JP2005060484A - スルホン酸基を有するポリアリーレン共重合体およびその製造方法、ならびに高分子固体電解質およびプロトン伝導膜 - Google Patents
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Abstract
【課題】 効率のよいプロトン伝導性を有するとともに、耐熱水性、耐溶剤性、耐熱性、耐酸化性および靭性等に優れた高分子重合体およびその製造方法、ならびに該重合体から得られる高分子固体電解質およびプロトン伝導膜を提供する。
【解決手段】 下記一般式(A)で表されるブロックと下記一般式(B)で表されるブロックとを含むことを特徴とするスルホン酸基を有するポリアリーレンブロック共重合体。
【化1】
(式(A)中、Xは単結合、電子吸引性基または電子供与性基を示し、mは0〜10の整数、kは0〜5の整数、lは0〜4の整数を示し、k+l≧1である。nは正の整数を示し、Tは単結合、2価の電子吸引性基、2価の電子供与性基等を示す。)
【化2】
(式(B)中、R1〜R8は、水素原子等を示し、Wは2価の電子吸引性基または単結合を示し、Tは上記と同義、nは正の整数を示す。)
【選択図】 なし
【解決手段】 下記一般式(A)で表されるブロックと下記一般式(B)で表されるブロックとを含むことを特徴とするスルホン酸基を有するポリアリーレンブロック共重合体。
【化1】
(式(A)中、Xは単結合、電子吸引性基または電子供与性基を示し、mは0〜10の整数、kは0〜5の整数、lは0〜4の整数を示し、k+l≧1である。nは正の整数を示し、Tは単結合、2価の電子吸引性基、2価の電子供与性基等を示す。)
【化2】
(式(B)中、R1〜R8は、水素原子等を示し、Wは2価の電子吸引性基または単結合を示し、Tは上記と同義、nは正の整数を示す。)
【選択図】 なし
Description
本発明は、スルホン酸基を有するポリアリーレン共重合体および該共重合体の製造方法、ならびに該共重合体から得られる高分子固体電解質およびプロトン伝導膜に関する。
電解質は、通常、(水)溶液で用いられることが多い。しかし、近年、これを固体系に置き替えていく傾向が高まってきている。その第1の理由としては、例えば、上記の電気・電子材料に応用する場合のプロセッシングの容易さであり、第2の理由としては、軽薄短小・省電力化への移行である。
従来、プロトン伝導性材料としては、無機物からなるもの、有機物からなるものの両方が知られている。無機物の例としては、例えば水和化合物であるリン酸ウラニルが挙げられるが、これら無機化合物は界面での接触が十分でなく、伝導層を基板あるいは電極上に形成するには問題が多い。
一方、有機化合物の例としては、いわゆる陽イオン交換樹脂に属するポリマー、例えばポリスチレンスルホン酸などのビニル系ポリマーのスルホン化物、ナフィオン(商品名、デュポン社製)を代表とするパーフルオロアルキルスルホン酸ポリマー、パーフルオロアルキルカルボン酸ポリマーや、ポリベンズイミダゾールやポリエーテルエーテルケトンなどの耐熱性高分子にスルホン酸基やリン酸基を導入したポリマー(Polymer Preprints, Japan, Vol.42, No.7, p.2490〜2492 (1993)、Polymer Preprints, Japan, Vol.43, No.3, p.735〜736 (1994)、Polymer Preprints, Japan, Vol.42, No.3, p.730 (1993))などの有機系ポリマーが挙げられる。
これらの有機系ポリマーは、通常はフィルム状で用いられ、例えば、溶媒に可溶性であること、あるいは熱可塑性であることを利用して、プロトン伝導膜として電極上に接合加工して使用される。しかしながら、これら有機系ポリマーの多くは、プロトン伝導性がまだ十分でないことに加え、耐久性にも改善の余地があり、また、高温(100℃以上)においてプロトン伝導性が低下したり、スルホン化によって脆化、機械的強度の低下を生じたり、物性が湿度条件に対して大きく依存するといった問題や、電極との密着性が必ずしも十分ではないといった問題を有している。また、電池の稼働中において、含水ポリマー構造に起因してポリマーが過度に膨潤し、強度が低下することがあり、さらには形状の崩壊に至る場合もある。このように、これらの有機系ポリマーは、電気・電子材料等への応用を考慮した場合に種々の問題を有している。
例えば、特許文献1では、スルホン化された剛直ポリアリーレンからなる固体高分子電解質が提案されている。このポリマーは、フェニレン連鎖からなる芳香族化合物を重合して得られるポリマーを主成分とし、これをスルホン化剤と反応させてスルホン酸基を導入したものである。しかしながら、このポリマーでは、スルホン酸基の導入量の増加によってプロトン伝導度が向上するものの、同時に、その機械的性質、例えば破断伸び、耐折り曲げ性等の靭性や耐熱水性は著しく損なわれる。
米国特許第5,403,675号明細書
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決するために為されたものであり、その目的は、効率のよいプロトン伝導性を有するとともに、耐熱水性、耐溶剤性、耐熱性、耐酸化性および、靭性等の機械的性質に優れた高分子重合体およびその製造方法、ならびに該重合体から得られる高分子固体電解質およびプロトン伝導膜を提供することにある。
本発明のスルホン酸基を有するポリアリーレンブロック共重合体は、下記一般式(A)で表されるブロックと下記一般式(B)で表されるブロックとを含むことを特徴とする;
(式(A)中、Xは単結合、電子吸引性基または電子供与性基を示し、mは0〜10の整数を示し、mが1〜10である場合にはXは互いに同一でも異なっていてもよい。kは0〜5の整数を示し、lは0〜4の整数を示し、k+l≧1である。nは正の整数を示し、Tは単結合、2価の電子吸引性基、2価の電子供与性基または下記一般式(C−1)もしくは(C−2)で表される2価の基を示す;
(式(C−1)および(C−2)中、R9〜R20は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ素置換アルキル基、アリル基、アリール基またはスルホン酸基を示す。Qは単結合または2価の電子供与性基を示し、Jは単結合、アルキレン基、フッ素置換アルキレン基、アリール置換アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、フルオレニリデン基、−O−、−S−、−CO−、−CONH−、−COO−、−SO−または−SO2−を示す。)。ブロックを構成するn個の各繰り返し単位について、k、l、m、XおよびTは互いに独立である。)
(式(B)中、R1〜R8は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ素置換アルキル基、アリル基またはアリール基を示す。Wは2価の電子吸引性基または単結合を示し、Tは上記と同義である。nは正の整数を示す。ブロックを構成するn個の各繰り返し単位について、R1〜R8、WおよびTは互いに独立である。)。
また、本発明のスルホン酸基を有するポリアリーレンブロック共重合体は、一般式(A)で表されるブロックに含まれる平均スルホン酸基数が40以上であり、一般式(B)で表されるブロックのnが20以上であることを特徴とする。
また、本発明のスルホン酸基を有するポリアリーレンブロック共重合体は、0.3〜5.0meq/gに相当する量のスルホン酸基を含むことを特徴とする。
また、本発明の高分子電解質は、上記のポリアリーレンブロック共重合体からなることを特徴とする。
また、本発明のプロトン伝導膜は、上記のポリアリーレンブロック共重合体を含むことを特徴とする。
また、本発明のポリアリーレンブロック共重合体の製造方法は、一般式(A)で表されるブロックの繰り返し単位を形成するモノマーと、一般式(B)で表されるブロックの繰り返し単位を形成するモノマーとのうち少なくとも一方を重合して前駆体を製造し、得られた前駆体に他の共重合成分を反応させることを特徴とする。
本発明によれば、効率のよいプロトン伝導性を有するとともに、耐熱水性、耐溶剤性、耐熱性、耐酸化性および、靭性等の機械的性質に優れたスルホン酸基を有するポリアリーレンブロック共重合体およびその製造方法、ならびに該重合体から得られる高分子固体電解質およびプロトン伝導膜が提供される。
以下、本発明について具体的に説明する。
(スルホン酸基を有するポリアリーレンブロック共重合体)
本発明のポリアリーレンブロック共重合体は、下記一般式(A)で表されるブロックと、後述する一般式(B)で表されるブロックとを含んでいる。
(スルホン酸基を有するポリアリーレンブロック共重合体)
本発明のポリアリーレンブロック共重合体は、下記一般式(A)で表されるブロックと、後述する一般式(B)で表されるブロックとを含んでいる。
一般式(A)において、Xは単結合、電子吸引性基または電子供与性基を示し、具体的には−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF2)p−(ここで、pは1〜10の整数である)、−C(CF3)2−などの電子吸引性基、−CH2−、−C(CH3)2−、−O−、−S−などの電子供与性基が挙げられる。なお、電子吸引性基とは、ハメット(Hammett)置換基定数が、フェニル基のm位の場合に0.06以上、p位の場合に0.01以上の値となる基をいう。
mは0〜10、好ましくは0〜8、より好ましくは0〜5の整数を示す。mが1〜10の場合にはXは互いに同一でも異なっていてもよい。
kは0〜5の整数、lは0〜4の整数を示し、k+l≧1である。中でも、kが1〜4の整数、lが0〜3の整数であり、且つmが0〜5の整数であることが好ましい。
Tは単結合、2価の電子吸引性基、2価の電子供与性基または下記一般式(C−1)もしくは(C−2)で表される2価の基を示す。
一般式(C−1)および(C−2)において、R9〜R20は水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ素置換アルキル基、アリル基、アリール基またはスルホン酸基を示す。R9〜R20は互いに同一でも異なっていてもよい。
アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、ヘキシル基などが挙げられる。中でも、メチル基、エチル基が好ましい。
フッ素置換アルキル基としては、具体的には、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基などが挙げられる。中でも、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基が好ましい。
アリル基としては、具体的には、プロペニル基などが挙げられる。
アリール基としては、具体的には、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基などが挙げられる。
R9〜R20がスルホン酸基である場合、具体的には、主鎖または側鎖に電子供与性基が置換されている場合には置換基に対してオルトまたはパラの位置に置換される。また、電子吸引性基が置換されている場合には基本的にメタでの置換がおこり、反応条件によってはオルトまたはパラの位置に置換されることがある。
Qは単結合または2価の電子供与性基を示し、具体的には、−O−、−S−、−CH=CH−、−C≡C−などが挙げられる。
Jは単結合、アルキレン基、フッ素置換アルキレン基、アリール置換アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、フルオレニリデン基、−O−、−S−、−CO−、−CONH−、−COO−、−SO−または−SO2−から選ばれる原子または基を示す。
このようなアルキレン基、フッ素置換アルキレン基、アリール置換アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、フルオレニリデン基としては、具体的には、−C(CH3)2−、−CH=CH−、−CH=CH−CH2−、−C≡C−、−(CF2)p−(ここで、pは1〜10の整数である)、−C(CF3)2−、下記式
で表される基などが挙げられる。
一般式(A)において、ブロックを構成するn個の各繰り返し単位(a);
について、k、l、m、XおよびTは互いに独立であり、上述した範囲内において各繰り返し単位(a)間で異なっていてもよい。
一般式(A)において、nは特に規定されるものではないが、共重合体中において一般式(A)のブロック内に含まれるスルホン酸基数は伝導度に大きな影響を及ぼし、同一スルホン酸導入量のサンプルを比較した場合、一般式(A)のブロック内におけるスルホン酸基数が多いほど伝導度が高い傾向がある。一般式(A)のブロック内におけるスルホン酸基数は、共重合体中に導入された一般式(A)の各ブロックについての平均値で40以上であることが好ましく、さらに好ましくは60以上であり、より好ましくは80以上である。平均値の上限は800以下であり、これを超える数値になるとフィルムのキャスト溶媒に対する溶解性、各種物性に影響を与え、特性バランスとしては低下する傾向がある。
この一般式(A)のブロック内におけるスルホン酸基数の平均値は、基本的に一般式(A)のブロック内における繰り返し単位(a)の個数n、側鎖部の繰り返し数m、主鎖部分のTを構成する芳香環の数、あるいは繰り返し単位(a)を形成するモノマーと他の共重合成分との仕込みモル比などから規定することができる。共重合体を合成する際、これらの設定値が高いほど一般式(A)のブロックに含まれるスルホン酸基数を増加させることができる。また、上記のスルホン酸基数の平均値は、共重合体を合成する際に、繰り返し単位(a)を形成するモノマーと他の共重合成分との添加順序を変更することによっても調整することができる。
一般式(A)の構造を重合体に導入することで、スルホン化された柔軟な長側鎖の構造と、多数のスルホン酸基が隣接した構造が重合体の一次構造に付与され、これによってスルホン酸基のプロトン会合効率が向上する。その結果、従来公知のスルホン化(共)重合体のプロトン伝導度を比較的低いスルホン酸基当量で発現させることができる。
上述した一般式(A)で表されるブロックとともに、本発明のポリアリーレンブロック共重合体は、下記一般式(B)で表されるブロックを含んでいる。
一般式(B)において、R1〜R8は、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ素置換アルキル基、アリル基またはアリール基を示す。R1〜R8は互いに同一でも異なっていてもよい。
アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、ヘキシル基などが挙げられる。中でも、メチル基、エチル基が好ましい。
フッ素置換アルキル基としては、具体的には、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基などが挙げられる。中でも、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基が好ましい。
アリル基としては、具体的には、プロペニル基などが挙げられる。
アリール基としては、具体的には、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基などが挙げられる。
Wは単結合または2価の電子吸引性基を示し、電子吸引性基としては、前述したものと同様の基が挙げられ、具体的には、−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF2)p−(ここで、pは1〜10の整数である)、−C(CF3)2−などが挙げられる。また、Tは一般式(A)における定義と同一であり、単結合、2価の電子吸引性基、2価の電子供与性基または一般式(C−1)もしくは(C−2)で表される2価の基を示す。
一般式(B)において、ブロックを構成するn個の各繰り返し単位(b);
について、R1〜R8、WおよびTは互いに独立であり、上述した範囲内において各繰り返し単位(b)間で異なっていてもよい。
一般式(B)において、nは正の整数であり、上限は通常200、好ましくは20〜100である。一般式(B)のブロックの分子量は各種物性に大きな影響を及ぼし、分子量が高い程、耐熱水性や耐溶剤性、耐熱性、耐酸化性等が良好な値を示す。また、分子量が高すぎる場合には、共重合体の溶液粘度が高くなりすぎ好ましくない。
また、nの値は、予め所定数の繰り返し単位(b)が繰り返された構造を有する化合物を使用するか、あるいは、繰り返し単位(b)を形成するモノマーとその他の共重合成分との仕込みモル比、添加順序を変更することによっても調整することができる。
本発明の共重合体において、一般式(A)のブロックの含有量は0.1〜99.9質量%、好ましくは10.0〜95.0質量%、さらに好ましくは20.0〜90.0質量%であり、一般式(B)のブロックの含有量は0.1〜99.9質量%、好ましくは5.0〜90.0質量%、さらに好ましくは10.0〜80.0質量%である。
一般式(A)のブロックと一般式(B)のブロックとを上記した含有量で、前述したシークエンスで含むことによって、ポリマーに高いプロトン伝導度を付与しながら、同時に耐熱水性、耐溶剤性、耐熱性、耐酸化性および靭性等の物性低下を抑制し、改善することが可能となる。
本発明の共重合体は、スルホン酸基が凝集した構造を有する一般式(A)のブロックと、適度に疎水化されたセグメントを有する一般式(B)のブロックとを特定のシークエンスおよび割合で含んでいるので、上記したように、高いプロトン伝導度を有するとともに耐熱水性、耐溶剤性、耐熱性、耐酸化性、靱性が良好であり、燃料電池用電解質用途に好適である。
(スルホン酸基を有するポリアリーレンブロック共重合体の製造方法)
本発明の共重合体は、一般式(A)で表されるブロックの繰り返し単位(a)を形成するモノマーと、一般式(B)で表されるブロックの繰り返し単位(b)を形成するモノマーとを共重合させることにより合成することができる。
(スルホン酸基を有するポリアリーレンブロック共重合体の製造方法)
本発明の共重合体は、一般式(A)で表されるブロックの繰り返し単位(a)を形成するモノマーと、一般式(B)で表されるブロックの繰り返し単位(b)を形成するモノマーとを共重合させることにより合成することができる。
また、スルホン酸基を含有しない一般式(A)のブロックと、一般式(B)で表されるブロックとを有する共重合体を予め合成し、この共重合体をスルホン化することにより合成することもできる。
本発明の共重合体を合成する反応条件と、繰り返し単位(a)を形成するモノマーおよび繰り返し単位(b)を形成するモノマーの官能基としては、これらのモノマーから繰り返し単位(a)が繰り返された構造単位(重合体)、繰り返し単位(b)が繰り返された構造単位(重合体)を合成する際に用いられる公知の反応条件、官能基が選択される。
本発明の共重合体は、繰り返し単位(a)を形成するモノマーと、繰り返し単位(b)を形成するモノマーとのうち少なくとも一方を予め重合して前駆体を製造し、得られた前駆体に他の共重合成分を反応させて製造することができる。
例えば、先ず4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホンのナトリウム塩と2,5−ジクロロ−4’−フェノキシベンゾフェノン)とを縮合して一般式(A)のブロックを構成するポリエーテルスルホン前躯体を含む混合物を得、次いで4,4'−ジクロロジフェニルスルホンとこの混合物とを誘電率の高い極性溶媒中において高温で共重合することによりポリエーテルスルホンブロック共重合体を合成した後、スルホン化することにより本発明の共重合体を合成することができる。
また、他の具体例としては、以下に示す方法で本発明の共重合体を合成することができる。
先ず、次のようにして一般式(B)のブロックを構成する前躯体を製造する。ビスフェノールを対応するビスフェノールのアルカリ金属塩とするために、N−メチル−2−ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、スルホラン、ジフェニルスルホン、ジメチルスルホキサイドなどの誘電率の高い極性溶媒中へ、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、水素化アルカリ金属、水酸化アルカリ金属、アルカリ金属炭酸塩とともに加える。
ビスフェノールとしては、具体的には、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニルフェニル)フルオレン、2−フェニルフェノール、4,4'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、4,4'−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)ジフェニルメタン、4,4'−ビス(4−ヒドロキシ3,5−ジフェニルフェニル)ジフェニルメタン、2−フェニルヒドロキノンなどが挙げられる。
通常は、アルカリ金属をフェノールの水酸基に対してやや過剰量として反応させ、通常はアルカリ金属をフェノールの水酸基に対して1.1〜2倍当量、好ましくは1.2〜1.5倍当量使用する。
同時に、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、クロロベンゼン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトールなどの水と共沸する溶媒を共存させて、電子吸引性基で活性化されたフッ素、塩素などのハロゲン原子で置換された芳香族ジハライド化合物を反応させる。
芳香族ジハライド化合物としては、具体的には、4,4'−ジフルオロベンゾフェノン、4,4'−ジクロロベンゾフェノン、4,4'−クロロフルオロベンゾフェノン、ビス(4−クロロフェニル)スルホン、ビス(4−フルオロフェニル)スルホン、4−フルオロフェニル−4'−クロロフェニルスルホン、ビス(3−ニトロ−4−クロロフェニル)スルホン、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、ヘキサフルオロベンゼン、デカフルオロビフェニル、2,5−ジフルオロベンゾフェノン、1,3−ビス(4−クロロベンゾイル)ベンゼンなどが挙げられる。
反応性の点ではフッ素原子で置換された芳香族ジハライド化合物が好ましいが、次の芳香族カップリング反応を考慮した場合、末端が塩素原子となるように芳香族求核置換反応を組み立てる必要がある。例えば、4,4'−ジクロロベンゾフェノン、ビス(4−クロロフェニル)スルホンなどの活性芳香族ハロゲン化合物、または4,4'−ジフルオロベンゾフェノンと4,4'−クロロフルオロベンゾフェノンとの併用系での置換反応を行うことで目的の化合物が得られる。
ビスフェノールと活性芳香族ジハライドの使用割合は、目的とする各ブロックの分子量およびスルホン酸基導入量に合わせて調節される。また、芳香族求核置換反応の前に、予めビスフェノールをアルカリ金属塩としてもよい。反応温度は60℃〜300℃で、好ましくは80℃〜250℃である。反応時間は15分〜100時間、好ましくは1時間〜24時間である。
このようにして得られた一般式(B)のブロックを構成する前躯体に、繰り返し単位(a)を形成するモノマーか、あるいは予め製造された一般式(A)のブロックを構成する前躯体を反応させて本発明の共重合体を得ることができる。上述したように、一般式(A)のブロックのスルホン化を、共重合体を得た後に行ってもよい。
例えば、4,4'−ジヒドロキシベンゾフェノンと4,4'−ジクロロジフェニルスルホンとを塩基存在下において高温で反応させることにより両末端が塩素原子であるオリゴマーを合成し、一般式(B)のブロックを構成するポリエーテルケトンスルホン前躯体を得、次いで、2,5−ジクロロ−4’−(4−フェノキシ)フェノキシベンゾフェノンまたはその誘導体とのカップリング重合を行いポリエーテルケトンスルホン共重合体を合成した後、スルホン化することにより本発明の共重合体を合成することができる。
上述したモノマー単位(前駆体を含む)からポリアリーレン系重合体を重合する際には、触媒の存在下で重合を行う。使用される触媒は、遷移金属化合物を含む触媒系であり、この触媒系としては、1)遷移金属塩および配位子となる化合物(以下、「配位子成分」という。)、または配位子が配位された遷移金属錯体(銅塩を含む)、ならびに2)還元剤を必須成分とし、さらに、重合速度を上げるために、「塩」を添加してもよい。
ここで、遷移金属塩としては、具体的には、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケル、ニッケルアセチルアセトナートなどのニッケル化合物;塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウムなどのパラジウム化合物;塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄などの鉄化合物;塩化コバルト、臭化コバルト、ヨウ化コバルトなどのコバルト化合物などが挙げられる。中でも、特に塩化ニッケル、臭化ニッケルが好ましい。
また、配位子成分としては、具体的には、トリフェニルホスフィン、2,2'−ビピリジン、1,5−シクロオクタジエン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンなどが挙げられる。中でも、トリフェニルホスフィン、2,2'−ビピリジンが好ましい。上記配位子成分である化合物は、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
さらに、配位子が配位された遷移金属錯体としては、具体的には、塩化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、臭化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、ヨウ化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、硝酸ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、塩化ニッケル(2,2'−ビピリジン)、臭化ニッケル(2,2'−ビピリジン)、ヨウ化ニッケル(2,2'−ビピリジン)、硝酸ニッケル(2,2'−ビピリジン)、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスファイト)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムなどが挙げられる。中でも、塩化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、塩化ニッケル(2,2'−ビピリジン)が好ましい。
上記触媒系に使用することができる還元剤としては、具体的には、鉄、亜鉛、マンガン、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム、カルシウムなどが挙げられる。中でも、亜鉛、マグネシウム、マンガンが好ましい。これらの還元剤は、有機酸などの酸に接触させることによって、さらに活性化して用いることができる。
また、上記触媒系において使用することのできる「塩」としては、具体的には、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、硫酸ナトリウムなどのナトリウム化合物;フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、硫酸カリウムなどのカリウム化合物;フッ化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウム、硫酸テトラエチルアンモニウムなどのアンモニウム化合物などが挙げられる。中でも、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化カリウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウムが好ましい。
各成分の使用割合は、遷移金属塩または遷移金属錯体が、重合に用いられるモノマー単位1モルに対し、通常、0.0001〜10モル、好ましくは0.01〜0.5モルである。0.0001モル未満では、重合反応が十分に進行しないことがあり、一方、10モルを超えると、分子量が低下することがある。
触媒系において、遷移金属塩および配位子成分を用いる場合、この配位子成分の使用割合は、遷移金属塩1モルに対し、通常、0.1〜100モル、好ましくは1〜10モルである。0.1モル未満では、触媒活性が不十分となることがあり、一方、100モルを超えると、分子量が低下することがある。
また、還元剤の使用割合は、重合に用いられるモノマー単位1モルに対し、通常、0.1〜100モル、好ましくは1〜10モルである。0.1モル未満では、重合が十分進行しないことがあり、100モルを超えると、得られる重合体の精製が困難になることがある。
さらに、「塩」を使用する場合、その使用割合は、重合に用いられるモノマー単位1モルに対し、通常、0.001〜100モル、好ましくは0.01〜1モルである。0.001モル未満では、重合速度を上げる効果が不十分であることがあり、100モルを超えると、得られる重合体の精製が困難となることがある。
重合溶媒としては、具体的には、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N'−ジメチルイミダゾリジノンなどが挙げられる。中でも、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N'−ジメチルイミダゾリジノンが好ましい。これらの重合溶媒は、十分に乾燥してから用いることが好ましい。
重合溶媒中における、重合に用いられるモノマー単位の濃度は、通常、1〜90質量%、好ましくは5〜40質量%である。
また、重合する際の重合温度は、通常、0〜200℃、好ましくは50〜120℃である。また、重合時間は、通常、0.5〜100時間、好ましくは1〜40時間である。
スルホン酸基を有しない共重合体を得た後に一般式(A)のブロックをスルホン化する
際には、このスルホン酸基を有しない共重合体を、無溶剤下あるいは溶剤存在下でスルホン化剤と反応させてスルホン酸基を導入する。
際には、このスルホン酸基を有しない共重合体を、無溶剤下あるいは溶剤存在下でスルホン化剤と反応させてスルホン酸基を導入する。
スルホン化の際に使用する溶剤としては、具体的には、n−ヘキサンなどの炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドのような非プロトン系極性溶剤のほか、テトラクロロエタン、ジクロロエタン、クロロホルム、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素などが挙げられる。
本発明の共重合体中におけるスルホン酸基量は0.3〜5meq/g、好ましくは0.5〜3meq/g、より好ましくは0.8〜2.8meq/gである。0.3meq/g未満では、プロトン伝導度が低く、一方、5meq/gを超えると、親水性が高まり、耐溶媒性が大幅に低下してしまうため好ましくない。
上記のスルホン酸基量は、繰り返し単位(a)を形成するモノマーと繰り返し単位(b)を形成するモノマーとの使用割合、さらにモノマーの種類、組み合わせを変えることにより調整することができる。
本発明のスルホン酸基を含有するブロック共重合体の前駆体、すなわちスルホン酸誘導もしくは導入前のベースポリマーの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量で、1万〜100万、好ましくは2万〜80万である。1万未満では、成形フィルムにクラックが発生するなど、塗膜性が不十分であり、また強度的性質にも問題がある。一方、100万を超えると、溶解性が不十分となり、また溶液粘度が高く、加工性が不良になるなどの問題がある。
スルホン酸基を有するポリアリーレンの構造は、例えば、赤外線吸収スペクトルによって、1,230〜1,250cm-1のC−O−C吸収、1,640〜1,660cm-1のC=O吸収などにより確認でき、また、核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR)により、6.8〜8.5ppmの芳香族プロトンのピークから、その構造を確認することができる。
(高分子固体電解質)
本発明の高分子固体電解質は、上述したようなスルホン酸基を有するポリアリーレンからなる。
(高分子固体電解質)
本発明の高分子固体電解質は、上述したようなスルホン酸基を有するポリアリーレンからなる。
本発明の高分子固体電解質は、例えば一次電池用電解質、二次電池用電解質、燃料電池用高分子固体電解質、直接メタノール型燃料電池用電解質、表示素子、各種センサー、信号伝達媒体、固体コンデンサー、イオン交換膜などに利用可能である。
(プロトン伝導膜)
本発明のプロトン伝導膜は、例えば、上述した本発明のスルホン酸基を有するポリアリーレン(以下、単に「スルホン酸基を有するポリアリーレン」という)を溶剤に溶解して溶液とした後、キャスティングにより基体上に流延し、フィルム状に成形する方法(キャスティング法)などにより、フィルム状に成形して製造される。基体としては、通常の溶液キャスティング法に用いられる基体であれば特に限定されず、例えばプラスチック製、金属製などの基体が用いられ、好ましくは、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどの熱可塑性樹脂からなる基体が用いられる。
(プロトン伝導膜)
本発明のプロトン伝導膜は、例えば、上述した本発明のスルホン酸基を有するポリアリーレン(以下、単に「スルホン酸基を有するポリアリーレン」という)を溶剤に溶解して溶液とした後、キャスティングにより基体上に流延し、フィルム状に成形する方法(キャスティング法)などにより、フィルム状に成形して製造される。基体としては、通常の溶液キャスティング法に用いられる基体であれば特に限定されず、例えばプラスチック製、金属製などの基体が用いられ、好ましくは、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどの熱可塑性樹脂からなる基体が用いられる。
プロトン伝導膜を調製する際には、スルホン酸基を有するポリアリーレン以外に、硫酸、リン酸などの無機酸、カルボン酸を含む有機酸、適量の水などを併用してもよい。
スルホン酸基を有するポリアリーレンを溶解する溶媒としては、具体的には、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチル尿素、ジメチルイミダゾリジノン(DMI)などの非プロトン系極性溶剤が挙げられ、特に溶解性、溶液粘度の面から、N−メチル−2−ピロリドンが好ましい。非プロトン系極性溶剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、スルホン酸基を有するポリアリーレンを溶解させる溶媒として上記した非プロトン系極性溶剤とアルコールとの混合物を用いてもよい。アルコールとしては、具体的には、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどが挙げられ、特にメタノールが幅広い組成範囲で溶液粘度を下げる効果があり好ましい。アルコールは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
溶媒として非プロトン系極性溶剤とアルコールとの混合物を用いる場合には、非プロトン系極性溶剤が25〜95質量%、好ましくは25〜90質量%、アルコールが5〜75質量%、好ましくは10〜75質量%の組成の混合物が用いられる。アルコールの量が上記範囲内にあると、溶液粘度を下げる効果に優れる。
スルホン酸基を有するポリアリーレンを溶解させた溶液のポリマー濃度は、スルホン酸基を有するポリアリーレンの分子量にもよるが、通常、5〜40質量%、好ましくは7〜25質量%である。5質量%未満では、厚膜化し難く、また、ピンホールが生成しやすい。一方、40重量%を超えると、溶液粘度が高すぎてフィルム化し難く、また、表面平滑性に欠けることがある。
なお、溶液粘度は、スルホン酸基を有するポリアリーレンの分子量や、ポリマー濃度にもよるが、通常、2,000〜100,000mPa・s、好ましくは3,000〜50,000mPa・sである。2,000mPa・s未満では、成膜中の溶液の滞留性が悪く、基体から流れてしまうことがある。一方、100,000mPa・sを超えると、粘度が高過ぎて、ダイからの押し出しができず、流延法によるフィルム化が困難となることがある。
上記のようにして成膜した後、得られた未乾燥フィルムを水に浸漬することにより、未乾燥フィルム中の有機溶剤が水と置換され、得られるプロトン伝導膜の残留溶媒量を低減することができる。
なお、成膜後に未乾燥フィルムを水へ浸漬する前に、未乾燥フィルムを予備乾燥してもよい。予備乾燥は、未乾燥フィルムを通常50〜150℃の温度で、0.1〜10時間保持することにより行われる。
未乾燥フィルムを水に浸漬する際には、例えば、枚葉を水に浸漬するバッチ方式が採用される。あるいは、PETなどの基板フィルム上に成膜された状態で、この積層フィルムごと水に浸漬させるか、または基板から分離した膜を水に浸漬させて巻き取っていく連続方式が採用される。
バッチ方式の場合には、処理フィルムを枠に嵌める方式が、処理されたフィルムの表面における皺形成が抑制される点で好ましい。
未乾燥フィルムを水に浸漬する際には、未乾燥フィルム1質量部に対し、水が10質量部以上、好ましくは30質量部以上の接触比となるようにすることが好ましい。また、得られるプロトン伝導膜の残存溶媒量をできるだけ少なくするためには、できるだけ大きな接触比を維持するのが好ましい。さらに、浸漬に使用する水を交換したり、オーバーフローさせたりして、常に水中の有機溶媒濃度を一定濃度以下に維持しておくことも、得られるプロトン伝導膜の残存溶媒量の低減に有効である。プロトン伝導膜中に残存する有機溶媒量の面内分布を小さく抑えるためには、水中の有機溶媒濃度を撹拌等によって均質化させることが好ましい。
未乾燥フィルムを水に浸漬する際の水の温度は、好ましくは5〜80℃である。高温ほど、有機溶媒と水との置換速度は速くなるが、フィルムの吸水量も大きくなるので、乾燥後に得られるプロトン伝導膜の表面が荒れる場合がある。置換速度と取り扱い易さを考慮すると、10〜60℃の温度範囲がより好ましい。
浸漬時間は、初期の残存溶媒量や接触比、処理温度にもよるが、通常10分〜240時間であり、好ましくは30分〜100時間である。
このように、未乾燥フィルムを水に浸漬してから乾燥すると、残存溶媒量が低減されたプロトン伝導膜が得られ、プロトン伝導膜中における残存溶媒量は、通常5質量%以下である。
また、例えば、未乾燥フィルムと水との接触比を、未乾燥フィルム1質量部に対して水が50質量部以上とし、浸漬する際の水の温度を10〜60℃、浸漬時間を10分〜10時間とすることによって、得られるプロトン伝導膜の残存溶媒量を1質量%以下とすることができる。
以上説明したように未乾燥フィルムを水に浸漬した後、フィルムを30〜100℃、好ましくは50〜80℃で、10〜180分、好ましくは15〜60分乾燥し、次いで、50〜150℃で、0.5〜24時間、好ましくは500mmHg〜0.1mmHgの減圧下で真空乾燥することによってプロトン伝導膜が得られる。
こうして得られるプロトン伝導膜は、その乾燥膜厚が、通常10〜100μm、好ましくは20〜80μmである。
本発明のプロトン伝導膜は、老化防止剤、好ましくは分子量500以上のヒンダードフェノール系化合物を含有してもよく、老化防止剤を含有することでプロトン伝導膜としての耐久性をより向上させることができる。
このような分子量500以上のヒンダードフェノール系化合物としては、具体的には、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロオネート](商品名:IRGANOX 245)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX 259)、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−3,5−トリアジン(商品名:IRGANOX 565)、ペンタエリスリチルーテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX 1010)、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX 1035)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(商品名:IRGANOX 1076)、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチルー4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)(IRGAONOX 1098)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4―ヒドロキシベンジル)ベンゼン(商品名:IRGANOX 1330)、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト(商品名:IRGANOX 3114)、3,9−ビス[2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(商品名:Sumilizer GA-80)などが挙げられる。
これらのヒンダードフェノール系化合物は、スルホン酸基を有するポリアリーレン100質量部に対して0.01〜10質量部の量で使用することが好ましい。
本発明のプロトン伝導膜は、高いプロトン伝導度を保持しつつ、優れた耐熱水性や耐溶剤性、耐熱性、耐酸化性、靭性を示すので、家庭用電源向け燃料電池、燃料電池自動車、携帯電話用燃料電池、パソコン用燃料電池、携帯端末用燃料電池、デジタルカメラ用燃料電池、ポータブルCD、MD用燃料電池、ヘッドホンステレオ用燃料電池、ペットロボット用燃料電池、電動アシスト自転車用燃料電池、電動スクーター用燃料電池等の用途に好適に使用することができる。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
下記実施例において、スルホン酸当量、分子量、プロトン伝導度、耐溶媒性、およびメタノール透過度の測定と評価は以下のようにして行った。
1.スルホン酸当量
得られたスルホン酸基を有するポリアリーレンを、水洗水が中性になるまで洗浄してフリーの残存している酸を充分に除去した。これを乾燥した後、所定量を秤量し、THF/水の混合溶剤に溶解し、フェノールフタレインを指示薬としてNaOHの標準液を用いて滴定を行い、中和点からスルホン酸当量を求めた。
2.分子量の測定
スルホン酸基を有さないポリアリーレンの数平均分子量および重量平均分子量については、基本的に溶剤としてテトラヒドロフラン(THF)を用い、GPCによってポリスチレン換算の分子量を求めた。スルホン酸基を有するポリアリーレンの数平均分子量および重量平均分子量については、基本的に溶剤として臭化リチウムと燐酸を添加したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を溶離液として用い、GPCによってポリスチレン換算の分子量を求めた。
3.プロトン伝導度の測定
交流抵抗は、5mm幅の短冊状のプロトン伝導膜試料の表面に、白金線(φ=0.5mm)を押し当て、恒温恒湿装置中に試料を保持し、白金線間の交流インピーダンス測定から求めた。すなわち、相対湿度80%、温度60℃の環境下で交流10kHzにおけるインピーダンスを測定した。抵抗測定装置として、(株)NF回路設計ブロック製のケミカルインピーダンス測定システムを使用し、恒温恒湿装置には、(株)ヤマト科学製のJW241を使用した。白金線は、5mm間隔に5本押し当てて、線間距離を5〜20mmに変化させて交流抵抗を測定した。線間距離と抵抗の勾配から、以下の式:
比抵抗R(Ω・cm)=0.5(cm)×膜厚(cm)×抵抗線間勾配(Ω/cm)
によって膜の比抵抗Rを算出し、比抵抗Rの逆数から交流インピーダンスを算出し、このインピーダンスからプロトン伝導率を算出した。
4.耐溶媒性(浸漬試験)
耐溶媒性評価は、スルホン化ポリアリーレン単体のフィルムを熱水に90℃で20時間または、所定濃度(6、64質量%)のメタノール水溶液に室温で20時間浸漬し、浸積前後の面積変化量の測定により行った。面積変化量は以下の式:
面積変化量=(浸積前の評価フィルム面積)/(浸積後の評価フィルム面積)
によって求めた。評価フィルムは、スルホン化ポリアリーレンのNMP16質量%溶液をキャストし、150℃で乾燥して、水洗により溶媒を除去したフィルムを40×30mmにカットして作成した。
5.メタノール透過度の評価(透過試験)
メタノール透過抑制能の評価は、直径50mmのプロトン伝導膜試料を所定のセルにセットし、表面側から規定濃度のメタノール水溶液を供給し、裏面側から減圧しながら透過液を回収する浸透気化測定装置により行った(パーベーパレーション)。すなわち、濃度10質量%のメタノール水溶液を用いて、温度25℃における減圧条件下でのメタノールFluxおよび分離係数から特性評価を行った。メタノールFluxは以下の式:
メタノールFlux(g/h/m2)=回収透過液量(g)/回収時間(h)/試料面積(m2)×透過液濃度(質量%)
によって求め、分離係数は以下の式:
分離係数=(透過液濃度/(100−透過液濃度))/(供給液濃度/(100−供給液濃度)
によって求めた。
1.スルホン酸当量
得られたスルホン酸基を有するポリアリーレンを、水洗水が中性になるまで洗浄してフリーの残存している酸を充分に除去した。これを乾燥した後、所定量を秤量し、THF/水の混合溶剤に溶解し、フェノールフタレインを指示薬としてNaOHの標準液を用いて滴定を行い、中和点からスルホン酸当量を求めた。
2.分子量の測定
スルホン酸基を有さないポリアリーレンの数平均分子量および重量平均分子量については、基本的に溶剤としてテトラヒドロフラン(THF)を用い、GPCによってポリスチレン換算の分子量を求めた。スルホン酸基を有するポリアリーレンの数平均分子量および重量平均分子量については、基本的に溶剤として臭化リチウムと燐酸を添加したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を溶離液として用い、GPCによってポリスチレン換算の分子量を求めた。
3.プロトン伝導度の測定
交流抵抗は、5mm幅の短冊状のプロトン伝導膜試料の表面に、白金線(φ=0.5mm)を押し当て、恒温恒湿装置中に試料を保持し、白金線間の交流インピーダンス測定から求めた。すなわち、相対湿度80%、温度60℃の環境下で交流10kHzにおけるインピーダンスを測定した。抵抗測定装置として、(株)NF回路設計ブロック製のケミカルインピーダンス測定システムを使用し、恒温恒湿装置には、(株)ヤマト科学製のJW241を使用した。白金線は、5mm間隔に5本押し当てて、線間距離を5〜20mmに変化させて交流抵抗を測定した。線間距離と抵抗の勾配から、以下の式:
比抵抗R(Ω・cm)=0.5(cm)×膜厚(cm)×抵抗線間勾配(Ω/cm)
によって膜の比抵抗Rを算出し、比抵抗Rの逆数から交流インピーダンスを算出し、このインピーダンスからプロトン伝導率を算出した。
4.耐溶媒性(浸漬試験)
耐溶媒性評価は、スルホン化ポリアリーレン単体のフィルムを熱水に90℃で20時間または、所定濃度(6、64質量%)のメタノール水溶液に室温で20時間浸漬し、浸積前後の面積変化量の測定により行った。面積変化量は以下の式:
面積変化量=(浸積前の評価フィルム面積)/(浸積後の評価フィルム面積)
によって求めた。評価フィルムは、スルホン化ポリアリーレンのNMP16質量%溶液をキャストし、150℃で乾燥して、水洗により溶媒を除去したフィルムを40×30mmにカットして作成した。
5.メタノール透過度の評価(透過試験)
メタノール透過抑制能の評価は、直径50mmのプロトン伝導膜試料を所定のセルにセットし、表面側から規定濃度のメタノール水溶液を供給し、裏面側から減圧しながら透過液を回収する浸透気化測定装置により行った(パーベーパレーション)。すなわち、濃度10質量%のメタノール水溶液を用いて、温度25℃における減圧条件下でのメタノールFluxおよび分離係数から特性評価を行った。メタノールFluxは以下の式:
メタノールFlux(g/h/m2)=回収透過液量(g)/回収時間(h)/試料面積(m2)×透過液濃度(質量%)
によって求め、分離係数は以下の式:
分離係数=(透過液濃度/(100−透過液濃度))/(供給液濃度/(100−供給液濃度)
によって求めた。
[合成例1]
オリゴマーの調製(1)
撹拌機、温度計、冷却管、Dean-Stark管、および窒素導入の三方コックを取り付けた2Lの三つ口のフラスコに、4,4'-ジヒドロキシベンゾフェノン(4,4'-DHBP)103.7g(0.48mol)、4,4'-ジクロロジフェニルスルホン(4,4'-DCDS)148.2g(0.52mol)、炭酸カリウム86.9g(0.63mol)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)500mL、およびトルエン200mLを加え、オイルバスで加熱を行い、窒素雰囲気下で撹拌しながら150℃で反応させた。反応により生成する水をトルエンと共沸させ、Dean-Stark管で系外に除去しながら反応させると、約3時間で水の生成がほとんど認められなくなった。次いで、反応温度を徐々に180℃まで上げながら大部分のトルエンを除去し、180℃で8時間反応を続けた後、4,4'-DCDS9.2g(0.032mol)を加え、さらに2時間反応させた。得られた反応液を放冷後、副生した無機化合物の沈殿物を濾過によって除去し、濾液を4Lのメタノール中に投入した。これにより沈殿した生成物を濾別して回収し、乾燥した後、DMI500mLに溶解した。この溶液をメタノール4Lに加えて再沈殿させ、目的の化合物180g(収率78%)を得た。
オリゴマーの調製(1)
撹拌機、温度計、冷却管、Dean-Stark管、および窒素導入の三方コックを取り付けた2Lの三つ口のフラスコに、4,4'-ジヒドロキシベンゾフェノン(4,4'-DHBP)103.7g(0.48mol)、4,4'-ジクロロジフェニルスルホン(4,4'-DCDS)148.2g(0.52mol)、炭酸カリウム86.9g(0.63mol)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)500mL、およびトルエン200mLを加え、オイルバスで加熱を行い、窒素雰囲気下で撹拌しながら150℃で反応させた。反応により生成する水をトルエンと共沸させ、Dean-Stark管で系外に除去しながら反応させると、約3時間で水の生成がほとんど認められなくなった。次いで、反応温度を徐々に180℃まで上げながら大部分のトルエンを除去し、180℃で8時間反応を続けた後、4,4'-DCDS9.2g(0.032mol)を加え、さらに2時間反応させた。得られた反応液を放冷後、副生した無機化合物の沈殿物を濾過によって除去し、濾液を4Lのメタノール中に投入した。これにより沈殿した生成物を濾別して回収し、乾燥した後、DMI500mLに溶解した。この溶液をメタノール4Lに加えて再沈殿させ、目的の化合物180g(収率78%)を得た。
得られた重合体のGPC(THF溶媒)で求めたポリスチレン換算の数平均分子量は13000であった。また、得られた重合体はNMP、DMAc、DMIなどに可溶であり、Tgは159℃、熱分解温度は500℃であった。
得られた重合体は下記式(I):
で表される構造を有することが推定される。
[合成例2]
(ポリアリーレン共重合体の合成1)
合成例1で得られたオリゴマー20.9g(1.6mmol)、2,5−ジクロロ−4’−(4−フェノキシ)フェノキシベンゾフェノン(DCPPB)21.0g(48.4mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド0.98g(1.5mmol)、よう化ナトリウム0.97g(6.5mmol)、トリフェニルホスフィン5.25g(20.0mmol)、および亜鉛末7.84g(120mmol)をフラスコに加え、乾燥窒素置換した。次いで、N−メチル−2−ピロリドン110mlをフラスコに加え、80℃に加熱し、攪拌しながら4時間重合を行った。得られた重合溶液をNMPで希釈した後、セライトを濾過助剤に用いて濾過し、濾液を大過剰のメタノール1500mLに注いで凝固、析出させた。この凝固物を濾集して風乾し、さらにNMP200mLに再溶解し、大過剰のメタノール1500mLに注いで凝固、析出させた。この凝固物を濾集して真空乾燥し、目的の共重合体36.7g(96%)を得た。GPC(NMP)で求めたポリスチレン換算の数平均分子量は43800、重量平均分子量は143200であった。
(ポリアリーレン共重合体の合成1)
合成例1で得られたオリゴマー20.9g(1.6mmol)、2,5−ジクロロ−4’−(4−フェノキシ)フェノキシベンゾフェノン(DCPPB)21.0g(48.4mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド0.98g(1.5mmol)、よう化ナトリウム0.97g(6.5mmol)、トリフェニルホスフィン5.25g(20.0mmol)、および亜鉛末7.84g(120mmol)をフラスコに加え、乾燥窒素置換した。次いで、N−メチル−2−ピロリドン110mlをフラスコに加え、80℃に加熱し、攪拌しながら4時間重合を行った。得られた重合溶液をNMPで希釈した後、セライトを濾過助剤に用いて濾過し、濾液を大過剰のメタノール1500mLに注いで凝固、析出させた。この凝固物を濾集して風乾し、さらにNMP200mLに再溶解し、大過剰のメタノール1500mLに注いで凝固、析出させた。この凝固物を濾集して真空乾燥し、目的の共重合体36.7g(96%)を得た。GPC(NMP)で求めたポリスチレン換算の数平均分子量は43800、重量平均分子量は143200であった。
[合成例3]
(スルホン酸を含有するポリアリーレン共重合体の合成1)
合成例2で得た共重合体16gを攪拌装置、温度計を取り付けた500mlのセパラブルフラスコに加え、次いで濃度98%の硫酸160mlを加え、フラスコ内の温度を25℃に保ちながら窒素気流下で24時間攪拌した。得られた溶液を大量のイオン交換水の中に注ぎ入れ、重合体を沈殿させた。次いで、洗浄水のpHが5になるまで重合体の洗浄を繰り返した後、乾燥して、17g(収率92%)のスルホン酸基含有重合体(実施例1)を得た。このスルホン酸基含有重合体のGPC(NMP)で求めたポリスチレン換算の数平均分子量は38500、重量平均分子量は150800であり、スルホン酸当量は1.8meq/gであった(モノマー仕込み比から計算したスルホン酸当量は2.0meq/g)。
(スルホン酸を含有するポリアリーレン共重合体の合成1)
合成例2で得た共重合体16gを攪拌装置、温度計を取り付けた500mlのセパラブルフラスコに加え、次いで濃度98%の硫酸160mlを加え、フラスコ内の温度を25℃に保ちながら窒素気流下で24時間攪拌した。得られた溶液を大量のイオン交換水の中に注ぎ入れ、重合体を沈殿させた。次いで、洗浄水のpHが5になるまで重合体の洗浄を繰り返した後、乾燥して、17g(収率92%)のスルホン酸基含有重合体(実施例1)を得た。このスルホン酸基含有重合体のGPC(NMP)で求めたポリスチレン換算の数平均分子量は38500、重量平均分子量は150800であり、スルホン酸当量は1.8meq/gであった(モノマー仕込み比から計算したスルホン酸当量は2.0meq/g)。
[合成例4]
オリゴマーの調製(2)
4,4'-ジヒドロキシベンゾフェノン(4,4'-DHBP)60.0g(0.28mol)、4,4'-ジクロロジフェニルスルホン(4,4'-DCDS)91.9g(0.53mol)、炭酸カリウム50.3g(0.36mol)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)300mL、およびトルエン150mLをフラスコに加え、合成例1と同様の操作を行い、目的とする化合物119.0g(収率90%)を得た。
オリゴマーの調製(2)
4,4'-ジヒドロキシベンゾフェノン(4,4'-DHBP)60.0g(0.28mol)、4,4'-ジクロロジフェニルスルホン(4,4'-DCDS)91.9g(0.53mol)、炭酸カリウム50.3g(0.36mol)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)300mL、およびトルエン150mLをフラスコに加え、合成例1と同様の操作を行い、目的とする化合物119.0g(収率90%)を得た。
得られた重合体のGPC(THF溶媒)で求めたポリスチレン換算の数平均分子量は5400であった。また、得られた重合体はNMP、DMAc、DMIなどに可溶であり、Tgは160℃、熱分解温度は470℃であった。
[合成例5]
(ポリアリーレン共重合体の合成2)
合成例2において、合成例1で得られたオリゴマーの代わりに合成例4で得られたオリゴマー19.8g(4.6mmol)を加え、2,5−ジクロロ−4’−(4−フェノキシ)フェノキシベンゾフェノン(DCPPB)の添加量を19.8g(45.4mmol)とした以外は合成例2と同様の操作を行い、目的の共重合体39.4g(収率96%)を得た。GPC(NMP)で求めたポリスチレン換算の数平均分子量は28100、重量平均分子量は122300であった。
(ポリアリーレン共重合体の合成2)
合成例2において、合成例1で得られたオリゴマーの代わりに合成例4で得られたオリゴマー19.8g(4.6mmol)を加え、2,5−ジクロロ−4’−(4−フェノキシ)フェノキシベンゾフェノン(DCPPB)の添加量を19.8g(45.4mmol)とした以外は合成例2と同様の操作を行い、目的の共重合体39.4g(収率96%)を得た。GPC(NMP)で求めたポリスチレン換算の数平均分子量は28100、重量平均分子量は122300であった。
[合成例6]
(スルホン酸を含有するポリアリーレン共重合体の合成2)
合成例5で得た共重合体30gを攪拌装置、温度計を取り付けた500mlのセパラブルフラスコに加え、次いで濃度98%の硫酸300mlを加え、合成例3と同様の操作を行い、31g(収率93%)のスルホン酸基含有重合体(実施例2)を得た。スルホン酸基含有重合体のGPC(NMP)で求めたポリスチレン換算の数平均分子量は38800、重量平均分子量は152100であった。このスルホン酸基含有重合体のスルホン酸等量は1.7meq/gであった(モノマー仕込み比から計算したスルホン酸当量は1.8meq/g)。
(スルホン酸を含有するポリアリーレン共重合体の合成2)
合成例5で得た共重合体30gを攪拌装置、温度計を取り付けた500mlのセパラブルフラスコに加え、次いで濃度98%の硫酸300mlを加え、合成例3と同様の操作を行い、31g(収率93%)のスルホン酸基含有重合体(実施例2)を得た。スルホン酸基含有重合体のGPC(NMP)で求めたポリスチレン換算の数平均分子量は38800、重量平均分子量は152100であった。このスルホン酸基含有重合体のスルホン酸等量は1.7meq/gであった(モノマー仕込み比から計算したスルホン酸当量は1.8meq/g)。
[合成例7]
(オリゴマーの調製3−1)
撹拌機、温度計、および窒素導入の三方コックを取り付けた500mLのセパラブルフラスコに、2,5−ジクロロ−4’−(4−フェノキシ)フェノキシベンゾフェノン(DCPPB)128.0g(0.29mol)、4,4'-クロロフルオロベンゾフェノン(4,4'-CFBP)1.41g(6.0mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド5.85g(9.0mmol)、よう化ナトリウム5.85g(39.0mmol)、トリフェニルホスフィン31.47g(120mmol)、および亜鉛末47.07g(720mmol)を加え、乾燥窒素置換した。次いでN−メチル−2−ピロリドン360mlを加え、80℃に加熱し、攪拌しながら5時間重合を行った。得られた重合溶液をNMPで希釈した後、セライトを濾過助剤に用いて濾過し、濾液を大過剰のメタノール3000mLに注いで凝固させた。この凝固物を濾集して風乾し、さらにNMP600mLに再溶解した後、大過剰のメタノール3000mLに注いで凝固、析出させた。この凝固物を濾集して真空乾燥し、目的の共重合体87.4g(収率81%)を得た。 GPC(THF)で求めたポリスチレン換算の数平均分子量は34500であった。
(オリゴマーの調製3−1)
撹拌機、温度計、および窒素導入の三方コックを取り付けた500mLのセパラブルフラスコに、2,5−ジクロロ−4’−(4−フェノキシ)フェノキシベンゾフェノン(DCPPB)128.0g(0.29mol)、4,4'-クロロフルオロベンゾフェノン(4,4'-CFBP)1.41g(6.0mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド5.85g(9.0mmol)、よう化ナトリウム5.85g(39.0mmol)、トリフェニルホスフィン31.47g(120mmol)、および亜鉛末47.07g(720mmol)を加え、乾燥窒素置換した。次いでN−メチル−2−ピロリドン360mlを加え、80℃に加熱し、攪拌しながら5時間重合を行った。得られた重合溶液をNMPで希釈した後、セライトを濾過助剤に用いて濾過し、濾液を大過剰のメタノール3000mLに注いで凝固させた。この凝固物を濾集して風乾し、さらにNMP600mLに再溶解した後、大過剰のメタノール3000mLに注いで凝固、析出させた。この凝固物を濾集して真空乾燥し、目的の共重合体87.4g(収率81%)を得た。 GPC(THF)で求めたポリスチレン換算の数平均分子量は34500であった。
得られた重合体は式(II):
で表される構造を有することが推定される。
[合成例8]
(オリゴマーの調製3−2)
撹拌機、温度計、冷却管、Dean-Stark管、および窒素導入の三方コックを取り付けた500mLの三つ口のフラスコに、合成例7で得た末端フッ素オリゴマー50.0g(1.45mmol)、4,4'-クロロヒドロキシベンゾフェノン(4,4'-CHBP)2.09g(8.98mmol)、炭酸カリウム0.93g(6.73mol)、N−メチル−2−ピロリドン300ml、トルエン150mLを加え、オイルバスで加熱を行い、窒素雰囲気下で撹拌しながら170℃で反応させた。生成する水と大部分のトルエンをDean-Stark管により除去した後、さらに15時間反応した。得られた反応液を放冷後、副生した無機化合物の沈殿物をセライト濾過助剤を用いて濾過し、濾液を大過剰の5質量%塩酸メタノール溶液2000mLに注いで凝固、析出させた。この凝固物を濾集して風乾し、さらにNMP400mLに再溶解した後、大過剰のメタノール2000mLに注いで凝固、析出させた。この凝固物を濾集して真空乾燥し、目的の両末端塩素共重合体41.5g(収率83%)を得た。この重合体のGPC(THF溶媒)で求めたポリスチレン換算の数平均分子量は36600であった。また、この重合体はNMP、DMAc、DMIなどに可溶であり、Tgは121℃、熱分解温度は440℃であった。
(オリゴマーの調製3−2)
撹拌機、温度計、冷却管、Dean-Stark管、および窒素導入の三方コックを取り付けた500mLの三つ口のフラスコに、合成例7で得た末端フッ素オリゴマー50.0g(1.45mmol)、4,4'-クロロヒドロキシベンゾフェノン(4,4'-CHBP)2.09g(8.98mmol)、炭酸カリウム0.93g(6.73mol)、N−メチル−2−ピロリドン300ml、トルエン150mLを加え、オイルバスで加熱を行い、窒素雰囲気下で撹拌しながら170℃で反応させた。生成する水と大部分のトルエンをDean-Stark管により除去した後、さらに15時間反応した。得られた反応液を放冷後、副生した無機化合物の沈殿物をセライト濾過助剤を用いて濾過し、濾液を大過剰の5質量%塩酸メタノール溶液2000mLに注いで凝固、析出させた。この凝固物を濾集して風乾し、さらにNMP400mLに再溶解した後、大過剰のメタノール2000mLに注いで凝固、析出させた。この凝固物を濾集して真空乾燥し、目的の両末端塩素共重合体41.5g(収率83%)を得た。この重合体のGPC(THF溶媒)で求めたポリスチレン換算の数平均分子量は36600であった。また、この重合体はNMP、DMAc、DMIなどに可溶であり、Tgは121℃、熱分解温度は440℃であった。
得られた重合体は式(III):
で表される構造を有することが推定される。
[合成例9]
(ポリアリーレンブロック共重合体の合成3)
撹拌機、温度計、および窒素導入の三方コックを取り付けた500mLのセパラブルフラスコに、合成例8で得られた両末端塩素オリゴマー13.1g(0.35mmol)、合成例1で得られた両末端塩素オリゴマー15.6g(1.24mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド0.72g(1.11mmol)、よう化ナトリウム0.72g(4.81mmol)、トリフェニルホスフィン3.88g(14.8mmol)、および亜鉛末5.81g(88.9mmol)を加え、乾燥窒素置換した。次いでN−メチル−2−ピロリドン90mlを加え、80℃に加熱し、攪拌しながら4時間重合を行った。得られた重合溶液をNMPで希釈した後、セライトを濾過助剤に用いて濾過し、濾液を大過剰のメタノール1500mLに注いて凝固、析出させた。この凝固物を濾集して風乾し、さらにNMP200mLに再溶解した後、大過剰のメタノール1500mLに注いで凝固、析出させた。この凝固物を濾集して真空乾燥し、目的のブロック共重合体19.0g(収率67%)を得た。この重合体のGPC(NMP)で求めたポリスチレン換算の数平均分子量は44700、重量平均分子量は256200であった。
(ポリアリーレンブロック共重合体の合成3)
撹拌機、温度計、および窒素導入の三方コックを取り付けた500mLのセパラブルフラスコに、合成例8で得られた両末端塩素オリゴマー13.1g(0.35mmol)、合成例1で得られた両末端塩素オリゴマー15.6g(1.24mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド0.72g(1.11mmol)、よう化ナトリウム0.72g(4.81mmol)、トリフェニルホスフィン3.88g(14.8mmol)、および亜鉛末5.81g(88.9mmol)を加え、乾燥窒素置換した。次いでN−メチル−2−ピロリドン90mlを加え、80℃に加熱し、攪拌しながら4時間重合を行った。得られた重合溶液をNMPで希釈した後、セライトを濾過助剤に用いて濾過し、濾液を大過剰のメタノール1500mLに注いて凝固、析出させた。この凝固物を濾集して風乾し、さらにNMP200mLに再溶解した後、大過剰のメタノール1500mLに注いで凝固、析出させた。この凝固物を濾集して真空乾燥し、目的のブロック共重合体19.0g(収率67%)を得た。この重合体のGPC(NMP)で求めたポリスチレン換算の数平均分子量は44700、重量平均分子量は256200であった。
[合成例10]
(スルホン酸を含有するポリアリーレンブロック共重合体の合成3)
合成例9で得た共重合体13gを攪拌装置、温度計を取り付けた300mlのセパラブルフラスコに加え、次いで濃度98%の硫酸140mlを加え、合成例3と同様の操作を行い、13.8g(収率92%)のスルホン酸基含有ブロック共重合体(実施例3)を得た。このスルホン酸基含有ブロック共重合体のGPC(NMP)で求めたポリスチレン換算の数平均分子量は56400、重量平均分子量は341200であり、スルホン酸当量は1.8meq/gであった(モノマー仕込み比から計算したスルホン酸当量は2.0meq/g)。
(スルホン酸を含有するポリアリーレンブロック共重合体の合成3)
合成例9で得た共重合体13gを攪拌装置、温度計を取り付けた300mlのセパラブルフラスコに加え、次いで濃度98%の硫酸140mlを加え、合成例3と同様の操作を行い、13.8g(収率92%)のスルホン酸基含有ブロック共重合体(実施例3)を得た。このスルホン酸基含有ブロック共重合体のGPC(NMP)で求めたポリスチレン換算の数平均分子量は56400、重量平均分子量は341200であり、スルホン酸当量は1.8meq/gであった(モノマー仕込み比から計算したスルホン酸当量は2.0meq/g)。
合成例3、6、10で得られた実施例1〜3の共重合体についての諸特性の比較データを下記表1に示した(比較例1としてNafion117(商品名、デュポン社製)を用いた)。
Claims (6)
- 下記一般式(A)で表されるブロックと下記一般式(B)で表されるブロックとを含むことを特徴とするスルホン酸基を有するポリアリーレンブロック共重合体;
- 一般式(A)で表されるブロックに含まれる平均スルホン酸基数が40以上であり、一般式(B)で表されるブロックのnが20以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリアリーレンブロック共重合体。
- 0.3〜5.0meq/gに相当する量のスルホン酸基を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のポリアリーレンブロック共重合体。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のポリアリーレンブロック共重合体からなることを特徴とする高分子電解質。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のポリアリーレンブロック共重合体を含むことを特徴とするプロトン伝導膜。
- 一般式(A)で表されるブロックの繰り返し単位を形成するモノマーと、一般式(B)で表されるブロックの繰り返し単位を形成するモノマーとのうち少なくとも一方を重合して前駆体を製造し、得られた前駆体に他の共重合成分を反応させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリアリーレンブロック共重合体の製造方法。
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