JPH08120379A

JPH08120379A - ろう付用アルミニウム合金製部材

Info

Publication number: JPH08120379A
Application number: JP27436394A
Authority: JP
Inventors: Takeshi Itagaki; 武志板垣
Original assignee: Mitsubishi Aluminum Co Ltd
Current assignee: MA Aluminum Corp
Priority date: 1994-10-14
Filing date: 1994-10-14
Publication date: 1996-05-14

Abstract

(57)【要約】【目的】Ｍｇ含有の犠牲陽極皮材をろう付用の芯材
に良好に設ける。【構成】Ａｌ−Ｍｎ−Ｓｉ系合金芯材の片面にろう
材層、他の片面に犠牲陽極皮材層が設けられたろう付用
アルミニウム合金製部材において、犠牲陽極皮材層は芯
材に付着した犠牲陽極粉末で構成され、該犠牲陽極粉末
は平均でＭｇ：５ｗｔ％超を含有し、残りがＡｌと不可
避不純物からなる。【効果】５％超のＭｇを含有する犠牲陽極皮材が芯
材に良好に設けられ、芯材の強度も犠牲陽極皮材からの
Ｍｇの拡散によって大幅に向上する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、自動車用熱交換器等
のろう付に使用されるろう付用アルミニウム合金製部材
に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】自動車などに用いられる熱交換器用チュ
ーブでは、Ａｌ−Ｍｎ−Ｓｉ系芯材の外面にろう材をク
ラッドし、内面に犠牲陽極皮材をクラッドしたアルミニ
ウム合金製部材が使用されている。ところで上記芯材
は、そのままでは強度、耐食性ともに十分とはいえない
ため、犠牲陽極皮材に２％程度のＭｇを含有させる方法
が提案されており（例えば、特開平２−１７５０９３
号）、このＭｇは、ろう付加熱時に芯材中に拡散し、芯
材中のＳｉやろう材から芯材に拡散したＳｉと反応して
Ｍｇ₂Ｓｉを形成し、芯材の強度、耐食性を高めること
が知られている。

【０００３】

【発明が解決しようとする問題点】しかし、上記した犠
牲陽極皮材はＭｇ含有によって、圧延前の加熱により表
面に強固で厚い酸化皮膜が形成されやすい上に、芯材と
の延性の差が大きく、接着不良や割れの発生が生じやす
く、特に２．５％を超えるようなＭｇ含有ではクラッド
圧延が困難になる場合がある。このため、圧延前の加熱
や圧延に際しての制約が多く、効率が悪いという問題が
あり、さらには、２．５％を超えるＭｇを含有させるこ
とは、製造上大きな困難性を伴うという問題がある。

【０００４】そこで、本発明者らは、Ｍｇ含有のアルミ
ニウム合金を粉末化して、これを芯材の一面に付着させ
ることによってＭｇ含有の犠牲陽極皮材を芯材に良好に
設ける方法を考えた。しかし、上記粉末は、通常は、バ
インダーおよび溶剤と混合して芯材に付着させるが、粉
末を溶剤に均一に分散させることは容易でなく、その結
果として芯材の内面に粉末が均一に付着しないため、耐
食性などの特性が一様に得られずバラツキを生じるとい
う問題点が残されている。そして、本発明者らはさらに
研究を進めたところ、Ｍｇの含有量を一層増やすと、ア
ルミニウム合金の固相線温度が低下して、ろう付加熱時
に上記粉末が適度に融解し、芯材表面にＡｌ−Ｍｇ合金
皮膜が一様に形成されることを見出し、本発明を完成す
るに至ったものである。本発明は、上記事情を背景とし
てなされたものであり、Ｍｇを多く含有する犠牲陽極皮
材が芯材表面に良好に設けられた、ろう付用アルミニウ
ム合金製部材を提供することを目的とする。

【０００５】

【問題を解決するための手段】上記課題を解決するため
本発明のうち第１の発明は、Ａｌ−Ｍｎ−Ｓｉ系合金芯
材の片面にろう材層、他の片面に犠牲陽極皮材層が設け
られたろう付用アルミニウム合金製部材において、前記
犠牲陽極皮材層は、芯材に付着した犠牲陽極粉末で構成
されており、該犠牲陽極粉末は、平均でＭｇ：５ｗｔ％
超を含有し、残りがＡｌと不可避不純物から組成を有す
ることを特徴とする。

【０００６】第２の発明は、第１の発明において、犠牲
陽極粉末が、平均で、さらに、Ｚｎ：０．３〜１０ｗｔ
％、Ｉｎ：０．００５〜０．１ｗｔ％、Ｓｎ：０．０５
〜０．５ｗｔ％の内、１種または２種以上を含有するこ
とを特徴とする。第３の発明は、第１又は第２の発明に
おいて、犠牲陽極粉末が、平均で、さらに、Ｓｉ：０．
３〜１．５％ｗｔを含有することを特徴とする。第４の
発明は、第１〜第３の発明において、犠牲陽極粉末が、
溶剤とバインダーとを介在させて芯材に固着されている
ことを特徴とする。第５の発明は、第１〜第４の発明に
おいて、犠牲陽極皮材層に、犠牲陽極粉末とともにフラ
ックス粉末を付着させたことを特徴とする。

【０００７】本発明で芯材として用いられるＡｌ−Ｍｎ
−Ｓｉ系合金としては特に組成が限定されるものではな
いが、、例えば、Ｍｎ：０．１〜１．５％、Ｓｉ：０．
１〜１．５％を含有するものを挙げることができる。ま
た、Ｍｎ、Ｓｉ以外に、さらに強度を向上させる目的
で、Ｍｇ：０．０５〜１％、Ｆｅ：０．０５〜０．
５％、Ｚｒ：０．０５〜０．５％、Ｃｒ：０．０５〜
０．５％、Ｖ：０．０５〜０．５％の１種または２種
以上を含有させてもよく、また、強度と耐食性を向上さ
せることを目的として、Ｃｕ：０．０５〜１％、Ｔ
ｉ：０．０５〜０．５％の１種または２種を含有させて
もよく、これら各グループの一方または両方から所望の
成分を選択することができる。この芯材の一面に設けら
れるろう材は、特に種別が限定されるものではなく、一
般的なＡｌ−Ｓｉ系合金を使用することができる。な
お、このろう材層は、通常のようにクラッドによって設
けてもよく、また、粉末化したろう材を芯材に付着させ
ることによって設けてもよい。

【０００８】また、芯材の他面側に設けられる犠牲陽極
皮材は、適度な粒径に粉末化されたＭｇ含有アルミニウ
ム合金を付着させることによって設けられる。この粉末
の製造方法、形状、粒径等は特に限定されるものではな
いが、粒径は犠牲陽極皮材の厚さを越えない範囲とし、
さらに、この厚さの５０％以下にするのが望ましい。な
お、犠牲陽極層の厚さも特に限定されるものではない
が、板厚の５％〜２０％程度が望ましい。

【０００９】上記した粉末は、各単位が前記した成分を
有するものでなくてもよく、粉末全体の平均で前記成分
比を満たすものであればよい。ただし、望ましくは、各
粉末単位が上記成分であるのがよい。また、上記粉末
に、所望により、Ｚｎ、Ｉｎ、Ｓｎ、Ｓｉを含有させる
際には、成分を調製して合金化した一種類の粉末を用い
てもよく、また、各成分単独または適当な成分を合金化
した複数種類の粉末を用いることも可能であり、要は、
粉末全体の平均で所望の成分となっていればよい。ま
た、上記アルミニウム合金粉末には、フラックス粉末を
混合してもよく、このフラックス粉末としては従来アル
ミニウム合金の接合に用いられているフッ化物または塩
化物フラックスを用いることができる。

【００１０】上記アルミニウム合金粉末を芯材に固着さ
せる際には、各種溶剤、バインダーが用いられる。溶
剤としては、水、アルコール類（特に炭素数１〜８の脂
肪族アルコール）などを用いることが出来る。また、
バインダーとしては、ろう付後の犠牲陽極皮材としての
特性を低下させないで、粉末を良好に固着できるもので
あればよい。例えば、カルボキシル基を有する水溶性高
分子化合物を挙げることができ、この化合物としては、
熱硬化性のアクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、カルボ
キシルメチルセルロース、カルボキシルメチル澱粉など
が例示される。また、これら以外にも、揮発性が高い熱
可塑性のアクリル系樹脂やポリブテン等を用いることも
できる。

【００１１】上記した粉末等は、適当に混合されて、芯
材に付着させる。その方法も本発明としては特に限定さ
れないが、例えば、スプレー法、シャワー法、フローコ
ーター法、ロールコータ法、刷毛塗り法、浸漬法といっ
た手段を利用できる。なお、本発明は、好適には熱交換
器用チューブに適用されるが、これに限定されるもので
はなく、耐食性、強度が要求される製品の部材として用
いることができる。

【００１２】

【作用】すなわち、本発明によれば、Ｍｇを５％を超え
て含有する粉末で犠牲陽極皮材を構成したので、犠牲陽
極皮材の固相線温度が下がり、ろう付加熱時に該粉末が
適度に融解し、芯材の表面に一様な皮膜を形成すること
ができる。しかも、皮材には従来材の倍以上の量のＭｇ
が含まれており、このＭｇ成分が芯材に多く拡散して、
Ｓｉとの結合によって芯材の強度を大幅に向上させる。
次に、本発明で成分等の範囲を望ましいとした理由また
はを限定した理由を以下に説明する。

【００１３】（芯材）Ａｌ−Ｍｎ−Ｓｉ系合金成分中のＭｎは、耐食性に有害な不純物ＦｅとＡｌとの
金属間化合物Ａｌ₃Ｆｅを無害なＡｌ−Ｍｎ−Ｆｅ系化
合物に変えて耐食性を向上させる。但し、１．５％を超
えると、加工性が低下し、また０．１％未満では上記作
用が十分に得られないので、その含有量を０．１〜１．
５％の範囲内とするのが望ましい。また、成分中のＳｉ
は、犠牲材から拡散するＭｇとともにＭｇ₂Ｓｉとして
析出し強度を向上させる。但し、１．５％を超えると耐
食性が低下し、また０．１％未満では上記作用が十分に
得られないので、その含有量を０．１〜１．５％の範囲
内とするのが望ましい。Ｍｇ：０．０５〜１％、Ｆｅ：０．０５〜０．５
％、Ｚｒ：０．０５〜０．５％、Ｃｒ：０．０５〜０．
５％、Ｖ：０．０５〜０．５％これら成分は強度を向上させることを目的として選択的
に含有させる。ただし、下限未満ではそれぞれ所望の作
用を得ることができず、また、上限を超えると、加工性
が低下するので、それぞれの含有量は上記範囲とする。Ｃｕ：０．０５〜１％、Ｔｉ：０．０５〜０．５％これら成分は、強度と耐食性を向上させることを目的と
して選択的に含有させる。ただし、下限未満ではそれぞ
れ所望の作用を得ることができず、また、上限を超える
と、Ｃｕでは耐食性が低下し、Ｔｉでは加工性が低下す
るため、それぞれ上記範囲とする。

【００１４】（犠牲陽極皮材）Ｍｇは、５％を超えて含
有させることによって、皮材の固相線温度を適当な温度
にまで下げて、ろう付加熱温度で適度にアルミニウム合
金粉末を融解させる。また、芯材に拡散してＭｇ₂Ｓｉ
として析出して芯材の強度を向上させる。５％以下の含
有では、上記作用が十分に得られないので、Ｍｇの含有
量を５％超とする。本発明としては、Ｍｇの含有量の上
限は定めないが、２０％以下とするのが望ましい。その
理由はＭｇの含有量が多いと芯材へのＭｇの拡散量が多
くなり、耐食性が低下する傾向があるためである。

【００１５】さらに、犠牲陽極皮材には、選択成分とし
て以下の成分を含有させることができる。Ｚｎ：０．３〜１０ｗｔ％Ｉｎ：０．００５〜０．１ｗｔ％Ｓｎ：０．０５〜０．５ｗｔ％これらの成分は、犠牲層の電気化学的性質を一層、卑に
して犠牲陽極効果を高めるので所望により１種以上を含
有させる。但し、各成分の上限を超えると、腐食速度が
大きくなりすぎて犠牲層が早期に失われるようになり、
また、下限未満であると、上記作用が不十分となるの
で、上記範囲内に限定した。

【００１６】Ｓｉ：０．３〜１．５％ｗｔＳｉは、Ｍｇと反応してＭｇ₂Ｓｉとして析出し、犠牲
陽極層の強度を向上させるので所望により含有させる。
但し、１．５％を超えると耐食性が低下し、また０．３
％未満では上記作用が十分に得られないので、その含有
量を０．３〜１．５％の範囲内とする。

【００１７】上記した犠牲陽極皮材用粉末は、前述した
ように、犠牲陽極層の厚さを越えない粒径に調製され
る。また、犠牲陽極層の厚さの５０％以下の粒径にする
ことにより、塗布時に粉末をより均一に、芯材へ付着さ
せることができる。さらに、犠牲陽極粉末とともにフラ
ックス粉末を混合すれば、他部材のろう材を介して、犠
牲陽極皮材側と他部材とをろう付することも可能とな
る。

【００１８】

【実施例】以下に、本発明の実施例を説明する。１．０
％Ｍｎ−１．０％Ｓｉのアルミニウム合金製芯材の片面
に、ＪＩＳＢＡ４０４５相当のＡｌ合金をろう材とし
て１０％の厚さでクラッドして、板厚０．９ｍｍの発明
材用ブレージングシートを得た。また、比較材として、
上記ろう材を片面にクラッドするとともに、他面側に
２．３％Ｍｇまたは５．１％Ｍｇを含有するＡｌ−Ｍｇ
合金製の犠牲陽極皮材を１０％の厚さでクラッドして板
厚１．０ｍｍとしたブレージングシート（比較材）を製
造した。但し、５．１％Ｍｇ含有のブレージングシート
は、クラッド圧延に際して、圧着が不良となる現象が生
じたため、使用に耐え得ないものであった。

【００１９】一方、表１に示す組成のＡｌ−Ｍｇ系合金
を粉末化し、表１の平均粒径に調製した。さらにバイン
ダーとして平均分子量１０，０００のポリアクリル酸ブ
チルとイソプロピルアルコールとを用意し、上記Ａｌ合
金粉末１００重量部とバインダー１０重量部と溶剤５０
重量部とをよく混合し、Ａｌ合金粉末を溶媒中に分散さ
せた。なお、発明材Ｎｏ．２では、上記分散液に塩化物
フラックスを５重量部混合して犠牲陽極材用の混合液と
した。上記各混合液を、フローコーター法により、前記
した発明材用ブレージングシートのろう材とは他面側の
芯材表面に０．１ｍｍ厚で塗布して発明材および比較材
を製造した。

【００２０】以上によって得られた発明材と比較材と
を、ろう付加熱をシミュレートして５９０℃で５分間の
加熱を行い、その後、発明材および比較材に引張試験を
行い、強度を測定した。さらに、４０℃の１ppmＣｕ²⁺
添加水道水に６週間浸漬し、孔食深さを測定することに
よって耐食性を評価した。

【００２１】これらの測定結果は表２に示した。表から
明らかなように発明材は、優れた強度と耐食性に優れて
いる。一方、比較材Ｎｏ．１、４では、芯材の強度は十
分に向上しておらず、さらに比較材Ｎｏ．４は、局部的
に孔食が進行していた。また比較材Ｎｏ．２、３は、強
度は良好であるものの、耐食性の点で劣っていた。

【００２２】

【表１】

【００２３】

【表２】

【００２４】

【発明の効果】以上説明したように本願発明のろう付用
アルミニウム合金製部材によれば、犠牲陽極皮材層が、
芯材に付着した犠牲陽極粉末で構成されており、該犠牲
陽極粉末は、平均でＭｇ：５ｗｔ％超を含有し、残りが
Ａｌと不可避不純物からなるので、Ｍｇを多く含有する
犠牲陽極皮材を良好に芯材表面に設けることができ、ま
た、芯材の強度を大幅に向上することができる。

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】Ａｌ−Ｍｎ−Ｓｉ系合金芯材の片面にろ
う材層、他の片面に犠牲陽極皮材層が設けられたろう付
用アルミニウム合金製部材において、前記犠牲陽極皮材
層は、芯材に付着した犠牲陽極粉末で構成されており、
該犠牲陽極粉末は、平均でＭｇ：５ｗｔ％超を含有し、
残りがＡｌと不可避不純物からなる組成を有することを
特徴とするろう付用アルミニウム合金製部材
【請求項２】犠牲陽極粉末は、平均で、さらに、Ｚ
ｎ：０．３〜１０ｗｔ％、Ｉｎ：０．００５〜０．１ｗ
ｔ％、Ｓｎ：０．０５〜０．５ｗｔ％の内、１種または
２種以上を含有することを特徴とする請求項１記載のろ
う付用アルミニウム合金製部材
【請求項３】犠牲陽極粉末は、平均で、さらに、Ｓ
ｉ：０．３〜１．５％ｗｔを含有することを特徴とする
請求項１または２に記載のろう付用アルミニウム合金製
部材
【請求項４】犠牲陽極粉末は、溶剤とバインダーとを
介在させて芯材に固着されていることを特徴とする請求
項１〜３のいずれかに記載のろう付用アルミニウム合金
製部材
【請求項５】犠牲陽極皮材層には、犠牲陽極粉末とと
もにフラックス粉末を付着させたことを特徴とする請求
項１〜４のいずれかに記載のろう付用アルミニウム合金
製部材