対する耐性を向上させるためのセシウム(Ｃｓ_0.02Ｋ_1-2ＡｌＦ_4-5)、耐食性を付与するための亜鉛(ＫＺｎＦ₃)、ろう付けの接合性能を向上させるためのシリコン(Ｋ_1-3ＡｌＦ_4-6＋シリコン粉末)等の元素を含むこともできる。

本発明のポリビニルブチラール樹脂バインダーは、ポリビニルアルコールとブチルアルデヒドとの反応生成物である。望ましいポリビニルブチラール樹脂バインダーは、ビニルアルコール約１０〜２１重量％、ビニルアセタール約１〜２重量％を含み、９５％エチルアルコール中１０％ＴＮＶでの粘度が、２５℃(７７^oＦ)で１５〜２５００センチポアズである。市販されている望ましいバインダーとして、Wacker Polymer Systems GmbH & Company KG製の商標名PIOLOFORM BN18、ニュージャージー州ミドルトンのSynthetic Specialties Company製のSekisui S-Lec BM5Z、SolutiaのButvar B-75樹脂がある。

本発明に用いられる有機溶媒は、ろう付け用フラックスとポリビニルブチラール樹脂バインダーを均一に混合できるものであれば、どんな有機溶媒でもよい。有機溶媒として、例えば酢酸エチル、酢酸ｎ−ブチル及び酢酸ｎ−プロピル等のエステル、アセトン及びシクロヘキサノン等のケトンを用いることができる。なお、芳香族炭化水素は単独ではポリビニルブチラール樹脂の有効な溶媒ではないが、芳香族炭化水素(例えばトルエン)とアルコールの混合物は適当な溶媒となる。本発明の望ましい溶媒は、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ｎ−ブタノール、ｎ−プロピルアルコール、ジアセントンアルコール等のアルコールである。本発明の溶媒として、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル及びプロピレングリコールメチルエーテル等のグリコールエーテル及び酢酸グリコールエーテルもまた適当な溶媒である。最も望ましい溶媒は、酢酸グリコールメチルエーテル、イソプロピルアルコール及び酢酸エチルの混合物、又はジプロピレンモノメチルグリコールエーテル、イソプロピルアルコール及び酢酸エチルの混合物である。

ろう付け用フラックス混合物は、ろう付け用フラックスをポリビニルブチラールバインダーと混合し(combine)、次に、フラックスとバインダーの混合物を有機溶媒と混合することによって調製される。フラックスとバインダーの混合方法として、フラックスとバインダーを剪断作用に付すことが望ましい。剪断方法は、例えば、高速ミキサー、媒体ミル又は２ロールミルなど、当該分野で既知のどんな方法でもよい。２ロールミルは、夫々、回転数と回転方向が互いに異なる２本の円筒ロールを具えている。剪断は、フラックスとバインダーの混合物が２本のロールの間を通過するときに起こる。

剪断作用を促進するために、剪断を行なう前又は剪断作業中に、前述したアルコール、酢酸塩(アセテート)、グリコールエーテル又はこれら混合物の有機溶媒を、フラックス−バインダー組成物に加えることもできる。剪断作用を促進するために最も好適な溶媒はイソプロピルアルコールである。

本発明において適当なバインダーの量とは、取扱い作業、フォーミング及びスタンピング工程において、ろう付けされる物品の表面でのフラックスの付着状態が維持されるのに十分な量であり、かつ、ろう付け接合作用の妨げとならない量である。剪断によって混合するフラックス−バインダー組成物は、バインダー約５〜３０重量％、フラックス約７０〜９５重量％を含み、選択的に有機溶媒約１０重量％を含むことができ、合計で１００重量％となる。最も好適なフラックス−バインダー組成物は、バインダー約５〜１５重量％、フラックス約８５〜９５重量％を含むもので、選択的に有機溶媒約１０重量％以下を含むことができ、合計で１００重量％となる。

剪断作用によって、バインダー中のフラックスは均一に分配され、混合物中に均一な粒子サイズのフラックスが分配される。発明者らは、フラックスの粒子サイズが均一であると、ろう付けされる物品に対してフラックスのコーティングが均一に施され、乾燥フラックスの金属物品への付着が円滑に行われるものと考えている。フラックスの粒子サイズは、混合物に作用する剪断力の大きさ、混合物の粘度、混合物の組成によって異なるが、発明者らは、望ましい粒子サイズは約１μｍ以下であると考えている。

次に、フラックス−バインダー組成物を、極性有機溶媒又は極性有機溶媒の混合物の中で溶解させて、アルミニウム合金ブレージングシート又はろう付けされる部品をコーティングするのに適した混合物が生成される。

本発明の混合物中の溶媒の量は、フラックスとバインダーを、金属基材の上に均一に分配させるのに十分な量である。溶媒の望ましい量は、溶媒約１０〜７０重量％で、フラックス−バインダー組成物約３０〜９０重量％である。溶媒の最も望ましい量は、溶媒約３０〜６０重量％で、フラックス−バインダー組成物約４０〜７０重量％である。

本発明の最も望ましいろう付け用混合物は、フルオロアルミン酸カリウムフラックス約６２重量％、ポリビニルブチラール樹脂バインダー約６.９重量％、ジプロピレンモノメチルエーテルのプロピレングリコールメチルエーテルアセテート約２７.５重量％、イソプロピルアルコール約２.３重量％及び酢酸エチル約１.３重量％である。

溶媒ベースの混合物は、アルミニウムブレージングシートに良好な表面濡れ性をもたらし、コーティングされるアルミニウム製品に応じて、本発明のろう付け用フラックス混合物のコーティングを形成する前に、ブレージングシートを清浄することが好ましい。Ｈ１Ｘテンパーの状態に作製され、表面に圧延用潤滑剤が残存するシートの場合、清浄によって本発明の混合物の接着性は向上する。−Ｏテンパー又は−Ｈ２Ｘテンパーの状態に作製され、最終のアニーリング中に圧延用潤滑剤が燃焼するシートの場合、本発明のろう付け用フラックス混合物を適用する前にブレージングシートを清浄しても、混合物の接着性にはあまり効果がない。適当な清浄用溶液として、有機溶媒及び水性クリーナを挙げることができる。

本発明のろう付け用フラックス混合物のアルミニウム合金ブレージングシートへの適用は、公知の圧延コーティング法、浸漬法、スプレー法、はけ塗り等の手操作によるコーティング等によって行なうことができる。ろう付けの作業条件に応じて、シートへのコーティングは、一方の面又は両面の全部又は一部に施すことができる。コーティング後、本発明の混合物の溶媒成分を取り除いて、乾燥を容易に行なうことができるように、シートを加熱することもできる。ろう付けの作業条件にもよるが、シートの表面に残存する乾燥フラックスの量は、ブレージングシート１平方メートルにつき約２〜約４０グラム(ｇ／ｍ²)であり、望ましくは約３〜２０ｇ／ｍ²であり、最も望ましくは約３ｇ／ｍ²〜約１０ｇ／ｍ²である。

材料の識別を容易にするために、適当な着色顔料をコーティング組成物に添加して、着色されたコーティングを形成することができる。適当な顔料として、ピグメントブルー１５フタロブルー、タロシアニンブルー１５：４、ピグメントレッド５２Ｂインレッド、ボンレッド５２、ピグメントグリーン７フタログリーン及びタロシアニングリーン７を挙げることができる。

本発明のフラックスコーティングと共に用いられることができる。アルミニウムブレージングシートは、コア合金が３ＸＸＸ、５ＸＸＸ又は６ＸＸＸアルミニウムで構成され、少なくとも一方の面が４ＸＸＸシリーズのろう付け用合金でクラッドされている。発明者らは、クラッドを設けていないアルミニウム合金シート及び押出物にも用いることができると考えている。

幾つかの具体的実施例を参照して本発明を説明するが、これらの実施例は単なる例示であって、本発明の範囲を限定するものではない。

ポリビニルブチラール１０重量％とフルオロアルミン酸カリウムフラックスNOCOLOK(商標名)９０重量％を混合し、得られた混合物を、２ロールミルを用いて高剪断分散処理して、コーティングＣ３１を調製した。次に、ポリビニルブチラールとNOCOLOKフラックスの高分散混合物の６８.９％を、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル３１.１重量％と結合し混合した。

コーティングは、＃６、＃７、＃８又は＃９のメイヤーロッド(Meyer rod)でドローダウン(draw down)することによって行ない、アルミニウムブレージングシート試料の両面にコーティングを均一に形成した。アルミニウムブレージングシートは、自動車用熱交換器(例えば、エバポレータ)の製造に商業的に用いられ、コア合金は３ＸＸＸアルミニウムで、マンガン約１％、銅０.３％、チタン０.１５％含んでいる。コアの夫々の面に形成された４ＸＸＸアルミニウムろう付け用合金は、シートの合計厚さの約１０％であり、シリコン約１０％を含んでいる。アルミニウムシートは厚さが約０.０１７インチで、完全焼きなまし、つまりＯテンパーされている。コーティングは、シートを５００^oＦの炉内で１５秒間入れて乾燥し、溶媒を蒸発させた。ドローダウンするのに用いられるメイヤーロッドの種類によるが、アルミニウムブレージングシート試料の片面での乾燥コーティングの重量は５〜１１ｇ／ｍ²であり、乾燥コーティングの厚さは約０.０００２〜０.０００６インチである。

鉛筆硬度試験により、コーティングされたシートの引掻抵抗性を調べた。鉛筆硬度は、３Ｂ、２Ｂ、Ｂ、ＨＢ、Ｆである。

コーティングの接着性を評価するためのろう付け試験を行なうために、実際のエバポレータプレートにならって小型のエバポレータプレートを作製した。このプレートは、市販の潤滑剤Draw Lube 485(インディアナ州、ブルーミントン、Circle-Prosco Inc.製)を用いて、５段階の順送り金型の上で、コーティングされたプレートをスタンピング加工によって作製した。スタンピング加工されたプレートを、指でこすって、コーティングロス(coating loss)を視覚検査した。評価基準は次の通りである。
合格：フォーミング工程で耐えることができるコーティングで、成形プレートの成形領域でのコーティングロスは極く僅かである。
不合格：フォーミング工程で耐えることができないコーティングで、成形プレートに有意的なコーティングロスがある。

ろう付け試験用小型エバポレータは、コーティングしたシートをスタンピングしたプレートと、コーティングしていない３００３合金フィンを交互に積み重ねて、適当に固定して作製され、部品は適所で保持される。次に、固定された部品は、炉の中に入れ、適当な窒素ガス雰囲気中で約６００℃に加熱してろう付けを行なった。ろう付け性の評価基準は次の通りである。
合格：ろう付け接合部は、良好なフィレットが形成され、表面には黒色炭素残留物は殆ど無いか全く無い。
不合格：ろう付け接合部は小さく不完全であり、表面には相当量の黒色炭素残留物がある。

コーティングについて、引掻抵抗、コーティング接着性及びろう付け性の試験結果を次の表１に示す。

コーティングと、２種類の市販の成形用潤滑剤の適合性を評価するために、重量減量を調べた。＃９メイヤーロッドを用いてコートされた計量済み２.５インチ×５インチ試料を、２種類の市販の成形用潤滑剤が入れられた室温のビーカーの中に浸漬した。潤滑剤は、Circle-Prosco Inc.のDraw Lube 485と、Calvary Industries Inc.のCAL Lube 180-M+である。５日後、試料を潤滑剤から取り出し、約４５０^oＦに加熱することによって脱脂し、再計量した。最初の計量と最後の計量の極く僅かな差を以下に示しており、コーティングは２種類の成形用潤滑剤と適合性を示した。

コーティングの乾燥試料について熱重量分析を行なった。コーティング試料は、空気中及び窒素中で、室温から約６００℃まで１０℃／分の速度で加熱しながら、連続的に計量した。得られた結果を図１に示しており、ポリビニルブチラールバインダーは、コーティング試料が５００℃に達するまでに、略完全に気化した。

ポリビニルブチラール以外のバインダーについて調査した。ＲＳ型とＳＳ型のニトロセルロースを含み、粘度グレードが１０〜１５センチポアズ及び６０〜８０秒の試料を試験した。コーティング接着性及び引掻抵抗性を向上させるために、重合調整剤(modifiers)として、アクリル酸ブチルとビニルイソブチルエーテルの共重合体、フタル酸ブチルベンジルとアジピン酸ジオクチルの共重合体を、１〜１００重量％の範囲でニトロセルロースに加えた。実験用バインダーは、NOCOLOK(登録商標)のフルオロアルミン酸カリウムと種々の割合で混合し、表１に記載した３０種類のコーティングを作製した。混合を促進し、フラックスの粒子サイズを小さくするために、フラックスバインダーの混合物を、異なる幾つかの型式の分散装置にて処理した。分散装置として、Cowlesの高速ミキサー、スチールショットを媒体とするミル、２ロール剪断ミルがある。次に、フラックスバインダー混合物を種々の溶媒と混合した。この溶媒として、酢酸イソプロピル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシプロパノール、ジプロピレンモノメチルグリコールエーテル、イソプロピルアルコール及びエチルアルコールがある。フラックスの脱落を少なくするために、幾つかのコーティング調製物に、ポリビニルピロリドンを懸濁化剤として加えた。また、コーティングの潤滑性向上のために、幾つかのコーティング調製物に、ポリエチレンを加えた。異なるメイヤーロッド＃３〜＃２２でドローダウンを作成し、アルミニウムブレージングシートの試料に対して均一なコーティングを施した。アルミニウムブレージングシートは、自動車用熱交換器(例えば、エバポレータ)の製造に商業的に用いられるもので、コア合金は、３ＸＸＸアルミニウムで、Ｍｎ：約１％、Ｃｕ：約０.３％、Ｔｉ：約０.１５％を含んでいる。コアの各面には、４ＸＸＸアルミニウムのろう付け用合金がクラッドされ、その厚さは、シートの全厚の約１０％で、Ｓｉ：約１０％を含んでいる。アルミニウムシートは、厚さ約０.０１７インチで、完全焼きなましされたＯテンパーである。コーティングは、シートを５００^oＦの炉内で１５秒間入れて乾燥し、溶媒を蒸発させた。ドローダウンするのに用いられるメイヤーロッドによるが、アルミニウムブレージングシート試料の片面での乾燥コーティングの重量は５〜３５ｇ／ｍ²であり、乾燥コーティングの厚さは約０.０００２〜０.００１２インチである。

コーティングされたシートを爪の指で引っ掻いて、コーティングの引掻抵抗性を主観的に評価した。シートの評価は、合格又は不合格のどちらかで判定した。

コーティングの接着性を評価するために、小カップ試料又は小型のエバポレータプレートを実際のエバポレータプレートにならって作製し、市販の潤滑剤Draw Lube 485(Circle-Prosco Inc.)を用いて、コーティングされたプレートをスタンピング加工した。スタンピング加工されたプレートを、指でこすって、コーティングロスを視覚検査した。評価基準は次の通りである。
合格：フォーミング工程で耐えることができるコーティングで、成形プレートの成形領域でのコーティングロスは極く僅かである。
不合格：フォーミング工程で耐えることができないコーティングで、成形プレートに有意的なコーティングロスがある

シートのろう付け性の評価は、標準の「Ｔジョイント」試料をろう付けすることにより、又はコーティングしたシートをスタンピングしたプレートと、コーティングしていない３００３合金フィンを交互に積み重ねて作製した小型エバポレータをろう付けすることにより行なった。試験用試料を炉の中に入れ、適当な窒素ガス雰囲気中で約６００℃に加熱してろう付けを行なった。ろう付け性の評価基準は次の通りである。
合格：ろう付け接合部は、良好なフィレットが形成され、表面には黒色炭素残留物は殆ど無いか全く無い。
不合格：ろう付け接合部は小さく不完全であり、表面には相当量の黒色炭素残留物がある。
コーティングについて、引掻抵抗、コーティング接着性及びろう付け性の試験結果を次の表３に示す。

表３の結果を参照すると、ろう付け用フラックス、ポリビニルブチラール樹脂バインダー及び有機溶媒からなるろう付け用フラックスコーティング混合物を用いて、金属物体上に形成されたフラックス−バインダーのコーティングだけが、スタンピング及び成形加工中も金属物体上の接着性を十分に維持することができ、適当なろう付けジョイントをもたらすことができることを示している。

ポリビニルブチラールの粘度と、フラックス／バインダーの比がコーティング性能に及ぼす影響を評価するために、コーティングを調製した。粘度が異なる市販のポリビニルブチラールの試料と、NOCOLOK(登録商標)のフルオロアルミン酸カリウムフラックスを種々の割合で混合し、得られた混合物を２ロールミルを用いて高速剪断分散処理して、表４に記載した１０種類のコーティングを作製した。次に、ポリビニルブチラールとNOCOLOKフラックスが非常に良く分散した混合物を、様々な量のジプロピレングリコールモノメチルエーテルと混合した。

異なるメイヤーロッド＃６、＃７、＃９又は＃１２でドローダウンを作成し、アルミニウムブレージングシートの試料の両面に均一なコーティングを施した。アルミニウムブレージングシートは、自動車用熱交換器(例えば、エバポレータ)の製造に商業的に用いられるもので、コア合金は、３ＸＸＸアルミニウムで、Ｍｎ：約１％、Ｃｕ：約０.３％、Ｔｉ：約０.１５％を含んでいる。コアの各面には、４ＸＸＸアルミニウムのろう付け用合金がクラッドされ、その厚さは、シートの全厚の約１０％で、Ｓｉ：約１０％を含んでいる。アルミニウムシートは、厚さ約０.０１７インチで、完全焼きなまし、つまりＯテンパーされている。コーティングは、シートを５００^oＦの炉内で１５秒間入れて乾燥し、溶媒を蒸発させた。ドローダウンするのに用いられるメイヤーロッドによるが、アルミニウムブレージングシート試料の片面でのフラックスコーティングの重量は３.７〜１０.７ｇ／ｍ²である。

コーティングされたシートの引掻抵抗性を調べるために、コーティングされたシートの乾燥試料と、水で濡らした試料に対して、鉛筆による硬度測定を行なった。鉛筆の硬さは、３Ｂ、２Ｂ、Ｂ、ＨＢ、Ｆの順番で大きくした。

コーティングの接着性を評価するためのろう付け試験を行なうために、実際のエバポレータプレートにならって小型のエバポレータプレートを作製した。このプレートは、市販の潤滑剤Draw Lube 485(Circle-Prosco Inc.製)を用いて、５段階の順送り金型の上で、コーティングされたプレートをスタンピング加工によって作製した。スタンピング加工されたプレートを、指でこすって、コーティングロスを視覚検査した。評価基準は次の通りである。
合格：コーティングは、成形工程で耐えることができ、成形プレートの成形領域でのコーティングロスは極く僅かである。
不合格：コーティングは成形工程で耐えることができず、成形プレートに有意的なコーティングロスがある。

ろう付け試験用小型エバポレータは、コーティングしたシートをスタンピングしたプレートと、コーティングしていない３００３合金フィンを交互に積み重ねて、適当に固定して作製され、部品は適所で保持される。次に、固定された部品は、炉の中に入れ、適当な窒素ガス雰囲気中で約６００℃に加熱してろう付けを行なった。ろう付け性の評価基準は次の通りである。
合格：ろう付け接合部は、良好なフィレットが形成され、表面には黒色炭素残留物は殆ど無いか全く無い。
不合格：ろう付け接合部は小さく不完全であり、表面には相当量の黒色炭素残留物がある。
コーティングについて、引掻抵抗、コーティング接着性及びろう付け性の試験結果を次の表４に示す。

本発明を具体的実施例に基づいて説明したが、当該分野の専門家であれば、本発明について、数多くの他の形態及び変形は自明であろう。特許請求の範囲に規定された本発明は、発明の精神及び範囲内に含まれるそれら自明な形態及び変形を包含するものである。本発明の望ましい実施例について説明したが、特許請求の範囲内で、それら以外の実施例にも可能である。

コーティングされた合金におけるポリビニルブチラールバインダーの重量％と温度の関係を示すグラフである。

Claims (25)

1. フラックスがコーティングされたアルミニウムブレージングシートを製造する方法であって、
   (ａ)ろう付け用フラックスを、ポリビニルブチラールバインダーと、又はポリビニルブチラールバインダー及び有機溶媒と混合して、第１混合物を生成し、
   (ｂ)前記第１混合物を剪断して、ろう付け用フラックス粒子が均一に分散された第２混合物を生成し、
   (ｃ)前記第２混合物を有機溶媒と混合して、ろう付け用フラックス混合物を生成し、
   (ｄ)アルミニウムブレージングシートの表面の少なくとも一部に、ろう付け用フラックス混合物でコーティングを形成し、
   (ｅ)アルミニウムブレージングシート上のろう付け用混合物を乾燥させる、アルミニウムブレージングシートの製造方法。
2. 前記溶媒は、アルコール、グリコールエーテル、ケトン、エステル及びそれらの混合物からなる群から選択される請求項１の方法。
3. 有機溶媒は、酢酸エチル、酢酸ｎ−ブチル、酢酸ｎ−プロピル、アセトン、シクロヘキサノン、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ｎ−ブタノール、ｎ−プロピルアルコール、ジアセントンアルコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールメチルエーテル及びそれらの混合物からなる群から選択される請求項１の方法。
4. 有機溶媒は、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ｎ−ブタノール、ｎ−プロピルアルコール及びジアセントンアルコールからなる群から選択される少なくとも１種のアルコールと混合されたトルエンからなる群から選択される請求項１の方法。
5. 前記溶媒は、酢酸プロピレングリコールメチルエーテル、イソプロピルアルコール及び酢酸エチルとの混合物、又はジプロピレンモノメチルグリコールエーテル、イソプロピルアルコール及び酢酸エチルとの混合物である請求項１の方法。
6. ろう付け用フラックスは、フルオロアルミン酸カリウム、フルオロアルミン酸セシウムカリウム、フルオロアルミン酸亜鉛カリウム、又はフルオロアルミン酸シリコンとカリウムの混合物である請求項１の方法。
7. アルミニウムブレージングシートは、コア合金が３ＸＸＸ、５ＸＸＸ又は６ＸＸＸアルミニウムで構成され、少なくとも一方の面が４ＸＸＸシリーズのろう付け用合金でクラッドされている請求項１の方法。
8. アルミニウムブレージングシートは、コア合金が、マンガン約１重量％、銅約０.３重量％、チタン約０.１５重量％、残部アルミニウムからなる３ＸＸＸアルミニウムであり、前記コア合金は、シリコン約１０重量％、残部アルミニウムからなる４ＸＸＸアルミニウムでクラッドされ、前記４ＸＸＸ合金は、前記３ＸＸＸシリーズ合金の少なくとも一方の面にクラッドされ、前記４ＸＸＸ合金は、ブレージングシートの合計厚さの約５％以上であり、前記３ＸＸＸシリーズ合金は、ブレージングシートの合計厚さの９５％以下である請求項１の方法。
9. ろう付け用フラックス混合物を製造する方法であって、
   (ａ)ろう付け用フラックスを、ポリビニルブチラールバインダーと、又はポリビニルブチラールバインダー及び有機溶媒と混合して、第１混合物を生成し、
   (ｂ)前記第１混合物を剪断して、ろう付け用フラックス粒子が前記バインダー内に均一に分散された第２混合物を生成し、
   (ｃ)前記第２混合物を有機溶媒と混合して、ろう付け用フラックス混合物を生成する、方法。
10. 前記ろう付け用フラックスは、フルオロアルミン酸カリウム、フルオロアルミン酸セシウムカリウム、フルオロアルミン酸亜鉛カリウム、又はフルオロアルミン酸シリコンとカリウムの混合物である請求項９の方法。
11. 前記溶媒は、アルコール、グリコールエーテル、ケトン、エステル及びそれらの混合物からなる群から選択される請求項９の方法。
12. 有機溶媒は、酢酸エチル、酢酸ｎ−ブチル、酢酸ｎ−プロピル、アセトン、シクロヘキサノン、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ｎ−ブタノール、ｎ−プロピルアルコール、ジアセントンアルコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールメチルエーテル及びそれらの混合物からなる群から選択される請求項９の方法。
13. 有機溶媒は、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ｎ−ブタノール、ｎ−プロピルアルコール及びジアセントンアルコールからなる群から選択される少なくとも１種のアルコールと混合されたトルエンからなる群から選択される請求項９の方法。
14. 前記溶媒は、酢酸プロピレングリコールメチルエーテル、イソプロピルアルコール及び酢酸エチルとの混合物、又はジプロピレンモノメチルグリコールエーテル、イソプロピルアルコール及び酢酸エチルとの混合物である請求項９の方法。
15. 成形されていないアルミニウム合金ブレージングシート製品であって、シートの表面の少なくとも一部が、ろう付け用フラックス及びポリビニルブチラールを含むろう付け用フラックスコンパウンドでコーティングされている製品。
16. ろう付け用フラックスコンパウンドでコーティングされた前記シート表面の一部は、ブレージングシートのコーティングされた部分１平方メートルにつき約２〜約４０グラムのろう付け用フラックスコンパウンドでコーティングされている請求項１５のアルミニウム合金ブレージングシート製品。
17. ろう付け用フラックスコンパウンドでコーティングされた前記シート表面の一部は、ブレージングシートのコーティングされた部分１平方メートルにつき約３〜約２０グラムのろう付け用フラックスコンパウンドでコーティングされている請求項１５のアルミニウム合金ブレージングシート製品。
18. ろう付け用フラックスコンパウンドでコーティングされた前記シート表面の一部は、ブレージングシートのコーティングされた部分１平方メートルにつき約３〜約１０グラムのろう付け用フラックスコンパウンドでコーティングされている請求項１５のアルミニウム合金ブレージングシート製品。
19. 所定形状に形成された金属合金製品を製造する方法であって、
    (ａ)ろう付け用フラックスを、ポリビニルブチラールバインダーと、又はポリビニルブチラールバインダー及び有機溶媒と混合して、第１混合物を生成し、
    (ｂ)前記第１混合物を剪断して、ろう付け用フラックス粒子が均一に分散された第２混合物を生成し、
    (ｃ)前記第２混合物を有機溶媒と混合して、ろう付け用フラックス混合物を生成し、
    (ｄ)２以上のアルミニウム合金ブレージングシートの表面の少なくとも一部に、ろう付け用フラックス混合物のコーティングを形成し、
    (ｅ)アルミニウムブレージングシートの表面のろう付け用混合物を乾燥させ、
    (ｆ)フラックスでコーティングされたアルミニウム合金ブレージングシートを、所定形状を有し、フラックスでコーティングされた部品に成形し、
    (ｇ)前記部品どうしをろう付けして所定形状に形成する、金属合金製品を製造する方法。
20. シートを成形する前に、ブレージングシートを所定形状の製品にコーティングするためのろう付け用フラックス混合物であって、
    (ａ)ろう付け用フラックスと、
    (ｂ)ポリビニルブチラール樹脂バインダーと、
    (ｃ)酢酸エチル、酢酸ｎ−ブチル、酢酸ｎ−プロピル、アセトン、シクロヘキサノン、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ｎ−ブタノール、ｎ−プロピルアルコール、ジアセントンアルコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールメチルエーテル及びそれらの混合物からなる群から選択される有機溶媒と、
    を含んでいるろう付け用フラックス混合物。
21. (ａ)フルオロアルミン酸カリウムフラックス約３５−６５重量％と、
    (ｂ)ポリビニルブチラール樹脂バインダー約２−１１重量％と、
    (ｃ)残部が有機溶媒、
    である請求項２０のろう付け用フラックス混合物
22. (ａ)フルオロアルミン酸カリウムフラックス約４７−６２重量％と、
    (ｂ)ポリビニルブチラール樹脂バインダー約５−７重量％と、
    (ｃ)残部が有機溶媒、
    である請求項２１のろう付け用フラックス混合物
23. 溶媒は約４０−７０重量％であり、フラックスとポリビニルブチラール樹脂バインダーは約３０−６０重量％である請求項２１のろう付け用フラックス混合物。
24. フラックスとバインダーの比は、フラックス約９５重量％：バインダー約５重量％乃至フラックス約８５重量％乃至バインダー約１５重量％である請求項２１のろう付け用フラックス混合物。
25. 顔料をさらに含んでいる請求項２１のろう付け用フラックス混合物。

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