以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の偏光板は、偏光子の片面に少なくとも一方向に延伸された環状オレフィン系樹脂フィルムを有し、反対側の面に可塑剤を含有するセルロースエステルフィルムが積層された偏光板であり、該セルロースエステルフィルムの厚み方向における可塑剤含有量がフィルム中の平均可塑剤含有量に対して偏光子に接する側が少なくなるような分布を有し、かつ該セルロースエステルフィルムの偏光子に接しない側にハードコート層を有することを特徴とする。本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討した結果、片側に環状オレフィン系樹脂フィルムを貼合する偏光子の場合、反対側の面に貼合するセルロースエステルフイルムとして、柔軟材若しくは水分量調整材として機能する可塑剤の含有量を調整することで、偏光板の平面性、打ち抜き特性が改善されることを見出し本発明を成すに至った次第である。
以下、本発明を各要素毎に詳細に説明する。
(偏光板)
本発明に係る偏光板は、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着配向させた偏光フィルムの両面に、保護フィルムを貼合したものである。偏光フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂は通常、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニル及びこれと共重合可能な他の単量体の共重合体などが例示される。酢酸ビニルに共重合される他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類などが挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%、好ましくは98〜100モル%の範囲である。このポリビニルアルコール系樹脂は更に変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども使用し得る。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1000〜10000、好ましくは1500〜10000の範囲である。
偏光板は通常、このようなポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色してヨウ素や二色性染料を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、ホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程、及びこれらの工程が施されて二色性色素が吸着配向された一軸延伸ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに保護フィルムを貼合する工程を経て製造される。一軸延伸は、二色性色素による染色の前に行ってもよいし、二色性色素による染色と同時に行ってもよいし、二色性色素による染色の後に行ってもよい。一軸延伸を二色性色素による染色後に行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。またもちろん、これらの複数の段階で一軸延伸を行うことも可能である。一軸延伸するには、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤で膨潤した状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常4〜8倍程度である。
ポリビニルアルコール樹脂フィルムを二色性色素で染色するには、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、二色性色素を含有する水溶液に浸漬すればよい。ここでいう二色性色素は、具体的にはヨウ素または二色性染料である。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は通常、水100質量部あたり0.01〜0.5質量部程度であり、ヨウ化カリウムの含有量は通常、水100質量部あたり0.5〜10質量部程度である。この水溶液の温度は、通常20〜40℃程度であり、また、この水溶液への浸漬時間は、通常30〜300秒程度である。
一方、二色性色素として二色性染料を用いる場合は通常、水溶性二色性染料を含む水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性染料の含有量は通常、水100質量部あたり1×10-3〜1×10-2質量部程度である。この水溶液は、硫酸ナトリウムなどの無機塩を含有していてもよい。この水溶液の温度は、通常20〜80℃程度であり、また、この水溶液への浸漬時間は、通常30〜300秒程度である。
二色性色素による染色後のホウ酸処理は、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液に浸漬することにより行われる。ホウ酸水溶液におけるホウ酸の含有量は通常、水100質量部あたり2〜15質量部程度、好ましくは5〜12質量部程度である。二色性色素としてヨウ素を用いる場合には、このホウ酸水溶液はヨウ化カリウムを含有するのが好ましい。ホウ酸水溶液におけるヨウ化カリウムの含有量は通常、水100質量部あたり2〜20質量部程度、好ましくは5〜15質量部である。ホウ酸水溶液への浸漬時間は、通常100〜1,200秒程度、好ましくは150〜600秒程度、更に好ましくは200〜400秒程度である。またホウ酸水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50〜85℃である。
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬することにより行われる。水洗後は乾燥処理が施されて、偏光フィルムが得られる。水洗処理における水の温度は、通常5〜40℃程度であり、浸漬時間は、通常2〜120秒程度である。その後に行われる乾燥処理は通常、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行われる。乾燥温度は、通常40〜100℃である。乾燥処理における処理時間は、通常120秒〜600秒程度である。
偏光フィルムの幅は特に制限はないが、後述する保護フィルムの幅と同幅が好ましく、具体的には1.4m以上のフィルム幅が好ましく、特に1.4m〜4mが好ましい。
かくして得られる偏光フィルムは、通常の偏光フィルムと同様、両面に保護フィルムを積層して偏光板とされる。
その際、積層するフィルムは、短冊のシート状のものでよいし、ロール状のものでもよい。更には、それぞれの組み合わせであっても良い。ロール状のもの同士であればロール トゥ ロールで積層出来ることから生産性に優れるため好ましい。
本発明の偏光板においては、環状オレフィン系樹脂フィルムからなる保護フィルム側に粘着剤層を付与して、粘着剤付き偏光板とするのが好ましい。粘着剤としては、アクリル酸系、メタクリル酸系、ブチルゴム系、シリコーン系などのベースポリマーを用いたものが使用出来る。特に限定されるものではないが、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルのような(メタ)アクリル酸系ベースポリマーや、これらの(メタ)アクリル酸エステルを二種以上用いた共重合系ベースポリマーが好適に用いられる。粘着剤は通常、これらのベースポリマー中に極性モノマーが共重合されており、かかる極性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートのような、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基などを有するモノマーを挙げることが出来る。架橋剤については、2価または多価金属イオンとカルボン酸金属塩を生成するもの、ポリイソシアネート化合物とアミド結合を形成するものなどが挙げられ、これらの化合物が架橋剤として1種または2種以上、ベースポリマーに混合して用いられる。一般的な粘着剤層の厚みは2〜50μm程度である。粘着剤層を偏光板に付与する場合、状況によってコロナ処理などの表面処理を偏光板の保護フィルム表面に施してもよい。
環状オレフィン系樹脂フィルムを貼合した面とは反対の面には、可塑剤を含有するセルロースエステルフィルムを積層する。セルロースエステルフィルムは、偏光子との貼合に先立って、表面をアルカリ水溶液でケン化しておくことが望ましい。セルロースエステルフィルムの厚みは、通常30〜200μm、好ましくは30〜120μm、更に好ましくは30〜80μmである。偏光フィルムとこちら側の保護フィルムとの貼合にも、通常は光学的に等方性の接着剤が用いられ、かかる接着剤としては、ポリビニルアルコール系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤などが挙げられる。
(環状オレフィン系樹脂フィルム)
次に、本発明に係る偏光子の片面に貼合される、少なくとも一方向に延伸された環状オレフィン系樹脂フィルムについて説明する。
本発明に用いられる環状オレフィン系樹脂は脂環式構造を含有する重合体樹脂からなるものである。
好ましい環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合または共重合した樹脂である。環状オレフィンとしては、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、エチルテトラシクロドデセン、エチリデンテトラシクロドデセン、テトラシクロ〔7.4.0.110,13.02,7〕トリデカ−2,4,6,11−テトラエンなどの多環構造の不飽和炭化水素及びその誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン、シクロヘプテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの単環構造の不飽和炭化水素及びその誘導体等が挙げられる。これら環状オレフィンには置換基として極性基を有していてもよい。極性基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシル基、エポキシ基、グリシジル基、オキシカルボニル基、カルボニル基、アミノ基、エステル基、カルボン酸無水物基などが挙げられ、特に、エステル基、カルボキシル基またはカルボン酸無水物基が好適である。
好ましい環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィン以外の単量体を付加共重合したものであってもよい。付加共重合可能な単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテンなどのエチレンまたはα−オレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどのジエン等が挙げられる。
環状オレフィンは、付加重合反応或いはメタセシス開環重合反応によって得られる。重合は触媒の存在下で行われる。付加重合用触媒として、例えば、バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる重合触媒などが挙げられる。開環重合用触媒として、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金などの金属のハロゲン化物、硝酸塩またはアセチルアセトン化合物と、還元剤とからなる重合触媒;或いは、チタン、バナジウム、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物またはアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる重合触媒などが挙げられる。重合温度、圧力等は特に限定されないが、通常−50℃〜100℃の重合温度、0〜490N/cm2の重合圧力で重合させる。
本発明に用いる環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合または共重合させた後、水素添加反応させて、分子中の不飽和結合を飽和結合に変えたものであることが好ましい。水素添加反応は、公知の水素化触媒の存在下で、水素を吹き込んで行う。水素化触媒としては、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウムの如き遷移金属化合物/アルキル金属化合物の組み合わせからなる均一系触媒;ニッケル、パラジウム、白金などの不均一系金属触媒;ニッケル/シリカ、ニッケル/けい藻土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/けい藻土、パラジウム/アルミナの如き金属触媒を担体に担持してなる不均一系固体担持触媒などが挙げられる。
或いは、環状オレフィン系樹脂として、下記のノルボルネン系ポリマーも挙げられる。ノルボルネン系ポリマーは、ノルボルネン骨格を繰り返し単位として有していることが好ましく、その具体例としては、特開昭62−252406号公報、特開昭62−252407号公報、特開平2−133413号公報、特開昭63−145324号公報、特開昭63−264626号公報、特開平1−240517号公報、特公昭57−8815号公報、特開平5−39403号公報、特開平5−43663号公報、特開平5−43834号公報、特開平5−70655号公報、特開平5−279554号公報、特開平6−206985号公報、特開平7−62028号公報、特開平8−176411号公報、特開平9−241484号公報等に記載されたものが好ましく利用出来るが、これらに限定されるものではない。また、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明においては、前記ノルボルネン系ポリマーの中でも、下記構造式(I)〜(IV)のいずれかで表される繰り返し単位を有するものが好ましい。
前記構造式(I)〜(IV)中、A、B、C及びDは、各々独立して、水素原子または1価の有機基を表す。
また、前記ノルボルネン系ポリマーの中でも、下記構造式(V)または(VI)で表される化合物の少なくとも1種と、これと共重合可能な不飽和環状化合物とをメタセシス重合して得られる重合体を水素添加して得られる水添重合体も好ましい。
前記構造式中、A、B、C及びDは、各々独立して、水素原子または1価の有機基を表す。
ここで、上記A、B、C及びDは特に限定されないが、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、一価の有機基、または、少なくとも2価の連結基を介して有機基が連結されてもよく、これらは同じであっても異なっていてもよい。また、AまたはBとCまたはDは単環または多環構造を形成してもよい。ここで、上記少なくとも2価の連結基とは、酸素原子、イオウ原子、窒素原子に代表されるヘテロ原子を含み、例えばエーテル、エステル、カルボニル、ウレタン、アミド、チオエーテル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、上記連結基を介し、上記有機基は更に置換されてもよい。
また、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィン、及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン、及びこれらの誘導体;1、4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが用いられる。これらの中でも、α−オレフィン、特にエチレンが好ましい。
これらの、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーは、それぞれ単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用することが出来る。ノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとを付加共重合する場合は、付加共重合体中のノルボルネン系モノマー由来の構造単位と共重合可能なその他のモノマー由来の構造単位との割合が、質量比で通常30:70〜99:1、好ましくは50:50〜97:3、より好ましくは70:30〜95:5の範囲となるように適宜選択される。
合成したポリマーの分子鎖中に残留する不飽和結合を水素添加反応により飽和させる場合には、耐光劣化や耐候劣化性などの観点から、水素添加率を90%以上、好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上とする。
このほか、本発明で用いられる環状オレフィン系樹脂としては、特開平5−2108号公報段落番号[0014]〜[0019]記載の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂、特開2001−277430号公報段落番号[0015]〜[0031]記載の熱可塑性ノルボルネン系ポリマー、特開2003−14901号公報段落番号[0008]〜[0045]記載の熱可塑性ノルボルネン系樹脂、特開2003−139950号公報段落番号[0014]〜[0028]記載のノルボルネン系樹脂組成物、特開2003−161832号公報段落番号[0029]〜[0037]記載のノルボルネン系樹脂、特開2003−195268号公報段落番号[0027]〜[0036]記載のノルボルネン系樹脂、特開2003−211589号公報段落番号[0009]〜[0023]脂環式構造含有重合体樹脂、特開2003−211588号公報段落番号[0008]〜[0024]記載のノルボルネン系重合体樹脂若しくはビニル脂環式炭化水素重合体樹脂などが挙げられる。
具体的には、日本ゼオン(株)製ゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製アートン、三井化学(株)製アペル(APL8008T、APL6509T、APL6013T、APL5014DP、APL6015T)などが好ましく用いられる。
本発明で使用される環状オレフィン系樹脂の分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法で測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常、5000〜500000、好ましくは8000〜200000、より好ましくは10000〜100000の範囲である時に、成形体の機械的強度、及び成形加工性とが高度にバランスされて好適である。
また、環状オレフィン系樹脂100質量部に対して、低揮発性の酸化防止剤を0.01〜5質量部の割合で配合すると、成形加工時のポリマーの分解や着色を効果的に防止することが出来る。
酸化防止剤としては、20℃における蒸気圧が10-5Pa以下、特に好ましくは10-8Pa以下の酸化防止剤が望ましい。蒸気圧が10-5Paより高い酸化防止剤は、押出成形する場合に発泡したり、また、高温にさらされた時に成形品の表面から酸化防止剤が揮散するという問題が起こる。
本発明で使用出来る酸化防止剤としては、例えば、次のようなものを挙げることが出来、これらのうちの一種または数種を組み合わせて用いてもよい。
ヒンタードフェノール系:2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−α−メトキシ−p−ジメチル−フェノール、2,4−ジ−t−アミルフェノール、t−ブチル−m−クレゾール、4−t−ブチルフェノール、スチレン化フェノール、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、4,4′−ビスフェノール、4,4′−ビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレン−ビス−(4−メチル−6−α−メチルシクロヘキシルフェノール)、4,4′−メチレン−ビス−(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−メチレン−ビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、1,1′−メチレン−ビス−(2,6−ジ−t−ブチルナフトール)、4,4′−ブチリデン−ビス−(2,6−ジ−t−ブチル−メタ−クレゾール)、2,2′−チオ−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ジ−o−クレゾールスルフィド、2,2′−チオ−ビス−(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−チオ−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−チオ−ビス−(2,3−ジ−sec−アミルフェノール)、1,1′−チオ−ビス−(2−ナフトール)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルエーテル、1,6−ヘキサンジオール−ビス−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,2−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,3,5−トリメチル−2,4,6,−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシジェニル)プロピオネート〕等。
アミノフェノール類:ノルマルブチル−p−アミノフェノール、ノルマルブチロイル−p−アミノフェノール、ノルマルペラゴノイル−p−アミノフェノール、ノルマルラウロイル−p−アミノフェノール、ノルマルステアロイル−p−アミノフェノール、2、6−ジ−t−ブチル−α−ジメチル、アミノ−p−クレゾール等。
ハイドロキノン系:ハイドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノン、ハイドロキノンメチルエーテル、ハイドロキノンモノベンジルエーテル等。
ホスファイト系トリホスファイト、トリス(3,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)フォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンフォスファナイト、2−エチルヘキシルオクチルフォスファイト等。
その他:2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩、ジカテコールボレート−ジ−o−トリルグアニジン塩、ニッケル−ジメチルジチオカーバメイト、ニッケル−ペンタメチレンンジチオカルバネート、メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール亜鉛塩等。
環状オレフィン系樹脂フィルムは、必要に応じて、プラスチックフィルムに一般的に配合することが出来る添加剤を含有していてもよい。そのような添加剤としては、熱安定剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、及び充填剤などが挙げられ、その含有量は本発明の目的を損ねない範囲で選択することが出来る。
〈溶融流延法〉
環状オレフィン系樹脂フィルムの成形方法は格別な限定はなく、加熱溶融成形法、溶液流延法のいずれも用いることが出来る。加熱溶融成形法は、更に詳細に、押し出し成形法、プレス成形法、インフレーション成形法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類出来るが、これらの方法の中でも、機械強度、表面精度等に優れたフィルムを得るためには、押し出し成形法、インフレーション成形法、及びプレス成形法が好ましく、押し出し成形法が最も好ましい。成形条件は、使用目的や成形方法により適宜選択されるが、加熱溶融成形法による場合は、シリンダー温度が、通常150〜400℃、好ましくは200〜350℃、より好ましくは230〜330℃の範囲で適宜設定される。樹脂温度が過度に低いと流動性が悪化し、フィルムにヒケやひずみを生じ、樹脂温度が過度に高いと樹脂の熱分解によるボイドやシルバーストリークが発生したり、フィルムが黄変するなどの成形不良が発生するおそれがある。フィルムの厚みは、通常5〜300μm、好ましくは10〜200μm、より好ましくは20〜100μmの範囲である。厚みが薄過ぎる場合は、積層時の取り扱いが困難となり、厚過ぎる場合は、積層後の乾燥時間が長くなって生産性が低下する。
フィルムの幅は1.4m以上が生産性の点から好ましい。より好ましくは1.4〜4mの範囲である。
環状オレフィン系樹脂フィルムは、その表面の濡れ張力が、好ましくは40mN/m以上、より好ましくは50mN/m以上、更に好ましくは55mN/m以上である。表面の濡れ張力が上記範囲にあると、フィルムと偏光膜との接着強度が向上する。表面の濡れ張力を調整するために、例えば、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、オゾンの吹き付け、紫外線照射、火炎処理、化学薬品処理、その他公知の表面処理を施すことが出来る。
延伸前のシートは厚さが50〜500μm程度の厚さが必要であり、厚さムラは小さいほど好ましく、全面において±8%以内、好ましくは±6%以内、より好ましくは±4%以内である。
上記環状オレフィン系樹脂フィルムを本発明に係る偏光板保護フィルム(特に位相差フィルム)にするには、シートを少なくとも一軸方向に延伸することにより得られる。尚、実質的な一軸延伸、例えば、分子の配向に影響のない範囲で延伸した後、分子を配向させるべく一軸方向に延伸する二軸延伸であってもよい。好ましくは二軸延伸であり、延伸するには前記テンター装置等を用いることが好ましい。
延伸倍率は1.1〜10倍、好ましくは1.3〜8倍であり、この範囲で所望のリターデーションとなるようにすればよい。延伸倍率が低過ぎるとリターデーションの絶対値が上がらずに所定の値とならず、高過ぎると破断することもある。
延伸は、通常、シートを構成する樹脂のTg〜Tg+50℃、好ましくはTg〜Tg+40℃の温度範囲で行われる。延伸温度が低過ぎると破断し、高過ぎると分子配向しないため、所望の位相差フィルムが得ることが困難になる。
この様にして得たフィルムは、延伸により分子が配向されて、所望の大きさのリターデーションを持たせることが出来る。位相差フィルムとして用いる場合、本発明において好ましいリターデーション値は、Rtが70〜400nm、Roが30〜300nmであり、更に好ましいRoは30〜70nmである。
リターデーションは、延伸前のシートのリターデーションと延伸倍率、延伸温度、延伸配向フィルムの厚さにより制御することが出来る。延伸前のシートが一定の厚さの場合、延伸倍率が大きいフィルムほどリターデーションの絶対値が大きくなる傾向があるので、延伸倍率を変更することによって所望のリターデーションの位相差フィルムを得ることが出来る。
リターデーションのバラツキは小さいほど好ましく、位相差フィルムとしては、波長550nmのリターデーションのバラツキが通常±10nm以内、好ましくは±5nm以下、より好ましくは±1nm以下の小さなものである。
リターデーションの面内でのバラツキや厚さムラは、それらの小さな延伸前のシートを用いる他、延伸時にシートに応力が均等にかかるようにすることにより、小さくすることが出来る。そのためには、均一な温度分布下、好ましくは±5℃以内、更に好ましくは±2℃以内、特に好ましくは±0.5℃以内に温度を制御した環境で延伸することが望ましい。
(可塑剤分布)
本発明は、偏光子の片側の面に、厚み方向における可塑剤含有量がフィルムの平均可塑剤含有量に対して偏光子に接する側が少なくなるような分布を有しているセルロースエステルフィルムを積層することが特徴である。好ましくは、平均可塑剤含有量1.0に対して、偏光子に接する側が0〜0.9の比率であることが好ましく、0.5〜0.9が更に好ましく、0.6〜0.8が特に好ましい。
フィルムの厚み方向で可塑剤含有量を調整する手段は特に限定はされないが、加熱処理、共流延法または逐次流延法により行うことが好ましい。各方法について以下説明する。
〈加熱処理〉
セルロースエステルフィルムを100〜160℃の温度で加熱することで、フィルム厚み方向の可塑剤分布をつけることが出来る。
加熱温度は、110〜150℃の範囲であることが更に好ましい。また、加熱温度は、セルロースエステルフィルムの軟化点との関係で、軟化点±20℃の範囲内であることが好ましく、軟化点±10℃の範囲内であることが更に好ましい。セルロースエステルフィルムの加熱時間は、1秒〜60分の範囲内であることが好ましく、1分〜30分の範囲内であることが更に好ましく、5分〜20分の範囲内であることが最も好ましい。
加熱手段については、特に制限はなく、オーブンやホットプレートなどの様々な加熱手段を利用出来る。ただし、一般に揮発性を有する可塑剤を除去するために加熱するのであるから、フィルムの表面が気相に開放された状態で加熱することが好ましい。加熱処理は、セルロースエステルフィルムを製造してから、使用するまでの間に実施すればよい。好ましくは、加熱処理をセルロースエステルフィルムの製造方法の最後の工程として実施することである。
以上の加熱処理により、セルロースエステルフィルムの表面部分の可塑剤の量を選択的に減少させることが出来る。本発明の加熱処理により、表面部分の可塑剤の量を選択的に10〜65%程度減少させることが出来る。一方、セルロースエステルフィルムに含まれる可塑剤の総量は、1〜5%程度しか減少しない。
尚、フィルムの厚み方向の可塑剤量は、例えばナイフなどを用いてフィルムの表面から10μm程度削ってガスクロマトグラフィー等の方法によって定量出来る。
〈共流延法、逐次流延法〉
セルロースエステルフィルムの厚み方向で可塑剤含有量の分布を有する一例として、セルロースエステルフィルムの製造工程において流延支持体側(B面側)の可塑剤含有量が支持体とは反対側である気相側(A面側)の可塑剤含有量より少ない場合について説明する。
この場合、最も簡易な方法としては、セルロースエステルフィルムに可塑剤分布をつけるために、支持体側(B面側)に用いられるドープの可塑剤濃度が支持体とは反対側である気相側(A面側)のドープの可塑剤濃度より少ないドープを用いて流延製膜することである。ここで可塑剤濃度とは固形分あたりの可塑剤量をいう。
2種のドープを使用する場合、A面用とB面用に分けて使用し、B面ドープ可塑剤濃度をA面ドープ可塑剤濃度よりも低くすることによって達成される。可塑剤濃度はA面では3〜20質量%であり、B面は0〜15質量%が好ましく、この範囲においてB面可塑剤濃度<A面可塑剤濃度となるようすることが出来る。更に好ましくはA面可塑剤濃度は5〜15質量%であり、B面は1〜10質量%が好ましい。本発明では、B面側が偏光子に接する側となり、A面側はハードコート層が設けられている構成になる。
B面のドープに可塑剤を添加しない場合であっても、支持体上に流延された際に、B面のドープに隣接して流延されたドープから可塑剤が拡散、移動するため、B面表層の平均可塑剤濃度は増加する傾向がある。その結果、実際の光学フィルムの表層に含まれる平均可塑剤濃度の差はドープに添加した可塑剤濃度の差より縮まる傾向がある。光学フィルムの両表層の平均可塑剤濃度の差は0.1〜20質量%であることが好ましく、更に好ましくは0.5〜15質量%であることが好ましく、更に好ましくは2〜10質量%であることが好ましい。ここで表層とはフィルムの表面から深さ10μmまでの領域をいう。
流延時の膜厚は任意に設定可能であるが、A面のドープ(A面表層を形成)とB面ドープ(B面表層を形成)の乾燥後の膜厚比は1対100〜100対1の範囲であることが好ましい。更に好ましくは1対20〜20対1であり、1対1とすることも出来る。一方のドープを薄く流延する場合は薄い方のウェット膜厚(hw)を0.5〜150μm、乾燥膜厚で0.1〜30μmとなるように流延することが好ましく、更に好ましくはウェット膜厚(hw)2.5〜125μm、乾燥膜厚で0.5〜25μm、更に好ましくはウェット膜厚(hw)25〜100μm、乾燥膜厚で5〜20μmとなるように流延することが好ましい。
3種のドープを使用する場合は、A面のドープ(主にA面表層を形成)とB面ドープ(主にB面表層を形成)、それに挟まれるフィルム内部(内部層ともいう)を形成するためのドープの乾燥後の膜厚比も任意に設定することが出来る。ここでフィルム内部層とはフィルムの表層以外の部分をいう。内部層とA面表層若しくはB面表層の乾燥後の膜厚比は1対100〜100対1の範囲であることが好ましく、更に好ましくは1対20〜20対1であり、1対1とすることも出来る。フィルム内部と表層との膜厚比は1000対1〜1対10であることが好ましく、100対1〜1対1がより好ましく、更に好ましくは10対1〜2対1が好ましい。
内部層の可塑剤含有量に対して、A面表層若しくはB面表層の可塑剤含有量を少なくすることも好ましい。内部層の可塑剤含有量は3〜20質量%が好ましく、偏光子に接する側の表層は0〜15質量%であることが好ましい。
また、表層の乾燥膜厚も任意に設定出来るが、0.5〜30μmであることが好ましく、5〜20μmであることが更に好ましい。また、A面表層とB面表層の膜厚は同じであっても違っていても良い。例えばA面表層を10μmとし、B面表層を20μmとすることも可能である。
4種以上のドープを使用して機能別に分離された積層構造のフィルムを製造することも出来る。
本発明において用いられる2種以上のドープを同時に支持体上に流延してもよいし、別々に支持体上に流延してもよい。別々に流延する逐次流延法の場合は、支持体側のドープを先に流延して支持体上である程度乾燥させた後に、その上に重ねて流延することが出来る。また、3種以上のドープを使用する場合、同時流延(共流延ともいう)と逐次流延を適宜組み合わせて流延し、積層構造のフィルムを作製することも出来る。共流延若しくは逐次流延によって製膜されるこれらの方法は、乾燥されたフィルム上に塗布する方法とは異なり、積層構造の各層の境界が不明確になり、断面の観察で積層構造が明確には分かれないことがあるという特徴があり、各層間の密着性を向上させる効果がある。
この方法で製造出来るフィルムの乾燥膜厚としては特に制限はないが40〜250μmのフィルムの製造で好ましく用いることが出来る。特に好ましくは40〜80μmであり、更に好ましくは40〜75μmで好ましく用いることが出来る。
フィルムの幅は1.4m以上が生産性の点から好ましい。より好ましくは1.4〜4mの範囲である。
このようにして、可塑剤を有するセルロースエステルフィルムにおいて、B面表層の平均可塑剤濃度がA面表層の平均可塑剤濃度より少ない光学フィルムを得ることが出来、このように作製したフィルムを偏光子の片側の面に積層することにより、本発明の偏光板を得ることが出来る。
また、本発明の光学フィルムでは、内部の可塑剤量を多くすることによって、より優れたフィルムの透湿性を確保することが出来る。更に、本発明の別の実施態様では、可塑剤を有する光学フィルムにおいて、少なくともフィルム内部に凝固点が25℃未満の可塑剤を含有する領域を有し、表層に凝固点が25℃以上の可塑剤を含有することによって、剥離性に優れかつ透湿性が少なく、製造工程での汚染も少ない光学フィルムを得ることも出来る。
(可塑剤)
本発明のセルロースエステルフィルムに用いることの出来る可塑剤としては特に限定されないが、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、多価カルボン酸系可塑剤
等が使用出来るが、好ましくは、多価アルコールエステル系可塑剤、フタル酸エステル、クエン酸エステル、脂肪酸エステル、グリコレート系可塑剤、多価カルボン酸エステル等から選択される可塑剤を少なくとも1種含むことが好ましい。そのうち、少なくとも1種は多価アルコールエステル系可塑剤であることが好ましい。
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる可塑剤であり、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
本発明に用いられる多価アルコールは次の一般式(1)で表される。
一般式(1) R1−(OH)n
但し、R1はn価の有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性、及び/またはフェノール性水酸基を表す。
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることが出来るが、本発明はこれらに限定されるものではない。アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることが出来る。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
本発明の多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることが出来る。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることが出来るが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることが出来る。炭素数は1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることが出来る。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることが出来る。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタレンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることが出来る。特に安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが更に好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
以下に、多価アルコールエステルの具体的化合物を例示する。
グリコレート系可塑剤は特に限定されないが、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が好ましく用いることが出来る。アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
フタル酸エステル系可塑剤としては、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が挙げられる。
クエン酸エステル系可塑剤としては、クエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等が挙げられる。
脂肪酸エステル系可塑剤として、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。
多価カルボン酸エステル系可塑剤も好ましく用いることが出来る。具体的には特開2002−265639号公報の段落番号[0015]〜[0020]記載の多価カルボン酸エステルを可塑剤の一つとして添加することが好ましい。
リン酸エステル系可塑剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。
セルロースエステルフィルム中の可塑剤の総含有量は、固形分総量に対し、5〜30質量%含有させることが好ましい。更に5〜20質量%が好ましく、6〜16質量%がより好ましく、特に好ましくは8〜13質量%である。
多価アルコールエステル系可塑剤は1〜12質量%含有することが好ましく、特に3〜11質量%含有することが好ましい。
また、積層構造のフィルムでは特に内部に紫外線吸収剤を含有させることが好ましく、工程汚染などを防止するのに有効である。この場合、表層に含まれる紫外線吸収剤を内部に含ませる紫外線吸収剤よりも少なくすることが好ましく、表層には紫外線吸収剤を含ませないことも出来る。具体的には表層に含ませる紫外線吸収剤と内部に含ませる紫外線吸収剤の比は0対10〜9対10であることが好ましく、更に好ましくは1対10〜7対10であり、更に好ましくは1対10〜5対10であり、更に好ましくは1対10〜3対10である。フィルムの紫外線吸収能は380nmで透過率10%以下であることが望まれる。より好ましくは透過率6%未満、更に好ましくは透過率0〜4%未満であることが望ましい。しかしながら本発明の光学フィルムでは、単一の層からなるフィルムと比較して、内部に含ませる紫外線吸収剤の添加量を多くすることが出来る。一般的に紫外線吸収剤は溶解性に乏しいものが多いが、25℃で液体である可塑剤が存在すると溶解し易くなることが見い出された。そのため、内部に25℃で液体である可塑剤を含有する場合、紫外線吸収剤を十分に添加し、余裕をもって溶解させることが可能となり、十分な紫外線吸収能も有するフィルムを提供することが可能となる。更に、20℃で液体である紫外線吸収剤と25℃で液体である可塑剤を内部に含ませることによって、より高い濃度の紫外線吸収剤と可塑剤を含有させることが出来、フィルムに優れた透湿性と紫外線吸収能を付与することが可能となり、しかも、これらの添加物の析出による工程汚染も少なくなるという効果も得られた。ここで紫外線吸収剤の濃度は固形分あたりの紫外線吸収剤量をいう。
本発明に用いられる紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。
本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては下記一般式(1)で示される化合物が好ましく用いられる。
式中、R1、R2、R3、R4及びR5は同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシル基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、モノ若しくはジアルキルアミノ基、アシルアミノ基または5〜6員の複素環基を表し、R4とR5は閉環して5〜6員の炭素環を形成してもよい。
以下に本発明に有用な紫外線吸収剤の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
UV−1:2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−2:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−3:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−4:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−5:2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−6:2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)
UV−7:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
また本発明に有用な紫外線吸収剤の一つであるベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては下記一般式(2)で表される化合物が好ましく用いられる。
式中、Yは水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、及びフェニル基を表し、これらのアルキル基、アルケニル基及びフェニル基は置換基を有していてもよい。Aは水素原子、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、シクロアルキル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基または−CO(NH)n−1−D基を表し、Dはアルキル基、アルケニル基または置換基を有していてもよいフェニル基を表す。m及びnは1または2を表す。
上記において、アルキル基としては例えば、炭素数24までの直鎖または分岐の脂肪族基を表し、アルコキシ基としては例えば、炭素数18までのアルコキシ基で、アルケニル基としては例えば、炭素数16までのアルケニル基で例えばアリル基、2−ブテニル基などを表す。また、アルキル基、アルケニル基、フェニル基への置換分としてはハロゲン原子、例えばクロール、ブロム、フッ素原子など、ヒドロキシ基、フェニル基、(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子などを置換していてもよい)などが挙げられる。
以下に一般式(2)で表されるベンゾフェノン系化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
UV−8 :2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
UV−9 :2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
UV−10:2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
UV−11:ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
本発明では少なくとも一方の表層にはマット剤が添加されていることが好ましく、滑り性確保のためには両方に添加されていることがより好ましい。動摩擦係数としてはフィルム表面と裏面間の動摩擦係数で、JIS−K−7125(1987)に準じて測定した場合に、2以下であることが好ましく、1.5以下であることが更に好ましく、1.0以下であることが更に好ましく、0.5以下であることが更に好ましく、0.2以下であることが更に好ましい。マット剤添加量を増やすことによって動摩擦係数は低くすることが出来るが、フィルムのヘイズ値が増加する傾向があるため、添加量は両者のバランスで決定される。フィルム内部用ドープにはマット剤が添加されていてもかまわないが、ヘイズを減らす為には添加量は少ないか、含まないことが望まれる。
フィルムが滑りにくいとフィルム同士がブロッキングし、取扱性に劣る場合がある。本発明に係るフィルムには、二酸化ケイ素、二酸化チタン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋アクリル樹脂等の架橋高分子、及び有機物等のマット剤を含有させることが好ましい。
また、フィルムのヘイズを低下するため、二酸化ケイ素のような微粒子は有機物によって表面処理されていることが好ましい。表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサン等が挙げられる。微粒子の平均径が大きい方がマット効果は大きく、透明性は平均径の小さい方が優れるため、微粒子の一次粒子の平均径は0.5μm以下、好ましくは5〜50nm、より好ましくは7〜14nmである。二酸化ケイ素の微粒子としては日本アエロジル(株)製のAEROSIL 200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812、OX50、TT600などが挙げられ、好ましくはAEROSIL R972V、R974、R202、R812などが挙げられる。このマット剤の配合はフィルムのヘイズが0.6%以下、動摩擦係数が0.5以下となるように配合することが好ましい。この目的で用いるマット剤の量は、セルロースエステルに対し0.001〜0.3%が好ましい。
本発明の各ドープには必要に応じて他の添加物を添加することが可能である。例えば、赤外線吸収染料をフィルム内部用ドープに添加することも出来る。必要に応じて、表層若しくは内部に帯電防止剤を添加することも出来る。
本発明のセルロースエステルフィルムは、セルロースエステルが低級脂肪酸エステルであることが好ましい。セルロースエステルの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味し、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等がセルロースの低級脂肪酸エステルの好ましい例として挙げられる。また、上記以外にも、特開平10−45804号、同08−231761号、米国特許第2,319,052号等に記載のセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルを用いることが出来る。上記記載の中でも、特に好ましく用いられるセルロースの低級脂肪酸エステルはセルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートである。更に、ベース強度の観点から、特に重合度250〜400、結合酢酸量が54〜62.5%が好ましく用いられ、更に好ましいのは、結合酢酸量が58〜62.5%のセルローストリアセテートである。本発明に係るセルローストリアセテートは、綿花リンターから合成されたセルローストリアセテートと木材パルプから合成されたセルローストリアセテートのどちらかを単独或いは混合して用いることが出来る。ベルトやドラムからの剥離性が若しくは問題になれば、ベルトやドラムからの剥離性が良い綿花リンターから合成されたセルローストリアセテートを多く使用すれば生産性が高く好ましい。木材パルプから合成されたセルローストリアセテートを混合し用いた場合、綿花リンターから合成されたセルローストリアセテートの比率が40%以上で、剥離性の効果が顕著になるため好ましく、60%以上が更に好ましく、単独で使用することが最も好ましい。
本発明に係るセルロースエステルは、一般的に溶液流延製膜法と呼ばれるセルロースエステル溶解液(ドープ)を、例えば、無限に移送する無端の金属ベルトまたは回転する金属ドラムの流延用支持体上に加圧ダイからドープを流延(キャスティング)し製膜する方法で製造されることが好ましい。
前記これらドープの調製に用いられる有機溶媒としては、セルロースエステルを溶解出来、かつ、適度な沸点であることが好ましく、例えば、メチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセト酢酸メチル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等を挙げることが出来るが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン誘導体、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、アセト酢酸メチル等が好ましい有機溶媒(即ち、良溶媒)として挙げられる。
また、下記の製膜工程に示すように、溶媒蒸発工程において流延用支持体上に形成されたウェブ(ドープ膜)から溶媒を乾燥させる時に、ウェブ中の発泡を防止する観点から、用いられる有機溶媒の沸点としては、30〜80℃が好ましく、例えば、上記記載の良溶媒の沸点は、メチレンクロライド(沸点40.4℃)、酢酸メチル(沸点56.32℃)、アセトン(沸点56.3℃)、酢酸エチル(沸点76.82℃)等である。
上記記載の良溶媒の中でも溶解性に優れるメチレンクロライド或いは酢酸メチルが好ましく用いられる。
上記有機溶媒の他に、0.1質量%〜40質量%の炭素原子数1〜4のアルコールを含有させることが好ましい。特に好ましくは5〜30質量%で前記アルコールが含まれることが好ましい。これらは上記記載のドープを流延用支持体に流延後、溶媒が蒸発を始めアルコールの比率が多くなるとウェブ(ドープ膜)がゲル化し、ウェブを丈夫にし流延用支持体から剥離することを容易にするゲル化溶媒として用いられたり、これらの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒のセルロースエステルの溶解を促進する役割もある。
炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等を挙げることが出来る。
これらの溶媒のうち、ドープの安定性がよく、沸点も比較的低く、乾燥性もよく、かつ毒性がないこと等からエタノールが好ましい。好ましくは、メチレンクロライド70質量%〜95質量%に対してエタノール5質量%〜30質量%を含む溶媒を用いることが好ましい。メチレンクロライドの代わりに酢酸メチルを用いることも出来る。このとき、冷却溶解法によりドープを調製してもよい。また、ドープには水が0.001〜4%程度含有してもよい。
本発明で用いられるセルロースエステルフィルムは少なくとも幅手方向に延伸されたものが好ましく、特に溶液流延工程で残留溶媒量が3質量%〜40質量%である時に幅手方向に1.01倍〜1.5倍に延伸されたものであることが好ましい。より好ましくは幅手方向と長手方向に2軸延伸することであり、残留溶媒料が3質量%〜40質量%である時に幅手方向及び長手方向に、各々1.01倍〜1.5倍に延伸されることが望ましい。この様にすることにより、平面性及び光拡散性に優れた光拡散性フィルムを得ることが出来る。
尚、残留溶媒量は下記の式により表される。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブ(溶媒を含有したセルロースエステルフィルム)の任意時点における質量、NはMのウェブを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。
更に、2軸延伸しナーリング加工をすることによって、長尺状光学フィルムのロール状での保管中の巻き形状の劣化を著しく改善することが出来る。
(ハードコート層)
本発明は、前記セルロースエステルフィルム上にハードコート層が塗設される。ハードコート層として用いられる活性線硬化樹脂層の製造方法について述べる。
本発明のハードコートフィルムにおいては、ハードコート層として活性線硬化樹脂層が好ましく用いられる。
活性線硬化樹脂層とは紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂を主たる成分とする層をいう。活性線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化させてハードコート層が形成される。活性線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する樹脂が好ましい。
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、またはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る。例えば、特開昭59−151110号に記載のものを用いることが出来る。
例えば、ユニディック17−806(大日本インキ(株)製)100部とコロネートL(日本ポリウレタン(株)製)1部との混合物等が好ましく用いられる。
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させると容易に形成されるものを挙げることが出来、特開昭59−151112号に記載のものを用いることが出来る。
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることが出来、特開平1−105738号に記載のものを用いることが出来る。
紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることが出来る。
これら紫外線硬化性樹脂の光反応開始剤としては、具体的には、ベンゾイン及びその誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることが出来る。光増感剤と共に使用してもよい。上記光反応開始剤も光増感剤として使用出来る。また、エポキシアクリレート系の光反応開始剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることが出来る。紫外線硬化樹脂組成物に用いられる光反応開始剤また光増感剤は該組成物100質量部に対して0.1〜15質量部であり、好ましくは1〜10質量部である。
樹脂モノマーとしては、例えば、不飽和二重結合が一つのモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることが出来る。また不飽和二重結合を二つ以上持つモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、前出のトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることが出来る。
本発明において使用し得る紫外線硬化樹脂の市販品としては、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(旭電化(株)製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(広栄化学(株)製);セイカビームPHC2210(S)、PHC X−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(大日精化工業(株)製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(ダイセル・ユーシービー(株)製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(大日本インキ化学工業(株)製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料(株)製);サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(三洋化成工業(株)製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子(株)製);RCC−15C(グレース・ジャパン(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(東亞合成(株)製)等を適宜選択して利用出来る。
また、具体的化合物例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることが出来る。
これらの活性線硬化樹脂層はグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等公知の方法で塗設することが出来る。
紫外線硬化性樹脂を光硬化反応により硬化させ、硬化皮膜層を形成する為の光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用出来る。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることが出来る。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は好ましくは、5〜150mJ/cm2であり、特に好ましくは20〜100mJ/cm2である。
また、活性線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、更に好ましくは幅方向にも張力を付与しながら行うことである。付与する張力は30〜300N/mが好ましい。張力を付与する方法は特に限定されず、バックロール上で搬送方向に張力を付与してもよく、テンターにて幅方向、若しくは2軸方向に張力を付与してもよい。これによって更に平面性が優れたフィルムを得ることが出来る。
紫外線硬化樹脂層組成物塗布液の有機溶媒としては、例えば、炭化水素類(トルエン、キシレン、)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル)、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒の中から適宜選択し、或いはこれらを混合し利用出来る。プロピレングリコールモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)またはプロピレングリコールモノアルキルエーテル酢酸エステル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)等を5質量%以上、より好ましくは5〜80質量%以上含有する上記有機溶媒を用いるのが好ましい。
また、紫外線硬化樹脂層組成物塗布液には、特にシリコン化合物を添加することが好ましい。例えば、ポリエーテル変性シリコーンオイルなどが好ましく添加される。ポリエーテル変性シリコーンオイルの数平均分子量は、例えば、1000〜100000、好ましくは、2000〜50000が適当であり、数平均分子量が1000未満では、塗膜の乾燥性が低下し、逆に、数平均分子量が100000を越えると、塗膜表面にブリードアウトしにくくなる傾向にある。
シリコン化合物の市販品としては、DKQ8−779(ダウコーニング社製商品名)、SF3771、SF8410、SF8411、SF8419、SF8421、SF8428、SH200、SH510、SH1107、SH3749、SH3771、BX16−034、SH3746、SH3749、SH8400、SH3771M、SH3772M、SH3773M、SH3775M、BY−16−837、BY−16−839、BY−16−869、BY−16−870、BY−16−004、BY−16−891、BY−16−872、BY−16−874、BY22−008M、BY22−012M、FS−1265(以上、東レ・ダウコーニングシリコーン社製商品名)、KF−101、KF−100T、KF351、KF352、KF353、KF354、KF355、KF615、KF618、KF945、KF6004、シリコーンX−22−945、X22−160AS(以上、信越化学工業社製商品名)、XF3940、XF3949(以上、東芝シリコーン社製商品名)、ディスパロンLS−009(楠本化成社製)、グラノール410(共栄社油脂化学工業(株)製)、TSF4440、TSF4441、TSF4445、TSF4446、TSF4452、TSF4460(GE東芝シリコーン製)、BYK−306、BYK−330、BYK−307、BYK−341、BYK−344、BYK−361(ビックケミ−ジャパン社製)日本ユニカー(株)製のLシリーズ(例えばL7001、L−7006、L−7604、L−9000)、Yシリーズ、FZシリーズ(FZ−2203、FZ−2206、FZ−2207)等が挙げられ、好ましく用いられる。
これらの成分は基材や下層への塗布性を高める。積層体最表面層に添加した場合には、塗膜の撥水、撥油性、防汚性を高めるばかりでなく、表面の耐擦り傷性にも効果を発揮する。これらの成分は、塗布液中の固形分成分に対し、0.01〜3質量%の範囲で添加することが好ましい。
紫外線硬化性樹脂組成物塗布液の塗布方法としては、前述のものを用いることが出来る。塗布量はウェット膜厚として0.1〜30μmが適当で、好ましくは、0.5〜15μmである。また、ドライ膜厚としては0.1〜20μm、好ましくは1〜10μmである。
紫外線硬化性樹脂組成物は塗布乾燥中または後に、紫外線を照射するのがよく、前記の5〜150mJ/cm2という活性線の照射量を得る為の照射時間としては、0.1秒〜5分程度がよく、紫外線硬化性樹脂の硬化効率または作業効率の観点から0.1〜10秒がより好ましい。
また、これら活性線照射部の照度は50〜150mW/cm2であることが好ましい。
こうして得た硬化樹脂層に、ブロッキングを防止する為、また対擦り傷性等を高める為、或いは防眩性や光拡散性を持たせる為また屈折率を調整する為に無機化合物或いは有機化合物の微粒子を加えることも出来る。
ハードコート層に使用される無機微粒子としては、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることが出来る。特に、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウムなどが好ましく用いられる。
また有機微粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、或いはポリ弗化エチレン系樹脂粉末等紫外線硬化性樹脂組成物に加えることが出来る。特に好ましくは、架橋ポリスチレン粒子(例えば、綜研化学製SX−130H、SX−200H、SX−350H)、ポリメチルメタクリレート系粒子(例えば、綜研化学製MX150、MX300)が挙げられる。
これらの微粒子粉末の平均粒径としては、0.005〜5μmが好ましく0.01〜1μmであることが特に好ましい。紫外線硬化樹脂組成物と微粒子粉末との割合は、樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜30質量部となるように配合することが望ましい。
紫外線硬化樹脂層は、JIS B 0601で規定される中心線平均粗さ(Ra)が1〜50nmのクリアハードコート層であるか、若しくはRaが0.1〜1μm程度の防眩層であることが好ましい。中心線平均粗さ(Ra)は光干渉式の表面粗さ測定器で測定することが好ましく、例えばWYKO社製RST/PLUSを用いて測定することが出来る。
(バックコート層)
本発明のハードコートフィルムのハードコート層を設けた側と反対側の面にはバックコート層を設けることが出来る。バックコート層は、塗布やCVDなどによって、ハードコート層やその他の層を設けることで生じるカールを矯正する為に設けられる。即ち、バックコート層を設けた面を内側にして丸まろうとする性質を持たせることにより、カールの度合いをバランスさせることが出来る。尚、バックコート層は好ましくはブロッキング防止層を兼ねて塗設され、その場合、バックコート層塗布組成物には、ブロッキング防止機能を持たせる為に微粒子が添加されることが好ましい。
バックコート層に添加される微粒子としては無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、ITO、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることが出来る。微粒子は珪素を含むものがヘイズが低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
これらの微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することが出来る。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することが出来る。ポリマー微粒子の例として、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることが出来る。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することが出来る。
これらの中でもアエロジル200V、アエロジルR972Vがヘイズを低く保ちながら、ブロッキング防止効果が大きい為特に好ましく用いられる。本発明で用いられるハードコートフィルムは、ハードコート層の裏面側の動摩擦係数が0.9以下、特に0.1〜0.9であることが好ましい。
バックコート層に含まれる微粒子は、バインダーに対して0.1〜50質量%好ましくは0.1〜10質量%であることが好ましい。バックコート層を設けた場合のヘイズの増加は1%以下であることが好ましく0.5%以下であることが好ましく、特に0.0〜0.1%であることが好ましい。
バックコート層は、具体的にはセルロースエステルフィルムを溶解させる溶媒または膨潤させる溶媒を含む組成物を塗布することによって行われる。用いる溶媒としては、溶解させる溶媒及び/または膨潤させる溶媒の混合物の他更に溶解させない溶媒を含む場合もあり、これらを透明樹脂フィルムのカール度合いや樹脂の種類によって適宜の割合で混合した組成物及び塗布量を用いて行う。
カール防止機能を強めたい場合は、用いる溶媒組成を溶解させる溶媒及び/または膨潤させる溶媒の混合比率を大きくし、溶解させない溶媒の比率を小さくするのが効果的である。この混合比率は好ましくは(溶解させる溶媒及び/または膨潤させる溶媒):(溶解させない溶媒)=10:0〜1:9で用いられる。このような混合組成物に含まれる、透明樹脂フィルムを溶解または膨潤させる溶媒としては、例えば、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸メチル、酢酸エチル、トリクロロエチレン、メチレンクロライド、エチレンクロライド、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロホルムなどがある。溶解させない溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブタノール或いは炭化水素類(トルエン、キシレン、シクロヘキサノール)などがある。
これらの塗布組成物をグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター等を用いて透明樹脂フィルムの表面にウェット膜厚1〜100μmで塗布するのが好ましいが、特に5〜30μmであることが好ましい。バックコート層のバインダーとして用いられる樹脂としては、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルとビニルアルコールの共重合体、部分加水分解した塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体或いは共重合体、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート(好ましくはアセチル基置換度1.8〜2.3、プロピオニル基置換度0.1〜1.0)、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート樹脂等のセルロース誘導体、マレイン酸及び/またはアクリル酸の共重合体、アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、塩素化ポリエチレン、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アミノ樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン−アクリロニトリル樹脂等のゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等を挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。例えば、アクリル樹脂としては、アクリペットMD、VH、MF、V(三菱レーヨン(株)製)、ハイパールM−4003、M−4005、M−4006、M−4202、M−5000、M−5001、M−4501(根上工業株式会社製)、ダイヤナールBR−50、BR−52、BR−53、BR−60、BR−64、BR−73、BR−75、BR−77、BR−79、BR−80、BR−82、BR−83、BR−85、BR−87、BR−88、BR−90、BR−93、BR−95、BR−100、BR−101、BR−102、BR−105、BR−106、BR−107、BR−108、BR−112、BR−113、BR−115、BR−116、BR−117、BR−118等(三菱レーヨン(株)製)のアクリル及びメタクリル系モノマーを原料として製造した各種ホモポリマー並びにコポリマーなどが市販されており、この中から好ましいモノを適宜選択することも出来る。
特に好ましくはジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートのようなセルロース系樹脂層である。
バックコート層を塗設する順番はセルロースエステルフィルムの、バックコート層とは反対側の層(クリアハードコート層或いはその他の例えば帯電防止層等の層)を塗設する前でも後でも構わないが、バックコート層がブロッキング防止層を兼ねる場合は先に塗設することが望ましい。或いはハードコート層の塗設の前後に2回以上に分けてバックコート層を塗布することも出来る。
(反射防止層)
本発明に係るハードコート層を有するセルロースエステルフィルム上に、更に反射防止層を設け反射防止フィルムとすることが好ましい。
本発明に係る反射防止層は、ハードコート層の上に、ハードコート層側から複数の屈折率層を設けることが好ましく、更に、高屈折率層、低屈折率層を順に積層したものであることが好ましい。屈折率の高低は、そこに含まれる金属または化合物によってほぼ決まり、例えばTiは高く、Siは低く、Fを含有する化合物は更に低く、このような組み合わせによって屈折率が設定される。屈折率と膜厚は、分光反射率の測定により計算して算出し得る。
本発明の反射防止フィルムでは、各反射防止層を光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮して積層されていることが好ましい。反射防止層は、支持体よりも屈折率の高い高屈折率層と、支持体よりも屈折率の低い低屈折率層を組み合わせて構成されている。特に好ましくは、3層以上の屈折率層から構成される反射防止層であり、支持体側から屈折率の異なる3層を、中屈折率層(支持体またはハードコート層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているものが好ましく用いられる。または、2層以上の高屈折率層と2層以上の低屈折率層とを交互に積層した4層以上の層構成の反射防止層も好ましく用いられる。
また、必要に応じて、汚れや指紋のふき取りが容易となるように、最表面の低屈折率層の上に、更に防汚層を設けることも好ましい。防汚層としては、含フッ素有機シラン化合物が好ましく用いられる。
本発明に係る反射防止層は、塗布方式により形成することも出来、また大気圧プラズマ処理、CVD等のドライプロセスによって金属酸化物層、金属酸窒化物層(SiO2、TiO2、Ta2O5、ZrO2、ZnO、SnO2、ITO、SiN、TiN、SiOxNy、SiOx、TiOx、TiOxNyなど)を設けることが出来る。本発明では、塗布方式により反射防止層を形成することが好ましい。
本発明に用いられる高屈折率層としては、好ましくはチタン酸化物を含有することが望ましい。これらは微粒子、有機チタン化合物のモノマー、オリゴマーまたはそれらの加水分解物を含有する塗布液を塗布し乾燥させて形成させた屈折率1.55〜2.5の層である。
本発明に用いられる有機チタン化合物のモノマー、オリゴマーとしては、Ti(OCH3)4、Ti(OC2H5)4、Ti(O−n−C3H7)4、Ti(O−i−C3H7)4、Ti(O−n−C4H9)4、Ti(O−n−C3H7)4の2〜10量体、Ti(O−i−C3H7)4の2〜10量体、Ti(O−n−C4H9)4の2〜10量体等が好ましい例として挙げられる。これらは単独で、または2種以上組み合わせて用いることが出来る。中でもTi(O−n−C3H7)4、Ti(O−i−C3H7)4、Ti(O−n−C4H9)4、Ti(O−n−C3H7)4の2〜10量体、Ti(O−n−C4H9)4の2〜10量体が特に好ましい。
本発明に用いられる有機チタン化合物のモノマー、オリゴマーまたはそれらの加水分解物は、塗布液に含まれる固形分中の50.0質量%〜98.0質量%を占めていることが望ましい。固形分比率は50質量%〜90質量%がより好ましく、55質量%〜90質量%が更に好ましい。このほか、塗布組成物には有機チタン化合物のポリマー(予め有機チタン化合物の加水分解を行って架橋したもの)或いは酸化チタン微粒子を添加することも好ましい。
また、本発明においては、塗布液中に上記有機チタン化合物のモノマー、オリゴマーの部分または完全加水分解物を含むが、有機チタン化合物のモノマー、オリゴマーは、自己縮合して架橋し網状結合するものである。その反応を促進するために触媒や硬化剤を使用することが出来、それらには、金属キレート化合物、有機カルボン酸塩等の有機金属化合物や、アミノ基を有する有機けい素化合物、光による酸発生剤(光酸発生剤)等がある。これらの触媒または硬化剤の中で特に好ましいのは、アルミキレート化合物と光酸発生剤である。アルミキレート化合物の例としては、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等であり、光酸発生剤の例としては、ベンジルトリフェニルホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、その他のホスホニウム塩やトリフェニルホスホニウムヘキサフルオロホスフェートの塩等を挙げることが出来る。
反射防止層の塗布液中の固形分比率として0.5質量%〜20質量%のバインダーが含まれることが好ましい。
バインダーとしては、重合可能なビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、イソプロペニル基、エポキシ基、オキセタン環等の重合性基を2つ以上有し、活性線硬化型樹脂を含む塗布層で用いたのと同様なアクリルまたはメタクリル系活性エネルギー線反応性化合物、エポキシ系活性エネルギー線反応性化合物またはオキセタン系活性エネルギー線反応性化合物を用いることが出来る。これらの化合物はモノマー、オリゴマー、ポリマーを含む。重合速度、反応性の点から、これらの活性基のうちアクリロイル基、メタクリロイル基またはエポキシ基が好ましく、多官能モノマーまたはオリゴマーがより好ましい。また、前述の活性線硬化型樹脂を含む塗布層及びハードコート層に用いられる活性線硬化型樹脂も好ましく用いることが出来る。更に、アルコール溶解性アクリル樹脂も好ましく用いられる。
チタン化合物を含む中〜高屈折率層には、バインダーとしてアルコール溶解性アクリル樹脂も好ましく用いられ、これによって、膜厚ムラが少ない中、高屈折率層を得ることが出来る。具体的には、アルキル(メタ)アクリレート重合体またはアルキル(メタ)アクリレート共重合体、例えばn−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート等の共重合体が好ましく用いられるが、共重合成分としてはこれらに限定されるものではない。市販品としては、ダイヤナールBR−50、BR−51、BR−52、BR−60、BR−64、BR−65、BR−70、BR−73、BR−75、BR−76、BR−77、BR−79、BR−80、BR−82、BR−83、BR−85、BR−87、BR−88、BR−89、BR−90、BR−93、BR−95、BR−96、BR−100、BR−101、BR−102、BR−105、BR−107、BR−108、BR−112、BR−113、BR−115、BR−116、BR−117、BR−118(以上、三菱レーヨン(株)製)等が使用出来る。これらのモノマー成分も中〜高屈折率層用バインダーとして添加することが出来る。バインダーの添加比率を変更することによって屈折率を調整することが出来る。
本発明に用いられる低屈折率層は、酸化珪素等の珪素化合物微粒子或いはフッ素含有化合物微粒子等を塗設して設けることが好ましい。好ましい有機けい素化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等を挙げることが出来、これらを加水分解することによりシリケートオリゴマーが得られる。加水分解反応は、公知の方法により行うことが出来、例えば、上記テトラアルコキシシランに所定量の水を加えて、酸触媒の存在下に、副生するアルコールを留去しながら、通常、室温〜100℃で反応させる。この反応によりアルコキシシランは加水分解し、続いて縮合反応が起こり、ヒドロキシル基を2個以上有する液状のシリケートオリゴマー(通常、平均重合度は2〜8、好ましくは3〜6)を加水分解物として得ることが出来る。
硬化触媒としては、酸、アルカリ、有機金属、金属アルコキシド等を挙げることが出来るが、本発明においては酸、特にスルホニル基またはカルボキシル基を有する有機酸が好ましく用いられる。例えば、酢酸、ポリアクリル酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、メチルスルホン酸等が用いられる。有機酸は1分子内に水酸基とカルボキシル基を有する化合物であればいっそう好ましく、例えば、クエン酸または酒石酸等のヒドロキシジカルボン酸が用いられる。また、有機酸は水溶性の酸であることが更に好ましく、例えば上記クエン酸や酒石酸の他に、レブリン酸、ギ酸、プロピオン酸、リンゴ酸、コハク酸、メチルコハク酸、フマル酸、オキサロ酢酸、ピルビン酸、2−オキソグルタル酸、グリコール酸、D−グリセリン酸、D−グルコン酸、マロン酸、マレイン酸、シュウ酸、イソクエン酸、乳酸等が好ましく用いられる。また、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、アトロバ酸等も適宜用いることが出来る。
上記有機酸を用いることで、硫酸、塩酸、硝酸、次亜塩素酸、ホウ酸等の無機酸の使用による生産時の配管腐蝕や安全性への懸念が解消出来るばかりでなく、加水分解時のゲル化を起こすことなく、安定した加水分解物を得ることが出来る。添加量は、部分加水分解物100質量部に対して0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜5質量部がよい。また、水の添加量については部分加水分解物が理論上100%加水分解し得る量以上であればよく、100〜300%相当量、好ましくは100〜200%相当量を添加するのがよい。
このようにして得られた低屈折率層用の塗布組成物は極めて安定である。
更に、本発明では熟成工程により、有機けい素化合物の加水分解、縮合による架橋が十分に進み、得られた被膜の特性が優れたものとなる。熟成は、オリゴマー液を放置すればよく、放置する時間は、上述の架橋が所望の膜特性を得るのに十分な程度進行する時間である。具体的には用いる触媒の種類にもよるが、塩酸では室温で1時間以上、マレイン酸では数時間以上、8時間〜1週間程度で十分であり、通常3日前後である。熟成温度は熟成時間に影響を与え、極寒地では20℃付近まで加熱する手段をとった方がよいこともある。一般に高温では熟成が早く進むが、100℃以上に加熱するとゲル化が起こるので、せいぜい50〜60℃までの加熱が適切である。また、本発明で用いるシリケートオリゴマーについては、上記の他に、例えばエポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、カルボキシル基等の官能基を有する有機化合物(モノマー、オリゴマー、ポリマー)等により変性した変性物であってもよく、単独または上記シリケートオリゴマーと併用することも可能である。
また、本発明においては上記低屈折率層に酸化けい素微粒子を含有させることが出来る。粒径0.1μm以下の酸化けい素微粒子を含むことが好ましい。例えば、アエロジル200V(日本アエロジル(株)製)等を添加することが出来る。特に表面がアルキル基で修飾された酸化けい素微粒子が好ましく用いられ、例えばアエロジルR972、R972V(日本アエロジル(株)製)として市販されている表面がメチル基で修飾された酸化けい素微粒子を好ましく添加することが出来る。このほか特開2001−2799号に記載されている表面がアルキル基で置換された酸化けい素微粒子を用いることも出来、前述のシリケートオリゴマーの加水分解後にアルキルシランカップリング剤により処理することでも容易に得ることが出来る。添加量としては低屈折率層中の固形分比率で0.1質量%〜40質量%の範囲となるように添加することが好ましい。
本発明の各屈折率層には、屈折率の調整或いは膜質の改善のために更にシラン化合物を添加することが出来る。
本発明に係る高〜低屈折率層(光学干渉層ともいう)を塗設する際の塗布液に使用する溶媒は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類;エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルセルソルブ、ジエチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;N−メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド、乳酸メチル、乳酸エチル、水等が挙げられ、それらを単独または2種以上混合して使用することが出来る。
また、分子内にエーテル結合をもつものが特に好ましく、グリコールエーテル類が更に好ましい。
グリコールエーテル類としては、プロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテル、プロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテルエステルであり、具体的にはプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。また、プロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテルエステルとしては特にプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテートが挙げられ、具体的にはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等が挙げられる。これらの溶媒は、塗布液中に全有機溶媒の1質量%〜90質量%添加されていることが好ましい。
また、本発明に係る高〜低屈折率層の各層の塗布液には各種の添加剤を添加することが出来る。
例えば、低屈折率層には滑り剤を添加することが好ましく、滑り性を付与することによって耐傷性を改善することが出来る。滑り剤としては、シリコンオイルまたはワックス状物質が好ましく用いられる。
具体的には、ベヘン酸、ステアリン酸アミド、ペンタコ酸等の高級脂肪酸またはその誘導体、天然物としてこれらの成分を多く含んでいるカルナバワックス、蜜蝋、モンタンワックスも好ましく使用出来る。特公昭53−292号に開示されているようなポリオルガノシロキサン、米国特許第4,275,146号に開示されているような高級脂肪酸アミド、特公昭58−33541号、英国特許第927,446号または特開昭55−126238号及び同58−90633号に開示されているような高級脂肪酸エステル(炭素数が10〜24の脂肪酸と炭素数が10〜24のアルコールのエステル)、そして米国特許第3,933,516号に開示されているような高級脂肪酸金属塩、特開昭51−37217号に開示されているような炭素数10までのジカルボン酸と脂肪族または環式脂肪族ジオールからなるポリエステル化合物、特開平7−13292号に開示されているジカルボン酸とジオールからのオリゴポリエステル等を挙げることが出来る。
低屈折率層に使用する滑り剤の添加量は0.01mg/m2〜10mg/m2が好ましい。必要に応じて、中屈折率層や高屈折率層に添加することも出来る。
本発明の中〜高屈折率層及び低屈折率層には、界面活性剤、柔軟剤、柔軟平滑剤等を添加することが好ましく、これによって耐擦り傷性が改善される。中でもアニオン系または非イオン系の界面活性剤が好ましく、例えば、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム塩、多価アルコール脂肪酸エステルの非イオン界面活性剤乳化物等が好ましい。例えば、リポオイルNT−6、NT12、NT−33、TC−1、TC−68、TC−78、CW−6、TCF−208、TCF−608、NKオイルCS−11、AW−9、AW−10、AW−20、ポリソフターN−606、塗料用添加剤PC−700(日華化学株式会社製)等が用いられる。
本発明に用いられる中〜高屈折率層及び低屈折率層の塗設後、金属アルコキシドを含む組成物の加水分解または硬化を促進するため、活性線を照射することが好ましい。より好ましくは、各層を塗設するごとに活性エネルギー線を照射することである。
本発明に使用する活性線は、活性線硬化型樹脂層の硬化で用いるのと同様の光源を用いることが出来る。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20mJ/cm2〜10000mJ/cm2が好ましく、更に好ましくは、100mJ/cm2〜2000mJ/cm2であり、特に好ましくは、400mJ/cm2〜2000mJ/cm2である。
紫外線を用いる場合、多層の反射防止層を1層ずつ照射してもよいし、積層後照射してもよいが、多層を積層した後、紫外線を照射することが特に好ましい。
(液晶表示装置)
本発明の偏光板を液晶表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた本発明の液晶表示装置を作製することが出来る。本発明の偏光板は反射型、透過型、半透過型LCD或いはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。特に画面が30型以上の大画面の液晶表示装置では、色むらや波打ちムラが少なく、長時間の鑑賞でも目が疲れないという効果があった。