JP2005281922A - 紙及び板紙の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】酸性抄造と中性抄造が混在する紙生産設備に対応し、酸性抄造・中性抄造の両方で地合いを崩さず、濾水性及び歩留性を改善する紙及び板紙の製造方法を提供する。
【解決手段】紙料に、分岐又は架橋した両性高分子ポリマーと、水溶性アニオン性高分子ポリマー及び/又はアニオン性有機高分子微粒子、或いは水溶性カチオン性高分子ポリマーとを添加した後、紙料を脱水してシート状とし、その後乾燥させる。

Description

本発明は紙及び板紙の製造方法に係り、特に、紙料に、分岐又は架橋した水溶性両性高分子ポリマーを添加することにより、酸性、中性のいずれの抄造系においても効果を示し、地合いの悪化を抑えながら、濾水性及び歩留性を飛躍的に改善すると共に、作業性の悪さ、スケール生成といった副次的障害を解決する紙及び板紙の製造方法に関する。
近年、紙及び板紙の製造においては、酸性紙では紙の寿命が劣ること、インキの乾燥性などの印刷適性について中性紙の方が優れること、コート紙が増えたことによる炭酸カルシウムの多いブロークが流入するため、酸性抄造に適さないこと、などの要因から、抄造系は酸性抄造から中性抄造に変わってきている。また、酸性抄造と中性抄造が混在する紙生産設備が多数見受けられ、酸性、中性の両方に効果のある歩留剤が求められている。
こうした課題に対して、USP4,388,150号公報には、カチオン性スターチ及びコロイドシリカを脱水前の紙料に添加して歩留りを改善する方法が記載されており、このものは商業化されている。また、EP235893号(特開昭62−191598号公報に対応する)には、濾水性、歩留性、乾燥及び地合い特性を改善すべく、特定の剪断ステップの前に第1の合成カチオン性ポリマーを加え、かつその剪断ステップの後でベントナイトを加える方法が開示され、このものは商業化されている。
しかし、これらの方法は、歩留効果、特に填料の歩留において十分に満足し得る効果が得られていない。填料の添加量を増やすと、歩留の改善が見られるが、この場合には製品の地合いが低下するという問題がある。更に、ベントナイトを用いる場合には、溶解のための手間が紙料り、またコロイダルシリカを用いる場合には、有効成分の濃度が低いために輸送コストが高くなる、添加ポイントでシリカスケールが発生して紙品質が低下するといった問題がある。
また、特公平5−29719号公報(特許第2128702号)には、主カチオン性ポリマーの前に主ポリマーより分子量の低いカチオン性ポリマーを添加し、最後にアニオン性の無機物質を添加し、ピッチ、濾水性を改善する方法が記載されている。しかし、この方法では歩留り、特に填料の歩留効果の向上が顕著ではないという問題がある。
更に、特許第2948358号公報には、カチオン性ポリマーとアニオン性高分子微粒子を紙料中に含有させる歩留改善方法が開示されている。しかし、この方法は、酸性抄造系では、pHが低下するためアニオン基の効果が著しく低下するという問題がある。
USP4,388,150号公報 EP235893号公報 特公平5−29719号公報 特許第2948358号公報
本発明は、近年、酸性抄造から中性抄造に移行しつつある状況において、酸性抄造と中性抄造が混在する紙生産設備に対応し、酸性抄造、中性抄造のいずれにおいても、地合いを崩さず、濾水性及び歩留性を改善することができる紙及び板紙の製造方法を提供することを目的とする。
本発明によれば、分岐又は架橋した水溶性両性高分子ポリマーを紙料に添加する工程と、前記工程を経た紙料を脱水し、乾燥させる工程と、を含む紙及び板紙の製造方法が提供される。
ポリマーはその構造によって、線状、分岐及び架橋ポリマーに大別されるが、本発明では、分岐又は架橋した水溶性両性高分子ポリマーを用いる。本発明で用いる分岐又は架橋した水溶性両性高分子ポリマー(以下「分岐/架橋両性ポリマー」と称す場合がある。)の「分岐又は架橋した」とは、分子形状が主鎖のみで構成される線状ではなく、枝分かれした、即ち分岐鎖を有する形状又は複数の線状のものが架橋されてなる形状をいう。
本発明における架橋したポリマーと分岐したポリマーの定義は次の通りである。
架橋ポリマー:
高度に分岐したポリマーである。
分岐ポリマー:
分岐ポリマーは、短鎖分岐ポリマーと長鎖分岐ポリマーとに大別される。長鎖分岐ポリマーは、分岐の仕方により、一つの中心から3本以上の枝が出ている星型ポリマー[star polymer]、一本の幹に、それ自身は分岐していない枝が複数出ているくし型ポリマー[comb polymer]、及び無秩序に分岐が起こっている統計的分岐ポリマー[randomly branched polymer]に分けられる。
本発明において、紙料に添加する分岐/架橋両性ポリマーは、中性、酸性のいずれの抄造系においても、濾水・歩留向上効果を発揮し、生産性が向上する。この分岐/架橋両性ポリマーは、分岐又は架橋しているため、線状のポリマーに比べ剪断に強く、ポンプ、スクリーン、インレットを通過時に、凝集生成したフロックが直鎖状のポリマーに比べて壊れにくいため、高い効果を維持することができる。また、細かいフロックを形成するため、地合いを崩さず、濾水性及び歩留性を改善し、断紙の低減、生産スピードアップといった生産性の向上を図ることができる。
分岐/架橋両性ポリマーを添加する本発明の紙及び板紙の製造方法による作用機構の詳細は未だ完全には解明されていないが、下記のように推定される。
酸性抄造系では、紙繊維に定着したバンド或いは、紙力剤、カチオン澱粉などを介して分岐/架橋両性ポリマーのアニオン部位が結合し凝集する。この際、分岐/架橋両性ポリマーは分岐又は架橋しているため、大きなフロックを形成せず、従って、地合いを崩さない。
中性抄造系では、分岐/架橋両性ポリマーは、アニオン基の解離が進み、更に効果が上がる。特に、分岐/架橋両性ポリマーが4級のカチオン基を有する場合には、pHが上がっても十分な効果を発揮する。
また、本発明によれば、分岐/架橋両性ポリマーを紙料に添加する工程と、水溶性アニオン性高分子ポリマー及び/又はアニオン性有機高分子微粒子、或いは水溶性カチオン性高分子ポリマーを紙料に添加する工程と、前記二工程を経た紙料を脱水し、乾燥させる工程と、を含む紙及び板紙の製造方法が提供される。
カチオン性ポリマーとベントナイトやコロイダルシリカに代表されるアニオン性無機微粒子とを併用した従来技術における問題点は、カチオン性ポリマーとアニオン性無機微粒子との間の凝集力が十分ではなく、十分な歩留効果が得られないことが原因であった。また、カチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーを併用した従来技術は酸性時に効果が劣る問題があった。
これに対して、分岐/架橋両性ポリマーと、水溶性アニオン性高分子ポリマー及び/又はアニオン性有機高分子微粒子とを併用することで、分岐/架橋両性ポリマーのカチオン基と、水溶性アニオン性高分子ポリマー及び/又はアニオン性有機高分子微粒子のアニオン基との強い相互作用により、優れた凝集効果が得られる。
また、分岐/架橋両性ポリマーと、水溶性カチオン性高分子ポリマーとを併用することで、分岐/架橋両性ポリマーのアニオン基と、水溶性カチオン性高分子ポリマーのカチオン基との強い相互作用により、優れた凝集効果が得られる。
本発明の紙及び板紙の製造方法によれば、分岐又は架橋した水溶性両性高分子ポリマーを用いるため、酸性、中性の条件に拘わらず、アニオントラッシュの多い紙料であっても、ピッチを抑え、欠陥の減少を図るだけでなく、地合いを崩さず、濾水性及び歩留性を改善すると共に、断紙の減少、生産スピードアップといった生産性の向上を図ることができる。
以下に本発明の紙及び板紙の製造方法の実施の形態を詳細に説明する。
まず、本発明で用いる分岐/架橋両性ポリマー、アニオン性有機高分子微粒子、水溶性アニオン性高分子ポリマー、水溶性カチオン性高分子ポリマーについて説明する。
本発明で用いる分岐/架橋両性ポリマーのモノマー構成成分には特に制約はないが、望ましい分岐/架橋両性ポリマーの具体例としては、下記一般式(1)で示されるカチオン性モノマー単位0.5〜90モル%、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びこれらの塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上のアニオン性モノマー単位0.2〜90モル%と、アクリルアミド単位1〜99.3モル%とを有し、1規定硝酸ナトリウム水溶液(pH3)中における極限粘度が0.1dl/g以上で、カチオン性当量が0.1〜5meq/g、アニオン性当量が0.01〜10meq/gの物性を有するものが挙げられる。
Figure 2005281922
(但し、AはO又はNHを表し、BはC、C又はCHCHOHCHを表し、RはH、メチル基、エチル基、ベンジル基又は3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル基を表し、R,R,Rは各々独立に、H、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシル基、或いはベンジル基を表し、Xはアニオンを表す。)
分岐/架橋両性ポリマーは、このようなモノマー成分から共重合体を製造するに当たり、架橋剤を配合してポリマー鎖に分岐構造または架橋構造を導入することにより製造される。分岐または架橋の程度は、この架橋剤の配合量で調整することができ、例えば、仕込みモノマー換算で0.00001〜1モル%の架橋剤を添加でき、0.0001〜0.01モル%程度が好ましい。
なお、用いる架橋剤としては、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、ビス(メタ)アクリルアミド−メチロールエチレン尿素縮合体、ビス(メタ)アクリルアミド−メチロール尿素等のビス(メタ)アクリルアミド類やエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類、アジピン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル等のジビニルエステル類、N,N−ジアリルアクリルアミド、1,2,3−トリアクロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、トリアリルイソシアヌレート等のトリビニルモノマー系架橋剤を挙げることができる。
繊維表面にループ状ないしテール状の吸着が形成しやすくなるという観点からは、この分岐/架橋両性ポリマーの1規定硝酸ナトリウム水溶液(pH3)中における極限粘度は0.1dl/g以上であることが望ましく、また、分岐/架橋両性ポリマーのカチオン性当量は、十分な吸着を確保するという観点からは0.1meq/g以上とすることが望ましく、凝集異物の生成を避けるという観点からは5meq/g以下であることが好ましい。また、分岐/架橋両性ポリマーのアニオン性当量に関しては、十分な吸着を確保するという観点からは0.01meq/g以上であることが好ましく、凝集異物の生成を避けるという観点からは10meq/g以下であることが好ましい。
分岐/架橋両性ポリマーのより好ましい極限粘度は1〜25dl/gで、より好ましいカチオン性当量は0.5〜4meq/gで、より好ましいアニオン性当量は0.05〜9meq/gである。
本発明で用いるアニオン性有機高分子微粒子は、好ましくは、特許第2948358号公報の請求項2に記載されたAの微粒子であり、交叉結合された場合に直径約750nmより小さく、かつ非交叉結合性でかつ水不溶性である場合に直径約60nmより小さく、該微粒子のアニオン性当量が0.1meq/g以上(カチオン性当量として少なくとも−0.1meq/gかそれよりも高いアニオン性)のものである。
このようなアニオン性有機高分子微粒子としては、例えばアクリル酸とアクリルアミドがN,N'−メチルビスアクリルアミドで交叉結合されたミクロエマルジョン共重合体が挙げられる。
なお、アニオン性有機高分子微粒子は、特許第2948358号公報の請求項2に記載されるように、イオン性高分子微粒子と高分子量イオン性重合体或いはイオン性多糖類との混合物からなる組成物であっても良い。
本発明で用いる水溶性アニオン性高分子ポリマーのモノマー構成成分には特に制約はないが、望ましい水溶性アニオン性高分子ポリマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びこれらの塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上のアニオン性モノマー単位0.2〜90モル%と、アクリルアミド単位1〜99.3モル%とを有し、1規定食塩水中における極限粘度が0.1dl/g以上で、アニオン性当量が0.01〜10meq/gの物性を有するものが挙げられる。
カチオン性の電荷を帯びた繊維表面(酸化チタン、硫酸バンド、紙力増強剤などを使用する場合)に、ループ状ないしテール状の吸着が形成しやすくなるという観点、及びカチオン性の電荷を帯びた繊維同士が吸着しやすくなる観点から、この水溶性アニオン性高分子ポリマーの極限粘度は0.1dl/g以上であることが望ましい。また、十分な吸着を確保する観点から、水溶性アニオン性高分子ポリマーのアニオン性当量は0.01meq/g以上であることが好ましく、凝集異物の生成を避けるという観点からは10meq/g以下であることが望ましい。
水溶性アニオン性高分子ポリマーのより好ましい極限粘度は3〜30dl/gで、より好ましいアニオン性当量は0.05〜6meq/gである。
本発明で用いる水溶性カチオン性高分子ポリマーのモノマー構成成分には特に制約はないが、望ましいカチオン性ポリマーの具体例としては、下記一般式(1)で示されるカチオン性モノマーとアクリルアミドとの共重合物であり、1規定食塩水中における極限粘度が4dl/g以上で、カチオン性当量が0.1〜11meq/gの物性を有するものが挙げられる。
Figure 2005281922
(但し、AはO又はNHを表し、BはC、C又はCHCHOHCHを表し、RはH、メチル基、エチル基、ベンジル基又は3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル基を表し、R,R,Rは各々独立に、H、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシル基、或いはベンジル基を表し、Xはアニオンを表す。)
繊維表面にループ状ないしテール状の吸着が形成しやすくなるという観点からは、水溶性カチオン性高分子ポリマーの1規定食塩水中における極限粘度は4dl/g以上であることが好ましい。また、十分な吸着を確保するという観点からは、カチオン性当量は0.1meq/g以上であることが好ましく、凝集異物の生成を避けるという観点からは11meq/g以下であることが好ましい。
水溶性カチオン性高分子ポリマーのより好ましい極限粘度は5〜20dl/gで、より好ましいカチオン性当量は1〜10meq/gである。
また、水溶性カチオン性高分子ポリマーは、N−ビニルホルムアミド重合体の加水分解物であっても良く、この場合、1規定食塩水中における極限粘度が1〜15dl/gであり、カチオン性当量が0.1meq/g以上の物性を有することが好ましい。
繊維表面にループ状ないしテール状の吸着が形成しやすくなるという観点からは、N−ビニルホルムアミド重合体の加水分解物よりなる水溶性カチオン性高分子ポリマーの1規定食塩水中における極限粘度は1dl/g以上であることが好ましい。また、大き過ぎるフロックの形成を避け、適正な地合いを確保するという観点からは、15dl/g以下であることが好ましい。また、十分な吸着を確保するという観点からは、カチオン性当量は0.1meq/g以上であることが好ましい。
N−ビニルホルムアミド重合体の加水分解物よりなる水溶性カチオン性高分子ポリマーのより好ましい極限粘度は3〜15dl/gであり、より好ましいカチオン性当量は0.5〜8meq/gである。
本発明においては、分岐/架橋両性ポリマーを添加した後、或いは分岐/架橋両性ポリマーと水溶性アニオン性高分子ポリマー及び/又はアニオン性有機高分子微粒子とを添加した後、或いは分岐/架橋両性ポリマーと水溶性カチオン性高分子ポリマーとを添加した後、紙料を脱水してシート状とし、その後乾燥させるが、分岐/架橋両性ポリマーと、アニオン性有機高分子微粒子及び/又は水溶性アニオン性高分子ポリマー、或いは水溶性カチオン性高分子ポリマーとを紙料に添加するに当たって、その添加順序に特に制限はない。従って、例えば下記の方法を採用することができる。
(1)分岐/架橋両性ポリマーを紙料に添加する第一工程と、第一工程を経て得られた紙料にアニオン性有機高分子微粒子及び/又は水溶性アニオン性高分子ポリマーを添加する第二工程とを含む紙及び板紙の製造方法
(2)アニオン性有機高分子微粒子及び/又は水溶性アニオン性高分子ポリマーを紙料に添加する第一工程と、第一工程を経て得られた紙料に分岐/架橋両性ポリマーを添加する第二工程とを含む紙及び板紙の製造方法
(3)水溶性カチオン性高分子ポリマーを紙料に添加する第一工程と、第一工程を経て得られた紙料に分岐/架橋両性ポリマーを添加する第二工程とを含む紙及び板紙の製造方法
(4)分岐/架橋両性ポリマーを紙料に添加する第一工程と、第一工程を経て得られた紙料に水溶性カチオン性高分子ポリマーを添加する第二工程とを含む紙及び板紙の製造方法
上記の添加手順において、第一工程における歩留剤の添加と、第二工程の歩留剤の添加とは、その添加の間において、5秒以上、特に10〜30秒の時間を設けることが好ましい。
本発明において、分岐/架橋両性ポリマーの添加率は好ましくは乾燥紙料に対して0.002〜0.5重量%であり、より好ましくは0.005〜0.2重量%である。
また、アニオン性有機高分子微粒子及び/又は水溶性アニオン性高分子ポリマー、或いは水溶性カチオン性高分子ポリマーを併用する場合、これらの併用成分の添加率は、好ましくは乾燥紙料に対して0.002〜0.5重量%であり、より好ましくは0.005〜0.2重量%である。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
なお、以下の実施例及び比較例において用いた添加剤は、次の通りである。また、以下において、「部」は「重量部」を示す。
(1) 実施例及び比較例で用いた添加剤
Figure 2005281922
表1において、X−1は、仕込みモノマーとしてDAA(分子量193.5)30モル%と、AAm(分子量71)60モル%と、AANa(分子量94)10モル%とを用い(仕込みモノマーの平均分子量110.05)、架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド(分子量140)を仕込みモノマー1モルに対して0.000008モル(即ち0.0008モル%)添加し、共重合して得られたものである。
(2) 実施例で用いたアニオン性有機高分子微粒子「A−1」の詳細
アクリル酸/アクリルアミド/N,N'−メチレンビスアクリルアミドの共重合体:N,N'−メチレンビスアクリルアミド(MBAAm)349ppmで交叉結合された、粒径130nmのアクリル酸ナトリウム(AANa)30モル%及びアクリルアミド(AAm)70モル%のミクロエマルジョン共重合体。
上記のアニオン性有機高分子微粒子は、以下の方法により製造した。
順次にアクリル酸147部、脱イオン水200部、56.5重量%水酸化ナトリウム144部、アクリルアミド結晶343.2部、10重量%ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム0.3部、更に脱イオン水39.0部及び0.52重量%硫酸銅5水和物1.5部を混合することにより水相を調製した。生じた水相溶液110部に1重量%t−ブチルヒドロパーオキシド0.25部及び0.61重量%N,N'−メチレンビスアクリルアミド3.50部を加えた。次に、水相120部をパラフィン油77.8部、脂肪酸ソルビタン(オレイン酸を含有する)3.6部及びヘキサオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール21.4部を含む油相と混合した。
生じた透明なミクロエマルジョンを窒素で20分間脱気した。ガス状SOを用いて重合を開始し、発熱を40℃までとし、氷水を用いて40℃に制御した。冷却をこれ以上必要としなくなった時点で氷水を除去した。その後窒素を1時間通気して重合物を得た。
(3) 比較例で用いたアニオン性無機微粒子
コロイダルシリカ:アルカリで安定化された平均粒径5nmの市販のコロイド状シリカ(Eka Chemicals社製、商品名「BMA」)
ベントナイト:セピオライト、アタパルジャイト又はモンモリロナイトからなる市販のアニオン性膨潤性ベントナイト(Ciba Specialty Chemicals社製、商品名「Orgaoosorb O」
また、SSの歩留率測定及び地合い指数の測定には、次の測定装置を用いた。
SSの歩留率:ミューテック社製,濾水歩留試験機「DFS(ダイナミック フィルトレーション システム)」
地合い指数:M/K System Inc.社製「3-D Sheet Analyzer」
[実施例1〜6、比較例1,2:酸性上質紙の例]
LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)100%、フリーネス450ccの紙料の乾燥重量当りの濃度が0.8重量%になるよう調整した。
このようにして得られた紙料(A)を歩留試験機「DFS」に投入し、硫酸バンド(硫酸アルミニウム)を対乾燥パルプ2.0重量%、カチオン化澱粉(NSC社製「Cato−3212」)を対乾燥パルプ1.0重量%、タルク(日本タルク社製「タルク86−C」)を対乾燥パルプ10重量%、歩留剤1剤目の順で添加し、続いて歩留剤2剤目を添加し、濾液(B)を採取した。DFSの設定条件はミューテック社の推奨方法を用いた。各歩留剤は20秒間隔で添加した。本試験機による剪断は、標準条件の撹拌を与えることによって、付与されている。評価はpH4〜5で行った。pHが4〜5にならない場合は、10重量%硫酸を滴下して調整した。
各例で用いた歩留剤1剤目及び歩留剤2剤目の種類と添加量は表2に示す通りである。
採取した濾液中のSS(SSはSSの測定方法「ISO4119−1995」に従った。)の濃度を測定し、下記の式に従い、SSの歩留率を算出した。
SSの歩留率=[1−濾液(B)のSS/紙料(A)のSS]×100%
また、上記と同じ比率と方法によって調製した紙料を用いて、手漉きシートを作成し、地合い指数を測定した。
歩留試験機による試験結果及び手漉きシートの地合い指数測定結果を表2に示す。表2より明らかなように、実施例1〜6では比較例1,2よりもSSの歩留りが向上し、地合いも良好となった。
Figure 2005281922
[実施例7〜12、比較例3,4:中性上質紙の例]
LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)100%、フリーネス450ccの紙料の乾燥重量当りの濃度が0.8重量%になるよう調整した。
このようにして得られた紙料(A)を歩留試験機「DFS」に投入し、硫酸バンド(硫酸アルミニウム)を対乾燥パルプ2.0重量%、カチオン化澱粉(NSC社製「Cato−3212」)を対乾燥パルプ1.0重量%、炭酸カルシウム(奥多摩工業社製「TP−12L」)を対乾燥パルプ10重量%、歩留剤1剤目の順で添加し、続いて20秒後に歩留剤2剤目を添加し、濾液(B)を採取した。DFSの設定条件はミューテック社の推奨方法を用いた。本試験機による剪断は、標準条件の撹拌を与えることによって、付与されている。評価はpH7以上で行った。
各例で用いた歩留剤1剤目及び歩留剤2剤目の種類と添加量は表3に示す通りである。
採取した濾液について、実施例1と同様にしてSSの歩留率を求めると共に、実施例1と同様にして手漉きシートの地合い指数を測定し、結果を表3に示した。
表3より明らかなように、実施例7〜12では比較例3,4よりもSSの歩留が向上し、地合いも良好となった。
Figure 2005281922
本発明の紙及び板紙の製造方法によれば、酸性・中性抄紙両方に対応した紙及び板紙の製造を実施することができる。

Claims (7)

  1. 分岐又は架橋した水溶性両性高分子ポリマーを紙料に添加する工程と、
    前記工程を経た紙料を脱水し、乾燥させる工程と、
    を含む紙及び板紙の製造方法。
  2. 分岐又は架橋した水溶性両性高分子ポリマーを紙料に添加する工程と、
    水溶性アニオン性高分子ポリマー及び/又はアニオン性有機高分子微粒子を紙料に添加する工程と、
    前記二工程を経た紙料を脱水し、乾燥させる工程と、
    を含む紙及び板紙の製造方法。
  3. 分岐又は架橋した水溶性両性高分子ポリマーを紙料に添加する工程と、
    水溶性カチオン性高分子ポリマーを紙料に添加する工程と、
    前記二工程を経た紙料を脱水し、乾燥させる工程と、
    を含む紙及び板紙の製造方法。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項に記載の紙及び板紙の製造方法において、前記分岐又は架橋した水溶性両性高分子ポリマーが、
    下記一般式(1)で示されるカチオン性モノマー単位0.5〜90モル%と、
    (メタ)アクリル酸、イタコン酸、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びこれらの塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上のアニオン性モノマー単位0.2〜90モル%と、
    アクリルアミド単位1〜99.3モル%と
    を有し、
    1規定硝酸ナトリウム水溶液(pH3)中における極限粘度が0.1dl/g以上で、カチオン性当量が0.1〜5meq/g、アニオン性当量が0.01〜10meq/gの物性を有するものであることを特徴とする紙及び板紙の製造方法。
    Figure 2005281922
    (但し、AはO又はNHを表し、BはC、C又はCHCHOHCHを表し、RはH、メチル基、エチル基、ベンジル基又は3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル基を表し、R,R,Rは各々独立に、H、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシル基、或いはベンジル基を表し、Xはアニオンを表す。)
  5. 請求項2又は4に記載の紙及び板紙の製造方法において、前記アニオン性有機高分子微粒子が、
    交叉結合された場合に直径約750nmより小さく、かつ非交叉結合性でかつ水不溶性である場合に直径約60nmより小さく、該微粒子のイオン性がアニオン性当量として少なくとも0.1meq/gかそれよりも高いアニオン性のアニオン性有機高分子微粒子であることを特徴とする紙及び板紙の製造方法。
  6. 請求項2又は4に記載の紙及び板紙の製造方法において、前記水溶性アニオン性高分子ポリマーが、
    (メタ)アクリル酸、イタコン酸、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びこれらの塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上のアニオン性モノマー単位0.2〜90モル%と、
    アクリルアミド単位1〜99.3モル%と
    を有し、
    1規定食塩水中における極限粘度が0.1dl/g以上で、アニオン性当量が0.01〜10meq/gの物性を有する水溶性アニオン性高分子ポリマーであることを特徴とする紙及び板紙の製造方法。
  7. 請求項3又は4に記載の紙及び板紙の製造方法において、前記水溶性カチオン性高分子ポリマーが、
    下記一般式(1)で示されるカチオン性モノマーとアクリルアミドとの共重合物であり、
    1規定食塩水中における極限粘度が4dl/g以上で、カチオン性当量が0.1〜11meq/gの物性を有する水溶性カチオン性高分子ポリマーであることを特徴とする紙及び板紙の製造方法。
    Figure 2005281922
    (但し、AはO又はNHを表し、BはC、C又はCHCHOHCHを表し、RはH、メチル基、エチル基、ベンジル基又は3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル基を表し、R,R,Rは各々独立に、H、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシル基、或いはベンジル基を表し、Xはアニオンを表す。)
    請求項1ないしのいずれか1項において、ことを特徴とする紙及び板紙の製造方法。
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