JP2005047880A - イソシアヌル酸誘導体化合物、潤滑剤、ならびに磁気記録媒体および磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 潤滑剤として有用な化合物であって、特に磁気記録媒体の潤滑剤層を構成する場合において、優れた潤滑性能を示し、長時間使用された場合でも潤滑効果が持続され、かつ粉つきが少ない等の特性を示す化合物を提供する。
【解決手段】 下記一般式(a)で示されるイソシアヌル酸誘導体化合物を潤滑剤として用いて、磁気記録媒体の潤滑剤層を形成することにより、優れた潤滑特性が持続する磁気記録媒体を得ることができる。
【化1】
(式中、X1、X2、およびX3はそれぞれ、水素、脂肪族アルキル基、脂肪族アルケニル基、フルオロアルキル基またはフルオロポリエーテル基であり、aおよびbは、それぞれ0〜12の整数であり、X1、X2およびX3が同時に水素となることはない。)
【選択図】図1
【解決手段】 下記一般式(a)で示されるイソシアヌル酸誘導体化合物を潤滑剤として用いて、磁気記録媒体の潤滑剤層を形成することにより、優れた潤滑特性が持続する磁気記録媒体を得ることができる。
【化1】
(式中、X1、X2、およびX3はそれぞれ、水素、脂肪族アルキル基、脂肪族アルケニル基、フルオロアルキル基またはフルオロポリエーテル基であり、aおよびbは、それぞれ0〜12の整数であり、X1、X2およびX3が同時に水素となることはない。)
【選択図】図1
Description
本発明は高精度な潤滑性が要求される精密機械もしくは精密部品等に使用する潤滑剤として有用な新規な化合物、当該化合物を含む潤滑剤、ならびに当該潤滑剤を使用する磁気記録媒体およびその磁気記録媒体の製造方法に関する。
近年、磁気記録の分野においては、記録・再生機器のデジタル化、小型化および使用時間の長時間化等の高性能化に伴い、それに適した高密度磁気記録媒体の開発が活発に行なわれている。最近では塗布型磁気記録媒体に代わって、短波長記録に極めて有利な金属薄膜型磁気記録媒体が実用化されている。一般に、金属薄膜型磁気記録媒体とは、非磁性支持体上に、記録層として強磁性金属薄膜から成る磁性層を設けたテープおよびディスク等をいう。また、高密度磁気記録媒体の記録・再生に用いられる磁気記録媒体システムとしては、例えば、デジタルビデオデッキやハードディスクドライブが挙げられる。
デジタルビデオテープに代表される金属薄膜型磁気記録媒体においては、磁性層は極めて良好な表面性を有する、すなわち磁性層の面の粗度が小さい。そのため、磁性層と磁気ヘッドとの接触面積が増えるので、磁性層は信号の記録・再生の過程において磁気ヘッドと高速摺動する間に大きな摩擦力を受けて磨耗されやすい。磁性層の磨耗は、磁気記録媒体の走行耐久性あるいはスチル耐久性等に大きな影響を与えるため、これを低減させることは金属薄膜型磁気記録媒体の研究開発において大きな課題となっている。
そこで磁性層表面に潤滑剤層を設けることによって磨耗を低減し、走行耐久性およびスチル耐久性を改善しようとする試みがなされている。潤滑剤層を設ける場合、磁気記録媒体と磁気ヘッドとのスペーシングロスによる出力低下を極力抑えて高出力化を図るべく、磁性層表面の潤滑剤層は僅か数nmの厚さで潤滑特性を発揮することが求められている。
また、一般的なハードディスクドライブにおいてはCSS(コンタクト・スタート・ストップ)方式が採用されている。CSS方式とは、高密度磁気記録媒体であるハードディスクが停止している状態では磁気ヘッドがディスクに接触し、起動時にハードディスクが高速回転し始めると、これに伴って発生する空気流により磁気ヘッドがディスク表面から浮上し、この状態で記録・再生が行われる方式である。そして、停止時にディスクの回転が減速され、再び磁気ヘッドはハードディスクと接触するようになる。
このCSS方式においてはディスクの運転停止時あるいは起動開始時に磁気ヘッドがハードディスク表面を擦って走行するので、そのときに加わる摩擦力が大きな問題となっている。ハードディスクドライブの信頼性を保つにはCSS走行試験後の媒体の摩擦係数が初期と同じであることが望まれる。しかし、表面平坦性が高い、すなわち粗度の小さな磁気ディスクでは、この要求を満たすことは難しい。また、ハードディスクが高速で回転している際に、ヘッドと媒体とが衝突する、いわゆるヘッドクラッシュも解決すべき課題の1つである。そして、ヘッドクラッシュが発生する要因の一つとして、磁気記録媒体が適当な保護膜および潤滑剤層を有していないことが挙げられる。
そこで、磁気記録媒体に適した潤滑剤が広く検討されている。その1つとしてフッ素系化合物がある。フッ素系化合物は優れた潤滑特性を示すため、各種フッ素系化合物の使用が提案されている(例えば、特許文献1、2等参照)。
しかしながら、媒体のさらなる高記録密度化に伴って、MRヘッドまたはGMRヘッドの搭載ならびにコンタクト記録方式の採用等、新たな技術への対応を考えていく必要がある。そのためには磁気記録媒体に用いる潤滑剤の特性をより向上させる必要がある。
特開2002−150530号公報
特開2002−322270号公報
磁気記録媒体に用いられる潤滑剤に要求される特性として、低温環境での使用でも潤滑特性が優れること、潤滑特性を維持したまま極めて薄く塗布できること、長時間の使用でも潤滑特性が維持されること、ならびに磁気ヘッドへの粉付きが少ないこと、等が要求される。ここで、粉つきとは、磁気記録媒体を記録再生装置で走行させたときに、磁気ヘッドとの接触により、媒体のエッジ(端面部)の汚れもしくは脱落物である異物、あるいは媒体の裏面から転写される異物、保護膜、または潤滑剤が磁気記録媒体から削りとられ、削りとられた、これらの異物、保護膜、または潤滑剤の粉が磁気ヘッド表面に蓄積されることをいう。
これまでにも、前記要求を満たすように、種々の潤滑剤が提案され、実用に供されてきた。しかしながら、磁気記録媒体の性能向上に伴って、潤滑剤に関する要求水準もより高くなっている。そのため、磁気記録媒体の分野においては、より優れた特性を有する潤滑剤が常に求められている。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、磁気記録媒体用の潤滑剤として使用するのに適した化合物であって、様々な使用条件下において優れた潤滑特性を維持するとともに、長時間使用される場合でも潤滑効果が持続し、且つ粉つきが少ない潤滑剤層を磁気記録媒体において構成し得る化合物を提供することを課題とする。さらに、本発明は、当該化合物を含んで成る潤滑剤、当該潤滑剤を用いた磁気記録媒体、および当該潤滑剤を用いて磁気記録媒体を製造する方法を提供することを課題とする。
第一の要旨において、本発明は特定の構造を有するイソシアヌル酸誘導体化合物を提供する。具体的には、本発明のイソシアヌル酸誘導体化合物は、一般式(a)で示される。
(式中、X1、X2、およびX3はそれぞれ、水素、脂肪族アルキル基、脂肪族アルケニル基、フルオロアルキル基またはフルオロポリエーテル基であり、aおよびbはそれぞれ0〜12の整数であり、X1、X2およびX3が同時に水素となることはない。)
本発明のイソシアヌル酸誘導体化合物は、3つのカルボニル基と3つの窒素を基本骨格中に有し、かつ、3つの窒素原子のうち少なくとも2つに、脂肪族アルキル基、脂肪族アルケニル基、フルオロアルキル基またはフルオロポリエーテル基が結合している。この構造により、本発明の化合物が潤滑剤として、特に磁気記録媒体の潤滑剤層に含まれる場合、その磁気記録媒体は、優れた潤滑特性を示すとともに、潤滑剤層がその下に位置する保護膜に良好に吸着するために、長期間に亘って良好な潤滑効果を発揮する。したがって、本発明はまた、上記本発明の化合物を、潤滑剤を構成する化合物として提供する。
第二の要旨において、本発明は、上記本発明の化合物を少なくとも1種含んで成る潤滑剤を提供する。本発明の潤滑剤は、特に金属薄膜型磁気記録媒体の潤滑剤層を構成するのに適している。
第三の要旨として、本発明は、非磁性支持体の上に磁性層として形成された強磁性金属膜、磁性層の上に形成された保護膜、および保護膜の上に形成された潤滑剤層を有する磁気記録媒体であって、潤滑剤層が本発明のイソシアヌル酸誘導体化合物を少なくとも1種類含む磁気記録媒体を提供する。
第四の要旨において、本発明は、上記本発明の磁気記録媒体の製造方法を提供する。本発明の磁気記録媒体の製造方法は、その潤滑剤層の形成工程に特徴を有し、それ以外の工程は従来の磁気記録媒体の製造方法で用いられている工程であってよい。本発明の製造方法における潤滑剤層の形成工程は、炭化水素系溶媒とアルコール系溶媒との混合有機溶媒に、潤滑剤層を構成する化合物(即ち、潤滑剤)を溶解して調製した塗布液を保護膜上に塗布する工程を含むことを特徴とする。炭化水素系溶媒とアルコール系溶媒とを組み合わせた混合溶媒を使用することにより、塗布ムラが極めて少ない均一な薄い潤滑剤層が形成され得る。したがって、本発明の磁気記録媒体の製造方法によれば、優れた潤滑性能を有する実用信頼性の高い磁気記録媒体を得ることが可能である。
本発明のイソシアヌル酸誘導体化合物は、優れた潤滑性能を示すとともに、トリアジン環が優れた吸着能を有するので、潤滑剤として有用である。したがって、本発明のイソシアヌル酸誘導体化合物は、様々な機械、装置もしくは部品の潤滑剤として有用であり、特に磁気記録媒体の潤滑剤として有用である。磁気記録媒体の潤滑剤として使用する場合には、潤滑剤の保護膜への吸着能力が高いために、粉つきが少なく、優れた潤滑効果を長期間に亘って示す磁気記録媒体を得ることができる。なお、後述のように、潤滑剤の保護膜への吸着能は、溶剤洗浄前後の保護膜上の潤滑剤量を比較することにより確認できる。本発明の化合物はまた、界面活性剤としても有用なものである。
したがって、本発明の化合物を潤滑剤として潤滑剤層に含む、本発明の磁気記録媒体は、様々な使用条件下で優れた潤滑性を保ち、長時間使用される場合でも潤滑効果が持続され、且つ粉つきが少なく、優れた走行性および耐久性を示す。したがって、本発明の磁気記録媒体は、特にデジタルビデオテープレコーダやHDDで用いるのに適している。
次に本発明の実施の形態について説明する。
本発明のイソシアヌル酸誘導体化合物は一般式(a)で示され、分子内に3つのカルボニル基と3つの窒素から成る環(トリアジン環)を含む。
本発明のイソシアヌル酸誘導体化合物は一般式(a)で示され、分子内に3つのカルボニル基と3つの窒素から成る環(トリアジン環)を含む。
一般式(a)において、X1、X2、およびX3はそれぞれ互いに独立して、水素、脂肪族アルキル基、脂肪族アルケニル基、フルオロアルキル基またはフルオロポリエーテル基である。aおよびbは、それぞれ0〜12の整数である。また、一般式(a)において、X1、X2、およびX3が同時に水素原子となることはない(即ち、X1=X2=X3≠Hである)。したがって、一般式(a)で示される化合物は、大別すると、
1)X1、X2、およびX3が、すべて同じ基である(但し、X1、X2およびX3が同時に水素となることはない)化合物
2)X1、X2、およびX3のうち、2つが同一の基である化合物、
3)X1、X2、およびX3がそれぞれ互いに異なる基である化合物
の3つの形態に分類される。
1)X1、X2、およびX3が、すべて同じ基である(但し、X1、X2およびX3が同時に水素となることはない)化合物
2)X1、X2、およびX3のうち、2つが同一の基である化合物、
3)X1、X2、およびX3がそれぞれ互いに異なる基である化合物
の3つの形態に分類される。
X1、X2、および/またはX3が脂肪族アルキル基または脂肪族アルケニル基である場合、その炭素数は、好ましくは1〜22であり、より好ましくは8〜18である。
X1、X2、および/またはX3がフルオロエーテル基またはフルオロポリエーテル基である場合、その分子量は約200〜約6000であることが好ましく、約300〜約4000であることがより好ましい。分子量が200未満である場合または6000を超えると、この化合物で磁気記録媒体の潤滑剤層を構成した場合に、磁気記録媒体の潤滑性及び信頼性が低下することがある。また、フルオロエーテル基またはフルオロポリエーテル基は、パーフルオロエーテル基またはパーフルオロポリエーテル基であることが好ましい。
X1、X2、および/またはX3がフルオロエーテル基またはフルオロポリエーテル基である場合、X1、X2、および/またはX3は、下記一般式(b)、(c)及び(d)のいずれかで示されるものであることが好ましい。
一般式(c)において−(OCF(CF3)CF2)h(OCF2)i−で示される部分は、2種のオキシフルオロアルキレン単位が共重合している部分に相当し、hおよびiは共重合体中の各オキシフルオロアルキレン単位の数を示す。オキシフルオロアルキレン単位(OCF(CF3)CF2)とオキシフルオロアルキレン単位(OCF2)から成る共重合体は、h個の(OCF(CF3)CF2)のブロックとi個の(OCF2)のブロックとから成るブロック共重合体もしくは他のブロック共重合体、ランダム共重合体、または交互共重合体であってよい。したがって、一般式(c)で示される基は、−(OCF(CF3)CF2)h(OCF2)i−で示される部分がブロック共重合体、ランダム共重合体および交互共重合体であるものを含む。
一般式(d):
において、R1はフルオロアルキル基を示し、kは1〜6の整数であり、lは1〜30の整数である。R1は、好ましくはパーフルオロアルキル基である。R1の炭素数は好ましくは1〜30であり、より好ましくは1〜8である。lは、より好ましくは1〜8の整数である。
一般式(b)、(c)および(d)におけるj、hおよびi、ならびにkおよびlが上記の範囲外である場合、この化合物を用いて磁気記録媒体の潤滑剤層を形成したときに、磁気記録媒体の潤滑性および保存信頼性が低下することがある。
本発明のイソシアヌル酸誘導体化合物は、イソシアヌル酸のN−カルボキシアルキル置換体である、イソシアヌル酸トリス(カルボキシアルキル)と所定量の脂肪族アルキルアルコール、脂肪族アルケニルアルコール、フルオロアルキルアルコール、またはフルオロエーテルアルコールとを反応させることにより生成される。反応は、溶媒の存在下で触媒を加熱撹拌することにより、有利に進行する。加熱は60〜120℃の範囲内で実施することが好ましい。溶媒としては、オクタン(n−C8H18)、ヘプタン(n−C7H16)またはテトラヒドロフラン(THF)を使用できる。触媒として、例えば、パラトルエンスルホン酸、リン酸、または硫酸を使用できる。
イソシアヌル酸のN−カルボキシアルキル置換体において、イソシアヌル酸の窒素原子に結合しているカルボキシアルキルのアルキルの炭素数が、一般式(a)におけるaに相当する。また、反応に使用するアルコールの種類および量に応じて、X1、X2、およびX3が決定される。イソシアヌル酸トリス(カルボキシアルキル):アルコールの比を1:1とすると、X1、X2、およびX3のうち、2つが水素となる。イソシアヌル酸トリス(カルボキシアルキル):アルコールの比を1:2とすると、X1、X2、およびX3のうち、1つが水素となる。イソシアヌル酸トリス(カルボキシアルキル):アルコールの比を1:3とすると、X1、X2およびX3は全て水素以外の脂肪族アルキル基等となる。また、イソシアヌル酸トリス(カルボキシアルキル)とアルコールのモル比を1:3として、1種類のアルコールを使用すると、X1、X2、およびX3が同一の基となり、2種類のアルコールを2:1の割合で使用すると、X1、X2、およびX3のうち、2つが同じ基であって、他の1つが異なる基となり、3種類のアルコールを、1:1:1の割合で使用すると、X1、X2、およびX3は互いに異なる基となる。
このようにして得られる本発明のイソシアヌル酸誘導体化合物は、潤滑剤用の化合物として有用である。そして、本発明のイソシアヌル酸誘導体化合物を少なくとも1種含んで成る本発明の潤滑剤は、例えば磁気記録媒体の潤滑剤層を構成するのに適している。本発明の潤滑剤は、イソシアヌル酸誘導体化合物を1種のみ、あるいは2種以上含んでもよい。
本発明の潤滑剤は、本発明のイソシアヌル酸誘導体化合物のみで構成されてもよいが、それ以外に他の潤滑剤、防錆剤および極圧剤等が適宜含まれて成る組成物であってもよい。その場合、本発明のイソシアヌル酸誘導体化合物の占める割合は、組成物の全量に対して5重量%以上であることが好ましい。本発明のイソシアヌル酸誘導体化合物は、吸着性能が高いため、これが5重量%以上含まれる組成物で、例えば、磁気記録媒体の潤滑剤層を形成した場合には、他の潤滑剤の保護膜被覆性を高くすることができ、その結果、潤滑性能が向上すると考えられる。組成物において、本発明のイソシアヌル酸誘導体化合物の占める割合は、30重量%以上であることがより好ましく、50重量%以上であることがさらにより好ましい。
上述した本発明の潤滑剤は、磁気記録媒体の潤滑剤層を構成するのに適している。そこで以下に本発明の磁気記録をその製造方法とともに説明する。以下の説明を含む本明細書において、磁気記録媒体を構成する各層または膜の「表面」とは、各層または膜が形成されたときに露出している面、即ち、各層または膜の非磁性支持体から遠い側の面を意味する。また、各層の「表面に」というときは、特に断りのない限り当該表面に接する位置をいう。さらにまた、以下の説明を含む本明細書において、磁気記録媒体の構成に関して、磁気記録媒体を構成する各層または膜の「上」というときは、特に断りのない限り、各層または膜の非磁性支持体から遠い側の表面に接していることを意味する。したがって、例えば、「磁性層の上に」というときは、「磁性層の非磁性支持体から遠い側の表面に隣接する位置に」を意味する。
本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体の上に磁性層として形成された強磁性金属膜、磁性層の上に形成された保護膜、および保護膜の上に形成された潤滑剤層を有する磁気記録媒体であって、潤滑剤層が本発明の化合物を潤滑剤として含むものである。すなわち、潤滑剤層は、一般式(a)で示される本発明のイソシアヌル酸誘導体化合物を少なくとも1種含んで成る潤滑剤を含有する。潤滑剤層中に含まれる本発明のイソシアヌル酸誘導体化合物の量は、潤滑剤層の表面1m2につき0.05〜100mgであることが好ましく、0.1〜50mgであることがより好ましい。潤滑剤層にこのような少量のイソシアヌル酸誘導体化合物を均一に存在させるために、本発明の磁気記録媒体の潤滑剤層は次の方法で形成することが望ましい。
潤滑剤層は、常套の材料および手段を用いて非磁性支持体の上に強磁性金属膜および保護膜をこの順に形成した後、保護膜上に形成する。潤滑剤層の形成工程は、炭化水素系溶媒とアルコール系溶媒との混合溶媒に本発明の潤滑剤を溶解して調製した塗布液を保護膜上に塗布する工程、ならびに塗布した塗布液を乾燥して混合溶媒を蒸発させる工程を含む。最終的に混合溶媒が蒸発することにより、保護膜上には溶媒に溶解した潤滑剤が残って潤滑剤層を形成する。従って、塗布液を厚く塗布しても、溶媒が蒸発することにより、保護膜上には均一で非常に薄い潤滑剤層、すなわち少量の潤滑剤が保護膜を均一に被覆した潤滑剤層が形成される。
本発明で使用できる炭化水素系溶媒は、例えば、トルエン、ヘキサン、へプタン、オクタン、ノナン、キシレンおよびケトン等である。本発明で使用できるアルコール系溶媒は、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコールおよびブチルアルコール等の低級アルコールである。混合有機溶媒は、具体的には、トルエンとイソプロピルアルコールの混合溶媒、ヘキサンとイソプロピルアルコールの混合溶媒、またはヘプタンとイソプロピルアルコールの混合溶媒であることが好ましい。アルコール系溶媒の割合が大きすぎると塗布ムラが生じやすく、一方、炭化水素系溶媒の割合が大きすぎるとコスト面で不利であるため、両者は、混合割合が重量比で1:9〜9:1の範囲、好ましくは3:7〜7:3の範囲となるように混合して使用することが好ましい。
塗布液の濃度および塗布厚は、溶媒が蒸発した後に保護膜上に形成される潤滑剤層が所望の厚さになるように塗布する。一般には、潤滑剤の濃度が100〜10000ppmである塗布液を、10〜100μmの厚さとなるように塗布することが好ましい。
上記混合溶媒を用いて潤滑剤層を形成する方法としては、バーコーティング法、グラビアコーティング法、リバースロールコーティング法、ダイコーティング法、ディップコーティング法およびスピンコーティング法等の湿式塗布法または有機蒸着法があり、いずれの方法を採用してもよい。
塗布液を塗布した後、乾燥処理して有機溶媒を蒸発させると、保護膜上に潤滑剤層が形成される。乾燥処理は、加熱あるいは自然乾燥によって実施することができる。そして、最終的に得られる潤滑剤層の厚さは3〜5nm程度とすることが好ましい。ただし、潤滑剤の組成に応じて潤滑剤層の厚さの最適範囲が存在するため、潤滑剤層の厚さは必ずしもこの範囲に限定されるものではない。
このように、所定の混合有機溶媒を用いることにより、塗布ムラのない均一な厚さの潤滑剤層が得られ、しかも溶媒が最終的に蒸発した後には数nmという非常に薄い潤滑剤層を形成することができる。その結果、優れた潤滑性能を有する実用信頼性の高い磁気記録媒体が得られる。
先に述べたとおり、本発明の磁気記録媒体は、潤滑剤層以外の層に関しては、常套の材料および手段を採用して形成することができる。
例えば、非磁性支持体は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、芳香族ポリアミド、もしくは芳香族ポリイミドからなるフィルム;ポリ塩化ビニルもしくはポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂からなるフィルム;ポリカーボネート、ガラス、セラミック、アルミニウムもしくは銅等の金属、アルミニウム合金もしくはチタン合金等の軽金属、または単結晶シリコン等から成る基板;あるいは紙であってよい。非磁性支持体としてアルミニウム合金から成る基板またはガラス基板等の剛性の大きい基板を使用する場合には、アルマイト処理等により基板表面に酸化被膜やNi−P被膜等を形成してその表面を硬くしてもよい。
非磁性支持体の強磁性金属膜が形成される表面(即ち、磁性層と直接的に又は場合により下地層等を介して接する側の面)には、実用信頼性と良好なRF出力値とを両立するために、直径20〜700nm、高さ5〜70nmの突起形成処理が施されていることが望ましい。突起は、具体的には、例えば、SiO2またはZnO等の無機物質から成る超微粒子、あるいはイミド等の有機物質から成る超微粒子を非磁性支持体の表面に分散し固着させることにより形成される。あるいは、突起はそのような微粒子を含む高分子材料をフィルムに成形することにより形成される。
本発明の磁気記録媒体において、磁性層は強磁性金属膜である。磁性層に適した強磁性金属としては、Fe系金属、Co系金属、およびNi系金属がある。本発明においてはCo系金属で磁性層を形成することが特に好ましい。ここで、「Co系金属」とは、コバルト、およびコバルトを主成分として好ましくは50原子%以上含む合金をいう。「Fe系金属」および「Ni系金属」も同様である。
強磁性金属膜は、具体的には、Fe、CoおよびNi、ならびにCo−Ni、Co−Fe、Co−Cr、Co−Cu、Co−Pt、Co−Pd、Co−Sn、Co−Au、Fe−Cr、Fe−Co−Ni、Fe−Cu、Ni−Cr、Fe−Co−Cr、Co−Ni−Cr、Co−Pt−CrおよびFe−Co−Ni−Cr等の合金から選択される1または複数の材料で形成される。強磁性金属膜は酸素を含んでいてよく、酸素はこれらの金属または合金の酸化物の形態で含まれていてよい。強磁性金属膜は、単層膜の形態であってもよく、あるいは多層膜の形態であってもよい。
強磁性金属膜はイオンプレーティング法、スパッタリング法または電子ビーム蒸着法等で形成することができる。強磁性金属膜を酸素雰囲気下で形成すれば、強磁性金属膜に酸素が含まれることとなる。強磁性金属膜の厚さは一般に30nm〜300nmである。
保護膜は、好ましくは炭素膜である。炭素膜は、ビッカース硬度が約2.45×104N/mm2(約2500kg/mm2)と高く、磁気記録媒体のダメージを潤滑剤層と共に防止する。実用信頼性と出力とのバランスを考慮すれば、その厚さは1〜20nmであることが好ましい。
炭素膜は、炭化水素ガスのみ、もしくは炭化水素ガスと不活性ガスとの混合ガスを用いたプラズマCVD法により形成されるグラファイト状カーボンまたはダイヤモンドライクカーボンであることが好ましい。ダイヤモンドライクカーボンは適度な硬度を有し、磁気ヘッドを損傷することなく磁気記録媒体の損傷を抑制し得ることから、最も好ましい材料である。
炭素膜は、具体的には、真空容器中に炭化水素ガスまたは炭化水素ガスとアルゴン等の不活性ガスの混合ガスを導入し、容器内の圧力を0.13〜130Paに保った状態で真空容器内部で放電を発生させ、炭化水素ガスのプラズマを発生させることにより、強磁性金属膜上に形成する。放電形式は外部電極方式および内部電極方式のいずれでもよく、放電周波数は実験的に決めることができる。また、非磁性支持体側に配置される電極に0kVから−3kVの電圧を印加することによって、炭素膜の硬度を増大させることができ、また、炭素膜と強磁性金属膜との密着性を向上させることができる。炭化水素ガスとしては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンまたはベンゼン等を用いることができる。
なお、硬質の炭素膜を形成するためには、放電エネルギーを大きくすることが望ましく、併せて非磁性支持体の温度を高温に維持することが望ましい。例えば、放電エネルギーは、交流電流、例えば高周波電流と直流電流を重畳して実効値を600V以上にすることが望ましい。
本発明においては、炭素膜の表層部に含窒素プラズマ重合膜を形成し、潤滑剤層が炭素膜の含窒素プラズマ重合膜上に形成されていることが好ましい。含窒素プラズマ重合により炭素膜の表層部にアミノ基が存在することとなり、その結果、潤滑剤層と炭素膜との間の付着強度がより大きくなり、磁気記録媒体の耐久性がより向上することとなる。そして、潤滑剤層に特定のイソシアヌル酸誘導体化合物を含有させることと相俟って、電磁変換特性が損なわれることなく優れた潤滑性能を有する走行耐久性、スチル耐久性および耐蝕性が向上した実用信頼性の高い磁気記録媒体が得られる。
含窒素プラズマ重合膜は、真空容器中にプロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミンもしくはテトラメチレンジアミン等のアミン化合物をガス化して導入し、容器内の圧力を0.13〜130Paに保った状態で、真空容器内部に高周波放電を生じさせて形成する。含窒素プラズマ重合膜を形成することにより上記特定のイソシアヌル酸誘導体化合物を含む潤滑剤の化学吸着力が向上し、その結果、潤滑剤層と炭素膜との間の付着強度が向上する。含窒素プラズマ重合膜の膜厚は3nm未満が適当であり、これよりも含窒素プラズマ重合膜が厚い場合には炭素膜の保護効果が低下する。なお、炭素膜の表層部に含窒素プラズマ重合膜を形成する方法は、米国特許第5540957号および第5637393号に開示されており、この引用によりこれらの特許に開示された内容は本明細書の一部を構成する。
本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体の磁性層が形成された面とは反対の面にバックコート層を有してよい。バックコート層は、ポリウレタン、ニトロセルロース、ポリエステル、カーボンおよび炭酸カルシウム等から選ばれる1つもしくは複数の材料により形成される層であってよく、あるいは、金属、金属酸化物または合金から成る薄膜であってよい。バックコート層の厚さは約50〜500nmとすることが好ましい。
本発明の磁気記録媒体は、上記の構成に限定されない。例えば、本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体の磁性層が形成される面とは反対側の面に金属の蒸着により形成した補強層を有し、補強層の上にバックコート層が形成された構成のものであってよい。あるいは、本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体の突起処理が施された面に補強層を有し、当該補強層の上に磁性層が形成された構成、または当該補強層の上に下地層および磁性層がこの順に積層された構成のものであってよい。
図2に本発明の磁気記録媒体の断面を模式的に示す。図2には、非磁性支持体(1)の一方の表面に磁性層(2)が形成され、磁性層の上に保護膜(3)が形成され、保護膜(3)の上に潤滑剤層(4)が形成されるとともに、非磁性支持体(1)の他方の面にバックコート層(5)が形成されている、磁気記録媒体(100)が示されている。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
化学式(a1)で示される化合物は、一般式(a)において、X1およびX2がパーフルオロオクチル基であり、X3が水素であり、a=3、b=2である。
化学式(a1)で示される化合物の製造方法を説明する。出発原料は化学式(e1)で示されるイソシアヌル酸トリス(3−カルボキシプロピル)38.7g(0.10モル)と化学式(f1)で示されるパーフルオロオクチルエタノール92.8g(0.20モル)である。
上記の原料とパラトルエンスルホン酸1.3gとテトラヒドロフラン(THF)500mlとを撹拌翼を備えた1リットルのフラスコに投入し、65℃にて24時間攪拌して反応させた。反応終了後、THFを蒸留除去し、反応混合物を酢酸エチルに溶解し、この液をボウ硝水で水洗し、未反応のイソシアヌル酸トリス(3−カルボキシプロピル)を水層に溶かし除去した。さらに、酢酸エチルを除去した後、反応混合物を5℃でメタノールにより洗浄し、未反応のパーフルオロオクチルエタノールをメタノールに溶解させ除去して、透明液体127.9gを得た。この透明液体はIR、GPCおよびFD−MSにより、出発原料および副生成物を含まない化学式(a1)で示される化合物であることが確認された。この化合物の赤外スペクトルを図1に示す。
IR;カルボン酸の1,695cm-1、カルボニルの1,740cm-1の吸収ピークの吸収ピーク出現。
GPC;イソシアヌル酸トリス(3−カルボキシプロピル)、パーフルオロオクチルエタノール検出されず。
FD−MS;m/e 1279に主ピーク有り。
IR;カルボン酸の1,695cm-1、カルボニルの1,740cm-1の吸収ピークの吸収ピーク出現。
GPC;イソシアヌル酸トリス(3−カルボキシプロピル)、パーフルオロオクチルエタノール検出されず。
FD−MS;m/e 1279に主ピーク有り。
[化合物(a2)の合成]
イソシアヌル酸トリス(3−カルボキシプロピル)に代えて、化学式(e2)で示される化合物を用い、化学式(a1)で示される化合物の製造方法と同じ方法で、化学式(a2)で示される化合物を製造した。
イソシアヌル酸トリス(3−カルボキシプロピル)に代えて、化学式(e2)で示される化合物を用い、化学式(a1)で示される化合物の製造方法と同じ方法で、化学式(a2)で示される化合物を製造した。
[化合物(a3)および(a4)の合成]
パーフルオロオクチルエタノールに代えて、化学式(f2)および(f3)で示される化合物をそれぞれ用い、化学式(a1)で示される化合物の製造方法と同じ方法で、化学式(a3)および(a4)で示される化合物を製造した。
パーフルオロオクチルエタノールに代えて、化学式(f2)および(f3)で示される化合物をそれぞれ用い、化学式(a1)で示される化合物の製造方法と同じ方法で、化学式(a3)および(a4)で示される化合物を製造した。
[化合物(a5)の合成]
イソシアヌル酸トリス(3−カルボキシプロピル)0.1モルに対して、パーフルオロオクチルエタノールを0.3モル加えて、化合物(a1)で示される化合物の製造方法と同じ方法で、化学式(a5)で示される化合物を製造した
イソシアヌル酸トリス(3−カルボキシプロピル)0.1モルに対して、パーフルオロオクチルエタノールを0.3モル加えて、化合物(a1)で示される化合物の製造方法と同じ方法で、化学式(a5)で示される化合物を製造した
[化合物(a6)の合成]
イソシアヌル酸トリス(3−カルボキシプロピル)0.1モルに対して、パーフルオロオクチルエタノールを0.1モル加えて、化合物(a1)で示される化合物の製造方法と同じ方法で、化学式(a6)で示される化合物を製造した。
イソシアヌル酸トリス(3−カルボキシプロピル)0.1モルに対して、パーフルオロオクチルエタノールを0.1モル加えて、化合物(a1)で示される化合物の製造方法と同じ方法で、化学式(a6)で示される化合物を製造した。
(実施例2)
非磁性支持体として、表面に粒状突起を有するポリエステルフィルムを用意した。具体的には、(1)シリカ微粒子を含む高分子材料をフィルムに成形することにより形成された勾配のゆるやかな突起(平均高さ7nm、直径1μm)を100μm2当たり数個有し、かつ(2)直径15nmのシリカコロイド粒子が紫外線硬化エポキシ樹脂でポリエステルフィルム表面に固着されて形成された急峻な突起を1mm2当り1×107個有するポリエステルフィルムを使用した。本実施例で使用したポリエステルフィルムは、重合触媒の残さに由来する微粒子によってフィルム表面に形成される比較的大きな突起の数が極めて少ないものであった。
非磁性支持体として、表面に粒状突起を有するポリエステルフィルムを用意した。具体的には、(1)シリカ微粒子を含む高分子材料をフィルムに成形することにより形成された勾配のゆるやかな突起(平均高さ7nm、直径1μm)を100μm2当たり数個有し、かつ(2)直径15nmのシリカコロイド粒子が紫外線硬化エポキシ樹脂でポリエステルフィルム表面に固着されて形成された急峻な突起を1mm2当り1×107個有するポリエステルフィルムを使用した。本実施例で使用したポリエステルフィルムは、重合触媒の残さに由来する微粒子によってフィルム表面に形成される比較的大きな突起の数が極めて少ないものであった。
ポリエステルフィルムの粒状突起が形成された面に、連続真空斜め蒸着法によりCoから成る強磁性金属膜(膜厚100nm)を微量の酸素の存在下で形成した。強磁性金属膜中の酸素含有量は原子分率で5%であった。
次に、強磁性金属膜の上に、プラズマCVD法によってダイヤモンドライクカーボンから成る厚さ5nmの保護膜を形成した。保護膜は、真空容器中にヘキサンガスとアルゴンガスとを4:1の比(圧力比)で混合したガスを導入し、トータルガス圧を39Paに保ちながら、周波数20kHz、電圧1500Vの交流と1000Vの直流を重畳し、これを放電管内の電極に印加することにより形成した。さらに、炭素膜上にプロピルアミンガスを導入し、6.5Paの圧力を保った状態で10kHzの高周波プラズマ処理を行ない、炭素膜の表層部に厚さ2.5nmの含窒素プラズマ重合膜を形成した。
続いて、上記化学式(a1)で示されるイソシアヌル酸誘導体化合物を、イソプロピルアルコールとトルエンとの混合有機溶媒(重量比1:1)に溶解して塗布液を調製した。調製した塗布液をリバースロールコータを用いて保護膜上に湿式塗布法で塗布した後、乾燥処理して溶媒を蒸発させた。最終的に保護膜上には、潤滑剤を表面1m2あたり8mg含有する潤滑剤層が形成された。これを所定幅に裁断して磁気テープを作製した。
(実施例3〜7)
化学式(a1)で示される化合物に代えて、上記化学式(a2)〜(a6)で示される化合物をそれぞれ使用して、実施例2と同様の方法で5種類の磁気テープ(実施例3〜7)を作製した。
化学式(a1)で示される化合物に代えて、上記化学式(a2)〜(a6)で示される化合物をそれぞれ使用して、実施例2と同様の方法で5種類の磁気テープ(実施例3〜7)を作製した。
(実施例8)
化学式(a1)で示される化合物に代えて、下記化学式(a7)で示される化合物を使用して、実施例2と同様の方法で磁気テープを作製した。
化学式(a1)で示される化合物に代えて、下記化学式(a7)で示される化合物を使用して、実施例2と同様の方法で磁気テープを作製した。
(実施例9)
化学式(a1)で示される化合物に代えて、化学式(a1)で示される化合物と、下記化学式(g1)で示される公知の潤滑剤である化合物を重量比で1:1の割合で混合した混合物を用いて潤滑剤層を形成したことを除いては、実施例2と同様の方法で磁気テープを作製した。
化学式(a1)で示される化合物に代えて、化学式(a1)で示される化合物と、下記化学式(g1)で示される公知の潤滑剤である化合物を重量比で1:1の割合で混合した混合物を用いて潤滑剤層を形成したことを除いては、実施例2と同様の方法で磁気テープを作製した。
(実施例10)
化学式(a1)で示される化合物に代えて、化学式(a1)で示される化合物と、下記化学式(g2)で示される公知の潤滑剤である化合物を重量比で1:1の割合で混合した混合物を用いて潤滑剤層を形成したことを除いては、実施例2と同様の方法で磁気テープを作製した。
化学式(a1)で示される化合物に代えて、化学式(a1)で示される化合物と、下記化学式(g2)で示される公知の潤滑剤である化合物を重量比で1:1の割合で混合した混合物を用いて潤滑剤層を形成したことを除いては、実施例2と同様の方法で磁気テープを作製した。
(比較例1)
化学式(a1)で示される化合物に代えて、下記化学式(g3)で示される公知の潤滑剤であるホスファゼン化合物を使用して、実施例2と同様の方法で磁気テープを作製した。
化学式(a1)で示される化合物に代えて、下記化学式(g3)で示される公知の潤滑剤であるホスファゼン化合物を使用して、実施例2と同様の方法で磁気テープを作製した。
(比較例2)
化学式(a1)で示される化合物に代えて、下記化学式(g4)で示される公知の潤滑剤である化合物を使用して、実施例2と同様の方法で磁気テープを作製した。
化学式(a1)で示される化合物に代えて、下記化学式(g4)で示される公知の潤滑剤である化合物を使用して、実施例2と同様の方法で磁気テープを作製した。
(比較例3)
化学式(a1)で示される化合物に代えて、上記化学式(g1)で示される公知の潤滑剤のみを使用して、実施例2と同様の方法で磁気テープを作製した。
化学式(a1)で示される化合物に代えて、上記化学式(g1)で示される公知の潤滑剤のみを使用して、実施例2と同様の方法で磁気テープを作製した。
(比較例4)
化学式(a1)で示される化合物に代えて、上記化学式(g2)で示される公知の潤滑剤のみを使用して、実施例2と同様の方法で磁気テープを作製した。
化学式(a1)で示される化合物に代えて、上記化学式(g2)で示される公知の潤滑剤のみを使用して、実施例2と同様の方法で磁気テープを作製した。
(比較例5)
化学式(a1)で示される化合物をイソプロピルアルコールとトルエンとの混合有機溶媒(重量比1:1)に代えてイソプロピルアルコールのみに溶解して塗布液を調製し、実施例2と同様の方法で磁気テープを作製した。
化学式(a1)で示される化合物をイソプロピルアルコールとトルエンとの混合有機溶媒(重量比1:1)に代えてイソプロピルアルコールのみに溶解して塗布液を調製し、実施例2と同様の方法で磁気テープを作製した。
実施例2〜10および比較例1〜5で得られた磁気テープ試料について、それぞれ下記の評価を行った。
(I)走行性試験
各試料を、巻き付け角90°でステンレスのガイドピンに巻き付け、テンション0.2Nの条件で試料を18mm/秒の速度で巻き出し、同じ速度で巻き取り、巻き取り側においてテンションを測定した。巻き取り側のテンションと巻き出し側のテンションとの比からオイラーの式より動摩擦係数を計算して求めた。摩擦係数は巻き出し、巻取りをセットで1パスとし100パス目および1000パス目における摩擦係数を計算した。
各試料を、巻き付け角90°でステンレスのガイドピンに巻き付け、テンション0.2Nの条件で試料を18mm/秒の速度で巻き出し、同じ速度で巻き取り、巻き取り側においてテンションを測定した。巻き取り側のテンションと巻き出し側のテンションとの比からオイラーの式より動摩擦係数を計算して求めた。摩擦係数は巻き出し、巻取りをセットで1パスとし100パス目および1000パス目における摩擦係数を計算した。
(II)スチル寿命試験
スチル寿命は、スチル寿命測定用に改造した市販デジタルVTR(松下電器産業(株)製、商品名NV−DJ1)を用い、3℃、5%RHの環境下で測定した。スチル寿命は初期から出力が6dB低下するまでの時間(分)で示す。
スチル寿命は、スチル寿命測定用に改造した市販デジタルVTR(松下電器産業(株)製、商品名NV−DJ1)を用い、3℃、5%RHの環境下で測定した。スチル寿命は初期から出力が6dB低下するまでの時間(分)で示す。
(III)耐久性試験
耐久性は、ヘッド目詰まりにて評価した。RF(高周波)出力測定用に改造した市販デジタルVTR(松下電器産業(株)製、NV−DJ1)を用い、各試料を23℃、60%RHの環境下で100パス、133時間繰り返し再生を行い、再生中のRF出力からヘッド目詰まりを測定した。この繰り返し再生中、RF出力が6dB以上低下したときにヘッド目詰まりが発生したものとし、そのような低下が測定された時間を合計した時間をヘッド目詰まりとした。また、繰り返し再生後の磁気ヘッドを光学顕微鏡を用いて観察し、磁気ヘッドに付着している粉つきを観察した。粉つきは5段階で評価し、粉つきがほとんど見られないレベルを5、粉つきがヘッド面積に対し30%以下であり出力に影響しないレベルを4、粉つきがヘッド面積に対し50%以下であり出力に影響しないレベルを3、粉つきがヘッド面積に対し50%以下であり出力に影響するレベルを2、粉つきがヘッド面積に対し50%以上であるレベルを1とした。
耐久性は、ヘッド目詰まりにて評価した。RF(高周波)出力測定用に改造した市販デジタルVTR(松下電器産業(株)製、NV−DJ1)を用い、各試料を23℃、60%RHの環境下で100パス、133時間繰り返し再生を行い、再生中のRF出力からヘッド目詰まりを測定した。この繰り返し再生中、RF出力が6dB以上低下したときにヘッド目詰まりが発生したものとし、そのような低下が測定された時間を合計した時間をヘッド目詰まりとした。また、繰り返し再生後の磁気ヘッドを光学顕微鏡を用いて観察し、磁気ヘッドに付着している粉つきを観察した。粉つきは5段階で評価し、粉つきがほとんど見られないレベルを5、粉つきがヘッド面積に対し30%以下であり出力に影響しないレベルを4、粉つきがヘッド面積に対し50%以下であり出力に影響しないレベルを3、粉つきがヘッド面積に対し50%以下であり出力に影響するレベルを2、粉つきがヘッド面積に対し50%以上であるレベルを1とした。
(IV)吸着性試験
吸着性試験は、潤滑剤層を形成した試料を、潤滑剤層を形成する際に塗布液の調製に用いた溶媒中に10秒間浸漬することにより洗浄し、洗浄後の潤滑剤の残存率を求めた。この試験によれば、残存率の大きいものほど、吸着性が高いと評価される。潤滑剤の残存率は、ESCA分析により窒素原子を検出し、溶媒による洗浄の前後での窒素原子の存在量の変化量から求めた。
各試験の評価結果を表1に示す。
吸着性試験は、潤滑剤層を形成した試料を、潤滑剤層を形成する際に塗布液の調製に用いた溶媒中に10秒間浸漬することにより洗浄し、洗浄後の潤滑剤の残存率を求めた。この試験によれば、残存率の大きいものほど、吸着性が高いと評価される。潤滑剤の残存率は、ESCA分析により窒素原子を検出し、溶媒による洗浄の前後での窒素原子の存在量の変化量から求めた。
各試験の評価結果を表1に示す。
表1から明らかなように、本発明のイソシアヌル酸誘導体化合物を潤滑剤層に含む実施例2〜10の試料はいずれも、常温常湿や低温低湿等の環境下において、摩擦係数の上昇が少ない、スチル寿命が長い、ヘッド目詰まり時間が短い、残存率が高い等、全ての試験について良好な結果が得られた。これに対して、比較例1〜4は概して摩擦係数が高く、また、スチル寿命および耐久性の点でも劣っていた。比較例1のものは、残存率が低く、吸着性の点でも劣っていた。なお、比較例2〜4については、潤滑剤が窒素原子を含まないために、潤滑剤残存率を求めていない。比較例5については、潤滑剤層の形成の際にイソプロピルアルコールのみを溶媒として用いたために、均一な層が形成されなかった。そのため、比較例5は、評価試験するのに適正なレベルのものとして得られず、すべての特性において劣る結果となった。
本発明のイソシアヌル酸誘導体化合物は、優れた潤滑特性を有し、かつ良好な吸着性を有する。したがって、この化合物は、特に磁気記録媒体の潤滑剤層を構成するのに適しており、かかる化合物を潤滑剤層に含む磁気記録媒体は優れた走行性および耐久性を示し、デジタルビデオテープレコーダやHDD等の磁気記録再生装置に好ましく適用できる。
1 非磁性支持体
2 磁性層(強磁性金属膜)
3 保護膜
4 潤滑剤層
5 バックコート層
100 磁気記録媒体
2 磁性層(強磁性金属膜)
3 保護膜
4 潤滑剤層
5 バックコート層
100 磁気記録媒体
Claims (8)
- 請求項1に記載のイソシアヌル酸誘導体化合物を少なくとも1種含んで成る潤滑剤。
- 請求項2に記載の潤滑剤を含む磁気記録媒体用の潤滑剤。
- 非磁性支持体の上に磁性層として形成された強磁性金属膜、磁性層の上に形成された保護膜、および保護膜の上に形成された潤滑剤層を有する磁気記録媒体であって、潤滑剤層が請求項2または請求項3に記載の潤滑剤を少なくとも1種含む磁気記録媒体。
- 保護膜がダイヤモンドライクカーボンである請求項4に記載の磁気記録媒体。
- 保護膜が表層部に含窒素プラズマ重合膜を有する炭素膜であり、潤滑剤層が炭素膜の含窒素プラズマ重合膜上に形成されている請求項4または請求項5に記載の磁気記録媒体。
- 請求項4〜6のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法であって、保護膜の上に潤滑剤層を形成する工程が、炭化水素系溶媒とアルコール系溶媒との混合有機溶媒に潤滑剤を溶解して調製した塗布液を保護膜の上に塗布する工程を含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
- 炭化水素系溶媒とアルコール系溶媒との混合割合が重量比で1:9〜9:1の範囲内にある請求項7に記載の磁気記録媒体の製造方法。
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