JP2005200757A - 表面処理金属板 - Google Patents

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Abstract

【課題】 耐食性、塗装性、加工性(耐黒化性)を一層向上することを目的とし、さらには、導電性が要求される用途に好適に使用できる表面処理金属板を提供することを目的とする。また、特にノンクロメート処理の亜鉛系めっき鋼板で問題とされる耐テープ剥離性が改善された表面処理金属板を提供することを目的とする。
【解決手段】 樹脂皮膜が金属板に形成されている表面処理金属板であって、前記樹脂皮膜は、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂、シランカップリング剤、及び、シリカ粒子を含む皮膜形成用組成物から形成され、前記ポリウレタン樹脂は、特定のウレタンプレポリマーを鎖延長剤で鎖延長反応して得られるものである。また、特定組成の下地処理を施すことによって、耐テープ剥離性を改善することができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、表面処理金属板に関するものであり、より詳細には、自動車、家電製品、建材などに使用される耐食性、加工性(耐黒化性)、塗装性、さらには導電性に優れる表面処理金属板に関するものである。
自動車、家電製品、建材に用いられる材料としては、電気亜鉛めっき鋼板および溶融亜鉛めっき鋼板等の亜鉛系めっき鋼板や、より一層の耐食性および塗装性の向上を目的として、該亜鉛めっき鋼板上にクロメート処理やリン酸塩処理等の化成処理を施した無機系表面処理鋼板が多く用いられている。また、さらなる耐食性の向上や塗装性、加工性の向上を目的として、クロメート処理が施された表面処理鋼板の上に、有機樹脂皮膜を形成した樹脂塗装鋼板が提案されている。
しかしながら、家電製品におけるモーターケース部品などのように、深絞り加工が施される場合には、金型との間で激しい摺動摩擦が生じるため、摺動面の樹脂皮膜が剥離して黒変する黒化現象が発生し、製品の外観を著しく損なうと共に、その黒化物が他の設備に付着して別の不具合を発生するという問題があった。
このような樹脂塗装鋼板が有する上記問題点を解決するために、樹脂皮膜として、無機高分子化合物及び固形潤滑剤を有する皮膜が形成された潤滑鋼板や、更に水性樹脂を有する皮膜が形成された潤滑鋼板が提案されている(例えば、特許文献1、2)。これら無機高分子をベースとした皮膜処理鋼板は、耐疵付き性や深絞り加工時における皮膜の黒化物の発生については、改善効果が認められる。しかしながら、鋼板へ溶液を塗布する際に、はじき等の塗布欠陥が発生する場合があること及び皮膜の透水性が高いことから、黒点状の錆や白錆が発生しやすく、また塗装を行った場合の塗膜の密着性に劣る等の欠陥を有していた。即ち、耐疵付き性及び深絞り性は改善されるものの、耐食性および塗装性の点では問題を有していた。
一方で、家電製品の一部には、帯電防止のために、導電性が要求される材料がある。導電性については、亜鉛めっき鋼板の上に皮膜が施される場合には、その皮膜の抵抗値が低いほど、導電性が良好である。また、皮膜が樹脂皮膜の場合には、皮膜の抵抗値が高くなるため、皮膜の付着量を下げて、導電性を確保する必要がある。しかしながら、樹脂皮膜の付着量が低いと耐食性や加工性が劣るため、上述の樹脂皮膜の利点が得られない。従って、従来導電性が要求される用途には、亜鉛めっき鋼板上にクロメート処理やリン酸処理等の化成処理を施した無機系表面処理鋼板が多く用いられている。
上記のような有機樹脂皮膜に適用する樹脂系として、ウレタン樹脂が、その優れた硬さおよび伸びを有している点で、一部適用されているが、ウレタン樹脂は極性基を多く有していることから、他の樹脂系に比べて、耐食性に劣るものが多いという問題点があった。
また、近年の環境意識への高まりから、従来亜鉛めっき鋼板の耐食性向上の目的で使用されてきたクロメート処理や6価クロムを使用しない鋼板の使用が拡大している。そのため、より耐食性に優れた皮膜の要望が高まっている。
特開平6−57441号公報 特開平6−57442号公報
近年の環境意識への高まりから、従来亜鉛めっき鋼板の耐食性向上の目的で使用されてきたクロメート処理を施さない鋼板の用途が拡大してきており、このような用途に使用できるものとして、上述した樹脂塗装鋼板の耐食性を一層向上していくことが望まれている。
しかしながら、従来のウレタン系樹脂皮膜を形成した表面処理鋼板の耐食性や塗装性(塗膜との密着性)は、まだ十分なレベルであるとは言えない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、表面処理金属板、より詳細には、ポリウレタン樹脂皮膜が表面に形成された金属板の耐食性、塗装性、加工性(耐黒化性)を一層向上することを目的とし、さらには、導電性が要求される用途に好適に使用できる表面処理金属板を提供することを目的とする。また、特にノンクロメートタイプの亜鉛系めっき鋼板で問題となる耐テープ剥離性を向上することを目的とする。
上記課題を解決することのできた本発明の表面処理金属板とは、樹脂皮膜が金属板に形成されている表面処理金属板であって、前記樹脂皮膜は、質量部の比率で、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂:5〜69質量部;シリカ粒子:30〜75質量部;及び、シランカップリング剤:1〜20質量部を含む皮膜形成用組成物から形成されるものであり、前記ポリウレタン樹脂は、ウレタンプレポリマーを鎖延長剤で鎖延長反応して得られるものであって、前記ウレタンプレポリマーを構成するポリイソシアネート成分として、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートおよびジシクロヘキシルメタンジイソシアネートよりなる群から選択される少なくとも1種を必須的に使用し、
前記ウレタンプレポリマーを構成するポリオール成分として、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエーテルポリオール、及び、カルボキシル基を有するポリオールの全てを必須的に使用するものであることを特徴とする。特定組成のポリウレタン樹脂を含有する上記皮膜形成用組成物を使用することにより、耐食性、塗装性、加工性(耐黒化性)に優れた樹脂皮膜が得られる。さらに、前記シランカップリング剤として、下記化学式(1)で表わされるシランカップリング剤を使用することが好ましい。
Figure 2005200757
(化学式(1)中、R1:グリシドキシ基、R2、R3:低級アルコキシ基、R4:低級アルコキシ基または低級アルキル基、X:低級アルキレン基)
本発明において、前記鎖延長剤として好ましいのは、エチレンジアミンまたはヒドラジンである。前記1,4−シクロヘキサンジメタノールと前記ポリエーテルポリールの質量比が1,4−シクロヘキサンジメタノール:ポリエーテルポリオール=1:1〜1:19であることが望ましい。前記ポリエーテルポリオールとして好ましいのは、ポリオキシプロピレングリコール又はポリテトラメチレンエーテルグリコールである。また、前記カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂の酸価は10〜60mgKOH/gであることが好ましい。
前記皮膜形成用組成物が、さらに、酸価5mgKOH/g以上の第2のカルボキシル基含有樹脂を、前記カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂の含有量の1/2質量部以下含有し、前記第2の樹脂と前記カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂とが架橋剤で架橋された樹脂皮膜が形成されていることも好ましい態様である。前記架橋剤は、エポキシ系架橋剤、2価の金属系架橋剤、或いは、アジリジン系架橋剤であることが好ましい。前記シリカ粒子としては、例えば、平均粒子径1〜9nmのものを使用できる。また、前記樹脂皮膜の付着量としては、0.05〜1g/m2が好ましい。
また本発明の金属板が亜鉛系めっき鋼板である場合には、亜鉛系めっき層上に表面改質層が形成され、該表面改質層上に前記樹脂皮膜が形成されている表面処理金属板であって、前記表面改質層が、Si換算で1〜30mg/m2のSiO2、P:0.5〜15mg/m2、Al:0.5〜10mg/m2を含有することも好ましい態様である。さらに、前記表面改質層中に含まれるSi、P、及び、Alの含有量が下記数式(1)及び(2)の関係式を満足するものは、一段と優れた耐テープ剥離性を発揮すると共に、アルカリ脱脂後の耐テープ剥離性においても優れたものとなる。
0.5≦Si/P≦20……数式(1)
0.7≦P/Al≦4.5……数式(2)
前記表面改質層が、さらに有機系樹脂を含有することも好ましい態様である。前記表面改質層に含まれる有機系樹脂の構造に由来するFT−IRの吸収強度(ピーク面積)は、0.1〜15であることが好ましい。
また、本発明の表面処理剤は、上記表面改質層を形成するためのシリカ含有リン酸系表面処理剤であって、該処理剤は固形分濃度が0.01〜15%(質量%を意味する、以下同じ)であり、且つ、該処理剤に含まれるSi、P、及び、Alの含有量と組成比(質量比)が下記の要件を満足することを特徴を有している。
Si:0.002〜4.5%
P:0.0005〜1.5%
Al:0.0001〜0.5%
4.5≦Si/Al≦230、1.5≦Si/P≦60。
前記表面処理剤は、さらに有機系樹脂を含有し、有機系樹脂の添加濃度が0.01〜3g/lであることも好ましい態様である。
本発明によれば、耐食性、塗装性、加工性(耐黒化性)、さらには、導電性に優れる表面処理金属板が得られる。本発明は、ノンクロメート処理金属板の耐食性を向上させるのに好適に適用でき、特に、ノンクロメート処理亜鉛系めっき鋼板で指摘される耐テープ剥離性に優れる表面処理金属板が得られる。
本発明は、樹脂皮膜が金属板の表面に形成されている表面処理金属板であって、前記樹脂皮膜は、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂、シランカップリング剤、および、シリカ粒子を一定量含む皮膜形成用組成物から形成され、前記カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂が、特定のウレタンプレポリマーを鎖延長剤で鎖延長反応して得られるものであるところに要旨がある。また、本発明で使用する皮膜形成用組成物は、特に限定されるものではないが、水性組成物を使用するのが好ましい態様であり、例えば、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂の水性分散液、シランカップリング剤、および、シリカ粒子を含む皮膜形成用水性組成物を使用することが好適である。皮膜形成用組成物として、水性組成物を使用すれば、金属板の表面に塗布して乾燥することにより、樹脂皮膜を容易に形成できるからである。また、水性組成物は、溶剤系組成物に比べて、環境にやさしく、安全衛生上の問題や火災などの危険も少なく、取扱いが容易だからである。
まず、前記カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂について説明する。前記カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂は、ウレタンプレポリマーを鎖延長剤で鎖延長反応して得られるものであり、前記ウレタンプレポリマーは、後述するポリイソシアネート成分とポリオール成分とを反応させて得られる。前記ウレタンプレポリマーを構成するポリイソシアネート成分としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)およびジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)よりなる群から選択される少なくとも1種のポリイソシアネートを必須的に使用する。かかるポリイソシアネートを使用することにより、耐食性、反応制御の安定性に優れる樹脂皮膜が得られるからである。前記必須のポリイソシアネートの他にも、耐食性や反応制御の安定性を低下させない範囲で他のポリイソシアネートを使用することができるが、必須ポリイソシアネート成分の含有率は、全ポリイソシアネート成分の70質量%以上としておくことが望ましい。必須ポリイソシアネート成分の含有率が70質量%未満であると、耐食性・反応制御の安定性が低下する傾向があるからである。前記必須のポリイソシアネート成分以外のポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカンメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネートなどを挙げることができる。上記ポリイソシアネートは、単独、或いは、少なくとも2種以上を混合して使用してもよい。
前記ウレタンプレポリマーを構成するポリオール成分としては、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエーテルポリオール、及び、カルボキシル基を有するポリオールの3種類の全てのポリオールを必須的に使用し、好ましくは、3種類全てをジオールとする。かかるポリオール成分を使用することにより、耐食性や摺動性に優れる樹脂皮膜が得られるからである。また、ポリオール成分として1,4−シクロヘキサンジメタノールを使用することによって、得られるポリウレタン樹脂の防錆効果を高めることができる。
前記ポリエーテルポリオールは、分子鎖にヒドロキシル基を少なくとも2以上有し、主骨格がアルキレンオキサイド単位によって構成されているものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリオキシエチレングリコール(単に、「ポリエチレングリコール」と言われる場合がある)、ポリオキシプロピレングリコール(単に、「ポリプロピレングリコール」と言われる場合がある)、ポリオキシテトラメチレングリコール(単に、「ポリテトラメチレングリコール」或いは「ポリテトラメチレンエーテルグリコール」と言われる場合がある)などを挙げることができ、市販されているものを使用することができる。上記ポリエーテルポリオールの中でも、ポリオキシプロピレングリコール又はポリテトラメチレンエーテルグリコールを使用することが好ましい。前記ポリエーテルポリオールの官能基数は、少なくとも2以上であれば特に限定されず、例えば、3官能、4官能以上の多官能であってもよい。
前記ポリエーテルポリオールは、例えば、活性水素を有する化合物を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加させることにより得られる。前記活性水素を有する化合物としては、例えば、プロピレングリコール、エチレングリコールなどのジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、トリエタノールアミンなどのトリオール、ジグリセリン、ペンタエリスリトールなどのテトラオール、その他、ソルビトール、ショ糖、リン酸などを挙げることができる。この際、使用する開始剤として、ジオールを使用すれば、2官能のポリエーテルポリオールが得られ、トリオールを使用すれば、3官能のポリエーテルポリオールが得られる。
また、ポリオキシテトラメチレングリコールは、例えば、テトラヒドロフランの開環重合により得られる。
前記ポリエーテルポリオールは、例えば、平均分子量が約400〜4000程度までの市販のものを使用することが好ましい。平均分子量が約400未満だと樹脂皮膜が硬く、4000を超えると柔らかくなりすぎるからである。尚、平均分子量は、OH価(水酸基価)を測定することにより求めることができる。
本発明において、前記1,4−シクロヘキサンジメタノールとポリエーテルポリオールの質量比を、1,4−シクロヘキサンジメタノール:ポリエーテルポリオール=1:1〜1:19とすることも好ましい態様である。防錆効果を有する1,4−シクロヘキサンジメタノールを、一定比率使用することによって、得られるポリウレタン樹脂の防錆効果を一層高めることができるからである。
本発明で使用するカルボキシル基を有するポリオールは、少なくとも1以上のカルボキシル基と少なくとも2以上のヒドロキシル基を有するものであれば、特に限定されず、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジヒドロキシプロピオン酸、ジヒドロキシコハク酸などが挙げられる。
前記必須のポリオール成分の他にも、耐食性を低下させない範囲で他のポリオールを使用することができるが、必須のポリオール成分の含有率は、全ポリオール成分の70質量%以上であることが望ましい。必須のポリオール成分の含有率が70質量%未満であると、耐食性が低下する傾向があるからである。上述した必須のポリオール成分以外のポリオールとしては、水酸基を複数有するものであれば特に限定されず、例えば、低分子量のポリオールや高分子量のポリオールなどを挙げることができる。低分子量のポリオールは、平均分子量が500程度以下のポリオールであり、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール等のジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどのトリオールが挙げられる。
高分子量のポリオールは、平均分子量が500程度を超えるポリオールであり、例えば、ポリエチレンアジぺート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリヘキサメチレンアジペート(PHMA)などの縮合系ポリエステルポリオール;ポリ−ε−カプロラクトン(PCL)のようなラクトン系ポリエステルポリオール;ポリヘキサメチレンカーボネートなどのポリカーボネートポリオール;及びアクリルポリオールなどが挙げられる。
また、上述したウレタンプレポリマーを鎖延長反応する鎖延長剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリアミン、低分子量のポリオール、アルカノールアミンなどを挙げることができる。前記低分子量のポリオールとしては、上述したのと同じものを使用することができ、前記ポリアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族ポリアミン;トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンなどの芳香族ポリアミン;ジアミノシクロヘキシルメタン、ピペラジン、イソホロンジアミンなどの脂環式ポリアミン;ヒドラジン、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジドなどのヒドラジン類などを挙げることができる。これらの中でも、エチレンジアミン及び/又はヒドラジンを鎖延長剤成分として使用することが好ましい。また、前記アルカノールアミンとしては、例えば、ジエタノールアミン、モノエタノールアミンなどを挙げることができる。
本発明では、上述したように、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂の水性分散液を使用することが好ましい態様である。前記カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂の水性分散液の作製は、公知の方法を採用することができ、例えば、カルボキシル基含有ウレタンプレポリマーのカルボキシル基を塩基で中和して、水中に乳化分散して鎖延長反応させる方法、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂を乳化剤の存在下で、高せん断力で乳化分散して鎖延長反応させる方法などがある。以下、カルボキシル基含有ウレタンプレポリマーのカルボキシル基を塩基で中和して水中に乳化分散させる方法に基づいて、ポリウレタン樹脂の水性分散液の調製方法を説明するが、本発明は、かかる方法に限定されるものではない。
まず、上述したポリイソシアネートと上述したポリオールとを使用して、NCO/OH比でイソシアネート基が過剰になるようにして比較的低分子量のカルボキシル基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを作製する。ウレタンプレポリマーを合成する温度は、特に限定されないが、50〜200℃の温度で合成することができる。また、ウレタンプレポリマーの合成には、公知の触媒を使用することができる。前記触媒としては、例えば、トリエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンなどのモノアミン類;N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N',N'',N''−ペンタメチルジエチレントリアミン等のポリアミン類;1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)、トリエチレンジアミン等の環状ジアミン類;ジブチルチンジラウリレート、ジブチルチンジアセテートなどの錫系触媒などが挙げられる。
また、ウレタンプレポリマーの合成に際しては、ワンショット法を採用してもよく、また、プレポリマー法を採用してもよい。ワンショト法とは、ポリイソシアネートとポリオールとを一括に反応させる方法であり、プレポリマー法とは、多段階でポリイソシアネートとポリオールとを反応させる方法であり、例えば、一旦低分子量のウレタンプレポリマーを合成した後、さらに高分子量化する方法である。
本発明では、例えば、ポリイソシアネートと必須成分のポリオールの全てを一括に反応させる態様;ポリイソシアネートと、必須成分のポリオール成分の内、まずポリエーテルポリオールとを反応させた後、次いで、1,4−シクロヘキサンジメタノール、及び、カルボキシル基を有するポリオールをさらに反応させる態様、或いは、必須成分のポリオール成分の内、まず、ポリエーテルポリオールと1,4−シクロヘキサンジメタノールとを反応させた後、次いで、カルボキシル基を有するポリオールを反応させる態様などを適宜選択して、ウレタンプレポリマーを合成するようにすればよい。
カルボキシル基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーの作製に際しては、粘度の調整および、該プレポリマーの乳化分散性を向上させる観点から溶剤を使用することも好ましい態様である。前記溶剤としては、イソシアネート基に対して不活性な溶剤で、比較的親水性の高い溶剤を使用することが好ましく、例えば、N−メチルピロリドン、アセトン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミドなどを使用することができ、好ましくは、N−メチルピロリドンを使用する。N−メチルピロリドンは、カルボキシル基を有するポリオールに対する溶解性が高く、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを調製する反応を均一にできるからである。尚、ウレタンプレポリマーの反応は、例えば、ジブチルアミン滴定法によりイソシアネート基濃度を求めて、反応率を求めることができる。
ウレタンプレポリマー反応終了後、得られたカルボキシル基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーは、塩基で中和することによって、水中へ乳化分散できる。前記中和剤としては、特に限定されるものではないが、アンモニア;トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどの3級アミン;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物を使用することができ、好ましくは、トリエチルアミンを使用する。
カルボキシル基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを乳化分散した後、水中でポリミアンなどの鎖延長剤を使用して鎖延長反応を行うことができる。尚、鎖延長反応は、使用する鎖長延長剤の反応性に応じて、乳化分散前、乳化分散と同時、或いは、乳化分散後に適宜行うことができる。
本発明で使用するカルボキシル基含有ポリウレタン樹脂の酸価は、10mgKOH/g以上、60mgKOH/g以下であることが望ましい。酸価が10mgKOH/g未満であると、ポリウレタン樹脂水性分散液の安定性が低下するからである。また、酸価が60mgKOH/g超になると、得られる樹脂皮膜の耐食性が低下する傾向がある。前記酸価の測定は、JIS−K0070に準ずる。
本発明で使用する皮膜形成用組成物は、質量部の比率で、上記カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂:5〜69質量部;シリカ粒子:30〜75質量部;及び、シランカップリング剤:1〜20質量部含有する。
各成分の含有量を上記の様にすることにより、加工性(耐黒化性)および導電性に一層優れる表面処理金属板が得られるからである。また、上記各成分の含有量は、合計が100質量部となるようにすることが好ましい。皮膜形成用組成物が水性組成物の場合は、上記各成分(合計100質量部)の他に、さらに水を含有し、水の含有量は、皮膜形成用水性組成物の塗工性などに応じて適宜調整すればよい。以下、シリカ粒子、及び、シランカップリング剤について説明する。
前記皮膜形成用組成物は、シリカ粒子を30質量部以上、より好ましくは40質量部以上、75質量部以下、より好ましくは60質量部以下含有することが望ましい。前記シリカ粒子は、導電性、耐食性、塗装性を付与し、更には加工時の皮膜の疵付き、黒化現象の発生などを抑制するのに有効である。シリカの含有量が30質量部より少なくなると導電性や耐黒化性が低下する傾向がある。また、シリカの含有量が75質量部を超えると、樹脂皮膜の造膜性が低下し、耐食性が低下する傾向がある。また、前記シリカ粒子の効果を最大限に発揮させるためには、シリカ粒子の平均粒子径が1〜9nmの範囲にあることが好ましい。シリカ粒子の平均粒子径が小さくなるほど、樹脂皮膜の耐食性が向上するが、平均粒子径が1nm程度未満になると、耐食性の向上効果が飽和する傾向があり、また、皮膜形成用水性組成物の安定性が低下してゲル化しやすくなるからである。一方、シリカの平均粒子径が9nmを超えると、樹脂皮膜の造膜性が低下し、耐食性が劣化する場合がある。
前記シリカ粒子の平均粒子径の測定方法としては、シアーズ法を採用することが好ましい。また、鎖状シリカの場合は動的光散乱法を採用することが好ましい。前記シリカ粒子としては、例えば、日産化学工業(株)より入手可能なST−XSを挙げることができる。
前記皮膜形成用組成物に含有されるシランカップリング剤として、下記化学式(1)のシランカップリング剤を使用することが好ましい態様である。
Figure 2005200757
(化学式(1)中、R1:グリシドキシ基、R2、R3:低級アルコキシ基、R4:低級アルコキシ基または低級アルキル基、X:低級アルキレン基)ここで、低級とは、炭素数が1〜5、より好ましくは炭素数が1〜3である。
上記シランカップリング剤を含有することによって、得られる塗膜の塗装性、耐食性を高めることができる。上記化学式(1)で表される末端にグリシドキシ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シランなどを挙げることができる。グリシドキシ基を有するシランカップリング剤を使用するのは、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂に対する架橋反応性に富むので、得られる樹脂皮膜の硬度が高くなって、潤滑性が向上するからである。
前記皮膜形成用組成物は、前記シランカップリング剤を1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、20質量部以下、より好ましくは15質量部以下含有することが望ましい。シランカップリング剤が1質量部より少ない場合、ポリウレタン樹脂のカルボキシル基、或いは、シリカ粒子との反応が不十分であるために、耐食性や塗装性が低下する傾向がある。他方、シランカップリング剤の含有量が20質量部を超えると反応に寄与しないシランカップリング剤の量が多くなって、却って耐食性が低下する傾向がある。
本態様において、前記カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂の好ましい含有量は、前記皮膜形成用組成物100質量部の残部を構成することから、5質量部以上、より好ましくは25質量部以上、69質量部以下、より好ましくは58質量部以下である。
本発明では、金属板の表面に形成される樹脂皮膜の特性をさらに改良する目的で、前記皮膜形成用組成物が、酸価5mgKOH/g以上の第2のカルボキシル基含有樹脂を含有することも好ましい態様である。前記皮膜形成用組成物中の第2のカルボキシル基含有樹脂の含有量は、上述したカルボキシル基含有ポリウレタン樹脂の含有量の1/2質量部以下であることが好ましい。また、前記第2のカルボキシル基含有樹脂の形態は、上記皮膜形成用水性組成物に安定に添加できる態様であれば特に限定されないが、水性分散液、或いは、水溶液の形態であることが好ましい。
例えば、第2のカルボキシル基含有樹脂として、α,β−エチレン不飽和カルボン酸共重合樹脂を使用すれば、樹脂皮膜に密着性や可とう性を付与することができる。前記α,β−エチレン不飽和カルボン酸共重合樹脂としては、例えば、60〜99質量%のエチレンと1〜40質量%のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸からなるものが挙げられる。また、前記共重合樹脂は、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体、不飽和共重合体、不飽和カルボン酸がグラフト重合したグラフト共重合体、更には、ターポリマー樹脂などの態様であってもよい。
また、前記第2のカルボキシル基含有樹脂として、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、さらに各種共重合樹脂、合成ゴム、セラックなどの天然系樹脂などを使用すれば、樹脂皮膜の塗装性を向上し、樹脂皮膜の硬度を調整することができる。
また、樹脂皮膜の潤滑性を向上させるため、樹脂合成段階で合成ワックスを添加することもできる。前記合成ワックスとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンワックスなどの酸化物、これらのカルボキシル基を付与した誘導体などの変性ワックスも含まれる。さらにエチレンやプロピレンとの共重合系ワックス、エチレン系共重合ワックスの酸化ワックスがある。この系統は、共重合相手の変化でターポリマー系も含め多種使用することができる。更にマレイン酸の付加ワックス、脂肪酸エステル系などを例示することができる。工業的に好ましいのは、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、変性ワックス、エチレンやプロピレンとの共重合系ワックス、エチレン系共重合ワックスで、これらの酸化物、及び、カルボキシル基を付与した誘導体など、また酸価を付与したパラフィン系ワックス、カルナバワックスなどである。
酸価のない又は相溶性のないワックスについては、エマルジョンが不安定、又はエマルジョンを塗布した時の塗装外観が劣り、またワックスのブリードなどの現象が起きる。本発明では、ワックス樹脂の乳化等の必要性からカルボキシル基を有するワックスの水系物を使用することが好ましく、ワックスの酸価は5mgKOH/g以上が好ましく、市販のワックスで効果が得られる。
これらのワックス類を乳化系とするにはその使用目的に応じて界面活性剤を使用する方法、自己乳化させる方法、さらには機械的な分散方法などがとられる。界面活性剤には、通常アニオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、反応性界面活性剤などを使用できる。前記自己乳化法において使用する塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、アンモニア、モルホリン、トリエチルアミンなどのアミン類を挙げることができる。
本発明では、上述した酸価5mgKOH/g以上の第2のカルボキシル基含有樹脂と上述したカルボキシル基含有ポリウレタン樹脂とを架橋剤を用いて架橋させることも好ましい態様である。
前記架橋剤としては、カルボキシル基と架橋反応することができるものであれば、特に限定されず、金属系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤などが挙げられ、単独で或いは2種以上を混合して用いてもよい。前記金属系架橋剤としては、例えば、Ba、Fe、Ca、Mg、Cu、Zn及びMnなどの2価の金属化合物、より好ましくは、BaCO3、FeCO3、CaCO3、MgCO3、CuCO3,ZnCO3、MnCO3などの金属炭酸塩、Ba(OH)2、Fe(OH)2、Ca(OH)2、Mg(OH)2、Cu(OH)2、Zn(OH)2,Mn(OH)2などの金属水酸化物、ZnO、MgO及びCaOなどの金属酸化物などを挙げることができる。この他、カルシウム化合物としてさらに好ましいのは、乳酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ステアロイル乳酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、ピロリン酸二水素カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸三水素カルシウムなど必要に応じ併用される他の金属系も同様である。
前記架橋剤として使用するアジリジン系架橋剤として好ましいのは、分子中に平均1.5〜3.5個の下記化学式(2)で表わされる活性基を有するアジリジン化合物である。
Figure 2005200757
(式中、R5〜R8は、水素或いは炭素数1〜4のアルキル基)
前記アジリジン化合物としては、例えば、エチルイミン、トリアジリジニルホスフィンオキサイド、アジリジニルエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアジリジン、ヘキサメチレンビスアジリジンカルボキシアマイド、ジフェニルメタンビスアジリジンカルボキシアマイド、トリメチロールプロパンアジリジニルプロピオネート、テトラメチロールプロパンアジリジニルプロピオネート、トルエンビスアジリジンカルボキシアマイド、ビスフタロイルメチルアジリジン、トリメチロールプロパンメチルアジリジンプロピオネートなどを挙げることができるが、これらの限定されるものではない。
前記架橋剤として使用できるエポキシ系架橋剤は、分子内に少なくとも2以上のエポキシ基を有するものであれば特に限定されず、例えば、ジエポキシ化合物、さらには多価エポキシ化合物と通常架橋剤として用いられるエポキシ化合物の乳化物、また水に可溶なエポキシ化合物のいずれも市販品を使用することができる。前記エポキシ系架橋剤の具体例としては、油化シェルエポキシ社製エピコート825,828や大日本インキ化学工業社製エピクロンCR75またはCR5Lなどが挙げられる。前記架橋剤の使用量は、樹脂皮膜中の全カルボキシル基に対して、0.01倍当量以上、より好ましくは0.05倍当量以上であって、1倍当量以下、より好ましくは0.5倍当量以下とすることが好ましい。架橋剤の使用量が少なすぎると十分な架橋効果が得られず、一方、使用量が多すぎると樹脂皮膜形成用水性組成物が増粘するからである。
また前記皮膜形成用(水性)組成物は、さらに耐食性、加工性(耐黒化性)などを低下させない範囲で、潤滑剤を含有していてもよい。前記潤滑剤としては、例えば、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス、カルナバワックス、パラフィンワックス、モンタンワックス、ライスワックス、テフロンワックス、二硫化炭素、グラファイトなどの固体潤滑剤が挙げられ、これらの固体潤滑剤の中から1種または2種以上を選択して使用することができる。
本発明において、樹脂皮膜の鋼板への付着量は、0.05〜1g/m2であることが好ましい。前記付着量が0.05g/m2未満であると、金属板表面に樹脂皮膜を均一に形成することが難しくなり、耐食性、加工性(耐黒化性)などのバランスのとれた性能を十分に発揮させることができない。また、前記付着量が1g/m2を超える場合には、導電性や溶接性が低下する傾向がある。
本発明で使用する金属板は、特に限定されないが亜鉛系めっき鋼板であることが好ましく、例えば、溶融純亜鉛めっき鋼板(GI)、または合金化溶融Zn−Feめっき鋼板(GA)、合金化溶融Zn−5%Alめっき鋼板(GF)、電気純亜鉛めっき鋼板(EG)、電気Zn−Niめっき鋼板、アルミ板、Ti板などを好適に使用することができる。
樹脂皮膜を金属板の表面に形成する方法は、特に限定されないが、例えば、皮膜形成用水性組成物を調製し、該水性組成物を金属板の表面に塗布、乾燥することにより形成できる。樹脂皮膜を形成する前に、金属板表面にCo又はNi等処理、インヒビター処理、或いは、各種クロメート又はノンクロメートの下地処理を行ってもよい。
特に、クロメートによる環境問題を改善するという観点からは、金属板としてノンクロメート鋼板を用いて、上記樹脂皮膜を表面に形成することが好ましい態様である。金属板として亜鉛系めっき鋼板を使用する場合には、亜鉛系めっき層上に下記の表面改質層を設けて、前記表面改質層上に上述した樹脂皮膜を形成することが好ましい態様である。亜鉛系めっき層上に設ける表面改質層としては、Si換算で1〜30mg/m2のSiO2、P:0.5〜15mg/m2、Al:0.5〜10mg/m2を含有するものが好適であり、より好適には、前記表面改質層は、上記SiO2、P、および、Alに加えて、さらに有機系樹脂を含有する。本態様における表面改質層は、上述した耐食性、加工性、塗装性などの諸特性を一層高めるとともに、ノンクロメート処理系亜鉛系めっき鋼板に指摘される新たな解決課題として本発明者らが始めて提示する『耐テープ剥離性』を高めるための手段として有効であり、亜鉛系めっき鋼板の表面に形成される表面改質層中に、Si換算で1〜30mg/m2のSiO2、P:0.5〜15mg/m2、及び、Al:0.5〜10mg/m2を含有させるところに特徴がある。
なお本態様における『耐テープ剥離性』とは、表面処理亜鉛系めっき鋼板に粘着ラベルや粘着テープを貼付して放置した後、これを引き剥がした時に、該テープを剥離する際に表面処理層が同時に剥離することのない耐剥離特性をいう。即ち表面処理鋼板は、帯状鋼板をロール巻きにして出荷され、需要者でコイルを巻き戻してから切り板として使用されるが、その際、使い残しコイルの端部を粘着テープで仮止めして保管されることがある。また切り板は、打抜き、塗油、プレス加工、アルカリ脱脂などの工程を経てAV製品ケースや部品に加工されるが、その際に、ケースや部品の表面に品番やサイズ、グレードなどを表示した粘着ラベルを貼付することがある。テープ剥離とは、需要者が上記粘着テープや粘着ラベルを剥離する際に、亜鉛系めっき表面に上塗りした皮膜がテープと共にめっき表面から剥離する現象をいい、表面処理鋼板の品質上極めて重要な問題であり,これが発生すると重大な製品欠陥となる。この耐テープ剥離性の程度は、テープ剥離試験に供される粘着テープの種類、殊に粘着剤の粘着力やその中に含まれる溶剤や可塑剤などの種類などによって異なってくる。
なぜならば、テープ剥離により上塗り樹脂皮膜や表面改質層が剥離する最大の理由は、粘着テープの粘着剤中に含まれる溶剤や可塑剤などが表面改質層やその上に形成される上塗り樹脂皮膜を通して亜鉛系めっき層表面にまで拡散・浸透し、接合界面に蓄積することによって接合力が低下するためと思われ、上記溶剤や可塑剤などの種類や含有率によってかなり変わってくると思われるからである。
しかし、通常の粘着テープに粘着剤として配合される溶剤や可塑剤などの種類や配合量に多少の違いはあるとしても、それらの特にSiO2含有層に対する拡散・浸透速度に極端な違いはないと思われるので、本態様では、一応の評価基準として“スリオンテック社製のフィラメントテープ「品番#9510」”若しくは“ニチバン社製の「セロハンテープ」”を代表例として選択使用した時の耐テープ剥離性で評価している。
本態様における上記表面改質層中の主成分となるシリカ(SiO2)とは、例えばコロイダルシリカや珪酸塩等に由来して含まれてくる酸化シリコンであって、該シリカは本質的に無機質素材であり亜鉛系めっき層との親和性が良好であるため、上塗り樹脂皮膜の下地層として形成することによって亜鉛系めっき層との間の耐剥離特性を高める作用を発揮する。
ところで前述した様なテープ剥離を起こす原因の1つとして、次の様な現象が考えられる。即ち、表面処理亜鉛系めっき鋼板の表面に粘着テープ等を貼り付けた状態で保管し、特に高温状態で保管すると、該粘着テープ等の粘着剤中に含まれる溶剤や可塑剤などの拡散性成分が、上塗り皮膜を通して表面改質層、更には亜鉛系めっき表面まで拡散・浸透し、該表面改質層、あるいはめっき界面でそれら溶剤や可塑剤などが蓄積することによって該界面の接合力を低下させ、これがテープ剥離を起こす大きな原因になると考えられる。
ところが本発明の表面改質層中に主成分として含まれるシリカは、上記の様に上塗り皮膜層から拡散・浸透してくる溶剤や可塑剤などに対して優れたバリア効果を発揮し、亜鉛系めっき表面方向への侵入、あるいは上塗り皮膜や表面改質層界面での拡散を阻止する機能を発揮するものと考えられ、現に後記実施例でも明らかにする如く適量のシリカを含有させた表面改質層を形成しておくと、耐テープ剥離性は飛躍的に向上する。そして本発明者らがこうしたシリカの耐テープ剥離性改善作用を有効に発揮させるための量的関係について追究したところ、表面改質層中のシリカ含量をSi換算で1〜30mg/m2の範囲(2.14〜64.3mg/m2のSiO2)に調整してやれば、耐テープ剥離性を有為に改善できることが確認された。
ちなみに、シリカ含量がSi換算で1mg/m2未満では、上述したバリア層としての機能が不十分となり、満足のいく耐テープ剥離性が発揮され難くなる。従って表面改質層中のシリカ含量は、Si換算で1mg/m2以上、より好ましくは3mg/m2程度以上、更に好ましくは4mg/m2以上にすることが望ましい。
そして、シリカ含量が多くなるにつれて上記バリア層としての機能は高まると思われるが、シリカ含量が多過ぎると、耐テープ剥離性は却って低下傾向を示す様になる。この理由は次の様に考えている。即ち、表面改質層中のシリカは微粒子の集合体として存在すると考えられ、シリカ含量が多くなると該微粒子が多層積層状態で存在すると思われる。該多層積層状態のシリカ微粒子層同士の接合力は必ずしも強いとはいえないため、テープ剥離の力が該シリカ微粒子層に作用すると、該積層状態のシリカ微粒子層を剥がす方向に力が加わり、該シリカ微粒子層が層間剥離を起こし易くなることが考えられる。そのため、こうした表面改質層自体の剪断破壊による層間剥離を可及的に抑えるには、当該表面改質層中のシリカ含量の上限を定めるべきであり、本発明では後述する様な確認実験の結果を基にその上限をSi換算で30mg/m2と定めた。ちなみに、表面改質層中のシリカ含量が該上限値を超えると、耐テープ剥離性は明らかに低下傾向を示す様になる。また表面改質層中のシリカ含量を過度に多くすることは経済的にも無駄となるので、より好ましくはSi換算で15mg/m2以下、更に好ましくは10mg/m2以下に抑えることが望ましい。
本態様において、上記有表面改質層を形成する際には、通常は亜鉛系めっき層の表面を適度にエッチングしつつ且つ適度に粗面化されためっき層の表面に、コロイダルシリカ等に由来するシリカ微粒子を沈着させるのがよい。上記エッチング成分としては、例えば、硝酸、硫酸、塩酸、リン酸などを使用することができ、特に好ましいのは、エッチング成分としてリン酸や重リン酸、亜リン酸、重亜リン酸などのアルミニウム塩を使用し、これに適量のコロイダルシリカを分散させた酸性の水性液を使用することである。この様な酸性水性液を表面処理剤として使用すると、酸性水性液によって亜鉛系めっき層の表面がエッチングされながら、亜鉛系めっき層の表面に難溶性のリン酸アルミニウム主体の反応層が形成されると共に、該反応層にシリカ微粒子が沈着して取り込まれることで、エッチングにより粗面化された亜鉛系めっき層との間で緻密な反応層が形成され、該反応層の上に形成される上塗り樹脂皮膜との結合も緻密で強固なものとなり、当然のことならが耐テープ剥離性も著しく向上するからである。また後述するように、上記酸性水溶液に有機系樹脂の水性液を含有させておくことにより、得られる表面改質層中のシリカ微粒子の沈着状態を一層強固なものとすることができる。
難溶性のリン酸アルミニウムとシリカ微粒子が複合一体化した反応層は、例えば硝酸などをエッチング剤として用いて得た表面改質層に比べると優れた耐アルカリ性を有しているので、アルカリ脱脂後の耐テープ剥離性においても優れた性能を発揮する。但し、上記の様にエッチング成分としてリン酸、重リン酸、亜リン酸、重亜リン酸などのアルミニウム塩を用いてシリカ含有表面改質層を形成した場合、該表面改質層に含まれるPとAlの各含有量によっては、該表面改質層の耐アルカリ性、ひいてはアルカリ脱脂後の耐テープ剥離性に顕著な差異を生じることがある。そして、安定して優れた耐テープ剥離性とアルカリ脱脂後の耐テープ剥離性を確保するには、該表面改質層中のP含量を0.5mg/m2以上、15mg/m2以下に、またAl含量を0.5mg/m2以上、10mg/m2以下の範囲に制御するのが有効である。
ちなみに、上記の様にエッチング成分としてリン酸等のアルミニウム塩(以下、単にリン酸アルミニウム塩ということがある)を用いてシリカ含有表面改質層を形成した場合、リン酸アルミニウム主体の反応層が形成されることは前述した通りであるが、耐アルカリ性に優れたリン酸アルミニウム主体の反応層は、亜鉛系めっき層の表面がエッチングされることによって始めて形成されるため、表面改質層中のリン酸アルミニウム量が過度に多くなると、リン酸アルミニウムとシリカ微粒子とが複合一体化したとしても耐アルカリ性は却って低下する傾向がある。
そこで、高レベルの耐テープ剥離性とアルカリ脱脂後の耐テープ剥離性を確保するための好ましい該表面改質層中のP含量とAl含量について検討したところ、上記の様にP含量は0.5mg/m2以上、15mg/m2以下に、またAl含量は0.5mg/m2以上、10mg/m2以下の範囲に制御するのが極めて有効であることを突き止めた。
ちなみにP含量やAl含量が0.5mg/m2未満では、リン酸アルミニウム塩を使用することによってもたらされる前記作用、特にエッチング作用とそれによる緻密な反応層の形成と、SiO2微粒子の沈着促進による耐テープ剥離性向上効果が有効に発揮されず、またP含量やAl含量が過度に多くなると、耐アルカリ性不足のリン酸アルミニウムがアルカリの浸食を受けて表面改質層から溶出し易くなり、満足のいくアルカリ脱脂後の耐テープ剥離性が得られなくなる。従って、表面改質層の耐テープ剥離性とアルカリ脱脂後の耐テープ剥離性を有為に高めるには、Pの含有量を0.6mg/m2以上、10mg/m2以下とし、Alの含有量を0.6mg/m2以上、7mg/m2以下に制御することが望ましい態様である。
また該表面改質層中に含まれるSi,P,Alの各含有量の比率を、下記数式(1)、及び、(2)の関係を満たす様に調整することによって、一層優れた耐テープ剥離性とアルカリ脱脂後の耐テープ剥離性を確保することができる。
0.5≦Si/P≦20……数式(1)
0.7≦P/Al≦4.5……数式(2)
上記Si/Pの比率は、リン酸によるエッチング作用とそれに伴うSiO2に対する沈着促進作用に影響を及ぼす因子となり、この比が0.5未満では、表面改質層中のSiO2の比率が相対的に不足気味となって耐テープ剥離性が低下傾向となり、逆にこの比が20を超えると、シリカ含量に比べてリン酸アルミニウム塩の量が不足することになり、リン酸アルミニウム塩を使用することによる前述した作用が有効に発揮されなくなるためと思われる。こうした観点から、表面改質層中のSi/Pのより好ましい比率は1以上、更に好ましくは2以上で、より好ましくは15以下、更に好ましくは10以下である。
また、表面改質層に含まれるP/Alの含有比率は、特にエッチング成分としてのリン酸の機能とこれを難溶化するためのAlの機能を最大限有効に発揮させるための要因になると思われ、この比が0.7未満ではリン酸不足に由来してエッチング不足の傾向が現れ、逆に4.5を超えてこの比が高くなり過ぎると、エッチング処理後に生成する難溶性アルミニウム塩の量が減少して緻密な反応層の形成が不十分となり、何れの場合も満足のいくアルカリ脱脂後の耐テープ剥離性が得られ難くなる。適度のエッチング作用を確保しつつ難溶性アルミニウム塩の生成を助長して十分量の反応層を形成させる上でより好ましいP/Alの比率は1以上、2以下である。
なお、上記Si/P比やP/Al比の調整は、表面処理剤中のシリカや珪酸塩の含有量、リン酸成分およびAl成分の含有量、あるいは追って説明する如く表面改質層を形成する際の水洗条件(リン酸成分やAl成分の洗浄除去条件)などによって調整すればよい。
上記の様に表面改質層中のシリカやP,Al含量、更にはSi,P,Alの含有比率を適正範囲に制御すれば、得られる表面改質層はピンホール欠陥などのない緻密なものとなり、乾燥条件下の耐テープ剥離性はもとより、アルカリ脱脂後の耐テープ剥離性においても卓越した性能を示すものとなる。
また本態様では、前記表面改質層に有機系樹脂を含有させることによって、表面改質層中のシリカ微粒子を強固に沈着させて、耐テープ剥離性、更には、アルカリ脱脂後の耐テープ剥離性を一層向上できる。斯かる有機系樹脂は、特に限定されるものではなく、例えば、アクリル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエチレン樹脂を挙げることができ、単独で、若しくは、2種以上を併用して使用することが好ましい。
また前記有機系樹脂としては、水溶性若しくは水分散性の有機系樹脂であることが好ましく、有機酸によって構成される有機系樹脂および/またはその塩を使用することが好ましい。有機酸によって構成される有機系樹脂としては、ポリ(メタ)アクリル酸および/またはその塩が好適である。上述したように、表面改質層を形成する際には、酸性水溶液を使用して亜鉛めっき層をエッチングすることが好ましいが、有機酸を構成成分とする有機系樹脂はおよび/またはその塩を含有する水性液は、酸性であり、それ自体が亜鉛めっき層をエッチングする作用を有し、また、上記酸性水性液へ配合する際の安定性も優れるからである。
ところで上記表面改質層を形成するために用いられる表面処理剤(以下、「下地用処理剤」若しくは「下地用表面処理剤」という場合がある)は、上記からも明らかな様に、コロイダルシリカなどのシリカ微粉末と、リン酸等のアルミニウム塩と、さらに必要に応じて、有機系樹脂とを含む下地用処理剤であるが、この下地用処理剤は、固形分濃度が0.01〜15%で、該処理剤に含まれるSi,P,Alの含有量(質量%)と組成比(質量比)が下記の要件を満たす様に調整することが望ましい。
Si:0.002〜4.5%
P:0.0005〜1.5%
Al:0.0001〜0.5%
4.5≦Si/Al≦230、1.5≦Si/P≦60
ちなみに、下地用処理剤の固形分濃度が0.01%未満では、一回の処理で満足のいく厚さの表面改質層を形成するのが困難となり、多数回の処理が必要になるため実際的でなく、また15%を超えて過度に高濃度になると、処理液中の気液界面などに固形物が生成し易くなり、押し疵やブツなどの製品不良が発生し易くなる傾向が生じてくる。こうした点を考慮してより好ましい固形分濃度は0.05%以上、10%以下、更に好ましくは0.1%以上、5%以下である。
また下地用処理剤中のSi濃度が0.002%未満では、表面改質層において前記バリア層の主体となるシリカ含量が不足気味となり、満足な耐テープ剥離性が得られ難くなる。他方、Si濃度が4.5%を超えると、処理剤中に占めるシリカの含有比率が過度に高くなって表面改質層中のシリカ含量が過多となり、耐テープ剥離性が却って低下傾向を示す様になる。こうした傾向を踏まえて、下地用処理剤中のより好ましいSi濃度は0.01%以上、更に好ましくは0.03%以上で、4%以下、更に好ましくは3%以下である。尚、下地用処理剤中のSi濃度は、主としてコロイダルシリカなどとして配合されるSiO2、更には珪酸塩などの配合量によって調整すればよい。
次に下地用表面処理剤中のP濃度は、リン酸、重リン酸、亜リン酸、重亜リン酸などとして配合されるリン酸系化合物の量に依存し、主としてエッチング効果と緻密な反応層の形成性を支配する重要な因子となる。即ちP濃度が低過ぎると、エッチング作用不足となる他、前述した緻密なリン酸アルミニウム系反応層の形成も不十分になってシリカ微粒子の沈着促進効果も低下し、延いては表面改質層の密着性や耐アルカリ性も不十分となる。従って処理剤中のP濃度は0.0005%以上、より好ましくは0.001%以上、更に好ましくは0.01%以上とするのがよい。
但し、下地用処理剤中のP濃度が過度に高くなると、亜鉛系めっき表面のエッチング量の制御が困難となり、製品が外観不良になる傾向が生じるほか、処理液タンクなどが腐食し易くなるといった問題も生じてくるので、1.5%以下、より好ましくは1%以下、更に好ましくは0.5%以下に抑えるのがよい。
更に下地用処理剤中のAl濃度は、主としてリン酸などのアルミニウム塩、更には必要により添加されることのあるAlの水酸化物などに依存し、特にリン酸などによるエッチング工程で緻密な反応層として生成する難溶性リン酸アルミニウムの生成源となり、シリカの沈着を促進して表面改質層の密着性や耐アルカリ性を高める上で重要な機能を果たす。こうした作用を有効に発揮させるには、処理剤中のAl濃度を低くとも0.0001%以上、好ましくは0.0005%以上、更に好ましくは0.001%以上に調整することが望ましい。しかしAl濃度が過度に高くなると、処理液中の気液界面などに固形物が生成し易くなり、押し疵やブツの如き製品不良を生じ易くなるので、高くとも0.5%以下、好ましくは0.4%以下、更に好ましくは0.2%以下に抑えるのがよい。
また該下地用処理剤中に含まれるSi/AlとSi/Pの各含有比率は、前述した表面処理の初期に生成するリン酸アルミニウム主体の緻密な反応層の生成量とシリカの沈着量に影響を及ぼし、Si含量に対してAlやP含量が不足する場合は、相対的にエッチング不足になって、リン酸アルミニウム主体の反応層の緻密さや生成量が不十分になるばかりでなく、シリカに対する沈着促進作用も低下し、耐テープ剥離性およびアルカリ脱脂後の耐テープ剥離性が不十分となる。逆にSi含量に対してAlやP含量が過度に多くなると、前記反応層中のシリカ濃度が不足気味となり、耐テープ剥離性が不十分となる。
こうした利害得失を考慮して、上記下地用処理剤中に含まれるSi/AlとSi/Pの好ましい含有比率を実験によって確認したところ、Si/Al比は4.5以上、230以下、より好ましくは6以上、100以下で、Si/P比は1.5以上、より好ましくは1.8以上で、60以下、より好ましくは20以下であることが確認された。
尚、上記下地用表面処理剤中のSi,Al,P含量を好適範囲に調整する方法は特に制限されないが、Si含量は表面処理剤中のシリカや珪酸塩などの含有量により、Al含量は同処理剤中のAlのリン酸塩や水酸化物などの含有量により、またP含量は同処理剤中のリン酸やリン酸塩等の含有量に依存するので、下地用処理剤中のこれら成分の含有量を適正に制御することによって行えばよい。
また、前記下地用表面処理剤が、上述した有機系樹脂を含む場合、該処理剤中の有機系樹脂の添加濃度は、0.01〜3g/lであることが好ましい。添加濃度が0.01g/l未満の場合には、有機系樹脂の添加効果が低下するからである。一方、添加濃度が3g/lを超える場合には、アルカリ脱脂後の耐テープ剥離性が劣化する場合があるからである。
本発明において、下地用表面処理剤として特に好ましいのは、有機系樹脂、リン酸や重リン酸、亜リン酸、重亜リン酸などのアルミニウム塩とコロイダルシリカを含む酸性水性液であり、この下地用処理剤を使用すれば、酸性水性液下で鋼板表面の亜鉛系めっき層がエッチングされながら、亜鉛系めっき層表面に難溶性のリン酸アルミニウム主体の緻密な反応層が形成されると共に、該反応層にシリカが沈着して取り込まれることで、エッチングにより溶出した亜鉛との間で緻密な反応層が形成され、優れた耐テープ剥離性とアルカリ脱脂後の耐テープ剥離性を示す表面改質層を形成できる。
より具体的には、下地用表面処理剤は、その固形分の質量比率でリン酸(または重リン酸、亜リン酸、重亜リン酸)Al塩;0.1〜0.4質量%、コロイダルシリカ;1.0〜1.5質量%、有機系樹脂;0.1〜3g/lを含み、pHが1.5〜3.5の範囲の酸性水性液であることが好ましい。
亜鉛系めっき鋼板を下地用表面処理剤で処理する方法としては、スプレー、浸漬またはロールコーティングなど任意の手段を採用できるが、中でもスプレーによるコーティング法は、亜鉛めっきとの反応を促進させるうえでより好ましい方法であり、その際の好ましいスプレー圧力は20〜500kPa(約0.2〜5.0kgf/cm2)、スプレー時間は0.5〜10秒の範囲である。
上記下地用処理剤で表面処理した後は、適度に水洗することによって可溶性成分を除去し、その後、例えば30〜150℃程度に加熱して水分を乾燥除去する。この際の水洗は、最終的に得られる表面改質層の特に耐アルカリ性、ひいてはアルカリ脱脂後の耐テープ剥離性を高める上で極めて重要な処理工程となる。即ち本発明者らが種々の実験で確認したところによると、前述した下地用表面処理剤で処理した後そのまま乾燥し、あるいは焼付した改質層では、当該表面改質層中のP含量およびAl含量が多く、前述した表面改質層に求められる好適P含量0.5〜15mg/m2と好適Al含量0.5〜10mg/m2を大幅に超え、アルカリ脱脂後の耐テープ剥離性を確保し難くなることが確認された。その理由は次の様に考えられる。
本態様における表面処理は、有機系上塗り樹脂皮膜の密着性を高めるための下地処理として有効であることも確認されている。ところが本発明者らが確認したところ、シリカ微粒子とリン酸アルミニウム塩を含む上記表面処理剤によって形成される表面改質層にはかなり多量のリン酸アルミニウム成分が含まれており、その量は例えばP換算で30mg/m2程度以上、Al換算で15mg/m2程度以上にも達する。
そして、これらP,Al含量の高いことが、特にアルカリ脱脂後の耐テープ剥離性に少なからぬ悪影響を及ぼしていること、また、これらP,Al含量を前述した好適範囲にまで低減するには、上記下地表面処理の後に水洗処理を施し、表面処理(改質)層中に含まれるリン酸系アルミニウム成分中の水可溶性成分を予め溶出除去し、前掲の好適含有率範囲内に低減すればよいことを突き止めた。
水洗法としては、浸漬法やスプレー法などが考えられ、水洗条件は、表面処理(改質)層内に含まれるリン酸系アルミニウム成分中の水可溶性成分含量によっても変わってくるが、浸漬法の場合は水洗時間を1.5〜15秒程度とし、またスプレー法の場合は、水洗時間を1.5〜15秒程度、スプレー圧力を20〜500kPa(約0.2〜5kgf/cm2)程度にすれば、上記水可溶性成分をより効率よく除去できるので好ましい。
尚、表面改質層中のPおよびAlの含有量は、耐テープ剥離性の向上という観点からすると少なくてもよく、実質的にゼロであっても構わないが、表面処理剤として前掲のエッチング作用や緻密質反応層の形成を行い、より高度の耐テープ剥離性を得るためにリン酸アルミニウム系化合物の使用を必須とする本発明においては、最低限P含量は0.5mg/m2程度、Al含量も0.5mg/m2程度は必要となる。
表面改質層としての付着量は特に制限されないが、好ましい範囲は、水洗処理後の乾燥塗膜として4〜60mg/m2の範囲である。少な過ぎると、亜鉛めっき表面を均一に覆い難くなるため耐テープ剥離性が不足気味となり、逆に多過ぎると、亜鉛系めっき表面のエッチング不足により反応層の緻密さが下降気味となり、アルカリ脱脂後の耐テープ剥離性が劣化傾向を示すからである。
表面改質層中のSi,P,Alの量はそれぞれ、例えば蛍光X線法などによって確認すればよい。また、表面改質層中の有機系樹脂の存在は、有機系樹脂の構造(エステル結合、ケトン、アミノ基、ヒドロキシル基、及び、炭素−水素結合など)に由来するFT−IRのピークにより確認することができる。
本態様において、表面改質層の有機系樹脂の構造に由来するFT−IRの吸収強度(1496〜1776cm-1のピーク面積)は、0.1〜15であることが好ましい。前記FT−IRの吸収強度は、表面改質層中の有機系樹脂の含有量を指標するものであり、FT−IRの吸収強度を一定の範囲とすることによって、耐テープ剥離性およびアルカリ脱脂後の耐テープ剥離性、さらには、耐食性、塗装性を向上させることができる。
[評価方法]
(1)耐食性
得られた表面処理金属板(樹脂塗装鋼板)について、エッジシールした平板材の塩水噴霧試験を、JIS−Z2371に従って実施して、白錆が1%発生するまでの時間にて評価した。
(評価基準)
◎:白錆発生 240時間以上
○:白錆発生 120時間以上〜240時間未満
△:白錆発生 72時間以上〜120時間未満
×:白錆発生 72時間未満
(2)塗装性
得られた表面処理金属板(樹脂塗装鋼板)にメラミン系塗料(関西ペイント社製アミラック#1000)を塗装後、160℃で焼き付けた後の塗膜厚が約20μmになるようにした。得られた塗膜に1mm角の碁盤目を100ます入れ、テープ剥離した後の塗膜の残存率を測定した。
(評価基準)
◎:残存率:91〜100%
○:残存率:71〜90%
△:残存率:51〜70%
×:残存率:0〜50%
(3)加工性
得られた表面処理金属板(樹脂塗装鋼板)の深絞り加工性を評価するために、80トンのクランクプレス装置を用いて、単発のプレス試験を実施し、成形品の摺動面の擦り疵、型かじり、耐黒化性を目視で評価した。
(評価基準)
◎:極めて良い。
○:良い
△:悪い
×:極めて悪い
(4)潤滑性
得られた表面処理金属板(樹脂塗装鋼板)の潤滑性の評価として、摺動試験機を用いて、加圧力150kgにおける引き抜き時の荷重(摩擦力)から鋼板表面の動摩擦係数を求めた。
(評価基準)
◎:0.01以上〜0.1以下
○:0.1超〜0.2以下
△:0.2超〜0.3以下
×:0.3超
(5)導電性
得られた表面処理金属板(樹脂塗装鋼板)の表面抵抗を表面抵抗計(ダイヤイスツルメンツ(株)製Lorest−EP)に2短針プローブを取付けて測定した。
(評価基準)
◎:0.01Ω以上、0.1Ω以下
○:0.1Ω超、1Ω以下
△:1Ω超、10Ω以下
×:10Ω超
(6)耐テープ剥離性
供試材の表面に、フィラメントテープ(スリオンテック製、#9510)を貼り付け、40℃×RH98%の雰囲気で24時間、48時間保管した後、フィラメントテープを剥離し、上塗り樹脂皮膜の残存している面積割合で評価した。
(評価基準)
◎:残存率100%
○〜◎:残存率95%以上100%
○:残存率90%以上95%未満
△:残存率:70%以上90%未満
×:残存率70%未満
(7)アルカリ脱脂後の耐テープ剥離性
アルカリ脱脂剤(CL−N364S,日本パーカーライジング社製)を20g/l、60℃に調整した脱脂液に、供試材を2分間浸漬し、引き上げ、水洗、乾燥した後、当該供試材表面にセロハンテープ(ニチバン社製)を貼り付け、12時間、24時間後に剥離し、上塗り樹脂皮膜の残存している面積割合で評価した。
(評価基準)
◎:残存率100%
○〜◎:残存率95%以上100%
○:残存率90%以上95%未満
△:残存率:70%以上90%未満
×:残存率70%未満
(8)FT−IR測定による有機系樹脂の吸収強度の算出
形成した表面処理鋼板の表面改質層中の樹脂含有量を調査するためのFT−IR測定及び分析条件は、以下のとおりである。
測定方法:高感度反射法(入射角75°、平行偏光で赤外光を照射した)
比較材:金蒸着ミラー
分解能:4cm-1
積算回数:500回
装置:日本電子(株)製JIR−5500型フーリエ変換赤外分光光度計
IR−RSC110反射測定ユニット(角度可変型)
IR−SEM100試料切換ステージ
1496cm-1〜1776cm-1のピーク面積より、有機系樹脂を添加した鋼板の吸収強度から、有機系樹脂を添加していない鋼板の吸収強度を差し引いて、表面改質層中の有機系樹脂の構造に由来する吸収強度を算出した。
[ポリウレタン樹脂水性分散液の調製]
製造例1
撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの合成装置にポリオール成分として保土ヶ谷化学工業(株)製ポリテトラメチレンエーテルグリコール(平均分子量1000)を60g、1,4−シクロヘキサンジメタノール14g、ジメチロールプロピオン酸20gを仕込み、さらに反応溶媒としてN−メチルピロリドン30.0gを加えた。イソシアネート成分としてトリレンジイソシアネート(以下、単に「TDI」という場合がある)を104g仕込み、80から85℃に昇温し5時間反応させた。得られたプレポリマーのNCO含有量は、8.9%であった。さらにトリエチルアミン16gを加えて中和を行い、エチレンジアミン16gと水480gの混合水溶液を加えて、50℃で4時間乳化し、鎖延長反応させてポリウレタン樹脂水性分散液1を得た(固形分29.1%、酸価41.4)。
製造例2
撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの合成装置にポリオール成分として保土ヶ谷化学工業(株)製ポリテトラメチレンエーテルグリコール(平均分子量1500)を67g、1,4−シクロヘキサンジメタノール30g、ジメチロールプロピオン酸14gを仕込み、さらに反応溶媒としてN−メチルピロリドン120.0gを加えた。イソシアネート成分としてトリレンジイソシアネート(TDI)を78g仕込み、80〜85℃に昇温し5時間反応させた。得られたプレポリマーのNCO含有量は、2.3%であった。さらにトリエチルアミン11gを加えて中和を行い、ヒドラジン一水和物5gと水330gとの混合水溶液を加え、50℃で5時間乳化し、鎖延長反応させて、ポリウレタン樹脂水性分散液2を得た(固形分30.5%、酸価29.8)。
製造例3
撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの合成装置にポリオール成分として保土ヶ谷化学工業(株)製ポリテトラメチレンエーテルグリコール(平均分子量1500)を60g、1,4−シクロヘキサンジメタノール14g、ジメチロールプロピオン酸6gを仕込み、さらに反応溶媒としてN−メチルピロリドン90.0gを加えた。イソシアネート成分としてジフェニルメタンジイソシアネート(以下、単に「MDI」という場合がある)を100g仕込み、80〜85℃に昇温し10時間反応させた。得られたプレポリマーのNCO含有量は、6%であった。さらにトリエチルアミン5gを加えて中和を行い、ヒドラジン一水和物6gと水350gとの混合水溶液を加え、50℃で5時間鎖延長反応させて、ポリウレタン樹脂水性分散液3を得た(固形分30.2%、酸価15.2)。
製造例4
撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの合成装置にポリオール成分として保土ヶ谷化学工業(株)製ポリテトラメチレンエーテルグリコール(平均分子量1500)を60g、1,4−シクロヘキサンジメタノール14g、ジメチロールプロピオン酸13gを仕込み、さらに反応溶媒としてN−メチルピロリドン90.0gを加えた。イソシアネート成分としてTDIを34g、MDIを50g仕込み、80〜85℃に昇温し9時間反応させた。得られたプレポリマーのNCO含有量は、5%であった。さらにトリエチルアミン11gを加えて中和を行い、ヒドラジン一水和物8gと水325gとの混合水溶液を加え、50℃で3時間、乳化し鎖延長反応させて、ポリウレタン樹脂水性分散液4を得た(固形分31.3%、酸価31.0)。
製造例5
撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの合成装置にポリオール成分として保土ヶ谷化学工業(株)製ポリテトラメチレンエーテルグリコール(平均分子量1000)を50g、1,4−シクロヘキサンジメタノール14g、ジメチロールプロピオン酸6gを仕込み、さらに反応溶媒としてN−メチルピロリドン90.0gを加えた。イソシアネート成分としてジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下、単に「水素添加MDI」という場合がある)を104g仕込み、東京ファインケミカル(株)製有機錫系触媒L−101を6滴加えて、90〜95℃に昇温し9時間反応させた。得られたプレポリマーのNCO含有量は、6.3%であった。さらにトリエチルアミン5gを加えて中和を行い、ヒドラジン一水和物6gと水325gとの混合水溶液を加えて、50℃で5時間、乳化し、鎖延長反応させて、ポリウレタン樹脂水性分散液5を得た(固形分29.9%、酸価16.3)。
製造例6
撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの合成装置にポリオール成分として旭電化工業(株)製ポリオキシプロピレングリコール(P−1000:平均分子量1000)を50g、1,4−シクロヘキサンジメタノール2.9g、ジメチロールプロピオン酸6gを仕込み、さらに反応溶媒としてN−メチルピロリドン60.0gを加えた。イソシアネート成分としてジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下、単に「水素添加MDI」という場合がある)を79g仕込み、東京ファインケミカル(株)製有機錫系触媒L−101を3滴加えて、90〜95℃に昇温し8時間反応させた。得られたプレポリマーのNCO含有量は、7.6%であった。さらにトリエチルアミン5gを加えて中和を行い、ヒドラジン一水和物と13gと水280gとの混合水溶液を加えて、50℃で5時間、乳化し、鎖延長反応させて、ポリウレタン樹脂水性分散液6を得た(固形分29.8%、酸価18.0)。
製造例7
撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの合成装置にポリオール成分として三洋工業(株)製ポリオキシプロピレングリコール(PP−400:平均分子量400)を40g、1,4−シクロヘキサンジメタノール7.2g、ジメチロールプロピオン酸25gを仕込み、さらに反応溶媒としてN−メチルピロリドン80.0gを加えた。イソシアネート成分としてジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下、単に「水素添加MDI」という場合がある)を105g仕込み、東京ファインケミカル(株)製有機錫系触媒L−101を2滴加えて、90〜95℃に昇温し8時間反応させた。得られたプレポリマーのNCO含有量は、2.2%であった。さらにトリエチルアミン21gを加えて中和を行い、ヒドラジン一水和物と4.5gと水330gとの混合水溶液を加えて、50℃で5時間、乳化し、鎖延長反応させて、ポリウレタン樹脂水性分散液7を得た(固形分29.7%、酸価58.0)。
製造例8
撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの乳化設備のオートクレイブに酸価160mgKOH/gのエチレンアクリル酸共重合体200g、48%水酸化ナトリウム水溶液4g、25%アンモニア水22gおよび軟水581gを加えて密封し、150℃、4気圧で3時間の高速撹拌を行い、40℃に冷却して60〜99質量%のエチレンと1〜40質量%のエチレン性不飽和カルボン酸からなる共重合体の水分散体(樹脂分25%、酸価160mgKOH/g)を得た。次に、製造例1で得た500gのポリウレタン樹脂水分散液1を、撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの撹拌釜内で常温で撹拌しているところに、上記エチレンアクリル酸共重合体樹脂の水分散体175gを加えて、加熱撹拌を行い、70℃まで昇温してから25%の4,4'−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン水溶液20gと軟水58gとを加えて、80〜85℃で2時間撹拌を行ってから、40℃に冷却し、150メッシュの濾過布で濾過して、改質ポリウレタン樹脂水性分散液8を得た。
製造例9
撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの乳化設備のオートクレイブに、ハネウエル社製の酸価16mgKOH/gを有する酸化ポリエチレンワックスAC−629を200g、48%水酸化ナトリウム水溶液5g、東邦化学工業(株)製ペグノールL−12を25g、及び、軟水420gを加えて密封し、150℃、5気圧で3時間の高速撹拌を行い、40℃に冷却して、酸化ポリエチレンワックスの水分散液(樹脂分35.1%、酸価16mgKOH/g)を得た。次に、製造例4で得た500gのポリウレタン樹脂水分散液4を、撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの撹拌釜内で常温で撹拌しているところに、上記酸化ポリエチレンワックスの水分散液100gを加えて均一に撹拌し、さらに1.8gのCaCO3を加えて、80℃まで昇温後冷却して架橋反応を行って、改質ポリウレタン樹脂水性分散液9を得た。
製造例10
撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量1Lの乳化重合設備に水180g、東邦化学工業(株)製ペグノールL−12を5g仕込み85℃に加熱した。これに、別のモノマー混合設備において、2−エチルヘキシルアクリレート160g、メチルメタクリレート200g、メタクリル酸40gからなるモノマーを、東邦化学工業(株)製ペグノールL−30Pを15g、水350gに混合して調製したモノマー乳化液を、乳化重合設備の温度を80〜85℃に保ちつつ6時間を要して滴下した。滴下終了後、85から90℃で30分間熟成し、冷却してアクリル樹脂エマルジョン(樹脂分38.8%、酸価36)を得た。次に、製造例5で得た500gのポリウレタン樹脂水性分散液5を、撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの撹拌釜内で常温で撹拌しているところに、上記アクリル樹脂エマルジョン138gを加えて撹拌し、さらに、25%の4,4'−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン水溶液5gとMgCO3 0.5gと軟水20gとを加えて、80〜85℃で2時間撹拌を行ってから、40℃に冷却し、150メッシュの濾過布で濾過して、改質ポリウレタン樹脂水性分散液10を得た。
製造例11
撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量1Lの乳化重合設備に水180g、東邦化学工業(株)製ペグノールL−12を5g仕込み85℃に加熱した。これに、別のモノマー混合設備において、2−エチルヘキシルアクリレート160g、メチルメタクリレート200g、メタクリル酸40gからなるモノマーを、東邦化学工業(株)製ペグノールL−30Pを15g、水350gに混合して調製したモノマー乳化液を、乳化重合設備の温度を80〜85℃に保ちつつ6時間を要して滴下した。滴下終了後、85から90℃で30分間熟成し、冷却してアクリル樹脂エマルジョン(樹脂分38.8%、酸価36mgKOH/g)を得た。次に、製造例7で得た500gのポリウレタン樹脂水性分散液7を、撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの撹拌釜内で常温で撹拌しているところに、上記アクリル樹脂エマルジョン138gを加えて撹拌し、さらに、25%の4,4'−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン水溶液15gとMgCO3 1.5gと軟水20gとを加えて、80〜85℃で2時間撹拌を行ってから、40℃に冷却し、150メッシュの濾過布で濾過して、改質ポリウレタン樹脂水性分散液11を得た。
製造例12
撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの合成装置にポリオール成分として保土ヶ谷化学工業(株)製ポリテトラメチレンエーテルグリコール(平均分子量1000)を80g、ジメチロールプロピオン酸20gを仕込み、さらに反応溶媒としてN−メチルピロリドン30.0gを加えた。イソシアネート成分としてトリレンジイソシアネートを104g仕込み、80から85℃に昇温し5時間反応させた。得られたプレポリマーのNCO含有量は、8.9%であった。さらにトリエチルアミン16gを加えて中和を行い、エチレンジアミン16gと水480gとの混合水溶液を加え、50℃で4時間、乳化し架橋反応させて鎖延長させたポリウレタン樹脂水性分散液12を得た(固形分30.1%、酸価41.4)。
製造例13
撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの合成装置にポリオール成分として1,4−シクロヘキサンジメタノール50g、ジメチロールプロピオン酸20gを仕込み、さらに反応溶媒としてN−メチルピロリドン30.0gを加えた。イソシアネート成分としてトリレンジイソシアネートを104g仕込み、80から85℃に昇温し5時間反応させた。得られたプレポリマーのNCO含有量は、8.9%であった。さらにトリエチルアミン16gを加えて中和を行い、エチレンジアミン16gと水480gとの混合水溶液を加え、50℃で4時間、乳化し架橋反応させてポリウレタン樹脂水性分散液13を得た(固形分29.6%、酸価47.3)。
[樹脂塗装鋼板の作製及び評価結果]
(実験例1)
得られたポリウレタン樹脂水性分散液および改質ポリウレタン樹脂水性分散液に、シリカ粒子(日産化学製スノーテックスXS)、シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学製KBM403)を添加し皮膜形成用水性組成物を調製した。尚、各成分の配合比は、固形分換算で、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂40質量部、シリカ粒子50質量部、シランカップリング剤10質量部となるように配合した。この皮膜形成用水性組成物を電気純亜鉛めっき鋼板の表面に絞りロールにて塗布し、板温90℃で加熱乾燥して、付着量0.4g/m2の樹脂皮膜が形成された樹脂塗装鋼板を得た。得られた樹脂塗装鋼板について、耐食性、加工性、塗装性などについて評価した結果を表1に示した。
尚、上記電気純亜鉛めっき鋼板としては、クロメート処理を施した電気純亜鉛めっき鋼板(Zn付着量20g/m2、Cr付着量20mg/m2、板厚0.8mm)、クロメート処理と表面改質処理のいずれも施さない電気亜鉛めっき鋼板(Zn付着量20g/m2、板厚0.8mm、表中、単に「クロメートフリー鋼板」と称する。)、及び、クロメート処理を施さず、下記のようにして表面改質層を設けた電気亜鉛めっき鋼板(Zn付着量20g/m2、板厚0.8mm、表中、単に「表面改質層鋼板」と称する。)の3種類を用いた。
下地用表面処理剤としては、重リン酸アルミニウム(日本化学工業社製)、コロイダルシリカ(日産化学社製 ST−O)、ポリアクリル酸(分子量25000)を混合した酸性水性液(固形分50質量%)を使用した。この下地用表面処理剤をアルカリ脱脂した電気亜鉛めっき鋼板に、スプレーで吹き付け、余分な溶液をリンガーロールで除去した後、スプレー圧100kPaで5秒間水洗し、40℃で乾燥することにより、電気亜鉛めっき鋼板の亜鉛めっき層上に表面改質層を設けた。表面改質層中のSi、P、及びAlの含有量を蛍光X線装置(島津製作所 MIF2100)にて測定した結果、Si換算でSiO2が5mg/m2、P:2.6mg/m2、Al:1.8mg/m2であった。
Figure 2005200757
表1より、本発明の要件を満足するポリウレタン樹脂水性分散液1〜11を使用すれば、耐食性、加工性、塗装性に優れる樹脂塗装鋼板が得られることが分かる。
(実験例2)
ポリウレタン樹脂水性分散液1に、シリカ粒子(スノーテックスXS)、シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM403)を添加し皮膜形成用水性組成物を調製した。尚、各成分の配合比は、固形分換算で、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂10〜80質量部、シリカ粒子10〜80質量部、シランカップリング剤10質量部となるように配合した(ただし、合計100質量部とする)。この皮膜形成用水性組成物を電気純亜鉛めっき鋼板の表面に絞りロールにて塗布し、板温90℃で加熱乾燥して、付着量0.4g/m2の樹脂皮膜が形成された樹脂塗装鋼板を得た。得られた樹脂塗装鋼板について、耐食性、加工性、塗装性、導電性について評価した結果を表2に示した。
尚、上記電気純亜鉛めっき鋼板としては、クロメート処理を施した電気純亜鉛めっき鋼板(Zn付着量20g/m2、Cr付着量20mg/m2、板厚0.8mm)、クロメート処理と表面改質処理のいずれも施さない電気亜鉛めっき鋼板(Zn付着量20g/m2、板厚0.8mm)の2種類を用いた。
Figure 2005200757
表2より、シリカ粒子の含有量が30〜75質量部の範囲では、耐食性、加工性、塗装性、導電性のバランスに優れた樹脂塗装鋼板が得られていることが分かる。
(実験例3)
ポリウレタン樹脂水性分散液1に、シリカ粒子(スノーテックスXS)、シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM403)を添加し皮膜形成用水性組成物を調製した。尚、各成分の配合比は、固形分換算で、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂25〜50質量部、シリカ粒子50質量部、シランカップリング剤0〜25質量部となるように配合した(ただし、合計100質量部とする)。この皮膜形成用水性組成物を用いて、実験例2と同様の方法により樹脂塗装鋼板を作製した。得られた樹脂塗装鋼板について、耐食性、塗装性について評価した結果を表3にまとめた。皮膜形成用水性組成物の安定性も併せて表3に示した。
Figure 2005200757
表3より、シランカップリング剤の含有量が1〜20質量部の範囲において、皮膜形成用水性組成物の安定性が良好であり、耐食性、塗装性、加工性に優れた樹脂塗装鋼板が得られていることが分かる。
(実験例4)
ポリウレタン樹脂水性分散液1に、シリカ粒子(スノーテックスXS)、シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM403)を添加し樹脂皮膜形成用水性組成物を調製した。尚、各成分の配合比は、固形分換算で、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂40質量部、シリカ粒子50質量部、シランカップリング剤10質量部となるように配合した。この皮膜形成用水性組成物を用いて、鋼板への付着量が0.01〜2.0g/m2となるように樹脂皮膜を形成した以外は、実験例2と同様の方法により樹脂塗装鋼板を作製した。得られた樹脂塗装鋼板について、耐食性、加工性、導電性について評価した結果を表4にまとめた。
Figure 2005200757
表4の結果より、樹脂皮膜の付着量を0.05〜1g/m2 の範囲とすることにより、耐食性、導電性、加工性のバランスに優れた樹脂塗装鋼板が得られていることが分かる。
(実験例5)
ポリウレタン樹脂水性分散液1に、平均粒子径が4〜100nmのシリカ粒子、シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM403)を添加し樹脂皮膜形成用水性組成物を調製した。尚、各成分の配合比は、固形分換算で、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂40質量部、シリカ粒子50質量部、シランカップリング剤10質量部となるように配合した。この樹脂皮膜形成用水性組成物を用いた以外は、実験例2と同様の方法により樹脂塗装鋼板を作製した。得られた樹脂塗装鋼板の耐食性について評価した結果を表5にまとめた。
Figure 2005200757
表5の結果より、シリカ粒子の平均粒子径が1〜9nmであれば、耐食性が極めて優れることが分かる。
(実験例6)
ポリウレタン樹脂水性分散液1に、シリカ粒子、表6に示したシランカップリング剤を添加し樹脂皮膜形成用水性組成物を調製した。尚、各成分の配合比は、固形分換算で、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂40質量部、シリカ粒子50質量部、シランカップリング剤10質量部となるように配合した。この皮膜形成用水性組成物を用いて、実験例2と同様の方法により樹脂塗装鋼板を作製した。得られた樹脂塗装鋼板の耐食性について評価した結果を表6にまとめた。
Figure 2005200757
表6の結果から、シランカップリング剤として末端にグリシジル基を有するシランカップリング剤を使用すれば、皮膜形成用水性組成物の安定性が優れ、耐食性に優れる樹脂塗装鋼板が得られることが分かる。
(実験例7)
下地用表面処理剤としては、重リン酸アルミニウム(日本化学工業社製、固形分50質量%)、コロイダルシリカ(日産化学社製 ST−O)とを表7に示すような組成に混合した酸性水性液を使用した。この下地用表面処理剤をアルカリ脱脂した電気亜鉛めっき鋼板に、スプレーで吹き付け、余分な溶液をリンガーロールで除去した後、スプレー圧100kPaで5秒間水洗し、40℃で乾燥することにより、電気亜鉛めっき鋼板の亜鉛めっき層上に表面改質層を設けた。下地用表面処理剤中のSi,P、Al濃度は、ICP発光分析装置(セイコーアドバンス製)にて測定した。また、表面改質層中のSi、P、及びAlの含有量を蛍光X線装置(島津製作所 MIF2100)にて測定した。
Figure 2005200757
ポリウレタン樹脂水性分散液1に、シリカ粒子(日産化学製スノーテックスXS)、シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学製KBM403)を添加し皮膜形成用水性組成物を調製した。尚、各成分の配合比は、固形分換算で、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂40質量部、シリカ粒子50質量部、シランカップリング剤10質量部となるように配合した。この皮膜形成用水性組成物を、上記のように表面改質層を設けた電気純亜鉛めっき鋼板の表面改質層上に絞りロールにて塗布し、板温90℃で加熱乾燥して、付着量0.4g/m2の樹脂皮膜が形成された樹脂塗装鋼板を得た。得られた樹脂塗装鋼板について、耐テープ剥離性、及び、アルカリ脱脂後の耐テープ剥離性などについて評価した結果を表8に示した。
Figure 2005200757
表8より、本発明の表面改質層を設けた樹脂塗装亜鉛系めっき鋼板は、耐テープ剥離性及び、アルカリ脱脂後の耐テープ剥離性に優れることが分かる。
(実験例8)
下地用表面処理剤としては、ポリアクリル酸、重リン酸アルミニウム(日本化学工業社製、固形分50質量%)、コロイダルシリカ(日産化学社製 ST−O)とを表9に示すような組成に混合した酸性水性液を使用した。この下地用表面処理剤をアルカリ脱脂した電気亜鉛めっき鋼板に、スプレーで吹き付け、余分な溶液をリンガーロールで除去した後、スプレー圧100kPaで5秒間水洗し、40℃で乾燥することにより、電気亜鉛めっき鋼板の亜鉛めっき層上に表面改質層を設けた。下地用表面処理剤中のSi,P、Al濃度は、ICP発光分析装置(セイコーアドバンス製)にて測定した。また、表面改質層中のSi、P、及びAlの含有量を蛍光X線装置(島津製作所 MIF2100)にて測定した。
Figure 2005200757
実験例7と同様の方法により、上記のように表面改質層を設けた電気純亜鉛めっき鋼板の表面改質層上に樹脂皮膜が形成された樹脂塗装鋼板を得た。得られた樹脂塗装亜鉛めっき鋼板について、耐テープ剥離性、及び、アルカリ脱脂後の耐テープ剥離性などについて評価した結果を表10に示した。
Figure 2005200757
表10より、本発明の表面改質層を設けた樹脂塗装亜鉛系めっき鋼板は、耐テープ剥離性及び、アルカリ脱脂後の耐テープ剥離性に優れることが分かる。また、表9、及び、表10の結果から、下地処理剤中の有機系樹脂の含有量が高くなるにつれて、得られる表面改質層中のシリカ含有量が高くなる傾向が認められた。
[表面改質層中の有機系樹脂のFT−IR測定]
形成した表面処理鋼板の表面改質層中の有機系樹脂についてFT−IR測定を行った。表7に記載のS9(ポリアクリル酸の添加無)および表9に記載のS23(ポリアクリル酸添加有)の赤外吸収スペクトル(吸光度表示)をそれぞれ図1および図2に示した。また、ポリアクリル酸ナトリウムの標準スペクトル(透過率表示)を図3に示した。処理剤中にポリアクリル酸を0.50g/l添加した図2のスペクトルには、ポリアクリル酸を添加していない図1のスペクトルには観察されなかった1346cm-1、1421cm-1、1457cm-1、1592cm-1の吸収が観察される。これらは図3に示すポリアクリル酸ナトリウムの吸収と一致しており、添加したポリアクリル酸は、ポリアクリル酸塩の形になっていると考えられる。
ポリアクリル酸を含まない表面処理剤のFT−IRスペクトル ポリアクリル酸を含む表面処理剤のFT−IRスペクトル ポリアクリル酸ナトリウムのFT−IRスペクトル

Claims (16)

  1. 樹脂皮膜が金属板に形成されている表面処理金属板であって、前記樹脂皮膜は、
    カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂:5〜69質量部;
    シリカ粒子:30〜75質量部;及び
    シランカップリング剤:1〜20質量部を含む皮膜形成用組成物から形成されるものであり、前記ポリウレタン樹脂は、ウレタンプレポリマーを鎖延長剤で鎖延長反応して得られるものであって、
    前記ウレタンプレポリマーを構成するポリイソシアネート成分として、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートおよびジシクロヘキシルメタンジイソシアネートよりなる群から選択される少なくとも1種を必須的に使用し、
    前記ウレタンプレポリマーを構成するポリオール成分として、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエーテルポリオール、及び、カルボキシル基を有するポリオールの全てを必須的に使用するものであることを特徴とする表面処理金属板。
  2. 前記シランカップリング剤は、下記化学式(1)で表わされるシランカップリング剤である請求項1に記載の表面処理金属板。
    Figure 2005200757
    (化学式(1)中、R1:グリシドキシ基、R2、R3:低級アルコキシ基、R4:低級アルコキシ基または低級アルキル基、X:低級アルキレン基)
  3. 前記鎖延長剤としては、エチレンジアミンまたはヒドラジンを使用するものである請求項1又は2に記載の表面処理金属板。
  4. 前記1,4−シクロヘキサンジメタノールと前記ポリエーテルポリオールの質量比が1,4−シクロヘキサンジメタノール:ポリエーテルポリオール=1:1〜1:19である請求項1〜3のいずれかに記載の表面処理金属板。
  5. 前記ポリエーテルポリオールは、ポリオキシプロピレングリコール又はポリテトラメチレンエーテルグリコールである請求項1〜4のいずれかに記載の表面処理金属板。
  6. 前記カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂の酸価は10〜60mgKOH/gである請求項1〜5のいずれかに記載の表面処理金属板。
  7. 前記皮膜形成用組成物は、さらに、酸価5mgKOH/g以上の第2のカルボキシル基含有樹脂を、前記カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂の含有量の1/2質量部以下含有し、前記第2の樹脂と前記カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂とが架橋剤で架橋された樹脂皮膜が形成されている請求項1〜6のいずれかに記載の表面処理金属板。
  8. 前記架橋剤は、エポキシ系架橋剤、2価の金属系架橋剤、或いは、アジリジン系架橋剤である請求項7に記載の表面処理金属板。
  9. 前記シリカ粒子の平均粒子径は、1〜9nmである請求項1から8のいずれかに記載の表面処理金属板。
  10. 前記樹脂皮膜の付着量は、0.05〜1g/m2である請求項1から9のいずれかに記載の表面処理金属板。
  11. 前記金属板が亜鉛系めっき鋼板であり、亜鉛系めっき層上に表面改質層が形成され、該表面改質層上に前記樹脂皮膜が形成されている表面処理金属板であって、前記表面改質層が、Si換算で1〜30mg/m2のSiO2、P:0.5〜15mg/m2、Al:0.5〜10mg/m2を含有するものである請求項1〜10のいずれかに記載の表面処理金属板。
  12. 前記表面改質層中に含まれるSi、P、及び、Alの含有量が下記数式(1)及び(2)を満足するものである請求項11に記載の表面処理金属板。
    0.5≦Si/P≦20……数式(1)
    0.7≦P/Al≦4.5……数式(2)
  13. 前記表面改質層が、さらに有機系樹脂を含有するものである請求項11又は12に記載の表面処理金属板。
  14. 前記表面改質層に含まれる有機系樹脂の構造に由来するFT−IRの吸収強度(ピーク面積)は、0.1〜15である請求項13に記載の表面処理金属板。
  15. 請求項11〜13のいずれかに記載の表面処理金属板の表面改質層を形成するためのシリカ含有リン酸系表面処理剤であって、該処理剤は固形分濃度が0.01〜15%(質量%を意味する、以下同じ)であり、且つ、該処理剤に含まれるSi、P、及び、Alの含有量と組成比(質量比)が下記の要件を満足することを特徴とする表面処理剤。
    Si:0.002〜4.5%
    P:0.0005〜1.5%
    Al:0.0001〜0.5%
    4.5≦Si/Al≦230、1.5≦Si/P≦60。
  16. 前記表面処理剤は、さらに有機系樹脂を含有し、有機系樹脂の添加濃度が0.01〜3g/lである請求項15に記載の表面処理剤。
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