JP2005290179A - 熱可塑性樹脂組成物及び成形品 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物及び成形品 Download PDF

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Seiichiro Inoue
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Abstract

【課題】 人体に触れた際に、皮脂により変色の発生が抑制される成形品とすることができる熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ゲル分率が70質量%以上のゴム質重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体(b)を重合して得られる共重合樹脂、又は、この共重合樹脂とビニル系単量体の(共)重合体との混合物からなるゴム強化樹脂100質量部と、銀系抗菌剤0.1〜3.0質量部とを含む熱可塑性樹脂組成物において、電子スピン共鳴分光装置により測定した、上記ゴム質重合体(a)に由来するラジカル(パーオキシラジカル等)濃度は、4.0×1014個/グラム以下である。また、本組成物に含有されるリン量は、500ppm以下である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、熱可塑性樹脂組成物及び成形品に関し、更に詳しくは、人体が触れた際、表面に変色の発生が抑制された成形品とすることができる熱可塑性樹脂組成物に関する。
ABS樹脂等のスチレン系樹脂は、これを用いてなる成形品の表面外観性、耐衝撃性、剛性等に優れていることから、OA・家電機器分野、電気・電子分野、車両分野等に使用されている。近年では、トイレ、浴室内の部材、洗面化粧台、台所等の水回り製品の表面に、細菌等が発生することがあり、人体への影響を懸念し、樹脂材料に銀、銀イオン又は銀化合物を含む銀系抗菌剤等が配合されている(例えば、特許文献1等)。銀系抗菌剤としては、熱により成形品表面に変色を発生させないものも開示されている(例えば、特許文献2等)。
特開平11−35787号公報 特開平11−322525号公報
抗菌剤の配合によって、得られる成形品は抗菌効果を発揮するものの、特に銀系抗菌剤を用いた場合、トイレの便座等の皮膚と接触した部分が徐々に紫色等に変色するといった問題がある。この変色は、抗菌剤と、樹脂成分と、皮膚の皮脂成分とが関与していると考えられている。
本発明は以下の通りである。
1.〔A〕ゲル分率が70質量%以上のゴム質重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体(b)を重合して得られる共重合樹脂(A1)、又は、この共重合樹脂(A1)とビニル系単量体の(共)重合体(A2)との混合物からなるゴム強化樹脂100質量部と、〔B〕銀系抗菌剤0.1〜3質量部とを含み、ラジカル濃度が、4.0×1014個/グラム以下であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
2.本組成物中のリンの含有量は、500ppm以下である上記1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
3.上記リンは、リン酸及びその塩から選ばれる少なくとも1種の化合物に含まれる上記1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
4.上記ゴム質重合体(a)は、ポリブタジエン、スチレン・ブタジエン共重合体、ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体及びスチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体並びにこれらの水素添加物から選ばれる少なくとも1種である上記1乃至3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
5.上記(共)重合体(A2)は、アクリロニトリル・スチレン共重合体を含む上記1乃至4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
6.上記1乃至5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を用いて得られたことを特徴とする成形品。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、〔A〕ゲル分率が70質量%以上のゴム質重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体(b)を重合して得られる共重合樹脂(A1)、又は、この共重合樹脂(A1)とビニル系単量体の(共)重合体(A2)との混合物からなるゴム強化樹脂100質量部と、〔B〕銀系抗菌剤0.1〜3質量部とを含み、ラジカル濃度が、4.0×1014個/グラム以下であることから、成形品等とした場合に、皮膚等が触れることで、皮脂等による変色の発生が抑制される。
本組成物中のリンの含有量が500ppm以下であることにより、特に、成形体の変色の発生が抑制される。
ゴム質重合体(a)として、特定の重合体を用いることにより、耐衝撃性により優れる成形体とすることができる。
以下、本発明を更に詳しく説明する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、〔A〕ゲル分率が70質量%以上のゴム質重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体(b)を重合して得られる共重合樹脂(A1)、又は、この共重合樹脂(A1)とビニル系単量体の(共)重合体(A2)との混合物からなるゴム強化樹脂100質量部と、〔B〕銀系抗菌剤0.1〜3質量部とを含み、ラジカル濃度が、4.0×1014個/グラム以下であることを特徴とする。
1.ゴム強化樹脂〔A〕
このゴム強化樹脂〔A〕としては、ゴム質重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体(b)を重合して得られる共重合樹脂(A1)を含むものを用いる。この共重合樹脂(A1)は、このままゴム強化樹脂〔A〕として用いることができる。また、この共重合樹脂(A1)と、ビニル系単量体の(共)重合体(A2)との混合物をゴム強化樹脂〔A〕として用いることができる。
上記ゴム質重合体(a)としては、ゲル分率が70質量%以上、好ましくは75〜98質量%、更に好ましくは78〜95質量%である重合体であれば特に限定されない。ゲル分率が低いと、可視光が成形品に当たった際に発生する活性酸素によるラジカル(アルコキシラジカル、パーオキシラジカル等)が大量に発生し、銀系抗菌剤に含まれる銀、皮脂成分等から銀含有化合物(錯体等)が生成することがあり、この化合物が成形品表面の変色を招くことがある。一方、ゲル分率が70質量%以上であれば、ラジカル発生量が少なく、不安定になりやすいため、消失し、成形品の変色の発生が抑制される。
尚、このゲル分率は、ゴム質重合体1gをトルエン100ml中に加え、48時間室温で放置した後、100メッシュ金網でろ過し、分取したろ液からトルエンを除去、乾燥してトルエン可溶分(g)を秤量し、次式により算出することができる。
ゲル分率=〔{1(g)−トルエン可溶分(g)}/1(g)〕×100
ゴム質重合体(a)としては、ポリブタジエン、スチレン・ブタジエン共重合体、ブタジエン・アクリロニトリル共重合体等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記ゴム質重合体(a)の重量平均粒子径は、好ましくは50〜3000nmであり、より好ましくは100〜2000nm、更に好ましくは150〜1000nmである。重量平均粒子径が小さすぎると、本熱可塑性樹脂組成物を用いて得られる成形品の耐衝撃性が劣る傾向にある。一方、重量平均粒子径が大きすぎると、成形品の表面外観性が劣る傾向にある。
上記ゴム質重合体(a)を製造する方法としては特に限定されないが、所望の平均粒子径及びゲル分率を有する重合体を容易に得ることができる乳化重合法が好ましい。
尚、乳化重合法によりゴム質重合体(a)を得る場合、平均粒子径及びゲル分率は、乳化剤の種類・量、開始剤の種類・量、重合時間、重合温度、攪拌条件等の製造条件を適宜選択することにより調整することができる。
上記共重合樹脂(A1)の形成に用いるビニル系単量体(b)は、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含む。従って、上記ビニル系単量体(b)は、これらのみからなるものであってもよいし、これらの化合物と、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、酸無水物等から選ばれる少なくとも1種とからなる組み合わせであってもよい。
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ビニルトルエン、メチル−α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、臭素化スチレン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンが好ましい。
シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
マレイミド系化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。尚、マレイミド系化合物からなる単量体単位を導入する他の方法としては、例えば、無水マレイン酸を共重合し、その後イミド化する方法でもよい。
酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記化合物以外では、必要に応じて、エポキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、オキサゾリン基等の官能基を有するビニル系化合物を、それぞれ、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
エポキシ基を有するビニル系化合物としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
ヒドロキシル基を有するビニル系化合物としては、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、ヒドロキシスチレン等が挙げられる。
アミノ基を有するビニル系化合物としては、アクリルアミン、メタクリル酸アミノメチル、メタクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノプロピル、メタクリル酸ジメチルアミノメチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノメチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アミノスチレン等が挙げられる。
アミド基を有するビニル系化合物としては、アクリルアミド、メタクリルアミド等が挙げられる。
カルボキシル基を有するビニル系化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
オキサゾリン基を有するビニル系化合物としては、ビニルオキサゾリン等が挙げられる。
上記ビニル系単量体(b)として用いる芳香族ビニル化合物(b1)及びシアン化ビニル化合物(b2)の使用割合(b1)/(b2)は特に限定されないが、これらの合計を100質量%とした場合、好ましくは(80〜60)質量%/(20〜40)質量%、更に好ましくは(75〜65)質量%/(25〜35)質量%である。芳香族ビニル化合物(b1)の使用量が少なすぎると、本組成物の成形加工性(流動性)が劣る傾向にある。一方、その使用量が多すぎると、本組成物を用いて得られる成形品の耐熱性、耐薬品性等が劣る傾向にある。
尚、上記共重合樹脂(A1)の製造方法は、後述する。
上記共重合樹脂(A1)は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
尚、前述のように、本発明に関わるゴム強化樹脂〔A〕は、共重合樹脂(A1)のみであってもよいし、この共重合樹脂(A1)と、ビニル系単量体の重合によって得られた(共)重合体(A2)との混合物であってもよい。この「ビニル系単量体」の例としては、上記共重合樹脂(A1)の形成に用いるビニル系単量体(b)及び官能基含有ビニル系化合物が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記(共)重合体(A2)は、共重合樹脂(A1)の形成に用いたビニル系単量体(b)と全く同じ成分を同じ使用割合で重合して得られる重合体であってもよいし、同じ成分を異なる使用割合で重合して得られる重合体であってもよいし、更には、異なる成分を重合して得られる重合体であってもよい。また、これらの各重合体が2種以上の含まれるものであってもよい。
本発明において好ましい(共)重合体(A2)は、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体を用いてなるものであり、アクリロニトリル・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・メタクリル酸アクリルエステル共重合体等が挙げられる。これらのうち、アクリロニトリル・スチレン共重合体が特に好ましい。また、上記(共)重合体(A2)は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
次に、共重合樹脂(A1)及び(共)重合体(A2)の製造方法について説明する。
共重合樹脂(A1)は、ゴム質重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体(b)を、好ましくは乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法による方法で製造することができる。
乳化重合法により製造する場合には、重合開始剤、連鎖移動剤(分子量調節剤)、乳化剤、水等が用いられる。
尚、共重合樹脂(A1)を製造するために用いられるゴム質重合体(a)及びビニル系単量体(b)は、反応系において、ゴム質重合体全量の存在下に、単量体成分を一括添加してもよいし、分割又は連続添加してもよい。また、これらを組み合わせた方法でもよい。更に、ゴム質重合体の全量又は一部を、重合途中で添加して重合してもよい。
重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド等の有機ハイドロパーオキサイド類と、含糖ピロリン酸処方、スルホキシレート処方等の還元剤とを組み合わせたレドックス系重合開始剤、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシラウレイト、t−ブチルパーオキシモノカーボネート等の有機過酸化物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。この重合開始剤の使用量は、上記ビニル系単量体(b)全量に対し、通常、0.1〜1.5質量%、好ましくは0.2〜0.7質量%である。尚、上記重合開始剤は、重合に際し、反応系に一括又は連続的に添加することができる。
連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、t−テトラデシルメルカプタン等のメルカプタン類、ターピノーレン、α−メチルスチレンのダイマー等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。この連鎖移動剤の使用量は、上記ビニル系単量体(b)全量に対して、通常、0.05〜2.0質量%である。
乳化重合法において用いる乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪族スルホン酸塩、高級脂肪族カルボン酸塩、リン酸系等のアニオン性界面活性剤、ポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルエーテル型等のノニオン系界面活性剤等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。この乳化剤の使用量は、上記ビニル系単量体(b)全量に対して、通常、0.3〜5.0質量%である。
乳化重合法により得られたラテックスは、通常、凝固剤により凝固させ、重合体成分を粉末状とし、その後、これを水洗、乾燥することによって精製される。この凝固剤としては、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム等の無機塩、硫酸、塩酸等の無機酸、酢酸、乳酸等の有機酸等が用いられる。無機塩を用いた場合には、凝固物を取り出す前に凝固液をリン酸等で中和する工程を備えることがある。
尚、溶液重合法及び塊状重合法による製造は、公知の方法を採用することができる。
上記共重合樹脂(A1)のグラフト率(ゴム質重合体(a)へグラフトした単量体成分の質量割合)は、好ましくは10〜200%、更に好ましくは15〜150%、特に好ましくは20〜100%である。上記共重合樹脂(A1)のグラフト率が10%未満では、本組成物を用いて得られる成形品の外観性及び耐衝撃性が低下する傾向にある。また、200%を超えると、成形加工性が劣る傾向にある。
ここで、グラフト率とは、共重合樹脂(A1)1グラム中のゴム成分をxグラム、共重合樹脂(A1)1グラムをメチルエチルケトンに溶解させた際の不溶分をyグラムとしたときに、次式により求められる値である。
グラフト率(%)={(y−x)/x}×100
また、上記共重合樹脂(A1)のアセトン可溶分の極限粘度〔η〕(メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.1〜1.0dl/g、更に好ましくは0.2〜0.9dl/g、特に好ましくは0.3〜0.7dl/gである。極限粘度〔η〕が上記範囲内であると、成形加工性に優れ、本組成物を用いて得られる成形品の耐衝撃性も優れる。
尚、グラフト率及び極限粘度〔η〕は、共重合樹脂(A1)の製造条件、例えば、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤、溶剤等の種類や量、更には重合時間、重合温度等を適宜選択することにより、容易に制御することができる。
上記(共)重合体(A2)は、例えば、バルク重合、溶液重合、乳化重合及び懸濁重合等により得ることができる。
上記(共)重合体(A2)のアセトン可溶分の極限粘度〔η〕(メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.1〜1.0dl/g、より好ましくは0.15〜0.7dl/gである。極限粘度〔η〕が上記範囲内であると、成形加工性に優れ、本組成物を用いて得られる成形品の耐衝撃性も優れる。尚、極限粘度〔η〕は、上記共重合樹脂(A1)と同様に、重合条件を適宜選択して制御することができる。
上記ゴム強化樹脂〔A〕のアセトン可溶分の極限粘度〔η〕(メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.1〜0.8dl/g、より好ましくは0.15〜0.7dl/gである。極限粘度〔η〕が上記範囲内であると、成形加工性に優れ、本組成物を用いて得られる成形品の耐衝撃性も優れる。
ここで、上記ゴム強化樹脂〔A〕が、共重合樹脂(A1)のみからなる場合、及び、この共重合樹脂(A1)と、ビニル系単量体の重合によって得られた(共)重合体(A2)とからなる場合、のいずれにおいても、本組成物中のゴム質重合体(a)の含有量は、好ましくは1〜40質量%、より好ましくは3〜40質量%、更に好ましくは3〜35質量%、特に好ましくは5〜35質量%である。ゴム質重合体(a)の含有量が少なすぎると、本組成物を用いて得られる成形品の耐衝撃性が劣る傾向にあり、多すぎると、硬度、剛性が劣る傾向にある。
2.銀系抗菌剤〔B〕
この銀系抗菌剤〔B〕は、銀を金属、合金、化合物(酸化物、塩化物、錯体等)及びイオンから選ばれる状態で含む無機系抗菌剤である。従って、一般に、無機系抗菌剤として例示されるゼオライト系抗菌剤(銀ゼオライト、銀・亜鉛ゼオライト、銀置換ゼオライト等)、シリカゲル系抗菌剤(錯体化銀・シリカゲル等)、ガラス系抗菌剤(銀イオン分散型溶解性ガラス等)、ケイ酸塩系抗菌剤(ケイ酸カルシウム銀、ケイ酸アルミン酸マグネシウム銀等)、酸化チタン系抗菌剤(銀・酸化チタン、チタン酸カリウム銀等)、セラミック系抗菌剤、ウィスカー系抗菌剤、無機・有機ハイブリット系抗菌剤等に銀が含有されるものを含む。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記銀系抗菌剤〔B〕の形状は特に限定されず、定形であっても、不定形であってもよい。好ましい形状は塊状(立方体、直方体、球形、略球形等)であるが、板状(円形、四角形、多角形等)であってもよいし、線状(直線、曲線等)等であってもよい。また、比表面積、平均粒子径又は最大長さ等も特に限定されない。
本発明の熱可塑性樹脂組成物中における銀系抗菌剤〔B〕の含有量は、ゴム強化樹脂〔A〕100質量部に対し、0.1〜3質量部であり、好ましくは0.2〜2質量部、更に好ましくは0.2〜1質量部である。この銀系抗菌剤〔B〕の含有量が少なすぎると、その配合効果が得られない場合がある。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、電子スピン共鳴分光装置(ESR)を用い、下記方法で測定したときのラジカル濃度が4.0×1014個/グラム以下であり、好ましくは3.0×1014個/グラム以下、更に好ましくは2.7×1014個/グラム以下である。このラジカル濃度が高すぎると、本組成物を用いて成形品とした場合に、皮膚等が触れることで、皮脂等による変色が発生することがある。尚、上記「ラジカル」は、通常、ゴム質重合体(a)に由来するパーオキシラジカル等である。特に、ゲル分率の低いゴム質重合体(a)を用いたゴム強化樹脂〔A〕を用いると、3級炭素の含有割合が多くなり、ラジカルの生成も多くなると考えられる。
(ラジカル濃度測定方法)
組成物を試料管に充填し、日本電子社製電子スピン共鳴分光装置「FA−300型」を用い、以下の条件で測定する。
Mn2+マーカーの3本目及び4本目のピーク位置を基準として、g値を算出し、ラジカルの種類を同定する。測定試料(組成物)の質量とピーク強度とから組成物中のラジカル濃度を得ることができる。
RF周波数 ; 9.436GHz
マイクロ波出力 ; 0.5mW
磁場掃引範囲と掃引時間 ; 336±7.5mT、4分
(2通り) 250±250mT、30分
変調周波数 ; 100kHz
変調磁場 ; 1mT
時間定数 ; 0.3秒
増幅比 ; 400
測定温度 ; 25℃
尚、本発明に関わるゴム強化樹脂〔A〕は、下記のような組成物とした場合に、上記測定条件により、ラジカル濃度を好ましくは4.0×1014個/グラム以下、より好ましくは3.0×1014個/グラム以下、更に好ましくは2.7×1014個/グラム以下とすることができる。
(組成物の構成)
ゴム強化樹脂 95質量部
銀系抗菌剤(商品名「バクテキラーBM502JT」、カネボウ化成社製) 0.5
耐薬品性向上剤(商品名「エルバロイEP4051」、三井デュポンポリケミカル社製) 5。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、目的、用途に応じて、他の樹脂成分、成形品の耐薬品性、耐衝撃性等を向上させる改質剤、銀系抗菌剤以外の抗菌剤、難燃剤、充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、マイナスイオン発生剤、着色剤等の各種添加剤を含有させることができる。
他の樹脂成分としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂、液晶ポリマー、ポリウレタン系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、フッ素系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これら他の樹脂成分を用いる場合の配合量は、上記ゴム強化樹脂〔A〕100質量部に対し、好ましくは1〜50質量部であり、より好ましくは3〜40質量部、更に好ましくは5〜30質量部である。
改質剤としては、エチレン・一酸化炭素・(メタ)アクリル酸エステル系共重合体及びその変性重合体等が挙げられる。この(メタ)アクリル酸エステルとしては、炭素数1〜18、好ましくは1〜8の直鎖状もしくは分岐状のアルキルエステルが好ましい。
上記エチレン・一酸化炭素・(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の各単量体単位量は特に限定されない。この共重合体は、更に他の単量体単位を含む共重合体であってもよい。
また、上記エチレン・一酸化炭素・(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の変性重合体としては、例えば、前記共重合体に、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物をグラフト共重合させたもの等が挙げられる。この不飽和カルボン酸又はその無水物としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、ノルボルネン−2,5−ジカルボン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ノルボルネン−2,5−ジカルボン酸無水物等が挙げられる。
上記改質剤を用いる場合のその配合量は、上記ゴム強化樹脂〔A〕を含む全重合体100質量部に対し、好ましくは1〜10質量部、より好ましくは2〜8質量部、更に好ましくは3〜7質量部である。
銀系抗菌剤以外の抗菌剤としては、ホルムアルデヒド放出剤、ハロゲン化芳香族化合物、ロードプロパルギル誘導体、チオシアナト化合物、イソチアゾリノン誘導体、トリハロメチルチオ化合物、第四アンモニウム塩、ビグアニド化合物、アルデヒド類、フェノール類、ベンズイミダゾール誘導体、ピリジンオキシド、カルバニリド、ジフェニルエーテル、カルボン酸、有機金属化合物等の有機系抗菌剤、テルペン、糖質、トロポロン等の天然系抗菌剤等が挙げられる。
難燃剤としては、有機系難燃剤、無機系難燃剤、反応系難燃剤等を用いることができる。
有機系難燃剤としては、ブロム化ビスフェノール系エポキシ樹脂、ブロム化ビスフェノール系フェノキシ樹脂、ブロム化ビスフェノール系ポリカーボネート樹脂、ブロム化ポリスチレン樹脂、ブロム化架橋ポリスチレン樹脂、ブロム化ビスフェノールシアヌレート樹脂、ブロム化ポリフェニレンエーテル、デカブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモビスフェノールA及びそのオリゴマー、ブロム化アルキルトリアジン化合物等のハロゲン系難燃剤;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トキヘキシルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート等のリン酸エステルやこれらを各種置換基で変性した化合物、各種の縮合型のリン酸エステル化合物、リン元素と窒素元素を含むホスファゼン誘導体等のリン系難燃剤;ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記の縮合型のリン酸エステル化合物としては、下記一般式(I)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2005290179
(但し、R、R、R及びRは、アルキル基、フェニル基又はキシリル基であり、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。Xは、2価のレゾルシノール残基、ハイドロキノン残基又はビスフェノールA残基である。m、m、m及びmは、それぞれ互いに独立して0又は1であり、nは1〜5のいずれかである。尚、このリン酸エステル化合物がブレンド物の場合には、nは1〜5の平均値である。)
無機系難燃剤としては、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、ジルコニウム系、モリブデン系、スズ酸亜鉛、グアニジン塩、シリコーン系、ホスファゼン系化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、反応系難燃剤としては、テトラブロモビスフェノールA、ジブロモフェノールグリシジルエーテル、臭素化芳香族トリアジン、トリブロモフェノール、テトラブロモフタレート、テトラクロロ無水フタル酸、ジブロモネオペンチルグリコール、ポリ(ペンタブロモベンジルポリアクリレート)、クロレンド酸(ヘット酸)、無水クロレンド酸(無水ヘット酸)、臭素化フェノールグリシジルエーテル、ジブロモクレジルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記難燃剤を用いる場合のその配合量は、上記ゴム強化樹脂〔A〕を含む全重合体100質量部に対し、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは1〜18質量部、更に好ましくは5〜15質量部である。
尚、本発明の熱可塑性樹脂組成物に難燃剤を配合する場合には、難燃助剤をともに用いることが好ましい。この難燃助剤としては、三酸化二アンチモン、四酸化二アンチモン、五酸化二アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、酒石酸アンチモン等のアンチモン化合物や、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、水和アルミナ、酸化ジルコニウム、ポリリン酸アンモニウム、酸化スズ、酸化鉄等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
充填剤としては、ガラス繊維、炭素繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウムウィスカ−、ウォラストナイト、更には、アルミニウム、チタン、銅等の金属、真鍮、ステンレス等の合金等からなる無機系繊維状充填剤;ポリアミド、フッ素樹脂、アクリル樹脂等からなる有機系繊維状充填剤;カ−ボンブラック、シリカ、石英粉末、ガラスビ−ズ、ガラス粉、硅酸カルシウム、硅酸アルミニウム、カオリン、クレ−、硅藻土等の硅酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ等の金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩、炭化硅素、窒化硅素、窒化硼素等からなる粒子状充填剤;タルク、マイカ、ガラスフレ−ク、金属箔等の板状充填剤等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記充填剤を用いる場合のその配合量は、上記ゴム強化樹脂〔A〕を含む全重合体100質量部に対し、好ましくは0.1〜30質量部、より好ましくは0.5〜20質量部、更に好ましくは1〜15質量部である。上記充填剤をこの範囲で含有した場合には、高剛性な成形品を得ることができる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、サリチル酸エステル類、金属錯塩類等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記紫外線吸収剤を用いる場合のその配合量は、上記ゴム強化樹脂〔A〕を含む全重合体100質量部に対し、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.05〜5質量部、更に好ましくは0.1〜5質量部である。
滑剤としては、脂肪酸エステル、炭化水素樹脂、パラフィン、高級脂肪酸,オキシ脂肪酸、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、脂肪族アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、ポリグリセロール、金属石鹸、シリコーン、変性シリコーン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
帯電防止剤としては、低分子型帯電防止剤及び高分子型帯電防止剤が挙げられる。また、これらは、イオン伝導型でもよいし、電子伝導型でもよい。
低分子型帯電防止剤としては、アニオン系帯電防止剤;カチオン系帯電防止剤;非イオン系帯電防止剤;両性系帯電防止剤;錯化合物;アルコキシシラン、アルコキシチタン、アルコキシジルコニウム等の金属アルコキシド及びその誘導体;金属粉;金属フレーク;金属ファイバー;カーボン;導電性ウィスカー;コーテッドカーボン、コーテッドシリカ、リン酸塩、リン酸エステル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、高分子型帯電防止剤としては、分子内にスルホン酸金属塩を有するビニル共重合体、アルキルスルホン酸金属塩、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩、ベタイン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記着色剤としては、有機染料、無機顔料、有機顔料、カーボンブラック等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、リンの酸素酸(縮合物を含む)及びその塩の含有量が少ないことが好ましい。リンの酸素酸としては、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、次リン酸及び過リン酸が挙げられる。また、縮合物としては、ピロリン酸等のポリリン酸、トリメタリン酸、テトラメタリン酸等のポリメタリン酸、ジ亜リン酸等のポリ亜リン酸、ポリメタ亜リン酸等が挙げられる。また、これらの塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。
本組成物に含有されるゴム強化樹脂〔A〕の製造原料にこれらの物質が含まれる場合、あるいは、製造中にこれらの物質に変化する場合には、本組成物に含有されることとなる。本組成物中のリンの含有量は、好ましくは500ppm以下、より好ましくは300ppm以下、更に好ましくは200ppm以下である。リンの含有量が多すぎると、銀系抗菌剤に含まれる銀成分と反応して、錯体等の有色物質を形成し、成形品が着色する場合がある。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、各種押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を用い、原料成分を混練りすることによって得られる。混練りするに際しては、原料成分を一括して混練りしてもよく、原料成分を多段階で添加しながら混練りしてもよい。このようにして得られた樹脂組成物を用いて、射出成形、シート押出、真空成形、発泡成形、ブロー成形等によって各種形状を有する本発明の成形品を得ることができる。
本発明の成形品は、便器等のトイレ用部材、キッチン、バスルーム等に用いられる部材、テレビ、エアコン、VTR、オーディオ、掃除機、冷蔵庫、電話機、ファックス、双眼鏡、カメラ、時計、コンピュータ、パソコン、プリンター、各種介護用品等のハウジング、ケース、カバー等に好適に使用することができる。また、化粧品、日用品、食品、医療品等の容器等にも好適に使用することができる。
本発明の成形品は、その表面にレーザーを照射することによって、黒発色、白発色、多色等のレーザーマーキングをすることもできる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物及び成形品は、ラジカル濃度が、4.0×1014個/グラム以下であることから、皮膚等に触れて、皮脂等により変色の発生が抑制される。皮脂には、トリグリセリド、スクワレン等の皮脂腺に由来する脂質、セラミド、コレステロール等の表皮に由来する脂質等が挙げられるが、これらの成分と、銀系抗菌剤を構成する銀成分とからなる有色の生成物質による変色の発生が抑制される。尚、皮脂に含まれる上記成分は、保湿、肌荒れ防止等を目的とした塗り薬等に含まれる場合があるが、これに対しても有効である。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、実施例及び比較例において、部及び%は特に断らない限り質量基準である。
1.共重合樹脂の製造
下記の方法により、実施例で用いる共重合樹脂A1−1及びA1−2を製造した。
製造例1
耐圧反応器に、蒸留水85部、1,3−ブタジエン100部、ロジン酸カリウム2.0部、リン酸カリウム1.0部、水酸化カリウム0.1部、t−ドデシルメルカプタン0.15部及び過硫酸カリウム0.3部を仕込み、50℃で重合を開始した。重合が進みにつれて容器内の温度を5℃刻みで75℃まで昇温した。重合時間は50時間、重合転化率は90%であった。
重合反応の終了後、未反応のブタジエンを水蒸気蒸留により除去し、平均粒子径250nm及びゲル分率85%のポリブタジエンラテックスを得た。
次に、攪拌機を備えた内容積7リットルのガラス製フラスコに、窒素気流中、イオン交換水75部、ロジン酸カリウム0.5部、t−ドデシルメルカプタン0.1部、上記ポリブタジエンラテックス40部(固形分)、スチレン15部及びアクリロニトリル5部を仕込み、攪拌しながら昇温した。混合液の温度が45℃に達した時点で、ピロリン酸ナトリウム0.2部、硫酸第1鉄7水和物0.01部及びブドウ糖0.2部をイオン交換水20部に溶解した水溶液を添加した。そして、クメンハイドロパーオキサイド0.07部を加えて重合を開始した。1時間重合させた後、更に、イオン交換水50部、ロジン酸カリウム0.7部、スチレン30部、アクリロニトリル10部、t−ドデシルメルカプタン0.05部及びクメンハイドロパーオキサイド0.01部を3時間かけて連続的に添加し、更に1時間重合した。その後、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)0.2部を添加して、重合を完結し、共重合樹脂A1−1を含有するラテックスを得た。このラテックスを硫酸水溶液で凝固、水洗した後、乾燥して共重合樹脂A1−1を得た。この樹脂のグラフト率は68%、アセトン可溶分の極限粘度〔η〕は0.45dl/gであった。
製造例2
内容積5リットルのSUS製オートクレーブに、イオン交換水150部、高級脂肪酸石鹸(炭素数18を主成分とする脂肪酸のナトリウム塩)4.0部及び水酸化ナトリウム0.075部を仕込み、容器内を窒素置換し、攪拌しながら68℃に昇温した。その後、1,3−ブタジエン90部、スチレン10部及びt−ドデシルメルカプタン0.3部よりなる混合物のうち、その20%を添加し、更に、過硫酸カリウム0.135部を添加した。数分で発熱が起こり、重合の開始が確認された。そして、上記過硫酸カリウムを添加して1時間後から、上記混合物の残り80%を6時間かけて連続的に添加した。その後、液温を80℃に昇温し、更に1時間重合を行い、平均粒子径80nm及びゲル分率15%のスチレン・ブタジエンゴム粒子を含むラテックス(固形分;39.5%)を得た。
次に、攪拌装置、加熱冷却装置、原料仕込装置及び助剤仕込装置を備えた内容積5リットルの反応器に、イオン交換水347部と、上記ラテックス中のゴム粒子を無水酢酸により250nm及び650nmに粒径肥大させたもの80部及び20部(それぞれ、固形分)とを仕込み、50℃に昇温した。昇温の途中の40℃において、ピロリン酸ナトリウム1.5部、デキストロース0.8部及び硫酸第1鉄0.01部をイオン交換水20部に溶解させた水溶液と、クメンハイドロパーオキサイド0.15部、不均化ロジン酸カリウム石鹸0.54部及び水酸化カリウム0.11部をイオン交換水10.5部に溶解させた水溶液とを添加した。液温が50℃に達したところで、更に、スチレン70部、アクリロニトリル30部及びt−ドデシルメルカプタン1.1部を2時間45分かけて添加した。また、50℃に達してから40分後より、クメンハイドロパーオキサイド0.35部、不均化ロジン酸カリウム石鹸1.26部及び水酸化カリウム0.26部をイオン交換水24.5部に溶解させた水溶液を2時間5分かけて添加した。そして、50℃に達してから50分後より、20分かけて70℃に昇温した。原料成分をすべて添加して更に15分間反応を続けた後、冷却して重合を終了し、共重合樹脂A1−2を含有するラテックスを得た。
このラテックスに、老化防止剤5部を添加し、95℃に加熱した硫酸マグネシウム水溶液の中に、攪拌しながら加え、共重合樹脂を凝固させた。その後、混合液をリン酸水溶液で中和し、凝固物を回収して水洗、乾燥を行い、白色粉末状の共重合樹脂A1−2を得た。この樹脂のグラフト率は50%、アセトン可溶分の極限粘度〔η〕は0.4dl/gであった。
2.熱可塑性樹脂組成物の調製及び評価
実施例1〜3及び比較例1〜3
上記で得た各共重合樹脂と、下記他の原料成分とを用い、表1に示す配合割合でミキサーにより5分間混合した後、50mmφ押出機でシリンダー設定温度180〜220℃で溶融混練押出し、ペレット(熱可塑性樹脂組成物)を得た。得られたペレットを十分に乾燥し、評価用の試験片を得た。
2−1.アクリロニトリル・スチレン共重合体(A2)
アクリロニトリル単位量;27%、極限粘度〔η〕(メチルエチルケトン中、30℃で測定);0.6dl/g。
2−2.抗菌剤
(1)銀系抗菌剤(B1)
商品名「バクテキラーBM502JT」、カネボウ化成社製。
(2)銀系抗菌剤(B2)
商品名「ゼオミックXAW10D」、シナネンゼオミック社製。
2−3.耐薬品性向上剤
商品名「エルバロイEP4051」、三井デュポンポリケミカル社製。
2−4.難燃剤
商品名「エピコート5203」、東都化成社製。
2−5.難燃助剤(三酸化アンチモン)
商品名「PATOX−M」、日本精鉱社製。
2−6.滴下防止剤(ポリテトラフルオロエチレン)
商品名「T6CJM」、大日化学社製。
上記で得られたペレット又は試験片を用い、下記の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
(1)残留ラジカル量
日本電子社製電子スピン共鳴分光装置(ESR)を用い、以下の条件でg値を測定し、Mn2+マーカーの3本目及び4本目のピーク位置を基準として、試料中のパーオキシラジカル濃度を得た。単位は個/グラムである。
また、比較例1の試料におけるラジカルのピーク強度を100とした場合の、各実施例及び各比較例の相対値を算出した。
<測定条件>
RF周波数 ; 9.436GHz
マイクロ波出力 ; 0.5mW
磁場掃引範囲と掃引時間 ; 336±7.5mT、4分
(2通り) 250±250mT、30分
変調周波数 ; 100kHz
変調磁場 ; 1mT
時間定数 ; 0.3秒
増幅比 ; 400
測定温度 ; 25℃
(2)残留リン量
誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MAS)を用いて測定した。単位はppmである。
(3)試験片表面の変色
試験片の表面を毎日、3分間、手でこすり、45日後の外観を観察した。紫色に変色したものを「有」、変色が見られなかったものを「無」と判定した。
(4)耐薬品性
プレス成形により得た厚さ2mmの試験片を1/4楕円治具にセットし、その上から下記の市販洗剤を塗布した。大気中、常温(25℃)下で、72時間放置後、試験片を折り曲げながらクラック位置を求め、臨界歪みを求めた。単位は%である。
(5)抗菌性
JIS Z2801−2000に準じ、大腸菌及び黄色ブドウ球菌に対して、増減値差で評価した。
(6)燃焼性
UL94法に準じて評価した。
Figure 2005290179
3.評価結果について
表1より、比較例1〜3は、ラジカル濃度が8×1014個/gを超えて多いため、成形品とした場合に、変色が見られる。また、リン量も2200ppmと多いために、変色が発生した。一方、実施例1〜3は、ラジカル濃度が3×1014個/g以下と少なく、成形品の変色も全く見られなかった。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、便器等のトイレ用部材、キッチン、バスルーム等に用いられる部材、テレビ、エアコン、VTR、オーディオ、掃除機、冷蔵庫、電話機、ファックス、双眼鏡、カメラ、時計、コンピュータ、パソコン、プリンター、各種介護用品等のハウジング、ケース、カバー等に好適に使用することができる。また、化粧品、日用品、食品、医療品等の容器等にも好適に使用することができる。

Claims (6)

  1. 〔A〕ゲル分率が70質量%以上のゴム質重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体(b)を重合して得られる共重合樹脂(A1)、又は、該共重合樹脂(A1)とビニル系単量体の(共)重合体(A2)との混合物からなるゴム強化樹脂100質量部と、〔B〕銀系抗菌剤0.1〜3質量部とを含み、ラジカル濃度が、4.0×1014個/グラム以下であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  2. 本組成物中のリンの含有量は、500ppm以下である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 上記リンは、リン酸及びその塩から選ばれる少なくとも1種の化合物に含まれる請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 上記ゴム質重合体(a)は、ポリブタジエン、スチレン・ブタジエン共重合体、ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体及びスチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体並びにこれらの水素添加物から選ばれる少なくとも1種である請求項1乃至3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 上記(共)重合体(A2)は、アクリロニトリル・スチレン共重合体を含む請求項1乃至4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を用いて得られたことを特徴とする成形品。
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