JP2004353015A - フッ素ガス生成装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】フッ素ガス生成装置30は、陽極側の第1気相部分にフッ素ガスを主成分とするプロダクトガスを発生させると共に、陰極側の第2気相部分に水素ガスを主成分とする副生ガスを発生させる電解槽32を有する。プロダクトガス及び副生ガスを導出するため、第1及び第2配管52、72が配設される。第1配管52にはガスの流量を制御する第1弁56が配設され、その開度が電解槽32内の状態を直接的或いは間接的に表す情報に基づいて調整される。第1弁56よりも上流で第1配管52に第1カートリッジ54が配設される。第1カートリッジ54内には、プロダクトガス中に混入するフッ化水素と溶融塩のミストとを吸着するフッ化ナトリウムのペレットが内蔵される。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フッ素ガス生成装置に関し、特に半導体処理システムのガス供給系に配設されるフッ素ガス生成装置に関する。なお、ここで、半導体処理とは、半導体ウエハやLCD基板等の被処理基板上に半導体層、絶縁層、導電層等を所定のパターンで形成することにより、該被処理基板上に半導体デバイスや、半導体デバイスに接続される配線、電極等を含む構造物を製造するために実施される種々の処理を意味する。
【0002】
【従来の技術】
半導体デバイスの製造においては、被処理基板、例えば半導体ウエハやLCD基板に、成膜、エッチング、拡散等の各種の半導体処理が施される。このような処理を行う半導体処理システムでは、例えば、シリコン膜やシリコン酸化膜をエッチングする場合や、処理室内をクリーニングする場合等、種々の用途の処理ガスとしてフッ素(F)系のガスが利用される。新規なエッチングガス及びクリーニングガスとして、フッ素ガスが注目されているが、安全性及び信頼性の面で問題が完全に解消されていないため、半導体デバイスの製造の現場でフッ素を生成することは一般的に行われていない。
【0003】
しかし、この分野における研究開発は進められており、例えば、特許文献1には、現場でフッ素を生成し、これをクリーニングガスとして処理室に供給するようにした半導体処理システムが開示される。この文献に開示のシステムでは、ガスジェネレータでフッ化水素(HF)が電解されることにより、フッ素がクリーニングガスとして生成される。クリーニングガスはガスジェネレータと処理室とを接続する供給配管により供給される。供給配管には冷却塔が配設され、低温凝結によりクリーニングガス中のフッ化水素(HF)が除去される。
【0004】
一方、例えば、特許文献2には、ガス製造工場においてフッ素ガスを生成する装置が開示される。この文献に開示のフッ素ガス生成装置では、電解槽内にフッ化カリウム及びフッ化水素を含む溶融塩からなる電解浴が収納され、電解浴中でフッ化水素が電解される。これにより、陽極側にフッ素ガスを主成分とするプロダクトガスが発生されると共に、陰極側に水素ガスを主成分とする副生ガスが発生される。
【0005】
特許文献2の装置では、プロダクトガスを取り出すための供給配管に、液面制御用の電磁弁、ブランク塔、吸収塔、フィルタ塔などが、上流側からこの順に配設される。また、副生ガスを排出するための排気配管にも、液面制御用の電磁弁、ブランク塔、吸収塔など(フィルタ塔はない)が、上流側からこの順に配設される。ブランク塔は、プロダクトガス中に含まれる電解浴の飛沫を除去するために使用される。吸収塔にはフッ化ナトリウム(NaF)が収容され、これによりプロダクトガス中に含まれるフッ化水素(HF)が除去される。更に、フィルタ塔によりプロダクトガス中に含まれるパーティクルが除去される。
【0006】
【特許文献1】
米国特許出願公開第2002/0074013号明細書
【0007】
【特許文献2】
特開2002−339090号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等の研究によれば、従来の装置では、運転時間が長くなると、後述するように、安全性及び信頼性の面でいくつかの問題点が発生することが見出されている。このような問題が解消されないと、自動化された生産システム、例えば、半導体デバイスの製造システムにフッ素ガス生成装置を組込んで使用することは実際上困難となる。
【0009】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、長時間の運転においても高い安全性及び信頼性で作動することが可能なフッ素ガス生成装置を提供することを目的とする。特に、本発明は、オンサイトで且つオンデマンドでフッ素ガスを生成する装置を提供することを目的とする。ここで、オンサイトとは、フッ素ガス生成装置が、所定の主処理装置、例えば、半導体処理システムの主処理装置と組合わされることを意味する。また、オンデマンドとは、主処理装置側からの要求に応じたタイミングで且つ必要とされる成分調整を伴ってガスが供給可能となることを意味する。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の視点は、フッ素ガスを生成する装置であって、
フッ化カリウム及びフッ化水素を含む溶融塩からなる電解浴中でフッ化水素を電解することにより、陽極側の第1気相部分にフッ素ガスを主成分とするプロダクトガスを発生させると共に、陰極側の第2気相部分に水素ガスを主成分とする副生ガスを発生させる電解槽と、
前記第1気相部分から前記プロダクトガスを導出する第1配管と、
前記第2気相部分から前記副生ガスを導出する第2配管と、
前記第1配管に配設された前記第1配管を通るガスの流量を制御する第1弁と、
前記電解槽内の状態を直接的或いは間接的に表す情報に基づいて前記第1弁の開度を調整する第1制御部材と、
前記第1弁よりも上流で前記第1配管に配設され且つ前記プロダクトガス中に混入するフッ化水素と前記溶融塩のミストとを吸着するフッ化ナトリウムのペレットを内蔵する第1カートリッジと、
を具備することを特徴とする。
【0011】
本発明の第2の視点は、第1の視点の装置において、前記第2配管に配設され且つ前記溶融塩のミストを吸着する吸着剤を内蔵する第2カートリッジを更に具備することを特徴とする。
【0012】
本発明の第3の視点は、第2の視点の装置において、前記吸着剤はフッ化ナトリウムのペレットを具備することを特徴とする。
【0013】
本発明の第4の視点は、第2または第3の視点の装置において、前記第2配管に配設された前記第2配管を通るガスの流量を制御する第2弁と、前記電解槽内の状態を直接的或いは間接的に表す情報に基づいて前記第2弁の開度を調整する第2制御部材と、を更に具備し、前記第2カートリッジは前記第2弁よりも上流に配設されることを特徴とする。
【0014】
本発明の第5の視点は、第4の視点の装置において、前記第1及び第2気相部分の圧力を測定する第1及び第2圧力計を更に具備し、前記第1及び第2制御部材は、前記第1及び第2気相部分の圧力が実質的に等しい設定値に維持されるように、前記第1及び第2圧力計の測定結果に基づいて前記第1及び第2弁の開度を夫々調整することを特徴とする。
【0015】
本発明の第6の視点は、第1乃至第5の視点のいずれかの装置において、前記第1カートリッジの温度を調節する温度調節器を更に具備することを特徴とする。
【0016】
更に、本発明の実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が省略されることで発明が抽出された場合、その抽出された発明を実施する場合には省略部分が周知慣用技術で適宜補われるものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明者等は、本発明の開発の過程において、従来のフッ素ガス生成装置における安全性及び信頼性の面の問題について研究した。その結果、本発明者等は、以下に述べるような知見を得た。
【0018】
電解槽を使用するフッ素ガス生成装置では、安全性及び信頼性の観点から、電解槽内の電解浴液面の制御が非常に重要となる。特許文献2の装置では、電解槽の陽極側及び陰極側の両者にレベルプローブが配設され、この検出結果に基づいて、プロダクトガスの供給配管及び副生ガスの排気配管に配設された電磁弁が操作され、電解槽内の電解浴液面の制御される。一方、特許文献1では、この点に関する詳細は全く示されていないが、電解槽内の電解浴液面を制御するためには、ガスジェネレータと冷却塔との間に制御弁を配設することが必須となる。しかし、これらの装置構成では、特に予期せぬ液面の変動が起こったときに即座に対処することが不可能である。
【0019】
一方、本発明者等は、陽極及び陰極の夫々の圧力を常時監視して微細に流量を独立して圧力を制御する(例えば、ピエゾバルブを兼ね備えた流量制御器の使用)ことにより、電解槽内の両極夫々の圧力を極めて微細に、しかも早い応答性で制御することが可能であることを見出している(特願2002−202734)。この種の流量制御弁は、ガス流路の口径が極めて小さく、ガスに同伴される異物(例えば微小なパーティクルや塵)で閉塞してしまう恐れがあるため、両極夫々の上流側にフィルタを配設することにより流量制御弁を保護する。
【0020】
しかし、本発明者等が開発したこの装置について更に実験を重ねたところ、電解初期は電解浴の制御が良好であるが、両極側の配管内の差圧が生じる部分(例えばフィルタ)において短時間で閉塞が生じ、連続運転が不可能になるという新たな問題が発生した。この原因として、電解槽で発生した夫々のガスに同伴された溶融塩のミストがフィルタ表面に堆積して詰まらせていることが分かった。
【0021】
なお、ガスに同伴した細かい溶融塩ミストは、配管或いは電解槽とコンプレッサとの間に存在する各部材内に侵入する。ミストは融点が80℃付近であるため、配管内では固体として存在する。このミスト量が多くなるに従って配管閉塞、或いはオン/オフ弁内の弁座を損傷する等の問題が発生する。
【0022】
上記前者の場合には、直ぐに電解槽の運転を中止し、配管内に詰まった塩を取り除く作業が必要となる。配管内には反応性ガスのフッ素も存在するため、配管内部品の取り外し作業は最新の注意と危険を伴う。また、上記後者の場合には、弁に漏れが起こるため、やはり電解槽の運転を中止することが必要となる。またオン/オフ弁が頻繁にその動作を繰り返すため、弁の寿命が短くなる。
【0023】
この点に関して実験により調べたところ、電子顕微鏡の測定結果から、フィルタ上に捕獲された溶融塩ミストのサイズ分布は、0.4〜0.6μmであることが判明した。また、フィルタメディアが特にステンレススティール(例えばSS316L)で作製されている場合、溶融塩ミストによりこれが腐食されることが観察された。更に、従来はプロダクトガス(フッ素ガスが主成分)が発生する電解槽の陽極側の配管のみにフィルタを配設しているが、陰極から発生する副生ガス(水素ガスが主成分)中にも溶融塩のミストが含まれている(従って、配管閉塞が起こる)ことが判明した。
【0024】
ところで、特許文献2も示すように、電解槽を使用するフッ素ガス生成装置では、従来から、プロダクトガス中に含まれるフッ化水素(HF)を除去するため、フッ化ナトリウム(NaF)が使用される。本発明者等は、フッ素ガス生成装置の改良のため、NaFのフッ素ガス吸着能力についても種々の実験を行ったが、その際、付随的に下記するようなNaFの機能を見出した。
【0025】
即ち、ある実験において、NaFのペレットを収納したカートリッジをフッ素ガス生成装置のプロダクトガス供給配管に配設し、NaFのフッ素ガス吸着能力について調べた。その結果、NaFカートリッジによって、本来除去する目的成分であるフッ化水素の他に、溶融塩に由来するフッ化カリウム(KF)成分(溶融塩のミストの主成分)もサブPPBレベルまで除去できることが見出された。更に、NaFカートリッジの下流では、溶融塩のミストに同伴するその他の成分も殆ど除去されていることが判明した。なお、この際の金属分析は、超純水が入ったPFA容器中に、プロダクトガスを直接バブリングさせて金属不純物を捕獲し、得られたフッ化水素水を高周波誘導プラズマ質量分析装置(ICP−MS)で分析することによって行った。
【0026】
この結果に基づき、溶融塩のミストを除去するためにNaFカートリッジが使用可能であるか否かについて更に検討を行った。
【0027】
[実験]
フッ素ガス生成装置の陽極及び陰極側の配管の夫々に1/4インチのガードフィルタ(0.04μm)を使用した場合、ミストによりフィルタが閉塞するまでのライフタイムは、陰極側が4〜15時間、陽極側が約120時間であった。このため、時間的なメリットを考慮し、フッ素ガス生成装置の陰極側(水素ガスを主成分とする副生ガスが発生する側)に図3図示の実験装置を配設し、溶融塩のミストを除去するNaFカートリッジの機能を確認する実験を行った。
【0028】
図3に示すように、フッ素ガス生成装置の陰極に、並列で且つ切り換え可能な第1及び第2配管112、114を介して、圧力計116及びピエゾバルブ118を接続した。なお、ピエゾバルブ118はフッ素ガス生成装置の陰極の圧力に基づいて開閉制御されるように構成した。第1配管112には、NaFペレットを収納したカートリッジ122とガードフィルタ124とを配設し、第2配管114には、ガードフィルタ126のみを配設した。
【0029】
第1及び第2配管112、114を交互に使用し、ガードフィルタ124、126がミストにより閉塞する時間を夫々計測した。閉塞の判断は、ピエゾバルブ118の開度が100%以上で且つ圧力計116の圧力が−30kPa以下の状態が1分以上継続した時とした。なお、ピエゾバルブ118は、通常状態において約60%のバルブ開度で保持されるように設定した。ピエゾバルブ118の開度が大きくなるのは、その上流側で閉塞が生じて陰極の圧力が高くなった場合に、開度を大きくしてより多くの副生ガスを流そうとするからである。
【0030】
具体的な実験手順は以下の通りである。
(1)まず、ガードフィルタ126の閉塞時間を測定するため、弁V1a、V1bを閉鎖し、弁V2a、V2bを開放する。
(2)開始前の積算電解量(Ah)を記録する。
(3)100A連続電解(フッ素発生量は約688cc/min)を行う。
(4)上記閉塞判断条件を満たした時点でフッ素電解を停止してフッ素発生の積算電解量を記録する。
(5)次に、ガードフィルタ124の閉塞時間を測定するため、NaFカートリッジ122の温度を200℃に昇温すると共に、弁V1a、Vlbを開放し、弁V2a、V2bを閉鎖する。
(6)開始前の積算電解量(Ah)を記録する。
(7)100A連続電解(フッ素発生量は約688cc/min)を行う。
(8)上記閉塞判断条件を満たした時点でフッ素電解を停止してフッ素発生の積算電解量を記録する。
【0031】
表1は上記実験の結果を示す。表1において、「F124」、「F126」はガードフィルタ124(NaFカートリッジ122あり)、ガードフィルタ126(NaFカートリッジ122なし)を夫々示す。「IEs 」、「IEe 」、「IEc 」は開始時積算電解量、終了時積算電解量、閉塞までの電解量(Ah)を夫々示す。
【0032】
この実験結果に示すように、NaFカートリッジ122を使用することにより、ミストによるガードフィルタの閉塞時間が5倍も伸びることが判明した。NaFカートリッジ122の配管径が通常の配管より太いので、これに伴う流速の低減がライフタイム向上につながった可能性はある。しかし、捕獲用のガードフィルタ124、126の部分における配管径は同様の1/4インチであることから、単純な比較で考えても飛沫の捕獲にNaFカートリッジ122が有効であることが分かる。
【0033】
以下に、このような知見に基づいて構成された本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0034】
図1は本発明の実施の形態に係る、フッ素ガス生成装置を組込んだ半導体処理システムを示す概略図である。この半導体処理システムは、半導体ウエハやLCD基板等の被処理基板に、成膜、エッチング、或いは拡散等の処理を施す半導体処理装置10を有する。
【0035】
半導体処理装置10は、被処理基板を収納すると共に半導体処理を施すための処理室12を具備する。処理室12内には、被処理基板を載置するための下部電極兼載置台(支持部材)14が配設される。処理室12内にはまた、載置台14に対向して上部電極16が配設される。両電極14、16間にRF(高周波)電源15からRFパワーが印加されることにより、処理ガスをプラズマに転化するためのRF電界が処理室12内に形成される。処理室12の下部には、内部を排気すると共に真空に設定するための排気系18が接続される。また、処理室12の上部には、処理ガスを供給するためのガス供給系20が接続される。
【0036】
図2は図1図示のガス供給系20と組み合わせて使用される半導体処理装置の変更例10xを示す概略図である。半導体処理装置10xは、被処理基板を収納すると共に半導体処理を施すための処理室12を具備する。処理室12内には、被処理基板を載置するための載置台(支持部材)14が配設される。処理室12の下部には、内部を排気すると共に真空に設定するための排気系18が接続される。処理室12の上部には、プラズマを生成するためのリモートプラズマ室13が接続される。リモートプラズマ室13の周囲には、コイルアンテナ17が巻回される。コイルアンテナ17にRF(高周波)電源15からRFパワーが印加されることにより、処理ガスをプラズマに転化するための誘導電界がリモートプラズマ室13内に形成される。また、リモートプラズマ室13の上部には、処理ガスを供給するためのガス供給系20が接続される。
【0037】
なお、本発明の実施の形態に係るフッ素ガス生成装置は、プラズマを利用しない半導体処理装置、例えば熱CVD装置に対してクリーニングガス等を供給する場合にも適用することができる。
【0038】
図1に戻り、ガス供給系20には、処理室12内に任意のガス、例えば半導体処理を行うための処理ガスや処理室12内をクリーニングするための処理ガスを、選択的に切替え且つ所定の流量で供給するための流れ管理部22が配設される。流れ管理部22には、種々な活性ガスや不活性ガスを貯蔵する複数のガス源を有するガス貯蔵部24が接続される。流れ管理部22にはまた、フッ素ガス系の処理ガスを反応処理により生成するガス生成部26が接続される。
【0039】
流れ管理部22及びガス生成部26には、本発明の実施の形態に係るフッ素ガス生成装置30が着脱可能に接続される。即ち、生成装置30は、流れ管理部22にフッ素ガスを直接供給するか、或いはガス生成部26にフッ素ガス原料を供給するために使用される(切替え用のバルブは図示せず)。
【0040】
生成装置30は、フッ化水素を含む溶融塩からなる電解浴を収納する気密な電解槽32を有する。溶融塩は、フッ化カリウム(KF)とフッ化水素(HF)との混合物(KF/2HF)或いはフレミー塩(Fremy’s salt:KF/2HF+添加物)からなる。電解槽32は上方から溶融塩中に延びる仕切り板35により、陽極室34及び陰極室36に分割される。陽極室34及び陰極室36内で、溶融塩中にはカーボン電極(陽極)42及びニッケル電極(陰極)44が夫々浸漬される。電解槽32には、陽極42及び陰極44間に電流を供給するための電流源38と、供給電流を積算する電流積算計40とが付設される。
【0041】
電解処理中、電解槽32は付随するヒータ33により80〜90℃に加熱保温される。電解浴中でフッ化水素を電解することにより、陽極室34の気相部分にフッ素ガス(F2 )を主成分とするプロダクトガスが発生され、陰極室36の気相部分に水素ガスを主成分とする副生ガスが発生される。プロダクトガス及び副生ガスの夫々には、原料の溶融塩中のフッ化水素ガスの蒸気圧分だけ、フッ化水素ガスが混入する(例えば5%)。陽極室34及び陰極室36には、夫々の気相部分の圧力を連続的に測定するため、第1及び第2圧力計46、48が配設される。
【0042】
陽極室34には、プロダクトガスを導出し、ガス供給系20の流れ管理部22及びガス生成部26に送るための第1配管52が接続される。第1配管52には、上流側から順に、吸着カートリッジ54、第1流量制御弁56、ミニバッファタンク58、コンプレッサ(吸引手段)62、主バッファタンク64等が配設される。陽極室34で発生されたプロダクトガスは、コンプレッサ62により第1配管52が吸引されることにより、陽極室34から強制的に引出され、主バッファタンク64に貯留される。なお、図1において符号66はラインフィルタを示す。
【0043】
主バッファタンク64には圧力計65が配設され、タンク64内の圧力が連続的に測定される。この測定結果は、電流源38に付随する制御部材39に伝達される。制御部材39は、伝達された測定結果に基づいて電流源38をオン/オフし、電解槽32への電流の供給を制御する。即ち、タンク64内の圧力が、ある圧力まで減少すると電流源38がオンされてフッ素ガスの生成が開始され、また、ある圧力まで増加すると電流源38がオフされてフッ素ガスの生成が停止される。これにより、電解槽32内の陽極室34及び陰極室36間で溶融塩の液面レベルに差をつけずに電解を止めることができる。なお、タンク64内の圧力は、例えば大気圧〜大気圧+0.18Mpaに設定される。
【0044】
一方、陰極室36には、副生ガスを導出するための第2配管72が接続される。第2配管72は、例えば半導体製造工場の排気系(吸引手段)79の配管に着脱可能に接続される。第2配管72には、上流側から順に、吸着カートリッジ74、第2流量制御弁76、除害部78等が配設される。陰極室36で発生された副生ガスは、排気系79により第2配管72が吸引されることにより、陰極室36から強制的に引出され、除害部78を通過した後、排気系79に送られる。
【0045】
上述のように、電解処理中、種々の要因で、陽極室34及び陰極室36間の圧力バランスが崩れ、電解漕32内で液面変動が起こりやすい。また、電解処理中以外でも、例えば、窒素ガスによる電解漕32内のパージ、原料フッ化水素ガスの供給時終了後の窒素パージ工程等、主にガス切り替え工程の直後に、電解漕32内で液面変動が起こりやすい。これ等は、フッ素ガス生成装置の安全性及び信頼性を損なう原因となる。
【0046】
これに対して、図1図示のフッ素ガス生成装置においては、陽極室34及び陰極室36の夫々の気相部分の圧力が第1及び第2圧力計46、48により連続的に測定される。これ等の測定結果は、第1及び第2流量制御弁56、76の夫々に付随する第1及び第2制御部材57、77に伝達される。第1及び第2制御部材57、77は、伝達された測定結果に基づいて、陽極室34及び陰極室36の夫々の気相部分の圧力が互いに実質的に等しい第1及び第2設定値に維持されるように、第1及び第2流量制御弁56、76の開度を調整する。即ち、第1及び第2流量制御弁56、76は、夫々に付随する第1及び第2制御部材57、77の制御下で連続的に開度が調整される。
【0047】
このように、陽極室34及び陰極室36の圧力が、夫々独立して常時測定され且つ制御されるため、陽極室34及び陰極室36における溶融塩の液面の状態が均一に維持される。換言すれば、この構成により、電解槽32は、フッ素の発生状態、第1及び第2配管52、72内の状態、コンプレッサ62や半導体製造工場の排気系79の動作状態、その他の環境等の変動による悪影響から保護される。このため、高価な電極等に与える損害、例えば陽極効果を未然に回避することができ、安全にしかも突然の電解停止をすることなく処理を進行させることができる。
【0048】
なお、上述の陽極室34及び陰極室36の夫々の気相部分の第1及び第2設定値は、望ましくは大気圧〜820Torr、より望ましくは大気圧〜770Torrに設定される。また、陽極室34及び陰極室36の圧力を安定させるため、第1及び第2流量制御弁56、76は応答性よく開度が連続的に調整可能であることが必要である。かかる観点から、第1及び第2流量制御弁56、76としてピエゾバルブが望ましくは使用される。
【0049】
更に、上述のように、プロダクトガス及び副生ガス中には、数パーセント(例えば5%)のフッ化水素が混入する。また、プロダクトガス及び副生ガス中には溶融塩のミスト(KFを主成分とする)も電解槽から同伴する。このフッ化水素及び溶融塩のミストは、プロダクトガス及び副生ガスが夫々吸着カートリッジ54、74を通過する際に除去される。これにより、第1及び第2配管52、72の入口で溶融塩が固化してこれ等を閉塞させることがなくなり、頻繁にメンテナンスをする必要がなくなる。
【0050】
フッ化水素及び溶融塩のミストを吸着により捕捉する吸着剤として、カートリッジ54、74内には、フッ化ナトリウム(NaF)の多数のペレットが内蔵される。NaFのペレットは、取扱いや圧力損失を考慮し、気体流通路となる隙間がペレット間に形成されるように、適当な形状及び寸法に調製される。また、フッ化ナトリウムのフッ化水素を吸着する能力は温度により変化するため、カートリッジ54、74の周囲には、温度を調節するための温度調節ジャケット(ヒータ)55、75が夫々配設される。フッ化水素を最適に吸着する観点から、カートリッジ54、74は室温〜300℃、望ましくは80〜120℃に設定される。
【0051】
なお、副生ガスは廃棄されるものであるため、必ずしも、副生ガスからフッ化水素を除去する必要はない。即ち、副生ガスが流れる第2配管72に配設されるカートリッジ74は、配管系統の閉塞を防止するため、溶融塩のミストを除去できるものであればよい。かかる観点から、副生ガス用のカートリッジ74に充填される吸着剤としては、フッ化ナトリウムに代えて、フッ化カルシウム、フッ化カリウムなどの無機フッ素化合物を使用することができる。
【0052】
なお、上記実施の形態において、電解槽32内の状態を直接的或いは間接的に表す情報として、陽極室34及び陰極室36内の圧力を用いて、第1及び第2流量制御弁56、76の開度を調整している。しかし、本発明は、電解槽32内の状態を直接的或いは間接的に表す他の情報、例えば、電解槽32内の液面のレベルに基づいて、流量を制御する弁の開度を調整するような装置に対しても同様に適用することができる。
【0053】
また、フッ素ガス生成装置30は、半導体処理システムに着脱可能に組込まれているが、同システム内に固定的に据え付けられるものであってもよい。また、フッ素ガス生成装置30内の幾つかの部材、例えば、コンプレッサ62、主バッファタンク64、除害部78等は、半導体製造工場側に設置されたものを使用することもできる。また、フッ素ガスは、流れ管理部22或いはガス生成部26に択一的に供給されるが、このガスは、他の処理ガスとは別に直接処理室12に供給するようにしてもよい。また、ガス生成部26は、ハロゲン間フッ素化合物ガスではなく、他のフッ素系の処理ガスを生成するように構成することもできる。
【0054】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、長時間の運転においても高い安全性及び信頼性で作動することが可能なフッ素ガス生成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の実施の形態に係る、フッ素ガス生成装置を組込んだ半導体処理システムを示す概略図。
【図2】図1図示のガス供給系と組み合わせて使用される半導体処理装置の変更例を示す概略図。
【図3】溶融塩のミストを除去するNaFカートリッジの機能を確認するための実験装置を示す概略図。
【符号の説明】
10、10x…半導体処理装置、12…処理室、18…排気系、20…ガス供給系、22…流れ管理部、24…ガス貯蔵部、26…ガス生成部、30…ガス生成装置、32…電解槽、34…陽極室、36…陰極室、38…電流源、40…電流積算計、42…陽極、44…陰極、46、48…圧力計、52、72…配管、54、74…吸着カートリッジ、55、75…温度調節ジャケット(ヒータ)、56、76…流量制御弁、57、77…制御部材、58…キャパシタ、64…バッファタンク、62…コンプレッサ、78…除害部、79…排気系。
Claims (6)
- フッ素ガスを生成する装置であって、
フッ化カリウム及びフッ化水素を含む溶融塩からなる電解浴中でフッ化水素を電解することにより、陽極側の第1気相部分にフッ素ガスを主成分とするプロダクトガスを発生させると共に、陰極側の第2気相部分に水素ガスを主成分とする副生ガスを発生させる電解槽と、
前記第1気相部分から前記プロダクトガスを導出する第1配管と、
前記第2気相部分から前記副生ガスを導出する第2配管と、
前記第1配管に配設された前記第1配管を通るガスの流量を制御する第1弁と、
前記電解槽内の状態を直接的或いは間接的に表す情報に基づいて前記第1弁の開度を調整する第1制御部材と、
前記第1弁よりも上流で前記第1配管に配設され且つ前記プロダクトガス中に混入するフッ化水素と前記溶融塩のミストとを吸着するフッ化ナトリウムのペレットを内蔵する第1カートリッジと、
を具備することを特徴とするフッ素ガス生成装置。 - 前記第2配管に配設され且つ前記溶融塩のミストを吸着する吸着剤を内蔵する第2カートリッジを更に具備することを特徴とする請求項1に記載のフッ素ガス生成装置。
- 前記吸着剤はフッ化ナトリウムのペレットを具備することを特徴とする請求項2に記載のフッ素ガス生成装置。
- 前記第2配管に配設された前記第2配管を通るガスの流量を制御する第2弁と、前記電解槽内の状態を直接的或いは間接的に表す情報に基づいて前記第2弁の開度を調整する第2制御部材と、を更に具備し、前記第2カートリッジは前記第2弁よりも上流に配設されることを特徴とする請求項2または3に記載のフッ素ガス生成装置。
- 前記第1及び第2気相部分の圧力を測定する第1及び第2圧力計を更に具備し、前記第1及び第2制御部材は、前記第1及び第2気相部分の圧力が実質的に等しい設定値に維持されるように、前記第1及び第2圧力計の測定結果に基づいて前記第1及び第2弁の開度を夫々調整することを特徴とする請求項4に記載のフッ素ガス生成装置。
- 前記第1カートリッジの温度を調節する温度調節器を更に具備することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のフッ素ガス生成装置。
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