JP2005353623A - 面発光レーザ及び光伝送システム - Google Patents

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Abstract

【課題】 制御性良くフォトニック結晶空孔を形成できる素子構造を有することにより、歩留よく、素子特性のバラツキが小さい、制御された横モードをもつ高出力な面発光レーザを提供する。
【解決手段】 半導体基板上に、下部半導体多層膜反射鏡(DBR)、下部スペーサ層、活性層、上部スペーサ層、第1の上部半導体多層膜反射鏡(DBR)、第2の上部多層膜反射鏡(DBR)が順次に設けられ、前記第1の上部半導体多層膜反射鏡は、複数の低屈折率孔を有する2次元フォトニック結晶構造と、導電性領域と高抵抗領域とからなる電流狭窄層とを備え、第1の上部半導体多層膜反射鏡に上部電極が接続されていることを特徴としている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、面発光レーザ及び光伝送システムに関する。
面発光レーザ(VCSEL)は、半導体基板と垂直方向にレーザ共振器を構成し、一対の電極から電流が注入されると発振光を基板と垂直に出射するレーザであり、一般的な構成は次のようになる。
すなわち、基板側と表面側に、一対の高反射率の反射鏡が設けられ、これらの一対の反射鏡の間に、活性層と活性層を挟む上下2つのスペーサ層とからなる共振器が設けられている。さらに、電流密度を高めるため、活性層近傍に電流を閉じ込める電流狭窄構造が形成されている。
このような構成をとることで、次のような利点をもつ。
すなわち、活性層体積を小さくできることから、低いしきい値電流,低い消費電力で駆動できる。また、共振器のモード体積が小さいので、数十GHzの変調が可能であり、高速伝送に向く。また、出射光の広がり角が小さく、光ファイバへの結合が容易である。また、作製にへき開を必要とせず素子面積も小さいので、並列化及び2次元高密度アレイ化が容易である。
このため、VCSELは、LANなどの光伝送用光源への適用にとどまらず、ボード間,ボード内,LSIのチップ間,チップ内の光伝送用光源、レーザプリンター用光源への適用が期待されている。
上記VCSELの用途への適用性を高めるため、単一モード発振を維持しつつ、より高出力が得られるVCSELが望まれている。
この目的を達成するため、種々の構成が検討されてきているが、最も有望な構成のひとつとして、非特許文献1,非特許文献2には、VCSEL表面にフォトニック結晶ファイバ(PCF)構造の2次元フォトニック結晶構造を形成したフォトニック結晶VCSEL(以下、PC−VCSELという)が提案されている。
このフォトニック結晶VCSELは、フォトニック結晶構造により横モードを制御できるので、容易に単一モードの出力光が得られ、且つ、活性層領域が広いので高い光出力が望める。
これらの2次元フォトニック結晶構造では、上部DBRの表面から上部DBRの低部近傍まで達する複数の空孔が設けられている。
これらの空孔の深さは、2〜6μmであり、ドライエッチングやフォーカスドイオンビームエッチング等により形成される。
一般にこれらのエッチング法で用いられるモニタ法として、プラズマ発光分光法や干渉振動法などがある。しかし、これらのモニタ法を前述の空孔の形成の場合に使用した場合は、空孔の膜方向断面積の合計が試料表面積の一部にしかならないので、有効性が大きく低下する。
このため、多くの場合、時間の管理でエッチング深さを制御することになるが、この場合の制御性は±10パーセント程度であり、空孔の深さを制御性よく形成するのは難しく、その結果、歩留まりが小さくなり、素子特性のバラツキも大きくなる。よって、従来の構成の2次元フォトニック結晶VCSELを安価で量産するのは困難である。
N.Yokouchi, K.D.Choquette et al., Applied Physics Letters,Vol.82,pp1344−1346(2003) D.S.Song,Y.H.Lee et al., Applied Physics Letters,Vol.80,pp3901−3903(2002)
本発明は、制御性良くフォトニック結晶空孔を形成できる素子構造を有することにより、歩留よく、素子特性のバラツキが小さい、制御された横モードをもつ高出力な面発光レーザ及び光伝送システムを提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、半導体基板上に、下部半導体多層膜反射鏡、下部スペーサ層、活性層、上部スペーサ層、第1の上部半導体多層膜反射鏡、第2の上部多層膜反射鏡が順次に設けられ、前記第1の上部半導体多層膜反射鏡は、複数の低屈折率孔を有する2次元フォトニック結晶構造と、導電性領域と高抵抗領域とからなる電流狭窄層とを備え、第1の上部半導体多層膜反射鏡に上部電極が接続されていることを特徴としている。
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の面発光レーザにおいて、前記2次元フォトニック結晶構造を形成する低屈折率孔の内部は、第1の上部半導体多層膜反射鏡よりも低い屈折率の材料で被覆又は充填されていることを特徴としている。
また、請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の面発光レーザにおいて、前記第2の上部多層膜反射鏡の少なくとも一部が誘電体多層膜で形成されていることを特徴としている。
また、請求項4記載の発明は、請求項3記載の面発光レーザにおいて、第2の上部多層膜反射鏡の一部が前記上部電極の少なくとも一部の上に設けられていることを特徴としている。
また、請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の面発光レーザにおいて、前記第1の上部半導体多層膜反射鏡は、複数の高抵抗領域形成用孔を有しており、前記電流狭窄層は、前記高抵抗領域形成用孔の周辺に形成された高抵抗領域と、高抵抗領域に囲まれた少なくとも1つの導電性領域とからなることを特徴としている。
また、請求項6記載の発明は、請求項5記載の面発光レーザにおいて、前記電流狭窄層の導電性領域は、Al(Ga)As層からなり、前記電流狭窄層の高抵抗領域は、Al(Ga)Asが前記高抵抗領域形成用孔を通して供給された酸化種により酸化された層からなることを特徴としている。
また、請求項7記載の発明は、請求項5または請求項6記載の面発光レーザにおいて、前記複数の高抵抗領域形成用孔の少なくとも一部の孔の少なくとも内面が、素子構成膜よりも低い屈折率の材料で被覆又は充填されていることを特徴としている。
また、請求項8記載の発明は、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の面発光レーザにおいて、前記活性層には、GaInNAs系材料が用いられていることを特徴としている。
また、請求項9記載の発明は、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の面発光レーザが発光デバイスとして用いられていることを特徴とする光伝送システムである。
請求項1乃至請求項8記載の発明によれば、半導体基板上に、下部半導体多層膜反射鏡、下部スペーサ層、活性層、上部スペーサ層、第1の上部半導体多層膜反射鏡(第1上部DBR)、第2の上部多層膜反射鏡(第2上部DBR)が順次に設けられ、前記第1の上部半導体多層膜反射鏡(第1上部DBR)は、複数の低屈折率孔を有する2次元フォトニック結晶構造と、導電性領域と高抵抗領域とからなる電流狭窄層とを備え、第1の上部半導体多層膜反射鏡(第1上部DBR)に上部電極が接続されていることを特徴とする面発光レーザであり、上部DBRを下層の第1上部DBRと上層の第2上部DBRとの2つにわけ、下層の第1上部DBRの表面から低屈折率孔を形成できる構成となっているので、低屈折率孔の深さを小さくでき、高精度に再現性良く2次元フォトニック結晶構造を形成することができる。
すなわち、請求項1乃至請求項8記載の発明は、発振光の強度が大きい共振器部に近い部位に制御性良くフォトニック結晶空孔を形成できる素子構造を有することにより、歩留よく、素子特性のバラツキが小さい、制御された横モードをもつ高出力な面発光レーザを提供することができる。
特に、請求項2記載の発明では、請求項1記載の面発光レーザにおいて、前記2次元フォトニック結晶構造を形成する低屈折率孔の内部は、第1の上部半導体多層膜反射鏡よりも低い屈折率の材料で被覆又は充填されているので、安定した特性をもつ、平坦性のよいフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)を提供することができる。
すなわち、2次元フォトニック結晶構造を形成する低屈折率孔の内部が低い屈折率材料で被覆又は充填されているので、第2上部多層膜反射鏡の構成材料の入り込みがなくなり、光学的に均質性のよい低屈折率孔が得られ、また、平坦性のよい第2上部多層膜反射鏡が得られる。よって、安定した特性で、平坦性のよいフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)が得られる。
また、請求項3記載の発明では、請求項1または請求項2記載の面発光レーザにおいて、前記第2の上部多層膜反射鏡の少なくとも一部が誘電体多層膜で形成されているので(第2上部DBRに誘電体DBRを用いているので)、より簡便に作製できる構造を有するフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)を提供することができる。
すなわち、第2上部DBRとして誘電体DBRを用いているので、第2上部DBRとして半導体DBRを用いる場合と比較して、簡便な方法で作製でき、屈折率差を大きく取れることから少ない層数で高い反射率が得られる。また、誘電体DBRは絶縁性が高いので、半導体DBRを第2上部DBRとして用いる場合と異なり、この誘電体DBRを上部電極の上に重なった構成にしても問題がない。よって、より簡便に作製できるフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)が得られる。
また、請求項4記載の発明では、請求項3記載の面発光レーザにおいて、第2の上部多層膜反射鏡(第2上部DBR)の一部が前記上部電極の少なくとも一部の上に設けられており、第2上部DBR(第2誘電体DBR)が上部電極の上に重なる構成となっているので、微細な形状に第2誘電体DBRと上部電極を加工する必要がなくなり、さらにより簡便に作製でき、さらに平坦性が高いフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)を提供することができる。
また、請求項5記載の発明では、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の面発光レーザにおいて、前記第1の上部半導体多層膜反射鏡は、複数の高抵抗領域形成用孔を有し、前記電流狭窄層は、前記高抵抗領域形成用孔の周辺に形成された高抵抗領域と、高抵抗領域に囲まれた少なくとも1つの導電性領域とからなり、高抵抗領域形成用孔を利用して電流狭窄構造を形成する構成であるので、放熱性に劣るメサ構造をとる必要がなくなり、素子の温度が上昇しにくくなる。よって、より高出力で安定したレーザ特性をもつフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)を提供できる。また、凹凸の大きいメサ構造をとる必要がないため、実装するための平坦化工程が不用になり、また、機械的破損の耐性が高いため、低コストで機械的強度の高いフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)を提供できる。
また、請求項6記載の発明では、請求項5記載の面発光レーザにおいて、前記電流狭窄層の導電性領域は、Al(Ga)As層からなり、前記電流狭窄層の高抵抗領域は、Al(Ga)Asが前記高抵抗領域形成用孔を通して供給された酸化種により酸化された層からなっており、反応条件、特に熱処理温度を変えることにより適度に酸化速度を調節できるAl(Ga)As層を高抵抗化可能層として用いているので、より容易に、請求項5の作用効果が得られる。
また、請求項7記載の発明では、請求項5または請求項6記載の面発光レーザにおいて、前記複数の高抵抗領域形成用孔の少なくとも一部の孔の少なくとも内面が、素子構成膜よりも低い屈折率の材料で被覆又は充填されているので、2次元フォトニック結晶の低屈折率孔の機能をもつことになり、光のモードの制御がより良好になり、閉じ込めがより良好になって、より出力光のモードが制限された、より低いしきい値電流をもつフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)を提供することができる。また、高抵抗部形成用孔が、素子構成膜よりも低い屈折率材料で被覆又は充填されていることにより、高抵抗部形成用孔の内面の欠陥が低減するので、キャリアの非発光再結合が低減し、これによって、低いしきい値電流,高い発光効率のフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)を提供することができる。
また、請求項8記載の発明では、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の面発光レーザにおいて、前記活性層には、GaInNAs系材料が用いられているので、歩留まりよく、特性のバラツキが小さく、低コストな、機械的強度が高い、実装しやすい、高いレーザ特性のGaInNAs系のフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)を得ることができる。これにより、単一モードでより高出力が得られ、より製造コストが小さい、光伝送への適用性が高いフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)を提供することができる。
また、請求項9記載の発明によれば、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の面発光レーザが発光デバイスとして用いられていることを特徴とする光伝送システムであるので、より高性能なデータ伝送システムをより低コストで得ることができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
(第1の形態)
本発明の第1の形態は、半導体基板上に、下部半導体多層膜反射鏡、下部スペーサ層、活性層、上部スペーサ層、第1の上部半導体多層膜反射鏡、第2の上部多層膜反射鏡が順次に設けられ、前記第1の上部半導体多層膜反射鏡は、複数の低屈折率孔を有する2次元フォトニック結晶構造と、導電性領域と高抵抗領域とからなる電流狭窄層とを備え、第1の上部半導体多層膜反射鏡に上部電極が接続されていることを特徴としている。
本発明の第1の形態では、下部半導体多層膜反射鏡、下部スペーサ層、活性層、上部スペーサ層、第1の上部半導体多層膜反射鏡(第1上部DBR)、第2の上部多層膜反射鏡(第2上部DBR)が順次に設けられ、前記第1の上部半導体多層膜反射鏡(第1上部DBR)は、複数の低屈折率孔を有する2次元フォトニック結晶構造と、導電性領域と高抵抗領域とからなる電流狭窄層とを備え、第1の上部半導体多層膜反射鏡(第1上部DBR)に上部電極が接続されていることを特徴とする面発光レーザであり、上部DBRを下層の第1上部DBRと上層の第2上部DBRとの2つにわけ、下層の第1上部DBRの表面から低屈折率孔を形成できる構成となっているので、低屈折率孔の深さを小さくでき、高精度に再現性良く2次元フォトニック結晶構造を形成することができる。
すなわち、第1の形態では、発振光の強度が大きい共振器部に近い部位に制御性良くフォトニック結晶空孔を形成できる素子構造を有することにより、歩留よく、素子特性のバラツキが小さい、制御された横モードをもつ高出力な面発光レーザを提供することができる。
(第2の形態)
また、本発明の第2の形態は、第1の形態の面発光レーザにおいて、前記2次元フォトニック結晶構造を形成する低屈折率孔の内部は、第1の上部半導体多層膜反射鏡よりも低い屈折率の材料で被覆又は充填されていることを特徴としている。
このように、第2の形態では、前記2次元フォトニック結晶構造を形成する低屈折率孔の内部は、第1の上部半導体多層膜反射鏡よりも低い屈折率の材料で被覆又は充填されているので、安定した特性をもつ、平坦性のよいフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)を提供することができる。
すなわち、2次元フォトニック結晶構造を形成する低屈折率孔の内部が低い屈折率材料で被覆又は充填されているので、第2上部多層膜反射鏡の構成材料の入り込みがなくなり、光学的に均質性のよい低屈折率孔が得られ、また、平坦性のよい第2上部多層膜反射鏡が得られる。よって、安定した特性で、平坦性のよいフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)が得られる。
(第3の形態)
また、本発明の第3の形態は、第1または第2の形態の面発光レーザにおいて、前記第2の上部多層膜反射鏡の少なくとも一部が誘電体多層膜で形成されていることを特徴としている。
このように、第3の形態では、前記第2の上部多層膜反射鏡の少なくとも一部が誘電体多層膜で形成されているので(第2上部DBRに誘電体DBRを用いているので)、より簡便に作製できる構造を有するフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)を提供することができる。
すなわち、第2上部DBRとして誘電体DBRを用いているので、第2上部DBRとして半導体DBRを用いる場合と比較して、簡便な方法で作製でき、屈折率差を大きく取れることから少ない層数で高い反射率が得られる。また、誘電体DBRは絶縁性が高いので、半導体DBRを第2上部DBRとして用いる場合と異なり、この誘電体DBRを上部電極の上に重なった構成にしても問題がない。よって、より簡便に作製できるフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)が得られる。
(第4の形態)
また、本発明の第4の形態は、第3の形態の面発光レーザにおいて、第2の上部多層膜反射鏡の一部が前記上部電極の少なくとも一部の上に設けられていることを特徴としている。
このように、第4の形態では、第2の上部多層膜反射鏡(第2上部DBR)の一部が前記上部電極の少なくとも一部の上に設けられており、第2上部DBR(第2誘電体DBR)が上部電極の上に重なる構成となっているので、微細な形状に第2誘電体DBRと上部電極を加工する必要がなくなり、さらにより簡便に作製でき、さらに平坦性が高いフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)を提供することができる。
図1,図2は第1乃至第4の形態の面発光レーザの構成例を示す図である。なお、図2は2次元フォトニック結晶での断面図である。図1,図2の面発光レーザは、次のような作製工程例で形成される。
すなわち、まず、GaAs,InP,GaP,GaNAs,Si,Geなどの半導体基板上に、直接に又は中間層を介して、半導体積層膜として、下部半導体多層膜反射鏡、下部スペーサ層、活性層、上部スペーサ層、第1の上部半導体多層膜反射鏡を、エピタキシャル成長によって形成する。
ここで、下部半導体多層膜反射鏡(下部半導体DBR)は、AlAs/GaAs,AlGaAs/GaAs,GaInP/GaAs,AlGaN/GaN,GaInAsP/InP,AlGaInAs/InPなどの多層膜で形成される。そして、半導体基板及び下部半導体多層膜反射鏡で駆動電流の経路となる部位には、不純物をドープし導電性をもたせる。
また、活性層は、発振波長により選択され、基板との組み合わせとしては、次の例が挙げられる。
(活性層/基板) [発振波長帯] : GaInAsP/InP[1.3μm帯,1.55μm帯]、GaInNAs/GaAs[1.3μm帯,1.55μm帯]、GaInAs/GaAs[0.98μm帯]、GaAlAs/GaAs[0.85μm帯]、GaInAsP[0.78μm帯]、AlGaInP/GaAs[0.65μm帯]
また、上部スペーサ層,下部スペーサ層は、共振器長を調節し、また、キャリアを活性層まで輸送する機能を有している。また、上部スペーサ層,下部スペーサ層は、発光する光に透明である必要がある。また、各スペーサ層は、複数の層からなっていてもよい。上部スペーサ層,下部スペーサ層は、活性層材料に応じて、GaAs,InP,GaInAsP,GaAlAs,AlGaInP,GaInPなどから選択される。
また、第1の上部半導体多層膜反射鏡(第1上部半導体DBR)は、AlAs/GaAs,AlGaAs/GaAs,GaInP/GaAs,AlGaN/GaN,GaInAsP/InP,AlGaInAs/InPなどの多層膜で形成されている。また、第1の上部半導体多層膜反射鏡(第1上部半導体DBR)は、下部半導体DBRとは反対の導電性をもつように不純物がドープされる。前述のエッチング深さの制御性を考慮すれば、第1上部半導体DBRの厚さは20ペア以下であることが好ましく、後述のようにフォトニック結晶構造を形成しモード制御の効果を出現させるには、2ペア以上であることが好ましい。
上記半導体積層膜の成長法としては、MOCVD法(metalorganic chemical vapor deposition)、あるいは、MOMBE法(metalorganic molecular beam epitaxy)、あるいは、CBE法(chemical beam epitaxy)などを用いることができる。
そして、第1上部半導体DBR中に、膜面方向に低損失周期構造をもつ2次元フォトニック結晶構造を形成する。
2次元フォトニック結晶構造としては、光の伝播軸部をコア部とし、その周りに第1上部半導体DBRよりも低い屈折率をもつ複数の低屈折率孔からなるクラッド部をなすフォトニック結晶ファイバ(PCF)構造が望ましい。
これらの低屈折率孔の底面は第1上部半導体DBR中にあることが望ましい。これは、クラッド層や活性層のある共振器部までこれらの低屈折率孔が形成されると、素子を駆動した場合、これらの孔の表面で多くのキャリアが非発光再結合し素子の特性を低下させるためである。
また、低屈折率孔の内部が、第1の上部半導体多層膜反射鏡よりも低い屈折率材料で被覆又は充填されていることが、第1の上部半導体多層膜反射鏡の上部に形成される第2多層膜反射鏡の形成時に構成材料の不規則な入り込みがなくなり、また、第2多層膜反射鏡の平坦性が確保されるので、望ましい。低屈折率孔の内部の被覆又は充填物は、ポリイミドなどの有機高分子、SiO,SiON,Alなどの無機物などからなる。
低屈折率孔の形成法としては、ドライエッチング法又はウェットエッチング法をとり得るが、サイドエッチの速度に対して垂直方向のエッチング速度が大きいので、ドライエッチングが好ましい。さらには、ドライエッチングの方式としては、よりエッチング異方性を大きくとれるICP(Inductively Coupled Plasma)エッチング法やECR(Electron Cycrotron Resonance)エッチング法などの高密度プラズマ源を用いる方式が好ましい。この孔の断面形状は、閉じた形状であれば良く、円形,矩形,楕円形などがとれるが、形については限定されない。また、この孔の数,配置についても限定されない。
この2次元フォトニック結晶構造を形成する前か後に、発光部近傍に高抵抗領域を形成して電流狭窄構造を作製する。
電流狭窄構造を形成する方法としては、従来構造の面発光レーザ(VCSEL)の作製で用いられる方法と同じ方法が使用できる。すなわち、代表的な方法として、プロトンイオン注入法や選択酸化法を使用できる。
プロトンイオン注入法は、素子構成膜の表面よりプロトンをイオン注入し高抵抗領域を形成する方法であり、例えば、文献[B.Tell et al.,Appl. Phys. Lett., 57(1990)1855]に示されている。
また、選択酸化法は、高抵抗化可能層[Al(Ga)As膜]を含む素子構成膜を表面からエッチングにより高抵抗化可能層の側壁が露出するようにメサ状に加工した後、Al(Ga)As膜のメサ側壁から水蒸気又はOガスを導入し、400℃程度の熱処理でAl(Ga)As膜を酸化して高抵抗領域を形成する方法であり、例えば、文献[K.D.Choquette et al.IEEE Photonics Techology Letters. (1995)1237]に示されている。
このように電流狭窄構造を形成する方法としては、プロトンイオン注入法や選択酸化法を使用できるが、以下では、酸化した領域と酸化しない領域との屈折率の差が大きく光を閉じ込める作用も大きい点と、作製が容易な点とから、選択酸化法で狭窄部を形成する場合で説明する。
選択酸化法で狭窄部を形成する場合、高抵抗化可能層の材料をAlGa1−xAs(0<x≦1)[以下、Al(Ga)Asとする]とし、xの値を0.95以上とすることが、酸化速度が制御可能なほどの大きさになるので望ましい。
高抵抗化可能層は、スペーサ層中に設けることもできるが、第1上部半導体DBR中に設けるのが望ましい。
なお、フォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)でない従来構成の面発光レーザの場合は、酸化されない領域、つまり、Al(Ga)Asのままの領域からなる電流狭窄部の面積は、単一モード発振を得るためには、5×5μm以下である必要があるが、PC−VCSELの場合はフォトニック結晶部を適正化すれば15×15μm以上でも単一モード発振が得られる。
次に、第1の上部半導体多層膜反射鏡(第1上部半導体DBR)上に、Auなどを主体にした金属からなる上部電極を形成する。上部電極は、光出力が素子表面方向の場合、光出力部には電極が形成されない形状に、リフトオフ法,あるいは金属マスクを用いた蒸着法等により形成される。
次に、第1の上部半導体多層膜反射鏡(第1上部半導体DBR),上部電極上に、第2の上部多層膜反射鏡(第2上部DBR)を形成する。第2上部DBRとしては、半導体DBRもとり得るが、第2上部DBRが形成される試料表面には、多数の低屈折率孔と電極が存在するので、半導体のエピタキシャル成長は困難である。このことから、第2上部DBRとしては、作製が簡便な上に屈折率差を大きくとれる(すなわち、少ない層数で高い反射率が得られる)誘電体多層膜反射鏡(誘電体DBR)が望ましい。
誘電体DBRの例としては、ZrO/SiO,MgO/SiO,MgO/Si,Al/MgFなどの多層膜が挙げられる。誘電体DBR層は、絶縁体なので、上部電極のパッド部を除いた上部電極全面のみならずアレイ全面に形成できる。誘電体膜と電極膜の成長法としては、電子ビーム蒸着法,スパッタリング法,抵抗加熱法、CVD法(chemical vapor deposition)などを用いることができる。
次に、下部スペーサ層と半導体基板との間のいずれかの層の少なくとも一部の領域に接続させて下部電極を形成する(図1の例では、半導体基板の裏面に下部電極を形成している)。
なお、このようなフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)を例えばアレイ化する場合(例えば、面発光レーザ素子を例えば2次元に配列して面発光レーザアレイとする場合)、面発光レーザ素子の分離領域は、狭いトレンチ構造を設けたり、プロトンや酸素イオンのイオン注入等で形成される。
図1の面発光レーザでは、上部電極,下部電極にキャリアを注入してレーザ発振させることができる。発振光のモードは、2次元フォトニック結晶部で制限され、特定のモードをもつ光だけが高い出力で得られる。
(第5の形態)
本発明の第5の形態は、第1乃至第4のいずれかの形態の面発光レーザにおいて、前記第1の上部半導体多層膜反射鏡は、複数の高抵抗領域形成用孔を有し、前記電流狭窄層は、前記高抵抗領域形成用孔の周辺に形成された高抵抗領域と、高抵抗領域に囲まれた少なくとも1つの導電性領域とからなることを特徴としている。
このように、第5の形態では、前記第1の上部半導体多層膜反射鏡は、複数の高抵抗領域形成用孔を有し、前記電流狭窄層は、前記高抵抗領域形成用孔の周辺に形成された高抵抗領域と、高抵抗領域に囲まれた少なくとも1つの導電性領域とからなり、高抵抗領域形成用孔を利用して電流狭窄構造を形成する構成であるので、放熱性に劣るメサ構造をとる必要がなくなり、素子の温度が上昇しにくくなる。よって、より高出力で安定したレーザ特性をもつフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)を提供できる。また、凹凸の大きいメサ構造をとる必要がないため、実装するための平坦化工程が不用になり、また、機械的破損の耐性が高いため、低コストで機械的強度の高いフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)を提供できる。
(第6の形態)
本発明の第6の形態は、第5の形態の面発光レーザにおいて、前記電流狭窄層の導電性領域は、Al(Ga)As層からなり、前記電流狭窄層の高抵抗領域は、Al(Ga)Asが前記高抵抗領域形成用孔を通して供給された酸化種により酸化された層からなることを特徴としている。
このように、第6の形態では、前記電流狭窄層の導電性領域は、Al(Ga)As層からなり、前記電流狭窄層の高抵抗領域は、Al(Ga)Asが前記高抵抗領域形成用孔を通して供給された酸化種により酸化された層からなっており、反応条件、特に熱処理温度を変えることにより適度に酸化速度を調節できるAl(Ga)As層を高抵抗化可能層として用いているので、より容易に、第5の形態の作用効果が得られる。
(第7の形態)
本発明の第7の形態は、第5または第6の形態の面発光レーザにおいて、前記複数の高抵抗領域形成用孔の少なくとも一部の孔の少なくとも内面が、素子構成膜よりも低い屈折率の材料で被覆又は充填されていることを特徴としている。
このように、第7の形態では、前記複数の高抵抗領域形成用孔の少なくとも一部の孔の少なくとも内面が、素子構成膜よりも低い屈折率の材料で被覆又は充填されているので、2次元フォトニック結晶の低屈折率孔の機能をもつことになり、光のモードの制御がより良好になり、閉じ込めがより良好になって、より出力光のモードが制限された、より低いしきい値電流をもつフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)を提供することができる。また、高抵抗部形成用孔が、素子構成膜よりも低い屈折率材料で被覆又は充填されていることにより、高抵抗部形成用孔の内面の欠陥が低減するので、キャリアの非発光再結合が低減し、これによって、低いしきい値電流,高い発光効率のフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)を提供することができる。
図3は第5乃至第7の形態の面発光レーザの構成例を示す図である。図3の面発光レーザは、次のような作製工程例で形成される。
すなわち、図3の構成例も、図1,図2の構成例と同様にして、半導体積層膜を形成する。なお、この半導体積層膜の第1上部半導体DBR中に高抵抗化可能層Al(Ga)As膜を含ませる。
次に、第1上部半導体DBR表面からエッチングし、図1,図2の構成例と同様な低屈折率孔と、高抵抗領域形成用孔とを形成する。
エッチング法により、低屈折率孔と高抵抗領域形成用孔とは、同時に作製される場合もあるし、一方の領域をレジストやSiO膜等でマスクして別々に作製される場合もある。
高抵抗領域形成用孔は、酸化種をこの孔を通して供給してAl(Ga)As膜を酸化させるので、Al(Ga)As膜を貫通している必要がある。また、高抵抗領域形成用孔の底部は、キャリアが非発光再結合を低減させるため第1上部半導体DBR中にあることが望ましい。この高抵抗領域形成用孔の断面形状は、閉じた形状であればよく、円形,矩形,楕円形などがとれるが、形については限定されない。また、この孔の数,配置についても限定されない。
次に、高抵抗領域形成用孔から水蒸気又はOガスを導入し、400℃程度の熱処理でAl(Ga)As膜を酸化して、各高抵抗領域形成用孔から広がる高抵抗領域を繋げ、広い領域の高抵抗領域を形成し、電流狭窄構造を作製する。
次に、高抵抗領域形成用孔と低屈折率孔の内部を、第1の上部半導体多層膜反射鏡よりも低い屈折率材料で被覆又は充填することが、第1の上部半導体多層膜反射鏡の上部に形成される第2多層膜反射鏡の形成時に構成材料の不規則な入り込みがなくなり、また、第2多層膜反射鏡の平坦性が確保されるので、望ましい。高抵抗領域形成用孔と低屈折率孔の内部の被覆又は充填物は、ポリイミドなどの有機高分子、SiO,SiON,Alなどの無機物などからなる。
なお、高抵抗領域形成用孔は低屈折率孔の周辺に設けられる場合が多いが、高抵抗領域形成用孔の一部又はすべてが低屈折率孔の役割を果たす場合もある。
次に、図1,図2の構成例と同様に、上部電極,第2上部DBR,下部電極,素子分離領域を形成し、図3のフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)を作製することができる。なお、第2上部DBRは、平坦化に適する誘電体多層膜反射鏡(誘電体DBR)が望ましい。
図3の面発光レーザでは、上部電極,下部電極にキャリアを注入してレーザ発振させることができる。発振光のモードは、2次元フォトニック結晶部で制限され、特定のモードをもつ光だけが高い出力で得られる。
(第8の形態)
本発明の第8の形態は、第1乃至第7のいずれかの形態の面発光レーザにおいて、前記活性層には、GaInNAs系材料が用いられていることを特徴としている。
GaInNAs系材料は、NとAsを含むIII−V族混晶半導体で構成されており、具体的には、GaNAs、GaInNAs、GaInAsSb、GaInNP、GaNP、GaNAsSb、GaInNAsSb、InNAs、InNPAsなどで構成される。
発振波長が1.1〜1.6μm程度の長波長帯面発光レーザは、発振光が石英系ファイバ中を損失少なく伝播し、Si基板中を吸収少なく透過し、さらに、前述の面発光レーザの特長を備えているので、チップ間,チップ内,ボード間,ボード内,LAN内の光伝送用光源としての適用性が特に高い。
従来、この長波長帯VCSELは、端面発光型レーザとして実績のあるInP基板上に形成するGaInAsP活性層で試みられていた。しかし、このInP基板上のGaInAsP系VCSELは、端面発光型レーザの場合と同様に、取り得る活性層周辺の材料構成では温度特性が低い。また、InP基板上の半導体DBRは、屈折率差の小さいGaInAsP/InPを選択せざるを得ないので、反射率を高めるのは困難である。このため、冷却装置が必要な上、実用化には他にも多くの問題がある。
一方、GaAs基板上に作製されるGaInNAs系長波長帯VCSELは、温度特性が高く、屈折率差を大きくとれるため、反射率を大きくできるAlGaAs/GaAsやAlAs/GaAsのDBRが使える。発振波長が長いので、特に熱伝導率の高い材料同士の組み合わせであるAlAs/GaAs DBRが使えるのは有利である。この点に関しては、GaInAs,GaAsSbでも同様の効果がある。さらに、室温環境下で発振する上、閾値電流が小さい。
これらの利点のため、近年、GaInNAs系長波長帯VCSELは盛んに研究開発されてきている。
第8の形態では、活性層には、GaInNAs系材料が用いられているので、歩留まりよく、特性のバラツキが小さく、低コストな、機械的強度が高い、実装しやすい、高いレーザ特性のGaInNAs系のフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)を得ることができる。これにより、単一モードでより高出力が得られ、より製造コストが小さい、光伝送への適用性が高いフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)を提供することができる。
図4は第8の形態の面発光レーザの構成例を示す図である。図4の面発光レーザは、活性層に前述のGaInNAs系材料を含む活性層を用い、光を基板側に出力させる構成をとる以外は、図3の構成例と同様にして形成することができる。
図4の面発光レーザでは、上部電極,下部電極にキャリアを注入してレーザ発振させることができる。発振光のモードは、2次元フォトニック結晶部で制限され、特定のモードをもつ長波長帯のレーザ光が高い出力で得られる。
(第9の形態)
本発明の第9の形態は、第1乃至第8のいずれかの形態の面発光レーザが発光デバイスとして用いられていることを特徴とする光伝送システムである。
第9の形態では、第1乃至第8のいずれかの形態の面発光レーザが発光デバイスとして用いられていることを特徴とする光伝送システムであるので、より高性能なデータ伝送システムをより低コストで得ることができる。
図5,図6は第9の形態の光伝送システムの構成例を示す図である。
図5の例は、ボード間の並列光伝送システムとして構成され、本発明のVCSEL(VCSELアレイ)からの信号を複数のファイバを用いて同時に伝送するように構成されている。
また、図6の例は、本発明の第8の形態のGaInNAs系VCSEL(VCSELアレイ)を備えたボード間のチップ間の並列空間光伝送システムとして構成され、この例の場合、VCSELからの信号をSi基板を透過して同時に光伝送するように構成されている。
図7,図8は実施例1の面発光レーザを示す図である。なお、図8は2次元フォトニック結晶での断面図である。
実施例1の面発光レーザは、次のように作製することができる。
すなわち、先ず、MOCVD法で、n−GaAs単結晶(100)基板上に、n−AlGaAs/n−GaAsの35.5ペアからなる下部半導体DBR、下部GaAsスペーサ層、GaInAs/GaAs TQW活性層、上部GaAsスペーサ層、p−AlGaAs/p−GaAsの10ペアからなる第1上部半導体DBRの積層膜を形成する。
第1上部半導体DBRの下から2ペア目の低屈折率層はp−AlAs高抵抗可能層とする。
次に、この積層膜表面にレジストを塗布する。この塗布膜から、辺の長さが5μmの正三角形の3つの頂点で直径が3.5μmの円形にレジストを除去した単位形を周期的に繰り返した基本パターンにおいて、発光部を設ける位置に対応する場所では1個分の円形のレジスト除去がされていないレジストパターンを形成する(図8を参照)。
次に、Clガスを導入するICPエッチング法で低屈折率孔を形成する。孔の底面(すなわち、孔の深さ)は、第1上部DBRの下層から3ペア目に位置するようにする。この工程で、欠陥をもつ2次元フォトニック結晶構造が形成される。三角格子で低屈折率孔がない欠陥の周辺が導波路のコア部となり、周辺の低屈折率孔が多数ある部分がクラッドとなる。
次に、レジストを除去した後、プラズマCVD法によりこの低屈折率孔にSiOを充填した後、直径50μmの円形メサを形成する。メサの底面は、下部半導体DBR内に達するようにする。
メサ側壁に露出したp−AlAs高抵抗可能層の端面から水蒸気を導入し、400℃で熱処理してAl高抵抗層を形成する。このとき、メサ中央に400μm断面のAlAs膜が酸化されないで残るように酸化時間を制御して電流狭窄構造を形成する。
次に、ポリイミド保護膜をメサ周辺に形成する。さらに、メサ上面にp−上部電極を接続し設ける。このとき、メサの中央の直径20μm領域の電極はリフトオフ法により除去する。
次に、EB蒸着法により6ペアのZrO/SiO第2誘電体DBRを形成する。次に、リフトオフ法によりp−上部電極パターンの配線接続用パッドを露出させる。
最後に、基板裏面にn−下部電極を形成し、フォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)を作製することができる。
この実施例1のフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)では、p側電極,n側電極から、それぞれ、正キャリア,負キャリアを注入すると、単一モードで高いエネルギーのレーザ光が素子表面から垂直に出力される。
この実施例1のフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)の構成では、上部DBRを2つに分けているので、高精度かつ再現性よく2次元フォトニック結晶構造を形成することが可能になり、フォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)が歩留まりよく得られる。
また、2次元フォトニック結晶構造を形成する低屈折率孔の内部が、低い屈折率のSiOで充填されているので、光学的に均質性のよい低屈折率孔が得られ、また、平坦性のよい第2上部多層膜反射鏡が得られる。よって、安定した特性のフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)が得られる。
また、第2上部DBRとして誘電体DBRを用いているので、少ない層数で高い反射率が得られる。また、誘電体DBRは絶縁性が高いので、この誘電体DBRを上部電極の上に重なった構成にしても問題がなく、より簡便な素子構成になる。よって、より簡便にフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)が得られる。
図9,図10は実施例2の面発光レーザを示す図である。なお、図10は2次元フォトニック結晶での断面図である。
実施例2の面発光レーザは、次のように作製することができる。
すなわち、先ず、MBE法で、n−GaAs単結晶(100)基板上に、n−AlGaAs/n−GaAsの35.5ペアからなる下部半導体DBR、下部GaAsスペーサ層、GaInAs/GaAs TQW活性層、上部GaAsスペーサ層、p−AlGaAs/p−GaAsの12ペアからなる第1上部半導体DBRの積層膜を形成する。
第1上部半導体DBRの下から3ペア目の低屈折率層はp−AlAs高抵抗可能層とする。
次に、この積層膜表面に、欠陥部を中心として3周期の範囲で孔を持つ以外は実施例1と同じ形状のレジストパターンを形成する。次に、Clガスを導入するECRエッチング法で低屈折率孔を形成する。低屈折率孔の底面(すなわち、孔の深さ)は、第1上部DBRの下層から4ペア目に位置するようにする。
次に、レジストを除去した後、おおよそ直径35μmの範囲に形成された低屈折率孔の外側に、辺の長さが5μmの正三角形の3つの頂点で直径が2.5μmの円形にレジストを除去した単位形を周期的に繰り返したパターンを70×70μmの範囲で形成する(図10を参照)。
次に、Clガスを導入するECRエッチング法で高抵抗領域形成用孔を形成する。高抵抗領域形成用孔の底面は、第1上部DBRの下層から2ペア目に位置するようにする。
レジスト除去後、この高抵抗領域形成用孔の内壁に露出したp−AlAs高抵抗可能層の端面から水蒸気を導入し、400℃で熱処理し、このp−AlAs高抵抗可能層を面内方向に酸化してAl高抵抗層を形成する。この際、近接する高抵抗領域形成用孔から成長した酸化物高抵抗層がつながり高抵抗領域を形成する。このとき、共振器を設ける位置に対応する位置に400μm断面のAlAs層が酸化されないで残るように酸化時間を制御して電流狭窄構造を形成する。
次に、プラズマCVD法で高抵抗領域形成用孔の内面にSiOを充填する。
次いで、第1上部DBR表面の一部の領域のSiO膜を除去した後、p−上部電極パターンを形成する。すなわち、発光部上面にp−上部電極を接続し設ける。このとき、発光部中央の直径25μmの領域の電極はリフトオフ法により除去する。
次に、EB蒸着法により6ペアのMgO/SiO第2誘電体DBRを形成する。次に、リフトオフ法によりp−上部電極パターンの配線接続用パッドを露出させる。
最後に、基板裏面にn−下部電極を形成し、フォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)を作製することができる。
この実施例2のフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)では、p側電極,n側電極から、それぞれ、正キャリア,負キャリアを注入すると、単一モードで高いエネルギーのレーザ光が素子表面から垂直に出力される。
この実施例2のフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)の構成では、実施例1の作用効果に加えて、高抵抗領域形成用孔を利用しているので、メサ構造をとる必要がなくなる。このため、素子の温度が上昇しにくくなり、より高出力で安定したレーザ特性をもつフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)が得られる。
また、実装するための平坦化工程が不用な、また、機械的破損の耐性が高いフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)が得られる。
また、高抵抗部形成用孔が低い屈折率材料で被覆又は充填されているので、次の効果が得られる。すなわち、2次元フォトニック結晶の低屈折率孔の機能をもつことになり、光のモードの制御がより良好になり、閉じ込めがより良好になるため、より出力光のモードが制限された、より低いしきい値電流をもつフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)が得られる。また、キャリアの非発光再結合が低減し、これによって、低いしきい値電流,高い発光効率のフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)が得られる。
図11は実施例3の面発光レーザを示す図である。
実施例3の面発光レーザは、次のように作製することができる。
すなわち、先ず、実施例2と同様の積層膜を形成する。
次に、この積層膜表面に、実施例2での低屈折率孔を作製するパターンと高抵抗領域形成用孔を作製するパターンとを重ねたレジストパターンを形成する。次に、Clガスを導入するECRエッチング法で低屈折率孔と高抵抗領域形成用孔とを形成する。両方の孔の底面(すなわち、深さ)は、第1上部DBRの下層から2ペア目に位置するようにする。
レジスト除去後、プラズマCVD法で低屈折率孔にSiOを充填する。
次に、高抵抗領域形成用孔の内壁に露出したp−AlAs高抵抗可能層の端面から水蒸気を導入し、400℃で熱処理し、このp−AlAs高抵抗可能層を面内方向に酸化しAl高抵抗層を形成する。近接する孔から成長した酸化物高抵抗層がつながり高抵抗領域が形成される。このとき、発光部に対応する位置に400μm断面のAlAs層が酸化されないで残るように酸化時間を制御して電流狭窄構造を形成する。
次に、プラズマCVD法で高抵抗領域形成用孔の内面にSiOを充填する。
後の工程を実施例2と同様にして実施し、フォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)を作製することができる。
この実施例3のフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)では、p側電極,n側電極から、それぞれ、正キャリア,負キャリアを注入すると、単一モードで高いエネルギーのレーザ光が素子表面から垂直に出力される。
この実施例3のフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)の構成では、実施例1,実施例2の作用効果に加えて、低屈折率孔と高抵抗領域形成用孔を同時に形成しているので、より簡便にフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)が得られる。
図12,図13は実施例4の面発光レーザを示す図である。なお、図13は2次元フォトニック結晶での断面図である。
実施例4の面発光レーザは、次のように作製することができる。
すなわち、先ず、MOCVD法で、n−GaAs単結晶(100)基板上に、n−AlGaAs/n−GaAsの25.5ペアからなる下部半導体DBR、下部GaAsスペーサ層、GaInNAs/GaAs TQW活性層、上部GaAsスペーサ層、p−AlGaAs/p−GaAsの12ペアからなる第1上部半導体DBRの積層膜を形成する。
第1上部半導体DBRの下から3ペア目の低屈折率層はp−AlAs高抵抗可能層とする。
次に、この積層膜表面に、辺の長さが5μmの正方形の4つの頂点で直径が3.5μmの円形にレジストを除去した単位形を周期的に繰り返した基本パターンにおいて、発光部を設ける位置に対応する場所では1個分の円形のレジスト除去がされていない欠陥をもつレジストパターンを形成する(図13を参照)。このレジストパターンは、欠陥部を中心として面内方向におおよそ3周期の範囲で孔を持つ。
次に、Clガスを導入するECRエッチング法で低屈折率孔を形成する。孔の底面(すなわち、孔の深さ)は、第1上部DBRの下層から4ペア目に位置するようにする。
次に、レジストを除去した後、前記3周期の範囲に形成された低屈折率孔の外側に、辺の長さが5μmの正方形の4つの頂点で直径が2.5μmの円形にレジストを除去した単位形を周期的に繰り返したパターンを70×70μmの範囲で形成する(図13を参照)。
次に、Clガスを導入するECRエッチング法で高抵抗領域形成用孔を形成する。この際、孔の底面が第1上部DBRの下層から2ペア目に位置するようにする。
レジスト除去後、この高抵抗領域形成用孔の内壁に露出したp−AlAs高抵抗可能層の端面から水蒸気を導入し、400℃で熱処理し、このp−AlAs高抵抗可能層を面内方向に酸化しAl高抵抗層を形成する。近接する孔から成長した酸化物高抵抗層がつながり高抵抗領域を形成する。このとき、共振器を設ける位置に対応する位置に約400μm断面のAlAs層が酸化されないで残るように酸化時間を制御して電流狭窄構造を形成する。
次に、プラズマCVD法で高抵抗領域形成用孔の内面にSiOを充填する。
次に、第1上部DBR表面の一部の領域のSiO膜を除去した後、p−上部電極パターンを形成する。すなわち、発光部上面にp−上部電極を接続し設ける。このとき、発光部中央の直径25μmの領域の電極はリフトオフ法により除去する。
次に、EB蒸着法により10ペアのMgO/SiO第2誘電体DBRを形成する。次に、リフトオフ法によりp−上部電極パターンの配線接続用パッドを露出させる。
最後に、基板裏面にn−下部電極を形成する。このとき、金属マスクを用いた蒸着法により、光出力部ではn−下部電極が開口するように形成する。
以上の工程で、長波長帯のフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)を作製することができる。
この実施例4のフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)では、p側電極,n側電極から、それぞれ、正キャリア,負キャリアを注入すると、単一モードで高いエネルギーのレーザ光が素子裏面から垂直に出力される。
この実施例4のフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)の構成では、実施例2の作用効果に加えて、単一モードでより高出力が得られ、より製造コストが小さく、光伝送に適用性の高い長波長帯のフォトニック結晶面発光レーザ(PC−VCSEL)を得ることができる。
第1乃至第4の形態の面発光レーザの構成例を示す図である。 第1乃至第4の形態の面発光レーザの構成例を示す図である。 第5乃至第7の形態の面発光レーザの構成例を示す図である。 第8の形態の面発光レーザの構成例を示す図である。 第9の形態の光伝送システムの構成例を示す図である。 第9の形態の光伝送システムの構成例を示す図である。 実施例1の面発光レーザを示す図である。 実施例1の面発光レーザを示す図である。 実施例2の面発光レーザを示す図である。 実施例2の面発光レーザを示す図である。 実施例3の面発光レーザを示す図である。 実施例4の面発光レーザを示す図である。 実施例4の面発光レーザを示す図である。

Claims (9)

  1. 半導体基板上に、下部半導体多層膜反射鏡、下部スペーサ層、活性層、上部スペーサ層、第1の上部半導体多層膜反射鏡、第2の上部多層膜反射鏡が順次に設けられ、前記第1の上部半導体多層膜反射鏡は、複数の低屈折率孔を有する2次元フォトニック結晶構造と、導電性領域と高抵抗領域とからなる電流狭窄層とを備え、第1の上部半導体多層膜反射鏡に上部電極が接続されていることを特徴とする面発光レーザ。
  2. 請求項1記載の面発光レーザにおいて、前記2次元フォトニック結晶構造を形成する低屈折率孔の内部は、第1の上部半導体多層膜反射鏡よりも低い屈折率の材料で被覆又は充填されていることを特徴とする面発光レーザ。
  3. 請求項1または請求項2記載の面発光レーザにおいて、前記第2の上部多層膜反射鏡の少なくとも一部が誘電体多層膜で形成されていることを特徴とする面発光レーザ。
  4. 請求項3記載の面発光レーザにおいて、第2の上部多層膜反射鏡の一部が前記上部電極の少なくとも一部の上に設けられていることを特徴とする面発光レーザ。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の面発光レーザにおいて、前記第1の上部半導体多層膜反射鏡は、複数の高抵抗領域形成用孔を有しており、前記電流狭窄層は、前記高抵抗領域形成用孔の周辺に形成された高抵抗領域と、高抵抗領域に囲まれた少なくとも1つの導電性領域とからなることを特徴とする面発光レーザ。
  6. 請求項5記載の面発光レーザにおいて、前記電流狭窄層の導電性領域は、Al(Ga)As層からなり、前記電流狭窄層の高抵抗領域は、Al(Ga)Asが前記高抵抗領域形成用孔を通して供給された酸化種により酸化された層からなることを特徴とする面発光レーザ。
  7. 請求項5または請求項6記載の面発光レーザにおいて、前記複数の高抵抗領域形成用孔の少なくとも一部の孔の少なくとも内面が、素子構成膜よりも低い屈折率の材料で被覆又は充填されていることを特徴とする面発光レーザ。
  8. 請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の面発光レーザにおいて、前記活性層には、GaInNAs系材料が用いられていることを特徴とする面発光レーザ。
  9. 請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の面発光レーザが発光デバイスとして用いられていることを特徴とする光伝送システム。
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