JP3998769B2 - 抄紙方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、抄紙における填料及び微細繊維成分の歩留まりを向上させる方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の酸性抄紙における填料及び微細繊維の歩留まりを向上させる方法としては、硫酸バンドの添加に続いて比較的高分子量で低カチオン電荷密度のポリアクリルアミドを添加する方法が使用されていた。近年、安価で光学的性質に優れた炭酸カルシウム填料を製造する技術が進歩し、従来使用されてきたカオリンやタルクなどの粘土鉱物を紙の填料として用いた酸性抄紙から、炭酸カルシウムを紙の填料として使用する中性抄紙が一般的になってきた。炭酸カルシウムを填料として紙を抄造する場合には、炭酸カルシウムのバッファー効果により抄紙系のpHは7〜9になる。中性〜アルカリ性領域でのアルミニウムイオン種は酸性の場合に比較してカチオン性度が極端に低下し、紙料の凝結効果が低下するために、従来の硫酸バンドとカチオン性ポリアクリルアミドを使用することによって歩留まりを向上させる方法では、十分な填料の歩留まりを得ることができなかった。そこで、硫酸バンドの替わりに中性でもカチオン性を呈する四級アミノ基を有する比較的低分子量で高カチオン電荷密度を有する高分子、例えばポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドなどが使用されてきた。
【0003】
しかしながら、比較的低分子量で高カチオン電荷密度を有する高分子が、アニオン性の繊維や填料に吸着した場合には、高分子の電荷密度が高いためにフラットな吸着コンフォメーションをとり、繊維や填料のアニオン性の表面を被覆するために、比較的低分子量で高カチオン電荷密度を有する高分子を抄紙系に添加した後、比較的高分子量で低電荷密度を有するカチオン性高分子を添加した場合には、繊維や填料への吸着サイトがそれらの表面に十分に存在しないので十分な歩留まりを得ることができない。さらに、繊維に吸着した低分子量で高カチオン電荷密度を有する高分子は繊維の細孔に浸透するために、時間とともに繊維の電荷が減少し歩留まりの変動の原因となっている。
【0004】
そこで、USP4,798,653のカチオン性のコロイダルシリカと比較的高分子量の水溶性高分子の併用による歩留まりシステムや、USP5、340、865の逆相のマイクロエマルジョン重合法で合成したカチオン性の架橋したポリアクリルアミドがパルプの歩留まりを向上させることを報告しており、カチオン性のマイクロパーティクルが潜在的に歩留まり向上剤として効果があることを示している。しかしながら、USP4、798、653のカチオン性のコロイダルシリカは酸性ではカチオン性を示すが、pHが高くなるにつれてカチオン性が減少する。また、USP5,340,865は水溶性高分子が基本骨格であるので、水相に合成高分子を分散させた場合には膨潤するので水溶液中で粒子径が小さい高分子粒子を得ることは困難であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、前述したような該当技術分野の要望にこたえ、かつ従来方法の欠点を克服した中性抄紙における填料及び微細繊維の歩留まりを向上させる方法を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、pHが11以下でカチオン性を有し、粒径が100nm以下のカチオン性高分子マイクロパーティクルと、分子量が100万以上のカチオン性水溶性高分子と共に添加することにより、抄紙における填料及び微細繊維の歩留まりを向上させる方法である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明について詳しく説明する。
【0008】
本発明で使用するカチオン性高分子マイクロパ―ティクルは、下記の(a)〜(d)から重合され、pH11以下でカチオン性を有し、粒径が100nm以下のものである。
【0009】
(a)エチレン系不飽和単量体、
(b)任意成分としてのカチオン性単量体、
(c)カチオン性界面活性剤、及び
(d)カチオン性重合開始剤、
また、(a)が70〜95重量%、(b)が0〜30重量%、(c)が1〜30重量%、(d)が0.5〜5重量%の重量比で合成されたものが好ましい。
【0010】
本発明で使用するカチオン性高分子マイクロパ―ティクルは、界面活性剤を使用する乳化重合、及び比較的多量の界面活性剤を使用するマイクロエマルジョン重合法によって製造することができる。カチオン性単量体は、カチオン性高分子マイクロパーティクルの電荷密度を向上させる場合には使用するが、使用しなくてもカチオン性高分子マイクロパーティクルを製造することができる。
【0011】
本発明で使用するエチレン系不飽和単量体の例としては、スチレン、メチルスチレンを挙げることができる。
【0012】
本発明で使用するカチオン性単量体は、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、アクリロキシエチルトリエチルアンモニウムクロリド及びビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリドなどのラジカル重合が可能なカチオン性単量体から少なくとも1つ選ばれたものである。
【0013】
本発明で使用するカチオン性界面活性剤としては、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ミストリルトリメチルアンモニウムブロミド、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ビニルベンジルジメチルドデシルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤から少なくとも1つ選ばれたものである。カチオン性界面活性剤はカチオン澱粉やカチオンポリアクリルアミドなどのカチオン性高分子も併用してもよい。カチオン性界面活性剤としては、重合可能な界面活性剤、例えば、ビニルベンジルジメチルドデシルアンモニウムを使用することも可能であり、この場合にはカチオン性界面活性剤とカチオン性単量体の両方の役割を果たす。
【0014】
本発明で使用するカチオン性重合開始剤としては、2,2 -アゾビス(N,N’-ジメチレン-イソブチルアミヂン)ジヒドロクロライド、2,2 -アゾビス(2-メチルプロピオンアミヂン)ジヒドロクロライド、2-2 -アゾビス(イソブチルニトリル)ジヒドロクロライドなどの全てのラジカル重合が可能なカチオン性重合開始剤を使用できる。
【0016】
本発明のカチオン性高分子マイクロパーティクルは水に不溶なので、架橋剤を使用する必要はない。架橋剤はカチオン性高分子マイクロパーティクルの粒径に若干の影響を与えるが、本発明のカチオン性高分子マイクロパーティクルには架橋剤を使用してもしなくてもかまわない。架橋剤を使用する場合には、親油性の架橋剤であるジビニルベンゼンなどが望ましいが、水溶性の架橋剤であるN、N'-メチレンビスアクリルアミドなども使用できる。
【0017】
抄紙工程で、本発明のカチオン性高分子マイクロパーティクルを単独でパルプと填料を含む紙料に添加しても、効果的なパッチ凝集と架橋凝集を同時に形成することにより、高い歩留まりが得られるが、さらに、カチオン性高分子マイクロパーティクルの添加後、分子量100万以上のカチオン性水溶性高分子を添加することによって、顕著な填料及び微細繊維の歩留まりの向上が得られる。これは、カチオン性高分子マイクロパーティクルが、効果的なカチオンパッチを形成し、さらに分子量100万以上のカチオン性水溶性高分子を添加することにより、カチオンパッチ間にカチオン性水溶性高分子が吸着し、カチオン性水溶性高分子とカチオン性高分子マイクロパーティクルとの静電的な反発力により、カチオン性水溶性高分子の架橋長さが長くなり、結果として顕著な填料及び微細繊維の歩留まりが向上するのである。
【0018】
本発明のカチオン性高分子マイクロパーティクルの粒径は、100nmを超えると効果的なパッチ凝集及び架橋凝集が形成されなくなるので、100nm以下である必要がある。
【0019】
分子量100万以上のカチオン性水溶性高分子としては、カチオン性ポリアクリルアミド、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、カチオン性デンプン等が好ましい。
【0020】
カチオン性高分子マイクロパーティクルの添加量としては、紙料の絶乾固形分に対して0.04重量%以上2.0重量%以下が好ましい。また、カチオン性水溶性高分子の添加量としては、紙料の絶乾固形分に対して0.005%以上2.0重量%以下が好ましい。
【0021】
【発明の効果】
本発明によって、中性抄紙における填料及び微細繊維の歩留まりを大幅に向上することが可能となる。また、抄紙機のインレット濃度を低下できるので、紙の坪量変動を抑え、地合いを向上させ、流失原料の削減を図ることができる。
【0022】
【実施例】
以下に、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
[合成例1]
機械的攪拌機を備え付けた反応器に、イオン交換水(150g)、スチレン(11.2g)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(3.0g)、ジビニルベンゼン(0.56g)を仕込み、反応器の溶液に窒素ガスを30分間通じ、60℃まで加熱した。反応器の温度が60℃で安定した後に、カチオン性重合開始剤として2,2 -アゾビス(N,N’-ジメチレン-イソブチルアミヂン)ジヒドロクロライド0.17gを5mlのイオン交換水に溶解したものを加えた。高分子合成は窒素を通じたまま500rpmで攪拌しながら4時間行った。合成終了後、60,000rpmで二回超遠心分離をかけ、カチオン性界面活性剤、未反応モノマーを除去した。このカチオン性高分子マイクロパーティクルの粒径は42.3nmであった。
【0024】
[合成例2]
機械的攪拌機を備え付けた反応器に、イオン交換水(150g)、スチレン(8.32g)、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(2.49g)、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド(3.52g)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(1.0g)を仕込み、反応器の溶液に窒素ガスを30分間通じ、60℃まで加熱した。反応器の温度が60℃で安定した後に、カチオン性重合開始剤として2,2 -アゾビス(2-メチルプロピオンアミヂン)ジヒドロクロライド0.2gを5mlのイオン交換水に溶解したものを加えた。高分子合成は窒素を通じたまま500rpmで攪拌しながら6時間行った。合成終了後、60,000rpmで二回超遠心分離をかけ、カチオン性界面活性剤、未反応モノマーを除去した。このカチオン性高分子マイクロパーティクルの粒径は95.0nmであった。
【0025】
[合成例3]
機械的攪拌機を備え付けた反応器に、イオン交換水(100g)、スチレン(4.0g)、ビニルベンジルジメチルドデシルアンモニウム(1.0g)を仕込み、反応器の溶液に窒素ガスを30分間通じ、60℃まで加熱した。反応器の温度が60℃で安定した後に、カチオン性重合開始剤として2,2 -アゾビス(2-メチルプロピオンアミヂン)ジヒドロクロライド0.2gを5mlのイオン交換水に溶解したものを加えた。高分子合成は窒素を通じたまま500rpmで攪拌しながら6時間行った。合成終了後、60,000rpmで二回超遠心分離をかけ、カチオン性界面活性剤、未反応モノマーを除去した。カチオン性高分子マイクロパーティクルの粒径は40.0nmであった。
【0026】
[実施例1]
200メッシュワイヤーのダイナミックドレネージジャー(DDJ)を使用して、軽質炭酸カルシウム(以下PCC)の歩留まりを測定した。DDJテスト時の攪拌速度は800rpmで行った。0.4重量%の晒広葉樹クラフトパルプと0.1重量% のPCCから成る500mlの紙料をDDJに加え、15秒攪拌後に合成例1で製造したカチオン性マイクロパーティクル(以下CPM)を対紙料当たり0.2重量%、または0.8重量%を添加し、15秒間攪拌を続けた後に対紙料当たり0.04〜0.8重量%の分子量約400万のカチオン性ポリアクリルアミド(以下CPAM)を添加し、さらに15秒間攪拌を続けた後に150mlの濾液を採取した。濾液に塩酸を添加しpHを3以下にし、PCCを完全に溶解した後に、アンモニアを加えてカルシウムイオンをEDTAでキレート滴定することにより、PCCの歩留まりを測定し、結果を表1に示した。
【0027】
【表1】
【0028】
[比較例1]
実施例1と同じ条件で、CPMを添加しないでDDJテストを行い、PCCの歩留まりを測定し、結果を表2に示した。
表1及び表2よりCPMとCPAMを併用することによって、顕著にPCCの歩留まりは向上することが分かる。
【0029】
【表2】
【0030】
[実施例2]
実施例1で使用したフリーネス350mlの晒広葉樹クラフトパルプから成る0.5重量%のパルプスラリーに、炭酸カルシウムを対パルプ5重量%添加して紙料を調製した。この紙料500mlをDDJに加え、攪拌速度100rpmで15秒間攪拌した後に、硫酸バンドを対紙料当り0.5重量%添加し、15秒間攪拌した後に、合成例2のCPMを対紙料当り0.2重量%添加し、更に15秒間攪拌を続けた後に、分子量約400万のCPAMを対紙料当り0.005〜0.05重量%添加し、15秒間攪拌を続けた後に20秒間濾水した。濾液の濃度から填料及び微細繊維の歩留まりを測定し、結果を表3に示した。
【0031】
[比較例2]
実施例2と同じ条件で、CPMを添加しないでDDJテストを行い、填料及び微細繊維の歩留まりを測定し、結果を表3に示した。
表3より、炭酸カルシウムを填料とする中性の紙料において、CPMを添加後に、高分子量のCPAMを添加することによって、CPAMを単独で添加するよりも填料及び微細繊維の歩留まりは向上する。
【0032】
【表3】
【0033】
[実施例3]
フリーネス350mlの晒広葉樹クラフトパルプから成る0.5重量%のパルプスラリーに、カオリンを対パルプ゜5重量%添加して紙料を調製した。この紙料500mlをDDJに加え、攪拌速度100rpmで15秒間攪拌した後に、硫酸バンドを対紙料当り2重量%添加し、15秒間攪拌した後に、合成例2のCPMを対紙料当たり0.2重量%添加し、更に15秒間攪拌を続けた後に、分子量約400万のCPAMを対紙料当り0.005〜0.05重量%添加し、15秒間攪拌を続けた後に20秒間濾水した。濾液の濃度から填料及び微細繊維の歩留まりを測定し、結果を表4に示した。
【0034】
[比較例3]
実施例3と同じ条件で、CPMを添加しないでDDJテストを行い、填料及び微細繊維の歩留まりを測定し、結果を表4に示した。
表4より、実施例2と同様に酸性の紙料においても、CPMを添加後に、 高分子量のCPAMを添加することによって、CPAMを単独で添加するよりも填料及び微細繊維の歩留まりは向上する。
【0035】
【表4】
【0036】
[実施例4]
新聞故紙の脱墨パルプ60%、晒サーモメカニカルパルプ20%、晒グランドウッドパルプ10%、針葉樹晒クラフトパルプ10% から成る0.5重量%のパルプスラリーに、炭酸カルシウムを対パルプ5重量%添加して紙料を調成した。この紙料500mlをDDJに加え、攪拌速度1000rpmで15秒間攪拌した後に、硫酸バンドを対紙料当り0.5重量%添加し、15秒間攪拌した後に、 合成例2のCPMを対紙料当り0.2重量%添加し、更に15秒間攪拌を続けた後に、分子量約400万のCPAMを対紙料当り0.005〜0.05重量%添加し、15秒間攪拌を続けた後に20秒間濾水した。濾液の濃度から填料及び微細繊維の歩留まりを測定し、結果を表5に示した。
【0037】
[実施例5]
実施例4と同じ条件で、合成例3のCPMを添加してDDJテストを行い、填料及び微細繊維の歩留まりを測定し、結果を表5に示した。
【0038】
[比較例4]
実施例4と同じ条件で、 CPMを添加しないでDDJテストを行い填料及び微細繊維の歩留まりを測定し、結果を表5に示した。
表5より、脱墨パルプ及び機械パルプが主体の中性の紙料においても、CPMを添加後に、 高分子量のCPAMを添加することによって、 CPAMを単独で添加するよりも填料及び微細繊維の歩留まりは向上する。
【0039】
【表5】
Claims (3)
- (a)スチレン又はメチルスチレン、
(c)セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ミストリルトリメチルアンモニウムブロミド及びビニルベンジルジメチルドデシルアンモニウムの少なくとも1つから選ばれたカチオン性界面活性剤、及び
(d)カチオン性重合開始剤、
から重合され、pH11以下でカチオン性を有し、粒径が100nm以下のカチオン性高分子マイクロパーティクルをパルプと填料を含む紙料に添加後、分子量が100万以上のカチオン性水溶性高分子を添加して、填料及び微細繊維の歩留まりを向上させることを特徴とする抄紙方法。 - 重合用成分としてさらに、(b)メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、アクリロキシエチルトリエチルアンモニウムクロリド及びビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリドの少なくとも1つから選ばれたカチオン性単量体を含む請求項1記載の抄紙方法。
- カチオン性高分子マイクルロパーティクルが、前記エチレン系不飽和単量体(a)が70〜95重量%、カチオン性単量体(b)が0〜30重量%、カチオン性界面活性剤(c)が1〜30重量%、カチオン性重合開始剤(d)が0.5〜5重量%の重量比で合成されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の抄紙方法。
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