JP2004161633A - 含フッ素化合物および潤滑剤、ならびに磁気記録媒体およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は潤滑剤、表面処理剤、離型剤もしくは防錆剤等として有用な新規な含フッ素化合物、ならびにその化合物を使用する潤滑剤、その潤滑剤を使用する磁気記録媒体及びその磁気記録媒体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
機械装置および部品の小型化および高精度化に伴い、それらの摺動部における潤滑形態も流体潤滑から境界潤滑へと移行してきている。とりわけ、VTRおよび磁気ディスク等の記録再生システム等においては、記録密度の向上を目的とした強磁性金属薄膜型磁気記録媒体の採用により、磁気テープもしくは磁気ディスクと磁気ヘッドとの摺動には高精度の潤滑が必要となってきた。例えば、蒸着テープやハードディスクでは耐久性と信頼性を確保しながら磁気記録媒体と磁気ヘッドとのスペーシングロスを極力小さくして高出力化を図るために、磁性層表面の潤滑剤層はわずか数ナノメートルの厚さとなるように形成される。したがって、この潤滑剤層を形成する材料として、より優れた潤滑性を有する有機化合物の開発が重要な課題となっている。
【0003】
金属薄膜型磁気記録媒体用の潤滑剤として、例えば下記の式y1:
【化12】
で示される含フッ素長鎖カルボン酸エステル(特開昭62−46431号公報:特許文献1参照)あるいは下記の式(z1):
【化13】
で示される含フッ素ジカルボン酸のモノエステルを使用することが提案されている(特開昭61−107529号公報:特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開昭62−46431号公報
【特許文献2】
特開昭61−107529号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の式(y1)および式(z1)で示される化合物はいずれも、その潤滑性が磁気記録媒体を繰り返し使用している間に低下する傾向にあった。このことは、磁気記録媒体の耐久性の低下を招く一因となっていた。
【0006】
また、磁気記録媒体の潤滑剤層の形成に際しては、次のような課題がある。前述のように、磁気記録媒体の潤滑剤層は、数nm程度の厚さとなるように形成される。これは、潤滑剤層の厚さが大きい場合には、スペーシングロスが大きくなって出力が低下するという不都合に加えて、磁気記録媒体と摺動部材が潤滑材を介して貼り付きやすくなり、その結果、磁気記録媒体と摺動部材との間の摩擦係数が大きくなるという不都合があることによる。即ち、磁気記録媒体の潤滑剤層は、その厚さが大きすぎる場合には、磁気記録媒体全体の潤滑性能(即ち、摺動部材との間の摩擦)にも悪影響を及ぼす。そのため、潤滑剤層の形成に際しては、厚さに関して厳密な制御が要求される。このことは、磁気記録媒体の製造効率が低下する一因である。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、幅広い環境条件下において優れた潤滑性を維持すること、ならびに、磁気記録媒体の潤滑剤層を形成するときの厚さ制御の厳密さを緩和することが可能である潤滑剤を構成し得る化合物、その化合物を含む潤滑剤、ならびにその潤滑剤を用いた磁気記録媒体およびその製造方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の化合物は、特定の構造を有する含フッ素化合物である。その構造により、例えば、この化合物を含む潤滑剤を用いて磁気記録媒体の潤滑剤層を形成した場合、優れた潤滑性、ならびに優れた走行性および耐久性を呈する磁気記録媒体であって、潤滑剤層の厚さによる潤滑性能の変動が小さい磁気記録媒体を得ることができる。
【0009】
本発明は、一般式(a):
【化14】
(式中、R1はフルオロアルキル基、またはフルオロエーテル基もしくはフルオロオロポリポリエーテル基を示し、rは1〜20の整数である。)
で示される含フッ素化合物を提供することを第一の要旨とする。
【0010】
上記一般式から明らかなとおり、本発明の含フッ素化合物は、第三アミンの一種とみなせるものであり、一の分子内に、3個のフルオロアルキル末端基、またはフルオロエーテル基もしくはフルオロポリエーテル基を有する構造である。さらに、この化合物は3個のエステル結合を有する。この構造により、本発明の含フッ素化合物が潤滑剤、特に磁気記録媒体用の潤滑剤に含まれる場合、その潤滑剤は優れた潤滑特性を呈する。従って、本発明はまた、上記本発明の含フッ素化合物を潤滑剤用の化合物として提供する。
【0011】
一般式(a)で示される含フッ素化合物において、R1は、下記の式(b):
【化15】
(式中、R2はフルオロアルキル基であり、mは1〜6の整数であり、nは1〜30の整数であり、cは1〜12の整数である。)
で示されるフルオロポリエーテル基であることが好ましい。一般式(b)で示される基は、2つのフルオロアルキレンオキサイド単位−(OCmF2m)−および−O(CF2)m−1−から成るフルオロアルキレンオキサイド鎖、ならびにフルオロアルキル基を有するフルオロポリエーテル基である。
【0012】
さらに、本発明は、上記本発明の含フッ素化合物を少なくとも1種含んで成る潤滑剤を提供することを第二の要旨とする。本発明の潤滑剤は、特に磁気記録媒体の潤滑剤層を構成するのに適している。
【0013】
本発明の潤滑剤は、含フッ素アルキルジカルボン酸のモノエステル化合物を少なくとも1種、更に含んでいてもよい。含フッ素アルキルジカルボン酸のモノエステル化合物もまた潤滑剤として作用するものであり、これを本発明の含フッ素化合物とともに用いることで、より優れた潤滑性能を潤滑剤に付与することができる。
【0014】
本発明の潤滑剤は、少なくとも1種のパーフルオロポリエーテル系化合物を更に含んでいてもよい。パーフルオロポリエーテル系化合物もまた潤滑剤として作用するものであり、これを本発明の含フッ素化合物とともに用いることで、より優れた潤滑性能を潤滑剤に付与することができる。
【0015】
また、本発明の潤滑剤は、少なくとも1種の有機リン系化合物を更に含んでいてもよい。有機リン系化合物は、防錆剤および/または極圧剤として作用するとともに、例えば、この潤滑剤が磁気記録媒体の潤滑剤層に含有される場合には、潤滑剤層と炭素膜(保護膜)との間の付着強度を向上させる役割をも果たすので、磁気記録媒体の潤滑性能ならびに耐久性をより向上させることが可能となる。
【0016】
本発明では、一般式(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)、(j)および(k):
【0017】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
(上記各一般式(c)〜(k)において、nは8〜20の整数である。)
で示される有機リン系化合物から成る群から選択される有機リン系化合物を用いることが好ましい。
【0018】
本発明は、非磁性支持体の上に形成された強磁性金属薄膜、強磁性金属薄膜の上に形成された炭素膜、および炭素膜の上に形成された潤滑剤層を有する磁気記録媒体であって、潤滑剤層が上記潤滑剤を含む磁気記録媒体を提供することを第三の要旨とする。
【0019】
本発明の磁気記録媒体において、一般式(a)で示される本発明の含フッ素化合物が奏する作用は次のとおりであると考えられるが、これは本発明を何ら拘束するものではない。一般式(a)の分子中のフルオロアルキル基またはフルオロエーテル基もしくはフルオロポリエーテル基は炭素膜の表面、磁気ヘッドの表面、およびテープ走行系の金属部材の表面に露出してその表面の低エネルギー化に寄与し、非粘着面を形成する。また、R1がフルオロエーテル基またはフルオロポリエーテル基である場合には、当該基に含まれるエーテル結合は、剛直な含フッ素炭化水素末端基に柔軟性を与えて良好な潤滑性を与える役割を果たし、磁気記録媒体の潤滑剤層が非粘着性と潤滑性とを併せ持つことを可能にする。
【0020】
更に、一般式(a)の分子中の窒素原子は、潤滑剤層を炭素膜の表面に強く付着させ、また、磁気ヘッドの表面およびテープ走行系の金属部材の表面に強く付着する。そして、分子を構成するこれらの各部分の相乗効果により、本発明の含フッ素化合物を潤滑剤層に含有する本発明の磁気記録媒体は、常温環境から高温高湿度環境までの幅広い環境下において潤滑性が低下しない。さらに、本発明の磁気記録媒体は、本発明の含フッ素化合物によって良好な走行性が確保されるために、磁気記録媒体が磁気ヘッドおよびポスト等を擦って走行している間、表面の潤滑剤によって磁気記録媒体が磁気ヘッド等に貼り付くことが生じにくい。したがって、本発明の磁気記録媒体は、潤滑剤層を厚く形成しても、良好な潤滑特性を示す。
【0021】
本発明は、上記本発明の磁気記録媒体の製造方法を提供することを第四の要旨とする。本発明の磁気記録媒体の製造方法は、その潤滑剤層の形成工程に特徴を有し、それ以外の工程は従来から磁気記録媒体の製造に用いられている工程であってよい。本発明の製造方法における潤滑剤層の形成工程は、炭化水素系溶媒とアルコール系溶媒との混合有機溶媒またはフッ素系溶剤に、潤滑剤層を構成する化合物(即ち、潤滑剤)を溶解して調製した塗布液を炭素膜上に塗布する工程を含むことを特徴とするものである。炭化水素系溶媒とアルコール系溶媒とを組み合わせた混合溶媒を使用することにより、塗布ムラが極めて少ない均一な薄い潤滑剤層が形成され得る。フッ素系溶剤は、本発明の潤滑剤を良好に溶解さるので、これを使用することにより、炭素膜表面における潤滑剤の被覆率を向上させることができる。したがって、本発明の磁気記録媒体の製造方法によれば、優れた潤滑性能を有する実用信頼性の高い磁気記録媒体を得ることが可能である。
【0022】
上記本発明の磁気記録媒体の製造方法において、炭化水素系溶媒とアルコール系溶媒との混合割合は重量比で1:9〜9:1の範囲にあることが好ましい。この範囲で両者を混合することは、塗布ムラを極力少なくすることを可能とし、またコスト面でも有利である。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の含フッ素化合物は、一般式(a):
【化25】
で示されるものである。
【0024】
一般式(a)において、R1はフルオロアルキル基、またはフルオロエーテル基もしくはフルオロオロポリポリエーテル基である。ここで、フルオロエーテル基とはエーテル結合を1つ含むものをいい、フルオロポリエーテル基とはエーテル結合を2以上含むものをいう。
【0025】
R1がフルオロアルキル基である場合、その炭素数は1〜30、好ましくは1〜8である。フルオロアルキル基は、RfCvH2v−で示される基(Rfは炭素数が1〜30、好ましくは1〜10であるパーフルオロアルキル基を示し、vは1〜10の整数である)、またはパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0026】
R1が、フルオロエーテル基もしくはフルオロポリエーテル基である場合、その分子量は約200〜約6000であることが好ましく、約300〜約4000であることがより好ましい。分子量が200未満である場合もしくは6000を越える場合には潤滑性及び保存信頼性が低下する場合がある。また、フルオロエーテル基もしくはフルオロポリエーテル基は、パーフルオロエーテル基もしくはパーフルオロポリエーテル基であることが好ましい。
【0027】
rは1〜20の整数であり、好ましくは1〜8の整数である。
【0028】
一般式(a)で示される化合物において、R1は、下記の式(b):
【化26】
で示されるフルオロポリエーテル基であることが好ましい。
【0029】
一般式(b)において、R2はフルオロアルキル基であり、好ましくはパーフルオロアルキル基である。R2の炭素数は1〜30、好ましくは1〜8である。mは1〜6の整数である。nは1〜30の整数であり、好ましくは1〜12の整数である。cは1〜12の整数であり、好ましくは2〜12の整数であり、さらに好ましくは1〜6の整数である。m、nおよびcがこれらの範囲外である場合、化合物の潤滑性および保存信頼性が低下することがある。
【0030】
本発明の含フッ素化合物は、式N[(CH2)rCOOH]3で示されるニトリロトリカルボン酸と、式R1OHで示される、所定量の含フッ素アルコールとを反応させることにより生成される。R1が式(b)で示される基である含フッ素化合物は、式R1OHで示される合フッ素アルコールとして、下記の式(b’):
【化27】
で示されるアルコールを使用することによって製造される。式(b’)において、R2、m、nおよびcは、式(b)に関連して説明したとおりである。
【0031】
反応は、溶媒の存在下で触媒を加え加熱撹拌することにより有利に進行する。加熱は60〜120℃の範囲内で実施することが好ましい。より好ましい加熱温度の範囲は80〜100℃である。加熱温度が60℃未満であると未反応物が残りやすく、120℃を越えると副生成物が生成される傾向にある。
【0032】
溶媒として、例えば、オクタン(n−C8H18)またはヘプタン(n−C7H16)を使用できる。触媒として、例えば、パラトルエンスルホン酸、リン酸、硫酸を使用できる。ニトリロトリカルボン酸と、式R1OHで示される含フッ素アルコールの混合モル比は、1:3とすることが好ましい。
【0033】
本発明の含フッ素化合物の生成に使用できるニトリロトリカルボン酸としては、ニトリロトリ酢酸、ニトリロトリプロピオン酸、ニトリロトリ酪酸、ニトリロトリ吉草酸、ニトリロトリピバル酸、ニトリロトリラウリン酸等がある。
【0034】
含フッ素アルコールとしては、例えば、パーフルオロヘキシルエタノール、およびパーフルオロオクチルエタノールがある。また、上記一般式(b’)で示されるアルコールとしては、パーフルオロ−3,7,11−トリオキサヘキサデシルメタノール{C5F11(OC3F6)2O(CF2)2CH2OH}、パーフルオロ−2,5,8,11,14,17,20−へプタオキサヘプタコシルメタノール{C7F15(OC2F4)6OCF2CH2OH}、パーフルオロ−4,9,14−トリオキサテトラコシルメタノール{C10F21(OC4F8)2O(CF2)3CH2OH}、パーフルオロ−3,7,11−トリオキサヘキサデシルエタノール{C5F11(OC3F6)2O(CF2)2C2H4OH}、パーフルオロ−2,5,8,11,14,17,20−へプタオキサヘプタコシルエタノール{C7F15(OC2F4)6OCF2C2H4OH}、パーフルオロ−4,9,14−トリオキサテトラコシルエタノール{C10F21(OC4F8)2O(CF2)3C2H4OH}、パーフルオロ−3,7,11−トリオキサヘキサデシルプロパノール{C5F11(OC3F6)2O(CF2)2C3H6OH}、パーフルオロ−2,5,8,11,14,17,20−へプタオキサヘプタコシルプロパノール{C7F15(OC2F4)6OCF2C3H6OH}、パーフルオロ−4,9,14−トリオキサテトラコシルプロパノール{C10F21(OC4F8)2O(CF2)3C3H6OH}、パーフルオロ−3,7,11−トリオキサヘキサデシルブタノール{C5F11(OC3F6)2O(CF2)2C4H8OH}、パーフルオロ−2,5,8,11,14,17,20−へプタオキサヘプタコシルブタノール{C7F15(OC2F4)6OCF2C4H8OH}、およびパーフルオロ−4,9,14−トリオキサテトラコシルブタノール{C10F21(OC4F8)2O(CF2)3C4H8OH}等がある。
【0035】
反応終了後、減圧蒸留により溶媒を除去し、さらに未反応の反応物を有機溶媒で抽出して除去することにより、目的化合物である含フッ素化合物を単離することができる。この化合物は、赤外分光分析(IR)、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)および有機質量分析(FD−MS)により同定することが可能である。
【0036】
このようにして得られる本発明の含フッ素化合物は潤滑剤用の化合物として有用である。そして本発明の含フッ素化合物を少なくとも1種含んで成る本発明の潤滑剤は、例えば磁気記録媒体の潤滑剤層を構成するのに適している。本発明の潤滑剤は、本発明の含フッ素化合物を1種のみ、あるいは2種以上含んでもよい。
【0037】
本発明の潤滑剤は、本発明の含フッ素化合物のみで構成されてもよいが、それ以外に他の潤滑剤、防錆剤もしくは極圧剤等が含まれていてもよい。その場合、本発明の含フッ素化合物の占める割合は、潤滑剤の全量に対して40重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることがより好ましい。本発明の含フッ素化合物の割合が40重量%未満であると、例えばこの潤滑剤組成物で磁気記録媒体の潤滑剤層を形成した場合、良好な潤滑特性を磁気記録媒体に付与することができない場合がある。
【0038】
前記他の潤滑剤として含フッ素アルキルジカルボン酸のモノエステル潤滑剤を用いると、潤滑性能がより一層向上する。したがって、例えば、そのような潤滑剤を含む潤滑剤組成物で磁気記録媒体の潤滑剤層を形成した場合、磁気記録媒体の耐久性が改善される。
【0039】
本発明で使用する含フッ素アルキルジカルボン酸のモノエステル化合物の分子量は、約500〜約2,000であることが好ましい。また、含フッ素アルキルジカルボン酸のモノエステル化合物が潤滑剤組成物の全量に占める割合は60重量%未満であることが好ましい。
【0040】
含フッ素アルキルジカルボン酸のモノエステルは、具体的には、下記の一般式(z):
【化28】
(式中、R3はアルキル基またはアルケニル基を示し、R4はフルオロアルキル基またはフルオロエーテル基もしくはフルオロポリエーテル基を示し、xは0または1であり、yは0から20の整数である)
で示される化合物であることが好ましい。この一般式(z)で示される化合物には、例えば、従来の技術の欄に示した化学式(z1)で示される化合物が含まれる。
【0041】
前記他の潤滑剤としてパーフルオロポリエーテル系潤滑剤を用いる場合もまた、潤滑性能がより一層向上する。例えば、この化合物を含む潤滑剤組成物で記録媒体の潤滑剤層を形成した場合、磁気記録媒体の耐久性が改善される。パーフルオロポリエーテル系化合物は、市販されており、例えば、Ausimont社製の商品名Fomblin ZタイプもしくはFomblin Yタイプ、Du−Pont社製の商品名Krytoxタイプ、またはダイキン工業社製の商品名Demnumタイプがある。これら市販のパーフルオロポリエーテルには無極性タイプと極性基を有するタイプがあり、潤滑剤としては水酸基、カルボキシル基、エステル、ピペロニル基等の極性基を有するタイプが好ましい。極性基を有するパーフルオロポリエーテル系化合物としては、Ausimont社製の商品名Fomblin Z Dol(極性基として水酸基を有する)、Fomblin Z Diac(極性基としてカルボキシル基を有する)、Fomblin AM2001(極性基としてピペロニル基を有する)があり、またはダイキン工業社製の商品名Demnum SA(極性基として水酸基を有する)、DemnumSH(極性基としてカルボキシル基を有する)がある。市販のパーフルオロポリエーテル系化合物の分子量は、一般に約1,000〜約20,000である。本発明では約1,000〜約4,000の分子量のものを使用することが好ましい。
【0042】
なお、これらのパーフルオロポリエーテル系化合物は炭化水素系溶媒およびアルコール系溶媒に溶解しにくい。そのため、これらのパーフルオロポリエーテル系化合物を含んで成る潤滑剤を用いて、例えば、本発明の磁気記録媒体を本発明の製造方法により製造する場合、パーフルオロポリエーテル系化合物が潤滑剤の全量に占める割合は60重量%未満であることが好ましい。
【0043】
本発明の潤滑剤は、有機リン系化合物を更に含んでいてもよい。その場合、本発明の潤滑剤は、上記本発明の含フッ素化合物および有機リン系化合物を含む2成分系、またはそれらに加えて他の潤滑剤(例えば上述の含フッ素アルキルジカルボン酸のモノエステル化合物もしくはパーフルオロポリエーテル系化合物)を含む3成分系であってよい。本発明では、上記一般式(c)〜(k)で示される有機リン系化合物から成る群から選ばれる少なくとも1種の有機リン系化合物を使用することが好ましい。上記一般式(c)〜(k)で示される有機リン系化合物において、炭素数nは8〜20であることが好ましい。炭素数nが21以上であると、後述する炭化水素系溶媒およびアルコール系溶媒等の汎用溶媒への溶解性が低下する傾向にある。汎用溶媒への溶解性の低下は、例えば、この潤滑剤で磁気記録媒体の潤滑剤層を構成する場合、本発明の製造方法による磁気記録媒体の製造に支障を来すことがある。また、炭素数nが7以下であると、潤滑剤の潤滑性が低下する場合がある。
【0044】
潤滑剤の全量中、有機リン系化合物が占める割合は、本発明の含フッ素化合物の混合割合が40重量%未満とならない割合、すなわち、60重量%未満であることが好ましく、40重量%未満であることがより好ましい。また、潤滑剤を、本発明の含フッ素化合物、他の潤滑剤および有機リン系化合物の3成分で構成する場合も、本発明の含フッ素化合物の割合が潤滑剤の全量に対して40重量%未満とならないように、他の潤滑剤および有機リン系化合物の含有量を適宜決定する必要がある。同様のことは、潤滑剤が更に他の成分を含む場合にも当て嵌まる。
【0045】
上述した本発明の潤滑剤は、磁気記録媒体の潤滑剤層を構成するのに適している。そこで以下に本発明の磁気記録をその製造方法とともに説明する。
【0046】
本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体の上に形成された強磁性金属薄膜、強磁性金属薄膜の上に形成された炭素膜、および炭素膜の上に形成された潤滑剤層を有する磁気記録媒体であって、潤滑剤層が上記潤滑剤のいずれか一を含有して成るものである。すなわち、潤滑剤層は、一般式(a)で示される本発明の含フッ素化合物を少なくとも1種含んで成る潤滑剤、またはこの潤滑剤に本発明の含フッ素化合物以外の他の化合物として、含フッ素アルキルジカルボン酸のモノエステル化合物、ポリエーテル系化合物、および有機リン系化合物から選択される少なくとも1種の化合物が更に含まれる潤滑剤を含有する。いずれの潤滑剤を用いる場合も、潤滑剤層中に含まれる本発明の含フッ素化合物の量は、潤滑剤層の表面1m2につき0.05〜100mgであることが好ましく、0.1〜50mgであることがより好ましい。潤滑剤層にこのような少量の含フッ素化合物を均一に存在させるために、本発明の磁気記録媒体の潤滑剤層は次の方法で形成することが望ましい。
【0047】
潤滑剤層は、常套の材料および手段を用いて非磁性支持体の上に強磁性金属薄膜および炭素膜をこの順に形成した後、炭素膜上に形成する。潤滑剤層の形成工程は、炭化水素系溶媒とアルコール系溶媒との混合溶媒またはフッ素系溶剤に潤滑剤、すなわち本発明の含フッ素化合物および適宜混合されるその他の潤滑剤および/または有機リン系化合物等を溶解して調製した塗布液を炭素膜上に塗布する工程、ならびに混合溶媒を乾燥させる工程を含む。最終的に混合溶媒またはフッ素系溶剤が蒸発することにより、炭素上には溶媒に溶解した潤滑剤が残って潤滑剤層を形成する。従って、塗布液を厚く塗布しても、溶媒の蒸発により炭素膜上には均一で非常に薄い潤滑剤層、すなわち少量の潤滑剤が保護膜である炭素膜を均一に被覆した潤滑剤層が形成される。
【0048】
本発明で使用できる炭化水素系溶媒は、例えば、トルエン、ヘキサン、へプタンおよびオクタン等であり、本発明で使用できるアルコール系溶媒は、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールおよびイソプロピルアルコール等の低級アルコールである。混合溶媒は、具体的には、トルエンとイソプロピルアルコールの混合溶媒、ヘキサンとイソプロピルアルコールの混合溶媒であることが好ましい。アルコール系溶媒の割合が大きすぎると塗布ムラが生じやすく、一方、炭化水素系溶媒の割合が大きすぎると不経済であるため、両者は、混合割合が重量比で1:9〜9:1の範囲、好ましくは3:7〜7:3の範囲となるように混合して使用することが好ましい。この混合有機溶媒を用いることにより、炭素膜を均一に被覆する塗布ムラのない均一な厚さの潤滑剤層が形成され、その結果、潤滑性能に優れた実用信頼性の高い磁気記録媒体が得られる。本発明で使用できるフッ素系溶剤は、具体的には、ハイドロフルオロエーテル、パーフルオロカーボン、フロリナート、ガルデンである。本発明の含フッ素化合物は、フッ素を多く含むものであるため、これらのフッ素系溶剤に溶解しやすい。したがって、本発明の潤滑剤をフッ素系溶剤に溶解して調製した塗布液によれば、炭素膜を均一に被覆する潤滑剤層を形成できる。
【0049】
上記混合溶媒を用いて潤滑剤層を形成する方法としては、バーコーティング法、グラビアコーティング法、リバースコーティング法、ダイコーティング法、ディッピング法およびスピンコート法等の湿式塗布法、ならびに有機蒸着法がある。本発明の製造方法においては、いずれの方法を採用してもよい。
【0050】
塗布液を塗布した後、乾燥処理して有機溶媒を蒸発させると、炭素膜上に潤滑剤層が形成される。乾燥処理は加熱することにより、もしくは自然乾燥によって実施することができる。
【0051】
先に述べたとおり、本発明の磁気記録媒体は、潤滑剤層以外の層に関しては、常套の材料および手段を採用して形成することができる。
【0052】
例えば、非磁性支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、芳香族ポリアミドもしくは芳香族ポリイミドから成るフィルム、アルミ基板またはガラス基板等を使用することができる。実用信頼性と良好なRF出力値とを両立するために、非磁性支持体上の表面、すなわち強磁性金属膜と接する面には直径20〜300nm、高さ5〜40nmの突起形成処理が施されていることが望ましい。
【0053】
本発明の磁気記録媒体を構成する磁性層は、イオンプレーティング、スパッタリング、もしくは電子ビーム等の方法で形成される強磁性金属薄膜である。強磁性金属薄膜は、Fe、CoおよびNi、ならびにCo−NiおよびCo−Cr等の合金から選択される1または複数の材料で形成される。強磁性金属薄膜は酸素を含んでいてよく、酸素はこれらの金属または合金の酸化物の形態で含まれていてよい。磁性層の厚さは一般的に50nm〜300nmである。
【0054】
本発明の磁気記録媒体を構成する保護膜は、スパッタリングもしくはプラズマCVD等の方法で得られるアモルファス状、グラファイト状もしくはダイヤモンド状の炭素からなるカーボン薄膜、あるいはそれらの炭素を混合および/または積層して形成したカーボン薄膜を用いて形成することができる。本発明では特にダイヤモンド状の炭素、すなわちダイヤモンドライクカーボンで保護膜を形成することが好ましい。ダイヤモンドライクカーボンは適度な硬度を有するため、走行系部材を損傷することなく磁気記録媒体の損傷を有効に抑制することから、最も好ましい材料である。なお、いずれの材料を用いる場合も、炭素膜の厚さは5〜50nmであることが好ましい。
【0055】
以上、本発明の含フッ素化合物を含む潤滑剤を磁気記録媒体の潤滑剤層に含有させることに関して説明したが、本発明の含フッ素化合物はそれ以外にも、例えば精密機械もしくは精密部品等の潤滑剤、表面処理剤(具体的には、撥水剤もしくは撥油剤)、離型剤もしくは防錆剤の組成成分として使用することができる。
【0056】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
第1の実施例は、含フッ素化合物の生成に関するものである。本実施例で生成された化合物は化学式(a1)で示される。
【0058】
【化29】
【0059】
化学式(a1)で示される化合物を一般式(a)を参照しながら説明すると、R1は、R2がパーフルオロペンチル基であり、mおよびnがそれぞれ3および2であり、cが3である、一般式(b)で表される基である。rは2である。
【0060】
次に、化学式(al)で示される化合物の製造方法を説明する。
出発原料は、下記の化学式(x1):
【化30】
示されるニトリロトリカルボン酸23.3g(0.10モル)と下記の化学式(b’1):
【化31】
で示される含フッ素アルコール77.6g(0.10モル)であった。
【0061】
上記原料を、触媒であるパラトルエンスルホン酸0.25gと溶媒であるヘプタン(n−C7H16)500mlとともに、撹拌翼を備えた1リットルのフラスコに仕込み、100℃にて24時間攪拌して反応させた。反応終了後、ヘプタンを留去し、反応混合物をベンゼンに溶解し、−10℃に冷却して未反応のニトリロトリカルボン酸を除去した。さらに、反応混合物をメタノールに溶解して同様の処理を実施し、未反応のアルコールとニトリロトリカルボン酸を除去した。その結果、白色半固体250.7gを得た。この白色半固体はIR、GPCおよびFD−MSにより、出発原料および副生成物を含まない化学式(a1)で示される化合物であることが確認された。この化合物の、赤外スペクトルを図1に示すとともに、IR吸収スペクトル、ならびにGPCおよびFD−MSから判った事項を以下にまとめる。
【0062】
IR;アルコールの3,330cm−1の吸収ピーク消滅、エステルの1,740cm−1の吸収ピーク出現。
GPC;含フッ素アルコール、ニトリロトリカルボン酸検出されず。
FD−MS;m/e 2,507に主ピーク有り。
【0063】
本実施例は、本発明の含フッ素化合物のうち一の化合物のみについて製造した例を示すものであるが、これと異なる化合物も、出発原料を適宜変更することにより生成することができる。
【0064】
例えば、上記実施例1において、化学式(b’1)で示されるアルコールに代えて化学式(b’2)、(b’3)、(b’4)、(b’5)もしくは(b’6)で示されるアルコールを用いることにより、それぞれ化学式(a2)、(a3)、(a4)、(a5)もしくは(a6)で示される化合物を得ることができる。
【0065】
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
【化40】
【化41】
【0066】
また、実施例1において、化学式(b1)で示されるアルコールに代えて、例えば、フルオロヘキシルメタノールまたはフルオロオクチルアルコールを用いることにより、同様にそれぞれ化学式(a7)もしくは(a8)で示される化合物を得ることができる。
【化42】
【化43】
【0067】
また、実施例1において、化学式(x1)で示されるニトリロトリカルボン酸に代えて、例えば、下記の化学式(x2)または(x3)で示されるニトリロトリカルボン酸を用いることにより、それぞれ化学式(a9)または(a10)で示される化合物を得ることができる。
【0068】
【化44】
【化45】
【化46】
【化47】
【0069】
(実施例2)
実施例2〜7において、本発明の磁気記録媒体(磁気テープ)を製造した例を説明する。
本実施例では、非磁性支持体として、厚みが6.3μmのポリエステルフィルムを使用した。このポリエステルフィルムは、表面に、フィルム内に添加されたシリカ微粒子により付与された勾配のゆるやかな粒状突起(平均高さ7nm、直径1μm)を100μm2当り数個有し、かつ重合触媒残渣の微粒子に起因する比較的大きな突起の数が極めて少ないものであった。さらに、このポリエステルフィルムの表面には、直径15nmのシリカコロイド粒子を核とし紫外線硬化エポキシ樹脂を結合剤とする急峻な山状突起が、1mm2当り1×107個設けられていた。
【0070】
このポリエステルフィルム上に、磁性層である強磁性金属薄膜(膜厚100nm)を形成した。強磁性金属薄膜は、Co−Ni(Ni含有量20モル%)を蒸着材料とし、連続真空斜め蒸着法により形成した。蒸着は、微量の酸素の存在下で実施した。強磁性金属薄膜中の酸素含有量は原子分率で5%であった。
【0071】
次に、強磁性金属薄膜の上に、プラズマCVD法によって、ダイヤモンドライクカーボンから成る厚さ5nmの炭素膜を形成した。続いて、上記化学式(a1)で示される含フッ素化合物を、イソプロピルアルコールとトルエンの混合溶媒(重量比1:1)に溶解して塗布液を調製した。調製した塗布液を、リバースロールコータを用いて、炭素膜の上に湿式塗布法で塗布した後、乾燥処理して溶媒を蒸発させた。最終的に、炭素膜上には潤滑剤である含フッ素化合物(a1)が表面1m2当り10mg存在する潤滑剤層が形成された。
【0072】
これを所定幅に裁断して磁気テープとし、23℃、70%RHの環境下、および40℃、80%RHの環境下でそれぞれ市販の8mmVTRを用いて繰り返し走行させた時の出力特性を測定し、RF出力が初期値に対し2dB低下するか、あるいは出力変動が発生しはじめるまでの走行回数を測定した。
【0073】
(実施例3)
化学式(a1)で示される化合物に代えて、化学式(a2)で示される化合物を用いたこと以外は実施例2と同様にして磁気テープを作製し、同様の試験を行った。
【0074】
(実施例4)
化学式(a1)で示される化合物に代えて、化学式(a1)で示される化合物と公知の潤滑剤C17H33COOC2H4C8F17とを重量比で1:1の割合で混合した潤滑剤組成物を用いたこと以外は実施例2と同様にして、炭素膜上に潤滑剤組成物が1m2あたり10mg存在する潤滑剤層が形成された磁気テープを作製し、同様の試験を行った。
【0075】
(実施例5)
化学式(a1)で示される化合物に代えて、化学式(a1)で示される化合物と化学式(z1)で示される公知の潤滑剤とを重量比で1:1の割合で混合した潤滑剤組成物を用いたこと以外は実施例2と同様にして、炭素膜上に潤滑剤組成物が1m2あたり10mg存在する潤滑剤層が形成された磁気テープを作製し、同様の試験を行った。
【0076】
(実施例6)
化学式(a1)で示される化合物に代えて、化学式(a1)で示される化合物と市販の潤滑剤であるパーフルオロポリエーテル(商品名 Fomblin ZDOL,平均分子量2000:Ausimont社製)とを重量比で3:1の割合で混合した潤滑剤組成物を用いたこと以外は実施例2と同様にして、炭素膜上に潤滑剤組成物が1m2あたり10mg存在する潤滑剤層が形成された磁気テープを作製し、同様の試験を行った。
【0077】
(実施例7)
化学式(a1)で示される化合物に代えて、化学式(a1)で示される化合物と有機リン系化合物(C12H25S)3Pとを重量比で2:1の割合で混合した潤滑剤組成物を用いたこと以外は実施例2と同様にして、炭素膜上に潤滑剤組成物が1m2あたり10mg存在する潤滑剤層が形成された磁気テープを作製し、同様の試験を行った。
【0078】
以上の実施例2〜7の試験結果を(表1)に示す。表中の比較例1、2は、潤滑剤としてそれぞれ、従来の技術の欄に記載の化学式(y1)、(z1)で示される化合物を使用して、実施例2と同様にして作製した磁気テープである。
【0079】
【表1】
【0080】
(表1)より、本発明の含フッ素化合物を含む潤滑剤層を設けた磁気テープ試料はすべて、常温下および高温高湿度下における潤滑性に優れていることが判る。一方、従来の潤滑剤のみから成る潤滑剤層を設けた磁気テープの潤滑性は、常温下および高温高湿度下において、明らかに低下することが判る。
【0081】
なお、実施例2〜7は、化学式(a1)もしくは(a2)で示される化合物を使用して作製した磁気テープ、および化学式(a1)と公知の潤滑剤もしくは有機リン系化合物との混合物を使用して作製した磁気テープに関するものであるが、化学式(a3)、(a4)、(a5)、(a6)、(a7)、(a8)、(a9)および(a10)で示される化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む潤滑剤、ならびにこれらの化合物と公知の潤滑剤もしくは有機リン系化合物とを含んで成る潤滑剤組成物を使用して作製した磁気テープについても同様の効果が認められた。
【0082】
さらに、下記の化学式(a11)もしくは(a12)で示される化合物から成る潤滑剤、およびこれらの化合物と公知の潤滑剤もしくは有機リン系化合物とを含んで成る潤滑剤組成物を使用して作製した磁気テープについても、同様の効果が認められた。
【0083】
【化48】
【化49】
【0084】
(実施例8)
実施例8〜13において、本発明の他の磁気記録媒体(磁気ディスク)を製造した例を説明する。
本実施例では、非磁性支持体として、直径95mm、厚さ1.2mmのAl合金板の表面に厚さ25μmの非磁性Ni−P合金メッキを施し、テクスチャ加工により平均粗さ5nm、最大高さ30nmの突起を形成したものを用いた。この支持体の非磁性Ni−P合金メッキの上にスパッタリング法によって、厚さ130nmのCr下地層と厚さ60nmのCo−Niの強磁性金属薄膜を形成した。更にその強磁性金属薄膜の上に、プラズマCVD法によって、ダイヤモンドライクカーボンから成る厚さ5nmの炭素膜を形成した。次に、化学式(a1)で示される含フッ素化合物をイソプロピルアルコールとトルエンの混合溶媒(重量比1:1)に溶解した塗布液を調製した。調製した塗布液を、湿式塗布法(ディッピング法)で塗布した後、溶媒を乾燥させて、磁気ディスクを得た。最終的に、炭素膜上には潤滑剤である含フッ素化合物(a1)が表面1m2当り10mg存在する潤滑剤層が形成された。
【0085】
この磁気ディスクに、23℃、70%RHの環境下、および40℃、80%RHの環境下でCSS(コンタクト・スタート・ストップ)試験を実施し、摩擦係数が1.0を超えた時点のCSS回数またはヘッドクラッシュ発生時のCSS回数で耐久性の判定を行った。
【0086】
(実施例9)
化学式(a1)で示される化合物に代えて、化学式(a2)で示される化合物を使用したこと以外は実施例8と同様にして、磁気ディスクを作製し、同様の試験を行った。
【0087】
(実施例10)
化学式(a1)で示される化合物に代えて、実施例4で使用したものと同じ潤滑剤組成物、すなわち化学式(a1)で示される化合物と公知の潤滑剤C17H33COOC2H4C8F17とを重量比で1:1の割合で混合した潤滑剤組成物を用いたこと以外は実施例8と同様にして、炭素膜上に潤滑剤組成物が1m2あたり10mg存在する潤滑剤層が形成された磁気ディスクを作製し、同様の試験を行った。
【0088】
(実施例11)
化学式(a1)で示される化合物に代えて、実施例5で使用したものと同じ潤滑剤組成物、すなわち化学式(a1)で示される化合物と化学式(z1)で示される潤滑剤とを重量比で1:1の割合で混合した潤滑剤組成物を用いたこと以外は実施例8と同様にして、炭素膜上に潤滑剤組成物が1m2あたり10mg存在する潤滑剤層が形成された磁気ディスクを作製し、同様の試験を行った。
【0089】
(実施例12)
化学式(a1)で示される化合物に代えて、実施例6で使用したものと同じ潤滑剤組成物、すなわち化学式(a1)で示される化合物と市販の潤滑剤であるパーフルオロポリエーテル(商品名 Fomblin Z DOL,平均分子量2000:Ausimont社製)とを重量比で3:1の割合で混合した潤滑剤組成物を用いたこと以外は実施例8と同様にして、炭素膜上に潤滑剤組成物が1m2あたり10mg存在する潤滑剤層が形成された磁気ディスクを作製し、同様の試験を行った。
【0090】
(実施例13)
化学式(a1)で示される化合物に代えて、実施例7で使用したものと同じ潤滑剤組成物、すなわち化学式(a1)で示される化合物と有機リン系化合物(C12H25S)3Pとを重量比で2:1の割合で混合した潤滑剤組成物を用いたこと以外は実施例8と同様にして、炭素膜上に潤滑剤組成物が1m2あたり10mg存在する潤滑剤層が形成された磁気ディスクを作製し、同様の試験を行った。
【0091】
以上の実施例8〜13の試験結果を(表2)に示す。表中の比較例3、4の磁気記録媒体は、潤滑剤としてそれぞれ化学式(y1)、(z1)で示される化合物を使用して、実施例8と同様にして作製した磁気ディスクである。
【0092】
【表2】
【0093】
(表2)より、本発明の含フッ素化合物を含有する潤滑剤層を設けた磁気ディスクはすべて、常温および高温高湿度下におけるCSS回数が大きく耐久性に優れていることが判る。一方、従来の潤滑剤のみから成る潤滑剤層を設けた磁気ディスクは、常温下および高温高湿度下においてCSS回数が小さく、明らかに耐久性に劣ることが判る。
【0094】
なお、実施例8〜13は、化学式(a1)もしくは(a2)で示される化合物を使用して作製した磁気ディスク、および化学式(a1)と公知の潤滑剤もしくは有機リン系化合物との混合物を使用して作製した磁気ディスクに関するものであるが、化学式(a3)、(a4)、(a5)、(a6)、(a7)、(a8)、(a9)、(a10)、(a11)および(a12)で示される化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物から成る潤滑剤、ならびにこれらの化合物と公知の潤滑剤もしくは有機リン系化合物とを含んで成る潤滑剤組成物を使用して作製した磁気ディスクについても同様の効果が認められた。
【0095】
(実施例14)
潤滑剤層中の潤滑剤の量(即ち、潤滑剤層の厚さ)が異なる7種類の磁気テープ(No.1〜7)を作製した。いずれの磁気テープも、実施例2で使用した非磁性支持体を使用し、実施例2と同様にして作製した。潤滑剤として、化学式(a1)で示される含フッ素化合物を使用した。潤滑剤層中の潤滑剤の量は潤滑剤を混合溶媒に溶解するときの濃度を調節することによって、異なるようにした。
【0096】
各磁気テープの走行性を評価するために、動摩擦係数μkを求めた。動摩擦係数は次の手順に従って求めた。まず、各試料を、巻き付け角90°で摩擦部材(ステンレス製(SUS420J2、表面粗さ0.2S)、外径6mm)に巻き付け、テンション0.2Nの条件で試料を18mm/秒の速度で巻き出し、同じ速度で巻き取り、巻き取り側においてテンションを測定した。測定は23℃、70%RHの環境下で実施した。巻き取り側のテンションと巻き出し側のテンションとの比からオイラーの式より動摩擦係数を計算して求めた。ここでは、試料を繰り返し往復走行させ、10パス目の動摩擦係数で走行性を評価した。
【0097】
(比較例5)
潤滑剤として、化学式(z1)で示される化合物を使用し、潤滑剤層中の潤滑剤の量(即ち、潤滑剤層の厚さ)が異なる7種類の磁気テープ(No.1〜7)を作製した。各磁気テープは実施例2と同様にして作製した。作製した各磁気テープについて、実施例14と同様にして、走行性を評価した。
【0098】
実施例14および比較例5で得た各磁気テープについて、潤滑剤層に含まれる潤滑剤の量および走行性(動摩擦係数)を表3に示す。また、図2として、潤滑剤の量と走行性との関係を示すグラフを示す。
【0099】
【表3】
【0100】
【発明の効果】
本発明の含フッ素化合物は、一分子内に3個のフルオロアルキル末端基またはフルオロエーテル末端基もしくはフルオロポリエーテル末端基と、3個のエステル結合と1個の窒素原子を有する構造である。これら複数の結合基等の効果により、潤滑性を付与すべき対象の表面(例えば磁気記録媒体の炭素膜表面)に良好に付着して、優れた潤滑特性を様々な環境下で長期間にわたって発揮する。したがって、この化合物は、様々な機械、装置もしくは部品の潤滑剤として有用である。
【0101】
例えば、本発明の含フッ素化合物を含む潤滑剤を、非磁性支持体上に強磁性金属薄膜、保護膜および潤滑剤層がこの順に設けられて成る磁気記録媒体の潤滑剤層に含有させた場合、本発明の化合物に含まれる各末端基の相乗効果により、潤滑性および耐久性に優れ、かつ常温環境下から高温高湿度環境下までの種々の環境下において潤滑性が低下しない磁気記録媒体を得ることができる。
【0102】
また、本発明の含フッ素化合物を含む潤滑剤で厚い潤滑剤層を有する磁気記録媒体を製造し、これを走行させても、磁気記録媒体と摺動部材との間の摩擦係数の上昇が抑制されるために、磁気記録媒体の摺動部材への貼り付きが生じにくい。即ち、本発明の含フッ素化合物を使用すれば、潤滑剤層の厚さが磁気記録媒体の潤滑特性(即ち、走行性)に及ぼす影響を小さくし得るので、潤滑剤層の形成工程において、厚さの制御に対する厳密性が緩和される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で合成した含フッ素化合物の赤外分光分析の結果を示す図である。
【図2】滑剤層を本発明の含フッ素化合物で形成した磁気テープ(実施例14)、および潤滑剤層を従来の潤滑剤で形成した磁気テープ(比較例5)の潤滑剤の量と動摩擦係数(走行性)との関係を示すグラフである。
【発明の属する技術分野】
本発明は潤滑剤、表面処理剤、離型剤もしくは防錆剤等として有用な新規な含フッ素化合物、ならびにその化合物を使用する潤滑剤、その潤滑剤を使用する磁気記録媒体及びその磁気記録媒体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
機械装置および部品の小型化および高精度化に伴い、それらの摺動部における潤滑形態も流体潤滑から境界潤滑へと移行してきている。とりわけ、VTRおよび磁気ディスク等の記録再生システム等においては、記録密度の向上を目的とした強磁性金属薄膜型磁気記録媒体の採用により、磁気テープもしくは磁気ディスクと磁気ヘッドとの摺動には高精度の潤滑が必要となってきた。例えば、蒸着テープやハードディスクでは耐久性と信頼性を確保しながら磁気記録媒体と磁気ヘッドとのスペーシングロスを極力小さくして高出力化を図るために、磁性層表面の潤滑剤層はわずか数ナノメートルの厚さとなるように形成される。したがって、この潤滑剤層を形成する材料として、より優れた潤滑性を有する有機化合物の開発が重要な課題となっている。
【0003】
金属薄膜型磁気記録媒体用の潤滑剤として、例えば下記の式y1:
【化12】
で示される含フッ素長鎖カルボン酸エステル(特開昭62−46431号公報:特許文献1参照)あるいは下記の式(z1):
【化13】
で示される含フッ素ジカルボン酸のモノエステルを使用することが提案されている(特開昭61−107529号公報:特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開昭62−46431号公報
【特許文献2】
特開昭61−107529号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の式(y1)および式(z1)で示される化合物はいずれも、その潤滑性が磁気記録媒体を繰り返し使用している間に低下する傾向にあった。このことは、磁気記録媒体の耐久性の低下を招く一因となっていた。
【0006】
また、磁気記録媒体の潤滑剤層の形成に際しては、次のような課題がある。前述のように、磁気記録媒体の潤滑剤層は、数nm程度の厚さとなるように形成される。これは、潤滑剤層の厚さが大きい場合には、スペーシングロスが大きくなって出力が低下するという不都合に加えて、磁気記録媒体と摺動部材が潤滑材を介して貼り付きやすくなり、その結果、磁気記録媒体と摺動部材との間の摩擦係数が大きくなるという不都合があることによる。即ち、磁気記録媒体の潤滑剤層は、その厚さが大きすぎる場合には、磁気記録媒体全体の潤滑性能(即ち、摺動部材との間の摩擦)にも悪影響を及ぼす。そのため、潤滑剤層の形成に際しては、厚さに関して厳密な制御が要求される。このことは、磁気記録媒体の製造効率が低下する一因である。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、幅広い環境条件下において優れた潤滑性を維持すること、ならびに、磁気記録媒体の潤滑剤層を形成するときの厚さ制御の厳密さを緩和することが可能である潤滑剤を構成し得る化合物、その化合物を含む潤滑剤、ならびにその潤滑剤を用いた磁気記録媒体およびその製造方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の化合物は、特定の構造を有する含フッ素化合物である。その構造により、例えば、この化合物を含む潤滑剤を用いて磁気記録媒体の潤滑剤層を形成した場合、優れた潤滑性、ならびに優れた走行性および耐久性を呈する磁気記録媒体であって、潤滑剤層の厚さによる潤滑性能の変動が小さい磁気記録媒体を得ることができる。
【0009】
本発明は、一般式(a):
【化14】
(式中、R1はフルオロアルキル基、またはフルオロエーテル基もしくはフルオロオロポリポリエーテル基を示し、rは1〜20の整数である。)
で示される含フッ素化合物を提供することを第一の要旨とする。
【0010】
上記一般式から明らかなとおり、本発明の含フッ素化合物は、第三アミンの一種とみなせるものであり、一の分子内に、3個のフルオロアルキル末端基、またはフルオロエーテル基もしくはフルオロポリエーテル基を有する構造である。さらに、この化合物は3個のエステル結合を有する。この構造により、本発明の含フッ素化合物が潤滑剤、特に磁気記録媒体用の潤滑剤に含まれる場合、その潤滑剤は優れた潤滑特性を呈する。従って、本発明はまた、上記本発明の含フッ素化合物を潤滑剤用の化合物として提供する。
【0011】
一般式(a)で示される含フッ素化合物において、R1は、下記の式(b):
【化15】
(式中、R2はフルオロアルキル基であり、mは1〜6の整数であり、nは1〜30の整数であり、cは1〜12の整数である。)
で示されるフルオロポリエーテル基であることが好ましい。一般式(b)で示される基は、2つのフルオロアルキレンオキサイド単位−(OCmF2m)−および−O(CF2)m−1−から成るフルオロアルキレンオキサイド鎖、ならびにフルオロアルキル基を有するフルオロポリエーテル基である。
【0012】
さらに、本発明は、上記本発明の含フッ素化合物を少なくとも1種含んで成る潤滑剤を提供することを第二の要旨とする。本発明の潤滑剤は、特に磁気記録媒体の潤滑剤層を構成するのに適している。
【0013】
本発明の潤滑剤は、含フッ素アルキルジカルボン酸のモノエステル化合物を少なくとも1種、更に含んでいてもよい。含フッ素アルキルジカルボン酸のモノエステル化合物もまた潤滑剤として作用するものであり、これを本発明の含フッ素化合物とともに用いることで、より優れた潤滑性能を潤滑剤に付与することができる。
【0014】
本発明の潤滑剤は、少なくとも1種のパーフルオロポリエーテル系化合物を更に含んでいてもよい。パーフルオロポリエーテル系化合物もまた潤滑剤として作用するものであり、これを本発明の含フッ素化合物とともに用いることで、より優れた潤滑性能を潤滑剤に付与することができる。
【0015】
また、本発明の潤滑剤は、少なくとも1種の有機リン系化合物を更に含んでいてもよい。有機リン系化合物は、防錆剤および/または極圧剤として作用するとともに、例えば、この潤滑剤が磁気記録媒体の潤滑剤層に含有される場合には、潤滑剤層と炭素膜(保護膜)との間の付着強度を向上させる役割をも果たすので、磁気記録媒体の潤滑性能ならびに耐久性をより向上させることが可能となる。
【0016】
本発明では、一般式(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)、(j)および(k):
【0017】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
(上記各一般式(c)〜(k)において、nは8〜20の整数である。)
で示される有機リン系化合物から成る群から選択される有機リン系化合物を用いることが好ましい。
【0018】
本発明は、非磁性支持体の上に形成された強磁性金属薄膜、強磁性金属薄膜の上に形成された炭素膜、および炭素膜の上に形成された潤滑剤層を有する磁気記録媒体であって、潤滑剤層が上記潤滑剤を含む磁気記録媒体を提供することを第三の要旨とする。
【0019】
本発明の磁気記録媒体において、一般式(a)で示される本発明の含フッ素化合物が奏する作用は次のとおりであると考えられるが、これは本発明を何ら拘束するものではない。一般式(a)の分子中のフルオロアルキル基またはフルオロエーテル基もしくはフルオロポリエーテル基は炭素膜の表面、磁気ヘッドの表面、およびテープ走行系の金属部材の表面に露出してその表面の低エネルギー化に寄与し、非粘着面を形成する。また、R1がフルオロエーテル基またはフルオロポリエーテル基である場合には、当該基に含まれるエーテル結合は、剛直な含フッ素炭化水素末端基に柔軟性を与えて良好な潤滑性を与える役割を果たし、磁気記録媒体の潤滑剤層が非粘着性と潤滑性とを併せ持つことを可能にする。
【0020】
更に、一般式(a)の分子中の窒素原子は、潤滑剤層を炭素膜の表面に強く付着させ、また、磁気ヘッドの表面およびテープ走行系の金属部材の表面に強く付着する。そして、分子を構成するこれらの各部分の相乗効果により、本発明の含フッ素化合物を潤滑剤層に含有する本発明の磁気記録媒体は、常温環境から高温高湿度環境までの幅広い環境下において潤滑性が低下しない。さらに、本発明の磁気記録媒体は、本発明の含フッ素化合物によって良好な走行性が確保されるために、磁気記録媒体が磁気ヘッドおよびポスト等を擦って走行している間、表面の潤滑剤によって磁気記録媒体が磁気ヘッド等に貼り付くことが生じにくい。したがって、本発明の磁気記録媒体は、潤滑剤層を厚く形成しても、良好な潤滑特性を示す。
【0021】
本発明は、上記本発明の磁気記録媒体の製造方法を提供することを第四の要旨とする。本発明の磁気記録媒体の製造方法は、その潤滑剤層の形成工程に特徴を有し、それ以外の工程は従来から磁気記録媒体の製造に用いられている工程であってよい。本発明の製造方法における潤滑剤層の形成工程は、炭化水素系溶媒とアルコール系溶媒との混合有機溶媒またはフッ素系溶剤に、潤滑剤層を構成する化合物(即ち、潤滑剤)を溶解して調製した塗布液を炭素膜上に塗布する工程を含むことを特徴とするものである。炭化水素系溶媒とアルコール系溶媒とを組み合わせた混合溶媒を使用することにより、塗布ムラが極めて少ない均一な薄い潤滑剤層が形成され得る。フッ素系溶剤は、本発明の潤滑剤を良好に溶解さるので、これを使用することにより、炭素膜表面における潤滑剤の被覆率を向上させることができる。したがって、本発明の磁気記録媒体の製造方法によれば、優れた潤滑性能を有する実用信頼性の高い磁気記録媒体を得ることが可能である。
【0022】
上記本発明の磁気記録媒体の製造方法において、炭化水素系溶媒とアルコール系溶媒との混合割合は重量比で1:9〜9:1の範囲にあることが好ましい。この範囲で両者を混合することは、塗布ムラを極力少なくすることを可能とし、またコスト面でも有利である。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の含フッ素化合物は、一般式(a):
【化25】
で示されるものである。
【0024】
一般式(a)において、R1はフルオロアルキル基、またはフルオロエーテル基もしくはフルオロオロポリポリエーテル基である。ここで、フルオロエーテル基とはエーテル結合を1つ含むものをいい、フルオロポリエーテル基とはエーテル結合を2以上含むものをいう。
【0025】
R1がフルオロアルキル基である場合、その炭素数は1〜30、好ましくは1〜8である。フルオロアルキル基は、RfCvH2v−で示される基(Rfは炭素数が1〜30、好ましくは1〜10であるパーフルオロアルキル基を示し、vは1〜10の整数である)、またはパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0026】
R1が、フルオロエーテル基もしくはフルオロポリエーテル基である場合、その分子量は約200〜約6000であることが好ましく、約300〜約4000であることがより好ましい。分子量が200未満である場合もしくは6000を越える場合には潤滑性及び保存信頼性が低下する場合がある。また、フルオロエーテル基もしくはフルオロポリエーテル基は、パーフルオロエーテル基もしくはパーフルオロポリエーテル基であることが好ましい。
【0027】
rは1〜20の整数であり、好ましくは1〜8の整数である。
【0028】
一般式(a)で示される化合物において、R1は、下記の式(b):
【化26】
で示されるフルオロポリエーテル基であることが好ましい。
【0029】
一般式(b)において、R2はフルオロアルキル基であり、好ましくはパーフルオロアルキル基である。R2の炭素数は1〜30、好ましくは1〜8である。mは1〜6の整数である。nは1〜30の整数であり、好ましくは1〜12の整数である。cは1〜12の整数であり、好ましくは2〜12の整数であり、さらに好ましくは1〜6の整数である。m、nおよびcがこれらの範囲外である場合、化合物の潤滑性および保存信頼性が低下することがある。
【0030】
本発明の含フッ素化合物は、式N[(CH2)rCOOH]3で示されるニトリロトリカルボン酸と、式R1OHで示される、所定量の含フッ素アルコールとを反応させることにより生成される。R1が式(b)で示される基である含フッ素化合物は、式R1OHで示される合フッ素アルコールとして、下記の式(b’):
【化27】
で示されるアルコールを使用することによって製造される。式(b’)において、R2、m、nおよびcは、式(b)に関連して説明したとおりである。
【0031】
反応は、溶媒の存在下で触媒を加え加熱撹拌することにより有利に進行する。加熱は60〜120℃の範囲内で実施することが好ましい。より好ましい加熱温度の範囲は80〜100℃である。加熱温度が60℃未満であると未反応物が残りやすく、120℃を越えると副生成物が生成される傾向にある。
【0032】
溶媒として、例えば、オクタン(n−C8H18)またはヘプタン(n−C7H16)を使用できる。触媒として、例えば、パラトルエンスルホン酸、リン酸、硫酸を使用できる。ニトリロトリカルボン酸と、式R1OHで示される含フッ素アルコールの混合モル比は、1:3とすることが好ましい。
【0033】
本発明の含フッ素化合物の生成に使用できるニトリロトリカルボン酸としては、ニトリロトリ酢酸、ニトリロトリプロピオン酸、ニトリロトリ酪酸、ニトリロトリ吉草酸、ニトリロトリピバル酸、ニトリロトリラウリン酸等がある。
【0034】
含フッ素アルコールとしては、例えば、パーフルオロヘキシルエタノール、およびパーフルオロオクチルエタノールがある。また、上記一般式(b’)で示されるアルコールとしては、パーフルオロ−3,7,11−トリオキサヘキサデシルメタノール{C5F11(OC3F6)2O(CF2)2CH2OH}、パーフルオロ−2,5,8,11,14,17,20−へプタオキサヘプタコシルメタノール{C7F15(OC2F4)6OCF2CH2OH}、パーフルオロ−4,9,14−トリオキサテトラコシルメタノール{C10F21(OC4F8)2O(CF2)3CH2OH}、パーフルオロ−3,7,11−トリオキサヘキサデシルエタノール{C5F11(OC3F6)2O(CF2)2C2H4OH}、パーフルオロ−2,5,8,11,14,17,20−へプタオキサヘプタコシルエタノール{C7F15(OC2F4)6OCF2C2H4OH}、パーフルオロ−4,9,14−トリオキサテトラコシルエタノール{C10F21(OC4F8)2O(CF2)3C2H4OH}、パーフルオロ−3,7,11−トリオキサヘキサデシルプロパノール{C5F11(OC3F6)2O(CF2)2C3H6OH}、パーフルオロ−2,5,8,11,14,17,20−へプタオキサヘプタコシルプロパノール{C7F15(OC2F4)6OCF2C3H6OH}、パーフルオロ−4,9,14−トリオキサテトラコシルプロパノール{C10F21(OC4F8)2O(CF2)3C3H6OH}、パーフルオロ−3,7,11−トリオキサヘキサデシルブタノール{C5F11(OC3F6)2O(CF2)2C4H8OH}、パーフルオロ−2,5,8,11,14,17,20−へプタオキサヘプタコシルブタノール{C7F15(OC2F4)6OCF2C4H8OH}、およびパーフルオロ−4,9,14−トリオキサテトラコシルブタノール{C10F21(OC4F8)2O(CF2)3C4H8OH}等がある。
【0035】
反応終了後、減圧蒸留により溶媒を除去し、さらに未反応の反応物を有機溶媒で抽出して除去することにより、目的化合物である含フッ素化合物を単離することができる。この化合物は、赤外分光分析(IR)、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)および有機質量分析(FD−MS)により同定することが可能である。
【0036】
このようにして得られる本発明の含フッ素化合物は潤滑剤用の化合物として有用である。そして本発明の含フッ素化合物を少なくとも1種含んで成る本発明の潤滑剤は、例えば磁気記録媒体の潤滑剤層を構成するのに適している。本発明の潤滑剤は、本発明の含フッ素化合物を1種のみ、あるいは2種以上含んでもよい。
【0037】
本発明の潤滑剤は、本発明の含フッ素化合物のみで構成されてもよいが、それ以外に他の潤滑剤、防錆剤もしくは極圧剤等が含まれていてもよい。その場合、本発明の含フッ素化合物の占める割合は、潤滑剤の全量に対して40重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることがより好ましい。本発明の含フッ素化合物の割合が40重量%未満であると、例えばこの潤滑剤組成物で磁気記録媒体の潤滑剤層を形成した場合、良好な潤滑特性を磁気記録媒体に付与することができない場合がある。
【0038】
前記他の潤滑剤として含フッ素アルキルジカルボン酸のモノエステル潤滑剤を用いると、潤滑性能がより一層向上する。したがって、例えば、そのような潤滑剤を含む潤滑剤組成物で磁気記録媒体の潤滑剤層を形成した場合、磁気記録媒体の耐久性が改善される。
【0039】
本発明で使用する含フッ素アルキルジカルボン酸のモノエステル化合物の分子量は、約500〜約2,000であることが好ましい。また、含フッ素アルキルジカルボン酸のモノエステル化合物が潤滑剤組成物の全量に占める割合は60重量%未満であることが好ましい。
【0040】
含フッ素アルキルジカルボン酸のモノエステルは、具体的には、下記の一般式(z):
【化28】
(式中、R3はアルキル基またはアルケニル基を示し、R4はフルオロアルキル基またはフルオロエーテル基もしくはフルオロポリエーテル基を示し、xは0または1であり、yは0から20の整数である)
で示される化合物であることが好ましい。この一般式(z)で示される化合物には、例えば、従来の技術の欄に示した化学式(z1)で示される化合物が含まれる。
【0041】
前記他の潤滑剤としてパーフルオロポリエーテル系潤滑剤を用いる場合もまた、潤滑性能がより一層向上する。例えば、この化合物を含む潤滑剤組成物で記録媒体の潤滑剤層を形成した場合、磁気記録媒体の耐久性が改善される。パーフルオロポリエーテル系化合物は、市販されており、例えば、Ausimont社製の商品名Fomblin ZタイプもしくはFomblin Yタイプ、Du−Pont社製の商品名Krytoxタイプ、またはダイキン工業社製の商品名Demnumタイプがある。これら市販のパーフルオロポリエーテルには無極性タイプと極性基を有するタイプがあり、潤滑剤としては水酸基、カルボキシル基、エステル、ピペロニル基等の極性基を有するタイプが好ましい。極性基を有するパーフルオロポリエーテル系化合物としては、Ausimont社製の商品名Fomblin Z Dol(極性基として水酸基を有する)、Fomblin Z Diac(極性基としてカルボキシル基を有する)、Fomblin AM2001(極性基としてピペロニル基を有する)があり、またはダイキン工業社製の商品名Demnum SA(極性基として水酸基を有する)、DemnumSH(極性基としてカルボキシル基を有する)がある。市販のパーフルオロポリエーテル系化合物の分子量は、一般に約1,000〜約20,000である。本発明では約1,000〜約4,000の分子量のものを使用することが好ましい。
【0042】
なお、これらのパーフルオロポリエーテル系化合物は炭化水素系溶媒およびアルコール系溶媒に溶解しにくい。そのため、これらのパーフルオロポリエーテル系化合物を含んで成る潤滑剤を用いて、例えば、本発明の磁気記録媒体を本発明の製造方法により製造する場合、パーフルオロポリエーテル系化合物が潤滑剤の全量に占める割合は60重量%未満であることが好ましい。
【0043】
本発明の潤滑剤は、有機リン系化合物を更に含んでいてもよい。その場合、本発明の潤滑剤は、上記本発明の含フッ素化合物および有機リン系化合物を含む2成分系、またはそれらに加えて他の潤滑剤(例えば上述の含フッ素アルキルジカルボン酸のモノエステル化合物もしくはパーフルオロポリエーテル系化合物)を含む3成分系であってよい。本発明では、上記一般式(c)〜(k)で示される有機リン系化合物から成る群から選ばれる少なくとも1種の有機リン系化合物を使用することが好ましい。上記一般式(c)〜(k)で示される有機リン系化合物において、炭素数nは8〜20であることが好ましい。炭素数nが21以上であると、後述する炭化水素系溶媒およびアルコール系溶媒等の汎用溶媒への溶解性が低下する傾向にある。汎用溶媒への溶解性の低下は、例えば、この潤滑剤で磁気記録媒体の潤滑剤層を構成する場合、本発明の製造方法による磁気記録媒体の製造に支障を来すことがある。また、炭素数nが7以下であると、潤滑剤の潤滑性が低下する場合がある。
【0044】
潤滑剤の全量中、有機リン系化合物が占める割合は、本発明の含フッ素化合物の混合割合が40重量%未満とならない割合、すなわち、60重量%未満であることが好ましく、40重量%未満であることがより好ましい。また、潤滑剤を、本発明の含フッ素化合物、他の潤滑剤および有機リン系化合物の3成分で構成する場合も、本発明の含フッ素化合物の割合が潤滑剤の全量に対して40重量%未満とならないように、他の潤滑剤および有機リン系化合物の含有量を適宜決定する必要がある。同様のことは、潤滑剤が更に他の成分を含む場合にも当て嵌まる。
【0045】
上述した本発明の潤滑剤は、磁気記録媒体の潤滑剤層を構成するのに適している。そこで以下に本発明の磁気記録をその製造方法とともに説明する。
【0046】
本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体の上に形成された強磁性金属薄膜、強磁性金属薄膜の上に形成された炭素膜、および炭素膜の上に形成された潤滑剤層を有する磁気記録媒体であって、潤滑剤層が上記潤滑剤のいずれか一を含有して成るものである。すなわち、潤滑剤層は、一般式(a)で示される本発明の含フッ素化合物を少なくとも1種含んで成る潤滑剤、またはこの潤滑剤に本発明の含フッ素化合物以外の他の化合物として、含フッ素アルキルジカルボン酸のモノエステル化合物、ポリエーテル系化合物、および有機リン系化合物から選択される少なくとも1種の化合物が更に含まれる潤滑剤を含有する。いずれの潤滑剤を用いる場合も、潤滑剤層中に含まれる本発明の含フッ素化合物の量は、潤滑剤層の表面1m2につき0.05〜100mgであることが好ましく、0.1〜50mgであることがより好ましい。潤滑剤層にこのような少量の含フッ素化合物を均一に存在させるために、本発明の磁気記録媒体の潤滑剤層は次の方法で形成することが望ましい。
【0047】
潤滑剤層は、常套の材料および手段を用いて非磁性支持体の上に強磁性金属薄膜および炭素膜をこの順に形成した後、炭素膜上に形成する。潤滑剤層の形成工程は、炭化水素系溶媒とアルコール系溶媒との混合溶媒またはフッ素系溶剤に潤滑剤、すなわち本発明の含フッ素化合物および適宜混合されるその他の潤滑剤および/または有機リン系化合物等を溶解して調製した塗布液を炭素膜上に塗布する工程、ならびに混合溶媒を乾燥させる工程を含む。最終的に混合溶媒またはフッ素系溶剤が蒸発することにより、炭素上には溶媒に溶解した潤滑剤が残って潤滑剤層を形成する。従って、塗布液を厚く塗布しても、溶媒の蒸発により炭素膜上には均一で非常に薄い潤滑剤層、すなわち少量の潤滑剤が保護膜である炭素膜を均一に被覆した潤滑剤層が形成される。
【0048】
本発明で使用できる炭化水素系溶媒は、例えば、トルエン、ヘキサン、へプタンおよびオクタン等であり、本発明で使用できるアルコール系溶媒は、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールおよびイソプロピルアルコール等の低級アルコールである。混合溶媒は、具体的には、トルエンとイソプロピルアルコールの混合溶媒、ヘキサンとイソプロピルアルコールの混合溶媒であることが好ましい。アルコール系溶媒の割合が大きすぎると塗布ムラが生じやすく、一方、炭化水素系溶媒の割合が大きすぎると不経済であるため、両者は、混合割合が重量比で1:9〜9:1の範囲、好ましくは3:7〜7:3の範囲となるように混合して使用することが好ましい。この混合有機溶媒を用いることにより、炭素膜を均一に被覆する塗布ムラのない均一な厚さの潤滑剤層が形成され、その結果、潤滑性能に優れた実用信頼性の高い磁気記録媒体が得られる。本発明で使用できるフッ素系溶剤は、具体的には、ハイドロフルオロエーテル、パーフルオロカーボン、フロリナート、ガルデンである。本発明の含フッ素化合物は、フッ素を多く含むものであるため、これらのフッ素系溶剤に溶解しやすい。したがって、本発明の潤滑剤をフッ素系溶剤に溶解して調製した塗布液によれば、炭素膜を均一に被覆する潤滑剤層を形成できる。
【0049】
上記混合溶媒を用いて潤滑剤層を形成する方法としては、バーコーティング法、グラビアコーティング法、リバースコーティング法、ダイコーティング法、ディッピング法およびスピンコート法等の湿式塗布法、ならびに有機蒸着法がある。本発明の製造方法においては、いずれの方法を採用してもよい。
【0050】
塗布液を塗布した後、乾燥処理して有機溶媒を蒸発させると、炭素膜上に潤滑剤層が形成される。乾燥処理は加熱することにより、もしくは自然乾燥によって実施することができる。
【0051】
先に述べたとおり、本発明の磁気記録媒体は、潤滑剤層以外の層に関しては、常套の材料および手段を採用して形成することができる。
【0052】
例えば、非磁性支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、芳香族ポリアミドもしくは芳香族ポリイミドから成るフィルム、アルミ基板またはガラス基板等を使用することができる。実用信頼性と良好なRF出力値とを両立するために、非磁性支持体上の表面、すなわち強磁性金属膜と接する面には直径20〜300nm、高さ5〜40nmの突起形成処理が施されていることが望ましい。
【0053】
本発明の磁気記録媒体を構成する磁性層は、イオンプレーティング、スパッタリング、もしくは電子ビーム等の方法で形成される強磁性金属薄膜である。強磁性金属薄膜は、Fe、CoおよびNi、ならびにCo−NiおよびCo−Cr等の合金から選択される1または複数の材料で形成される。強磁性金属薄膜は酸素を含んでいてよく、酸素はこれらの金属または合金の酸化物の形態で含まれていてよい。磁性層の厚さは一般的に50nm〜300nmである。
【0054】
本発明の磁気記録媒体を構成する保護膜は、スパッタリングもしくはプラズマCVD等の方法で得られるアモルファス状、グラファイト状もしくはダイヤモンド状の炭素からなるカーボン薄膜、あるいはそれらの炭素を混合および/または積層して形成したカーボン薄膜を用いて形成することができる。本発明では特にダイヤモンド状の炭素、すなわちダイヤモンドライクカーボンで保護膜を形成することが好ましい。ダイヤモンドライクカーボンは適度な硬度を有するため、走行系部材を損傷することなく磁気記録媒体の損傷を有効に抑制することから、最も好ましい材料である。なお、いずれの材料を用いる場合も、炭素膜の厚さは5〜50nmであることが好ましい。
【0055】
以上、本発明の含フッ素化合物を含む潤滑剤を磁気記録媒体の潤滑剤層に含有させることに関して説明したが、本発明の含フッ素化合物はそれ以外にも、例えば精密機械もしくは精密部品等の潤滑剤、表面処理剤(具体的には、撥水剤もしくは撥油剤)、離型剤もしくは防錆剤の組成成分として使用することができる。
【0056】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
第1の実施例は、含フッ素化合物の生成に関するものである。本実施例で生成された化合物は化学式(a1)で示される。
【0058】
【化29】
【0059】
化学式(a1)で示される化合物を一般式(a)を参照しながら説明すると、R1は、R2がパーフルオロペンチル基であり、mおよびnがそれぞれ3および2であり、cが3である、一般式(b)で表される基である。rは2である。
【0060】
次に、化学式(al)で示される化合物の製造方法を説明する。
出発原料は、下記の化学式(x1):
【化30】
示されるニトリロトリカルボン酸23.3g(0.10モル)と下記の化学式(b’1):
【化31】
で示される含フッ素アルコール77.6g(0.10モル)であった。
【0061】
上記原料を、触媒であるパラトルエンスルホン酸0.25gと溶媒であるヘプタン(n−C7H16)500mlとともに、撹拌翼を備えた1リットルのフラスコに仕込み、100℃にて24時間攪拌して反応させた。反応終了後、ヘプタンを留去し、反応混合物をベンゼンに溶解し、−10℃に冷却して未反応のニトリロトリカルボン酸を除去した。さらに、反応混合物をメタノールに溶解して同様の処理を実施し、未反応のアルコールとニトリロトリカルボン酸を除去した。その結果、白色半固体250.7gを得た。この白色半固体はIR、GPCおよびFD−MSにより、出発原料および副生成物を含まない化学式(a1)で示される化合物であることが確認された。この化合物の、赤外スペクトルを図1に示すとともに、IR吸収スペクトル、ならびにGPCおよびFD−MSから判った事項を以下にまとめる。
【0062】
IR;アルコールの3,330cm−1の吸収ピーク消滅、エステルの1,740cm−1の吸収ピーク出現。
GPC;含フッ素アルコール、ニトリロトリカルボン酸検出されず。
FD−MS;m/e 2,507に主ピーク有り。
【0063】
本実施例は、本発明の含フッ素化合物のうち一の化合物のみについて製造した例を示すものであるが、これと異なる化合物も、出発原料を適宜変更することにより生成することができる。
【0064】
例えば、上記実施例1において、化学式(b’1)で示されるアルコールに代えて化学式(b’2)、(b’3)、(b’4)、(b’5)もしくは(b’6)で示されるアルコールを用いることにより、それぞれ化学式(a2)、(a3)、(a4)、(a5)もしくは(a6)で示される化合物を得ることができる。
【0065】
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
【化40】
【化41】
【0066】
また、実施例1において、化学式(b1)で示されるアルコールに代えて、例えば、フルオロヘキシルメタノールまたはフルオロオクチルアルコールを用いることにより、同様にそれぞれ化学式(a7)もしくは(a8)で示される化合物を得ることができる。
【化42】
【化43】
【0067】
また、実施例1において、化学式(x1)で示されるニトリロトリカルボン酸に代えて、例えば、下記の化学式(x2)または(x3)で示されるニトリロトリカルボン酸を用いることにより、それぞれ化学式(a9)または(a10)で示される化合物を得ることができる。
【0068】
【化44】
【化45】
【化46】
【化47】
【0069】
(実施例2)
実施例2〜7において、本発明の磁気記録媒体(磁気テープ)を製造した例を説明する。
本実施例では、非磁性支持体として、厚みが6.3μmのポリエステルフィルムを使用した。このポリエステルフィルムは、表面に、フィルム内に添加されたシリカ微粒子により付与された勾配のゆるやかな粒状突起(平均高さ7nm、直径1μm)を100μm2当り数個有し、かつ重合触媒残渣の微粒子に起因する比較的大きな突起の数が極めて少ないものであった。さらに、このポリエステルフィルムの表面には、直径15nmのシリカコロイド粒子を核とし紫外線硬化エポキシ樹脂を結合剤とする急峻な山状突起が、1mm2当り1×107個設けられていた。
【0070】
このポリエステルフィルム上に、磁性層である強磁性金属薄膜(膜厚100nm)を形成した。強磁性金属薄膜は、Co−Ni(Ni含有量20モル%)を蒸着材料とし、連続真空斜め蒸着法により形成した。蒸着は、微量の酸素の存在下で実施した。強磁性金属薄膜中の酸素含有量は原子分率で5%であった。
【0071】
次に、強磁性金属薄膜の上に、プラズマCVD法によって、ダイヤモンドライクカーボンから成る厚さ5nmの炭素膜を形成した。続いて、上記化学式(a1)で示される含フッ素化合物を、イソプロピルアルコールとトルエンの混合溶媒(重量比1:1)に溶解して塗布液を調製した。調製した塗布液を、リバースロールコータを用いて、炭素膜の上に湿式塗布法で塗布した後、乾燥処理して溶媒を蒸発させた。最終的に、炭素膜上には潤滑剤である含フッ素化合物(a1)が表面1m2当り10mg存在する潤滑剤層が形成された。
【0072】
これを所定幅に裁断して磁気テープとし、23℃、70%RHの環境下、および40℃、80%RHの環境下でそれぞれ市販の8mmVTRを用いて繰り返し走行させた時の出力特性を測定し、RF出力が初期値に対し2dB低下するか、あるいは出力変動が発生しはじめるまでの走行回数を測定した。
【0073】
(実施例3)
化学式(a1)で示される化合物に代えて、化学式(a2)で示される化合物を用いたこと以外は実施例2と同様にして磁気テープを作製し、同様の試験を行った。
【0074】
(実施例4)
化学式(a1)で示される化合物に代えて、化学式(a1)で示される化合物と公知の潤滑剤C17H33COOC2H4C8F17とを重量比で1:1の割合で混合した潤滑剤組成物を用いたこと以外は実施例2と同様にして、炭素膜上に潤滑剤組成物が1m2あたり10mg存在する潤滑剤層が形成された磁気テープを作製し、同様の試験を行った。
【0075】
(実施例5)
化学式(a1)で示される化合物に代えて、化学式(a1)で示される化合物と化学式(z1)で示される公知の潤滑剤とを重量比で1:1の割合で混合した潤滑剤組成物を用いたこと以外は実施例2と同様にして、炭素膜上に潤滑剤組成物が1m2あたり10mg存在する潤滑剤層が形成された磁気テープを作製し、同様の試験を行った。
【0076】
(実施例6)
化学式(a1)で示される化合物に代えて、化学式(a1)で示される化合物と市販の潤滑剤であるパーフルオロポリエーテル(商品名 Fomblin ZDOL,平均分子量2000:Ausimont社製)とを重量比で3:1の割合で混合した潤滑剤組成物を用いたこと以外は実施例2と同様にして、炭素膜上に潤滑剤組成物が1m2あたり10mg存在する潤滑剤層が形成された磁気テープを作製し、同様の試験を行った。
【0077】
(実施例7)
化学式(a1)で示される化合物に代えて、化学式(a1)で示される化合物と有機リン系化合物(C12H25S)3Pとを重量比で2:1の割合で混合した潤滑剤組成物を用いたこと以外は実施例2と同様にして、炭素膜上に潤滑剤組成物が1m2あたり10mg存在する潤滑剤層が形成された磁気テープを作製し、同様の試験を行った。
【0078】
以上の実施例2〜7の試験結果を(表1)に示す。表中の比較例1、2は、潤滑剤としてそれぞれ、従来の技術の欄に記載の化学式(y1)、(z1)で示される化合物を使用して、実施例2と同様にして作製した磁気テープである。
【0079】
【表1】
【0080】
(表1)より、本発明の含フッ素化合物を含む潤滑剤層を設けた磁気テープ試料はすべて、常温下および高温高湿度下における潤滑性に優れていることが判る。一方、従来の潤滑剤のみから成る潤滑剤層を設けた磁気テープの潤滑性は、常温下および高温高湿度下において、明らかに低下することが判る。
【0081】
なお、実施例2〜7は、化学式(a1)もしくは(a2)で示される化合物を使用して作製した磁気テープ、および化学式(a1)と公知の潤滑剤もしくは有機リン系化合物との混合物を使用して作製した磁気テープに関するものであるが、化学式(a3)、(a4)、(a5)、(a6)、(a7)、(a8)、(a9)および(a10)で示される化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む潤滑剤、ならびにこれらの化合物と公知の潤滑剤もしくは有機リン系化合物とを含んで成る潤滑剤組成物を使用して作製した磁気テープについても同様の効果が認められた。
【0082】
さらに、下記の化学式(a11)もしくは(a12)で示される化合物から成る潤滑剤、およびこれらの化合物と公知の潤滑剤もしくは有機リン系化合物とを含んで成る潤滑剤組成物を使用して作製した磁気テープについても、同様の効果が認められた。
【0083】
【化48】
【化49】
【0084】
(実施例8)
実施例8〜13において、本発明の他の磁気記録媒体(磁気ディスク)を製造した例を説明する。
本実施例では、非磁性支持体として、直径95mm、厚さ1.2mmのAl合金板の表面に厚さ25μmの非磁性Ni−P合金メッキを施し、テクスチャ加工により平均粗さ5nm、最大高さ30nmの突起を形成したものを用いた。この支持体の非磁性Ni−P合金メッキの上にスパッタリング法によって、厚さ130nmのCr下地層と厚さ60nmのCo−Niの強磁性金属薄膜を形成した。更にその強磁性金属薄膜の上に、プラズマCVD法によって、ダイヤモンドライクカーボンから成る厚さ5nmの炭素膜を形成した。次に、化学式(a1)で示される含フッ素化合物をイソプロピルアルコールとトルエンの混合溶媒(重量比1:1)に溶解した塗布液を調製した。調製した塗布液を、湿式塗布法(ディッピング法)で塗布した後、溶媒を乾燥させて、磁気ディスクを得た。最終的に、炭素膜上には潤滑剤である含フッ素化合物(a1)が表面1m2当り10mg存在する潤滑剤層が形成された。
【0085】
この磁気ディスクに、23℃、70%RHの環境下、および40℃、80%RHの環境下でCSS(コンタクト・スタート・ストップ)試験を実施し、摩擦係数が1.0を超えた時点のCSS回数またはヘッドクラッシュ発生時のCSS回数で耐久性の判定を行った。
【0086】
(実施例9)
化学式(a1)で示される化合物に代えて、化学式(a2)で示される化合物を使用したこと以外は実施例8と同様にして、磁気ディスクを作製し、同様の試験を行った。
【0087】
(実施例10)
化学式(a1)で示される化合物に代えて、実施例4で使用したものと同じ潤滑剤組成物、すなわち化学式(a1)で示される化合物と公知の潤滑剤C17H33COOC2H4C8F17とを重量比で1:1の割合で混合した潤滑剤組成物を用いたこと以外は実施例8と同様にして、炭素膜上に潤滑剤組成物が1m2あたり10mg存在する潤滑剤層が形成された磁気ディスクを作製し、同様の試験を行った。
【0088】
(実施例11)
化学式(a1)で示される化合物に代えて、実施例5で使用したものと同じ潤滑剤組成物、すなわち化学式(a1)で示される化合物と化学式(z1)で示される潤滑剤とを重量比で1:1の割合で混合した潤滑剤組成物を用いたこと以外は実施例8と同様にして、炭素膜上に潤滑剤組成物が1m2あたり10mg存在する潤滑剤層が形成された磁気ディスクを作製し、同様の試験を行った。
【0089】
(実施例12)
化学式(a1)で示される化合物に代えて、実施例6で使用したものと同じ潤滑剤組成物、すなわち化学式(a1)で示される化合物と市販の潤滑剤であるパーフルオロポリエーテル(商品名 Fomblin Z DOL,平均分子量2000:Ausimont社製)とを重量比で3:1の割合で混合した潤滑剤組成物を用いたこと以外は実施例8と同様にして、炭素膜上に潤滑剤組成物が1m2あたり10mg存在する潤滑剤層が形成された磁気ディスクを作製し、同様の試験を行った。
【0090】
(実施例13)
化学式(a1)で示される化合物に代えて、実施例7で使用したものと同じ潤滑剤組成物、すなわち化学式(a1)で示される化合物と有機リン系化合物(C12H25S)3Pとを重量比で2:1の割合で混合した潤滑剤組成物を用いたこと以外は実施例8と同様にして、炭素膜上に潤滑剤組成物が1m2あたり10mg存在する潤滑剤層が形成された磁気ディスクを作製し、同様の試験を行った。
【0091】
以上の実施例8〜13の試験結果を(表2)に示す。表中の比較例3、4の磁気記録媒体は、潤滑剤としてそれぞれ化学式(y1)、(z1)で示される化合物を使用して、実施例8と同様にして作製した磁気ディスクである。
【0092】
【表2】
【0093】
(表2)より、本発明の含フッ素化合物を含有する潤滑剤層を設けた磁気ディスクはすべて、常温および高温高湿度下におけるCSS回数が大きく耐久性に優れていることが判る。一方、従来の潤滑剤のみから成る潤滑剤層を設けた磁気ディスクは、常温下および高温高湿度下においてCSS回数が小さく、明らかに耐久性に劣ることが判る。
【0094】
なお、実施例8〜13は、化学式(a1)もしくは(a2)で示される化合物を使用して作製した磁気ディスク、および化学式(a1)と公知の潤滑剤もしくは有機リン系化合物との混合物を使用して作製した磁気ディスクに関するものであるが、化学式(a3)、(a4)、(a5)、(a6)、(a7)、(a8)、(a9)、(a10)、(a11)および(a12)で示される化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物から成る潤滑剤、ならびにこれらの化合物と公知の潤滑剤もしくは有機リン系化合物とを含んで成る潤滑剤組成物を使用して作製した磁気ディスクについても同様の効果が認められた。
【0095】
(実施例14)
潤滑剤層中の潤滑剤の量(即ち、潤滑剤層の厚さ)が異なる7種類の磁気テープ(No.1〜7)を作製した。いずれの磁気テープも、実施例2で使用した非磁性支持体を使用し、実施例2と同様にして作製した。潤滑剤として、化学式(a1)で示される含フッ素化合物を使用した。潤滑剤層中の潤滑剤の量は潤滑剤を混合溶媒に溶解するときの濃度を調節することによって、異なるようにした。
【0096】
各磁気テープの走行性を評価するために、動摩擦係数μkを求めた。動摩擦係数は次の手順に従って求めた。まず、各試料を、巻き付け角90°で摩擦部材(ステンレス製(SUS420J2、表面粗さ0.2S)、外径6mm)に巻き付け、テンション0.2Nの条件で試料を18mm/秒の速度で巻き出し、同じ速度で巻き取り、巻き取り側においてテンションを測定した。測定は23℃、70%RHの環境下で実施した。巻き取り側のテンションと巻き出し側のテンションとの比からオイラーの式より動摩擦係数を計算して求めた。ここでは、試料を繰り返し往復走行させ、10パス目の動摩擦係数で走行性を評価した。
【0097】
(比較例5)
潤滑剤として、化学式(z1)で示される化合物を使用し、潤滑剤層中の潤滑剤の量(即ち、潤滑剤層の厚さ)が異なる7種類の磁気テープ(No.1〜7)を作製した。各磁気テープは実施例2と同様にして作製した。作製した各磁気テープについて、実施例14と同様にして、走行性を評価した。
【0098】
実施例14および比較例5で得た各磁気テープについて、潤滑剤層に含まれる潤滑剤の量および走行性(動摩擦係数)を表3に示す。また、図2として、潤滑剤の量と走行性との関係を示すグラフを示す。
【0099】
【表3】
【0100】
【発明の効果】
本発明の含フッ素化合物は、一分子内に3個のフルオロアルキル末端基またはフルオロエーテル末端基もしくはフルオロポリエーテル末端基と、3個のエステル結合と1個の窒素原子を有する構造である。これら複数の結合基等の効果により、潤滑性を付与すべき対象の表面(例えば磁気記録媒体の炭素膜表面)に良好に付着して、優れた潤滑特性を様々な環境下で長期間にわたって発揮する。したがって、この化合物は、様々な機械、装置もしくは部品の潤滑剤として有用である。
【0101】
例えば、本発明の含フッ素化合物を含む潤滑剤を、非磁性支持体上に強磁性金属薄膜、保護膜および潤滑剤層がこの順に設けられて成る磁気記録媒体の潤滑剤層に含有させた場合、本発明の化合物に含まれる各末端基の相乗効果により、潤滑性および耐久性に優れ、かつ常温環境下から高温高湿度環境下までの種々の環境下において潤滑性が低下しない磁気記録媒体を得ることができる。
【0102】
また、本発明の含フッ素化合物を含む潤滑剤で厚い潤滑剤層を有する磁気記録媒体を製造し、これを走行させても、磁気記録媒体と摺動部材との間の摩擦係数の上昇が抑制されるために、磁気記録媒体の摺動部材への貼り付きが生じにくい。即ち、本発明の含フッ素化合物を使用すれば、潤滑剤層の厚さが磁気記録媒体の潤滑特性(即ち、走行性)に及ぼす影響を小さくし得るので、潤滑剤層の形成工程において、厚さの制御に対する厳密性が緩和される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で合成した含フッ素化合物の赤外分光分析の結果を示す図である。
【図2】滑剤層を本発明の含フッ素化合物で形成した磁気テープ(実施例14)、および潤滑剤層を従来の潤滑剤で形成した磁気テープ(比較例5)の潤滑剤の量と動摩擦係数(走行性)との関係を示すグラフである。
Claims (13)
- 一般式(b)においてcが2〜12の整数である請求項2に記載の含フッ素化合物。
- 潤滑剤用の請求項1〜3のいずれか1項に記載の含フッ素化合物。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の含フッ素化合物を少なくとも1種含んで成る潤滑剤。
- 少なくとも1種の、含フッ素アルキルジカルボン酸のモノエステル化合物を更に含む請求項5に記載の潤滑剤。
- 少なくとも1種のパーフルオロポリエーテル系化合物を更に含む請求項5に記載の潤滑剤。
- 少なくとも1種の有機リン系化合物を更に含む請求項5〜7のいずれか1項に記載の潤滑剤。
- 非磁性支持体の上に形成された強磁性金属薄膜、強磁性金属薄膜の上に形成された炭素膜、および炭素膜の上に形成された潤滑剤層を有する磁気記録媒体であって、潤滑剤層が、請求項5〜9のいずれか1項に記載の潤滑剤を少なくとも1種含む磁気記録媒体。
- 炭素膜がダイヤモンドライクカーボンから成る請求項10に記載の磁気記録媒体。
- 請求項10または請求項11のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法であって、潤滑剤層の形成工程が、炭化水素系溶媒とアルコール系溶媒との混合有機溶媒またはフッ素系溶剤に潤滑剤を溶解して調製した塗布液を炭素膜の上に塗布する工程を含む磁気記録媒体の製造方法。
- 炭化水素系溶媒とアルコール系溶媒との混合割合が重量比で1:9〜9:1の範囲にある請求項12に記載の磁気記録媒体の製造方法。
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JP2002326746A JP2004161633A (ja) | 2002-11-11 | 2002-11-11 | 含フッ素化合物および潤滑剤、ならびに磁気記録媒体およびその製造方法 |
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US7964640B2 (en) * | 2005-07-11 | 2011-06-21 | Plt Patent & License Trading Ltd. | Oligomers of straight-chain and unbranched fatty acids and drugs containing these |
-
2002
- 2002-11-11 JP JP2002326746A patent/JP2004161633A/ja active Pending
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