JP2005200757A - 表面処理金属板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 樹脂皮膜が金属板に形成されている表面処理金属板であって、前記樹脂皮膜は、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂、シランカップリング剤、及び、シリカ粒子を含む皮膜形成用組成物から形成され、前記ポリウレタン樹脂は、特定のウレタンプレポリマーを鎖延長剤で鎖延長反応して得られるものである。また、特定組成の下地処理を施すことによって、耐テープ剥離性を改善することができる。
【選択図】 なし
Description
前記ウレタンプレポリマーを構成するポリオール成分として、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエーテルポリオール、及び、カルボキシル基を有するポリオールの全てを必須的に使用するものであることを特徴とする。特定組成のポリウレタン樹脂を含有する上記皮膜形成用組成物を使用することにより、耐食性、塗装性、加工性(耐黒化性)に優れた樹脂皮膜が得られる。さらに、前記シランカップリング剤として、下記化学式(1)で表わされるシランカップリング剤を使用することが好ましい。
本発明において、前記鎖延長剤として好ましいのは、エチレンジアミンまたはヒドラジンである。前記1,4−シクロヘキサンジメタノールと前記ポリエーテルポリールの質量比が1,4−シクロヘキサンジメタノール:ポリエーテルポリオール=1:1〜1:19であることが望ましい。前記ポリエーテルポリオールとして好ましいのは、ポリオキシプロピレングリコール又はポリテトラメチレンエーテルグリコールである。また、前記カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂の酸価は10〜60mgKOH/gであることが好ましい。
0.7≦P/Al≦4.5……数式(2)
前記表面改質層が、さらに有機系樹脂を含有することも好ましい態様である。前記表面改質層に含まれる有機系樹脂の構造に由来するFT−IRの吸収強度(ピーク面積)は、0.1〜15であることが好ましい。
P:0.0005〜1.5%
Al:0.0001〜0.5%
4.5≦Si/Al≦230、1.5≦Si/P≦60。
各成分の含有量を上記の様にすることにより、加工性(耐黒化性)および導電性に一層優れる表面処理金属板が得られるからである。また、上記各成分の含有量は、合計が100質量部となるようにすることが好ましい。皮膜形成用組成物が水性組成物の場合は、上記各成分(合計100質量部)の他に、さらに水を含有し、水の含有量は、皮膜形成用水性組成物の塗工性などに応じて適宜調整すればよい。以下、シリカ粒子、及び、シランカップリング剤について説明する。
上記シランカップリング剤を含有することによって、得られる塗膜の塗装性、耐食性を高めることができる。上記化学式(1)で表される末端にグリシドキシ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シランなどを挙げることができる。グリシドキシ基を有するシランカップリング剤を使用するのは、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂に対する架橋反応性に富むので、得られる樹脂皮膜の硬度が高くなって、潤滑性が向上するからである。
本態様において、前記カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂の好ましい含有量は、前記皮膜形成用組成物100質量部の残部を構成することから、5質量部以上、より好ましくは25質量部以上、69質量部以下、より好ましくは58質量部以下である。
前記アジリジン化合物としては、例えば、エチルイミン、トリアジリジニルホスフィンオキサイド、アジリジニルエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアジリジン、ヘキサメチレンビスアジリジンカルボキシアマイド、ジフェニルメタンビスアジリジンカルボキシアマイド、トリメチロールプロパンアジリジニルプロピオネート、テトラメチロールプロパンアジリジニルプロピオネート、トルエンビスアジリジンカルボキシアマイド、ビスフタロイルメチルアジリジン、トリメチロールプロパンメチルアジリジンプロピオネートなどを挙げることができるが、これらの限定されるものではない。
0.7≦P/Al≦4.5……数式(2)
上記Si/Pの比率は、リン酸によるエッチング作用とそれに伴うSiO2に対する沈着促進作用に影響を及ぼす因子となり、この比が0.5未満では、表面改質層中のSiO2の比率が相対的に不足気味となって耐テープ剥離性が低下傾向となり、逆にこの比が20を超えると、シリカ含量に比べてリン酸アルミニウム塩の量が不足することになり、リン酸アルミニウム塩を使用することによる前述した作用が有効に発揮されなくなるためと思われる。こうした観点から、表面改質層中のSi/Pのより好ましい比率は1以上、更に好ましくは2以上で、より好ましくは15以下、更に好ましくは10以下である。
P:0.0005〜1.5%
Al:0.0001〜0.5%
4.5≦Si/Al≦230、1.5≦Si/P≦60
ちなみに、下地用処理剤の固形分濃度が0.01%未満では、一回の処理で満足のいく厚さの表面改質層を形成するのが困難となり、多数回の処理が必要になるため実際的でなく、また15%を超えて過度に高濃度になると、処理液中の気液界面などに固形物が生成し易くなり、押し疵やブツなどの製品不良が発生し易くなる傾向が生じてくる。こうした点を考慮してより好ましい固形分濃度は0.05%以上、10%以下、更に好ましくは0.1%以上、5%以下である。
(1)耐食性
得られた表面処理金属板(樹脂塗装鋼板)について、エッジシールした平板材の塩水噴霧試験を、JIS−Z2371に従って実施して、白錆が1%発生するまでの時間にて評価した。
(評価基準)
◎:白錆発生 240時間以上
○:白錆発生 120時間以上〜240時間未満
△:白錆発生 72時間以上〜120時間未満
×:白錆発生 72時間未満
得られた表面処理金属板(樹脂塗装鋼板)にメラミン系塗料(関西ペイント社製アミラック#1000)を塗装後、160℃で焼き付けた後の塗膜厚が約20μmになるようにした。得られた塗膜に1mm角の碁盤目を100ます入れ、テープ剥離した後の塗膜の残存率を測定した。
(評価基準)
◎:残存率:91〜100%
○:残存率:71〜90%
△:残存率:51〜70%
×:残存率:0〜50%
得られた表面処理金属板(樹脂塗装鋼板)の深絞り加工性を評価するために、80トンのクランクプレス装置を用いて、単発のプレス試験を実施し、成形品の摺動面の擦り疵、型かじり、耐黒化性を目視で評価した。
(評価基準)
◎:極めて良い。
○:良い
△:悪い
×:極めて悪い
得られた表面処理金属板(樹脂塗装鋼板)の潤滑性の評価として、摺動試験機を用いて、加圧力150kgにおける引き抜き時の荷重(摩擦力)から鋼板表面の動摩擦係数を求めた。
(評価基準)
◎:0.01以上〜0.1以下
○:0.1超〜0.2以下
△:0.2超〜0.3以下
×:0.3超
得られた表面処理金属板(樹脂塗装鋼板)の表面抵抗を表面抵抗計(ダイヤイスツルメンツ(株)製Lorest−EP)に2短針プローブを取付けて測定した。
(評価基準)
◎:0.01Ω以上、0.1Ω以下
○:0.1Ω超、1Ω以下
△:1Ω超、10Ω以下
×:10Ω超
供試材の表面に、フィラメントテープ(スリオンテック製、#9510)を貼り付け、40℃×RH98%の雰囲気で24時間、48時間保管した後、フィラメントテープを剥離し、上塗り樹脂皮膜の残存している面積割合で評価した。
(評価基準)
◎:残存率100%
○〜◎:残存率95%以上100%
○:残存率90%以上95%未満
△:残存率:70%以上90%未満
×:残存率70%未満
アルカリ脱脂剤(CL−N364S,日本パーカーライジング社製)を20g/l、60℃に調整した脱脂液に、供試材を2分間浸漬し、引き上げ、水洗、乾燥した後、当該供試材表面にセロハンテープ(ニチバン社製)を貼り付け、12時間、24時間後に剥離し、上塗り樹脂皮膜の残存している面積割合で評価した。
(評価基準)
◎:残存率100%
○〜◎:残存率95%以上100%
○:残存率90%以上95%未満
△:残存率:70%以上90%未満
×:残存率70%未満
形成した表面処理鋼板の表面改質層中の樹脂含有量を調査するためのFT−IR測定及び分析条件は、以下のとおりである。
測定方法:高感度反射法(入射角75°、平行偏光で赤外光を照射した)
比較材:金蒸着ミラー
分解能:4cm-1
積算回数:500回
装置:日本電子(株)製JIR−5500型フーリエ変換赤外分光光度計
IR−RSC110反射測定ユニット(角度可変型)
IR−SEM100試料切換ステージ
1496cm-1〜1776cm-1のピーク面積より、有機系樹脂を添加した鋼板の吸収強度から、有機系樹脂を添加していない鋼板の吸収強度を差し引いて、表面改質層中の有機系樹脂の構造に由来する吸収強度を算出した。
製造例1
撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの合成装置にポリオール成分として保土ヶ谷化学工業(株)製ポリテトラメチレンエーテルグリコール(平均分子量1000)を60g、1,4−シクロヘキサンジメタノール14g、ジメチロールプロピオン酸20gを仕込み、さらに反応溶媒としてN−メチルピロリドン30.0gを加えた。イソシアネート成分としてトリレンジイソシアネート(以下、単に「TDI」という場合がある)を104g仕込み、80から85℃に昇温し5時間反応させた。得られたプレポリマーのNCO含有量は、8.9%であった。さらにトリエチルアミン16gを加えて中和を行い、エチレンジアミン16gと水480gの混合水溶液を加えて、50℃で4時間乳化し、鎖延長反応させてポリウレタン樹脂水性分散液1を得た(固形分29.1%、酸価41.4)。
撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの合成装置にポリオール成分として保土ヶ谷化学工業(株)製ポリテトラメチレンエーテルグリコール(平均分子量1500)を67g、1,4−シクロヘキサンジメタノール30g、ジメチロールプロピオン酸14gを仕込み、さらに反応溶媒としてN−メチルピロリドン120.0gを加えた。イソシアネート成分としてトリレンジイソシアネート(TDI)を78g仕込み、80〜85℃に昇温し5時間反応させた。得られたプレポリマーのNCO含有量は、2.3%であった。さらにトリエチルアミン11gを加えて中和を行い、ヒドラジン一水和物5gと水330gとの混合水溶液を加え、50℃で5時間乳化し、鎖延長反応させて、ポリウレタン樹脂水性分散液2を得た(固形分30.5%、酸価29.8)。
撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの合成装置にポリオール成分として保土ヶ谷化学工業(株)製ポリテトラメチレンエーテルグリコール(平均分子量1500)を60g、1,4−シクロヘキサンジメタノール14g、ジメチロールプロピオン酸6gを仕込み、さらに反応溶媒としてN−メチルピロリドン90.0gを加えた。イソシアネート成分としてジフェニルメタンジイソシアネート(以下、単に「MDI」という場合がある)を100g仕込み、80〜85℃に昇温し10時間反応させた。得られたプレポリマーのNCO含有量は、6%であった。さらにトリエチルアミン5gを加えて中和を行い、ヒドラジン一水和物6gと水350gとの混合水溶液を加え、50℃で5時間鎖延長反応させて、ポリウレタン樹脂水性分散液3を得た(固形分30.2%、酸価15.2)。
撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの合成装置にポリオール成分として保土ヶ谷化学工業(株)製ポリテトラメチレンエーテルグリコール(平均分子量1500)を60g、1,4−シクロヘキサンジメタノール14g、ジメチロールプロピオン酸13gを仕込み、さらに反応溶媒としてN−メチルピロリドン90.0gを加えた。イソシアネート成分としてTDIを34g、MDIを50g仕込み、80〜85℃に昇温し9時間反応させた。得られたプレポリマーのNCO含有量は、5%であった。さらにトリエチルアミン11gを加えて中和を行い、ヒドラジン一水和物8gと水325gとの混合水溶液を加え、50℃で3時間、乳化し鎖延長反応させて、ポリウレタン樹脂水性分散液4を得た(固形分31.3%、酸価31.0)。
撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの合成装置にポリオール成分として保土ヶ谷化学工業(株)製ポリテトラメチレンエーテルグリコール(平均分子量1000)を50g、1,4−シクロヘキサンジメタノール14g、ジメチロールプロピオン酸6gを仕込み、さらに反応溶媒としてN−メチルピロリドン90.0gを加えた。イソシアネート成分としてジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下、単に「水素添加MDI」という場合がある)を104g仕込み、東京ファインケミカル(株)製有機錫系触媒L−101を6滴加えて、90〜95℃に昇温し9時間反応させた。得られたプレポリマーのNCO含有量は、6.3%であった。さらにトリエチルアミン5gを加えて中和を行い、ヒドラジン一水和物6gと水325gとの混合水溶液を加えて、50℃で5時間、乳化し、鎖延長反応させて、ポリウレタン樹脂水性分散液5を得た(固形分29.9%、酸価16.3)。
撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの合成装置にポリオール成分として旭電化工業(株)製ポリオキシプロピレングリコール(P−1000:平均分子量1000)を50g、1,4−シクロヘキサンジメタノール2.9g、ジメチロールプロピオン酸6gを仕込み、さらに反応溶媒としてN−メチルピロリドン60.0gを加えた。イソシアネート成分としてジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下、単に「水素添加MDI」という場合がある)を79g仕込み、東京ファインケミカル(株)製有機錫系触媒L−101を3滴加えて、90〜95℃に昇温し8時間反応させた。得られたプレポリマーのNCO含有量は、7.6%であった。さらにトリエチルアミン5gを加えて中和を行い、ヒドラジン一水和物と13gと水280gとの混合水溶液を加えて、50℃で5時間、乳化し、鎖延長反応させて、ポリウレタン樹脂水性分散液6を得た(固形分29.8%、酸価18.0)。
撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの合成装置にポリオール成分として三洋工業(株)製ポリオキシプロピレングリコール(PP−400:平均分子量400)を40g、1,4−シクロヘキサンジメタノール7.2g、ジメチロールプロピオン酸25gを仕込み、さらに反応溶媒としてN−メチルピロリドン80.0gを加えた。イソシアネート成分としてジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下、単に「水素添加MDI」という場合がある)を105g仕込み、東京ファインケミカル(株)製有機錫系触媒L−101を2滴加えて、90〜95℃に昇温し8時間反応させた。得られたプレポリマーのNCO含有量は、2.2%であった。さらにトリエチルアミン21gを加えて中和を行い、ヒドラジン一水和物と4.5gと水330gとの混合水溶液を加えて、50℃で5時間、乳化し、鎖延長反応させて、ポリウレタン樹脂水性分散液7を得た(固形分29.7%、酸価58.0)。
撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの乳化設備のオートクレイブに酸価160mgKOH/gのエチレンアクリル酸共重合体200g、48%水酸化ナトリウム水溶液4g、25%アンモニア水22gおよび軟水581gを加えて密封し、150℃、4気圧で3時間の高速撹拌を行い、40℃に冷却して60〜99質量%のエチレンと1〜40質量%のエチレン性不飽和カルボン酸からなる共重合体の水分散体(樹脂分25%、酸価160mgKOH/g)を得た。次に、製造例1で得た500gのポリウレタン樹脂水分散液1を、撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの撹拌釜内で常温で撹拌しているところに、上記エチレンアクリル酸共重合体樹脂の水分散体175gを加えて、加熱撹拌を行い、70℃まで昇温してから25%の4,4'−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン水溶液20gと軟水58gとを加えて、80〜85℃で2時間撹拌を行ってから、40℃に冷却し、150メッシュの濾過布で濾過して、改質ポリウレタン樹脂水性分散液8を得た。
撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの乳化設備のオートクレイブに、ハネウエル社製の酸価16mgKOH/gを有する酸化ポリエチレンワックスAC−629を200g、48%水酸化ナトリウム水溶液5g、東邦化学工業(株)製ペグノールL−12を25g、及び、軟水420gを加えて密封し、150℃、5気圧で3時間の高速撹拌を行い、40℃に冷却して、酸化ポリエチレンワックスの水分散液(樹脂分35.1%、酸価16mgKOH/g)を得た。次に、製造例4で得た500gのポリウレタン樹脂水分散液4を、撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの撹拌釜内で常温で撹拌しているところに、上記酸化ポリエチレンワックスの水分散液100gを加えて均一に撹拌し、さらに1.8gのCaCO3を加えて、80℃まで昇温後冷却して架橋反応を行って、改質ポリウレタン樹脂水性分散液9を得た。
撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量1Lの乳化重合設備に水180g、東邦化学工業(株)製ペグノールL−12を5g仕込み85℃に加熱した。これに、別のモノマー混合設備において、2−エチルヘキシルアクリレート160g、メチルメタクリレート200g、メタクリル酸40gからなるモノマーを、東邦化学工業(株)製ペグノールL−30Pを15g、水350gに混合して調製したモノマー乳化液を、乳化重合設備の温度を80〜85℃に保ちつつ6時間を要して滴下した。滴下終了後、85から90℃で30分間熟成し、冷却してアクリル樹脂エマルジョン(樹脂分38.8%、酸価36)を得た。次に、製造例5で得た500gのポリウレタン樹脂水性分散液5を、撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの撹拌釜内で常温で撹拌しているところに、上記アクリル樹脂エマルジョン138gを加えて撹拌し、さらに、25%の4,4'−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン水溶液5gとMgCO3 0.5gと軟水20gとを加えて、80〜85℃で2時間撹拌を行ってから、40℃に冷却し、150メッシュの濾過布で濾過して、改質ポリウレタン樹脂水性分散液10を得た。
撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量1Lの乳化重合設備に水180g、東邦化学工業(株)製ペグノールL−12を5g仕込み85℃に加熱した。これに、別のモノマー混合設備において、2−エチルヘキシルアクリレート160g、メチルメタクリレート200g、メタクリル酸40gからなるモノマーを、東邦化学工業(株)製ペグノールL−30Pを15g、水350gに混合して調製したモノマー乳化液を、乳化重合設備の温度を80〜85℃に保ちつつ6時間を要して滴下した。滴下終了後、85から90℃で30分間熟成し、冷却してアクリル樹脂エマルジョン(樹脂分38.8%、酸価36mgKOH/g)を得た。次に、製造例7で得た500gのポリウレタン樹脂水性分散液7を、撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの撹拌釜内で常温で撹拌しているところに、上記アクリル樹脂エマルジョン138gを加えて撹拌し、さらに、25%の4,4'−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン水溶液15gとMgCO3 1.5gと軟水20gとを加えて、80〜85℃で2時間撹拌を行ってから、40℃に冷却し、150メッシュの濾過布で濾過して、改質ポリウレタン樹脂水性分散液11を得た。
撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの合成装置にポリオール成分として保土ヶ谷化学工業(株)製ポリテトラメチレンエーテルグリコール(平均分子量1000)を80g、ジメチロールプロピオン酸20gを仕込み、さらに反応溶媒としてN−メチルピロリドン30.0gを加えた。イソシアネート成分としてトリレンジイソシアネートを104g仕込み、80から85℃に昇温し5時間反応させた。得られたプレポリマーのNCO含有量は、8.9%であった。さらにトリエチルアミン16gを加えて中和を行い、エチレンジアミン16gと水480gとの混合水溶液を加え、50℃で4時間、乳化し架橋反応させて鎖延長させたポリウレタン樹脂水性分散液12を得た(固形分30.1%、酸価41.4)。
撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの合成装置にポリオール成分として1,4−シクロヘキサンジメタノール50g、ジメチロールプロピオン酸20gを仕込み、さらに反応溶媒としてN−メチルピロリドン30.0gを加えた。イソシアネート成分としてトリレンジイソシアネートを104g仕込み、80から85℃に昇温し5時間反応させた。得られたプレポリマーのNCO含有量は、8.9%であった。さらにトリエチルアミン16gを加えて中和を行い、エチレンジアミン16gと水480gとの混合水溶液を加え、50℃で4時間、乳化し架橋反応させてポリウレタン樹脂水性分散液13を得た(固形分29.6%、酸価47.3)。
(実験例1)
得られたポリウレタン樹脂水性分散液および改質ポリウレタン樹脂水性分散液に、シリカ粒子(日産化学製スノーテックスXS)、シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学製KBM403)を添加し皮膜形成用水性組成物を調製した。尚、各成分の配合比は、固形分換算で、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂40質量部、シリカ粒子50質量部、シランカップリング剤10質量部となるように配合した。この皮膜形成用水性組成物を電気純亜鉛めっき鋼板の表面に絞りロールにて塗布し、板温90℃で加熱乾燥して、付着量0.4g/m2の樹脂皮膜が形成された樹脂塗装鋼板を得た。得られた樹脂塗装鋼板について、耐食性、加工性、塗装性などについて評価した結果を表1に示した。
ポリウレタン樹脂水性分散液1に、シリカ粒子(スノーテックスXS)、シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM403)を添加し皮膜形成用水性組成物を調製した。尚、各成分の配合比は、固形分換算で、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂10〜80質量部、シリカ粒子10〜80質量部、シランカップリング剤10質量部となるように配合した(ただし、合計100質量部とする)。この皮膜形成用水性組成物を電気純亜鉛めっき鋼板の表面に絞りロールにて塗布し、板温90℃で加熱乾燥して、付着量0.4g/m2の樹脂皮膜が形成された樹脂塗装鋼板を得た。得られた樹脂塗装鋼板について、耐食性、加工性、塗装性、導電性について評価した結果を表2に示した。
ポリウレタン樹脂水性分散液1に、シリカ粒子(スノーテックスXS)、シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM403)を添加し皮膜形成用水性組成物を調製した。尚、各成分の配合比は、固形分換算で、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂25〜50質量部、シリカ粒子50質量部、シランカップリング剤0〜25質量部となるように配合した(ただし、合計100質量部とする)。この皮膜形成用水性組成物を用いて、実験例2と同様の方法により樹脂塗装鋼板を作製した。得られた樹脂塗装鋼板について、耐食性、塗装性について評価した結果を表3にまとめた。皮膜形成用水性組成物の安定性も併せて表3に示した。
ポリウレタン樹脂水性分散液1に、シリカ粒子(スノーテックスXS)、シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM403)を添加し樹脂皮膜形成用水性組成物を調製した。尚、各成分の配合比は、固形分換算で、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂40質量部、シリカ粒子50質量部、シランカップリング剤10質量部となるように配合した。この皮膜形成用水性組成物を用いて、鋼板への付着量が0.01〜2.0g/m2となるように樹脂皮膜を形成した以外は、実験例2と同様の方法により樹脂塗装鋼板を作製した。得られた樹脂塗装鋼板について、耐食性、加工性、導電性について評価した結果を表4にまとめた。
ポリウレタン樹脂水性分散液1に、平均粒子径が4〜100nmのシリカ粒子、シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM403)を添加し樹脂皮膜形成用水性組成物を調製した。尚、各成分の配合比は、固形分換算で、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂40質量部、シリカ粒子50質量部、シランカップリング剤10質量部となるように配合した。この樹脂皮膜形成用水性組成物を用いた以外は、実験例2と同様の方法により樹脂塗装鋼板を作製した。得られた樹脂塗装鋼板の耐食性について評価した結果を表5にまとめた。
ポリウレタン樹脂水性分散液1に、シリカ粒子、表6に示したシランカップリング剤を添加し樹脂皮膜形成用水性組成物を調製した。尚、各成分の配合比は、固形分換算で、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂40質量部、シリカ粒子50質量部、シランカップリング剤10質量部となるように配合した。この皮膜形成用水性組成物を用いて、実験例2と同様の方法により樹脂塗装鋼板を作製した。得られた樹脂塗装鋼板の耐食性について評価した結果を表6にまとめた。
下地用表面処理剤としては、重リン酸アルミニウム(日本化学工業社製、固形分50質量%)、コロイダルシリカ(日産化学社製 ST−O)とを表7に示すような組成に混合した酸性水性液を使用した。この下地用表面処理剤をアルカリ脱脂した電気亜鉛めっき鋼板に、スプレーで吹き付け、余分な溶液をリンガーロールで除去した後、スプレー圧100kPaで5秒間水洗し、40℃で乾燥することにより、電気亜鉛めっき鋼板の亜鉛めっき層上に表面改質層を設けた。下地用表面処理剤中のSi,P、Al濃度は、ICP発光分析装置(セイコーアドバンス製)にて測定した。また、表面改質層中のSi、P、及びAlの含有量を蛍光X線装置(島津製作所 MIF2100)にて測定した。
下地用表面処理剤としては、ポリアクリル酸、重リン酸アルミニウム(日本化学工業社製、固形分50質量%)、コロイダルシリカ(日産化学社製 ST−O)とを表9に示すような組成に混合した酸性水性液を使用した。この下地用表面処理剤をアルカリ脱脂した電気亜鉛めっき鋼板に、スプレーで吹き付け、余分な溶液をリンガーロールで除去した後、スプレー圧100kPaで5秒間水洗し、40℃で乾燥することにより、電気亜鉛めっき鋼板の亜鉛めっき層上に表面改質層を設けた。下地用表面処理剤中のSi,P、Al濃度は、ICP発光分析装置(セイコーアドバンス製)にて測定した。また、表面改質層中のSi、P、及びAlの含有量を蛍光X線装置(島津製作所 MIF2100)にて測定した。
形成した表面処理鋼板の表面改質層中の有機系樹脂についてFT−IR測定を行った。表7に記載のS9(ポリアクリル酸の添加無)および表9に記載のS23(ポリアクリル酸添加有)の赤外吸収スペクトル(吸光度表示)をそれぞれ図1および図2に示した。また、ポリアクリル酸ナトリウムの標準スペクトル(透過率表示)を図3に示した。処理剤中にポリアクリル酸を0.50g/l添加した図2のスペクトルには、ポリアクリル酸を添加していない図1のスペクトルには観察されなかった1346cm-1、1421cm-1、1457cm-1、1592cm-1の吸収が観察される。これらは図3に示すポリアクリル酸ナトリウムの吸収と一致しており、添加したポリアクリル酸は、ポリアクリル酸塩の形になっていると考えられる。
Claims (16)
- 樹脂皮膜が金属板に形成されている表面処理金属板であって、前記樹脂皮膜は、
カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂:5〜69質量部;
シリカ粒子:30〜75質量部;及び
シランカップリング剤:1〜20質量部を含む皮膜形成用組成物から形成されるものであり、前記ポリウレタン樹脂は、ウレタンプレポリマーを鎖延長剤で鎖延長反応して得られるものであって、
前記ウレタンプレポリマーを構成するポリイソシアネート成分として、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートおよびジシクロヘキシルメタンジイソシアネートよりなる群から選択される少なくとも1種を必須的に使用し、
前記ウレタンプレポリマーを構成するポリオール成分として、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエーテルポリオール、及び、カルボキシル基を有するポリオールの全てを必須的に使用するものであることを特徴とする表面処理金属板。 - 前記鎖延長剤としては、エチレンジアミンまたはヒドラジンを使用するものである請求項1又は2に記載の表面処理金属板。
- 前記1,4−シクロヘキサンジメタノールと前記ポリエーテルポリオールの質量比が1,4−シクロヘキサンジメタノール:ポリエーテルポリオール=1:1〜1:19である請求項1〜3のいずれかに記載の表面処理金属板。
- 前記ポリエーテルポリオールは、ポリオキシプロピレングリコール又はポリテトラメチレンエーテルグリコールである請求項1〜4のいずれかに記載の表面処理金属板。
- 前記カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂の酸価は10〜60mgKOH/gである請求項1〜5のいずれかに記載の表面処理金属板。
- 前記皮膜形成用組成物は、さらに、酸価5mgKOH/g以上の第2のカルボキシル基含有樹脂を、前記カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂の含有量の1/2質量部以下含有し、前記第2の樹脂と前記カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂とが架橋剤で架橋された樹脂皮膜が形成されている請求項1〜6のいずれかに記載の表面処理金属板。
- 前記架橋剤は、エポキシ系架橋剤、2価の金属系架橋剤、或いは、アジリジン系架橋剤である請求項7に記載の表面処理金属板。
- 前記シリカ粒子の平均粒子径は、1〜9nmである請求項1から8のいずれかに記載の表面処理金属板。
- 前記樹脂皮膜の付着量は、0.05〜1g/m2である請求項1から9のいずれかに記載の表面処理金属板。
- 前記金属板が亜鉛系めっき鋼板であり、亜鉛系めっき層上に表面改質層が形成され、該表面改質層上に前記樹脂皮膜が形成されている表面処理金属板であって、前記表面改質層が、Si換算で1〜30mg/m2のSiO2、P:0.5〜15mg/m2、Al:0.5〜10mg/m2を含有するものである請求項1〜10のいずれかに記載の表面処理金属板。
- 前記表面改質層中に含まれるSi、P、及び、Alの含有量が下記数式(1)及び(2)を満足するものである請求項11に記載の表面処理金属板。
0.5≦Si/P≦20……数式(1)
0.7≦P/Al≦4.5……数式(2) - 前記表面改質層が、さらに有機系樹脂を含有するものである請求項11又は12に記載の表面処理金属板。
- 前記表面改質層に含まれる有機系樹脂の構造に由来するFT−IRの吸収強度(ピーク面積)は、0.1〜15である請求項13に記載の表面処理金属板。
- 請求項11〜13のいずれかに記載の表面処理金属板の表面改質層を形成するためのシリカ含有リン酸系表面処理剤であって、該処理剤は固形分濃度が0.01〜15%(質量%を意味する、以下同じ)であり、且つ、該処理剤に含まれるSi、P、及び、Alの含有量と組成比(質量比)が下記の要件を満足することを特徴とする表面処理剤。
Si:0.002〜4.5%
P:0.0005〜1.5%
Al:0.0001〜0.5%
4.5≦Si/Al≦230、1.5≦Si/P≦60。 - 前記表面処理剤は、さらに有機系樹脂を含有し、有機系樹脂の添加濃度が0.01〜3g/lである請求項15に記載の表面処理剤。
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