JP2006176851A - 耐エロージョン性に優れた熱交換器用の高強度アルミニウム合金板材および熱交換器並びに高強度アルミニウム合金板材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 耐エロージョン性に優れるとともに高強度な熱交換器用のアルミニウム合金板材および熱交換器を提供する。
【解決手段】 アルミニウム合金板の一面または他面のうちの一方または両方に、粉末ろう材または粉末ろう材を含むろう材組成物が塗布されて構成され、前記アルミニウム合金板の組成が、質量%で、Sc:0.0001%以上1.0%以下、Mn:0.005%以上3.0以下を含有し、更に、Zn:0.01%以上5.0%以下、Fe:0.05%以上2.5%以下、Si:0.05%以上1.5%以下、Cu:0.05%以上0.8%以下、Mg:0.01%以上0.5%以下、Zr:0.001%以上0.3%以下、のうちの1種または2種以上の元素を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物であることを特徴とする耐エロージョン性に優れた熱交換器用の高強度アルミニウム合金板材を採用する。
【選択図】 なし
【解決手段】 アルミニウム合金板の一面または他面のうちの一方または両方に、粉末ろう材または粉末ろう材を含むろう材組成物が塗布されて構成され、前記アルミニウム合金板の組成が、質量%で、Sc:0.0001%以上1.0%以下、Mn:0.005%以上3.0以下を含有し、更に、Zn:0.01%以上5.0%以下、Fe:0.05%以上2.5%以下、Si:0.05%以上1.5%以下、Cu:0.05%以上0.8%以下、Mg:0.01%以上0.5%以下、Zr:0.001%以上0.3%以下、のうちの1種または2種以上の元素を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物であることを特徴とする耐エロージョン性に優れた熱交換器用の高強度アルミニウム合金板材を採用する。
【選択図】 なし
Description
本発明は、熱交換器のチューブ材、ヘッダー材、サイドサポート材等に用いられる耐エロージョン性に優れた高強度アルミニウム合金板材および熱交換器並びに高強度アルミニウム合金板材の製造方法に関する。
一般に、自動車のラジエータ等に用いられている熱交換器においては、チューブ材やヘッダープレートにクラッド材が使用されている。このクラッド材は、例えば、AA3003合金などのAl−Mn合金芯材の一面に、AA4343ろう材やAA4045ろう材が貼り合わされるとともに、他面にAA7072合金が貼り合わされて構成されている。
また、熱交換器の剛性を高めるためにコア最外部に取付けられるサイドサポート材には、A3003合金の片面にAl−Si系合金ろう材を貼り合わせたクラッド材が使用されている。
また、熱交換器の剛性を高めるためにコア最外部に取付けられるサイドサポート材には、A3003合金の片面にAl−Si系合金ろう材を貼り合わせたクラッド材が使用されている。
ところで、近年の自動車の軽量化により自動車用の熱交換器もまた軽量化が求められており、これに対応すべくチューブ材等の構成部材の薄肉化、高強度化が求められている。一方、チューブ材等の構成部材の薄肉化により発生する問題としては、溶融したろうによる侵食(エロージョン)がある。エロージョンによってチューブ材やヘッダー材に貫通孔が生じてしまうと、熱交換器内を流れる媒体が流出してしまう問題があった。また、サイドサポート材に貫通孔が生じてしまうと、熱交換器として必要な強度が得られなくなったり、ひいては熱交換器としての構造が保てなくなったりするなどの問題が生じていた。
また、高強度化の達成を目的として、例えば、チューブ材やヘッダー材、サイドサポート材等には、Al−Mn−Si−Cu系合金芯材が使用されたり、Al−Zn−Mg系犠牲材を貼り合わせた高強度材が開発されている。
また、ベアフィン材用のアルミニウム合金として、Mn:0.8−1.3%、Si:0.2−0.7%からなる組成で熱間圧延温度や中間焼鈍温度あるいは最終冷間圧延率を規定した合金も開発されており、耐垂下性や犠牲陽極効果に優れているとのことである(特許文献1)。
このほか、MnやSiを含有した合金には、特許文献2−5に記載された合金があり、強度や耐垂下性に優れると言われている。
特許第2786640号公報
特開平11−256261号公報
特開平4−247841号公報
特開平5−43999号公報
特開平4−371369号公報
また、ベアフィン材用のアルミニウム合金として、Mn:0.8−1.3%、Si:0.2−0.7%からなる組成で熱間圧延温度や中間焼鈍温度あるいは最終冷間圧延率を規定した合金も開発されており、耐垂下性や犠牲陽極効果に優れているとのことである(特許文献1)。
このほか、MnやSiを含有した合金には、特許文献2−5に記載された合金があり、強度や耐垂下性に優れると言われている。
しかし、従来の熱交換器用のアルミニウム合金材料では、強度が不足したり、耐エロージョン性が不足するものであった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、耐エロージョン性に優れるとともに高強度な熱交換器用のアルミニウム合金板材および熱交換器並びに高強度アルミニウム合金板材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、耐エロージョン性に優れるとともに高強度な熱交換器用のアルミニウム合金板材および熱交換器並びに高強度アルミニウム合金板材の製造方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
本発明の耐エロージョン性に優れた熱交換器用の高強度アルミニウム合金板材は、アルミニウム合金板の一面または他面のうちの一方または両方に、粉末ろう材または粉末ろう材を含むろう材組成物が塗布されて構成され、前記アルミニウム合金板の組成が、質量%で、Sc:0.0001%以上1.0%以下、Mn:0.005%以上3.0以下を含有し、更に、Zn:0.01%以上5.0%以下、Fe:0.05%以上2.5%以下、Si:0.05%以上1.5%以下、Cu:0.05%以上0.8%以下、Mg:0.01%以上0.5%以下、Zr:0.001%以上0.3%以下、のうちの1種または2種以上の元素を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物であることを特徴とする。
本発明の耐エロージョン性に優れた熱交換器用の高強度アルミニウム合金板材は、アルミニウム合金板の一面または他面のうちの一方または両方に、粉末ろう材または粉末ろう材を含むろう材組成物が塗布されて構成され、前記アルミニウム合金板の組成が、質量%で、Sc:0.0001%以上1.0%以下、Mn:0.005%以上3.0以下を含有し、更に、Zn:0.01%以上5.0%以下、Fe:0.05%以上2.5%以下、Si:0.05%以上1.5%以下、Cu:0.05%以上0.8%以下、Mg:0.01%以上0.5%以下、Zr:0.001%以上0.3%以下、のうちの1種または2種以上の元素を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物であることを特徴とする。
また本発明の耐エロージョン性に優れた熱交換器用の高強度アルミニウム合金板材は、アルミニウム合金板の一面に、粉末ろう材または粉末ろう材を含むろう材組成物が塗布されるとともに、該アルミニウム合金板の他面には、Zn含有フラックスを含むフラックス組成物が塗布されて構成され、前記アルミニウム合金板の組成が、質量%で、Sc:0.0001%以上1.0%以下、Mn:0.005%以上3.0以下を含有し、更に、Zn:0.01%以上5.0%以下、Fe:0.05%以上2.5%以下、Si:0.05%以上1.5%以下、Cu:0.05%以上0.8%以下、Mg:0.01%以上0.5%以下、Zr:0.001%以上0.3%以下、のうちの1種または2種以上の元素を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物であることを特徴とする。
また上記の高強度アルミニウム合金板材においては、更に、Ti:0.01%以上0.25%以下、Cr:0.01%以上0.1%以下、V:0.01%以上0.1%以下、Ni:0.01%以上2.0%以下、のうちの1種または2種以上の元素が含有されていることが好ましい。
また上記の高強度アルミニウム合金板材においては、ろう付け後における組織中の平均結晶粒径が0.2mm以上2mm以下の範囲となることが好ましい。
また上記の高強度アルミニウム合金板材においては、前記ろう材組成物が、Al−Si合金粉末、Si粉末のいずれか一方または両方からなる粉末ろう材と、Al含有フラックス、Zn含有フラックスのいずれか一方または両方とが含有されてなることが好ましい。
なお、上記の粉末ろう材は、Al−Si合金粉末若しくはSi粉末のいずれか一方または両方であることが好ましい。
また、本発明の熱交換器は、先のいずれかに記載の高強度アルミニウム合金板材が備えられていることを特徴とする。
また上記の高強度アルミニウム合金板材においては、ろう付け後における組織中の平均結晶粒径が0.2mm以上2mm以下の範囲となることが好ましい。
また上記の高強度アルミニウム合金板材においては、前記ろう材組成物が、Al−Si合金粉末、Si粉末のいずれか一方または両方からなる粉末ろう材と、Al含有フラックス、Zn含有フラックスのいずれか一方または両方とが含有されてなることが好ましい。
なお、上記の粉末ろう材は、Al−Si合金粉末若しくはSi粉末のいずれか一方または両方であることが好ましい。
また、本発明の熱交換器は、先のいずれかに記載の高強度アルミニウム合金板材が備えられていることを特徴とする。
次に、本発明の耐エロージョン性に優れた熱交換器用の高強度アルミニウム合金板材の製造方法は、先のいずれかに記載の組成を有するアルミニウム合金を鋳造してから圧延及び焼鈍を行い、更に最終冷間圧延率が10%超となる条件で冷間圧延を行うことを特徴とする。
また上記の製造方法においては、前記最終冷間圧延後に更に、最終焼鈍を200℃以上500℃以下の温度で行うこともある。
また上記の製造方法においては、前記最終冷間圧延後に更に、最終焼鈍を200℃以上500℃以下の温度で行うこともある。
上記のアルミニウム合金板材によれば、添加されたScがろう付け熱処理によって合金組織中に固溶するとともに、Scの一部がAl3Scなる組成の金属間化合物を形成してこの微細なAl3Scが時効析出するので、合金板材の強度を高めることができる。また、ろう付け熱処理の昇温過程において再結晶粒径が粗大化して結晶粒界が減少し、これにより溶融ろうによるエロージョンの発生を抑制できる。
また、添加されたMnが他の合金成分と化合して金属間化合物を形成、晶出若しくは析出するので、合金板材の強度を高めることができる。
また従来のようにAl−Si合金からなるろう材層を貼り合わせる必要がなく、合金板材の軽量化を図れる。
また、添加されたMnが他の合金成分と化合して金属間化合物を形成、晶出若しくは析出するので、合金板材の強度を高めることができる。
また従来のようにAl−Si合金からなるろう材層を貼り合わせる必要がなく、合金板材の軽量化を図れる。
更に、粉末ろう材または粉末ろう材を含むろう材組成物が塗布された場合には、粉末ろう材に含まれるSiがろう付け時に合金板材に拡散するので、合金板材の強度をより高めることができる。
更にまた、Zn含有フラックスを含むフラックス組成物が塗布された場合には、Znがろう付け時に合金板材に拡散されて板材表層付近にAl−Zn合金からなるZn含有層が形成され、合金板材の耐食性が向上してエロージョンの発生を効果的に防止できる。
また、ろう材組成物にZn含有フラックスが含まれた場合も上記と同様にして、合金板材の耐食性が向上されてエロージョンの発生を効果的に防止できる。
更にまた、Zn含有フラックスを含むフラックス組成物が塗布された場合には、Znがろう付け時に合金板材に拡散されて板材表層付近にAl−Zn合金からなるZn含有層が形成され、合金板材の耐食性が向上してエロージョンの発生を効果的に防止できる。
また、ろう材組成物にZn含有フラックスが含まれた場合も上記と同様にして、合金板材の耐食性が向上されてエロージョンの発生を効果的に防止できる。
また、ろう付け後における組織中の平均結晶粒径を0.2mm以上2mm以下の範囲とすることで、結晶粒径が比較的大きくなる反面、結晶粒界が少なくなり、粒界に沿って侵入する溶融ろうを少なくすることができ、エロージョンの発生を効果的に抑制できる。
本発明によれば、耐エロージョン性に優れるとともに高強度な熱交換器用のアルミニウム合金板材および熱交換器並びに高強度アルミニウム合金板材の製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態の耐エロージョン性に優れた熱交換器用の高強度アルミニウム合金板材(以下、合金板材と表記)の第1の例は、図1に示すように、アルミニウム合金板1(以下、アルミ合金板と表記)の一面1aまたは両面1a,1bに、ろう材2、2が塗布されて構成されている。ろう材2は、粉末ろう材または粉末ろう材を含むろう材組成物から構成されている。
また、本実施形態の合金板材の第2の例は、図2に示すように、アルミ合金板1の一面1aにろう材2(粉末ろう材または粉末ろう材を含むろう材組成物)が塗布されるとともに、他面1bにZn含有フラックスを含むフラックス組成物3が塗布されて構成されている。
以下、本実施形態の合金板材を構成するアルミ合金板1、ろう材2およびフラックス組成物3について順次説明する。
本実施形態の耐エロージョン性に優れた熱交換器用の高強度アルミニウム合金板材(以下、合金板材と表記)の第1の例は、図1に示すように、アルミニウム合金板1(以下、アルミ合金板と表記)の一面1aまたは両面1a,1bに、ろう材2、2が塗布されて構成されている。ろう材2は、粉末ろう材または粉末ろう材を含むろう材組成物から構成されている。
また、本実施形態の合金板材の第2の例は、図2に示すように、アルミ合金板1の一面1aにろう材2(粉末ろう材または粉末ろう材を含むろう材組成物)が塗布されるとともに、他面1bにZn含有フラックスを含むフラックス組成物3が塗布されて構成されている。
以下、本実施形態の合金板材を構成するアルミ合金板1、ろう材2およびフラックス組成物3について順次説明する。
[アルミ合金板]
アルミ合金板1はScとMnとが含有され、更に、Zn、Fe、Si、Cu、Mg、Zr、のうちの1種または2種以上の元素が含有され、残部がAlおよび不可避的不純物が含有されて構成されている。また必要に応じて、Ti、Cr、V、Niのうちの1種または2種以上の元素が含有されていても良い。
以下、アルミ合金板の組成限定理由について説明する。
アルミ合金板1はScとMnとが含有され、更に、Zn、Fe、Si、Cu、Mg、Zr、のうちの1種または2種以上の元素が含有され、残部がAlおよび不可避的不純物が含有されて構成されている。また必要に応じて、Ti、Cr、V、Niのうちの1種または2種以上の元素が含有されていても良い。
以下、アルミ合金板の組成限定理由について説明する。
「Sc」
スカンジウム(Sc)はアルミ合金板1の必須元素であり、ろう付け熱処理の際に合金組織中に固溶して合金板材の機械的強度を向上させる。また、一部がAl3Scなる組成の金属間化合物を形成してこの微細なAl3Scが時効析出して合金板材の機械的強度を向上させる。更に、ろう付熱処理の昇温過程においてこのScの作用により再結晶粒径が粗大化するため、溶融ろうによる侵食(エロージョン)が抑制される。Scの組成比は質量%で0.0001%以上1.0%以下の範囲が好ましく、0.0001%以上0.2%未満の範囲がより好ましい。Scの組成比が0.0001%未満になると機械的強度の向上効果およびエロージョンの抑制効果が得られない。またScの組成比が1.0%を越えると機械的強度の向上効果およびエロージョンの抑制効果が飽和してしまい、添加する効果が得られない。更に、Scの添加量が0.2%以上になると、冷間圧延時にクラックが発生しやすくなるなどの問題が生ずる。
スカンジウム(Sc)はアルミ合金板1の必須元素であり、ろう付け熱処理の際に合金組織中に固溶して合金板材の機械的強度を向上させる。また、一部がAl3Scなる組成の金属間化合物を形成してこの微細なAl3Scが時効析出して合金板材の機械的強度を向上させる。更に、ろう付熱処理の昇温過程においてこのScの作用により再結晶粒径が粗大化するため、溶融ろうによる侵食(エロージョン)が抑制される。Scの組成比は質量%で0.0001%以上1.0%以下の範囲が好ましく、0.0001%以上0.2%未満の範囲がより好ましい。Scの組成比が0.0001%未満になると機械的強度の向上効果およびエロージョンの抑制効果が得られない。またScの組成比が1.0%を越えると機械的強度の向上効果およびエロージョンの抑制効果が飽和してしまい、添加する効果が得られない。更に、Scの添加量が0.2%以上になると、冷間圧延時にクラックが発生しやすくなるなどの問題が生ずる。
「Mn」
マンガン((Mn)はScとともにアルミ合金板1の必須元素であり、他の合金成分(具体的にはSi)と化合してAl−Mn−Si化合物を形成し、この金属間化合物が晶出若しくは析出されて、ろう付け後の合金板材の機械的強度が向上する。また、金属間化合物の形成によって合金組織中のSiの固溶度が相対的に低下し、これにより合金板材の融点を向上させることができ、合金板材の耐熱性を高めることができる。Mnの組成比は質量%で0.005%以上3.0%以下の範囲が好ましく、0.3%以上2.0%以下の範囲がより好ましい。Mnの組成比が0.005%未満になると機械的強度の向上効果が得られない。またMnの組成比が3.0%を越えると機械的強度が高くなりすぎて鋳造性や圧延加工性が低下するので好ましくない。
マンガン((Mn)はScとともにアルミ合金板1の必須元素であり、他の合金成分(具体的にはSi)と化合してAl−Mn−Si化合物を形成し、この金属間化合物が晶出若しくは析出されて、ろう付け後の合金板材の機械的強度が向上する。また、金属間化合物の形成によって合金組織中のSiの固溶度が相対的に低下し、これにより合金板材の融点を向上させることができ、合金板材の耐熱性を高めることができる。Mnの組成比は質量%で0.005%以上3.0%以下の範囲が好ましく、0.3%以上2.0%以下の範囲がより好ましい。Mnの組成比が0.005%未満になると機械的強度の向上効果が得られない。またMnの組成比が3.0%を越えると機械的強度が高くなりすぎて鋳造性や圧延加工性が低下するので好ましくない。
「Zn」
亜鉛(Zn)は、Scの添加によって上昇した電位を卑にさせることを可能にする。Znは特に、Zn含有フラックスを使用しない場合にはなるべく添加することが好ましい。Znの組成比は質量%で0.01%以上5.0%以下の範囲が好ましく、0.01%以上1.5%以下の範囲がより好ましい。Znの組成比が0.01%未満になると、電位を卑にする効果が得られない。またZnの組成比が5.0%を越えると、合金板材の自己耐食性が低下してしまう。
亜鉛(Zn)は、Scの添加によって上昇した電位を卑にさせることを可能にする。Znは特に、Zn含有フラックスを使用しない場合にはなるべく添加することが好ましい。Znの組成比は質量%で0.01%以上5.0%以下の範囲が好ましく、0.01%以上1.5%以下の範囲がより好ましい。Znの組成比が0.01%未満になると、電位を卑にする効果が得られない。またZnの組成比が5.0%を越えると、合金板材の自己耐食性が低下してしまう。
「Fe」
鉄(Fe)は、Al、Mn、Siとともに金属間化合物を形成してアルミ合金板1の組織中に晶出または析出し、ろう付後の合金板材の強度を向上させる。金属間化合物としては、Al−Mn−Fe、Al−Fe−Si、Al−Mn−Fe−Si系化合物を例示できる。また、これらの金属間化合物の形成によって、組織中におけるMnやSiの固溶度を低下させ、合金板材の融点を向上させることができる。Feの組成比は質量%で0.05%以上2.5%以下の範囲が好ましく、0.2%以上1.8%以下の範囲がより好ましい。Feの組成比が0.05%未満では、合金板材の強度向上及び融点上昇の効果が得られない。またFeの組成比が2.5%を越えると、合金板材の腐食速度が高くなり、また巨大な晶出物が出現して合金板材の鋳造性や圧延性が低下する。
鉄(Fe)は、Al、Mn、Siとともに金属間化合物を形成してアルミ合金板1の組織中に晶出または析出し、ろう付後の合金板材の強度を向上させる。金属間化合物としては、Al−Mn−Fe、Al−Fe−Si、Al−Mn−Fe−Si系化合物を例示できる。また、これらの金属間化合物の形成によって、組織中におけるMnやSiの固溶度を低下させ、合金板材の融点を向上させることができる。Feの組成比は質量%で0.05%以上2.5%以下の範囲が好ましく、0.2%以上1.8%以下の範囲がより好ましい。Feの組成比が0.05%未満では、合金板材の強度向上及び融点上昇の効果が得られない。またFeの組成比が2.5%を越えると、合金板材の腐食速度が高くなり、また巨大な晶出物が出現して合金板材の鋳造性や圧延性が低下する。
「Si」
ケイ素(Si)は、AlおよびMnとともに、金属間化合物であるAl−Mn−Si化合物を形成してアルミ合金板1の組織中に析出し、ろう付後の合金板材の強度を向上させる。またSiは、その一部が組織中に固溶してフィン材の強度を向上させる。Siの組成比は質量%で0.05%以上1.5%以下の範囲が好ましく、0.4%以上1.2%以下の範囲がより好ましい。Siの組成比が0.05%未満では、板材の強度向上の効果が得られない。またSiの組成比が1.5%を越えると、合金板材の融点が低下してろう付け時に溶融してしまい、更に合金板材の熱伝導性を低下させる。
ケイ素(Si)は、AlおよびMnとともに、金属間化合物であるAl−Mn−Si化合物を形成してアルミ合金板1の組織中に析出し、ろう付後の合金板材の強度を向上させる。またSiは、その一部が組織中に固溶してフィン材の強度を向上させる。Siの組成比は質量%で0.05%以上1.5%以下の範囲が好ましく、0.4%以上1.2%以下の範囲がより好ましい。Siの組成比が0.05%未満では、板材の強度向上の効果が得られない。またSiの組成比が1.5%を越えると、合金板材の融点が低下してろう付け時に溶融してしまい、更に合金板材の熱伝導性を低下させる。
「Cu」
銅(Cu)は、アルミ合金板1の組織中に固溶して合金板材の強度を向上させる。Cuの組成比は質量%で0.05%以上0.8%以下の範囲が好ましく、0.3%以上0.7%以下の範囲がより好ましい。Cuの組成比が0.05%未満では、合金板材の強度向上の効果が得られない。またCuの組成比が0.8%を越えると、合金板材の融点が低下してろう付け時に溶融してしまう。
銅(Cu)は、アルミ合金板1の組織中に固溶して合金板材の強度を向上させる。Cuの組成比は質量%で0.05%以上0.8%以下の範囲が好ましく、0.3%以上0.7%以下の範囲がより好ましい。Cuの組成比が0.05%未満では、合金板材の強度向上の効果が得られない。またCuの組成比が0.8%を越えると、合金板材の融点が低下してろう付け時に溶融してしまう。
「Mg」
マグネシウム(Mg)は、Cuと同様にアルミ合金板1の組織中に固溶して合金板材の強度を向上させる。また、粉末ろう材に含まれるSiがろう付け時に組織中に拡散されて、このSiがMgとともにMg2Siを形成し、これによっても合金板材の強度が向上する。Mgの組成比は質量%で0.01%以上0.5%以下の範囲が好ましく、0.05%以上0.2%以下の範囲がより好ましい。Mgの組成比が0.01%未満では、合金板材の強度向上の効果が得られない。またMgの組成比が0.5%を越えると、合金板材の融点が低下してろう付け時に溶融してしまうとともに、合金板材の強度が高くなりすぎて成形性が低下する。
マグネシウム(Mg)は、Cuと同様にアルミ合金板1の組織中に固溶して合金板材の強度を向上させる。また、粉末ろう材に含まれるSiがろう付け時に組織中に拡散されて、このSiがMgとともにMg2Siを形成し、これによっても合金板材の強度が向上する。Mgの組成比は質量%で0.01%以上0.5%以下の範囲が好ましく、0.05%以上0.2%以下の範囲がより好ましい。Mgの組成比が0.01%未満では、合金板材の強度向上の効果が得られない。またMgの組成比が0.5%を越えると、合金板材の融点が低下してろう付け時に溶融してしまうとともに、合金板材の強度が高くなりすぎて成形性が低下する。
「Zr」
ジルコニウム(Zr)は、ろう付の際の加熱によって微細な金属間化合物として分散析出して強度を向上させる。また、Scの添加効果を一層を高める作用がある。Zrの組成比は質量%で0.001%以上0.3%以下の範囲が好ましく、0.05%以上0.15%以下の範囲がより好ましい。Zrの組成比が0.001%未満では、合金板材の強度向上の効果が得られない。またZrの組成比が0.3%を越えると、合金板材の強度が高くなりすぎて成形性が低下したり、自己耐食性が低下したり、熱伝導性が低下したりする。
ジルコニウム(Zr)は、ろう付の際の加熱によって微細な金属間化合物として分散析出して強度を向上させる。また、Scの添加効果を一層を高める作用がある。Zrの組成比は質量%で0.001%以上0.3%以下の範囲が好ましく、0.05%以上0.15%以下の範囲がより好ましい。Zrの組成比が0.001%未満では、合金板材の強度向上の効果が得られない。またZrの組成比が0.3%を越えると、合金板材の強度が高くなりすぎて成形性が低下したり、自己耐食性が低下したり、熱伝導性が低下したりする。
以上のように、Zn、Fe、Si、Cu、Mg、Zrはいずれも、合金板材の耐食性若しくは強度を向上させる元素なので、これらの内の1種または2種以上の元素を添加すれば良い。
「Ti、Cr、V」
チタン(Ti)、クロム(Cr)、バナジウム(V)はいずれも、ろう付の際の加熱によって微細な金属間化合物として分散析出して強度を向上させる。Tiの組成比は質量%で0.01%以上0.25%以下の範囲が好ましく、0.05%以上0.15%以下の範囲がより好ましい。また、Crの組成比は質量%で0.01%以上0.1%以下の範囲が好ましく、0.02%以上0.07%以下の範囲がより好ましい。更に、Vの組成比は質量%で0.01%以上0.1%以下の範囲が好ましく、0.02%以上0.07%以下の範囲がより好ましい。各元素の組成比が下限未満になると、合金板材の強度向上の効果が得られない。また、各元素の組成比が上限を超えると、合金板材の強度が高くなりすぎて成形性が低下してしまう。
チタン(Ti)、クロム(Cr)、バナジウム(V)はいずれも、ろう付の際の加熱によって微細な金属間化合物として分散析出して強度を向上させる。Tiの組成比は質量%で0.01%以上0.25%以下の範囲が好ましく、0.05%以上0.15%以下の範囲がより好ましい。また、Crの組成比は質量%で0.01%以上0.1%以下の範囲が好ましく、0.02%以上0.07%以下の範囲がより好ましい。更に、Vの組成比は質量%で0.01%以上0.1%以下の範囲が好ましく、0.02%以上0.07%以下の範囲がより好ましい。各元素の組成比が下限未満になると、合金板材の強度向上の効果が得られない。また、各元素の組成比が上限を超えると、合金板材の強度が高くなりすぎて成形性が低下してしまう。
「Ni」
ニッケル(Ni)は、金属間化合物として合金組織中に晶出または析出して、ろう付後の合金板材の強度を向上させる。Niの組成比は質量%で0.01%以上2.0%以下の範囲が好ましく、0.2%以上1.1%以下の範囲がより好ましい。Niが0、01%未満になると、合金板材の強度向上の効果が得られない。また、Niが2.0%を越えると、自己耐食性が低下する。
ニッケル(Ni)は、金属間化合物として合金組織中に晶出または析出して、ろう付後の合金板材の強度を向上させる。Niの組成比は質量%で0.01%以上2.0%以下の範囲が好ましく、0.2%以上1.1%以下の範囲がより好ましい。Niが0、01%未満になると、合金板材の強度向上の効果が得られない。また、Niが2.0%を越えると、自己耐食性が低下する。
以上のように、Ti,Cr,V及びNiはいずれも、合金板材の強度を向上させる元素なので、必要に応じてこれらの内の1種または2種以上の元素を添加すれば良い。
[ろう材]
次にろう材2は、粉末ろう材単独、または粉末ろう材を含むろう材組成物から構成されている。
粉末ろう材は、Al−Si合金粉末またはSi粉末のいずれか一方または両方を用いることが好ましい。Al−Si合金粉末は、Siの含有量が8質量%以上99質量%以下であるとともに残部がAlおよび不可避不純物からなる合金粉末である。また、Si粉末はSiおよび不可避的不純物からなる粉末である。粉末ろう材の平均粒径は、3μmないし100μmの範囲が好ましい。
上記の粉末ろう材にはアクリル系樹脂等のバインダーが混合され、この混合物がアルミ合金板の一面1aまたは両面に塗布される。粉末ろう材の塗布量は、2g/m2以上100g/m2以下の範囲が好ましい。塗布量が2g/m2以上であれば、十分なろう付け強度が得られる。また塗布量が100g/m2以下であれば、合金板材表面のSi濃度が過剰にならず、腐食速度を抑制することができる。
次にろう材2は、粉末ろう材単独、または粉末ろう材を含むろう材組成物から構成されている。
粉末ろう材は、Al−Si合金粉末またはSi粉末のいずれか一方または両方を用いることが好ましい。Al−Si合金粉末は、Siの含有量が8質量%以上99質量%以下であるとともに残部がAlおよび不可避不純物からなる合金粉末である。また、Si粉末はSiおよび不可避的不純物からなる粉末である。粉末ろう材の平均粒径は、3μmないし100μmの範囲が好ましい。
上記の粉末ろう材にはアクリル系樹脂等のバインダーが混合され、この混合物がアルミ合金板の一面1aまたは両面に塗布される。粉末ろう材の塗布量は、2g/m2以上100g/m2以下の範囲が好ましい。塗布量が2g/m2以上であれば、十分なろう付け強度が得られる。また塗布量が100g/m2以下であれば、合金板材表面のSi濃度が過剰にならず、腐食速度を抑制することができる。
次に、ろう材組成物は、上記構成の粉末ろう材と、フラックスとが含有されて構成されている。Al含有フラックスとして例えば、KAlF3、K1−3AlF4−6、AlF3等を例示できる。また、Zn含有フラックスとして例えば、ZnF2、ZnCl2、KZnF3等を例示できる。更にこれら以外に、LiF,KF,CaF2、SiF4などの弗化物を用いることができる。フラックスには、例示されたものを単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
ろう材組成物の組成は質量比で、粉末ろう材:フラックス=1:10ないし5:10の範囲が好ましい。このろう材組成物には更に上記バインダーが添加され、このバインダーを含む混合物がアルミ合金板の一面1aまたは両面に塗布される。ろう材組成物の塗布量は、10g/m2以上200g/m2以下の範囲が好ましい。塗布量が10g/m2以上であれば、十分なろう付け強度が得られる。また塗布量が100g/m2以下であれば、合金板材表面のSi濃度が過剰にならず、腐食速度を抑制することができる。
上記のろう材組成物には、Siを有する粉末ろう材が含まれるために、このSiがろう付けの際にアルミ合金板の表面から内部に侵入してSi拡散層が形成される。また、合金板材の表面には溶融したろう材層が形成される。このSi拡散層およびろう材層が犠牲陽極層と同等の働きをし、ろう材層が優先的に面状に腐食されるため、深い孔食の発生が抑制され、耐食性が向上する。
また、フラックスにZn含有フラックスを含有させた場合は、ろう付け後の合金板材の表面にZn拡散層が形成され、このZn拡散層が犠牲陽極層として機能することにより防食効果が高められる。
また、フラックスにZn含有フラックスを含有させた場合は、ろう付け後の合金板材の表面にZn拡散層が形成され、このZn拡散層が犠牲陽極層として機能することにより防食効果が高められる。
[フラックス組成物]
次にフラックス組成物3は、各種のZn含有フラックスから構成されている。Zn含有フラックスとしては、例えば、ZnF2、ZnCl2、KZnF3等を例示できる。このフラックス組成物には更に上記のバインダーが添加され、このバインダーを含む混合物がアルミ合金板の他面1bに塗布される。
次にフラックス組成物3は、各種のZn含有フラックスから構成されている。Zn含有フラックスとしては、例えば、ZnF2、ZnCl2、KZnF3等を例示できる。このフラックス組成物には更に上記のバインダーが添加され、このバインダーを含む混合物がアルミ合金板の他面1bに塗布される。
このフラックス組成物3は、例えばクラッド材のろう材層に接触させてろう付け熱処理を行なう際に、合金板表面の酸化物膜を破壊して合金板の金属組織を露出させる。これにより、クラッド材と合金板材とを強固にろう付けさせることが可能になる。
また、フラックス組成物としてZn含有フラックスを用いることにより、ろう付け後の合金板材の表面にZn拡散層が形成され、このZn拡散層が犠牲陽極層として機能することにより防食効果が高められる。こうした効果を十分に発揮させるためには、フラックス組成物の塗布量を5g/m2以上20g/m2以下の範囲にすることが好ましい。
また、フラックス組成物としてZn含有フラックスを用いることにより、ろう付け後の合金板材の表面にZn拡散層が形成され、このZn拡散層が犠牲陽極層として機能することにより防食効果が高められる。こうした効果を十分に発揮させるためには、フラックス組成物の塗布量を5g/m2以上20g/m2以下の範囲にすることが好ましい。
本実施形態の合金板材は、例えば、上記適正範囲の組成を有するアルミニウム合金を溶融、鋳造してインゴットを得、このインゴットに対して均質化を施す。続いて、熱間圧延、冷間圧延、中間焼鈍および冷間圧延を順次行なってアルミ合金板とする。また最終冷間圧延率は10%超とすることが好ましい。更に、最終冷間圧延後に200℃ないし500℃程度で最終焼鈍を行っても良い。また連続鋳造法を採用しても良い。
こうして得られたアルミ合金板の一面または両面にろう材を塗布するか、若しくはアルミ合金板の一面にろう材を塗布するとともに他面にはフラックス組成物を塗布することによって、本実施形態の合金板材が製造される。
こうして得られたアルミ合金板の一面または両面にろう材を塗布するか、若しくはアルミ合金板の一面にろう材を塗布するとともに他面にはフラックス組成物を塗布することによって、本実施形態の合金板材が製造される。
図3には、本発明の実施形態である自動車用のラジエータ(熱交換器)の分解斜視図を示す。図1において、符号11はフィン、符号12はチューブ、符号13はヘッダー、符号14はサイドサポートである。図1に示すラジエータは、ろう付接合によってチューブ12、フィン11およびヘッダー13が各々一体化され、更に樹脂タンクが機械的接合(かしめ加工)により取り付けられて製造される。本実施形態の合金板材は、チューブ12、ヘッダー13、サイドサポート14として用いることができる。なお、ろう付け時の熱処理温度は、590℃ないし610℃程度が好ましく、保持時間は1分ないし10分程度が好ましい。
ろう付け時の熱処理によって、合金板材の組織中に各種の金属間化合物が生成し、合金板材の強度を向上できるとともに耐エロージョン特性を向上させることができる。
また、ろう付け時の熱処理によって、組織中の再結晶粒の平均結晶粒径が0.2mm以上2mm以下の範囲となる。この平均結晶粒径は、Sc、Zrの組成比を調整することで制御できる。具体的には、Scの添加量を増やすとろう付け後の平均結晶粒径が大きくなる。またZrの添加量を増やしてもろう付け後の平均結晶粒径が大きくなる。平均結晶粒径を上記の範囲とすることで、結晶粒径が比較的大きくなる反面、結晶粒界が少なくなり、粒界に沿って侵入する溶融ろうを少なくすることができ、エロージョンの発生を効果的に抑制できる。更に、ScとZrを複合添加することで、より一層の平均結晶粒径の増大効果が得られる。
また、ろう付け時の熱処理によって、組織中の再結晶粒の平均結晶粒径が0.2mm以上2mm以下の範囲となる。この平均結晶粒径は、Sc、Zrの組成比を調整することで制御できる。具体的には、Scの添加量を増やすとろう付け後の平均結晶粒径が大きくなる。またZrの添加量を増やしてもろう付け後の平均結晶粒径が大きくなる。平均結晶粒径を上記の範囲とすることで、結晶粒径が比較的大きくなる反面、結晶粒界が少なくなり、粒界に沿って侵入する溶融ろうを少なくすることができ、エロージョンの発生を効果的に抑制できる。更に、ScとZrを複合添加することで、より一層の平均結晶粒径の増大効果が得られる。
(実験例1)
下記表1に示す成分組成のアルミニウム合金を溶解鋳造してインゴットを製造し、このインゴットを均質化処理した後、熱間圧延および冷間圧延を行い、更に昇温速度1℃/分、焼鈍温度400℃、焼鈍時間120分の条件で中間焼鈍を行い、続いて最終冷間圧延率が35%となる条件で冷間圧延を行なって、厚み0.2mmの圧延材(アルミ合金板)を作製した。
下記表1に示す成分組成のアルミニウム合金を溶解鋳造してインゴットを製造し、このインゴットを均質化処理した後、熱間圧延および冷間圧延を行い、更に昇温速度1℃/分、焼鈍温度400℃、焼鈍時間120分の条件で中間焼鈍を行い、続いて最終冷間圧延率が35%となる条件で冷間圧延を行なって、厚み0.2mmの圧延材(アルミ合金板)を作製した。
次に、アルミ合金板の一面にろう材組成物を塗布した。このろう材組成物は、30質量部のSi粉末と、50質量部のKZnF4と、20質量部のアクリル系バインダとを混合し、更に分散媒としてイソプロピルアルコールを加えてスラリーとし、このスラリーをロールコート法でアルミ合金板の一面に塗布して形成した。このとき、Si粉末とKZnF4の合計の塗布量が20g/m2となるように調整した。このようにして、一面にろう材組成物が塗布されてなる合金板材を製造した。
得られた合金板材について、耐エロージョン性の評価を行った。耐エロージョン性の評価は、合金板材に対してろう付けに相当する熱処理(窒素ガス雰囲気中600℃で3分保持し、100℃/分で室温まで冷却)を施し、その後、合金板材の断面観察を行なうことにより、ろうによる最大侵食深さについて測定した。
また、合金板材の強度は、上記のろう付けに相当する熱処理を行なった後に、引張強度試験を行って評価した。
更に、合金板材の断面を露出させて、ろう付け後の組織中における再結晶粒の平均結晶粒径を顕微鏡観察により測定した。
試験例1−25の最大侵食深さおよび引張強度および平均結晶粒径を表2に示す。
また、合金板材の強度は、上記のろう付けに相当する熱処理を行なった後に、引張強度試験を行って評価した。
更に、合金板材の断面を露出させて、ろう付け後の組織中における再結晶粒の平均結晶粒径を顕微鏡観察により測定した。
試験例1−25の最大侵食深さおよび引張強度および平均結晶粒径を表2に示す。
(実験例2)
表1に示す組成のアルミ合金板の両面に、ろう材組成物を塗布したこと以外は上記実験例1と同様にして各種の合金板材を製造した。
得られた合金板材に対して、実験例1と同様にして耐エロージョン評価および引張強度試験および平均結晶粒径の測定を行った。試験例26−50の最大侵食深さおよび引張強度および平均結晶粒径を表3に示す。
表1に示す組成のアルミ合金板の両面に、ろう材組成物を塗布したこと以外は上記実験例1と同様にして各種の合金板材を製造した。
得られた合金板材に対して、実験例1と同様にして耐エロージョン評価および引張強度試験および平均結晶粒径の測定を行った。試験例26−50の最大侵食深さおよび引張強度および平均結晶粒径を表3に示す。
(実験例3)
まず、実験例1と同様にして、表1に示す組成のアルミ合金板の一面に、ろう材組成物を塗布した。
次に、アルミ合金板の他面にフラックス組成物を塗布した。フラックス組成物は、30質量部のKZnF3(Zn含有組成物)と、10質量部のアクリル系バインダとを混合し、更に分散媒としてイソプロピルアルコールを加えてスラリーとし、このスラリーをロールコート法でアルミ合金板の他面に塗布して形成した。このとき、フラックス組成物の塗布量が15g/m2となるように調整した。このようにして、一面にろう材組成物が塗布されるとともに他面にフラックス組成物が塗布されてなる合金板材を製造した。
得られた合金板材に対して、実験例1と同様にして耐エロージョン評価および引張り強度試験および平均結晶粒径の測定を行った。試験例51−75の最大侵食深さおよび引張強度および平均結晶粒径を表3に示す。
まず、実験例1と同様にして、表1に示す組成のアルミ合金板の一面に、ろう材組成物を塗布した。
次に、アルミ合金板の他面にフラックス組成物を塗布した。フラックス組成物は、30質量部のKZnF3(Zn含有組成物)と、10質量部のアクリル系バインダとを混合し、更に分散媒としてイソプロピルアルコールを加えてスラリーとし、このスラリーをロールコート法でアルミ合金板の他面に塗布して形成した。このとき、フラックス組成物の塗布量が15g/m2となるように調整した。このようにして、一面にろう材組成物が塗布されるとともに他面にフラックス組成物が塗布されてなる合金板材を製造した。
得られた合金板材に対して、実験例1と同様にして耐エロージョン評価および引張り強度試験および平均結晶粒径の測定を行った。試験例51−75の最大侵食深さおよび引張強度および平均結晶粒径を表3に示す。
表2、表3および表4に示すように、本発明の合金板材は、比較例の合金板材と比べて、侵食深さが小さく、また引張強度にも優れていることがわかる。また、本発明の合金板材の平均結晶粒径は、いずれも0.2mm−2mmの範囲内にあり、耐食性に優れることがわかる。
1…アルミ合金板(アルミニウム合金板)、2…ろう材、3…フラックス組成物、11…フィン(フィン材)、12…チューブ、13…ヘッダー、14…サイドサポート
Claims (8)
- アルミニウム合金板の一面または他面のうちの一方または両方に、粉末ろう材または粉末ろう材を含むろう材組成物が塗布されて構成され、
前記アルミニウム合金板の組成が、質量%で、Sc:0.0001%以上1.0%以下、Mn:0.005%以上3.0以下を含有し、更に、Zn:0.01%以上5.0%以下、Fe:0.05%以上2.5%以下、Si:0.05%以上1.5%以下、Cu:0.05%以上0.8%以下、Mg:0.01%以上0.5%以下、Zr:0.001%以上0.3%以下、のうちの1種または2種以上の元素を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物であることを特徴とする耐エロージョン性に優れた熱交換器用の高強度アルミニウム合金板材。 - アルミニウム合金板の一面に、粉末ろう材または粉末ろう材を含むろう材組成物が塗布されるとともに、該アルミニウム合金板の他面には、Zn含有フラックスを含むフラックス組成物が塗布されて構成され、
前記アルミニウム合金板の組成が、質量%で、Sc:0.0001%以上1.0%以下、Mn:0.005%以上3.0以下を含有し、更に、Zn:0.01%以上5.0%以下、Fe:0.05%以上2.5%以下、Si:0.05%以上1.5%以下、Cu:0.05%以上0.8%以下、Mg:0.01%以上0.5%以下、Zr:0.001%以上0.3%以下、のうちの1種または2種以上の元素を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物であることを特徴とする耐エロージョン性に優れた熱交換器用の高強度アルミニウム合金板材。 - 前記アルミニウム合金板には更に、Ti:0.01%以上0.25%以下、Cr:0.01%以上0.1%以下、V:0.01%以上0.1%以下、Ni:0.01%以上2.0%以下、のうちの1種または2種以上の元素が含有されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の耐エロージョン性に優れた熱交換器用の高強度アルミニウム合金板材。
- ろう付け後における組織中の平均結晶粒径が、0.2mm以上2mm以下の範囲であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の耐エロージョン性に優れた熱交換器用の高強度アルミニウム合金板材。
- 前記ろう材組成物は、Al−Si合金粉末、Si粉末のいずれか一方または両方からなる粉末ろう材と、Al含有フラックス、Zn含有フラックスのいずれか一方または両方とが含有されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の耐エロージョン性に優れた熱交換器用の高強度アルミニウム合金板材。
- 請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の高強度アルミニウム合金板材を備えたことを特徴とする熱交換器。
- 耐エロージョン性に優れた熱交換器用の高強度アルミニウム合金板材の製造方法であり、
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の組成を有するアルミニウム合金を鋳造してから圧延及び焼鈍を行い、更に最終冷間圧延率が10%超となる条件で冷間圧延を行うことを特徴とする耐エロージョン性に優れた熱交換器用の高強度アルミニウム合金板材の製造方法。 - 前記最終冷間圧延後に更に、最終焼鈍を200℃以上500℃以下の温度で行うことを特徴とする請求項7に記載の耐エロージョン性に優れた熱交換器用の高強度アルミニウム合金板材の製造方法。
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-
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