JP4163609B2 - 表面処理金属板 - Google Patents

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Description

本発明は、表面処理金属板に関するものであり、より詳細には、自動車、家電製品、建材などに使用される耐食性、耐黒化性、及び、耐アブレージョン性(耐疵付き性)に優れる表面処理金属板に関するものである。
自動車、家電製品、建材に用いられる材料としては、電気亜鉛めっき鋼板および溶融亜鉛めっき鋼板等の亜鉛系めっき鋼板や、より一層の耐食性および塗装性の向上を目的として、該亜鉛めっき鋼板上にクロメート処理やリン酸塩処理等の化成処理を施した無機系表面処理鋼板が多く用いられている。また、さらなる耐食性の向上や塗装性、加工性の向上を目的として、クロメート処理が施された表面処理鋼板の上に、有機樹脂皮膜を形成した樹脂塗装鋼板が提案されている。
しかしながら、家電製品におけるモーターケース部品などのように、深絞り加工が施される場合には、金型との間で激しい摺動摩擦が生じるため、摺動面の樹脂皮膜が剥離して黒変する黒化現象が発生し、製品の外観を著しく損なうと共に、その黒化物が他の設備に付着して別の不具合を発生するという問題があった。
このような樹脂塗装鋼板が有する上記問題点を解決するために、樹脂皮膜として、無機高分子化合物及び固形潤滑剤を有する皮膜が形成された潤滑鋼板や、更に水性樹脂を有する皮膜が形成された潤滑鋼板が提案されている(例えば、特許文献1、2)。これら無機高分子をベースとした皮膜処理鋼板は、耐アブレージョン性(耐疵付き性)や深絞り加工時における皮膜の黒化物の発生については、改善効果が認められる。しかしながら、鋼板へ溶液を塗布する際に、はじき等の塗布欠陥が発生する場合があること及び皮膜の透水性が高いことから、黒点状の錆や白錆が発生しやすく、また塗装を行った場合の塗膜の密着性に劣る等の欠陥を有していた。即ち、耐疵付き性及び深絞り性は改善されるものの、耐食性および塗装性の点では問題を有していた。
また、鋼板をプレス加工する際には、その加工性を良好にするために、鋼板の表面にプレス油が塗布される。しかし、このようなプレス油を塗布すれば、その鋼板の加工に際してプレス油が飛散して、作業環境を悪化させ、或いは、公害問題を引き起こし、更には、加工後に脱脂工程を必要とするなどの問題がある。
そこで、種々の表面処理方法が提案されている。例えば、カルボキシル化ポリオレフィン系樹脂にエポキシ樹脂を添加した表面処理剤や、本発明者らが提案しているウレタン変性ポリオレフィン樹脂に固体潤滑剤としてフッ素系樹脂粒子を添加した表面処理方法やワックス粒子を添加した表面処理方法がある(例えば、特許文献3、4)。
樹脂皮膜中に固体潤滑剤としてワックス粒子を添加する表面処理方法では、皮膜形成時の乾燥によって、ワックス粒子が軟化し、比重差および樹脂液との相溶性が悪いため、皮膜表面に濃化して付着するために、潤滑剤としての効果は得られるが、加工後の塗装性は著しく低下する。
尚、加工後塗装を必要とする製品、特に粉体塗装や電着塗装を行う場合は、これら固体潤滑剤では上記理由によって困難である。特に、フッ素系樹脂粒子を用いた場合には、脱脂によって皮膜中に分散するフッ素系樹脂粒子を容易に除去できないため、塗装性改善は難しい。
また、近年の環境意識への高まりから、従来亜鉛めっき鋼板の耐食性向上の目的で使用されてきたクロメート処理や6価クロムを使用しない鋼板の使用が拡大している。そのため、クロメート処理を施すことがなくても優れた耐食性を示す皮膜の要望が高まっている。
特開平6−57441号公報 特開平6−57442号公報 特開昭63−162886号公報 特開平3−17189号公報
上記のような有機樹脂皮膜に適用する樹脂系として、ウレタン樹脂が、その優れた硬さおよび伸びを有している点で、一部適用されているが、ウレタン樹脂は極性基を多く有していることから、他の樹脂系に比べて、耐食性に劣るものが多いという問題点があった。また、鋼板表面に設けられるウレタン樹脂皮膜中にコロイダルシリカなどのシリカ粒子を添加することによって、耐食性が向上することが知られているが、該シリカ粒子を添加しても、ウレタン樹脂皮膜の耐黒化性や耐アブレージョン性を改善することはできなかった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、表面処理金属板、より詳細には、ポリウレタン樹脂皮膜が表面に形成された金属板の耐食性、耐黒化性、及び耐アブレージョン性を一層向上した表面処理金属板を提供することを目的とする。
上記課題を解決することのできた本発明の表面処理金属板とは、樹脂皮膜が金属板に形成されている表面処理金属板であって、前記樹脂皮膜は、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂、シランカップリング剤、及び、無機充填剤を含む皮膜形成用組成物から形成され、前記無機充填剤は、無定形シリカと鱗片状シリカとの混合物であり、前記ポリウレタン樹脂が、ウレタンプレポリマーを鎖延長剤で鎖延長反応して得られるものであって、前記ウレタンプレポリマーを構成するポリイソシアネート成分として、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートおよびジシクロヘキシルメタンジイソシアネートよりなる群から選択される少なくとも1種を必須的に使用し、前記ウレタンプレポリマーを構成するポリオール成分として、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエーテルポリオール、及び、カルボキシル基を有するポリオールの全てを必須的に使用するところに要旨がある。
本発明者らは、金属板の表面に形成される樹脂皮膜の樹脂成分として、特定組成のポリウレタン樹脂を採用するとともに、樹脂皮膜に分散させる無機充填剤として、無定形シリカと鱗片状シリカとの混合物を使用すると、耐食性、耐黒化性、及び、耐アブレージョン性のすべてを満足する表面処理金属板を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。耐食性などが向上する理由の詳細は不明であるが、鱗片状シリカが、樹脂皮膜形成用組成物の水分等が蒸発する際にその表面張力で、金属板表面を覆うように層状に分散して、樹脂皮膜の耐黒化性及び耐アブレージョン性を向上する作用があるためだと考えられる。
また、耐食性、耐アブレーション性、耐黒化性の向上効果を一層高める態様として、例えば、前記無定形シリカの平均粒子径を1〜20nmとし、前記鱗片状シリカの平均粒子径を0.1〜1μmとする態様;前記無機充填剤における無定形シリカと鱗片状シリカとの混合比率を、無定形シリカ:鱗片状シリカ(質量比)=95:5〜5:95とする態様;前記皮膜形成用組成物の各成分の含有量として、
カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂:5〜75質量部;
無機充填剤:25〜95質量部(但し、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂と無機充填剤との合計量は100質量部とする);及び
シランカップリング剤:3〜20質量部とする態様;及び、金属板表面の樹脂皮膜の付着量を0.05〜1g/m2とする態様などを挙げることができる。
本発明において使用するポリウレタン樹脂は、ウレタンプレポリマーを鎖延長剤で鎖延長反応して得られるものであって、前記鎖延長剤としては、例えば、エチレンジアミンまたはヒドラジンを使用することが好ましい。また、前記ウレタンプレポリマーを構成するポリオール成分中、1,4−シクロヘキサンジメタノールとポリエーテルポリオールの質量比として好適な範囲は、1,4−シクロヘキサンジメタノール:ポリエーテルポリオール=50:50〜5:95である。前記ポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシプロピレングリコール又はポリテトラメチレンエーテルグリコールを使用することが好ましい。
本発明では、下記式(1)で表されるシランカップリング剤を好適に使用することができる。
Figure 0004163609
(式(1)中、R1:グリシドキシ基、R2、R3:低級アルコキシ基、R4:低級アルコキシ基または低級アルキル基、X:低級アルキレン基)
本発明によれば、耐食性、耐黒化性、及び、耐アブレージョン性に優れる表面処理金属板が得られる。特に、ノンクロメート処理金属板の耐食性、耐黒化性、及び、耐アブレージョン性を向上させるのに好適である。
本発明は、樹脂皮膜が金属板に形成されている表面処理金属板であって、前記樹脂皮膜は、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂、シランカップリング剤、及び、無機充填剤を含む皮膜形成用組成物から形成され、前記無機充填剤は、無定形シリカと鱗片状シリカとの混合物であり、前記カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂として後述する特定組成のものを使用する。また、本発明で使用する皮膜形成用組成物としては、特に限定されるものではないが、水性組成物を使用するのが好ましい態様であり、例えば、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂の水性分散液、シランカップリング剤、および、無機充填剤を含む皮膜形成用水性組成物を使用することが好適である。皮膜形成用組成物として、水性組成物を使用すれば、金属板の表面に塗布して乾燥することにより、樹脂皮膜を容易に形成できるからである。また、水性組成物は、溶剤系組成物に比べて、環境にやさしく、安全衛生上の問題や火災などの危険も少なく、取扱いが容易だからである。
まず、本発明で使用する無定形シリカと鱗片状シリカとの混合物について説明する。
本発明において、前記混合物における無定形シリカと鱗片状シリカの混合比率は、特に限定されるものではないが、無定形シリカ:鱗片状シリカ(質量比)=95:5〜5:95であることが好ましく、より好ましくは、無定形シリカ:鱗片状シリカ(質量比)=90:10〜40:60である。無定形シリカおよび鱗片状シリカを少なくとも5質量部以上含有させることによって、耐食性、耐黒化性、及び、耐アブレージョン性を一層向上できるからである。
前記無定形シリカとしては、シリカ(二酸化珪素)を主成分とする粒子であって鱗片状以外の形状を有するものであれば特に限定されない。特に、前記無定形シリカとして、球状シリカを使用することが好ましい態様である。ここで「球状」とは、真球状のみならず、略球状であってもよい。また、前記球状シリカとしては、水分散性の球状シリカ(コロイダルシリカ)を使用することが好ましく、例えば、日産化学工業(株)より入手可能なST−XS,ST−40、ST−C、ST−N、ST−30、ST−SなどのST−シリーズを挙げることができる。水分散性の球状シリカを使用すれば、皮膜形成用水性組成物の調製が容易になる。
前記無定形シリカの平均粒子径は、1nm以上、より好ましくは4nm以上であって、20nm以下であることが望ましい。前記無定形シリカの平均粒子径が1nm以上であれば、皮膜形成用組成物への無定形シリカの配合安定性が向上するとともに、得られる樹脂皮膜の耐食性の向上効果も大きくなるからである。また、平均粒子径を20nm以下とすることによって、無定形シリカと鱗片状シリカの分散状態が均一になって、造膜性が向上し、鱗片状シリカのバリヤー効果が大きくなるからである。前記無定形シリカの平均粒子径は、表面積平均粒子径であり、平均粒子径が1〜10nm程度の場合にはシアーズ法を採用し、平均粒子径が10〜100nm程度の場合にはBET法を採用することが好ましい。
本発明で使用する鱗片状シリカの平均粒子径は、0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上であることが好ましい。平均粒子径が小さくなりすぎると、金属板表面付近で、鱗片状シリカを層状に分散させることが困難になり、所望の耐食性向上効果が得られにくくなる。また、前記鱗片状シリカの平均粒子径は、1μm以下、より好ましくは0.5μm以下であることが好ましい。平均粒子径が大きくなりすぎると、樹脂皮膜中への分散性が悪くなり、耐食性が低下する傾向があるからである。尚、前記鱗片状シリカの平均粒子径は、レーザー散乱式粒度分布測定による個数平均粒子径である。また、前記鱗片状シリカの厚みは、特に限定されるものではないが、0.1μm以下である。
前記無定形シリカと鱗片状シリカとの組合わせにおいては、前記無定形シリカの平均粒子径として1nm〜20nmの範囲のものを採用し、前記鱗片状シリカとして平均粒子径0.1〜1μmの範囲のものを採用することが特に好ましい態様である。いずれか一方が大きすぎたり、小さすぎたりすると、耐食性、耐黒化性、耐アブレージョン性等が低下する傾向があるからである。
前記鱗片状シリカとしては、例えば、桐海化学社製サンラブリーHN−020、HN−010、HN−050などを挙げることができる。
次に、本発明において使用するカルボキシル基含有ポリウレタン樹脂について説明する。前記カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂は、ウレタンプレポリマーを鎖延長剤で鎖延長反応して得られるものであり、前記ウレタンプレポリマーは、後述するポリイソシアネート成分とポリオール成分とを反応させて得られる。前記ウレタンプレポリマーを構成するポリイソシアネート成分としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)およびジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)よりなる群から選択される少なくとも1種のポリイソシアネートを必須的に使用する。かかるポリイソシアネートを使用することにより、耐食性、反応制御の安定性に優れる樹脂皮膜が得られるからである。前記必須のポリイソシアネートの他にも、耐食性や反応制御の安定性を低下させない範囲で他のポリイソシアネートを使用することができるが、必須ポリイソシアネート成分の含有率は、全ポリイソシアネート成分の70質量%以上としておくことが望ましい。必須ポリイソシアネート成分の含有率が70質量%未満であると、耐食性・反応制御の安定性が低下する傾向があるからである。前記必須のポリイソシアネート成分以外のポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカンメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネートなどを挙げることができる。上記ポリイソシアネートは、単独、或いは、少なくとも2種以上を混合して使用してもよい。
前記ウレタンプレポリマーを構成するポリオール成分としては、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエーテルポリオール、及び、カルボキシル基を有するポリオールの3種類の全てのポリオールを必須的に使用し、好ましくは、3種類全てをジオールとする。かかるポリオール成分を使用することにより、耐食性や摺動性に優れる樹脂皮膜が得られるからである。また、ポリオール成分として1,4−シクロヘキサンジメタノールを使用することによって、得られるポリウレタン樹脂の防錆効果を高めることができる。
前記ポリエーテルポリオールは、分子鎖にヒドロキシル基を少なくとも2以上有し、主骨格がアルキレンオキサイド単位によって構成されているものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリオキシエチレングリコール(単に、「ポリエチレングリコール」と言われる場合がある)、ポリオキシプロピレングリコール(単に、「ポリプロピレングリコール」と言われる場合がある)、ポリオキシテトラメチレングリコール(単に、「ポリテトラメチレングリコール」或いは「ポリテトラメチレンエーテルグリコール」と言われる場合がある)などを挙げることができ、市販されているものを使用することができる。上記ポリエーテルポリオールの中でも、ポリオキシプロピレングリコール又はポリテトラメチレンエーテルグリコールを使用することが好ましい。前記ポリエーテルポリオールの官能基数は、少なくとも2以上であれば特に限定されず、例えば、3官能、4官能以上の多官能であってもよい。
前記ポリエーテルポリオールは、例えば、活性水素を有する化合物を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加させることにより得られる。前記活性水素を有する化合物としては、例えば、プロピレングリコール、エチレングリコールなどのジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、トリエタノールアミンなどのトリオール、ジグリセリン、ペンタエリスリトールなどのテトラオール、その他、ソルビトール、ショ糖、リン酸などを挙げることができる。この際、使用する開始剤として、ジオールを使用すれば、2官能のポリエーテルポリオールが得られ、トリオールを使用すれば、3官能のポリエーテルポリオールが得られる。
また、ポリオキシテトラメチレングリコールは、例えば、テトラヒドロフランの開環重合により得られる。
前記ポリエーテルポリオールは、例えば、平均分子量が約400〜4000程度までの市販のものを使用することが好ましい。平均分子量が約400未満だと、得られる樹脂皮膜が硬くなり、平均分子量が4000を超えると柔らかくなりすぎるからである。尚、平均分子量は、OH価(水酸基価)を測定することにより求めることができる。
本発明において、前記1,4−シクロヘキサンジメタノールとポリエーテルポリオールの質量比を、1,4−シクロヘキサンジメタノール:ポリエーテルポリオール=50:50〜5:95とすることも好ましい態様である。防錆効果を有する1,4−シクロヘキサンジメタノールを、一定比率使用することによって、得られるポリウレタン樹脂の防錆効果を一層高めることができるからである。
本発明で使用するカルボキシル基を有するポリオールは、少なくとも1以上のカルボキシル基と少なくとも2以上のヒドロキシル基を有するものであれば、特に限定されず、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジヒドロキシプロピオン酸、ジヒドロキシコハク酸などが挙げられる。
前記必須のポリオール成分の他にも、耐食性を低下させない範囲で他のポリオールを使用することができるが、必須のポリオール成分の含有率は、全ポリオール成分の70質量%以上であることが望ましい。必須のポリオール成分の含有率が70質量%未満であると、耐食性が低下する傾向があるからである。上述した必須のポリオール成分以外のポリオールとしては、水酸基を複数有するものであれば特に限定されず、例えば、低分子量のポリオールや高分子量のポリオールなどを挙げることができる。低分子量のポリオールは、平均分子量が500程度以下のポリオールであり、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール等のジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどのトリオールが挙げられる。
高分子量のポリオールは、平均分子量が500程度を超えるポリオールであり、例えば、ポリエチレンアジぺート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリヘキサメチレンアジペート(PHMA)などの縮合系ポリエステルポリオール;ポリ−ε−カプロラクトン(PCL)のようなラクトン系ポリエステルポリオール;ポリヘキサメチレンカーボネートなどのポリカーボネートポリオール;及びアクリルポリオールなどが挙げられる。
また、上述したウレタンプレポリマーを鎖延長反応する鎖延長剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリアミン、低分子量のポリオール、アルカノールアミンなどを挙げることができる。前記低分子量のポリオールとしては、上述したのと同じものを使用することができ、前記ポリアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族ポリアミン;トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンなどの芳香族ポリアミン;ジアミノシクロヘキシルメタン、ピペラジン、イソホロンジアミンなどの脂環式ポリアミン;ヒドラジン、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジドなどのヒドラジン類などを挙げることができる。これらの中でも、エチレンジアミン及び/又はヒドラジンを鎖延長剤成分として使用することが好ましい。また、前記アルカノールアミンとしては、例えば、ジエタノールアミン、モノエタノールアミンなどを挙げることができる。
本発明では、上述したように、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂の水性分散液を使用することが好ましい態様である。前記カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂の水性分散液の作製は、公知の方法を採用することができ、例えば、カルボキシル基含有ウレタンプレポリマーのカルボキシル基を塩基で中和して、水中に乳化分散して鎖延長反応させる方法、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂を乳化剤の存在下で、高せん断力で乳化分散して鎖延長反応させる方法などがある。以下、カルボキシル基含有ウレタンプレポリマーのカルボキシル基を塩基で中和して水中に乳化分散させる方法に基づいて、ポリウレタン樹脂の水性分散液の調製方法を説明するが、本発明は、かかる方法に限定されるものではない。
まず、上述したポリイソシアネートと上述したポリオールとを使用して、NCO/OH比でイソシアネート基が過剰になるようにして比較的低分子量のカルボキシル基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを作製する。ウレタンプレポリマーを合成する温度は、特に限定されないが、50〜200℃の温度で合成することができる。また、ウレタンプレポリマーの合成には、公知の触媒を使用することができる。前記触媒としては、例えば、トリエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンなどのモノアミン類;N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N',N'',N''−ペンタメチルジエチレントリアミン等のポリアミン類;1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)、トリエチレンジアミン等の環状ジアミン類;ジブチルチンジラウリレート、ジブチルチンジアセテートなどの錫系触媒などが挙げられる。
また、ウレタンプレポリマーの合成に際しては、ワンショット法を採用してもよく、また、プレポリマー法を採用してもよい。ワンショト法とは、ポリイソシアネートとポリオールとを一括に反応させる方法であり、プレポリマー法とは、多段階でポリイソシアネートとポリオールとを反応させる方法であり、例えば、一旦低分子量のウレタンプレポリマーを合成した後、さらに高分子量化する方法である。
本発明では、例えば、ポリイソシアネートと必須成分のポリオールの全てを一括に反応させる態様;ポリイソシアネートと、必須成分のポリオール成分の内、まずポリエーテルポリオールとを反応させた後、次いで、1,4−シクロヘキサンジメタノール、及び、カルボキシル基を有するポリオールをさらに反応させる態様、或いは、必須成分のポリオール成分の内、まず、ポリエーテルポリオールと1,4−シクロヘキサンジメタノールとを反応させた後、次いで、カルボキシル基を有するポリオールを反応させる態様などを適宜選択して、ウレタンプレポリマーを合成するようにすればよい。
カルボキシル基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーの作製に際しては、粘度の調整および、該プレポリマーの乳化分散性を向上させる観点から溶剤を使用することも好ましい態様である。前記溶剤としては、イソシアネート基に対して不活性な溶剤で、比較的親水性の高い溶剤を使用することが好ましく、例えば、N−メチルピロリドン、アセトン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミドなどを使用することができ、好ましくは、N−メチルピロリドンを使用する。N−メチルピロリドンは、カルボキシル基を有するポリオールに対する溶解性が高く、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを調製する反応を均一にできるからである。尚、ウレタンプレポリマーの反応は、例えば、ジブチルアミン滴定法によりイソシアネート基濃度を求めて、反応率を求めることができる。
ウレタンプレポリマー反応終了後、得られたカルボキシル基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーは、塩基で中和することによって、水中へ乳化分散できる。前記中和剤としては、特に限定されるものではないが、アンモニア;トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどの3級アミン;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物を使用することができ、好ましくは、トリエチルアミンを使用する。
カルボキシル基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを乳化分散した後、水中でポリミアンなどの鎖延長剤を使用して鎖延長反応を行うことができる。尚、鎖延長反応は、使用する鎖長延長剤の反応性に応じて、乳化分散前、乳化分散と同時、或いは、乳化分散後に適宜行うことができる。
本発明で使用するカルボキシル基含有ポリウレタン樹脂の酸価は、10mgKOH/g以上、60mgKOH/g以下であることが望ましい。酸価が10mgKOH/g未満であると、ポリウレタン樹脂水性分散液の安定性が低下するからである。また、酸価が60mgKOH/g超になると、得られる樹脂皮膜の耐食性が低下する傾向がある。前記酸価の測定は、JIS−K0070に準ずる。
次に、本発明で使用するシランカップリング剤について説明する。本発明における皮膜形成用組成物は、シランカップリング剤として、式(1)で表わされる末端にグリシドキシ基を有するシランカップリング剤を含有することが好ましい態様である。
Figure 0004163609
(式(1)中、R1:グリシドキシ基、R2、R3:低級アルコキシ基、R4:低級アルコキシ基または低級アルキル基、X:低級アルキレン基)ここで、低級とは、炭素数が1〜5、より好ましくは炭素数が1〜3である。上記シランカップリング剤を含有することによって、得られる塗膜の耐食性を高めることができる。上記式(1)で表される末端にグリシドキシ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シランなどを挙げることができる。グリシドキシ基を有するシランカップリング剤を使用するのは、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂に対する架橋反応性に富むので、得られる樹脂皮膜の硬度が高くなって、潤滑性が向上するからである。
本発明では、使用する皮膜形成用組成物の組成を以下のような態様にすることにより、耐食性、耐黒化性、および、耐アブレージョン性に一層優れる表面処理金属板が得られる。
カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂:5〜75質量部;
無機充填剤:25〜95質量部(但し、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂と無機充填剤との合計量は100質量部とする);及び
上記シランカップリング剤;3〜20質量部とする。
皮膜形成用組成物が水性組成物の場合は、上記各成分の他に、さらに水を含有し、水の含有量は、皮膜形成用水性組成物の塗工性などに応じて適宜調整すればよい。以下、各成分について説明する。
無機充填剤の含有量は、25質量部以上、より好ましくは60質量部以上、95質量部以下、より好ましくは80質量部以下含有することが望ましい。また、前記カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂含有量と無機充填剤の含有量とを合わせて100質量部とすることから、前記カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂の含有量は、5質量部以上、より好ましくは20質量部以上、75質量部以下、より好ましくは40質量部以下であることが好ましい。無機充填剤の含有量を高くしてカルボキシル基含有ポリウレタン樹脂の含有量を低くしすぎると、造膜性が低下して耐食性が低下する場合がある。一方、無機充填剤の含有量が低くなりすぎても、シリカによる耐食性向上効果を得ることができなくなる場合がある。そのため、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂の含有量と無機充填剤の含有量とを上記範囲とすることによって、耐食性、耐黒化性、及び、耐アブレージョン性の向上効果を高めることができる。
また、前記皮膜形成用組成物は、前記カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂と無機充填剤の合計100質量部に対して、シランカップリング剤を3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、20質量部以下、より好ましくは15質量部以下含有することが望ましい。シランカップリング剤が3質量部より少ない場合、ポリウレタン樹脂のカルボキシル基、或いは、無機充填剤との反応が不十分であるために、耐食性、耐黒化性、及び、耐アブレージョン性が低下する傾向がある。他方、シランカップリング剤の含有量が20質量部を超えると反応に寄与しないシランカップリング剤の量が多くなって、却って耐食性が低下したり、皮膜形成用組成物の安定性が低下して、ゲル化する場合がある。
本発明では、金属板の表面に形成される樹脂皮膜の特性をさらに改良する目的で、前記皮膜形成用組成物が、酸価5mgKOH/g以上の第2のカルボキシル基含有樹脂を含有することも好ましい態様である。前記皮膜形成用組成物中の第2のカルボキシル基含有樹脂の含有量は、上述したカルボキシル基含有ポリウレタン樹脂の含有量の1/2質量部以下であることが好ましい。また、前記第2のカルボキシル基含有樹脂の形態は、上記皮膜形成用水性組成物に安定に添加できる態様であれば特に限定されないが、水性分散液、或いは、水溶液の形態であることが好ましい。
例えば、第2のカルボキシル基含有樹脂として、α,β−エチレン不飽和カルボン酸共重合樹脂を使用すれば、樹脂皮膜に密着性や可とう性を付与することができる。前記α,β−エチレン不飽和カルボン酸共重合樹脂としては、例えば、60〜99質量%のエチレンと1〜40質量%のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸からなるものが挙げられる。また、前記共重合樹脂は、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体、不飽和共重合体、不飽和カルボン酸がグラフト重合したグラフト共重合体、更には、ターポリマー樹脂などの態様であってもよい。
また、前記第2のカルボキシル基含有樹脂として、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、さらに各種共重合樹脂、合成ゴム、セラックなどの天然系樹脂などを使用すれば、樹脂皮膜の塗装性を向上し、樹脂皮膜の硬度を調整することができる。
また、樹脂皮膜の潤滑性を向上させるため、樹脂合成段階で合成ワックスを添加することもできる。前記合成ワックスとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンワックスなどの酸化物、これらのカルボキシル基を付与した誘導体などの変性ワックスも含まれる。さらにエチレンやプロピレンとの共重合系ワックス、エチレン系共重合ワックスの酸化ワックスがある。この系統は、共重合相手の変化でターポリマー系も含め多種使用することができる。更にマレイン酸の付加ワックス、脂肪酸エステル系などを例示することができる。工業的に好ましいのは、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、変性ワックス、エチレンやプロピレンとの共重合系ワックス、エチレン系共重合ワックスで、これらの酸化物、及び、カルボキシル基を付与した誘導体など、また酸価を付与したパラフィン系ワックス、カルナバワックスなどである。
酸価のない又は相溶性のないワックスについては、エマルジョンが不安定、又はエマルジョンを塗布した時の塗装外観が劣り、またワックスのブリードなどの現象が起きる。本発明では、ワックス樹脂の乳化等の必要性からカルボキシル基を有するワックスの水系物を使用することが好ましく、ワックスの酸価は5mgKOH/g以上が好ましく、市販のワックスで効果が得られる。
これらのワックス類を乳化系とするにはその使用目的に応じて界面活性剤を使用する方法、自己乳化させる方法、さらには機械的な分散方法などがとられる。界面活性剤には、通常アニオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、反応性界面活性剤などを使用できる。前記自己乳化法において使用する塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、アンモニア、モルホリン、トリエチルアミンなどのアミン類を挙げることができる。
本発明では、上述した酸価5mgKOH/g以上の第2のカルボキシル基含有樹脂と上述したカルボキシル基含有ポリウレタン樹脂とを架橋剤を用いて架橋させることも好ましい態様である。
前記架橋剤としては、カルボキシル基と架橋反応することができるものであれば、特に限定されず、金属系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤などが挙げられ、単独で或いは2種以上を混合して用いてもよい。前記金属系架橋剤としては、例えば、Ba、Fe、Ca、Mg、Cu、Zn及びMnなどの2価の金属化合物、より好ましくは、BaCO3、FeCO3、CaCO3、MgCO3、CuCO3,ZnCO3、MnCO3などの金属炭酸塩、Ba(OH)2、Fe(OH)2、Ca(OH)2、Mg(OH)2、Cu(OH)2、Zn(OH)2,Mn(OH)2などの金属水酸化物、ZnO、MgO及びCaOなどの金属酸化物などを挙げることができる。この他、カルシウム化合物としてさらに好ましいのは、乳酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ステアロイル乳酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、ピロリン酸二水素カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸三水素カルシウムなど必要に応じ併用される他の金属系も同様である。
前記架橋剤として使用するアジリジン系架橋剤として好ましいのは、分子中に平均1.5〜3.5個の下記式(2)で表わされる活性基を有するアジリジン化合物である。
Figure 0004163609
(式中、R5〜R8は、水素或いは炭素数1〜4のアルキル基)
前記アジリジン化合物としては、例えば、エチルイミン、トリアジリジニルホスフィンオキサイド、アジリジニルエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアジリジン、ヘキサメチレンビスアジリジンカルボキシアマイド、ジフェニルメタンビスアジリジンカルボキシアマイド、トリメチロールプロパンアジリジニルプロピオネート、テトラメチロールプロパンアジリジニルプロピオネート、トルエンビスアジリジンカルボキシアマイド、ビスフタロイルメチルアジリジン、トリメチロールプロパンメチルアジリジンプロピオネートなどを挙げることができるが、これらの限定されるものではない。
前記架橋剤として使用できるエポキシ系架橋剤は、分子内に少なくとも2以上のエポキシ基を有するものであれば特に限定されず、例えば、ジエポキシ化合物、さらには多価エポキシ化合物と通常架橋剤として用いられるエポキシ化合物の乳化物、また水に可溶なエポキシ化合物のいずれも市販品を使用することができる。前記エポキシ系架橋剤の具体例としては、油化シェルエポキシ社製エピコート825,828や大日本インキ化学工業社製エピクロンCR75またはCR5Lなどが挙げられる。前記架橋剤の使用量は、樹脂皮膜中の全カルボキシル基に対して、0.01倍当量以上、より好ましくは0.05倍当量以上であって、1倍当量以下、より好ましくは0.5倍当量以下とすることが好ましい。架橋剤の使用量が少なすぎると十分な架橋効果が得られず、一方、使用量が多すぎると樹脂皮膜形成用水性組成物が増粘するからである。
また前記皮膜形成用(水性)組成物は、さらに耐食性、耐黒化性などを低下させない範囲で、潤滑剤を含有していてもよい。前記潤滑剤としては、例えば、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス、カルナバワックス、パラフィンワックス、モンタンワックス、ライスワックス、テフロンワックス、二硫化炭素、グラファイトなどの固体潤滑剤が挙げられ、これらの固体潤滑剤の中から1種または2種以上を選択して使用することができる。
本発明で使用する金属板は、特に限定されないが亜鉛系めっき鋼板であることが好ましく、例えば、溶融純亜鉛めっき鋼板(GI)、または合金化溶融Zn−Feめっき鋼板(GA)、合金化溶融Zn−5%Alめっき鋼板(GF)、電気純亜鉛めっき鋼板(EG)、電気Zn−Niめっき鋼板、アルミ板、Ti板などを好適に使用することができる。
樹脂皮膜を金属板の表面に形成する方法は、特に限定されないが、例えば、皮膜形成用水性組成物を調製し、該水性組成物を金属板の表面に塗布、乾燥することにより形成できる。尚、樹脂皮膜を形成する前に、金属板表面にCo又はNi等処理、インヒビター処理、或いは、各種クロメート又はノンクロメートの下地処理を行ってもよい。特に、クロメートによる環境問題を改善するという観点からは、金属板としてノンクロメート鋼板を用いて、上記樹脂皮膜を表面に形成することが好ましい態様である。
本発明において、樹脂皮膜の鋼板への付着量は、0.05〜1g/m2であることが好ましい。前記付着量が0.05g/m2未満であると、金属板表面に樹脂皮膜を均一に形成することが難しくなり、耐食性、耐黒化性などのバランスのとれた性能を十分に発揮させることができない。また、前記付着量が1g/m2を超える場合には、得られる鋼板の溶接性が低下する傾向がある。
[評価方法]
(1)耐食性
得られた表面処理金属板(樹脂塗装鋼板)について、エッジシールした平板材の塩水噴霧試験を、JIS−Z2371に従って実施して、白錆が1%発生するまでの時間にて評価した。
(評価基準)
◎:白錆発生 240時間以上
○:白錆発生 120時間以上〜240時間未満
△:白錆発生 72時間以上〜120時間未満
×:白錆発生 72時間未満
(2)耐アブレージョン性
得られた表面処理金属板について、梱包貨物−振動試験(JIS Z0232)に準じて、振動試験を実施し、所定時間後の供試材の外観を下記の基準に基づき評価した。尚、振動試験装置は、アイデック社製の商品名「BF−50UC」を用いた。
(評価基準)
◎:皮膜への損傷なし
○:皮膜への損傷はあるが、亜鉛めっき表面への損傷無し
△:亜鉛めっき表面に目視で確認できる程度の損傷がある。
×:亜鉛めっき表面への損傷が著しい
(3)耐黒化性
得られた表面処理金属板(樹脂塗装鋼板)の深絞り加工性を評価するために、80トンのクランクプレス装置を用いて、単発のプレス試験を実施し、成形品の摺動面の擦り疵、型かじり、耐黒化性を目視で評価した。
(評価基準)
◎:極めて良い。
○:良い
△:悪い
×:極めて悪い
[ポリウレタン樹脂水性分散液の調製]
製造例1
撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの合成装置にポリオール成分として保土ヶ谷化学工業(株)製ポリテトラメチレンエーテルグリコール(平均分子量1000)を60g、1,4−シクロヘキサンジメタノール14g、ジメチロールプロピオン酸20gを仕込み、さらに反応溶媒としてN−メチルピロリドン30.0gを加えた。イソシアネート成分としてトリレンジイソシアネート(以下、単に「TDI」という場合がある)を104g仕込み、80から85℃に昇温し5時間反応させた。得られたプレポリマーのNCO含有量は、8.9%であった。さらにトリエチルアミン16gを加えて中和を行い、エチレンジアミン16gと水480gの混合水溶液を加えて、50℃で4時間乳化し、鎖延長反応させてポリウレタン樹脂水性分散液1を得た(固形分29.1%、酸価41.4)。
製造例2
撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの合成装置にポリオール成分として保土ヶ谷化学工業(株)製ポリテトラメチレンエーテルグリコール(平均分子量1500)を67g、1,4−シクロヘキサンジメタノール30g、ジメチロールプロピオン酸14gを仕込み、さらに反応溶媒としてN−メチルピロリドン120.0gを加えた。イソシアネート成分としてトリレンジイソシアネート(TDI)を78g仕込み、80〜85℃に昇温し5時間反応させた。得られたプレポリマーのNCO含有量は、2.3%であった。さらにトリエチルアミン11gを加えて中和を行い、ヒドラジン一水和物5gと水330gとの混合水溶液を加え、50℃で5時間乳化し、鎖延長反応させて、ポリウレタン樹脂水性分散液2を得た(固形分30.5%、酸価29.8)。
製造例3
撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの合成装置にポリオール成分として保土ヶ谷化学工業(株)製ポリテトラメチレンエーテルグリコール(平均分子量1500)を60g、1,4−シクロヘキサンジメタノール14g、ジメチロールプロピオン酸6gを仕込み、さらに反応溶媒としてN−メチルピロリドン90.0gを加えた。イソシアネート成分としてジフェニルメタンジイソシアネート(以下、単に「MDI」という場合がある)を100g仕込み、80〜85℃に昇温し10時間反応させた。得られたプレポリマーのNCO含有量は、6%であった。さらにトリエチルアミン5gを加えて中和を行い、ヒドラジン一水和物6gと水350gとの混合水溶液を加え、50℃で5時間鎖延長反応させて、ポリウレタン樹脂水性分散液3を得た(固形分30.2%、酸価15.2)。
製造例4
撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの合成装置にポリオール成分として保土ヶ谷化学工業(株)製ポリテトラメチレンエーテルグリコール(平均分子量1500)を60g、1,4−シクロヘキサンジメタノール14g、ジメチロールプロピオン酸13gを仕込み、さらに反応溶媒としてN−メチルピロリドン90.0gを加えた。イソシアネート成分としてTDIを34g、MDIを50g仕込み、80〜85℃に昇温し9時間反応させた。得られたプレポリマーのNCO含有量は、5%であった。さらにトリエチルアミン11gを加えて中和を行い、ヒドラジン一水和物8gと水325gとの混合水溶液を加え、50℃で3時間、乳化し鎖延長反応させて、ポリウレタン樹脂水性分散液4を得た(固形分31.3%、酸価31.0)。
製造例5
撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの合成装置にポリオール成分として保土ヶ谷化学工業(株)製ポリテトラメチレンエーテルグリコール(平均分子量1000)を50g、1,4−シクロヘキサンジメタノール14g、ジメチロールプロピオン酸6gを仕込み、さらに反応溶媒としてN−メチルピロリドン90.0gを加えた。イソシアネート成分としてジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下、単に「水素添加MDI」という場合がある)を104g仕込み、東京ファインケミカル(株)製有機錫系触媒L−101を6滴加えて、90〜95℃に昇温し9時間反応させた。得られたプレポリマーのNCO含有量は、6.3%であった。さらにトリエチルアミン5gを加えて中和を行い、ヒドラジン一水和物6gと水325gとの混合水溶液を加えて、50℃で5時間、乳化し、鎖延長反応させて、ポリウレタン樹脂水性分散液5を得た(固形分29.9%、酸価16.3)。
製造例6
撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの合成装置にポリオール成分として旭電化工業(株)製ポリオキシプロピレングリコール(P−1000:平均分子量1000)を50g、1,4−シクロヘキサンジメタノール2.9g、ジメチロールプロピオン酸6gを仕込み、さらに反応溶媒としてN−メチルピロリドン60.0gを加えた。イソシアネート成分としてジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下、単に「水素添加MDI」という場合がある)を79g仕込み、東京ファインケミカル(株)製有機錫系触媒L−101を3滴加えて、90〜95℃に昇温し8時間反応させた。得られたプレポリマーのNCO含有量は、7.6%であった。さらにトリエチルアミン5gを加えて中和を行い、ヒドラジン一水和物と13gと水280gとの混合水溶液を加えて、50℃で5時間、乳化し、鎖延長反応させて、ポリウレタン樹脂水性分散液6を得た(固形分29.8%、酸価18.0)。
製造例7
撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの合成装置にポリオール成分として三洋工業(株)製ポリオキシプロピレングリコール(PP−400:平均分子量400)を40g、1,4−シクロヘキサンジメタノール7.2g、ジメチロールプロピオン酸25gを仕込み、さらに反応溶媒としてN−メチルピロリドン80.0gを加えた。イソシアネート成分としてジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下、単に「水素添加MDI」という場合がある)を105g仕込み、東京ファインケミカル(株)製有機錫系触媒L−101を2滴加えて、90〜95℃に昇温し8時間反応させた。得られたプレポリマーのNCO含有量は、2.2%であった。さらにトリエチルアミン21gを加えて中和を行い、ヒドラジン一水和物と4.5gと水330gとの混合水溶液を加えて、50℃で5時間、乳化し、鎖延長反応させて、ポリウレタン樹脂水性分散液7を得た(固形分29.7%、酸価58.0)。
製造例8
撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの乳化設備のオートクレイブに酸価160mgKOH/gのエチレンアクリル酸共重合体200g、48%水酸化ナトリウム水溶液4g、25%アンモニア水22gおよび軟水581gを加えて密封し、150℃、4気圧で3時間の高速撹拌を行い、40℃に冷却して60〜99質量%のエチレンと1〜40質量%のエチレン性不飽和カルボン酸からなる共重合体の水分散体(樹脂分25%、酸価160mgKOH/g)を得た。次に、製造例1で得た500gのポリウレタン樹脂水分散液1を、撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの撹拌釜内で常温で撹拌しているところに、上記エチレンアクリル酸共重合体樹脂の水分散体175gを加えて、加熱撹拌を行い、70℃まで昇温してから25%の4,4'−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン水溶液20gと軟水58gとを加えて、80〜85℃で2時間撹拌を行ってから、40℃に冷却し、150メッシュの濾過布で濾過して、改質ポリウレタン樹脂水性分散液8を得た。
製造例9
撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの乳化設備のオートクレイブに、ハネウエル社製の酸価16mgKOH/gを有する酸化ポリエチレンワックスAC−629を200g、48%水酸化ナトリウム水溶液5g、東邦化学工業(株)製ペグノールL−12を25g、及び、軟水420gを加えて密封し、150℃、5気圧で3時間の高速撹拌を行い、40℃に冷却して、酸化ポリエチレンワックスの水分散液(樹脂分35.1%、酸価16mgKOH/g)を得た。次に、製造例4で得た500gのポリウレタン樹脂水分散液4を、撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの撹拌釜内で常温で撹拌しているところに、上記酸化ポリエチレンワックスの水分散液100gを加えて均一に撹拌し、さらに1.8gのCaCO3を加えて、80℃まで昇温後冷却して架橋反応を行って、改質ポリウレタン樹脂水性分散液9を得た。
製造例10
撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量1Lの乳化重合設備に水180g、東邦化学工業(株)製ペグノールL−12を5g仕込み85℃に加熱した。これに、別のモノマー混合設備において、2−エチルヘキシルアクリレート160g、メチルメタクリレート200g、メタクリル酸40gからなるモノマーを、東邦化学工業(株)製ペグノールL−30Pを15g、水350gに混合して調製したモノマー乳化液を、乳化重合設備の温度を80〜85℃に保ちつつ6時間を要して滴下した。滴下終了後、85から90℃で30分間熟成し、冷却してアクリル樹脂エマルジョン(樹脂分38.8%、酸価36)を得た。次に、製造例5で得た500gのポリウレタン樹脂水性分散液5を、撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの撹拌釜内で常温で撹拌しているところに、上記アクリル樹脂エマルジョン138gを加えて撹拌し、さらに、25%の4,4'−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン水溶液5gとMgCO3 0.5gと軟水20gとを加えて、80〜85℃で2時間撹拌を行ってから、40℃に冷却し、150メッシュの濾過布で濾過して、改質ポリウレタン樹脂水性分散液10を得た。
製造例11
撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量1Lの乳化重合設備に水180g、東邦化学工業(株)製ペグノールL−12を5g仕込み85℃に加熱した。
これに、別のモノマー混合設備において、2−エチルヘキシルアクリレート160g、メチルメタクリレート200g、メタクリル酸40gからなるモノマーを、東邦化学工業(株)製ペグノールL−30Pを15g、水350gに混合して調製したモノマー乳化液を、乳化重合設備の温度を80〜85℃に保ちつつ6時間を要して滴下した。滴下終了後、85から90℃で30分間熟成し、冷却してアクリル樹脂エマルジョン(樹脂分38.8%、酸価36mgKOH/g)を得た。次に、製造例7で得た500gのポリウレタン樹脂水性分散液7を、撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの撹拌釜内で常温で撹拌しているところに、上記アクリル樹脂エマルジョン138gを加えて撹拌し、さらに、25%の4,4'−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン水溶液15gとMgCO3 1.5gと軟水20gとを加えて、80〜85℃で2時間撹拌を行ってから、40℃に冷却し、150メッシュの濾過布で濾過して、改質ポリウレタン樹脂水性分散液11を得た。
製造例12
撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの合成装置にポリオール成分として保土ヶ谷化学工業(株)製ポリテトラメチレンエーテルグリコール(平均分子量1000)を80g、ジメチロールプロピオン酸20gを仕込み、さらに反応溶媒としてN−メチルピロリドン30.0gを加えた。イソシアネート成分としてトリレンジイソシアネートを104g仕込み、80から85℃に昇温し5時間反応させた。得られたプレポリマーのNCO含有量は、8.9%であった。さらにトリエチルアミン16gを加えて中和を行い、エチレンジアミン16gと水480gとの混合水溶液を加え、50℃で4時間、乳化し架橋反応させて鎖延長させたポリウレタン樹脂水性分散液12を得た(固形分30.1%、酸価41.4)。
製造例13
撹拌機、温度計、温度コントローラを備えた内容量0.8Lの合成装置にポリオール成分として1,4−シクロヘキサンジメタノール50g、ジメチロールプロピオン酸20gを仕込み、さらに反応溶媒としてN−メチルピロリドン30.0gを加えた。イソシアネート成分としてトリレンジイソシアネートを104g仕込み、80から85℃に昇温し5時間反応させた。得られたプレポリマーのNCO含有量は、8.9%であった。さらにトリエチルアミン16gを加えて中和を行い、エチレンジアミン16gと水480gとの混合水溶液を加え、50℃で4時間、乳化し架橋反応させてポリウレタン樹脂水性分散液13を得た(固形分29.6%、酸価47.3)。
[樹脂塗装鋼板の作製及び評価結果]
(実験例1)
得られたポリウレタン樹脂水性分散液および改質ポリウレタン樹脂水性分散液に、無機充填材として無定形シリカ(球状シリカ:日産化学工業社製スノーテックスST−40、平均粒子径10〜20nm)、鱗片状シリカ(桐海化学社製サンラブリーHN−020、平均粒子径0.2μm)、シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製KBM403)を添加し皮膜形成用水性組成物を調製した。尚、各成分の配合比は、固形分換算で、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂30質量部、無機充填材70質量部(無定形シリカ:鱗片状シリカ(質量比)=80:20)、シランカップリング剤15質量部となるように配合した
この皮膜形成用水性組成物をクロメート処理を施さない電気亜鉛めっき鋼板(Zn付着量20g/m2、板厚0.8mm)の表面に絞りロールにて塗布し、板温90℃で加熱乾燥して、付着量0.4g/m2の樹脂皮膜が形成された樹脂塗装鋼板を得た。得られた樹脂塗装鋼板について、耐食性、耐黒化性、耐アブレージョン性などについて評価した結果を表1に示した。
Figure 0004163609
表1より、本発明の要件を満足するポリウレタン樹脂水性分散液1〜11を使用すれば、耐食性、耐アブレージョン性、耐黒化性に優れる樹脂塗装鋼板が得られることが分かる。
(実験例2)
ポリウレタン樹脂水性分散液1に、無機充填材(無定形シリカ:鱗片状シリカ(質量比)=80:20)、シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを添加し皮膜形成用水性組成物を調製し、皮膜形成用組成物中のカルボキシル基含有ポリウレタン樹脂と無機充填剤の含有量の影響について検討した。尚、無定形シリカ、鱗片状シリカ、及び、シランカップリング剤としては、実験例1と同一のものを使用し、各成分の配合比は、固形分換算で、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂3〜80質量部、無機充填材20〜97質量部、シランカップリング剤15質量部となるように配合した(但し、無機充填材とカルボキシル基含有ポリウレタンは、合計で100質量部となるようする)。この皮膜形成用水性組成物を用いて、実験例1と同様の方法により樹脂塗装鋼板を作製した。得られた樹脂塗装鋼板について、耐食性、耐黒化性、及び、耐アブレージョン性について評価した結果を表2に示した。
Figure 0004163609
表2より、カルボキシル基含有ポリウレタンの含有量が5〜75質量部の範囲(無機充填材の含有量が25〜95質量部の範囲)では、耐食性、耐黒化性、耐アブレージョン性のバランスに優れた樹脂塗装鋼板が得られ、特にカルボキシル基含有ポリウレタンの含有量が20〜40質量部の範囲(無機充填剤の含有量が60〜80質量部の範囲)において、耐食性、耐黒化性、耐アブレージョンが極めて優れていることが分かる。
(実験例3)
ポリウレタン樹脂水性分散液1に、無機充填材(無定形シリカ:鱗片状シリカ(質量比)=80:20)、シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを添加し皮膜形成用水性組成物を調製し、皮膜形成用組成物中のシランカップリング剤の含有量の影響について検討した。尚、無定形シリカ、鱗片状シリカ、及び、シランカップリング剤としては、実験例1と同一のものを使用し、各成分の配合比は、固形分換算で、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂40質量部、無機充填材60質量部とし、シランカップリング剤0〜25質量部となるように配合した。この皮膜形成用水性組成物を用いて、実験例1と同様の方法により樹脂塗装鋼板を作製した。得られた樹脂塗装鋼板について、耐食性、塗装性について評価した結果を表3にまとめた。皮膜形成用水性組成物の安定性も併せて表3に示した。
Figure 0004163609
表3より、シランカップリング剤の含有量が3〜20質量部の範囲において、皮膜形成用水性組成物の安定性が良好であり、耐食性、耐アブレージョン性、耐黒化性に優れた樹脂塗装鋼板が得られていることが分かる。
(実験例4)
ポリウレタン樹脂水性分散液1に、無機充填材(球状シリカ:鱗片状シリカ(質量比)=80:20)、シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM403)を添加し樹脂皮膜形成用水性組成物を調製し、表4に示す如く球状シリカ(日産化学工業社製)と鱗片状シリカ(桐海化学社製)の平均粒子径の影響について検討した。
尚、各成分の配合比は、固形分換算で、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂40質量部、無機充填材60質量部、シランカップリング剤15質量部となるように配合した。この皮膜形成用水性組成物を用いて、実験例1と同様の方法により樹脂塗装鋼板を作製した。得られた樹脂塗装鋼板について、耐食性、耐黒化性、及び、耐アブレージョン性について評価した結果を表4に示した。
Figure 0004163609
表4の結果より、球状シリカの平均粒子径が4〜20nmであって、鱗片状シリカの平均粒子径が0.1〜1μmのときに、耐食性、耐黒化性、及び、耐アブレージョン性のバランスに優れる樹脂皮膜が得られることが分かる。
(実験例5)
ポリウレタン樹脂水性分散液1に、無機充填剤(球状シリカ:日産化学工業社製スノーテックスST−40、平均粒子径10〜20nm、鱗片状シリカ:桐海化学社製サンランブリーHN−020、平均粒子径0.2μm)、シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM403)を添加し樹脂皮膜形成用水性組成物を調製し、表5に示す如く無機充填剤中の球状シリカと鱗片状シリカの配合比について検討した。尚、各成分の配合比は、固形分換算で、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂40質量部、無機充填剤60質量部、シランカップリング剤15質量部となるように配合した。
この樹脂皮膜形成用水性組成物を用いた以外は、実験例1と同様の方法により樹脂塗装鋼板を作製した。得られた樹脂塗装鋼板の耐食性について評価した結果を表5にまとめた。
Figure 0004163609
表5の結果より、球状シリカ:鱗片状シリカ(質量比)=95:5〜5:95であれば、耐食性、耐黒化性、及び、耐アブレージョン性が優れ、球状シリカ:鱗片状シリカ(質量比)=90:10〜40:60の範囲において、耐食性などが極めて優れていることが分かる。一方、球状シリカおよび鱗片状シリカを単独で使用した場合には、耐黒化性、耐アブレージョン性を満足するものが得られなかった。
(実験例6)
ポリウレタン樹脂水性分散液1に、無機充填材(無定形シリカ:鱗片状シリカ(質量比)=80:20)、表6に示したシランカップリング剤を添加し樹脂皮膜形成用水性組成物を調製した。尚、無定形シリカ、鱗片状シリカ、及び、シランカップリング剤としては、実験例1と同一のものを使用し、各成分の配合比は、固形分換算で、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂40質量部、無機充填材60質量部、シランカップリング剤15質量部となるように配合した。この皮膜形成用水性組成物を用いて、実験例1と同様の方法により樹脂塗装鋼板を作製した。得られた樹脂塗装鋼板の耐食性、耐黒化性、及び、耐アブレージョン性について評価した結果を表6にまとめた。
Figure 0004163609
表6の結果から、シランカップリング剤として末端にグリシジル基を有するシランカップリング剤を使用すれば、皮膜形成用水性組成物の安定性が優れ、耐食性に優れる樹脂塗装鋼板が得られることが分かる。
(実験例7)
ポリウレタン樹脂水性分散液1に、無機充填材(無定形シリカ:鱗片状シリカ(質量比)=80:20)、シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを添加し樹脂皮膜形成用水性組成物を調製した。尚、無定形シリカ、鱗片状シリカ、シランカップリング剤としては、実験例1と同一のものを使用し、各成分の配合比は、固形分換算で、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂40質量部、無機充填材60質量部、シランカップリング剤15質量部となるように配合した。この皮膜形成用水性組成物を用いて、鋼板への付着量が0.01〜2.0g/m2となるように樹脂皮膜を形成した以外は、実験例1と同様の方法により樹脂塗装鋼板を作製した。得られた樹脂塗装鋼板について、耐食性、耐黒化性、及び、耐アブレージョン性について評価した結果を表7にまとめた。
Figure 0004163609
表7の結果より、樹脂皮膜の付着量を0.05〜1g/m2の範囲とすることにより、耐食性、耐黒化性、及び、耐アブレージョン性のバランスに優れた樹脂塗装鋼板が得られていることが分かる。

Claims (9)

  1. 樹脂皮膜が金属板に形成されている表面処理金属板であって、
    前記樹脂皮膜は、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂、シランカップリング剤、及び、無機充填剤を含む皮膜形成用組成物から形成され、
    前記無機充填剤は、無定形シリカと鱗片状シリカとの混合物であり、
    前記ポリウレタン樹脂は、ウレタンプレポリマーを鎖延長剤で鎖延長反応して得られるものであって、前記ウレタンプレポリマーを構成するポリイソシアネート成分として、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートおよびジシクロヘキシルメタンジイソシアネートよりなる群から選択される少なくとも1種を必須的に使用し、
    前記ウレタンプレポリマーを構成するポリオール成分として、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエーテルポリオール、及び、カルボキシル基を有するポリオールの全てを必須的に使用するものであることを特徴とする表面処理金属板。
  2. 前記無定形シリカの平均粒子径は1〜20nmであり、前記鱗片状シリカの平均粒子径は、0.1〜1μmである請求項1に記載の表面処理金属板。
  3. 前記無機充填剤中における無定形シリカと鱗片状シリカとの混合比率は、無定形シリカ:鱗片状シリカ(質量比)=95:5〜5:95である請求項1又は2に記載の表面処理金属板。
  4. 前記皮膜形成用組成物の各成分の含有量は、
    カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂:5〜75質量部;
    無機充填剤:25〜95質量部(但し、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂と無機充填剤との合計量は100質量部とする);及び
    シランカップリング剤:3〜20質量部である請求項1〜3のいずれかに記載の表面処理金属板。
  5. 前記樹脂皮膜の付着量は、0.05〜1g/m2である請求項1〜4のいずれかに記載の表面処理金属板。
  6. 前記鎖延長剤としては、エチレンジアミンまたはヒドラジンを使用するものである請求項1〜5のいずれかに記載の表面処理金属板。
  7. 前記1,4−シクロヘキサンジメタノールと前記ポリエーテルポリオールの質量比が1,4−シクロヘキサンジメタノール:ポリエーテルポリオール=50:50〜5:95である請求項1〜6のいずれかに記載の表面処理金属板。
  8. 前記ポリエーテルポリオールは、ポリオキシプロピレングリコール又はポリテトラメチレンエーテルグリコールである請求項1〜7のいずれかに記載の表面処理金属板。
  9. 前記シランカップリング剤は、下記式(1)で表されるものである請求項1〜8のいずれかに記載の表面処理金属板。
    Figure 0004163609
    (式(1)中、R1:グリシドキシ基、R2、R3:低級アルコキシ基、R4:低級アルコキシ基または低級アルキル基、X:低級アルキレン基)
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