JP3705939B2 - アルミニウムろう付用ペースト状組成物、その塗膜、およびろう付方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム材同士をろう付接合する際のろう材粉末を含有するペースト状組成物に関する。尚、本明細書においては、アルミニウムとは、断わりのない限り純アルミニウムおよびアルミニウム合金を含む。
【0002】
【従来の技術とその問題点】
従来アルミニウムのろう付には、ブレージングシートが多用されており、これは例えば、3003合金(以下4ケタの番号はJISで定められているものである)や3N03合金等の心材の片面あるいは両面に4343合金や4045合金等のろう材をクラッドさせたものが用いられている。これらはろう付する部分以外にもクラッドされたろう材が使われていることになるため、最終製品のコストが高くなる。また、製造上厚みの制限があり、60μm程度のクラッド材が限度であり、これより薄いクラッド材の製造は、工業上極めて困難であり、出来たとしても皮材の厚みが不均一となり、安定した品質や性能は得られない。
【0003】
また、従来ブレージングシートのろう付にはフラックスが必要で、ろう付けの直前にろう付部に塗布するタイプのものがあるが、その組成上完全な乾燥が困難なものが多く、乾燥できたとしても容易にフラックスが剥離、脱落するためろう付前の長時間の保存や運搬、および加工・組立等が不可能であった。また、加えてフラックス等が粉塵となり作業環境・衛生面ですこぶる好ましいものではなかった。さらに、フラックスと特開平6−285682等で開示されている樹脂とでは、ろう付の際に反応が起こり、ろう付部が黒変化する等意匠的に製品価値がすこぶる低いものであった。
【0004】
近年においてはブレージングシートを使用せず、アルミニウム−けい素系のろう材粉末とフラックスを混合したものをアルミニウム材のろう付け部に塗布してろう付する方法も報告されているが、コストの面以外では上記の問題点は解決されていなかった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意創意工夫を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、次の組成物、塗膜および方法よりなる。
【0006】
1.(a)ろう付用金属粉末30重量%〜70重量%、(b)弗化物系フラックスを2〜30重量%、(c)ブチルゴムおよび/または石油樹脂1〜15重量%を含み残部実質的に有機溶剤からなる(但し、合計量は100重量%を超えない。)アルミニウムろう付用ペースト状組成物。
【0007】
2.前記のペースト状組成物をアルミニウム材の表面の少なくとも一部以上に塗布後、乾燥して得られる塗膜。
【0008】
3.ろう付用金属粉末30重量%〜70重量%、弗化物系フラックスを2〜30重量%、ブチルゴムおよび/または石油樹脂1〜15重量%を含み残部実質的に有機溶剤からなる(但し、合計量は100重量%を超えない。)アルミニウムろう付用ペースト状組成物をアルミニウム材の表面の少なくとも一部以上に塗布、乾燥後、他のアルミニウム材とろう付を行うことを特徴とするアルミニウム材のろう付方法。
【0009】
以下、さらに本発明の実施の形態を詳述する。
【0010】
本発明に使用する弗化物系フラックスは、AlF3−KF、KAlF4−K3AlF6、K3AlF6およびKAlF4等の弗化物系フラックスが例示されるが、K3AlF6とKAlF4を主成分とする市販品の「ノコロック(商品名)」(アルキャン社製)が特に好適である。上記フラックスのペースト状組成物への配合量は2〜30重量%、好ましくは5〜20重量%程度である。フラックスの配合量が2重量%未満の場合には、十分なフラックス作用が得がたく、30重量%を超えても過剰であり、コストアップとなる。
【0011】
ペースト状組成物中で、バインダーの作用を担う樹脂としては、イソブチレンとイソプレンの共重合体であるブチルゴム(分子量25万〜55万のものが好ましい)および/または石油樹脂が使用できる。その配合量は1〜15重量%が適当で、より好ましくは2〜10重量%である。1重量%未満では、フラックス組成物の粘度が低く、アルミニウム材に塗布した際にダレが生じ、アルミニウム材との密着性が悪くなるので好ましくない。一方15重量%を超えても過剰で、コストアップになる恐れがある。尚、石油樹脂としては、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂およびC5C9共重合石油樹脂の1種以上が使用でき、好ましい分子量は600〜2000程度である。
【0012】
本発明で用いる有機溶剤は、ブチルゴムが可溶であれば、特に限定されず、トルエン、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等を単独、あるいは2種以上を混合して用いることができる。有機溶剤の配合量は、ペースト状組成物の粘度等を調整するために適宜加えればよいが、具体的には0.1〜67重量%好ましくは10〜50重量%の範囲内で調整すればよい。
【0013】
本発明で用いるろう付用金属粉末は、アルミニウムを主体とする粉末を使用することができる。例えば、アルミニウム−けい素系合金粉末、アルミニウム粉とけい素粉の混合粉、アルミニウム−亜鉛合金粉末、Al−Si−X(XはCu、Zn等)等の3元系以上の合金粉末等が使用できる。これらの粉末は主に、アトマイズ法・粉砕法・回転円盤法・キャビテーション法・メルトスピニング法等あるいはこれらの組合せによって得ることができる。もちろんこれらの粉末は市販品をそのまま使用することもできる。金属粉末の形状は球状、偏平状、板状、涙滴状、針状、回転楕円体状、不定形状等のいずれであっても差し支えない。アルミニウム系粉末はアルゴンガスあるいは窒素ガスアトマイズによって得られる粉末が好適である。該アルミニウム系粉末に含まれる酸素量は、粒度や形状にもよるが、1.5重量%以下が好ましく、これを超える場合には、酸化皮膜が強固となり、十分に溶融しなかったり、流動性が低下する恐れがある。該アルミニウム系粉末の大きさは平均粒子径で2〜150μm望ましくは5〜50μmの範囲内が適当で、平均粒子径2μm未満の粉末は、酸素含有量が多くなる可能性が高く、またコストが高いものであるので好ましくない。一方150μmを超える場合には、塗布後の塗膜厚みが必要以上に厚くなったり、組成物中での均一性が損なわれる恐れがある。ろう付け用金属粉末に含まれるけい素の量は5〜17重量%の範囲内が適当で、アルミニウムとの合金の状態(合金粉)、アルミニウムとけい素それぞれ単体の状態(混合粉)のいずれの状態であっても支障なく使用できる。これはその範囲内の組成でアルミニウムと合金化されている、あるいはされたときに、融点が低く、溶融状態での流動性が良好なことによる。また、適当な添加元素を添加しても差し支えなく、必要に応じてCu、Zn、Mg、Bi、Sb、Ba等の1種以上を約5重量%以下(金属成分100%に対し)添加することも可能である。これらの添加元素も合金の状態、単体の粉末の状態のいずれであってもよい。アルミニウムとけい素それぞれ単体の状態(混合粉)で使用する場合には、特に純度99.0重量%以上、望ましくは99.7重量%以上の純アルミニウム粉と純度90.0重量%以上、望ましくは97.0重量%以上のけい素粉を使用すればよい。これらの純度未満の粉末では、不純物である鉄の含有量が多くなり、ろう付後の耐食性が低下するので好ましくない。けい素粉末の平均粒径は、上記アルミニウム系粉末より細かなものが使用でき、平均粒子径0.1〜150μm程度のものが使用できる。平均粒子径が0.1μm未満の粉末では、酸素量やその他の不純物量が多くなり好ましくない。また、150μmを超えても組成物中で均一な分散ができなくなり好ましくない。もちろんアルミニウム粉とけい素粉の混合粉であっても必要に応じてCu、Zn、Mg、Bi、Sb、Ba粉等の1種以上を約5重量%以下(金属成分100%に対し)添加することが可能である。
【0014】
本発明に用いるペースト状組成物には、公知の添加物を添加しても差し支えなく、例えば、酸化防止剤、腐食抑制剤、消泡剤、増粘剤、可塑剤、分散剤、タックファイヤー、カップリング剤等を必要に応じて添加できる。特にカップリング剤は、塗膜の付着性を向上させるために有効であり、0.001〜1.0重量%程度の添加が有効である。
【0015】
本発明のペースト状組成物は、アルミニウム材の表面の少なくとも一部以上、すなわちろう付しようとする部分に必要量塗布して使用することができ、乾燥後の平均膜厚は好ましくは3〜500μm、より好ましくは10〜150μmである。平均膜厚が3μm未満でもろう付は可能ではあるが、ろう付強度が不足する恐れがある。一方500μmを超えても過剰で、コストアップになる恐れがある。しかしながら、穴を塞ぐためや隙間を埋めるために本発明のペースト状組成物を使用する場合は、厚み500μmに限定されることはなく、これを超えても使用することができる。
【0016】
塗布の方法は、公知の方法が採用でき、はけ塗り、スプレー塗装、ロールコーター、バーコーター、ドクターブレード等で塗布することができる。これらの方法以外にも単にペースト状組成物にアルミニウム材を浸漬する等の方法でもよい。
【0017】
ペースト状組成物の塗布後の乾燥は、通常室温乾燥、必要に応じて30〜150℃程度の温度で乾燥させればよい。ろう付の方法は、特に限定されず、公知の方法が採用できるが、炉中ろう付による方法が好ましい。ろう付けの温度は組成にもよるが、通常450℃〜630℃程度である。雰囲気については、真空、Ar、窒素等の雰囲気が好ましい。
【0018】
本発明のペースト状組成物は、ろう付け可能なアルミニウム材に適用することができ、例えばヒーターコア、エバポレータ、コンデンサ等の熱交換器を構成するフィン・ピン・パイプ・チューブ・プレート等のろう付接合に使用することができる。また、熱交換器に限定されることはなく、各種機械部品、構造部品、スポーツ用品、OA機器、日用品等に適用可能である。
【0019】
【効果】
1.本発明のペースト状組成物は、アルミニウム材への密着性が良好で、乾燥後の塗膜は容易に剥離・脱落が起こらない。従って該ペースト組成物の塗布後に加工や切断作業を容易に行うことができる。
【0020】
2.本発明のペースト状組成物に用いるブチルゴム等は、ろう付を行う際の昇温中に熱分解するため、ろう付後のろう付部(フィレット)の外観が良好であり、黒変化や白色残さを生じない。
【0021】
3.本発明のペースト状組成物は、適切な有機溶剤の選定により室温でも乾燥させることができ、余分なコストがかからず、乾燥後も良好な塗膜状態であるので、粉塵等が発生せず、作業環境が良好である。
【0022】
4.本発明のペースト状組成物は、溶剤の配合量等により適度な粘度に調整できるので、複雑形状の部品や凹凸屈曲等のある部材へも塗布可能である。
【0023】
5.本発明のろう付方法は、特別な装置や機器が不要であるので、既存の設備で実施可能である。
【0024】
6.本発明のペースト状組成物は薄塗りが可能で、特に薄膜が要求される部材に好適に使用することができる。
【0025】
【実施例】
表1(実施例)および表2(比較例)の配合にて混合し、ペースト状組成物を作製した。作製したペースト状組成物を刷毛で、3003アルミニウム板(60×50×2mm)の片面に(乾燥後平均膜厚40μm)塗布後、希釈用有機溶剤(トルエン)を完全に蒸発させるために、105℃×5分加熱した。得られた塗板を下記の評価に供した。
【0026】
・成膜性:○→指触硬化している。
【0027】
×→指触硬化していない。
【0028】
・付着性:A→強く指でこすっても塗膜ははがれない。
【0029】
B→軽く指でこすっても塗膜ははがれない。
【0030】
C→指でこすれば塗膜ははがれるが、たたいてもはがれない。
【0031】
D→たたくと塗膜ははがれ落ちる。
【0032】
E→評価外(成膜できず)
上記で作製した各塗板を加熱あるいはろう付けを行い次の評価を行った。
【0033】
・残炭:上記塗板をアルミ箔で包み(クローズ状態)窒素ガス雰囲気(窒素ガスフロー4Nm3/h)の炉にて500℃および530℃で5分間保持して冷却した後、炉から取り出しろう付部表面を目視にて観察を行った。
【0034】
A→10点 まったく黒変化していない。
【0035】
B→7〜9.9点 若干黒点部があるが、気にならない。
【0036】
C→3〜6.9点 明らかに黒変部があるが、全体の半分未満である。
【0037】
D→1〜2.9点 全体の半分以上が黒っぽい。
【0038】
E→1点未満 全体が黒っぽく商品価値がない。
【0039】
・フィレット形成(外観):上記で作製した塗板の塗布面中央に3003アルミニウム板を垂直に立て、ステンレスワイヤーで仮留めした後、窒素ガス雰囲気(窒素ガスフロー4Nm3/h)の炉にて600℃で3分間保持してろう付けを行った。冷却した後、炉から取り出しろう付部のフィレットの形成状況を目視にて観察を行った。
【0040】
A→フィレットの形成具合良好(ろう付部周辺に均一にフィレットが形成されている。)
B→フィレットは形成されているが、やや不均一である。
【0041】
C→フィレットは形成されているが、かなり不均一である。
【0042】
D→フィレットが十分に形成されておらず、切れがある。
【0043】
E→ろう付できていない。
【0044】
・臭気:残炭試験の加熱中に炉から出てくるガスの臭いをかいで評価した。
【0045】
A→ほとんど臭わない、気にならない。
【0046】
B→臭いが認識できるが、作業には影響しない。
【0047】
C→異様な臭気があり、やや気になる。
【0048】
D→不快臭であり、作業しにくい。
【0049】
E→悪臭で、作業できない。
【0050】
以上の結果より、本発明のペースト状組成物を使用したろう付は、上記すべての評価に満足するものである。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1及び比較例2におけるろう付品の残炭状態を示す写真である。
Claims (7)
- (a)ろう付用金属粉末30重量%〜70重量%、(b)弗化物系フラックス2〜30重量%、(c)ブチルゴムおよび/または石油樹脂1〜15重量%を含み残部が有機溶剤からなる(但し、合計量は100重量%を超えない。)アルミニウムろう付用ペースト状組成物。
- ろう付け用金属粉末がアルミニウム−けい素系の合金粉末である請求項1記載のアルミニウムろう付用ペースト状組成物。
- ろう付け用金属粉末がアルミニウム粉末とけい素粉末の混合粉である請求項1記載のアルミニウムろう付け用ペースト状組成物。
- カップリング剤を含有する請求項1〜3記載のアルミニウムろう付用ペースト状組成物。
- 請求項1〜4記載のペースト状組成物をアルミニウム材の表面の少なくとも一部以上に塗布後、乾燥して得られる塗膜。
- 請求項1〜4記載のペースト状組成物をアルミニウム材の表面の少なくとも一部以上に塗布したアルミニウム部材。
- (a)ろう付用金属粉末30重量%〜70重量%、(b)弗化物系フラックス2〜30重量%、(c)ブチルゴムおよび/または石油樹脂1〜15重量%含み残部実質的に有機溶剤からなる(但し、合計量は100重量%を超えない。)アルミニウムろう付用ペースト状組成物をアルミニウム材の表面の少なくとも一部以上に塗布、乾燥後、他のアルミニウム材とろう付を行うことを特徴とするアルミニウム材のろう付方法。
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