本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
図1は、この発明の実施の形態による面発光レーザアレイの平面図である。図1を参照して、この発明の実施の形態による面発光レーザアレイ100は、素子配置部120と、平坦部130とからなり、面発光レーザ素子1〜32と、パッド51〜82と、ワイヤW1〜W32とを備える。
複数の面発光レーザ素子1〜32は、素子配置部120に4行×8列の2次元に配置される。面発光レーザ素子1〜32の各々は、一辺が16μmである矩形形状を有する。そして、4個の面発光レーザ素子1,9,17,25/2,10,18,26/3,11,19,27/4,12,20,28/5,13,21,29/6,14,22,30/7,15,23,31/8,16,24,32は、副走査方向に配置され、8個の面発光レーザ素子1〜8/9〜16/17〜24/25〜32は、主走査方向に配置される。
主走査方向に配置された8個の面発光レーザ素子1〜8/9〜16/17〜24/25〜32は、副走査方向に階段的にずらされて配置される。その結果、32個の面発光レーザ素子1〜32から放射された32個のレーザ光は、相互に重なることがない。
主走査方向に配置された8個の面発光レーザ素子1〜8/9〜16/17〜24/25〜32において、隣接する2つの面発光レーザ素子間の間隔は、間隔Xに設定される。
また、副走査方向に配置された4個の面発光レーザ素子1,9,17,25/2,10,18,26/3,11,19,27/4,12,20,28/5,13,21,29/6,14,22,30/7,15,23,31/8,16,24,32において、隣接する2つの面発光レーザ素子間の間隔は、間隔dに設定される。そして、間隔dは、間隔Xよりも狭い。たとえば、間隔dは、24μmに設定され、間隔Xは、30μmに設定される。
主走査方向に配置された8個の面発光レーザ素子1〜8の8個の中心から副走査方向に配置された直線に下ろした8個の垂線の副走査方向における間隔c1は、等間隔であり、c1=d/8によって決定される。間隔dが24μmに設定された場合、間隔c1は、24/8=3μmである。
主走査方向に配置された8個の面発光レーザ素子9〜16/17〜24/25〜32の8個の中心から副走査方向に配置された直線に下ろした8個の垂線の副走査方向における間隔も、等間隔であり、間隔c1と同じである。
パッド51〜82は、二次元に配列された面発光レーザ素子1〜32の周囲に存在する平坦部130に配置される。ワイヤW1〜W32は、それぞれ、面発光レーザ素子1〜32をパッド51〜82に接続し、素子配置部120および平坦部130に配置される。そして、ワイヤW1〜W32の各々は、例えば、8μmの線幅を有する。
二次元に配列された面発光レーザ素子1〜32のうち、最外周に配置された面発光レーザ素子1〜8,9,16,17,24〜32をそれぞれパッド51〜59,66,67,74,75〜82に接続するワイヤW1〜W9,S16,W17,W24〜W32は、隣接する2つの面発光レーザ素子間を通らずに配置される。
また、二次元に配列された面発光レーザ素子1〜32のうち、内周部に配置された面発光レーザ素子10〜15,18〜23をそれぞれパッド60〜65,68〜73に接続するワイヤW10〜W15,W18〜W23は、主走査方向において隣接する2つの面発光レーザ素子間を通るように配置される。上述したように、主走査方向に配置された8個の面発光レーザ素子1〜8/9〜16/17〜24/25〜32において、隣接する2つの面発光レーザ素子間の間隔は、間隔X(=30μm)に設定され、面発光レーザ素子1〜32の各々は、一辺が16μmである矩形形状を有するので、主走査方向において隣接する2つの面発光レーザ素子間は、30−16=14μmであり、線幅が8μmであるワイヤW10〜W15,W18〜W23を主走査方向において隣接する2つの面発光レーザ素子間に配置することができる。
図2は、図1に示す線II−II間の断面図である。図2を参照して、素子配置部120および平坦部130は、基板101上に設けられる。そして、面発光レーザ素子1,9,17,25は、素子配置部120に配置される。面発光レーザ素子1は、メサ構造体121と、下地層125とからなり、面発光レーザ素子9は、メサ構造体122と下地層125とからなり、面発光レーザ素子17は、メサ構造体123と下地層125とからなり、面発光レーザ素子25は、メサ構造体124と下地層125とからなる。下地層125は、基板101上に形成され、後述する結晶層からなる。メサ構造体121〜124は、下地層125上に間隔dで形成され、後述する結晶層からなる。そして、メサ構造体121〜124の底面126は、平坦部130の上面131に略一致している。
副走査方向に配置された4個の面発光レーザ素子2,10,18,26/3,11,19,27/4,12,20,28/5,13,21,29/6,14,22,30/7,15,23,31/8,16,24,32が配置された領域の断面構造も図2に示す断面構造と同じである。
図1に示す複数の面発光レーザ素子1〜32の各々は、各種の断面構造からなるので、以下、複数の面発光レーザ素子1〜32の各種の断面構造について説明する。
[実施の形態1]
図3は、図1に示す面発光レーザ素子1の実施の形態1における概略断面図である。図3を参照して、面発光レーザ素子1は、基板101と、反射層102,106と、共振器スペーサー層103,105と、活性層104と、選択酸化層107と、コンタクト層108と、SiO2層109と、絶縁性樹脂110と、p側電極111と、n側電極112とを備える。面発光レーザ素子1は、780nm帯のレーザ光を出射する面発光レーザである。そして、反射層102および共振器スペーサー層103の一部は、図2に示す下地層125を構成し、共振器スペーサー層103の一部、活性層104、共振器スペーサー層105、反射層106、選択酸化層107およびコンタクト層108は、図2に示すメサ構造体121を構成する。
基板101は、n型ガリウム砒素(n−GaAs)からなる。反射層102は、n−AlAs/n−Al0.3Ga0.7Asの対を一周期とした場合、40.5周期の[n−AlAs/n−Al0.3Ga0.7As]からなり、基板101の一主面に形成される。そして、n−AlAsおよびn−Al0.3Ga0.7Asの各々の膜厚は、面発光レーザ素子1の発振波長をλとした場合、λ/4n(nは各半導体層の屈折率)である。
共振器スペーサー層103は、ノンドープの(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなり、反射層102上に形成される。活性層104は、GaInPAsからなる井戸層と、Ga0.6In0.4Pからなる障壁層とを含む量子井戸構造を有し、共振器スペーサー層103上に形成される。
共振器スペーサー層105は、ノンドープの(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなり、活性層104上に形成される。反射層106は、p−Al0.9Ga0.1As/Al0.3Ga0.7Asの対を一周期とした場合、24周期の[p−Al0.9Ga0.1As/Al0.3Ga0.7As]からなり、共振器スペーサー層105上に形成される。そして、p−Al0.9Ga0.1AsおよびAl0.3Ga0.7Asの各々の膜厚は、λ/4n(nは各半導体層の屈折率)である。
選択酸化層107は、p−AlAsからなり、反射層106中に設けられる。より具体的には、選択酸化層107は、共振器スペーサー層105から7λ/4の位置に設けられる。そして、選択酸化層107は、非酸化領域107aと酸化領域107bとからなり、20nmの膜厚を有する。
コンタクト層108は、p−GaAsからなり、反射層106上に形成される。SiO2層109は、共振器スペーサー層103の一部の一主面と、活性層104、共振器スペーサー層105、反射層106、選択酸化層107およびコンタクト層108の端面とを覆うように形成される。
絶縁性樹脂110は、SiO2層109に接して形成される。p側電極111は、コンタクト層108の一部および絶縁性樹脂110上に形成される。n側電極112は、基板101の裏面に形成される。
反射層102,106の各々は、活性層104で発振した発振光をブラッグの多重反射により反射して活性層104に閉じ込める半導体分布ブラッグ反射器を構成する。
また、酸化領域107bは、非酸化領域107aよりも小さい屈折率を有する。そして、酸化領域107bは、p側電極111から注入された電流が活性層104へ流れる経路を非酸化領域107aに制限する電流狭窄部を構成するとともに、活性層104で発振した発振光を非酸化領域107aに閉じ込める。これによって、面発光レーザ素子1は、低閾値電流での発振が可能となる。
図4は、図3に示す面発光レーザ素子1の活性層104の近傍を示す断面図である。図4を参照して、反射層102は、低屈折率層1021と、高屈折率層1022と、組成傾斜層1023とを含む。低屈折率層1021は、n−AlAsからなり、高屈折率層1022は、n−Al0.3Ga0.7Asからなる。組成傾斜層1023は、低屈折率層1021および高屈折率層1022のいずれか一方から他方へ向かってAl組成が徐々に変化するn−AlGaAsからなる。そして、低屈折率層1021が共振器スペーサー層103に接する。
反射層106は、低屈折率層1061と、高屈折率層1062と、組成傾斜層1063とを含む。低屈折率層1061は、p−Al0.9Ga0.1Asからなり、高屈折率層1062は、p−Al0.3Ga0.7Asからなる。組成傾斜層1063は、低屈折率層1061および高屈折率層1062のいずれか一方から他方へ向かってAl組成が徐々に変化するp−AlGaAsからなる。そして、低屈折率層1061が共振器スペーサー層105に接する。
活性層104は、各々がGaInPAsからなる3層の井戸層1041と、各々がGa0.6In0.4Pからなる4層の障壁層1042とが交互に積層された量子井戸構造からなる。そして、障壁層1042が共振器スペーサー層103,105に接する。井戸層1041を構成するGaInPAsは、圧縮歪組成を有し、障壁層1042を構成するGa0.6In0.4Pは、引っ張り歪を有する。
面発光レーザ素子1においては、共振器スペーサー層103,105および活性層104は、共振器を構成し、基板101に垂直な方向における共振器の厚さは、面発光レーザ素子1の1波長(=λ)に設定される。すなわち、共振器スペーサー層103,105および活性層104は、1波長共振器を構成する。
なお、図1に示す面発光レーザ素子2〜32の各々は、図3および図4に示す面発光レーザ素子1の構成と同じ構成からなる。
図5、図6および図7は、それぞれ、図1に示す面発光レーザアレイ100の製造方法を示す第1から第3の工程図である。なお、図5〜図7の説明においては、図1に示す32個の面発光レーザ素子1〜32のうち、4個の面発光レーザ素子1,9,17,25が作製される工程を参照して面発光レーザアレイ100の製造方法を説明する。
図5を参照して、一連の動作が開始されると、有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)を用いて、反射層102、共振器スペーサー層103、活性層104、共振器スペーサー層105、反射層106、選択酸化層107およびコンタクト層108を基板101上に順次積層する。すなわち、MOCVD法を用いて、反射層102、共振器スペーサー層103、活性層104、共振器スペーサー層105、反射層106、選択酸化層107およびコンタクト層108からなる半導体多層膜を基板101上に形成する(図5の工程(a)参照)。
この場合、反射層102のn−AlAsおよびn−Al0.3Ga0.7Asをトリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、アルシン(AsH3)およびセレン化水素(H2Se)を原料として形成し、共振器スペーサー層103の(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pをトリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)およびフォスフィン(PH3)を原料として形成する。
また、活性層104のGaInPAsをトリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)、フォスフィン(PH3)およびアルシン(AsH3)を原料として形成し、活性層104のGa0.6In0.4Pをトリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)およびフォスフィン(PH3)を原料として形成する。
さらに、共振器スペーサー層105の(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pをトリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)およびフォスフィン(PH3)を原料として形成する。
さらに、反射層106のp−Al0.9Ga0.1As/p−Al0.3Ga0.7Asをトリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、アルシン(AsH3)および四臭化炭素(CBr4)を原料として形成する。なお、四臭化炭素(CBr4)に代えて、ジメチル亜鉛(DMZn)を用いてもよい。
さらに、選択酸化層107のp−AlAsをトリメチルアルミニウム(TMA)、アルシン(AsH3)および四臭化炭素(CBr4)を原料として形成し、コンタクト層108のp−GaAsをトリメチルガリウム(TMG)、アルシン(AsH3)および四臭化炭素(CBr4)を原料として形成する。この場合も、四臭化炭素(CBr4)に代えて、ジメチル亜鉛(DMZn)を用いてもよい。
その後、コンタクト層108の上にレジストを塗布し、写真製版技術を用いて、コンタクト層108上にレジストパターン140を形成する(図5の工程(b)参照)。
レジストパターン140を形成すると、その形成したレジストパターン140をマスクとして用いて、共振器スペーサー層103の一部、活性層104、共振器スペーサー層105、反射層106、選択酸化層107およびコンタクト層108をドライエッチングし、さらに、レジストパターン140を除去する。
この場合、共振器スペーサー層103の一部、活性層104、共振器スペーサー層105、反射層106、選択酸化層107およびコンタクト層108は、Cl2,BCl3,SiCl4,CCl4、CF4等のハロゲン系のガスを導入し、反応性イオンビームエッチング法(RIBE:Reactive Ion Beam Etching)、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)エッチング法および反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)等のプラズマを用いたドライエッチング法によりエッチングされる。そして、共振器スペーサー層103の一部、活性層104、共振器スペーサー層105、反射層106、選択酸化層107およびコンタクト層108のエッチング中、エッチング装置の覗き窓からプラズマ発光分光を行ない、Inの451nmの発光強度の時間変化をモニタする。共振器の領域をエッチングしているときだけ、Inの発光を検出できるので、AlGaInPAs系材料からなる共振器領域中でエッチングを容易に停止させることができる。
その結果、面発光レーザ素子1,9,17,25におけるメサ構造体121〜124が形成される。すなわち、素子配置部120および平坦部130が形成される(図5の工程(c)参照)。
なお、共振器スペーサー層103の一部、活性層104、共振器スペーサー層105、反射層106、選択酸化層107およびコンタクト層108は、ウェットエッチングによりエッチングされてもよい。AlGaAs系材料からなる反射層106、選択酸化層107およびコンタクト層108をウェットエッチングにより選択的にエッチングする場合、硫酸系エッチャントを用いることができる。
次に、図6を参照して、図5に示す工程(c)の後、85℃に加熱した水を窒素ガスでバブリングした雰囲気中において、試料を350℃に加熱して、選択酸化層107の周囲を外周部から中央部に向けて酸化し、選択酸化層107中に非酸化領域107aと酸化領域107bとを形成する(図6の工程(d)参照)。
その後、気相化学堆積法(CVD:Chemical Vapour Deposition)を用いて、試料の全面にSiO2層109を形成し、写真製版技術を用いて光出射部となる領域およびその周辺領域のSiO2層109を除去する(図6の工程(e)参照)。
次に、試料の全体に絶縁性樹脂110をスピンコートにより塗布し、光出射部となる領域上の絶縁性樹脂110を除去する(図6の工程(f)参照)。
図7を参照して、絶縁性樹脂110を形成した後、光出射部となる領域上に所定のサイズを有するレジストパターンを形成し、試料の全面にp側電極材料を蒸着により形成し、レジストパターン上のp側電極材料をリフトオフにより除去してp側電極111を形成する(図7の工程(g)参照)。そして、基板101の裏面を研磨し、基板101の裏面にn側電極112を形成し、さらに、アニールしてp側電極111およびn側電極112のオーミック導通を取る(図7の工程(h)参照)。これによって、面発光レーザアレイ100が完成する。
なお、図5に示す工程(b),(c)においては、4個の面発光レーザ素子を形成するためのドライエッチングが図示されているが、実際には、工程(b),(c)においては、図1に示す32個の面発光レーザ素子1〜32を同時に形成するためのドライエッチング行なわれる。この場合、32個の面発光レーザ素子1〜32を同時に形成するためのレジストパターンは、図1に示す32個の面発光レーザ素子1〜32の配置に適合したフォトマスクを用いて形成される。すなわち、32個の面発光レーザ素子1〜32を同時に形成するためのレジストパターンは、間隔X,dがd<Xを満たすように設定され、かつ、主走査方向に配置された8個の面発光レーザ素子1〜8/9〜16/17〜24/25〜32の8個の中心から副走査方向に配置された直線に下ろした8個の垂線が等間隔c1になるように設計されたフォトマスクを用いて形成される。
面発光レーザアレイ100においては、副走査方向に配置した面発光レーザ素子の間隔dを主走査方向に配置した面発光レーザ素子の間隔Xよりも小さく設定する。これにより、間隔dを間隔Xよりも大きくした場合よりも、間隔c1(=d/8)を小さくでき、高密度記録に有利となる。
副走査方向に配置した面発光レーザ素子の間隔、および主走査方向に配置した面発光レーザ素子の間隔の両方を狭くすることも可能であるが、各素子間の熱干渉の影響の低減、各素子の配線を通すために必要なスペースを確保するためには、少なくとも一方の間隔を広げる必要があるので、高密度書き込みを行なうためには、主走査方向を広げることが好ましい。
図8は、図5の(b)におけるエッチングを詳細に説明するための図である。なお、図8は、共振器スペーサー層103、活性層104、共振器スペーサー層105、反射層106、選択酸化層107およびコンタクト層108からなる結晶層をレジストパターン140を用いずにエッチングした場合の基板101の面内方向DR1におけるエッチング深さの分布を示す。
図8を参照して、コンタクト層108、選択酸化層107および反射層106(「領域REG1」と言う。)をエッチングするときの基板101の面内方向DR1におけるエッチング深さの分布は、曲線k1によって表される。また、共振器スペーサー層105、活性層104および共振器スペーサー層103(「領域REG2」と言う。)をエッチングするときの基板101の面内方向DR1におけるエッチング深さの分布は、曲線k2によって表される。
反射層106、選択酸化層107およびコンタクト層108は、上述したように、AlGaAs系の材料からなるので、エッチング速度が相対的に速く、領域REG1におけるエッチング深さの面内方向DR1の分布は、相対的に大きくなる(曲線k1参照)。
一方、共振器スペーサー層103,105および活性層104は、Inを含み、Inの反応物の蒸気圧が低いので、共振器スペーサー層103,105および活性層104のエッチング速度は、反射層106、選択酸化層107およびコンタクト層108のエッチング速度よりも遅くなり、領域REG2におけるエッチング深さの面内方向DR1の分布は、領域REG1におけるエッチング深さの面内方向DR1の分布よりも小さくなる(曲線k2参照)。即ち、領域REG1において生じた面内方向DR1のエッチング深さの差は、領域REG2においてエッチング速度が遅くなることによって吸収される。その結果、領域REG2におけるエッチング深さの面内方向DR1の分布は、領域REG1におけるエッチング深さの面内方向DR1の分布よりも小さくなる。
Inを含む領域REG2におけるエッチング速度がAlGaAs系材料からなる領域REG1におけるエッチング速度よりも遅くなることを示す実験結果について説明する。図9および図10は、それぞれ、図1に示す面発光レーザアレイ100を作製するときのエッチング時のプラズマ発光の第1および第2のタイミングチャートである。
図9および図10において、縦軸は、プラズマ発光の強度を表し、横軸は、時間を表す。また、図9は、共振器領域の途中までエッチングした場合を示し、図10は、共振器領域から反射層102の3ペア目程度までエッチングした場合を示す。さらに、図9において、曲線k3は、ガリウム(Ga)の発光強度を示し、曲線k4は、インジウム(In)の発光強度を示し、曲線k5は、アルミニウム(Al)の発光強度を示す。さらに、図10において、曲線k6は、Gaの発光強度を示し、曲線k7は、Inの発光強度を示し、曲線k8は、Alの発光強度を示す。さらに、実験においては、表面から反射層106と共振器領域との界面までの厚さが3.18μmであり、Inを含む共振器領域の厚さが0.23μmである試料を用いた。
表面から反射層106と共振器領域との界面までの領域におけるエッチング速度は、3.18μm/871sec=3.65×10−3μm/secである。一方、共振器領域におけるエッチング速度は、0.23μm/372sec=6.18×10−4μm/secである。
このように、Inを含む共振器領域においては、エッチング速度が低下し、共振器領域の膜厚(=0.23μm)が共振器領域よりも上側の領域の膜厚(=3.18μm)に比べて薄いにも拘わらず、共振器領域の全体をエッチングするために長い時間を要する。
Inの発光強度は、共振器領域において増加する(曲線k4,k7参照)。したがって、Inの発光強度が増加したことを検知することによって、エッチングを共振器領域で容易に停止させることができる。
Gaの発光強度およびAlの発光強度は、エッチング時間の経過とともに周期的に変化し、発光強度の振幅は、エッチング時間の経過とともに徐々に小さくなる(曲線k3,k5,k6,k8参照)。
ウェハの面内方向DR1におけるエッチング深さの分布が均一であれば、Gaの発光強度およびAlの発光強度は、ほぼ一定の振幅で周期的に変化する。一方、ウェハの面内方向DR1におけるエッチング深さの分布が不均一であれば、Alの発光とGaの発光とを同時に観測することになり、Gaの発光強度の振幅およびAlの発光強度の振幅は、相対的に小さくなる。
したがって、Gaの発光強度の振幅およびAlの発光強度の振幅がエッチング時間の経過とともに徐々に小さくなっていることは、エッチング時間の経過とともにウェハの面内方向DR1におけるエッチング深さに差が生じていることを意味する。
そして、エッチングが共振器領域を突き抜けた後においては、Gaの発光強度の振幅およびAlの発光強度の振幅は、さらに小さくなっているので、エッチング底面が反射層102に到達した段階では、面内方向DR1におけるエッチング深さにさらに大きな差が生じている(曲線k6,k8参照)。
図11は、共振器領域でエッチングを停止させた場合の平坦部におけるエッチング深さおよび面発光レーザ素子の素子間隙部におけるエッチング深さと平坦部におけるエッチング深さとの差をメサ間隔に対して示す図である。また、図12は、基板101側に配置された反射層102でエッチングを停止させた場合の平坦部におけるエッチング深さおよび面発光レーザ素子の素子間隙部におけるエッチング深さと平坦部におけるエッチング深さとの差をメサ間隔に対して示す図である。
図11および図12において、縦軸は、平坦部のエッチング深さおよび素子配置部120におけるエッチング深さと平坦部130におけるエッチング深さとの差Δdを表し、横軸は、メサ間隔を表す。また、図11および図12において、◆は、平坦部エッチング深さを示し、■は、差Δdを示す。
エッチングを共振器領域の途中で停止させた場合、メサ間隔が10μm以下であっても、素子配置部120におけるエッチング深さと平坦部130におけるエッチング深さとの差Δdは、100nm以下である(図11参照)。
一方、エッチングを基板101側に設けられた反射層102で停止させた場合、メサ間隔が約23μmのとき、差Δdは、100nmになり、メサ間隔が20μm以下になると、差Δdは、100nmよりも大きくなる。そして、メサ間隔が10μm以下では、差Δdは、250nm程度まで大きくなる(図12参照)。
このように、Inを含む共振器領域でエッチングを停止させることによって、共振器領域に至るまでに素子配置部120と平坦部130との間でエッチング深さに大きな差が生じていても、そのエッチング深さの大きな差は、エッチング速度が遅い共振器領域で吸収され、メサ間隔が小さくなっても素子配置部120におけるエッチング深さと平坦部130におけるエッチング深さとの差Δdを小さくすることができる。つまり、Inを含む共振器領域でエッチングを停止させることによって、複数の面発光レーザ素子1〜32が密集した素子配置部120と面発光レーザ素子が形成されていない平坦部130とが存在するウェハの面内方向DR1におけるエッチング深さを均一化できる。
図13は、図1に示す面発光レーザアレイ100の平面図および断面図である。図13を参照して、面発光レーザ素子1〜32が配置された領域は、非エッチング領域であり、面発光レーザ素子1〜32の周囲は、エッチング領域である。A−A’間の断面図は、面発光レーザ素子25〜27および面発光レーザ素子25周辺の平坦部の断面図である。面発光レーザ素子25,26間および面発光レーザ素子26,27間におけるエッチング深さは、D1であり、面発光レーザ素子25周辺の平坦部におけるエッチング深さは、D2である。そして、エッチング深さD1は、エッチング深さD2よりも浅い。その結果、エッチング深さD1とエッチング深さD2との差は、Δdとなる。
コンタクト層108、選択酸化層107、反射層106、共振器スペーサー層105、活性層104および共振器スペーサー層103をエッチングすることによって、すそ引き141〜145が形成されるが、共振器スペーサー層103,105および活性層104は、上述したように、Inを含み、エッチング速度が相対的に遅いため、共振器スペーサー層103,105および活性層104のエッチング時に面発光レーザアレイ100の面内方向DR1におけるエッチングも進行する。その結果、すそ引き141〜145の大きさは、従来の面発光レーザアレイよりも小さくなる。
エッチング形状のすそ引き部分は、メサ構造体の上部の側面の傾斜と傾斜率が異なり、エッチング形状のすそ引き部分に酸化狭窄層が含まれると、被選択酸化層の幅がメサ構造体の上部の幅よりも広くなり、被選択酸化層の幅を正確に見積もることが困難となる。その結果、酸化領域107bの幅の見積もりが不正確になり、酸化狭窄径を正確に制御することが困難となる。したがって、エッチング底面は、アレイチップ全体を通して共振器領域に入っていることが好ましい。
共振器領域の厚さがλ(1波長共振器厚さ)である場合、共振器領域の厚さ方向の中心がエッチング底面(平坦部)になるように狙ってエッチングを行なうことがウェハ面内におけるエッチング深さの均一性を考慮すると好ましく、この場合、Δdは、媒体内の実効的な長さとしてλ/2以下であればよい。面発光レーザ素子1〜32の発振波長は、780nmであるので、1波長共振器の厚さは、230nm程度である。その結果、Δdは、115nm以下であると好ましい。
従来の面発光レーザアレイにおいては、差Δdが115nmである場合、メサ間隔は、約20μmであり(図12参照)、この発明による面発光レーザアレイ100においては、メサ間隔が20μm以下であっても、差Δdは、100nmよりも小さい。したがって、この発明は、メサ間隔が20μm以下である場合に特に効果がある。なお、波長が780nmよりも短くなると、1波長共振器の厚さは、薄くなるので、メサ間隔がより広い領域でΔdがλ/2を超えるようになる。
上述したように、面発光レーザアレイ100においては、メサ構造体を形成するためのメサエッチングは、Inを含む共振器領域の途中(=共振器スペーサー層103の途中)で停止されるので、メサ間隔が小さくなっても素子配置部120におけるエッチング深さと平坦部130におけるエッチング深さとの差Δdが小さくなり、平坦部130において反射層102の低屈折率層1021(=AlAs)が露出することがない。その結果、選択酸化層107を選択酸化しても、反射層102の低屈折率層1021(=AlAs)は、酸化されない。
したがって、この発明によれば、活性層104で発生した熱を反射層102のAlAs(低屈折率層)を介して基板1へ逃がすことができる。
なお、素子配置部120において隣接する2つの面発光レーザ素子の間隔とは、メサ構造体の上面位置における面発光レーザ素子間の間隔およびメサ構造体の底面位置における面発光レーザ素子間の間隔のうち、狭い方の間隔を言う。メサ構造体を形成するためのエッチングの方法によっては、メサ構造体の上面位置における面発光レーザ素子間の間隔の方が広くなったり、メサ構造体の底面位置における面発光レーザ素子間の間隔の方が広くなったりするからである。
上述したように、共振器スペーサー層103、活性層104および共振器スペーサー層105からなる共振器は、Inを含み、メサ構造体を形成するときの反射層106、選択酸化層107およびコンタクト層108のエッチングによって生じた面内方向DR1におけるエッチング深さの差を吸収する。したがって、共振器スペーサー層103、活性層104および共振器スペーサー層105からなる共振器は、メサ構造体を構成するときの面内方向DR1におけるエッチング深さの差を吸収する「吸収層」を構成する。
そして、面発光レーザアレイ100の作製時には、メサ構造体を形成するためのエッチングを共振器の途中(=共振器スペーサー層103の途中)で停止するので、素子配置部120におけるエッチング深さと平坦部130におけるエッチング深さとの差Δdが小さくなる。
したがって、この発明によれば、ダミー素子を用いずに基板101の面内方向DR1におけるエッチング深さの差を低減できる。
また、ワイヤW1〜W32は、エッチング深さの差Δdが小さい素子配置部120および平坦部130に配置されるので、配線の断切れの確率を低くできる。
さらに、パッド51〜82は、平坦部130に配置されるので、ワイヤーボンディングによってメサ構造体が壊れるのを防止できる。
なお、上記においては、メサ構造体の底面は、共振器スペーサー層103の途中に位置すると説明したが、この発明においては、これに限らず、メサ構造体の底面は、Inを含む共振器(=共振器スペーサー層103,105および活性層104)の厚さ方向の任意の位置にあればよい。
[実施の形態2]
図14は、図1に示す面発光レーザ素子1〜32の実施の形態2における概略断面図である。実施の形態2においては、図1に示す面発光レーザ素子1〜32の各々は、図14に示す面発光レーザ素子1Aからなる。
図14を参照して、面発光レーザ素子1Aは、図3に示す面発光レーザ素子1の共振器スペーサー層103,105および反射層106をそれぞれ共振器スペーサー層103A,105Aおよび反射層106Aに代えたものであり、その他は、面発光レーザ素子1と同じである。
共振器スペーサー層103Aは、ノンドープの(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなり、反射層102上に形成される。共振器スペーサー層105Aは、ノンドープの(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなり、活性層104上に形成される。
反射層106Aは、図3に示す反射層106のうち、活性層104に最も近い低屈折率層をp−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pにより構成したものであり、共振器スペーサー層105A上に形成される。そして、反射層106Aは、活性層104で発振した発振光をブラッグの多重反射により反射して活性層104に閉じ込める半導体分布ブラッグ反射器を構成する。
図15は、図14に示す面発光レーザ素子1Aの活性層104の近傍を示す断面図である。図15を参照して、反射層102の低屈折率層1021が共振器スペーサー層103Aに接する。共振器スペーサー層103Aは、反射層102の低屈折率層1021および活性層104の障壁層1042に接する。反射層106Aは、図4に示す反射層106のうち、活性層104に最も近い低屈折率層1061を低屈折率層1061Aに代えたものであり、その他は、反射層106と同じである。そして、低屈折率層1061Aは、p−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなり、共振器スペーサー層105Aに接する。共振器スペーサー層105Aは、活性層104の障壁層1042および反射層106Aの低屈折率層1061Aに接する。
面発光レーザ素子1Aにおいては、共振器スペーサー層103A,105Aおよび活性層104は、共振器を構成し、基板101に垂直な方向における共振器の厚さは、面発光レーザ素子1Aの1波長(=λ)に設定される。すなわち、共振器スペーサー層103A,105Aおよび活性層104は、1波長共振器を構成する。
面発光レーザ素子1Aを備えた面発光レーザアレイ100は、図5、図6および図7に示す工程(a)〜(h)に従って作製される。この場合、図5の工程(a)において、共振器スペーサー層103A,105Aの(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pは、MOCVD法を用いて、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)およびフォスフィン(PH3)を原料として形成され、反射層106Aの低屈折率層1061Aを構成するp−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pは、MOCVD法を用いて、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)、フォスフィン(PH3)およびジメチル亜鉛(DMZn)を原料として形成される。なお、ジメチル亜鉛(DMZn)に代えて四臭化炭素(CBr4)を用いてもよい。
共振器(=共振器スペーサー層103A,105Aおよび活性層104)および反射層106Aの一部(低屈折率層1061A)は、Inを含むので、メサ構造体を形成するときの面内方向におけるエッチング深さの差を吸収する「吸収層」を構成する。
そして、面発光レーザ素子1Aを用いた面発光レーザアレイ100の作製時には、メサ構造体を形成するためのエッチングを共振器の途中(=共振器スペーサー層103Aの途中)で停止するので、素子配置部120におけるエッチング深さと平坦部130におけるエッチング深さとの差Δdが小さくなる。
したがって、この発明によれば、ダミー素子を用いずに基板101の面内方向DR1におけるエッチング深さの差を低減できる。
また、ワイヤW1〜W32は、エッチング深さの差Δdが小さい素子配置部120および平坦部130に配置されるので、配線の断切れの確率を低くできる。
さらに、パッド51〜82は、平坦部130に配置されるので、ワイヤーボンディングによってメサ構造体が壊れるのを防止できる。
さらに、面発光レーザ素子1Aは、Inを含む領域(=共振器および反射層106の一部)の膜厚が面発光レーザ素子1よりも厚いので、面発光レーザ素子1Aを用いて面発光レーザアレイ100を作製した方がエッチングの制御がさらに容易になる。
さらに、ワイドバンドギャップであるp−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pは、ZnまたはMgをドーピングして使う場合が多いが、これらのドーパントは、拡散し易く活性層104へ拡散した場合、活性層104にダメージを与え、発光効率の低下および信頼性の低下を招く。
面発光レーザ素子1Aにおいては、p−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pを共振器スペーサー層105Aよりも活性層104から遠い反射層106A中に配置し、共振器スペーサー層103A,105Aをアンドープの(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pから構成したので、不純物の悪影響を抑えることができる。
なお、上記においては、メサ構造体の底面は、共振器スペーサー層103Aの途中に位置すると説明したが、この発明においては、これに限らず、メサ構造体の底面は、Inを含む共振器(=共振器スペーサー層103A,105Aおよび活性層104)および反射層106Aの低屈折率層1061Aの厚さ方向の任意の位置にあればよい。
[実施の形態3]
図16は、図1に示す面発光レーザ素子1〜32の実施の形態3における概略断面図である。実施の形態3においては、図1に示す面発光レーザ素子1〜32の各々は、図16に示す面発光レーザ素子1Bからなる。
図16を参照して、面発光レーザ素子1Bは、図3に示す面発光レーザ素子1の共振器スペーサー層103を共振器スペーサー層103Bに代えたものであり、その他は、面発光レーザ素子1と同じである。
共振器スペーサー層103Bは、ノンドープのGa0.5In0.5Pからなり、反射層102上に形成される。そして、Ga0.5In0.5Pは、共振器スペーサー層103を構成する(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pよりも熱伝導率が大きい。
図17は、図16に示す面発光レーザ素子1Bの活性層104の近傍を示す断面図である。図17を参照して、反射層102の低屈折率層1021が共振器スペーサー層103Bに接する。共振器スペーサー層103Bは、反射層102の低屈折率層1021および活性層104の障壁層1042に接する。
面発光レーザ素子1Bにおいては、共振器スペーサー層103B,105および活性層104は、共振器を構成し、基板101に垂直な方向における共振器の厚さは、面発光レーザ素子1Bの1波長(=λ)に設定される。すなわち、共振器スペーサー層103B,105および活性層104は、1波長共振器を構成する。
面発光レーザ素子1Bを備えた面発光レーザアレイ100は、図5、図6および図7に示す工程(a)〜(h)に従って作製される。この場合、図5の工程(a)において、共振器スペーサー層103BのGa0.5In0.5Pは、MOCVD法を用いて、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)およびフォスフィン(PH3)を原料として形成される。
共振器(=共振器スペーサー層103B,105および活性層104)は、Inを含むので、メサ構造体を形成するときの面内方向におけるエッチング深さの差を吸収する「吸収層」を構成する。
そして、面発光レーザ素子1Bを用いた面発光レーザアレイ100の作製時には、メサ構造体を形成するためのエッチングを共振器の途中(=共振器スペーサー層103Bの途中)で停止するので、素子配置部120におけるエッチング深さと平坦部130におけるエッチング深さとの差Δdが小さくなる。
したがって、この発明によれば、ダミー素子を用いずに基板101の面内方向DR1におけるエッチング深さの差を低減できる。
また、ワイヤW1〜W32は、エッチング深さの差Δdが小さい素子配置部120および平坦部130に配置されるので、配線の断切れの確率を低くできる。
さらに、パッド51〜82は、平坦部130に配置されるので、ワイヤーボンディングによってメサ構造体が壊れるのを防止できる。
さらに、面発光レーザ素子1Bは、共振器スペーサー層103Bが(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pよりも熱伝導率の高いGa0.5In0.5Pからなるので、活性層104で発生した熱を面発光レーザ素子1に比べより多く基板101側へ放熱できる。
なお、上記においては、メサ構造体の底面は、共振器スペーサー層103Bの途中に位置すると説明したが、この発明においては、これに限らず、メサ構造体の底面は、Inを含む共振器(=共振器スペーサー層103B,105および活性層104)の厚さ方向の任意の位置にあればよい。
[実施の形態4]
図18は、図1に示す面発光レーザ素子1〜32の実施の形態4における概略断面図である。実施の形態4においては、図1に示す面発光レーザ素子1〜32の各々は、図18に示す面発光レーザ素子1Cからなる。
図18を参照して、面発光レーザ素子1Cは、図3に示す面発光レーザ素子1の共振器スペーサー層103を共振器スペーサー層103Cに代えたものであり、その他は、面発光レーザ素子1と同じである。
共振器スペーサー層103Cは、ノンドープの(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P/Ga0.5In0.5Pからなり、反射層102上に形成される。
図19は、図18に示す面発光レーザ素子1Cの活性層104の近傍を示す断面図である。図19を参照して、共振器スペーサー層103Cは、スペーサー層1031,1032からなる。スペーサー層1031は、反射層102の低屈折率層1021に接して形成され、スペーサー層1032は、活性層104の障壁層1042に接して形成される。
そして、スペーサー層1031は、格子整合するGa0.5In0.5Pからなり、スペーサー層1032は、(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなる。
面発光レーザ素子1Cにおいては、共振器スペーサー層103C,105および活性層104は、共振器を構成し、基板101に垂直な方向における共振器の厚さは、面発光レーザ素子1Cの1波長(=λ)に設定される。すなわち、共振器スペーサー層103C,105および活性層104は、1波長共振器を構成する。
面発光レーザ素子1Cを備えた面発光レーザアレイ100は、図5、図6および図7に示す工程(a)〜(h)に従って作製される。この場合、図5の工程(a)において、共振器スペーサー層103Cの(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P/Ga0.5In0.5Pは、MOCVD法を用いて、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)およびフォスフィン(PH3)を原料として形成される。
共振器(=共振器スペーサー層103C,105および活性層104)は、Inを含むので、メサ構造体を形成するときの面内方向におけるエッチング深さの差を吸収する「吸収層」を構成する。
そして、面発光レーザ素子1Cを用いた面発光レーザアレイ100の作製時には、メサ構造体を形成するためのエッチングを共振器の途中(=共振器スペーサー層103Cの途中)で停止するので、素子配置部120におけるエッチング深さと平坦部130におけるエッチング深さとの差Δdが小さくなる。
したがって、この発明によれば、ダミー素子を用いずに基板101の面内方向DR1におけるエッチング深さの差を低減できる。
また、ワイヤW1〜W32は、エッチング深さの差Δdが小さい素子配置部120および平坦部130に配置されるので、配線の断切れの確率を低くできる。
さらに、パッド51〜82は、平坦部130に配置されるので、ワイヤーボンディングによってメサ構造体が壊れるのを防止できる。
さらに、面発光レーザ素子1Cにおいては、共振器スペーサー層103Cのうち、活性層104に接するスペーサー層1032がワイドバンドギャップ材料である(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなり、反射層102の低屈折率層1021(=AlAs)に接するスペーサー層1031がGa0.5In0.5Pからなるので、面発光レーザ素子1におけるキャリア閉じ込めの度合と同じキャリア閉じ込めを実現し、かつ、活性層104で発生した熱を面発光レーザ素子1に比べより多く基板101側へ放熱できる。
なお、上記においては、メサ構造体の底面は、共振器スペーサー層103Cの途中に位置すると説明したが、この発明においては、これに限らず、メサ構造体の底面は、Inを含む共振器(=共振器スペーサー層103C,105および活性層104)の厚さ方向の任意の位置にあればよい。
[実施の形態5]
図20は、図1に示す面発光レーザ素子1〜32の実施の形態5における概略断面図である。実施の形態5においては、図1に示す面発光レーザ素子1〜32の各々は、図20に示す面発光レーザ素子1Dからなる。
図20を参照して、面発光レーザ素子1Dは、図3に示す面発光レーザ素子1の共振器スペーサー層103を共振器スペーサー層103Dに代えたものであり、その他は、面発光レーザ素子1と同じである。
共振器スペーサー層103Dは、ノンドープの(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P/AlGaAsからなり、反射層102上に形成される。
図21は、図20に示す面発光レーザ素子1Dの活性層104の近傍を示す断面図である。図21を参照して、共振器スペーサー層103Dは、スペーサー層1031A,1032Aからなる。スペーサー層1031Aは、反射層102の低屈折率層1021に接して形成され、スペーサー層1032Aは、活性層104の障壁層1042に接して形成される。
そして、スペーサー層1031Aは、(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pよりも熱伝導率が大きいAlGaAsからなり、スペーサー層1032Aは、(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなる。
面発光レーザ素子1Dにおいては、共振器スペーサー層103D,105および活性層104は、共振器を構成し、基板101に垂直な方向における共振器の厚さは、面発光レーザ素子1Dの1波長(=λ)に設定される。すなわち、共振器スペーサー層103D,105および活性層104は、1波長共振器を構成する。
面発光レーザ素子1Dを備えた面発光レーザアレイ100は、図5、図6および図7に示す工程(a)〜(h)に従って作製される。この場合、図5の工程(a)において、共振器スペーサー層103Dの(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pは、MOCVD法を用いて、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)およびフォスフィン(PH3)を原料として形成され、共振器スペーサー層103DのAlGaAsは、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)およびアルシン(AsH3)を原料として形成される。
共振器スペーサー層103Dのスペーサー層1032A、活性層104および共振器スペーサー層105は、Inを含むので、メサ構造体を形成するときの面内方向におけるエッチング深さの差を吸収する「吸収層」を構成する。
そして、面発光レーザ素子1Dを用いた面発光レーザアレイ100の作製時には、メサ構造体を形成するためのエッチングを共振器スペーサー層103Dのスペーサー層1032Aの途中で停止するので、素子配置部120におけるエッチング深さと平坦部130におけるエッチング深さとの差Δdが小さくなる。
したがって、この発明によれば、ダミー素子を用いずに基板101の面内方向DR1におけるエッチング深さの差を低減できる。
また、ワイヤW1〜W32は、エッチング深さの差Δdが小さい素子配置部120および平坦部130に配置されるので、配線の断切れの確率を低くできる。
さらに、パッド51〜82は、平坦部130に配置されるので、ワイヤーボンディングによってメサ構造体が壊れるのを防止できる。
さらに、面発光レーザ素子1Dにおいては、共振器スペーサー層103Dのうち、活性層104に接するスペーサー層1032Aがワイドバンドギャップ材料である(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなり、反射層102の低屈折率層1021(=AlAs)に接するスペーサー層1031AがAlGaAsからなるので、面発光レーザ素子1におけるキャリア閉じ込めの度合と同じキャリア閉じ込めを実現し、かつ、活性層104で発生した熱を面発光レーザ素子1に比べより多く基板101側へ放熱できる。
なお、上記においては、メサ構造体の底面は、スペーサー層1032Aの途中に位置すると説明したが、この発明においては、これに限らず、メサ構造体の底面は、Inを含むスペーサー層1032A、活性層104および共振器スペーサー層105の厚さ方向の任意の位置にあればよい。
[実施の形態6]
図22は、図1に示す面発光レーザ素子1〜32の実施の形態6における概略断面図である。実施の形態6においては、図1に示す面発光レーザ素子1〜32の各々は、図22に示す面発光レーザ素子1Eからなる。
図22を参照して、面発光レーザ素子1Eは、図3に示す面発光レーザ素子1の共振器スペーサー層103および活性層104をそれぞれ共振器スペーサー層103Eおよび活性層104Aに代えたものであり、その他は、面発光レーザ素子1と同じである。
共振器スペーサー層103Eは、ノンドープのAlGaAsからなり、反射層102上に形成される。活性層104Aは、AlGaAs系材料からなり、780nmのレーザ光を発振する。
なお、面発光レーザ素子1Eにおいては、メサ構造体の底面は、共振器スペーサー層105の途中に位置する。
図23は、図22に示す面発光レーザ素子1Eの活性層104Aの近傍を示す断面図である。図23を参照して、共振器スペーサー層103Eは、反射層102の低屈折率層1021および活性層104Aに接して形成される。そして、共振器スペーサー層103Eは、Al0.6Ga0.4Asからなる。
活性層104Aは、3層の井戸層1041Aと、4層の障壁層1042Aとが構造に積層された量子井戸構造からなる。井戸層1041Aは、Al0.12Ga0.88Asからなり、障壁層1042Aは、Al0.3Ga0.7Asからなる。
面発光レーザ素子1Eにおいては、共振器スペーサー層103E,105および活性層104Aは、共振器を構成し、基板101に垂直な方向における共振器の厚さは、面発光レーザ素子1Eの1波長(=λ)に設定される。すなわち、共振器スペーサー層103E,105および活性層104Aは、1波長共振器を構成する。
面発光レーザ素子1Eを備えた面発光レーザアレイ100は、図5、図6および図7に示す工程(a)〜(h)に従って作製される。この場合、図5の工程(a)において、共振器スペーサー層103EのAl0.6Ga0.4As、井戸層1041AのAl0.12Ga0.88Asおよび障壁層1042AのAl0.3Ga0.7Asは、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)およびアルシン(AsH3)を原料として形成される。
共振器スペーサー層105は、Inを含むので、メサ構造体を形成するときの面内方向におけるエッチング深さの差を吸収する「吸収層」を構成する。
そして、面発光レーザ素子1Eを用いた面発光レーザアレイ100の作製時には、メサ構造体を形成するためのエッチングを共振器スペーサー層105の途中で停止するので、素子配置部120におけるエッチング深さと平坦部130におけるエッチング深さとの差Δdが小さくなる。
したがって、この発明によれば、ダミー素子を用いずに基板101の面内方向DR1におけるエッチング深さの差を低減できる。
また、ワイヤW1〜W32は、エッチング深さの差Δdが小さい素子配置部120および平坦部130に配置されるので、配線の断切れの確率を低くできる。
さらに、パッド51〜82は、平坦部130に配置されるので、ワイヤーボンディングによってメサ構造体が壊れるのを防止できる。
なお、上記においては、面発光レーザ素子1Eを構成する反射層102、共振器スペーサー層103E、活性層104A、共振器スペーサー層105、反射層106、選択酸化層107およびコンタクト層108のうち、共振器スペーサー層105のみがInを含むとして説明したが、実施の形態6においては、これに限らず、共振器スペーサー層103EのみがInを含むようにしてもよく、活性層104AのみがInを含むようにしてもよい。
そして、共振器スペーサー層103EのみがInを含む場合、共振器スペーサー層103Eは、メサ構造体を形成するときの面内方向におけるエッチング深さの差を吸収する「吸収層」を構成し、メサ構造体の底面は、共振器スペーサー層103Eの途中に位置する。
また、活性層104AのみがInを含む場合、活性層104Aは、メサ構造体を形成するときの面内方向におけるエッチング深さの差を吸収する「吸収層」を構成し、メサ構造体の底面は、活性層104Aの途中に位置する。
次に、メサ構造体を形成するためのエッチングをInを含む層で停止させて作製した面発光レーザアレイの出力特性について説明する。図24は、実験に用いた面発光レーザ素子の断面図である。また、図25は、実験に用いた比較用の面発光レーザ素子の断面図である。
図24に示す断面図は、図14および図15に示す面発光レーザ素子1Aの反射層102のうち、活性層104に近い3周期分の低屈折率層(=AlAs)の膜厚を3λ/4に設定したものであり、その他は、面発光レーザ素子1Aと同じである。
また、図25に示す断面図は、面発光レーザ素子1Aの反射層102を、30.5周期の[n−Al0.3Ga0.7As/n−AlAs]と10周期の[n−Al0.3Ga0.7As/n−Al0.9Ga0.1As]とからなる反射層に代えたものである。そして、n−Al0.3Ga0.7As、n−AlAsおよびn−Al0.9Ga0.1Asの各々は、λ/4の膜厚を有する。
図26は、実験結果を示す光出力と電流との関係図である。図26において、縦軸は、光出力を表し、横軸は、電流を表す。また、曲線k9は、この発明による面発光レーザ素子の光出力と電流との関係を示し、曲線k10は、比較用の面発光レーザ素子の光出力と電流との関係を示す。なお、実験は、光出射部の面積が16μm2である面発光レーザ素子を用い、20℃における連続光(CW)を観測することにより行なわれた。
図26に示す実験結果から明らかなように、この発明による面発光レーザ素子の光出力の飽和値が比較用の面発光レーザ素子の光出力の飽和値よりも高電流値側へシフトし、高出力が得られている。これは、この発明による面発光レーザアレイにおいては、複数の面発光レーザ素子1〜32のメサ構造体を形成するためのエッチングをInを含む層で停止し、素子配置部120におけるエッチング深さと平坦部130におけるエッチング深さとの差を小さくしたことによって、反射層102の低屈折率層1021を構成するAlAsの露出を防止し、反射層102のAlAsが酸化されるのを防止した結果、活性層104で発生した熱の基板101側への放熱が良好になり、素子動作時の素子の温度上昇が抑制されたためである。
このように、メサ構造体を形成するときの基板101の面内方向DR1におけるエッチング深さの差を吸収する吸収層中にメサ構造体の底面を位置させる構成を採用することによって、面発光レーザ素子の出力特性、引いては、面発光レーザアレイの出力特性を向上できることが実験的に実証された。
なお、上述した実施の形態1から実施の形態6においては、反射層102の低屈折率層1021は、AlAsからなると説明したが、この発明においては、これに限らず、低屈折率層1021は、一般的には、AlxGa1−xAs(0.9≦x≦1)から構成されていればよい。
また、この発明による面発光レーザアレイは、4行×8列以外の2次元に配置された複数の面発光レーザ素子を備えるものであってもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。