JP2000141083A - アルミニウムろう付用ペースト状組成物、その塗膜、およびろう付方法 - Google Patents

アルミニウムろう付用ペースト状組成物、その塗膜、およびろう付方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 アルミニウム材への密着性が良好で、堅固な
乾燥塗膜を形成し得、ろう付部の外観も良好で且つ低作
業コストである新規アルミニウムろう付用ペースト状組
成物及びその使用方法を提供する。 【解決手段】 (a)ろう付用金属粉末30重量%〜7
0重量%、(b)弗化物系フラックス2〜30重量%、
(c)ブチルゴムおよび/または石油樹脂1〜15重量
%を含み残部実質的に有機溶剤からなる(但し、合計量
は100重量%を超えない。)アルミニウムろう付用ペ
ースト状組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アルミニウム材同
士をろう付接合する際のろう材粉末を含有するペースト
状組成物に関する。尚、本明細書においては、アルミニ
ウムとは、断わりのない限り純アルミニウムおよびアル
ミニウム合金を含む。
【0002】
【従来の技術とその問題点】従来アルミニウムのろう付
には、ブレージングシートが多用されており、これは例
えば、3003合金(以下4ケタの番号はJISで定め
られているものである)や3N03合金等の心材の片面
あるいは両面に4343合金や4045合金等のろう材
をクラッドさせたものが用いられている。これらはろう
付する部分以外にもクラッドされたろう材が使われてい
ることになるため、最終製品のコストが高くなる。ま
た、製造上厚みの制限があり、60μm程度のクラッド
材が限度であり、これより薄いクラッド材の製造は、工
業上極めて困難であり、出来たとしても皮材の厚みが不
均一となり、安定した品質や性能は得られない。
【0003】また、従来ブレージングシートのろう付に
はフラックスが必要で、ろう付けの直前にろう付部に塗
布するタイプのものがあるが、その組成上完全な乾燥が
困難なものが多く、乾燥できたとしても容易にフラック
スが剥離、脱落するためろう付前の長時間の保存や運
搬、および加工・組立等が不可能であった。また、加え
てフラックス等が粉塵となり作業環境・衛生面ですこぶ
る好ましいものではなかった。さらに、フラックスと特
開平6−285682等で開示されている樹脂とでは、
ろう付の際に反応が起こり、ろう付部が黒変化する等意
匠的に製品価値がすこぶる低いものであった。
【0004】近年においてはブレージングシートを使用
せず、アルミニウム−けい素系のろう材粉末とフラック
スを混合したものをアルミニウム材のろう付け部に塗布
してろう付する方法も報告されているが、コストの面以
外では上記の問題点は解決されていなかった。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは鋭意創意工
夫を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち
本発明は、次の組成物、塗膜および方法よりなる。
【0006】1.(a)ろう付用金属粉末30重量%〜
70重量%、(b)弗化物系フラックスを2〜30重量
%、(c)ブチルゴムおよび/または石油樹脂1〜15
重量%を含み残部実質的に有機溶剤からなる(但し、合
計量は100重量%を超えない。)アルミニウムろう付
用ペースト状組成物。
【0007】2.前記のペースト状組成物をアルミニウ
ム材の表面の少なくとも一部以上に塗布後、乾燥して得
られる塗膜。
【0008】3.ろう付用金属粉末30重量%〜70重
量%、弗化物系フラックスを2〜30重量%、ブチルゴ
ムおよび/または石油樹脂1〜15重量%を含み残部実
質的に有機溶剤からなる(但し、合計量は100重量%
を超えない。)アルミニウムろう付用ペースト状組成物
をアルミニウム材の表面の少なくとも一部以上に塗布、
乾燥後、他のアルミニウム材とろう付を行うことを特徴
とするアルミニウム材のろう付方法。
【0009】以下、さらに本発明の実施の形態を詳述す
る。
【0010】本発明に使用する弗化物系フラックスは、
AlF3−KF、KAlF4−K3AlF6、K3AlF6
よびKAlF4等の弗化物系フラックスが例示される
が、K3AlF6とKAlF4を主成分とする市販品の
「ノコロック(商品名)」(アルキャン社製)が特に好
適である。上記フラックスのペースト状組成物への配合
量は2〜30重量%、好ましくは5〜20重量%程度で
ある。フラックスの配合量が2重量%未満の場合には、
十分なフラックス作用が得がたく、30重量%を超えて
も過剰であり、コストアップとなる。
【0011】ペースト状組成物中で、バインダーの作用
を担う樹脂としては、イソブチレンとイソプレンの共重
合体であるブチルゴム(分子量25万〜55万のものが
好ましい)および/または石油樹脂が使用できる。その
配合量は1〜15重量%が適当で、より好ましくは2〜
10重量%である。1重量%未満では、フラックス組成
物の粘度が低く、アルミニウム材に塗布した際にダレが
生じ、アルミニウム材との密着性が悪くなるので好まし
くない。一方15重量%を超えても過剰で、コストアッ
プになる恐れがある。尚、石油樹脂としては、C5系石
油樹脂、C9系石油樹脂およびC59共重合石油樹脂の
1種以上が使用でき、好ましい分子量は600〜200
0程度である。
【0012】本発明で用いる有機溶剤は、ブチルゴムが
可溶であれば、特に限定されず、トルエン、ヘキサン、
オクタン、シクロヘキサン等を単独、あるいは2種以上
を混合して用いることができる。有機溶剤の配合量は、
ペースト状組成物の粘度等を調整するために適宜加えれ
ばよいが、具体的には0.1〜67重量%好ましくは1
0〜50重量%の範囲内で調整すればよい。
【0013】本発明で用いるろう付用金属粉末は、アル
ミニウムを主体とする粉末を使用することができる。例
えば、アルミニウム−けい素系合金粉末、アルミニウム
粉とけい素粉の混合粉、アルミニウム−亜鉛合金粉末、
Al−Si−X(XはCu、Zn等)等の3元系以上の
合金粉末等が使用できる。これらの粉末は主に、アトマ
イズ法・粉砕法・回転円盤法・キャビテーション法・メ
ルトスピニング法等あるいはこれらの組合せによって得
ることができる。もちろんこれらの粉末は市販品をその
まま使用することもできる。金属粉末の形状は球状、偏
平状、板状、涙滴状、針状、回転楕円体状、不定形状等
のいずれであっても差し支えない。アルミニウム系粉末
はアルゴンガスあるいは窒素ガスアトマイズによって得
られる粉末が好適である。該アルミニウム系粉末に含ま
れる酸素量は、粒度や形状にもよるが、1.5重量%以
下が好ましく、これを超える場合には、酸化皮膜が強固
となり、十分に溶融しなかったり、流動性が低下する恐
れがある。該アルミニウム系粉末の大きさは平均粒子径
で2〜150μm望ましくは5〜50μmの範囲内が適
当で、平均粒子径2μm未満の粉末は、酸素含有量が多
くなる可能性が高く、またコストが高いものであるので
好ましくない。一方150μmを超える場合には、塗布
後の塗膜厚みが必要以上に厚くなったり、組成物中での
均一性が損なわれる恐れがある。ろう付け用金属粉末に
含まれるけい素の量は5〜17重量%の範囲内が適当
で、アルミニウムとの合金の状態(合金粉)、アルミニ
ウムとけい素それぞれ単体の状態(混合粉)のいずれの
状態であっても支障なく使用できる。これはその範囲内
の組成でアルミニウムと合金化されている、あるいはさ
れたときに、融点が低く、溶融状態での流動性が良好な
ことによる。また、適当な添加元素を添加しても差し支
えなく、必要に応じてCu、Zn、Mg、Bi、Sb、
Ba等の1種以上を約5重量%以下(金属成分100%
に対し)添加することも可能である。これらの添加元素
も合金の状態、単体の粉末の状態のいずれであってもよ
い。アルミニウムとけい素それぞれ単体の状態(混合
粉)で使用する場合には、特に純度99.0重量%以
上、望ましくは99.7重量%以上の純アルミニウム粉
と純度90.0重量%以上、望ましくは97.0重量%
以上のけい素粉を使用すればよい。これらの純度未満の
粉末では、不純物である鉄の含有量が多くなり、ろう付
後の耐食性が低下するので好ましくない。けい素粉末の
平均粒径は、上記アルミニウム系粉末より細かなものが
使用でき、平均粒子径0.1〜150μm程度のものが
使用できる。平均粒子径が0.1μm未満の粉末では、
酸素量やその他の不純物量が多くなり好ましくない。ま
た、150μmを超えても組成物中で均一な分散ができ
なくなり好ましくない。もちろんアルミニウム粉とけい
素粉の混合粉であっても必要に応じてCu、Zn、M
g、Bi、Sb、Ba粉等の1種以上を約5重量%以下
(金属成分100%に対し)添加することが可能であ
る。
【0014】本発明に用いるペースト状組成物には、公
知の添加物を添加しても差し支えなく、例えば、酸化防
止剤、腐食抑制剤、消泡剤、増粘剤、可塑剤、分散剤、
タックファイヤー、カップリング剤等を必要に応じて添
加できる。特にカップリング剤は、塗膜の付着性を向上
させるために有効であり、0.001〜1.0重量%程
度の添加が有効である。
【0015】本発明のペースト状組成物は、アルミニウ
ム材の表面の少なくとも一部以上、すなわちろう付しよ
うとする部分に必要量塗布して使用することができ、乾
燥後の平均膜厚は好ましくは3〜500μm、より好ま
しくは10〜150μmである。平均膜厚が3μm未満
でもろう付は可能ではあるが、ろう付強度が不足する恐
れがある。一方500μmを超えても過剰で、コストア
ップになる恐れがある。しかしながら、穴を塞ぐためや
隙間を埋めるために本発明のペースト状組成物を使用す
る場合は、厚み500μmに限定されることはなく、こ
れを超えても使用することができる。
【0016】塗布の方法は、公知の方法が採用でき、は
け塗り、スプレー塗装、ロールコーター、バーコータ
ー、ドクターブレード等で塗布することができる。これ
らの方法以外にも単にペースト状組成物にアルミニウム
材を浸漬する等の方法でもよい。
【0017】ペースト状組成物の塗布後の乾燥は、通常
室温乾燥、必要に応じて30〜150℃程度の温度で乾
燥させればよい。ろう付の方法は、特に限定されず、公
知の方法が採用できるが、炉中ろう付による方法が好ま
しい。ろう付けの温度は組成にもよるが、通常450℃
〜630℃程度である。雰囲気については、真空、A
r、窒素等の雰囲気が好ましい。
【0018】本発明のペースト状組成物は、ろう付け可
能なアルミニウム材に適用することができ、例えばヒー
ターコア、エバポレータ、コンデンサ等の熱交換器を構
成するフィン・ピン・パイプ・チューブ・プレート等の
ろう付接合に使用することができる。また、熱交換器に
限定されることはなく、各種機械部品、構造部品、スポ
ーツ用品、OA機器、日用品等に適用可能である。
【0019】
【効果】1.本発明のペースト状組成物は、アルミニウ
ム材への密着性が良好で、乾燥後の塗膜は容易に剥離・
脱落が起こらない。従って該ペースト組成物の塗布後に
加工や切断作業を容易に行うことができる。
【0020】2.本発明のペースト状組成物に用いるブ
チルゴム等は、ろう付を行う際の昇温中に熱分解するた
め、ろう付後のろう付部(フィレット)の外観が良好で
あり、黒変化や白色残さを生じない。
【0021】3.本発明のペースト状組成物は、適切な
有機溶剤の選定により室温でも乾燥させることができ、
余分なコストがかからず、乾燥後も良好な塗膜状態であ
るので、粉塵等が発生せず、作業環境が良好である。
【0022】4.本発明のペースト状組成物は、溶剤の
配合量等により適度な粘度に調整できるので、複雑形状
の部品や凹凸屈曲等のある部材へも塗布可能である。
【0023】5.本発明のろう付方法は、特別な装置や
機器が不要であるので、既存の設備で実施可能である。
【0024】6.本発明のペースト状組成物は薄塗りが
可能で、特に薄膜が要求される部材に好適に使用するこ
とができる。
【0025】
【実施例】表1(実施例)および表2(比較例)の配合
にて混合し、ペースト状組成物を作製した。作製したペ
ースト状組成物を刷毛で、3003アルミニウム板(6
0×50×2mm)の片面に(乾燥後平均膜厚40μ
m)塗布後、希釈用有機溶剤(トルエン)を完全に蒸発
させるために、105℃×5分加熱した。得られた塗板
を下記の評価に供した。
【0026】
【0027】
【0028】 ・付着性:A→強く指でこすっても塗膜ははがれない。
【0029】 B→軽く指でこすっても塗膜ははがれない。
【0030】 C→指でこすれば塗膜ははがれるが、たたいてもはがれない。
【0031】 D→たたくと塗膜ははがれ落ちる。
【0032】 E→評価外(成膜できず) 上記で作製した各塗板を加熱あるいはろう付けを行い次
の評価を行った。
【0033】・残炭:上記塗板をアルミ箔で包み(クロ
ーズ状態)窒素ガス雰囲気(窒素ガスフロー4Nm3
h)の炉にて500℃および530℃で5分間保持して
冷却した後、炉から取り出しろう付部表面を目視にて観
察を行った。
【0034】 A→10点 まったく黒変化していない。
【0035】 B→7〜9.9点 若干黒点部があるが、気にならな
い。
【0036】 C→3〜6.9点 明らかに黒変部があるが、全体の半
分未満である。
【0037】 D→1〜2.9点 全体の半分以上が黒っぽい。
【0038】 E→1点未満 全体が黒っぽく商品価値がない。
【0039】・フィレット形成(外観):上記で作製し
た塗板の塗布面中央に3003アルミニウム板を垂直に
立て、ステンレスワイヤーで仮留めした後、窒素ガス雰
囲気(窒素ガスフロー4Nm3/h)の炉にて600℃
で3分間保持してろう付けを行った。冷却した後、炉か
ら取り出しろう付部のフィレットの形成状況を目視にて
観察を行った。
【0040】A→フィレットの形成具合良好(ろう付部
周辺に均一にフィレットが形成されている。) B→フィレットは形成されているが、やや不均一であ
る。
【0041】C→フィレットは形成されているが、かな
り不均一である。
【0042】D→フィレットが十分に形成されておら
ず、切れがある。
【0043】E→ろう付できていない。
【0044】・臭気:残炭試験の加熱中に炉から出てく
るガスの臭いをかいで評価した。
【0045】A→ほとんど臭わない、気にならない。
【0046】B→臭いが認識できるが、作業には影響し
ない。
【0047】C→異様な臭気があり、やや気になる。
【0048】D→不快臭であり、作業しにくい。
【0049】E→悪臭で、作業できない。
【0050】以上の結果より、本発明のペースト状組成
物を使用したろう付は、上記すべての評価に満足するも
のである。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1及び比較例2におけるろう付品の残炭
状態を示す写真である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 加藤 晴三 大阪府大阪市中央区久太郎町三丁目6番8 号 東洋アルミニウム株式会社内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (a)ろう付用金属粉末30重量%〜7
    0重量%、(b)弗化物系フラックス2〜30重量%、
    (c)ブチルゴムおよび/または石油樹脂1〜15重量
    %を含み残部実質的に有機溶剤からなる(但し、合計量
    は100重量%を超えない。)アルミニウムろう付用ペ
    ースト状組成物。
  2. 【請求項2】 ろう付け用金属粉末がアルミニウム−け
    い素系の合金粉末である請求項1記載のアルミニウムろ
    う付用ペースト状組成物。
  3. 【請求項3】 ろう付け用金属粉末がアルミニウム粉末
    とけい素粉末の混合粉である請求項1記載のアルミニウ
    ムろう付け用ペースト状組成物。
  4. 【請求項4】 カップリング剤を含有する請求項1〜3
    記載のアルミニウムろう付用ペースト状組成物。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4記載のペースト状組成物を
    アルミニウム材の表面の少なくとも一部以上に塗布後、
    乾燥して得られる塗膜。
  6. 【請求項6】 請求項1〜4記載のペースト状組成物を
    アルミニウム材の表面の少なくとも一部以上に塗布した
    アルミニウム部材
  7. 【請求項7】 (a)ろう付用金属粉末30重量%〜7
    0重量%、(b)弗化物系フラックス2〜30重量%、
    (c)ブチルゴムおよび/または石油樹脂1〜15重量
    %含み残部実質的に有機溶剤からなる(但し、合計量は
    100重量%を超えない。)アルミニウムろう付用ペー
    スト状組成物をアルミニウム材の表面の少なくとも一部
    以上に塗布、乾燥後、他のアルミニウム材とろう付を行
    うことを特徴とするアルミニウム材のろう付方法。
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