JP2002241349A - フッ素系カルボン酸ジエステル、潤滑剤、ならびに磁気記録媒体および磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents

フッ素系カルボン酸ジエステル、潤滑剤、ならびに磁気記録媒体および磁気記録媒体の製造方法

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JP2002241349A
JP2002241349A JP2001038375A JP2001038375A JP2002241349A JP 2002241349 A JP2002241349 A JP 2002241349A JP 2001038375 A JP2001038375 A JP 2001038375A JP 2001038375 A JP2001038375 A JP 2001038375A JP 2002241349 A JP2002241349 A JP 2002241349A
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Yukikazu Ochi
幸和 大地
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Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 潤滑剤として有用な化合物であって、酸性度
が低く、高温高湿下で磁性金属と接触させても錆を発生
させない化合物を提供する。 【解決手段】 一般式(a): 【化1】 (式中、R、R、R、Rはそれぞれ水素、脂肪
族アルキル基または脂肪族アルケニル基を示し、R
よびRのいずれか一方が水素であり、RおよびR
のいずれか一方が水素であり、mは1から6の整数であ
り、nは1から5の整数であり、p、qは0から30の
整数であり、rは1〜12の整数である)で示されるフ
ッ素系カルボン酸ジエステルであり、この化合物を用い
て、例えば磁気記録媒体の潤滑剤層を形成すれば、潤滑
性に加えて耐蝕性の点においても優れた磁気記録媒体が
得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は高精度な潤滑性が要
求される精密機械もしくは精密部品等に使用する潤滑
剤、界面活性剤、離型剤および防錆剤等として有用な新
規な含フッ素化合物、当該含フッ素化合物を含む界面活
性剤および潤滑剤、ならびに当該潤滑剤を使用する磁気
記録媒体およびその磁気記録媒体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、磁気記録の分野においては、記録
・再生機器のデジタル化、小型化および使用時間の長時
間化等の高性能化に伴い、それに適した高密度磁気記録
媒体の開発が活発に行なわれている。最近では塗布型磁
気記録媒体に代わって、短波長記録に極めて有利な金属
薄膜型磁気記録媒体が実用化されている。一般に、金属
薄膜型磁気記録媒体とは、非磁性支持体上に、記録層と
して強磁性金属薄膜から成る磁性層を設けたテープおよ
びディスク等をいう。また、高密度磁気記録媒体の記録
・再生に用いられる磁気記録媒体システムとしては、例
えば、デジタルビデオデッキやハードディスクドライブ
が挙げられる。
【0003】デジタルビデオテープに代表される金属薄
膜型磁気記録媒体においては、磁性層は極めて良好な表
面性を有する、すなわち磁性層の面の粗度が小さい。そ
のため、磁性層と磁気ヘッドとの接触面積が増えるの
で、磁性層は信号の記録・再生の過程において磁気ヘッ
ドと高速摺動する間に大きな摩擦力を受けて磨耗されや
すい。磁性層の磨耗は、磁気記録媒体の走行耐久性ある
いはスチル耐久性等に大きな影響を与えるため、これを
低減させることは金属薄膜型磁気記録媒体の研究開発に
おいて大きな課題となっている。
【0004】そこで磁性層表面に潤滑剤層を設けること
によって磨耗を低減し、走行耐久性およびスチル耐久性
を改善しようとする試みがなされている。潤滑剤層を設
ける場合、磁気記録媒体と磁気ヘッドとのスペーシング
ロスによる出力低下を極力抑えて高出力化を図るべく、
磁性層表面の潤滑剤層は僅か数nmの厚さで潤滑特性を発
揮することが求められている。
【0005】また、一般的なハードディスクドライブに
おいてはCSS(コンタクト・スタート・ストップ)方
式が採用されている。CSS方式とは、高密度磁気記録
媒体であるハードディスクが停止している状態では磁気
ヘッドがディスクに接触し、起動時にハードディスクが
高速回転し始めると、これに伴って発生する空気流によ
り磁気ヘッドがディスク表面から浮上し、この状態で記
録・再生が行われる方式である。そして、停止時にディ
スクの回転が減速され、再び磁気ヘッドはハードディス
クと接触するようになる。
【0006】このCSS方式においてはディスクの運転
停止時あるいは起動開始時に磁気ヘッドがハードディス
ク表面を擦って走行するので、そのときに加わる摩擦力
が大きな問題となっている。ハードディスクドライブの
信頼性を保つにはCSS走行試験後の媒体の摩擦係数が
初期と同じであることが望まれる。しかし、表面平坦性
が高い、すなわち粗度の小さな磁気ディスクでは、この
要求を満たすことは難しい。また、ハードディスクが高
速で回転している際に、ヘッドと媒体とが衝突する、い
わゆるヘッドクラッシュも解決すべき課題の1つであ
る。そして、ヘッドクラッシュが発生する要因の一つと
して、磁気記録媒体が適当な保護膜および潤滑剤層を有
していないことが挙げられる。
【0007】さらに、高記録密度化に伴い、MRヘッド
またはGMRヘッドの搭載ならびにコンタクト記録方式
の採用等、新たな技術への対応を考えていく必要があ
る。そのためには磁気記録媒体の潤滑特性をより向上さ
せる必要がある。
【0008】そこで、磁気記録媒体に適した潤滑剤が広
く検討されている。その1つとしてフッ素系化合物があ
る。フッ素系化合物は優れた潤滑特性を示すため、各種
フッ素系化合物の使用が提案されている。中でもパーフ
ルオロポリエーテルは、他のフッ素系化合物よりも潤滑
性能や表面保護作用の点で優れているために幅広く用い
られている。パーフルオロポリエーテルが優れた潤滑特
性を示す理由として、分子内に酸素を含むエーテル結合
が存在するために、同じ分子量のフルオロアルカン等と
比較して粘度が低く、また、幅広い温度領域で粘度特性
が変化しないこと等が挙げられる。さらに、パーフルオ
ロポリエーテルは、反応性が低く化学的に不活性であ
る、蒸気圧が低い、熱的安定性が高い、耐薬品性に優れ
化学的安定性が高い、表面エネルギーが低い、ならびに
撥水性が高いという特徴を有する。これらの特徴はいず
れも潤滑剤として使用するうえで有利なものである。
【0009】極性基を有する市販のパーフルオロポリエ
ーテルを潤滑剤層に含む磁気記録媒体は既に提案され、
あるいは実用化されている。金属薄膜型磁気記録媒体用
の潤滑剤としては、例えば、下記の化学式(x)で示さ
れるパーフルオロポリエーテル系カルボン酸が市販され
ている。
【化2】
【0010】
【発明が解決しようとする課題】磁気記録媒体が具える
べき特性の1つとして耐蝕性がある。耐蝕性は、具体的
には、高温高湿下に磁気記録媒体を放置したときの磁気
記録媒体表面(潤滑剤層表面)における錆の発生状況に
よって評価される。
【0011】錆の発生は、保護膜としてダイヤモンドラ
イクカーボン(DLC)から成る炭素膜を磁性層上に形
成することによって有効に抑制される。DLC膜が磁性
層表面を被覆して、磁性層を外気から遮断するためであ
る。しかし、DLC膜の上に潤滑剤層を形成した場合、
潤滑剤層中の潤滑剤の種類によっては、錆がより発生し
やすい場合がある。それは、DLC膜の一部において膜
が途切れ、その部分で潤滑剤と磁性層とが接触して反応
することによる。一般に潤滑剤の酸性度が高いほど、錆
はより発生しやすい。
【0012】磁気記録媒体の耐蝕性もまた、潤滑性能と
同様に、より改善が望まれる磁気記録媒体の性能の1つ
である。しかしながら、上記のような極性基を有するパ
ーフルオロポリエーテルは一般に酸性度が高いため、こ
れを使用することは耐蝕性の点において好ましくない。
一方、極性基を有しないパーフルオロポリエーテルを使
用すれば、錆の発生は抑制されるが、極性基を有するも
のと比較して潤滑性は低下する。このように、耐蝕性と
潤滑特性を両立させることは一般に困難である。
【0013】本発明は、上記実情に鑑みてなされたもの
であり、酸性度の低いフルオロポリエーテル系カルボン
酸を提供すること、電磁変換特性を損なうことなく、優
れた耐蝕性および潤滑性を有する実用信頼性の高い磁気
記録媒体を得ることを可能にする潤滑剤を提供するこ
と、ならびに当該潤滑剤を用いた磁気記録媒体およびそ
の製造方法を提供することを課題をする。
【0014】
【課題を解決するための手段】第一の要旨において、本
発明は特定の構造を有する合フッ素化合物を提供する。
かかる化合物は、一般式(a)で示される。
【0015】
【化3】 (式中、R、R、R、Rはそれぞれ水素、脂肪
族アルキル基または脂肪族アルケニル基を示し、R
よびRのいずれか一方が水素であり、RおよびR
のいずれか一方が水素であり、mは1から6の整数であ
り、nは1から5の整数であり、p、qは0から30の
整数であり、rは1〜12の整数である)
【0016】本発明の含フッ素化合物は、一分子中に2
個のカルボキシル基と、2個のエステル結合を有し、フ
ルオロエーテルもしくはフルオロポリエーテル鎖を有す
る。この構造により、本発明の化合物が潤滑剤、特に磁
気記録媒体の潤滑剤層用の潤滑剤に含まれる場合、その
磁気記録媒体は優れた潤滑特性および耐蝕性を示す。し
たがって、本発明はまた、上記本発明の化合物を、潤滑
剤を構成する化合物として提供するものである。
【0017】第二の要旨において、本発明は、上記本発
明の化合物を少なくとも1種含んで成る潤滑剤を提供す
る。本発明の潤滑剤は、特に金属薄膜型磁気記録媒体の
潤滑剤層を構成するのに適している。
【0018】第三の要旨において、本発明は、非磁性支
持体の上に磁性層として形成された強磁性金属膜、磁性
層の上に形成された保護膜および保護膜の上に形成され
た潤滑剤層を有する磁気記録媒体であって、潤滑剤層が
本発明のフッ素系カルボン酸ジエステルを少なくとも1
種含む磁気記録媒体を提供する。
【0019】第四の要旨において、本発明は、上記本発
明の磁気記録媒体の製造方法を提供する。本発明の磁気
記録媒体の製造方法は、その潤滑剤層の形成工程に特徴
を有し、それ以外の工程は従来の磁気記録媒体の製造方
法で用いられている工程を使用することができる。本発
明の製造方法における潤滑剤層の形成工程は、炭化水素
系溶媒とアルコール系溶媒との混合有機溶媒に、潤滑剤
層を構成する化合物(即ち、潤滑剤)を溶解して調製し
た塗布液を保護膜上に塗布する工程を含むことを特徴と
する。炭化水素系溶媒とアルコール系溶媒とを組み合わ
せた混合溶媒を使用することにより、塗布ムラが極めて
少ない均一な薄い潤滑剤層が形成され得る。したがっ
て、本発明の磁気記録媒体の製造方法によれば、優れた
潤滑性能を有する実用信頼性の高い磁気記録媒体を得る
ことが可能である。
【0020】第五の要旨において、本発明は、上記本発
明のフッ素系カルボン酸ジエステルを少なくとも1種含
む界面活性剤を提供する。本発明のフッ素系カルボン酸
ジエステルは、親水基であるカルボキシル基を2個有
し、これが界面に強固に吸着するとともに、長い含フッ
素鎖が表面に配向することにより低表面エネルギー面を
形成するため、優れた界面活性効果を示す。
【0021】
【発明の実施の形態】本発明のフルオロポリエーテル系
カルボン酸は一般式(a)で示され、同一分子内に2個
のカルボキシル基と、2個のエステル結合と、フルオロ
エーテルもしくはフルオロポリエーテル鎖を有する。
【0022】
【化4】
【0023】一般式(a)において、R、R
、Rはそれぞれ水素、脂肪族アルキル基または脂
肪族アルケニル基を示し、RおよびRのいずれか一
方が水素であり、RおよびRのいずれか一方が水素
である。したがって、一般式(a)で示される化合物に
は、Rが水素であってRが脂肪族アルキル基また
は脂肪族アルケニル基であり、Rが脂肪族アルキル基
または脂肪族アルケニル基であってRが水素である化
合物、Rが脂肪族アルキル基または脂肪族アルケニ
ル基であってRが水素であり、Rが水素であってR
が脂肪族アルキル基または脂肪族アルケニル基である
化合物、Rが脂肪族アルキル基または脂肪族アルケ
ニル基であってRが水素であり、Rが脂肪族アルキ
ル基または脂肪族アルケニル基であってRが水素であ
る化合物、およびRが水素であってRが脂肪族ア
ルキル基または脂肪族アルケニル基であり、Rが水素
であってRが脂肪族アルキル基または脂肪族アルケニ
ル基である化合物、ならびにR〜Rがすべて水素
である化合物が含まれる。
【0024】脂肪族アルキル基または脂肪族アルケニル
基の炭素数は、好ましくは1〜22であり、より好まし
くは8〜18である。
【0025】一般式(a)において、mは1から6の整
数であり、nは1から5の整数であり、pおよびqはそ
れぞれ0から30の整数である。mはより好ましくは、
2〜5の整数である。nはより好ましくは1〜4の整数
である。(m、n)の好ましい組合せは(2,1)また
は(1,2)である。pはより好ましくは2〜6の整数
であり、qはより好ましくは2〜6の整数である。rは
1〜12の整数である。
【0026】一般式(a)において−(OC2m
(OC2n−で示される部分が1種のオキシ
フルオロアルキレンのみから成る場合、一般式(a)に
おいてq=0であるとし、一般式(a)で示される化合
物は(OC2m)のみを含むものとする。この場
合、mは、好ましくは2である。
【0027】pおよびqがともに0である場合、一般式
(a)で示される化合物は、1つのエーテル結合を含む
から、いわゆるフルオロエーテルを含む。p≠0かつq
=0である場合、あるいはpおよびqがともに1以上の
整数である場合、一般式(a)で示される化合物におい
てエーテル結合の数は2以上となり、当該化合物はフル
オロポリエーテル鎖を含むこととなる。
【0028】一般式(a)において−(OC2m
(OC2n−で示される部分は、2種のオキ
シフルオロアルキレン単位が共重合している部分に相当
する。pおよびqは共重合体中の各オキシフルオロアル
キレン単位の数を示す。オキシフルオロアルキレン単位
(OC2m)とオキシフルオロアルキレン単位(O
2n)とから成る共重合体は、p個の(OC
2m)のブロックとq個の(OC2n)のブロック
とから成るブロック共重合体もしくは他のブロック共重
合体、ランダム共重合体、または交互共重合体であって
よい。したがって、一般式(a)は、−(OC
2m(OC2n−で示される部分がブ
ロック共重合体、ランダム共重合体および交互共重合体
であるものを含む。
【0029】一般式(a)で示される化合物は、フッ素
原子が結合した炭素とカルボキシル基との間に−(CH
−およびエステルが存在するために、例えば先の
式(x)で示される化合物と比較して、その酸性度が低
い。したがって、この化合物を少なくとも1種含む潤滑
剤が磁気記録媒体の潤滑剤層に含まれる場合には、錆の
発生が有効に防止され、優れた耐蝕性が磁気記録媒体に
付与される。また、この化合物は、潤滑剤層において、
両末端のカルボキシル基が磁気記録媒体の保護膜(特に
炭素膜)に強固に付着して、表面にフルオロエーテルま
たはフルオロポリエーテルを露出させるので、優れた潤
滑特性を磁気記録媒体に付与する。
【0030】一般式(a)で示される化合物は、アルキ
ル無水コハク酸、アルケニル無水コハク酸、または無水
コハク酸と、フロロアルキレンオキサイド基を有するフ
ロロアルキルジアルコールとを混合加熱撹拌することに
よって製造される。ここで、フルオロアルキレンオキサ
イド基(即ち、オキシフルオロアルキレン基)とは、−
O−R−もしくは−R−O−(−R−はフルオロ
アルキレン基、例えばパーフルオロアルキレン基)を指
す。加熱温度は60〜120℃であり、好ましくは80
〜100℃である。加熱温度が60℃未満であると多く
の未反応物が残る傾向にある。一方、加熱温度が100
℃を越えると副生成物が生成される傾向にある。
【0031】使用できるアルキル無水コハク酸、アルケ
ニル無水コハク酸、または無水コハク酸としては、メチ
ル無水コハク酸、エチル無水コハク酸、ブチル無水コハ
ク酸、プロピル無水コハク酸、ヘキシル無水コハク酸、
ヘプチル無水コハク酸、オクチル無水コハク酸、ノニル
無水コハク酸、デシル無水コハク酸、ウンデシル無水コ
ハク酸、ドデシル無水コハク酸、トリデシル無水コハク
酸、テトラデシル無水コハク酸、ペンタデシル無水コハ
ク酸、ヘキサデシル無水コハク酸、ヘプタデシル無水コ
ハク酸、オクタデシル無水コハク酸、ノナデシル無水コ
ハク酸、イコシル無水コハク酸、または無水コハク酸が
ある。フロロアルキレンオキサイド基を有するフロロア
ルキルジアルコールとしては、Fomblin Z dol(商品
名;Ausimont社製)等がある。
【0032】混合加熱攪拌は、好ましくは適当な溶媒の
存在下で実施される。溶媒は、例えば、ノルマルヘプタ
ン、ノルマルオクタン、またはヘキサフルオロキシレン
である。
【0033】得られた混合物から、減圧蒸留により溶媒
を除去し、残留を有機溶媒で抽出して、目的化合物を分
離する。分離した化合物は、赤外分光分析(IR)、ゲ
ルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)および
有機質量分析(FD−MS)により同定することができ
る。
【0034】一般式(a)において、RおよびR
組合せと、RおよびRの組合せが同一である化合物
を得るには、1種類のアルキル無水コハク酸、アルケニ
ル無水コハク酸または無水コハク酸と、フロロアルキレ
ンオキサイド基を有するフロロアルキルジアルコールと
を、2:1(モル比)の割合で混合加熱攪拌する。
【0035】一般式(a)において、RおよびR
組合せと、RおよびRの組合せが異なる化合物は、
1種類のアルキル無水コハク酸、アルケニル無水コハク
酸または無水コハク酸と、フロロアルキレンオキサイド
基を有するフロロアルキルジアルコールとを、1:1
(モル比)の割合で混合加熱攪拌して得られた生成物
を、別の種類のアルキル無水コハク酸、アルケニル無水
コハク酸または無水コハク酸と1:1(モル比)の割合
で混合加熱攪拌することにより得られる。
【0036】一般に、生成物は先に説明した〜の構
造の化合物を含む。〜の構造の化合物は互いに構造
異性の関係にある。〜の構造の化合物を含む混合物
は、上述の溶媒抽出の後、例えばカラムクロマトグラフ
ィーにより各化合物に単離できる。〜の構造の化合
物が混合されたものは分離することなく、潤滑剤または
界面活性剤として使用することができる。
【0037】このようにして得られる本発明のフッ素系
カルボン酸ジエステルは潤滑剤を構成する材料として有
用である。そして、本発明のフッ素系カルボン酸ジエス
テルを少なくとも1種含んで成る本発明の潤滑剤は、例
えば、磁気記録媒体の潤滑剤層を構成するのに適してい
る。本発明の潤滑剤は、本発明のフッ素系カルボン酸ジ
エステルを1種のみ含むものであってよく、あるいは2
種以上含む組成物であってもよい。
【0038】本発明の潤滑剤は、本発明のフッ素系カル
ボン酸ジエステルのみで構成されてもよいが、それ以外
に他の潤滑剤、防錆剤および極圧剤等が適宜含まれて成
る組成物であってもよい。その場合、本発明のフッ素系
カルボン酸ジエステルの占める割合は、組成物の全量に
対して40重量%以上であることが好ましく、60重量
%以上であることがより好ましい。本発明のフッ素系カ
ルボン酸ジエステルの占める割合が40重量%未満であ
ると、例えばこの組成物で磁気記録媒体の潤滑剤層を形
成した場合、良好な耐蝕性を磁気記録媒体に付与するこ
とができない場合がある。
【0039】本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体の
上に磁性層として形成された強磁性金属膜、磁性層の上
に形成された保護膜および保護膜の上に形成された潤滑
剤層を有する磁気記録媒体であって、潤滑剤層が本発明
の潤滑剤を含むものである。すなわち、潤滑剤層は、一
般式(a)で示される本発明のフッ素系カルボン酸ジエ
ステルを少なくとも1種含んで成る潤滑剤を含有する。
潤滑剤層中に含まれる本発明のフッ素系カルボン酸ジエ
ステルの量は、潤滑剤層の表面1m2当たり0.05〜
100mgであることが好ましく、0.1〜50mgである
ことがより好ましい。潤滑剤層にこのような少量のフッ
素系カルボン酸ジエステルを均一に存在させるために、
本発明の磁気記録媒体の潤滑剤層は次の方法で形成する
ことが望ましい。
【0040】潤滑剤層は、常套の材料および手段を用い
て非磁性支持体の上に強磁性金属薄膜および保護膜をこ
の順に形成した後、保護膜上に形成する。潤滑剤層の形
成工程は、炭化水素系溶媒とアルコール系溶媒との混合
溶媒に本発明の潤滑剤を溶解して調製した塗布液を保護
膜上に塗布する工程、ならびに塗布した塗布液を乾燥し
て混合溶媒を蒸発させる工程を含む。最終的に混合溶媒
が蒸発することにより、保護膜上には溶媒に溶解した潤
滑剤が残って潤滑剤層を形成する。従って、塗布液を厚
く塗布しても、溶媒が蒸発することにより、保護膜上に
は均一で非常に薄い潤滑剤層、すなわち少量の潤滑剤が
保護膜を均一に被覆した潤滑剤層が形成される。
【0041】本発明で使用できる炭化水素系溶媒は、例
えば、トルエン、ヘキサン、へプタン、オクタン、ノナ
ン、キシレンおよびケトン等である。本発明で使用でき
るアルコール系溶媒は、例えば、メチルアルコール、エ
チルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルア
ルコールおよびブチルアルコール等の低級アルコールで
ある。混合有機溶媒は、具体的には、トルエンとイソプ
ロピルアルコールの混合溶媒、ヘキサンとイソプロピル
アルコールの混合溶媒、またはヘプタンとイソプロピル
アルコールの混合溶媒であることが好ましい。アルコー
ル系溶媒の割合が大きすぎると塗布ムラが生じやすく、
一方、炭化水素系溶媒の割合が大きすぎるとコスト面で
不利であるため、両者は、混合割合が重量比で1:9〜
9:1の範囲、好ましくは3:7〜7:3の範囲となる
ように混合して使用することが好ましい。
【0042】塗布液の濃度および塗布厚は、溶媒が蒸発
した後に保護膜上に形成される潤滑剤層が所望の厚さに
なるように塗布する。一般には、潤滑剤の濃度が100
〜10000ppmである塗布液を、10〜100μmの
厚さとなるように塗布することが好ましい。
【0043】上記混合溶媒を用いて潤滑剤層を形成する
方法としては、バーコーティング法、グラビアコーティ
ング法、リバースロールコーティング法、ダイコーティ
ング法、ディップコーティング法およびスピンコーティ
ング法等の湿式塗布法または有機蒸着法があり、いずれ
の方法を採用してもよい。
【0044】塗布液を塗布した後、乾燥処理して有機溶
媒を蒸発させると、保護膜上に潤滑剤層が形成される。
乾燥処理は、加熱あるいは自然乾燥によって実施するこ
とができる。そして、最終的に得られる潤滑剤層の厚さ
は3〜5nm程度とすることが好ましい。ただし、潤滑剤
の組成に応じて潤滑剤層の厚さの最適範囲が存在するた
め、潤滑剤層の厚さは必ずしもこの範囲に限定されるも
のではない。
【0045】このように、所定の混合有機溶媒を用いる
ことにより、塗布ムラのない均一な厚さの潤滑剤層が得
られ、しかも溶媒が最終的に蒸発した後には数nmという
非常に薄い潤滑剤層を形成することができる。その結
果、優れた潤滑性能を有する実用信頼性の高い磁気記録
媒体が得られる。
【0046】先に述べたとおり、本発明の磁気記録媒体
は、潤滑剤層以外の層に関しては、常套の材料および手
段を採用して形成することができる。
【0047】例えば、非磁性支持体は、ポリエチレンテ
レフタレート、ポリエチレンナフタレート、芳香族ポリ
アミド、もしくは芳香族ポリイミドからなるフイルム;
ポリ塩化ビニルもしくはポリ塩化ビニリデン等のビニル
系樹脂からなるフィルム;ポリカーボネート、ガラス、
セラミック、アルミニウムもしくは銅等の金属、アルミ
ニウム合金もしくはチタン合金等の軽金属、または単結
晶シリコン等から成る基板;あるいは紙であってよい。
非磁性支持体としてアルミニウム合金から成る基板また
はガラス基板等の剛性の大きい基板を使用する場合に
は、アルマイト処理等により基板表面に酸化被膜やNi
−P被膜等を形成してその表面を硬くしてもよい。
【0048】非磁性支持体の強磁性金属薄膜が形成され
る表面(即ち、磁性層と接する側の面)には、実用信頼
性と良好なRF出力値とを両立するために、直径50〜
700nm、高さ5〜70nmの突起形成処理が施されてい
ることが望ましい。突起は、具体的には、例えば、Si
またはZnO等の無機物質から成る超微粒子、ある
いはイミド等の有機物質から成る超微粒子を非磁性支持
体の表面に分散し固着させることにより形成される。あ
るいは、突起はそのような微粒子を含む高分子材料をフ
ィルムに成形することにより形成される。
【0049】本発明の磁気記録媒体において、磁性層は
強磁性金属薄膜である。磁性層に適した強磁性金属とし
ては、Fe系金属、Co系金属、およびNi系金属があ
る。本発明においてはCo系金属で磁性層を形成するこ
とが特に好ましい。ここで、「Co系金属」とは、コバ
ルト、およびコバルトを主成分として好ましくは50原
子%以上含む合金をいう。「Fe系金属」および「Ni
系金属」も同様である。
【0050】強磁性金属薄膜は、具体的には、Fe、C
oおよびNi、ならびにCo−Ni、Co−Fe、Co
−Cr、Co−Cu、Co−Pt、Co−Pd、Co−
Sn、Co−Au、Fe−Cr、Fe−Co−Ni、F
e−Cu、Ni−Cr、Fe−Co−Cr、Co−Ni
−Cr、Co−Pt−CrおよびFe−Co−Ni−C
r等の合金から選択される1または複数の材料で形成さ
れる。強磁性金属薄膜は酸素を含んでいてよく、酸素は
これらの金属または合金の酸化物の形態で含まれていて
よい。強磁性金属薄膜は、単層膜の形態であってもよ
く、あるいは多層膜の形態であってもよい。
【0051】強磁性金属薄膜はイオンプレーティング
法、スパッタリング法または電子ビーム蒸着法等で形成
することができる。強磁性金属薄膜を酸素雰囲気下で形
成すれば、強磁性金属薄膜に酸素が含まれることとな
る。強磁性金属薄膜の厚さは一般に30nm〜300nmで
ある。
【0052】保護膜は、好ましくは炭素膜である。炭素
膜は、ビッカース硬度が約2.45×10N/mm
(約2500kg/mm)と高く、磁気記録媒体のダメ
ージを潤滑剤層と共に防止する。実用信頼性と出力との
バランスを考慮すれば、その厚さは1〜20nmであるこ
とが好ましい。
【0053】炭素膜は、炭化水素ガスのみ、もしくは炭
化水素ガスと不活性ガスとの混合ガスを用いたプラズマ
CVD法により形成されるグラファイト状カーボンまた
はダイヤモンドライクカーボンであることが好ましい。
ダイヤモンドライクカーボンは適度な硬度を有し、磁気
ヘッドを損傷することなく磁気記録媒体の損傷を抑制し
得ることから、最も好ましい材料である。
【0054】炭素膜は、具体的には、真空容器中に炭化
水素ガスまたは炭化水素ガスとアルゴン等の不活性ガス
の混合ガスを導入し、容器内の圧力を0.13〜130
Paに保った状態で真空容器内部で放電を発生させ、炭化
水素ガスのプラズマを発生させることにより、強磁性金
属薄膜上に形成する。放電形式は外部電極方式および内
部電極方式のいずれでもよく、放電周波数は実験的に決
めることができる。また、非磁性支持体側に配置される
電極に0KVから−3KVの電圧を印加することによって、
炭素膜の硬度を増大させることができ、また、炭素膜と
強磁性金属薄膜との密着性を向上させることができる。
炭化水素ガスとしては、メタン、エタン、プロパン、ブ
タン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンまたは
ベンゼン等を用いることができる。
【0055】なお、硬質の炭素膜を形成するためには、
放電エネルギーを大きくすることが望ましく、併せて非
磁性支持体の温度を高温に維持することが望ましい。例
えば、放電エネルギーは、交流電流、例えば高周波電流
と直流電流を重畳して実効値を600V以上にすること
が望ましい。
【0056】本発明においては、炭素膜の表層部に含窒
素プラズマ重合膜を形成し、潤滑剤層が炭素膜の含窒素
プラズマ重合膜上に形成されていることが好ましい。含
窒素プラズマ重合により炭素膜の表層部にアミノ基が存
在することとなり、その結果、潤滑剤層と炭素膜との間
の付着強度がより大きくなり、磁気記録媒体の耐久性が
より向上することとなる。そして、潤滑剤層に特定の含
フッ素化合物等を含有させることと相俟って、電磁変換
特性が損なわれることなく優れた潤滑性能を有する走行
耐久性、スチル耐久性および耐蝕性が向上した実用信頼
性の高い磁気記録媒体が得られる。
【0057】含窒素プラズマ重合膜は、真空容器中にプ
ロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、プロ
ピレンジアミンもしくはテトラメチレンジアミン等のア
ミン化合物をガス化して導入し、容器内の圧力を0.1
3〜130Paに保った状態で、真空容器内部に高周波放
電を生じさせて形成する。含窒素プラズマ重合膜を形成
することにより上記特定の含フッ素化合物を含む潤滑剤
の化学吸着力が向上し、その結果、潤滑剤層と炭素膜と
の間の付着強度が向上する。含窒素プラズマ重合膜の膜
厚は3nm未満が適当であり、これよりも含窒素プラズマ
重合膜が厚い場合には炭素膜の保護効果が低下する。な
お、炭素膜の表層部に含窒素プラズマ重合膜を形成する
方法は、米国特許第5540957号および第5637
393号に開示されており、この引用によりこれらの特
許に開示された内容は本明細書の一部を構成する。
【0058】本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体の
磁性層が形成された面とは反対の面にバックコート層を
有してよい。バックコート層は、ポリウレタン、ニトロ
セルロース、ポリエステル、カーボンおよび炭酸カルシ
ウム等から選ばれる1つもしくは複数の材料により形成
される層であってよく、あるいは、金属、金属酸化物ま
たは合金から成る薄膜であってよい。バックコート層の
厚さは約50〜500nmとすることが好ましい。
【0059】
【実施例】次に、本発明の具体的な実施例について説明
するが、本発明はこの実施例に限定されるものではな
い。
【0060】(実施例1) [化合物(a1)の合成]下記の化学式(a1)で示さ
れる化合物を合成した。
【0061】
【化5】
【0062】化学式(a1)で示される化合物は、一般
式(a)においてRおよびRがが炭素数1のメチル
基で、RおよびRが水素であり、m=2、n=1、
p=3、q=4、r=1である。
【0063】化学式(a1)で示される化合物の製造方
法を説明する。出発原料は化学式(b1)で示されるメ
チル無水コハク酸23.0g(0.20モル)と化学式
(c1)で示されるFomblin Z dol(商品名;Ausimont
社製)200.0g(0.10モル)である。
【0064】
【化6】
【0065】
【化7】
【0066】上記の原料とノルマルオクタン500mlと
を撹拌翼を備えた1リットルのフラスコに投入し、80
℃にて24時間攪拌して反応させた。反応終了後、ノル
マルオクタンを留去し、反応混合物をアセトンに溶解
し、−10℃に冷却して未反応のメチル無水コハク酸を
除去した。さらに、反応混合物をメタノールに溶解して
同様の処理を実施し、未反応のFomblin Z dolを除去し
て透明液体223gを得た。この透明液体はIR、GP
CおよびFD−MSにより、出発原料および副生成物を
含まない化学式(a1)で示される化合物であることが
確認された。この化合物の赤外スペクトルを図1に示
す。
【0067】IR;酸無水物の1,775cm-1の吸収ピ
ークおよびアルコールの3,330cm -1の吸収ピーク消
滅、カルボン酸の1,705cm-1、エステルの1,760
cm-1の吸収ピーク出現。 GPC;Fomblin Z dol、メチル無水コハク酸検出され
ず。 FD−MS;m/e 2,230に主ピーク有り。
【0068】上記においては、化学式(a1)のみを得
られた生成物として示しているが、上記の方法で製造し
た生成物は、それに加えて、下記化学式(a1’)で示
されるRおよびRがメチル基で、RおよびR3
水素である化合物、下記化学式(a1”)で示されるR
およびRがメチル基で、RおよびRが水素であ
る化合物、および下記化学式(a1''')で示されるR
およびRがメチル基で、RおよびRが水素であ
る化合物を含む混合物として得られる。IR、GPCお
よびMSは化学式(a1)で示される化合物を単離して
測定したものである。
【0069】
【化8】
【0070】
【化9】
【0071】
【化10】
【0072】化学式(a1’)、(a1”)および
(a''')で示される化合物もまた、化学式(a1)で
示される化合物と同じ性質を有し、潤滑剤として有用で
ある。化学式(a1)、(a1’)、(a1”)および
(a''')で示される化合物は、互いに構造異性の関係
にある。これらの化合物は上記の製造方法に従って製造
した場合に、生成物中に含まれる。これらの化合物は、
それぞれ単離して潤滑剤として使用してよい。あるい
は、化学式(a1)、(a1’)、(a1”)および
(a''')で示される化合物を分離することなく、生成
物(即ち構造異性体を含む混合物)をそのまま潤滑剤と
して使用してよい。
【0073】[化合物(a2)〜(a4)の合成]メチ
ル無水コハク酸に代えて、化学式(b2)、(b3)、
(b4)で示される化合物をそれぞれ用い、化学式(a
1)で示される化合物の製造方法と同じ方法で、化学式
(a2)、(a3)、(a4)で示される化合物を製造
した。下記の化学式(a2)および(a4)で示される
化合物は、実際の合成においては構造異性体とともに得
られる。
【0074】
【化11】
【0075】
【化12】
【0076】
【化13】
【0077】
【化14】
【0078】
【化15】
【0079】
【化16】
【0080】[化合物(a5)〜(a7)の合成]化学
式(c1)で示されるフルオロアルキレンオキサイド基
を有するジアルコールに代えて、化学式(c2)、(c
3)、(c4)で示される化合物をそれぞれ用い、化学
式(a1)で示される化合物の製造方法と同じ方法で、
化学式(a5)、(a6)、(a7)で示される化合物
を製造した。
【0081】
【化17】
【0082】
【化18】
【0083】
【化19】
【0084】
【化20】
【0085】
【化21】
【0086】
【化22】
【0087】実施例2〜5において、本発明の磁気記録
媒体の実施例を説明する。
【0088】(実施例2)非磁性支持体として、表面に
粒状突起を有するポリエステルフィルムを用意した。具
体的には、シリカ微粒子を含む高分子材料をフィルム
に成形することにより形成された勾配のゆるやかな突起
(平均高さ7nm、直径1μm)を100μm当たり数
個有し、かつ直径15nmのシリカコロイド粒子が紫外
線硬化エポキシ樹脂でポリエステルフィルム表面に固着
されて形成された急峻な突起を1mm 当り1×10
有するポリエステルフィルムを使用した。本実施例で使
用したポリエステルフィルムは、重合触媒の残さに由来
する微粒子によってフィルム表面に形成される比較的大
きな突起の数が極めて少ないものであった。
【0089】ポリエステルフィルムの粒状突起が形成さ
れた面に、連続真空斜め蒸着法によりCoから成る強磁
性金属薄膜(膜厚100nm)を微量の酸素の存在下で形
成した。強磁性金属薄膜中の酸素含有量は原子分率で5
%であった。
【0090】次に、強磁性金属薄膜の上に、プラズマC
VD法によってダイヤモンドライクカーボンから成る厚
さ5nmの保護膜を形成した。保護膜は、真空容器中にヘ
キサンガスとアルゴンガスとを4:1の比(圧力比)で
混合したガスを導入し、トータルガス圧を39Paに保ち
ながら、周波数20KHz、電圧1500Vの交流と10
00Vの直流を重畳し、これを放電管内の電極に印加す
ることにより形成した。さらに、炭素膜上にプロピルア
ミンガスを導入し、6.5Paの圧力を保った状態で10
KHzの高周波プラズマ処理を行ない、炭素膜の表層部に
厚さ2.5nmの含窒素プラズマ重合膜を形成した。
【0091】続いて、この保護膜上に実施例1で製造し
た化学式(a1)で示されるフッ素系カルボン酸ジエス
テルを、イソプロピルアルコールとトルエンとの混合有
機溶媒(重量比1:1)に溶解して塗布液を調製した。
本実施例においては、化学式(a1)で示される化合物
とともに生成された化学式(a1’)および(a1”)
で示される構造異性体を含むものを分離することなく潤
滑剤として使用した(以下の実施例においても同じ)。
【0092】調製した塗布液をリバースロールコータを
用いて湿式塗布法で塗布した後、乾燥処理して溶媒を蒸
発させた。最終的に保護膜上には、潤滑剤を表面1m
あたり10mg含有する潤滑剤層が形成された。
【0093】これを所定幅に裁断して磁気テープを作製
した。この磁気テープを50℃、80%RHの環境下で
10日間放置し、保存後のテープ表面状態を光学顕微鏡
で観察した。また、化合物(a1)の酸性度を、化合物
(a1)をメタノールに溶解し、PH試験紙の色の変化
を調べることにより簡易的に測定した。
【0094】(実施例3)化学式(a1)で示される化
合物に代えて化学式(a2)で示される化合物を使用し
て、実施例2と同じ方法で磁気テープを作製して同様の
試験を行った。この実施例では、化合物(a2)の酸性
度を測定した。
【0095】(実施例4)化学式(a1)で示される化
合物に代えて、化学式(a1)で示される化合物と公知
の潤滑剤C1733COOC24817を重量比で1:
1の割合で混合した混合物を用いて潤滑剤層を形成した
ことを除いては、実施例2と同じ方法で磁気テープを作
製して同様の試験を行った。
【0096】(実施例5)化学式(a1)で示される化
合物に代えて、化学式(a1)で示される化合物と市販
の潤滑剤であるパーフルオロポリエーテル(Fomblin Z
DOL,平均分子量2000:Ausimont社製)を重量比で2:
1の割合で混合した混合物を用いて潤滑剤層を形成した
ことを除いては、実施例2と同じ方法で磁気テープを作
製して同様の試験を行った。
【0097】実施例2〜5の試験結果を表1に示す。表
中の比較例1および2は、潤滑剤としてそれぞれ下記化
学式(x1)および(y1)で示される化合物を使用し
て作製した磁気テープの試験結果である。
【0098】
【化23】
【0099】
【化24】
【0100】
【表1】
【0101】表1に示すように、本発明のフッ素系カル
ボン酸ジエステルを含む潤滑剤で潤滑剤層を形成した磁
気テープ試料については、50℃、80%RHの環境下
で10日間放置した後もテープ表面に錆が発生せず、各
実施例の磁気テープはいずれも耐蝕性に優れていた。一
方、公知の潤滑剤のみで潤滑剤層を形成した磁気テープ
は、表面に錆が発生し、高温高湿下での保存に耐え得る
ものでなかった。
【0102】実施例2〜5は、化学式(a1)および
(a2)で示される化合物、ならびに化学式(a1)で
示される化合物と公知の潤滑剤との混合物を潤滑剤とし
て、潤滑剤層を形成した磁気記録媒体である。潤滑剤と
して、上記化学式(a3)〜(a7)で示される化合
物、またはこれらの化合物と公知の潤滑剤との混合物で
潤滑剤層を形成した磁気記録媒体もまた、同様に優れた
耐蝕性を示す。
【0103】
【発明の効果】本発明のフッ素系カルボン酸ジエステル
は、両末端にカルボキシル基を有するにもかかららず、
その酸性度が低いことを特徴とする。この化合物はま
た、フルオロポリエーテルを分子中に含むため、優れた
潤滑性能を呈する。したがって、本発明の潤滑剤は、様
々な機械、装置もしくは部品の潤滑剤として有用なもの
である。本発明の化合物はまた、界面活性剤としても有
用なものである。
【0104】したがって、本発明の潤滑剤が、非磁性支
持体上に強磁性金属薄膜、保護膜および潤滑剤層がこの
順に設けられて成る磁気記録媒体の潤滑剤層に含まれる
本発明の磁気記録媒体は、高温高湿の環境下に保存して
も錆が発生しにくく、優れた耐蝕性を示す。この磁気記
録媒体は、特にデジタルビデオテープレコーダやHDD
で用いるのに適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1で合成した化学式(a1)で示され
るフッ素系カルボン酸ジエステルの赤外分光分析の結果
を示すグラフである。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C10M 107/38 C10M 107/38 G11B 5/725 G11B 5/725 5/84 5/84 B // C10N 40:18 C10N 40:18 40:36 40:36 Fターム(参考) 4D077 AB03 AB20 AC05 AC10 BA07 DC07Z DC15Z DC26X DC26Y DC26Z DC33X DC33Y DC33Z DC72X DC72Y DC72Z DD04X DD04Y DD29X DD29Y DD29Z DE02X DE02Y DE07X DE07Y DE09X DE09Y DE10X DE10Y DE35X DE35Y 4H006 AA01 AA03 AB60 AB68 AB91 BM10 BM71 BP10 BS10 KC12 KF10 4H104 BD07A CD04A PA16 5D006 AA01 AA02 AA06 5D112 AA07 BC02 BC05 BC10

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式(a): 【化1】 (式中、R、R、R、Rはそれぞれ水素、脂肪
    族アルキル基または脂肪族アルケニル基を示し、R
    よびRのいずれか一方が水素であり、RおよびR
    のいずれか一方が水素であり、mは1から6の整数であ
    り、nは1から5の整数であり、p、qは0から30の
    整数であり、rは1〜12の整数である)で示されるフ
    ッ素系カルボン酸ジエステル。
  2. 【請求項2】 潤滑剤用の請求項1に記載のフッ素系カ
    ルボン酸ジエスエル。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載のフッ素系カルボン酸ジ
    エスエルを少なくとも1種含んでなる潤滑剤。
  4. 【請求項4】 請求項1に記載のフッ素系カルボン酸ジ
    エスエルを少なくとも1種含んでなる界面活性剤。
  5. 【請求項5】 非磁性支持体の上に磁性層として形成さ
    れた強磁性金属膜、磁性層の上に形成された保護膜およ
    び保護膜の上に形成された潤滑剤層を有する磁気記録媒
    体であって、潤滑剤層が請求項1に記載のフッ素系カル
    ボン酸ジエステルを少なくとも1種含む磁気記録媒体。
  6. 【請求項6】 保護膜がダイヤモンドライクカーボンで
    ある請求項5に記載の磁気記録媒体。
  7. 【請求項7】 保護膜が表層部に含窒素プラズマ重合膜
    を有する炭素膜であり、潤滑剤層が炭素膜の含窒素プラ
    ズマ重合膜上に形成されていることを特徴とする請求項
    5または請求項6に記載の磁気記録媒体。
  8. 【請求項8】 請求項5〜7のいずれか1項に記載の磁
    気記録媒体の製造方法であって、保護膜の上に潤滑剤層
    を形成する工程が、炭化水素系溶媒とアルコール系溶媒
    との混合有機溶媒に潤滑剤を溶解して調製した塗布液を
    保護膜の上に塗布する工程を含むことを特徴とする磁気
    記録媒体の製造方法。
  9. 【請求項9】 炭化水素系溶媒とアルコール系溶媒との
    混合割合が重量比で1:9〜9:1の範囲内にあること
    を特徴とする請求項8に記載の磁気記録媒体の製造方
    法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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