JP2005261305A - 加熱調理用エビの製造方法、エビを含むフライ用食品の製造方法及びエビを含むフライ食品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の加熱調理用エビの製造方法は、生エビ又は解凍エビを、アルカリ溶液に接触させる工程(A)、少なくともエビ表面のタンパク質を変性させる加熱処理を行なう工程(B)及び、エビを、アミノ酸と、有機酸及び/又は有機酸塩とを含む静菌性溶液に接触させる工程(C)を含み、前記工程(B)を、前記工程(A)の後であって、前記工程(C)の前に行なうことを特徴とし、本発明のフライ用食品又はフライ食品の製造方法は、前記得られた加熱調理用エビを用いることを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
しかし、エビは、加熱調理した場合であっても、常温流通させるような10℃を超える温度で保持されると、経時的に微生物が急激に増殖するため、その賞味期限が他の食品に比して短いという問題がある。
そこで、このような食品における微生物の増殖を抑制するために、例えば、特許文献1には、グリシン、酢酸塩、有機酸又はその酸性塩及びグリセリン低級脂肪酸エステルを有効成分とする食品防腐剤を用いる静菌処理技術が提案されている。
このような食品防腐剤を用いた場合には、常温流通させるエビの加熱調理食品において微生物増殖の抑制が十分可能であるが、加熱調理後のエビのぷりぷりした食感が著しく低下し、加熱調理後の歩留まりも低下するという問題がある。
しかし、このようなアルカリ処理したエビは、加熱処理しても前述の常温流通させるエビの加熱調理食品において経時的な微生物増殖を抑制することはできない。
また、特許文献3には、常温流通させるために微生物の増殖を抑制し食感を良好にする技術として、塩化ナトリウム及び炭酸水素ナトリウム等からなるアルカリ水溶液にエビを浸漬した後に、アミノ酸並びに有機酸及び/又は有機酸塩からなる水溶液に浸漬することを特徴とするエビの処理方法が提案されている。要するに、上記アルカリ溶液にエビを浸漬する技術と、アミノ酸や有機酸等を含む食品防腐剤にかかる静菌処理技術とを組合せた発明も提案されている。
そこで、試行錯誤した結果、意外にも、アルカリ溶液処理をした後、静菌性溶液による処理を行なう前に加熱処理工程を行なうことにより本発明の課題を解決しうることを見出し本発明を完成した。
このような加熱処理は、例えば、アルカリ溶液処理の前に行った場合、若しくは静菌性溶液による処理の後に行なった場合には所望の効果が得られない。従って、本発明における作用は、その原理は不確かであるが、アルカリ溶液処理の後、加熱処理を行なうことにより、エビの表面のタンパク質を変成させ、アルカリ溶液をエビ内部にある程度保持した状態で、静菌性溶液による処理を行なうことで、エビ表面の静菌を十分に行なうと共に、該静菌性溶液がエビ内部に浸透し、アルカリ溶液と置換することをある程度抑制することによって得られる作用ではないかと思われる。
また本発明によれば、前記加熱調理用エビの製造方法により得られたエビを含むフライ食品用中種を準備する工程(a)及び、前記フライ食品用中種に、静菌剤を含むコロモを付ける工程(b)を含むことを特徴とするエビを含むフライ用食品の製造方法が提供される。
更に本発明によれば、前記フライ用食品の製造方法により得られるフライ用食品を油ちょうすることを特徴とするエビを含むフライ食品の製造方法が提供される。
また、本発明のエビを含むフライ用食品及びエビを含むフライ食品の製造方法では、前記加熱調理用エビの製造方法により得られたエビを利用するので、食感に優れると共に、常温流通時においても優れた静菌性を示し、各種エビを利用したフライ食品、それに用いる冷蔵又は冷凍フライ用食品を提供することができる。
本発明の加熱調理用エビの製造方法(以下、製造方法(1)という)では、生エビ又は解凍エビを、アルカリ溶液に接触させる工程(A)を行なう。
工程(A)に用いるエビは、生エビ又は解凍エビであれば特に限定されず、所望の加熱調理食品に応じて、その大きさや種類等を適宜選択することができる。また、アルカリ溶液に接触させその効果を容易に得るために剥きエビの使用が好ましい。
前記アルカリ溶液は、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、ポリリン酸ナトリウム等からなる群より選択される少なくとも1種のアルカリ性塩類を含む水溶液が挙げられ、これらに塩化ナトリウムを加える態様も好適である。また、歩留まりやエビの呈味等を向上させるために必要に応じて、クエン酸3ナトリウム、グルタミン酸ソーダ等のアミノ酸塩類等を含有させることもできる。
前記アルカリ性塩類の濃度は、特に限定されないが、エビの呈味等を損ねることがないように、アルカリ溶液全量に対して、通常0.1〜8質量%、特に1〜5質量%が好ましい。
前記接触は、通常、アルカリ溶液にエビを浸漬することにより行なうことができるが、例えば、エビの表面がアルカリ溶液に常時接触するようにアルカリ溶液をエビに噴霧して放置する工程を繰返す方法等を採用することもできる。
工程(B)において加熱処理は、通常、ボイル又は蒸煮等により行なうことができるが、エビ表面を熱変性させ、本発明の所望の効果が得られる加熱処理であれば特に限定されない。
前記加熱条件は、エビの種類や大きさ等により本発明の効果を勘案して適宜決定することができるが、エビの中心品温が通常50〜90℃、好ましくは55〜80℃、特に好ましくは60〜78℃程度となるようにボイル又は蒸煮等により行なうことができる。
ここで、エビの中心品温は、デジタルサーモメータ(横河電機社製)のプローブにより測定した温度を意味する。
具体的には、例えば、バナメイ種の6.0〜7.0g程度のエビを用いる場合、98℃のボイルで30〜90秒間程度、好ましくは40〜70秒間程度の加熱を行なうことでエビの中心品温を上記範囲にすることができる。
前記中心品温が50℃未満の場合には、得られるエビの静菌効果が低下するおそれがあると共に、食感も低下傾向にあるので好ましくなく、中心品温が90℃を超えると、得られるエビの食感が低下傾向にあるので好ましくない。
工程(C)に用いるアミノ酸としては、微生物の増殖を抑制しうるアミノ酸であれば良く、例えば、アラニン、グリシン、スレオニン等が挙げられ、使用に際しては単独でも2種以上の混合物であっても良い。
静菌性溶液中のアミノ酸の含有割合は、その所望の効果を勘案して適宜決定することができるが、通常0.1〜10質量%、好ましくは1〜8質量%である。アミノ酸量が0.1質量%未満では所望の効果が得られ難く、10質量%を超えるとエビの呈味等が低下する恐れがあるので好ましくない。
工程(C)に用いられる有機酸塩としては、例えば、酢酸ナトリウム、クエン酸3ナトリウム、コハク酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、フマル酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、リン酸塩類又はこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
静菌性溶液中の有機酸及び/又は有機酸塩の含有割合は、これらの所望の効果を勘案して適宜決定することができるが、通常1〜10質量%、好ましくは2〜8質量%である。また、有機酸及び/又は有機酸塩の種類に応じ、例えば、静菌性溶液のpHが2〜5.5程度になるように配合することが好ましい。
前記接触は、通常、静菌性溶液にエビを浸漬することにより行なうことができるが、例えば、エビの表面が静菌性溶液に常時接触するように静菌性溶液をエビに噴霧して放置する工程を繰返す方法等を採用することもできる。
例えば、工程(C)の静菌性溶液の効果を更に有効にするために、工程(B)により加熱処理したエビを工程(C)に供する前に、10℃以下、特に1〜5℃程度に冷却する工程(B-1)等を行なうこともできる。このような冷却は、例えば、氷水等を用いて行なうことができる。
前記フライ食品用中種は、前記製造方法(1)により得られたエビを含んでおれば、フライ食品の種類に応じて適宜準備することができる。例えば、フライ食品が、エビフライ、エビてんぷら等の場合は、製造方法(1)により得られたエビをそのまま、若しくは適当な大きさにカットして中種とすることができる。また、フライ食品がエビカツ、エビコロッケの場合には、製造方法(1)により得られたエビをそのまま、若しくは適当な大きさにカットして、例えば、公知のエビカツ用のつなぎ中種や、公知のエビコロッケ用のつなぎ中種と混合して所望形状に成形すること等により中種を準備することができる。
この際、製造方法(1)により得られたエビ以外の中種材料を用いる場合には、該材料にも公知の静菌処理等を施すことが好ましい。
工程(b)のコロモ付けは、公知の方法等により行なうことができ、フライ食品の種類に応じて、打ち粉、バッター、パン粉等の種類やその使用、更にはコロモ付け回数や量を適宜選択して行なうことができる。この際、コロモには、静菌剤を含有させることが好ましく、静菌剤としては、上述の静菌性溶液において例示したアミノ酸、有機酸や有機酸塩、更には公知の静菌剤等が使用でき、その使用量はフライ類の種類等に応じて適宜選択することができる。
工程(c)は、通常、冷凍食品を製造する公知の方法等により行なうことができる。
油ちょうは、フライ食品の種類に応じて公知の方法等により適宜条件を決定して行なうことができる。
製造方法(3)により得られるフライ食品としては、エビカツ、エビてんぷら、エビフライ、エビコロッケ等が挙げられるが、これらに限定されない。また、得られたフライ食品は、例えば、常温流通される惣菜品、弁当のおかず等の他に、サンドイッチや惣菜パンの具材として好適に用いることができる。
実施例1
商品名「リン酸塩 No.35」(第一化成社製)3.0質量%、塩化ナトリウム1.5質量%となるように水に溶解しpH8.5のアルカリ溶液を調製した。また、有機酸及び有機酸塩としての商品名「サンキプロ55」(三栄源エフ・エフ・アイ社製)3.0質量%、及びグリシン5.0質量%となるように水に溶解しpH5.0の静菌性溶液を調製した。
次に、1匹あたり約6.0〜7.0gの解凍剥きバナメイエビを準備し、上記で調製したアルカリ溶液(4℃)に30分間浸漬し、液きりした後に、98℃で60秒間ボイルした。
ボイル後、エビを氷水にて冷却し、液きりした後、上記で調製した静菌性溶液(4℃)に60分間浸漬し、液きりして加熱調理用エビを調製した。
得られた加熱調理用エビを透明パウチ袋に各々50gづつ入れ、コンベクションオーブンを用いて10分間蒸煮した後、氷水で袋ごと冷却した。得られた加熱調理エビの1袋について直ちに1gあたりの生菌数(初発生菌数)を標準平板菌数測定法に従って測定した。次いで、30℃で24時間及び48時間保存後、同様に生菌数を測定した。また、アルカリ溶液及び静菌性溶液による処理後の平均歩留まり、並びに加熱調理後の平均歩留まりについても測定した。これらの結果を平均値として表1に示す。
更に、上記で得られた加熱調理後のエビを4人の専門パネルによりエビのぷりぷりした食感について評価してもらった。結果を表1に示す。尚、評価は、後述する比較例2の官能評価を5点とし、これを基準として0〜5点で評価してもらい、その平均値を評価結果とした。
実施例1と同様の解凍剥きバナメイエビを、アルカリ溶液による処理、続くボイル処理及び静菌性溶液による処理を行なわずにそのまま加熱調理用エビとした以外は実施例1と同様に各測定及び評価を行なった。結果を表1に示す。尚、24時間後の生菌数の増殖が著しかったので48時間後の生菌数の測定は行わなかった。
実施例1と同様の解凍剥きバナメイエビを準備し、アルカリ溶液による処理のみを行なったものを加熱調理用エビとした以外は実施例1と同様に各測定及び評価を行なった。結果を表1に示す。尚、24時間後の生菌数の増殖が著しかったので48時間後の生菌数の測定は行わなかった。
実施例1と同様の解凍剥きバナメイエビを準備し、静菌性溶液による処理のみを行なったものを加熱調理用エビとした以外は実施例1と同様に各測定及び評価を行なった。結果を表1に示す。
実施例1と同様の解凍剥きバナメイエビを準備し、アルカリ溶液による処理を行なった後、続くボイル処理を行なわずに、静菌性溶液による処理を行なったものを加熱調理用エビとした以外は実施例1と同様に各測定及び評価を行なった。結果を表1に示す。
実施例1と同様の解凍剥きバナメイエビを準備し、アルカリ溶液による処理、続くボイル処理の順番を逆にし、ボイル処理後にアルカリ溶液による処理を行ない、続いて静菌性溶液による処理を行なったものを加熱調理用エビとした以外は実施例1と同様に各測定及び評価を行なった。結果を表1に示す。
実施例1と同様の解凍剥きバナメイエビを準備し、アルカリ溶液による処理の後、続くボイル処理を行なわず、静菌性溶液による処理を行なった後に前記ボイル処理を行なったものを加熱調理用エビとした以外は実施例1と同様に各測定及び評価を行なった。結果を表1に示す。
1匹あたり約6.0〜7.0gの解凍剥きバナメイエビ30匹を10匹ごとに分け、実施例1で調製したアルカリ溶液(4℃)に30分間浸漬し、液きりした後に、98℃で実施例2では30秒間、実施例3では60秒間、実施例4では90秒間ボイルした。ボイル直後にデジタルサーモメータ(横河電機社製)のプローブにより各エビの中心品温を測定した。その平均値を表2に示す。
続いて、ボイル後のエビを氷水にて冷却し、液きりした後、実施例1と同様に加熱調理用エビを調製し、各測定及び評価を行なった。結果を表2に示す。尚、24時間保存後の生菌数の測定は行なわなかった。
1匹あたり約11.0〜12.0gの解凍剥きインディカスエビ(実施例2〜4の約2倍の質量のエビ)30匹を10匹ごとに分け、実施例1で調製したアルカリ溶液(4℃)に60分間浸漬し、液きりした後に、98℃で実施例5では60秒間、実施例6では90秒間、実施例7では120秒間ボイルした。ボイル直後にデジタルサーモメータ(横河電機社製)のプローブにより各エビの中心品温を測定した。その平均値を表3に示す。
続いて、ボイル後のエビを氷水にて冷却し、液きりした後、実施例1と同様に加熱調理用エビを調製し、各測定及び評価を行なった。結果を表3に示す。尚、48時間保存後の生菌数の測定は行なわなかった。また、食感官能試験において評価は、後述する比較例8の官能評価を5点とし、これを基準として0〜5点で評価してもらい、その平均値を評価結果とした。
実施例5〜7と同様の解凍剥きインディカスエビを、アルカリ溶液による処理、続くボイル処理及び静菌性溶液による処理を行なわずにそのまま加熱調理用エビとした以外は実施例5〜7と同様に各測定及び評価を行なった。結果を表3に示す。
実施例5〜7と同様の解凍剥きインディカスエビを準備し、アルカリ溶液による処理のみを行なったものを加熱調理用エビとした以外は実施例5〜7と同様に各測定及び評価を行なった。結果を表3に示す。
実施例5〜7と同様の解凍剥きインディカスエビを準備し、静菌性溶液による処理のみを行なったものを加熱調理用エビとした以外は実施例5〜7と同様に各測定及び評価を行なった。結果を表3に示す。
実施例5〜7と同様の解凍剥きインディカスエビを準備し、アルカリ溶液による処理を行なった後、続くボイル処理を行なわずに、静菌性溶液による処理を行なったものを加熱調理用エビとした以外は実施例5〜7と同様に各測定及び評価を行なった。結果を表3に示す。
Claims (7)
- 生エビ又は解凍エビを、アルカリ溶液に接触させる工程(A)、
少なくともエビ表面のタンパク質を変性させる加熱処理を行なう工程(B)及び、
エビを、アミノ酸と、有機酸及び/又は有機酸塩とを含む静菌性溶液に接触させる工程(C)を含み、
前記工程(B)を、前記工程(A)の後であって、前記工程(C)の前に行なうことを特徴とする加熱調理用エビの製造方法。 - 工程(B)の加熱処理を、エビの中心品温が50〜90℃となるようにボイル又は蒸煮により行なうことを特徴とする請求項1記載の加熱調理用エビの製造方法。
- 工程(C)を行なうに際し、工程(B)で加熱処理したエビを10℃以下に冷却する工程(B-1)を行なうことを特徴とする請求項1又は2記載の加熱調理用エビの製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法により得られたエビを含むフライ食品用中種を準備する工程(a)及び、
前記フライ食品用中種に、静菌剤を含むコロモを付ける工程(b)を含むことを特徴とするエビを含むフライ用食品の製造方法。 - 工程(b)の後、更に凍結させる工程(c)を含む請求項4記載のフライ用食品の製造方法。
- 請求項4又は5記載の製造方法により得られたフライ用食品を油ちょうすることを特徴とするエビを含むフライ食品の製造方法。
- フライ食品が、エビカツ、エビてんぷら、エビフライ又はエビコロッケであることを特徴とする請求項6記載の製造方法。
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