JP2004285363A - 蛍光体粉末及びその製造方法、表示用パネル、並びに、平面型表示装置 - Google Patents

蛍光体粉末及びその製造方法、表示用パネル、並びに、平面型表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】結晶欠陥が少なく、長時間の使用によっても劣化の少ない、即ち、輝度の低下の少ない蛍光体粉末を提供する。
【解決手段】本発明の蛍光体粉末は、燐酸を含有する化合物層によって表面が被覆されていることを特徴とする。
【選択図】 図3

Description

本発明は、蛍光体粉末(蛍光体結晶粒子)及びその製造方法、かかる蛍光体粉末から構成された表示用パネル、並びに、かかる表示用パネル装置から作製された平面型表示装置に関する。
現在主流の陰極線管(CRT)に代わる画像表示装置として、平面型(フラットパネル形式)の表示装置が種々検討されている。このような平面型の表示装置として、液晶表示装置(LCD)、エレクトロルミネッセンス表示装置(ELD)、プラズマ表示装置(PDP)を例示することができる。また、熱的励起によらず、固体から真空中に電子を放出することが可能な冷陰極電界電子放出表示装置、所謂フィールドエミッションディスプレイ(FED)も提案されており、画面の明るさ及び低消費電力の観点から注目を集めている。
冷陰極電界電子放出表示装置の代表的な構成例を図4に示す。この冷陰極電界電子放出表示装置においては、表示用パネル20と背面パネル10とが対向配置され、両パネル10,20は、各々の周縁部において図示しない枠体を介して互いに接着され、両パネル間の閉鎖空間が真空空間とされている。背面パネル10は、電子放出体として冷陰極電界電子放出素子(以下、電界放出素子と呼ぶ)を備えている。図4では、電界放出素子の一例として、円錐形の電子放出電極16を有する、所謂スピント(Spindt)型電界放出素子を示す。スピント型電界放出素子は、基板11上に形成されたストライプ状のカソード電極12と、カソード電極12及び基板11上に形成された絶縁層13と、絶縁層13上に形成されたストライプ状のゲート電極14と、ゲート電極14及び絶縁層13に設けられた開口部15内に形成された円錐形の電子放出電極16から構成されている。尚、電子放出電極16は、開口部15の底部に位置するカソード電極12の部分の上に設けられている。通常、多数の電子放出電極16が、後述する発光層22の1つに対応付けられている。電子放出電極16には、カソード電極駆動回路31からカソード電極12を通じて相対的に負電圧(ビデオ信号)が印加され、ゲート電極14にはゲート電極駆動回路32から相対的に正電圧(走査信号)が印加される。これらの電圧印加によって生じた電界に応じ、電子放出電極16の先端から電子が量子トンネル効果に基づき放出される。尚、電子放出素子としては、上述のようなスピント型電界放出素子に限られず、所謂エッジ型や平面型やクラウン型等、他のタイプの電界放出素子が用いられる場合もある。また、上述とは逆に、走査信号がカソード電極12に入力され、ビデオ信号がゲート電極14に入力される場合もある。
一方、表示用パネル20は、ガラス等から成る支持体21上にドット状あるいはストライプ状に形成された複数の発光層22と、発光層22及び支持体21上に形成された導電性反射膜から成るアノード電極24を有する。アノード電極24には、加速電源(アノード電極駆動回路)33から、ゲート電極14に印加される正電圧よりも高い正電圧が印加され、電子放出電極16から真空空間中へ放出された電子を、発光層22に向かって誘導する役割を果たす。また、アノード電極24は、発光層22を構成する蛍光体粉末(蛍光体粒子)をイオン等の粒子によるスパッタから保護する機能、電子励起によって生じた発光層22の発光を支持体側へ反射させ、支持体21の外側から観察される表示画面の輝度を向上させる機能、及び、過剰な帯電を防止して表示用パネル20の電位を安定化させる機能も有する。即ち、アノード電極24は、アノード電極としての機能を果たすだけでなく、陰極線管(CRT)の分野でメタルバック膜として知られる部材が果たす機能とを兼ねている。アノード電極24は、通常、アルミニウム薄膜を用いて構成されている。尚、発光層22と発光層22との間にはブラックマトリクス23が形成されている。
図5の(A)に、発光層22R,22G,22Bがドット状に形成された表示用パネルの模式的な平面図を示し、図5の(B)に、図5の(A)の線X−Xに沿った模式的な一部断面図を示す。発光層22R,22G,22Bが配列されている領域が冷陰極電界電子放出表示装置としての実用上の機能を果たす有効領域であり、アノード電極の形成領域はこの有効領域にほぼ一致している。図5の(A)では、明確化のために、アノード電極の形成領域に斜線を施した。有効領域の周囲は、周辺回路の収容や表示画面の機械的支持等、有効領域の機能を支援する無効領域である。
尚、冷陰極電界電子放出表示装置におけるアノード電極は、必ずしも上述のように導電性反射膜から成るアノード電極24によって構成されている必要はなく、図5の(A)の線X−Xに沿ったと同様の模式的な一部断面図である図5の(C)に示すように、支持体21上に形成された透明導電膜から成るアノード電極25から構成されていてもよい。支持体21上において、アノード電極24,25の形成領域は、有効領域のほぼ全面に亙っている。
図6の(A)に、発光層22R,22G,22Bがストライプ状に形成された表示用パネルの模式的な平面図を示し、図6の(B)及び(C)に、図6の線X−Xに沿った模式的な一部断面図を示す。図6の参照符号は図5と共通であり、共通部分については詳しい説明を省略する。図6の(B)は、アノード電極24が導電性反射膜から成る構成例、図6の(C)はアノード電極25が透明導電膜から成る構成例を示す。アノード電極24,25の形成領域は、表示用パネルの有効領域のほぼ全面に亙っている。
"Practical Scanning Electron MIcroscopy", J.I. Goldstein and H. Yakowitz, pp 50, Plenum Press, New York (1975)
ところで、平面型表示装置である冷陰極電界電子放出表示装置においては、電子の飛行距離が陰極線管におけるよりも遥かに短く、電子の加速電圧を陰極線管の場合ほど高めることができない。冷陰極電界電子放出表示装置の場合、電子の加速電圧が高過ぎると、背面パネルのゲート電極や電子放出電極と、表示用パネルに設けられたアノード電極との間で火花放電が極めて発生し易くなり、表示品質が著しく損なわれる虞が大きい。従って、加速電圧は10キロボルト程度以下に抑えられている。
このように電子の加速電圧を低く選択せざるを得ない冷陰極電界電子放出表示装置に関しては、この他にも陰極線管にはみられない特有の問題が生じている。高電圧加速が行われる陰極線管においては、発光層への電子の侵入深さが深いために、電子のエネルギーは発光層内の比較的広い領域に受容され、かかる広い領域内に存在する相対的に多数の蛍光体粉末を一斉に励起させ、高輝度を達成することができる。加速電圧を31.5キロボルトとし、発光層をZnSから構成したときの、発光層に入射した電子のエネルギー損失と、発光層への電子の侵入深さの関係を以下の式(1)にて表されるベーテ(Bethe)の式("Practical Scanning Electron MIcroscopy", J.I. Goldstein and H. Yakowitz, pp 50, Plenum Press, New York (1975)参照 )に基づきモンテカルロシミュレーションを行った結果を図38に示す。図38から、加速電圧を31.5キロボルトとしたとき、電子のエネルギー損失のピークは、発光層の表面から約1μmのところに位置することが判る。また、電子は、発光層の表面から約5μmの深さにまで達している。尚、シミュレーションにおいて、電子は1回の散乱で平均約43eV(平均自由行程約4.8nm)のエネルギーを失い、平均150回の弾性散乱を受けて停止するとする。
[数1]
−(dEm/dX)=2πe40(Z/A)(ρ/Em)ln(1.166Em/J) (1)
ところが、冷陰極電界電子放出表示装置においては、加速電圧を10キロボルト程度以下、例えば6キロボルト程度とする必要がある。加速電圧を6キロボルトとし、発光層をZnSから構成したときの、発光層に入射した電子のエネルギー損失と、発光層への電子の侵入深さの関係を上記のベーテの式に基づきモンテカルロシミュレーションを行った結果を図39及び図40に示す。尚、図39においては、発光層の表面に厚さ0.045μmのアルミニウム薄膜が形成され、図40においては、発光層の表面に厚さ0.07μmのアルミニウム薄膜が形成されているとした。図39及び図40からも明らかなように、電子のエネルギー損失のピークは、発光層の最表面近傍に位置することが判る。また、電子は、発光層の表面から約0.2〜0.3μmの深さ程度までしか達していない。このように、加速電圧が陰極線管よりも低い冷陰極電界電子放出表示装置では、発光層への電子の侵入深さが浅く、電子のエネルギーを発光層の狭い領域(特に、発光層の表面近傍)でしか受容することができない。
更には、発光層においては、電子の有するエネルギーの約10%が発光に寄与し、残りの約90%のエネルギーは熱に変換される。即ち、発光層の表面近傍での発熱が大きい。その結果、発光層が例えば硫化物系蛍光体粉末から構成されている場合、その構成元素であるイオウが、単体、又は一酸化イオウ(SO)や二酸化イオウ(SO2)の形で脱離し、硫化物系蛍光体粉末の組成変化や発光中心の消失が生じる。加速電圧を6キロボルトとし、発光層をZnSから構成したときの、発光層に入射した電子のエネルギー損失と、発光層への電子の侵入深さの関係を上記のベーテの式に基づきモンテカルロシミュレーションを行った結果を図41に示す。尚、図41においては、発光層の表面に厚さ0.07μmのアルミニウム薄膜が形成されており、発光層の表面から約0.03μmの厚さのところまでは、ZnSから硫黄(S)が脱離してZnとなっていると仮定した。図41からも明らかなように、電子のエネルギー損失のピークは、ZnSから硫黄(S)が脱離してZnとなっている発光層の領域に位置することが判る。また、電子は、発光層の表面から約0.2μmの深さ程度までしか達していない。
しかも、冷陰極電界電子放出表示装置においては、陰極線管の場合と異なり、或る電界放出素子から放出された電子が衝突する発光層(より具体的には、蛍光体粉末)の位置は概ね一定である。従って、常に電子が衝突する蛍光体粉末の劣化が他の蛍光体粉末に比べて著しく、陰極線管よりも蛍光体粉末の劣化の進行が早い。
また、蛍光体粉末の最表面は、蛍光体粉末の製造工程中あるいは表示用パネルの製造工程中で様々な歪みを受け、格子欠陥が発生し易い。しかも、冷陰極電界電子放出表示装置においては、所望の輝度を得るために、陰極線管よりも高電流密度(放出電子密度)で駆動する必要がある。例えば、陰極線管における電流密度は0.1〜1μA/cm2であるのに対して、冷陰極電界電子放出表示装置では、電流密度は5〜10μA/cm2も必要になる。従って、蛍光体粉末の最表面あるいはその近傍を高励起条件下で作動させる必要があるが、冷陰極電界電子放出表示装置の作動中、蛍光体粉末に新たな結晶欠陥の発生、増殖が生じ易く、これが原因で輝度劣化が早く進行すると考えられる。
以上に説明した発光層あるいは蛍光体粉末の劣化は、発光色や発光効率の変動、冷陰極電界電子放出表示装置内部の構成部材の汚染、ひいては冷陰極電界電子放出表示装置の信頼性や寿命特性の低下につながる。従って、冷陰極電界電子放出表示装置の信頼性や寿命特性を向上させるために、劣化の少ない、即ち、結晶欠陥の少ない発光層あるいは蛍光体粉末が強く要望されている。
陰極線管において、表示の細密化を図るためには、発光層に衝突する電子線ビームのビーム径を小さくする必要がある。即ち、発光層に衝突する電子線ビームの電流密度を増加させる必要がある。しかしながら、このような方法では、特に緑色を発光する蛍光体粉末に損傷が発生し易く、このような現象が生じるとマゼンタ・リングが発生する。ここで、マゼンタ・リングとは、赤色及び青色を発光する蛍光体粉末には損傷が発生し難く、陰極線管において、緑色の補色であるマゼンタ色がリング状に観察される現象を指す。従来の陰極線管においては、発光層に衝突する電子線ビームの電流密度と陰極線管の寿命とは、一種の逆比例の関係にある。従って、発光層に衝突する電子線ビームの電流密度を高くしても陰極線管の寿命を短縮させないために、劣化の少ない、即ち、結晶欠陥の少ない発光層あるいは蛍光体粉末が強く要望されている。
従って、本発明の目的は、結晶欠陥が少なく、長時間の使用によっても劣化の少ない、即ち、輝度の低下の少ない蛍光体粉末、かかる蛍光体粉末から構成された表示用パネル、及び、かかる表示用パネルから作製された平面型表示装置を提供することにある。
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様に係る蛍光体粉末は、II−VI族元素から成るコア材、付活剤、及び、共付活剤から成る蛍光体粉末であって、
コア材を1重量部としたとき、付活剤の割合は1×10-4重量部乃至1×10-3重量部であり、且つ、共付活剤のモル濃度は付活剤のモル濃度と等しいことを特徴とする。
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様に係る表示用パネルは、
支持体、真空空間中から飛来した電子の照射によって発光する蛍光体粉末から成る発光層、及び、電極から成る表示用パネルであって、
該蛍光体粉末は、II−VI族元素から成るコア材、付活剤、及び、共付活剤から成り、
コア材を1重量部としたとき、付活剤の割合は1×10-4重量部乃至1×10-3重量部であり、且つ、共付活剤のモル濃度は付活剤のモル濃度と等しいことを特徴とする。
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様に係る平面型表示装置は、
表示用パネルと、複数の電子放出領域を有する背面パネルとが真空空間を挟んで対向配置されて成る平面型表示装置であって、
表示用パネルは、支持体、電子放出領域から飛来した電子の照射によって発光する蛍光体粉末から成る発光層、及び、電極から成り、
該蛍光体粉末は、II−VI族元素から成るコア材、付活剤、及び、共付活剤から成り、
コア材を1重量部としたとき、付活剤の割合は1×10-4重量部乃至1×10-3重量部であり、且つ、共付活剤のモル濃度は付活剤のモル濃度と等しいことを特徴とする。
尚、本発明の第1の態様に係る蛍光体粉末、表示用パネル並びに平面型表示装置を総称して、便宜上、以下、本発明の第1の態様と呼ぶ場合がある。
本発明の第1の態様においては、付活剤(半導体技術分野におけるアクセプターに相当する)の割合を規定することによって、発光センターの数を充分な数とすることができるので効果的な発光を得ることができ、しかも、発光に寄与しない不純物が増加し、活性効率が低下する濃度消光が生じるといった問題を回避することができる。また、共付活剤(半導体技術分野におけるドナーに相当する)のモル濃度を付活剤のモル濃度と等しくすることによって、極めて高い発光効率を得ることができる。加えて、付活剤の割合を規定し、共付活剤のモル濃度を付活剤のモル濃度と等しくすることによって、得られた蛍光体粉末の結晶性が向上し、長時間の使用によっても劣化の少ない、即ち、輝度の低下の少ない蛍光体粉末を得ることができる。
尚、付活剤や共付活剤の割合は、化学分析、例えば原子吸光分析法によって測定することが可能である。
上記の目的を達成するための本発明の第2の態様に係る蛍光体粉末は、その表面から表面結晶欠陥層あるいは表面歪み層が除去されていることを特徴とする。
上記の目的を達成するための本発明の第2の態様に係る表示用パネルは、
支持体、真空空間中から飛来した電子の照射によって発光する蛍光体粉末から成る発光層、及び、電極から成る表示用パネルであって、
該蛍光体粉末は、その表面から表面結晶欠陥層あるいは表面歪み層が除去されていることを特徴とする。
上記の目的を達成するための本発明の第2の態様に係る平面型表示装置は、
表示用パネルと、複数の電子放出領域を有する背面パネルとが真空空間を挟んで対向配置されて成る平面型表示装置であって、
表示用パネルは、支持体、電子放出領域から飛来した電子の照射によって発光する蛍光体粉末から成る発光層、及び、電極から成り、
該蛍光体粉末は、その表面から表面結晶欠陥層あるいは表面歪み層が除去されていることを特徴とする。
尚、本発明の第2の態様に係る蛍光体粉末、表示用パネル並びに平面型表示装置を総称して、便宜上、以下、本発明の第2の態様と呼ぶ場合がある。
本発明の第2の態様においては、蛍光体粉末は、その表面から表面結晶欠陥層あるいは表面歪み層が除去されているので、得られた蛍光体粉末の結晶性が向上し、長時間の使用によっても劣化の少ない、即ち、輝度の低下の少ない蛍光体粉末を得ることができる。
尚、蛍光体粉末の表面から表面結晶欠陥層あるいは表面歪み層が除去されているか否かは、蛍光体粉末断面薄片試料を作製し、透過型電子顕微鏡による明視野像及び格子像を観察することによって調べることができる。
上記の目的を達成するための本発明の第3の態様に係る蛍光体粉末は、燐酸を含有する化合物層によって表面が被覆されていることを特徴とする。
上記の目的を達成するための本発明の第3の態様に係る表示用パネルは、
支持体、真空空間中から飛来した電子の照射によって発光する蛍光体粉末から成る発光層、及び、電極から成る表示用パネルであって、
該蛍光体粉末は、燐酸を含有する化合物層によって表面が被覆されていることを特徴とする。
上記の目的を達成するための本発明の第3の態様に係る平面型表示装置は、
表示用パネルと、複数の電子放出領域を有する背面パネルとが真空空間を挟んで対向配置されて成る平面型表示装置であって、
表示用パネルは、支持体、電子放出領域から飛来した電子の照射によって発光する蛍光体粉末から成る発光層、及び、電極から成り、
該蛍光体粉末は、燐酸を含有する化合物層によって表面が被覆されていることを特徴とする。
尚、本発明の第3の態様に係る蛍光体粉末、表示用パネル並びに平面型表示装置を総称して、便宜上、以下、本発明の第3の態様と呼ぶ場合がある。
本発明の第3の態様においては、化合物層の平均厚さは、1nm乃至5nmであることが望ましい。化合物層の平均厚さが厚くなり過ぎると、蛍光体粉末から射出された光が化合物層によって吸収されてしまう虞がある。化合物層は出来る限り均一な膜厚を有していることが望ましい。化合物層の形成は、後述する蛍光体粉末の製造工程における表面処理工程において行うことができる。尚、化合物層は、燐酸亜鉛又は燐酸カルシウムから成ることが好ましい。
従来、蛍光体粉末の表面処理として、ゾル−ゲル法にてシリカを蛍光体粉末の表面に付着させる方法、粉末シリカを蛍光体粉末の表面に付着させる方法が採用されている。エネルギー線が蛍光体粉末に照射されるとこれらのシリカが分解し、それに伴い、シリカが付着していた蛍光体粉末の表面における結晶に欠陥が生じることが本発明者の検討によって判明した。燐酸を含有する化合物層を蛍光体粉末に形成する際、かかる化合物層は蛍光体粉末表面において一種のエピタキシャル成長をすると考えられ、化合物層の形成によって蛍光体粉末表面に結晶欠陥が発生し難いが故に、蛍光体粉末の結晶性が向上し、しかも、エネルギー線の照射によっても化合物層に損傷が発生し難いが故に、長時間の使用によっても劣化の少ない、即ち、輝度の低下の少ない蛍光体粉末を得ることができる。
尚、化合物層が蛍光体粉末の表面に形成されているか否かは、蛍光体粉末断面薄片試料を作製し、透過型電子顕微鏡による明視野像及び格子像を観察することによって調べることができるし、膜厚も同様の方法によって測定することができる。
上記の目的を達成するための本発明の第4の態様に係る蛍光体粉末は、輝度対温度特性において、25゜Cにおける輝度の1/2の輝度になる温度T50が200゜C以上であることを特徴とする。
上記の目的を達成するための本発明の第4の態様に係る表示用パネルは、
支持体、真空空間中から飛来した電子の照射によって発光する蛍光体粉末から成る発光層、及び、電極から成る表示用パネルであって、
該蛍光体粉末は、輝度対温度特性において、25゜Cにおける輝度の1/2の輝度になる温度T50が200゜C以上であることを特徴とする。
上記の目的を達成するための本発明の第4の態様に係る平面型表示装置は、
表示用パネルと、複数の電子放出領域を有する背面パネルとが真空空間を挟んで対向配置されて成る平面型表示装置であって、
表示用パネルは、支持体、電子放出領域から飛来した電子の照射によって発光する蛍光体粉末から成る発光層、及び、電極から成り、
該蛍光体粉末は、輝度対温度特性において、25゜Cにおける輝度の1/2の輝度になる温度T50が200゜C以上であることを特徴とする。
尚、本発明の第4の態様に係る蛍光体粉末、表示用パネル並びに平面型表示装置を総称して、便宜上、以下、本発明の第4の態様と呼ぶ場合がある。
本発明の第4の態様においては、温度T50は、200゜C以上、好ましくは250゜C以上、一層好ましくは350゜C以上、更に一層好ましくは400゜C以上であることが望ましい。
本発明の第4の態様においては、温度T50を規定することによって、結晶性が向上した蛍光体粉末を得ることができ、長時間の使用によっても劣化の少ない、即ち、輝度の低下の少ない蛍光体粉末を得ることができる。
尚、このような蛍光体粉末の輝度対温度特性は温度消光特性と呼ばれ、25゜Cでの輝度(輝度初期値)を測定した後、蛍光体粉末を加熱しながら輝度測定を行い、輝度対温度の測定結果からT50を求めることができる。蛍光体粉末を実際に長期間使用する前にあっては、通常、温度を25゜Cに戻すと測定前の輝度初期値に戻る。
本発明の第1の態様〜第4の態様に係る蛍光体粉末には、場合によっては、これらの態様に係る蛍光体粉末を分散媒中に分散させて成る蛍光体粉末組成物が包含される。
本発明の第2の態様〜第4の態様の好ましい形態における蛍光体粉末は、あるいは又、後述する本発明の第1の態様〜第3の態様に係る蛍光体粉末の製造方法における蛍光体粉末は、II−VI族元素から成るコア材、付活剤、及び、共付活剤から成り、コア材を1重量部としたとき、付活剤の割合は1×10-4重量部(100ppm)乃至1×10-3重量部(1000ppm)であり、且つ、共付活剤のモル濃度は付活剤のモル濃度と等しいことが好ましい。この場合、あるいは又、本発明の第1の態様にあっては、コア材を1重量部としたとき、付活剤の割合を、好ましくは3×10-4重量部(300ppm)乃至8×10-4重量部(800ppm)、一層好ましくは5×10-4重量部(500ppm)乃至6×10-4重量部(600ppm)とすることが望ましい。付活剤の割合が1×10-4重量部未満であると、発光センターが少なすぎ、発光が生じ難くなる。一方、付活剤の割合が1×10-3重量部を越えると、発光に寄与しない不純物が増加し、活性効率が低下する濃度消光が生じる虞がある。共付活剤のモル濃度が付活剤のモル濃度と等しい、即ち、共付活剤の原子数(アトミック%)が付活剤の原子数(アトミック%)と等しいとは、付活剤のモル濃度を1.00としたとき、共付活剤のモル濃度を0.95〜1.05、好ましくは0.98〜1.02、一層好ましくは出来る限り1.00に近づけることを意味する。
本発明の第2の態様〜第4の態様の好ましい形態における蛍光体粉末において、更には、後述する本発明の第1の態様〜第3の態様に係る蛍光体粉末の製造方法において、コア材をII−VI族元素から構成する場合、あるいは又、本発明の第1の態様においては、コア材を構成する元素は亜鉛(Zn)及び硫黄(S)であり、付活剤を構成する元素は銀(Ag)であり、共付活剤を構成する元素はアルミニウム(Al)である構成とすることができる。この蛍光体粉末は、青色を発光する。あるいは又、コア材を構成する元素は亜鉛(Zn)及び硫黄(S)であり、付活剤を構成する元素は銅(Cu)であり、共付活剤を構成する元素はアルミニウム(Al)である構成とすることができる。この蛍光体粉末は、緑色を発光する。
尚、コア材を構成するII族元素として、亜鉛(Zn)以外にもカドミウム(Cd)を挙げることができ、VI族元素として、硫黄(S)以外にもセレン(Se)、テルル(Te)を挙げることができる。即ち、コア材を構成するII/VI族元素の組合せとして、(Zn/S)、(Zn/Se)、(Zn/Te)、(Zn/S,Se)、(Zn/S,Te)、(Zn/Se,Te)、(Zn/S,Se,Te)、(Cd/S)、(Cd/Se)、(Cd/Te)、(Cd/S,Se)、(Cd/S,Te)、(Cd/Se,Te)、(Cd/S,Se,Te)、(Zn,Cd/S)、(Zn,Cd/Se)、(Zn,Cd/Te)、(Zn,Cd/S,Se)、(Zn,Cd/S,Te)、(Zn,Cd/Se,Te)、(Zn,Cd/S,Se,Te)を挙げることができる。
また、付活剤として、銀(Ag)、銅(Cu)以外にも、金(Au)を挙げることができ、この場合には、蛍光体粉末は緑色を発光する。更には、共付活剤として、アルミニウム(Al)以外にも、ガリウム(Ga)、インジウム(In)を挙げることができる。
本発明の第1の態様における蛍光体粉末の具体例として、あるいは又、本発明の第2の態様〜第4の態様の好ましい形態における蛍光体粉末の具体例として、更には、後述する本発明の第1の態様〜第3の態様に係る蛍光体粉末の製造方法によって製造される蛍光体粉末の具体例として、青色を発光する蛍光体粉末に関しては、ZnS:Ag,Al、ZnS:Ag,Gaを挙げることができ、また、緑色を発光する蛍光体粉末に関しては、ZnS:Cu,Al、ZnS:Cu,Au,Al、(Zn,Cd)S:Cu,Al、(Zn,Cd)S:Ag,Al、Zn(S,Se):Ag,Alを挙げることができる。
また、本発明の第2の態様〜第4の態様に係る蛍光体粉末として、更には、後述する本発明の第1の態様〜第3の態様に係る蛍光体粉末の製造方法によって製造される蛍光体粉末の具体例として、上記の他、具体的には、青色を発光する蛍光体粉末に関しては、ZnS:Agを挙げることができる。また、緑色を発光する蛍光体粉末に関しては、Zn2SiO4:Mn2+、(Zn,Cd)S:Ag、(Zn,Cd)S:Cuを挙げることができる。更には、赤色を発光する蛍光体粉末に関しては、Zn3(PO42:Mn2+、(Zn,Cd)S:Ag、YVO4:Eu3+、Y22S:Eu3+、Y23:Eu3+を挙げることができる。また、赤橙色を発光する蛍光体粉末としてY22S:Eu3+を、紫青色を発光する蛍光体粉末としてZnS:Agを挙げることができる。
本発明の第1の態様〜第4の態様にあっては、蛍光体粉末に含まれる塩素系化合物(例えば、NaCl)の塩素濃度が、20ppm以下、あるいは又、測定機器の検出限界以下であることが好ましい。ここで、塩素系化合物は、後述する蛍光体粉末の製造工程における焼成工程の焼成温度を低下させるために、コア材を付活剤及び共付活剤と混合する工程において添加される。蛍光体粉末に含まれる塩素系化合物の塩素濃度が高いと、蛍光体粉末の結晶性が低下する虞があるので、塩素濃度は上記のとおりの値以下とすることが望ましい。
本発明の第3の態様を本発明の第2の態様と組み合わせることもできる。即ち、化合物層の直下の蛍光体粉末表面から表面結晶欠陥層あるいは表面歪み層が除去されている構成とすることができる。あるいは又、本発明の第4の態様を本発明の第2の態様と組み合わせることもできる。即ち、蛍光体粉末の表面から、表面結晶欠陥層あるいは表面歪み層が除去されている構成とすることができる。また、本発明の第4の態様を本発明の第3の態様と組み合わせることもできる。即ち、燐酸を含有する化合物層によって蛍光体粉末の表面が被覆されている構成とすることもできる。
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様に係る蛍光体粉末の製造方法(以下、本発明の第1の態様に係る製造方法と呼ぶ場合がある)は、
溶液の調製工程及び反応工程を経てコア材を製造した後、該コア材を付活剤及び共付活剤と混合し、次いで、焼成工程、表面処理工程を経て蛍光体粉末を製造する方法であって、
焼成工程と表面処理工程の間で、焼成品の表面に形成された表面結晶欠陥層あるいは表面歪み層を除去する除去工程を具備することを特徴とする。
本発明の第1の態様に係る製造方法においては、蛍光体粉末の表面から表面結晶欠陥層あるいは表面歪み層を除去するので、蛍光体粉末の結晶性が向上し、長時間の使用によっても劣化の少ない、即ち、輝度の低下の少ない蛍光体粉末を得ることができる。
本発明の第1の態様に係る製造方法において、除去工程は、アニール処理あるいはエッチング処理から構成することができる。ここで、アニール処理の温度は焼成工程における焼成温度よりも低いことが望ましい。更には、アニール雰囲気を還元性雰囲気あるいは不活性ガス雰囲気とすることが、蛍光体粉末の酸化を防止するといった観点から好ましい。あるいは又、エッチング処理において、燐酸(例えば、60゜Cの熱燐酸)にCrO3を添加した過飽和溶液と濃塩酸を1:2で混合した溶液をエッチング液として用いることが望ましい。
本発明の第1の態様に係る製造方法においては、焼成工程と除去工程との間に洗浄工程を備え、蛍光体粉末に含まれる塩素系化合物(例えば、NaCl)の塩素濃度が、20ppm以下、あるいは又、測定機器の検出限界以下となるように、焼成品を洗浄することが好ましい。これによって、蛍光体粉末の結晶性を向上させることができる。また、表面処理工程において、蛍光体粉末の表面を、燐酸を含有する化合物層で被覆することが好ましい。尚、化合物層の平均厚さは、1nm乃至5nmであることが好ましい。また、化合物層は、燐酸亜鉛又は燐酸カルシウムから構成されていることが好ましい。これによっても、蛍光体粉末の結晶性を向上させることができる。蛍光体粉末の表面を、燐酸を含有する化合物層で被覆するためには、例えば、燐酸を含有する化合物の溶液を調製し、かかる溶液中に蛍光体粉末を浸漬した後、蛍光体粉末を乾燥させればよい。以下の本発明の第2の態様若しくは第3の態様に係る蛍光体粉末の製造方法においても同様である。
上記の目的を達成するための本発明の第2の態様に係る蛍光体粉末の製造方法(以下、本発明の第2の態様に係る製造方法と呼ぶ場合がある)は、
溶液の調製工程及び反応工程を経てコア材を製造した後、該コア材を付活剤及び共付活剤と混合し、次いで、焼成工程、表面処理工程を経て蛍光体粉末を製造する方法であって、
焼成工程の後に洗浄工程を備え、蛍光体粉末に含まれる塩素系化合物の塩素濃度が20ppm以下となるように、焼成品を洗浄することを特徴とする。
本発明の第2の態様に係る製造方法にあっては、表面処理工程において、蛍光体粉末の表面を、燐酸を含有する化合物層で被覆することが好ましい。
上記の目的を達成するための本発明の第3の態様に係る蛍光体粉末の製造方法(以下、本発明の第3の態様に係る製造方法と呼ぶ場合がある)は、
溶液の調製工程及び反応工程を経てコア材を製造した後、該コア材を付活剤及び共付活剤と混合し、次いで、焼成工程、表面処理工程を経て蛍光体粉末を製造する方法であって、
表面処理工程において、蛍光体粉末の表面を、燐酸を含有する化合物層で被覆することを特徴とする。
本発明の蛍光体粉末に基づき、例えば、冷陰極電界電子放出表示装置あるいはそのフロントパネル(アノードパネル)、民生用(家庭用)、産業用(例えば、コンピュータディスプレイ用)、デジタル放送用あるいはプロジェクション型の陰極線管あるいはそのフェースプレート、プラズマ表示装置あるいはそのリアパネルを構成することができる。尚、AC駆動型やDC駆動型のプラズマ表示装置のリアパネルは、例えば、支持体と、支持体上に形成された隔壁(リブ)と、隔壁と隔壁との間の支持体上に形成された各種電極(例えばデータ電極)と、隔壁と隔壁との間に形成された蛍光体粉末から成る発光層から構成されている。冷陰極電界電子放出表示装置のフロントパネル(アノードパネル)、陰極線管のフェースプレートについては後述する。
本発明の表示用パネルとして、民生用(家庭用)、産業用(例えば、コンピュータディスプレイ用)、デジタル放送用あるいはプロジェクション型の陰極線管の所謂フェースプレート、あるいは又、冷陰極電界電子放出表示装置を構成するフロントパネル(アノードパネル)を例示することができる。陰極線管のフェースプレートは、一般に、ガラスパネル(本発明の表示用パネルにおける支持体に相当する)、及び、蛍光体粉末から成り、ガラスパネルの内面にストライプ状あるいはドット状に形成された発光層、発光層と発光層との間のガラスパネル内面に形成されたブラックマトリクス、並びに、発光層及びブラックマトリクス上に形成されたメタルバック膜(本発明の表示用パネルにおける電極に相当する)から構成されている。また、冷陰極電界電子放出表示装置のフロントパネル(アノードパネル)は、支持体、蛍光体粉末から成る、ストライプ状あるいはドット状に形成された発光層(カラー表示用の場合、ストライプ状又はドット状にパターニングされた赤(R)、緑(G)、青(B)の三原色に対応する発光層が交互に配置されている)、並びに、アノード電極(本発明の表示用パネルにおける電極に相当する)から構成されている。尚、発光層と発光層との間にブラックマトリクスが形成されていてもよい。
本発明の平面型表示装置における表示用パネルとして、上述の冷陰極電界電子放出表示装置を構成するフロントパネル(アノードパネル)を例示することができる。
本発明の表示用パネルあるいは平面型表示装置における表示用パネルにおいては、発光層をスクリーン印刷法あるいはスラリー法に基づき形成することができる。スクリーン印刷法による場合には、蛍光体粉末組成物を支持体(場合によっては電極及び支持体)上に印刷し、乾燥、焼成を経て発光層を形成することができる。また、スラリー法による場合には、感光性ポリマーを含むスラリー状の蛍光体粉末組成物を支持体(場合によっては電極及び支持体)上に塗布して塗膜を形成し、露光により感光性ポリマーを現像液に対して不溶化することで発光層を形成することができる。(R,G,B)の三原色を表示する場合には、3種類の蛍光体粉末組成物あるいは3種類のスラリーを順次用い、スクリーン印刷法又はスラリー法に基づき各色を発光する発光層を形成すればよい。
ここで、蛍光体粉末組成物における分散媒として純水を挙げることができる。蛍光体粉末組成物のその他の組成として、例えば、分散剤、保持剤としてのポリビニルアルコールを挙げることができ、更には、感光性ポリマーとして重クロム酸アンモニウムを挙げることができる。尚、本発明における蛍光体粉末の表面には、分散性向上、接着性の向上を目的として、その製造時、表面処理を施してもよい。
本発明の蛍光体粉末を発光させるためのエネルギー線として電子線ビームを挙げることができる。この場合、蛍光体粉末を照射する電子線ビームのエネルギーを0.5keV乃至35keVとすることが好ましい。尚、このような構成においては、具体的には、蛍光体粉末によって、冷陰極電界電子放出表示装置あるいはそのフロントパネル(アノードパネル)、民生用(家庭用)、産業用(例えば、コンピュータディスプレイ用)、デジタル放送用あるいはプロジェクション型の陰極線管あるいはそのフェースプレートを構成することができる。あるいは又、蛍光体粉末を照射する電子線ビームのエネルギーは0.5keV乃至10keVであり、蛍光体粉末の表面から電子線ビームが侵入する深さは例えば0.5μm以下である構成とすることができる。尚、このような構成においては、具体的には、蛍光体粉末によって、冷陰極電界電子放出表示装置あるいはそのフロントパネル(アノードパネル)を構成することができる。あるいは又、本発明の蛍光体粉末において、エネルギー線として紫外線を挙げることができ、この場合、蛍光体粉末を照射する紫外線の波長を100nm乃至400nmとすることが好ましい。尚、このような構成においては、具体的には、蛍光体粉末によって、プラズマ表示装置あるいはそのリアパネルを構成することができる。
本発明の平面型表示装置においては、
各電子放出領域は、1又は複数の冷陰極電界電子放出素子から成り、
冷陰極電界電子放出素子は、
(イ)基板と、
(ロ)基板上に設けられたストライプ状のカソード電極と、
(ハ)基板及びカソード電極上に形成された絶縁層と、
(ニ)絶縁層上に設けられたストライプ状のゲート電極と、
(ホ)ゲート電極及び絶縁層を貫通する開口部と、
(ヘ)開口部の底部に位置するカソード電極の部分の上に設けられた電子放出電極、
から成り、
開口部の底部に露出した電子放出電極から電子が放出される構造とすることができる。
尚、このような構造を、便宜上、第1の構造を有する冷陰極電界電子放出素子と呼ぶ。かかる冷陰極電界電子放出素子の形式として、スピント型(円錐形の電子放出電極が、開口部の底部に位置するカソード電極の部分の上に設けられた冷陰極電界電子放出素子)、クラウン型(王冠状の電子放出電極が、開口部の底部に位置するカソード電極の部分の上に設けられた冷陰極電界電子放出素子)、扁平型(略平面の電子放出電極が、開口部の底部に位置するカソード電極の部分の上に設けられた冷陰極電界電子放出素子)を挙げることができる。
あるいは又、本発明の平面型表示装置においては、
各電子放出領域は、1又は複数の冷陰極電界電子放出素子から成り、
冷陰極電界電子放出素子は、
(イ)基板と、
(ロ)基板上に設けられたストライプ状のカソード電極と、
(ハ)基板及びカソード電極上に形成された絶縁層と、
(ニ)絶縁層上に設けられたストライプ状のゲート電極と、
(ホ)ゲート電極及び絶縁層を貫通し、底部にカソード電極が露出した開口部、
から成り、
開口部の底部に露出したカソード電極の部分から電子を放出する構造とすることができる。
尚、このような構造を、便宜上、第2の構造を有する冷陰極電界電子放出素子と呼ぶ。かかる冷陰極電界電子放出素子の形式として、平坦なカソード電極の表面から電子を放出する平面型冷陰極電界電子放出素子、凹凸が形成されたカソード電極の表面の凸部から電子を放出するクレータ型冷陰極電界電子放出素子を挙げることができる。
更には、本発明の平面型表示装置においては、
各電子放出領域は、1又は複数の冷陰極電界電子放出素子から成り、
冷陰極電界電子放出素子は、
(イ)基板と、
(ロ)基板の上方に設けられ、エッジ部を有するストライプ状のカソード電極と、
(ハ)少なくともカソード電極上に形成された絶縁層と、
(ニ)絶縁層上に設けられたストライプ状のゲート電極と、
(ホ)少なくともゲート電極及び絶縁層を貫通する開口部、
から成り、
開口部の底部若しくは側壁に露出したカソード電極のエッジ部から電子を放出する構造とすることができる。
尚、このような構造を、便宜上、第3の構造を有する冷陰極電界電子放出素子、あるいはエッジ型冷陰極電界電子放出素子と呼ぶ。
第1の構造、第2の構造若しくは第3の構造を有する冷陰極電界電子放出素子にあっては、ゲート電極を構成する材料として、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、鉄(Fe)、白金(Pt)及び亜鉛(Zn)から成る群から選択された少なくとも1種類の金属、これらの金属元素を含む合金あるいは化合物(例えばTiN等の窒化物や、WSi2、MoSi2、TiSi2、TaSi2等のシリサイド)、あるいはシリコン(Si)等の半導体、ITO(インジウム錫酸化物)、酸化インジウム、酸化亜鉛等の導電性金属酸化物を例示することができる。ゲート電極を作製するには、CVD法、スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法、電解メッキ法、無電解メッキ法、スクリーン印刷法、レーザーアブレーション法、ゾル−ゲル法等の公知の薄膜形成技術により、上述の構成材料から成る薄膜を絶縁層上に形成する。尚、薄膜を絶縁層の全面に形成した場合には、公知のパターニング技術を用いて薄膜をパターニングし、ストライプ状のゲート電極を形成する。ストライプ状のゲート電極の形成後、ゲート電極に開口部を形成してもよいし、ストライプ状のゲート電極の形成と同時に、ゲート電極に開口部を形成してもよい。また、薄膜を形成する前の絶縁層上に予めレジストパターンを形成しておけば、リフトオフ法によるストライプ状のゲート電極の形成が可能である。更には、ゲート電極の形状に応じた開口部を有するマスクを用いて蒸着を行ったり、かかる開口部を有するスクリーンを用いてスクリーン印刷を行えば、成膜後のパターニングは不要となる。また、ゲート電極を、開口部を有し、導電性材料から成るストライプ状の薄層を予め作製しておき、かかる薄層を絶縁層上に固定することによって、絶縁層上にゲート電極を設けることもできる。
スピント型冷陰極電界電子放出素子から成る第1の構造を有する冷陰極電界電子放出素子にあっては、電子放出電極を構成する材料として、タングステン、タングステン合金、モリブデン、モリブデン合金、チタン、チタン合金、ニオブ、ニオブ合金、タンタル、タンタル合金、クロム及びクロム合金、不純物を含有するシリコン(ポリシリコンやアモルファスシリコン)から成る群から選択された少なくとも1種類の材料を挙げることができる。
クラウン型冷陰極電界電子放出素子から成る第1の構造を有する冷陰極電界電子放出素子にあっては、電子放出電極を構成する材料として、導電性粒子、あるいは、導電性粒子とバインダの組合せを挙げることができる。導電性粒子として、黒鉛等のカーボン系材料;タングステン(W)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)等の高融点金属;あるいはITO(インジウム錫酸化物)等の透明導電材料を挙げることができる。バインダとして、例えば水ガラスといったガラスや汎用樹脂を使用することができる。汎用樹脂として、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロースエステル樹脂、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂を例示することができる。電子放出効率の向上のためには、導電性粒子の粒径が電子放出電極の寸法に比べて十分に小さいことが好ましい。導電性粒子の形状は、球形、多面体、板状、針状、柱状、不定形等、特に限定されないが、導電性粒子の露出部が鋭い突起となり得るような形状であることが好ましい。寸法や形状の異なる導電性粒子を混合して使用してもよい。
扁平型冷陰極電界電子放出素子から成る第1の構造を有する冷陰極電界電子放出素子にあっては、電子放出電極を構成する材料として、カソード電極を構成する材料よりも仕事関数Φの小さい材料から構成することが好ましく、どのような材料を選択するかは、カソード電極を構成する材料の仕事関数、ゲート電極とカソード電極との間の電位差、要求される放出電子電流密度の大きさ等に基づいて決定すればよい。冷陰極電界電子放出素子におけるカソード電極を構成する代表的な材料として、タングステン(Φ=4.55eV)、ニオブ(Φ=4.02〜4.87eV)、モリブデン(Φ=4.53〜4.95eV)、アルミニウム(Φ=4.28eV)、銅(Φ=4.6eV)、タンタル(Φ=4.3eV)、クロム(Φ=4.5eV)、シリコン(Φ=4.9eV)を例示することができる。電子放出電極は、これらの材料よりも小さな仕事関数Φを有していることが好ましく、その値は概ね3eV以下であることが好ましい。かかる材料として、炭素(Φ<1eV)、セシウム(Φ=2.14eV)、LaB6(Φ=2.66〜2.76eV)、BaO(Φ=1.6〜2.7eV)、SrO(Φ=1.25〜1.6eV)、Y23(Φ=2.0eV)、CaO(Φ=1.6〜1.86eV)、BaS(Φ=2.05eV)、TiN(Φ=2.92eV)、ZrN(Φ=2.92eV)を例示することができる。仕事関数Φが2eV以下である材料から電子放出電極を構成することが、一層好ましい。尚、電子放出電極を構成する材料は、必ずしも導電性を備えている必要はない。
特に好ましい電子放出電極の構成材料として、炭素、より具体的にはダイヤモンド、中でもアモルファスダイヤモンドを挙げることができる。電子放出電極をアモルファスダイヤモンドから構成する場合、5×107V/m以下の電界強度にて、平面型表示装置に必要な放出電子電流密度を得ることができる。また、アモルファスダイヤモンドは電気抵抗体であるため、各電子放出電極から得られる放出電子電流を均一化することができ、よって、平面型表示装置に組み込まれた場合の輝度ばらつきの抑制が可能となる。更に、アモルファスダイヤモンドは、平面型表示装置内の残留ガスのイオンによるスパッタ作用に対して極めて高い耐性を有するので、冷陰極電界電子放出素子の長寿命化を図ることができる。
あるいは又、電子放出電極を構成する材料として、かかる材料の2次電子利得δがカソード電極を構成する導電性材料の2次電子利得δよりも大きくなるような材料から適宜選択してもよい。即ち、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、金(Au)、コバルト(Co)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)等の金属;シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)等の半導体;炭素やダイヤモンド等の無機単体;及び酸化アルミニウム(Al23)、酸化バリウム(BaO)、酸化ベリリウム(BeO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化錫(SnO2)、フッ化バリウム(BaF2)、フッ化カルシウム(CaF2)等の化合物の中から、適宜選択することができる。尚、電子放出電極を構成する材料は、必ずしも導電性を備えている必要はない。
第2の構造を有する冷陰極電界電子放出素子(平面型冷陰極電界電子放出素子あるいはクレータ型冷陰極電界電子放出素子)、若しくは第3の構造を有する冷陰極電界電子放出素子(エッジ型冷陰極電界電子放出素子)にあっては、電子放出領域に相当するカソード電極を構成する材料として、タングステン(W)やタンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)等の金属、あるいはこれらの合金や化合物(例えばTiN等の窒化物や、WSi2、MoSi2、TiSi2、TaSi2等のシリサイド)、あるいはダイヤモンド等の半導体、炭素薄膜を例示することができる。かかるカソード電極の厚さは、おおよそ0.05〜0.5μm、好ましくは0.1〜0.3μmの範囲とすることが望ましいが、かかる範囲に限定するものではない。カソード電極の形成方法として、例えば電子ビーム蒸着法や熱フィラメント蒸着法といった蒸着法、スパッタ法、CVD法やイオンプレーティング法とエッチング法との組合せ、スクリーン印刷法、メッキ法等を挙げることができる。スクリーン印刷法やメッキ法によれば、直接、ストライプ状のカソード電極を形成することが可能である。
あるいは又、第2の構造(平面型冷陰極電界電子放出素子あるいはクレータ型冷陰極電界電子放出素子)、第3の構造を有する冷陰極電界電子放出素子(エッジ型冷陰極電界電子放出素子)、あるいは、扁平型冷陰極電界電子放出素子から成る第1の構造を有する冷陰極電界電子放出素子にあっては、カソード電極や電子放出電極を、導電性微粒子を分散させた導電性ペーストを用いて形成することもできる。導電性微粒子としては、グラファイト粉末;酸化バリウム粉末、酸化ストロンチウム粉末、金属粉末の少なくとも一種を混合したグラファイト粉末;窒素、リン、ホウ素、トリアゾール等の不純物を含むダイヤモンド粒子又はダイヤモンドライク・カーボン粉末;カーボン・ナノ・チューブ粉末;(Sr,Ba,Ca)CO3粉末;シリコン・カーバイド粉末を例示することができる。特に、導電性微粒子としてグラファイト粉末を選択することが、閾値電界の低減や電子放出領域の耐久性の観点から好ましい。導電性微粒子の形状を、球状、鱗片状の他、任意の定形形状や不定形形状とすることができる。また、導電性微粒子の粒径は、カソード電極や電子放出電極の厚さやパターン幅以下であればよい。粒径が小さい方が、単位面積当たりの放出電子数を増大させることができるが、あまり小さ過ぎるとカソード電極や電子放出電極の導電性が劣化する虞がある。よって、好ましい粒径の範囲はおおよそ0.01〜4.0μmである。かかる導電性微粒子をガラス成分その他の適当なバインダと混合して導電性ペーストを調製し、この導電性ペースを用いてスクリーン印刷法により所望のパターンを形成した後、パターンを焼成することによって電子放出領域として機能するカソード電極や電子放出電極を形成することができる。あるいは、スピンコーティング法とエッチング技術の組み合わせにより、電子放出領域として機能するカソード電極や電子放出電極を形成することもできる。
第1の構造〜第3の構造を有する冷陰極電界電子放出素子にあっては、収束電極を設けてもよい。収束電極とは、電子放出電極からアノードパネルのアノード電極へと向かう放出電子の軌道を収束させ、以て、輝度の向上や隣接画素間の光学的クロストークの防止を可能とするための電極である。収束電極は、有効領域を1枚のシート状の導電材料で被覆した形式の収束電極としてもよいし、1又は複数の電子放出電極、あるいは、1又は複数の画素に対応する収束電極ユニットが集合した形式の収束電極としてもよい。収束電極には相対的な負電圧が印加される。収束電極は、冷陰極電界電子放出素子と一体に設けてもよいし、冷陰極電界電子放出素子とは別個に設けてもよい。収束電極には、電子放出電極から放出された電子を通過させるための開口部を形成しておく必要があるが、かかる開口部は、1つの電子放出電極に対応して1つ設けてもよいし、複数の電子放出電極に対応して1つ設けてもよい。収束電極は、例えば、ゲート電極と同じ材料から構成すればよく、その形成方法もゲート電極の形成方法と同様の形成方法とすることができる。
また、スピント型冷陰極電界電子放出素子やクラウン型冷陰極電界電子放出素子から成る第1の構造を有する冷陰極電界電子放出素子にあっては、カソード電極を構成する材料として、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)等の金属、これらの金属元素を含む合金あるいは化合物(例えばTiN等の窒化物や、WSi2、MoSi2、TiSi2、TaSi2等のシリサイド)、あるいはシリコン(Si)等の半導体、ITO(インジウム錫酸化物)を例示することができる。カソード電極の形成方法として、例えば電子ビーム蒸着法や熱フィラメント蒸着法といった蒸着法、スパッタ法、CVD法やイオンプレーティング法とエッチング法との組合せ、スクリーン印刷法、メッキ法等を挙げることができる。スクリーン印刷法やメッキ法によれば、直接、ストライプ状のカソード電極を形成することが可能である。
本発明の平面型表示装置における電極に相当するアノード電極の構成材料は、平面型表示装置の構成によって適宜選択すればよい。即ち、平面型表示装置が透過型(表示用パネルが表示面に相当する)であって、且つ、支持体上にアノード電極と発光層がこの順に積層されている場合には、支持体は元より、アノード電極自身も透明である必要があり、ITO(インジウム錫酸化物)等の透明導電材料を用いる。一方、平面型表示装置が反射型(背面パネルが表示面に相当する)である場合、及び、透過型であっても支持体上に発光層とアノード電極とがこの順に積層されている場合には、ITOの他、カソード電極やゲート電極に関連して上述した材料を適宜選択して用いることができる。アノード電極と発光層の構成例として、(1)支持体上に、アノード電極を形成し、アノード電極の上に発光層を形成する構成、(2)支持体上に、発光層を形成し、発光層上にアノード電極を形成する構成、を挙げることができる。尚、(1)の構成において、発光層の上に、アノード電極と導通した所謂メタルバック膜を形成してもよい。また、(2)の構成において、アノード電極の上にメタルバック膜を形成してもよい。
第1の構造〜第3の構造を有する冷陰極電界電子放出素子において、ストライプ状のゲート電極の射影像とストライプ状のカソード電極の射影像とが直交する方向に延びていることが、平面型表示装置の構造の簡素化の観点から好ましい。尚、ストライプ状のカソード電極とストライプ状のゲート電極の射影像が重複する重複領域(単色表示装置の1画素分の領域、あるいは又、カラー表示装置の1画素を構成する3つのサブピクセルの内の1つのサブピクセル分の領域に相当する)に電子放出領域(1又は複数の冷陰極電界電子放出素子から構成されている)が設けられており、かかる重複領域が、背面パネルの有効領域(実際の表示画面として機能する領域)内に、通常、2次元マトリクス状に配列されている。
第1の構造〜第3の構造を有する冷陰極電界電子放出素子において、開口部の平面形状(基板表面と平行な仮想平面で開口部を切断したときの形状)は、円形、楕円形、矩形、多角形、丸みを帯びた矩形、丸みを帯びた多角形等、任意の形状とすることができる。開口部の形成は、例えば、等方性エッチング、異方性エッチングと等方性エッチングの組合せによって行うことができる。また、絶縁層の構成材料として、SiO2、SiN、SiON、SOG(スピンオングラス)を、単独あるいは適宜組み合わせて使用することができる。絶縁層の形成には、CVD法、塗布法、スパッタリング法、スクリーン印刷法等の公知のプロセスが利用できる。尚、絶縁層を隔壁状に形成してもよい。この場合、隔壁状の絶縁層を、隣り合うストライプ状のカソード電極の間の領域、あるいは、複数のカソード電極を一群のカソード電極群としたとき、隣り合うカソード電極群の間の領域に形成すればよい。隔壁状の絶縁層を構成する材料として、従来公知の絶縁材料を使用することができ、例えば、広く用いられている低融点ガラスにアルミナ等の金属酸化物を混合した材料を用いることができる。隔壁状の絶縁層の形成方法として、スクリーン印刷法、サンドブラスト法、ドライフィルム法、感光法を例示することができる。ドライフィルム法とは、基板上に感光性フィルムをラミネートし、露光及び現像によって隔壁状の絶縁層を形成すべき部位の感光性フィルムを除去し、除去によって生じた開口部に絶縁層材料を埋め込み、焼成する方法である。感光性フィルムは焼成によって燃焼、除去され、開口部に埋め込まれた隔壁形成用の絶縁層材料が残り、隔壁状の絶縁層となる。感光法とは、基板上に感光性を有する隔壁形成用の絶縁層材料を形成し、露光及び現像によってこの絶縁層材料をパターニングした後、焼成を行う方法である。
第1の構造〜第3の構造を有する冷陰極電界電子放出素子において、カソード電極と電子放出電極との間に抵抗体層を設けてもよい。あるいは又、カソード電極の表面あるいはそのエッジ部が電子放出領域に相当している場合、カソード電極を導電材料層、抵抗体層、電子放出領域に相当する電子放出層の3層構成としてもよい。抵抗体層を設けることによって、冷陰極電界電子放出素子の動作安定化、電子放出特性の均一化を図ることができる。抵抗体層を構成する材料として、シリコンカーバイド(SiC)といったカーボン系材料、SiN、アモルファスシリコン等の半導体材料、酸化ルテニウム(RuO2)、酸化タンタル、窒化タンタル等の高融点金属酸化物を例示することができる。抵抗体層の形成方法として、スパッタ法や、CVD法やスクリーン印刷法を例示することができる。抵抗値は、概ね1×105〜1×107Ω、好ましくは数MΩとすればよい。
本発明の平面型表示装置において、背面パネルを構成する基板あるいは表示用パネルを構成する支持体は、少なくとも表面が絶縁性部材より構成されていればよく、ガラス基板、表面に絶縁膜が形成されたガラス基板、石英基板、表面に絶縁膜が形成された石英基板、表面に絶縁膜が形成された半導体基板を挙げることができる。
本発明の平面型表示装置において、背面パネルと表示用パネルとを周縁部において接合する場合、接合は接着層を用いて行ってもよいし、あるいはガラスやセラミック等の絶縁剛性材料から成る枠体と接着層とを併用して行ってもよい。枠体と接着層とを併用する場合には、枠体の高さを適宜選択することにより、接着層のみを使用する場合に比べ、背面パネルと表示用パネルとの間の対向距離をより長く設定することが可能である。尚、接着層の構成材料としては、フリットガラスが一般的であるが、融点が120〜400゜C程度の所謂低融点金属材料を用いてもよい。かかる低融点金属材料としては、In(インジウム:融点157゜C);インジウム−金系の低融点合金;Sn80Ag20(融点220〜370゜C)、Sn95Cu5(融点227〜370゜C)等の錫(Sn)系高温はんだ;Pb97.5Ag2.5(融点304゜C)、Pb94.5Ag5.5(融点304〜365゜C)、Pb97.5Ag1.5Sn1.0(融点309゜C)等の鉛(Pb)系高温はんだ;Zn95Al5(融点380゜C)等の亜鉛(Zn)系高温はんだ;Sn5Pb95(融点300〜314゜C)、Sn2Pb98(融点316〜322゜C)等の錫−鉛系標準はんだ;Au88Ga12(融点381゜C)等のろう材(以上の添字は全て原子%を表す)を例示することができる。
本発明の平面型表示装置において、背面パネルと表示用パネルと枠体の三者を接合する場合、三者を同時に接合してもよいし、あるいは、第1段階で背面パネル又は表示用パネルのいずれか一方と枠体とを接合し、第2段階で背面パネル又は表示用パネルの他方と枠体とを接合してもよい。三者同時接合や第2段階における接合を高真空雰囲気中で行えば、背面パネルと表示用パネルと枠体と接着層とにより囲まれた空間は、接合と同時に真空となる。あるいは、三者の接合終了後、背面パネルと表示用パネルと枠体と接着層とによって囲まれた空間を排気し、真空とすることもできる。接合後に排気を行う場合、接合時の雰囲気の圧力は常圧/減圧のいずれであってもよく、また、雰囲気を構成する気体は、大気であっても、あるいは窒素ガスや周期律表0族に属するガス(例えばArガス)を含む不活性ガスであってもよい。
接合後に排気を行う場合、排気は、背面パネル及び/又は表示用パネルに予め接続されたチップ管を通じて行うことができる。チップ管は、典型的にはガラス管を用いて構成され、背面パネル及び/又は表示用パネルの無効領域に設けられた貫通部の周囲に、フリットガラス又は上述の低融点金属材料を用いて接合され、空間が所定の真空度に達した後、熱融着によって封じ切られる。尚、封じ切りを行う前に、平面型表示装置全体を一旦加熱してから降温させると、空間に残留ガスを放出させることができ、この残留ガスを排気により空間外へ除去することができるので好適である。
本発明においては、蛍光体粉末の結晶性を向上させることができる結果、蛍光体粉末の発光効率の向上を図ることが可能となるだけでなく、蛍光体粉末の劣化を防ぐことが可能となる。その結果、例えば平面型表示装置における輝度の経時劣化を、実用上、問題とならない程度に低減することができる。
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明する。
実施例1は、本発明の第1の態様及び第4の態様に関し、更には、本発明の第2の態様に係る蛍光体粉末の製造方法に関する。
実施例1においては、II−VI族元素から成るコア材をZnSとし、付活剤をAgとし共付活剤をAlとした青色を発光する蛍光体粉末−1を製造した。更には、比較のために、蛍光体粉末−Aを製造した。これらの蛍光体粉末の組成、特性値を、以下の表1に示す。尚、表1中、付活剤の重量部数は、コア材を1重量部としたときの値であり、単位は10-4重量部である。また、共付活剤の割合とは、付活剤のモル濃度を1.00としたときの共付活剤のモル濃度の割合を意味する。更には、塩素濃度の単位はppmであり、輝度対温度特性において25゜Cにおける輝度の1/2の輝度になる温度T50の単位は゜Cである。
Figure 2004285363
実施例1における蛍光体粉末の製造方法の概要を、図1の流れ図を参照して、以下、説明する。
先ず、溶液の調製を行う。具体的には、ZnO粉末をH2SO4溶液に溶解して、ZnSO4溶液を得る。その後、ZnSO4溶液を精製して、ZnSO4溶液中の不純物、特に重金属を除去する。
その後、反応工程を実行する。具体的には、ZnSO4溶液とH2S気体とを反応させて、ZnS粒子を得る。次いで、洗浄、乾燥を行い、コア材であるZnS蛍光体粉末(ZnS蛍光体粒子)を得る。
次に、コア材であるZnS粉末と付活剤と共付活剤と塩素系化合物(具体的には、NaCl)を混合し、乾燥させた後、焼成工程を実行する。塩素系化合物は、焼成工程における焼成温度を低下させる目的で添加されている。具体的には、不活性ガス雰囲気中で、温度800゜C〜1000゜Cにて焼成を行い、焼成品を得た。そして、洗浄工程において、蛍光体粉末に含まれる塩素系化合物(具体的には、NaCl)の塩素濃度が20ppm以下(具体的には、測定機器の検出限界以下)となるように、焼成品の洗浄を充分に行った。次いで、焼成品を溶媒に分散させて湿式篩分けを行い、必要に応じて、分散性向上、接着性の向上を目的として表面処理を施した後、乾燥、篩分けを行い、蛍光体粉末を得た。
実施例1においては、第1の構造を有する冷陰極電界電子放出素子(以下、電界放出素子と呼ぶ)を備えた平面型表示装置を試作した。実施例1の平面型表示装置の模式的な一部断面図は図4に示したものと同様である。この平面型表示装置は、表示用パネル20と、複数の電子放出領域を有する背面パネル10とが真空空間を挟んで対向配置されて成る。各電子放出領域は、複数のスピント型電界放出素子から構成されている。スピント型電界放出素子は、図9の(B)に模式的な一部端面図を示すように、基板11と、基板11上に設けられたストライプ状のカソード電極12と、基板11及びカソード電極12上に形成された絶縁層13と、絶縁層13上に設けられたストライプ状のゲート電極14と、ゲート電極14及び絶縁層13を貫通する開口部15と、開口部15の底部に位置するカソード電極12の部分の上に設けられた円錐形の電子放出電極16から成る。ストライプ状のカソード電極12の射影像とストライプ状のゲート電極14の射影像とは、異なる方向(例えば直交する方向)に延びている。また、電子放出領域は、ストライプ状のゲート電極14の射影像と、ストライプ状のカソード電極12の射影像の重複する重複領域に位置している。尚、電子放出電極16は、開口部15の底部に位置するカソード電極12の部分の上に設けられている。多数の電子放出電極16が、発光層22の1つに対応付けられている。電子放出電極16には、カソード電極駆動回路31からカソード電極12を通じて相対的に負電圧(ビデオ信号)が印加され、ゲート電極14にはゲート電極駆動回路32から相対的に正電圧(走査信号)が印加される。これらの電圧印加によって生じた電界に応じ、開口部15の底部に露出した電子放出電極16の先端から電子が量子トンネル効果に基づき放出される。上述とは逆に、走査信号がカソード電極12に入力され、ビデオ信号がゲート電極14に入力される場合もある。
表示用パネル20は、ガラス等から成る支持体21と、支持体21上にマトリクス状あるいはドット状に形成された複数の発光層(蛍光体層)22と、発光層22の間を埋めるブラックマトリクス23と、発光層22及びブラックマトリクス23上の全面に形成された電極(アノード電極24)とから構成されている。発光層(蛍光体層)22は、電子放出領域から飛来した電子の照射によって発光する上述の各種の蛍光体粉末から成る。アノード電極24には、ゲート電極14に印加される正電圧よりも高い正電圧がアノード電極駆動回路33から印加され、アノード電極24は、電子放出電極16から真空空間中へ放出された電子を、発光層22に向かって誘導する役割を果たす。また、アノード電極24は、発光層22を構成する蛍光体粉末をイオン等の粒子によるスパッタから保護すると共に、電子励起によって生じた発光層22の発光を支持体側へ反射させ、支持体21の外側から観察される表示画面の輝度を向上させる機能も有する。アノード電極24は、例えば、アルミニウム薄膜から構成されている。尚、発光層22及びアノード電極24の配置は、図5あるいは図6に示したと同様とすることができる。
図5に示した表示用パネルの製造方法の一例を、以下、図7を参照して説明する。先ず、蛍光体粉末組成物を調製する。そのために、例えば、純水に分散剤を分散させ、ホモミキサーを用いて3000rpmにて1分間、撹拌を行う。次に、先に説明した蛍光体粉末を分散剤が分散した純水中に投入し、ホモミキサーを用いて5000rpmにて5分間、撹拌を行う。その後、例えば、ポリビニルアルコール及び重クロム酸アンモニウムを添加して、十分に撹拌し、濾過する。
表示用パネルの製造においては、例えばガラスから成る支持体21上の全面に感光性被膜40を形成(塗布)する。そして、露光光源(図示せず)から射出され、マスク43に設けられた孔部44を通過した露光光によって、支持体21上に形成された感光性被膜40を露光して感光領域41を形成する(図7の(A)参照)。その後、感光性被膜40を現像して選択的に除去し、感光性被膜の残部(露光、現像後の感光性被膜)42を支持体21上に残す(図7の(B)参照)。次に、全面にカーボン剤(カーボンスラリー)を塗布し、乾燥、焼成した後、リフトオフ法にて感光性被膜の残部42及びその上のカーボン剤を除去することによって、露出した支持体21上にカーボン剤から成るブラックマトリクス23とを形成し、併せて、感光性被膜の残部42を除去する(図7の(C)参照)。その後、露出した支持体21上に、赤、緑、青の各発光層22を形成する(図7の(D)参照)。具体的には、上述したと同様の方法で製造された各蛍光体粉末(蛍光体粒子)から調製された蛍光体粉末組成物を使用し、例えば、青色の感光性の蛍光体粉末組成物(蛍光体スラリー)を全面に塗布し、露光、現像し、次いで、緑色の感光性の蛍光体粉末組成物(蛍光体スラリー)を全面に塗布し、露光、現像し、更に、赤色の感光性の蛍光体粉末組成物(蛍光体スラリー)を全面に塗布し、露光、現像すればよい。その後、発光層22及びブラックマトリクス23上にスパッタリング法にて厚さ約0.07μmのアルミニウム薄膜から成るアノード電極24を形成する。尚、スクリーン印刷法等により各発光層22を形成することもできる。
次に、スピント型電界放出素子の製造方法を説明する。スピント型電界放出素子の製造方法は、基本的には、円錐形の電子放出電極16を金属材料の垂直蒸着により形成する方法である。即ち、開口部15に対して蒸着粒子は垂直に入射するが、開口部15の付近に形成されるオーバーハング状の堆積物による遮蔽効果を利用して、開口部15の底部に到達する蒸着粒子の量を漸減させ、円錐形の堆積物である電子放出電極16を自己整合的に形成する。以下、不要なオーバーハング状の堆積物の除去を容易とするために、絶縁層13及びゲート電極14上に剥離層17を予め形成しておく方法に基づくスピント型電界放出素子から成る第1の構造を有する電界放出素子を備えた平面型表示装置の製造方法の概要を、基板等の模式的な一部端面図である図8及び図9を参照して説明する。
[工程−100]
先ず、例えばガラスから成る基板11上にニオブ(Nb)から成るストライプ状のカソード電極12を形成した後、全面にSiO2から成る絶縁層13を形成し、更に、ストライプ状のゲート電極14を絶縁層13上に形成する。ストライプ状のゲート電極14の形成は、例えば、スパッタ法、リソグラフィ技術及びドライエッチング技術に基づき行うことができる。次に、ゲート電極14及び絶縁層13に開口部15をRIE(反応性イオン・エッチング)法にて形成し、開口部15の底部にカソード電極12を露出させる(図8の(A)参照)。尚、カソード電極12は、単一の材料層であってもよく、複数の材料層を積層することによって構成することもできる。例えば、後の工程で形成される各電子放出電極の電子放出特性のばらつきをカバーするために、カソード電極12の表層部を残部よりも電気抵抗率の高い材料で構成することができる。
[工程−110]
次に、開口部15の底部に露出したカソード電極12上に、電子放出電極16を形成する。具体的には、アルミニウムを斜め蒸着することにより、全面に剥離層17を形成する。このとき、基板11の法線に対する蒸着粒子の入射角を十分に大きく選択することにより、開口部15の底部にアルミニウムを殆ど堆積させることなく、ゲート電極14及び絶縁層13上に剥離層17を形成することができる。この剥離層17は、開口部15の開口端部から庇状に張り出しており、これにより開口部15が実質的に縮径される(図8の(B)参照)。
[工程−120]
次に、全面に例えばモリブデン(Mo)を垂直蒸着する。このとき、図9の(A)に示すように、剥離層17上でオーバーハング形状を有するモリブデンから成る導電体層18が成長するに伴い、開口部15の実質的な直径が次第に縮小されるので、開口部15の底部において堆積に寄与する蒸着粒子は、次第に開口部15の中央付近を通過するものに限られるようになる。その結果、開口部15の底部には円錐形の堆積物が形成され、この円錐形のモリブデンから成る堆積物が電子放出電極16となる。
その後、電気化学的プロセス及び湿式プロセスによって剥離層17を絶縁層13及びゲート電極14の表面から剥離し、絶縁層13及びゲート電極14の上方の導電体層18を選択的に除去する。その結果、図9の(B)に示すように、開口部15の底部に位置するカソード電極12上に円錐形の電子放出電極16を残すことができる。
[工程−130]
かかる電界放出素子が多数形成された背面パネル(カソードパネル)10と表示用パネル(アノードパネル)20とを組み合わせると、図4に示した平面型表示装置を得ることができる。具体的には、例えば、セラミックスやガラスから作製された高さ約1mmの枠体(図示せず)を用意し、枠体と背面パネル10と表示用パネル20とを例えばフリットガラスを用いて貼り合わせ、フリットガラスを乾燥した後、約450゜Cで10〜30分焼成すればよい。その後、平面型表示装置の内部を10-4Pa程度の真空度となるまで排気し、適当な方法で封止する。あるいは又、例えば、枠体と背面パネル10と表示用パネル20との貼り合わせを高真空雰囲気中で行ってもよい。あるいは又、平面型表示装置の構造に依っては、枠体無しで、背面パネル10と表示用パネル20とを貼り合わせてもよい。
以上のようにして作製した平面型表示装置である冷陰極電界電子放出表示装置と、従来の蛍光体粉末に基づき作製した平面型表示装置である冷陰極電界電子放出表示装置の輝度の経時変化を調べた。その結果、蛍光体粉末−1においては、輝度初期値が、蛍光体粉末−Aの初期値と比較して約15%増加していることが判った。また、輝度が、輝度初期値の1/2の輝度になるまでの時間を蛍光体粉末寿命としたとき、蛍光体粉末−1の蛍光体粉末寿命は、蛍光体粉末−Aと比較して、約2倍となった。
実施例2は、本発明の第2の態様、並びに、本発明の第1の態様に係る蛍光体粉末の製造方法に関する。実施例2においては、蛍光体粉末の表面から表面結晶欠陥層あるいは表面歪み層が除去されている。実施例2の蛍光体粉末の製造方法の概要を、図2の流れ図に示す。
実施例2における青色を発光する蛍光体粉末−2の組成を、表1に示した蛍光体粉末−1の組成と同様とした。
実施例2の蛍光体粉末は、実施例1にて説明した蛍光体粉末の製造方法において、焼成工程と表面処理工程の間で、焼成品の表面に形成された表面結晶欠陥層あるいは表面歪み層を除去する除去工程を経ることによって製造される。ここで、除去工程はアニール処理から成り、このアニール処理の温度は、焼成工程における焼成温度よりも低い。具体的には、還元性雰囲気(より具体的には、H2/N2ガス雰囲気)、温度500゜C〜600゜Cにてアニール処理を行った。
そして、実施例1と同様にして、第1の構造を有する電界放出素子を備えた平面型表示装置を試作し、電子線ビーム積算照射量(初期の輝度の1/2の輝度となるまでの電子線ビームの積算照射量)と輝度の関係を測定した。その結果、蛍光体粉末−Aの電子線ビーム積算照射量を1としたとき、蛍光体粉末−2の電子線ビーム積算照射量は約4となった。
尚、除去工程をエッチング処理とし、燐酸(温度60゜Cの熱燐酸)にCrO3を添加した過飽和溶液と濃塩酸を1:2で混合した溶液をエッチング液として用いることによって得られた蛍光体粉末においても、同様の結果が得られた。
実施例3は、本発明の第3の態様、並びに、本発明の第3の態様に係る蛍光体粉末の製造方法に関する。実施例3の蛍光体粉末の製造方法の概要を、図3の流れ図に示す。
実施例3においては、蛍光体粉末の表面は、平均厚さ2nm〜3nmの燐酸を含有する化合物層(具体的には、燐酸亜鉛)によって表面が被覆されている。
実施例3における青色を発光する蛍光体粉末−3の組成を、表1に示した蛍光体粉末−1の組成と同様とした。
実施例3の蛍光体粉末は、実施例1にて説明した蛍光体粉末の製造方法における表面処理工程において、蛍光体粉末の表面を、燐酸を含有する化合物層で被覆する。具体的には、燐酸を含有する化合物の溶液(燐酸亜鉛の溶液)を調製し、かかる溶液中に蛍光体粉末を浸漬した後、蛍光体粉末を乾燥させた。
尚、比較のために、蛍光体粉末−Aにおいて、表面処理工程として、ゾル−ゲル法にてシリカを蛍光体粉末の表面に付着させる方法を採用した蛍光体粉末−A’、並びに、粉末シリカを蛍光体粉末の表面に混合によって付着させる方法を採用した蛍光体粉末−A”を製造した。
そして、実施例1と同様にして、第1の構造を有する電界放出素子を備えた平面型表示装置を試作し、電子線ビーム積算照射量(初期の輝度の1/2の輝度となるまでの電子線ビームの積算照射量)と輝度の関係を測定した。その結果、蛍光体粉末−A’の電子線ビーム積算照射量を1としたとき、蛍光体粉末−A”の電子線ビーム積算照射量は約1.3であり、一方、蛍光体粉末−3の電子線ビーム積算照射量は約3となった。
尚、燐酸を含有する化合物層を燐酸カルシウムとした場合にも、同様の結果が得られた。また、実施例2と同様に、焼成品の表面に形成された表面結晶欠陥層あるいは表面歪み層を除去する除去工程を経た蛍光体粉末にあっては、電子線ビーム積算照射量は約5となった。
実施例4〜実施例12においては、各種の電界放出素子について説明する。実施例4においては、各電子放出領域を、複数のクラウン型電界放出素子から構成した。実施例4及び後述する実施例5〜実施例12における表示用パネル20の構造は実施例1と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
クラウン型電界放出素子から成る第1の構造を有する電界放出素子の模式的な一部端面図を図12の(A)に示し、一部を切り欠いた模式的な斜視図を図12の(B)に示す。クラウン型電界放出素子は、基板11上に形成されたカソード電極12と、基板11及びカソード電極12上に形成された絶縁層13と、絶縁層13上に形成されたゲート電極14と、ゲート電極14及び絶縁層13を貫通する開口部15と、開口部15の底部に位置するカソード電極12の部分の上に設けられたクラウン(王冠)型の電子放出電極16Aから構成されている。開口部15の底部に露出したクラウン(王冠)型の電子放出電極16Aが電子放出領域に相当する。
以下、クラウン型電界放出素子の製造方法を、基板等の模式的な一部端面図等である図10〜図12を参照して説明する。
[工程−400]
先ず、例えばガラスから成る基板11上に、ストライプのカソード電極12を形成する。尚、カソード電極12は、図面の紙面左右方向に延びている。ストライプ状のカソード電極12は、例えば基板11上にITO膜をスパッタリング法により約0.2μmの厚さに全面に亙って成膜した後、ITO膜をパターニングすることによって形成することができる。カソード電極12は、単一の材料層であってもよく、複数の材料層を積層することによって構成することもできる。例えば、後の工程で形成される各電子放出電極の電子放出特性のばらつきをカバーするために、カソード電極12の表層部を残部よりも電気抵抗率の高い材料で構成することができる。次に、基板11及びカソード電極12上に絶縁層13を形成する。ここでは、一例としてガラスペーストを全面に約3μmの厚さにスクリーン印刷する。次に、絶縁層13に含まれる水分や溶剤を除去し、且つ、絶縁層13を平坦化するために、例えば100゜C、10分間の仮焼成、及び500゜C、20分間の本焼成といった2段階の焼成を行う。尚、上述のようなガラスペーストを用いたスクリーン印刷に替えて、例えばプラズマCVD法によりSiO2膜を形成してもよい。
次に、絶縁層13上に、ストライプ状のゲート電極14を形成する(図10の(A)参照)。尚、ゲート電極14は、図面の紙面垂直方向に延びている。ゲート電極14は、例えば、絶縁層13上に厚さ約20nmのクロム(Cr)膜と厚さ0.2μmの金(Au)膜を電子ビーム蒸着法によりこの順に全面成膜し、続いてこの積層膜をパターニングすることにより形成することができる。尚、クロム膜は、絶縁層13に対する金膜の密着性の不足を補うために形成される。ゲート電極14の射影像の延びる方向は、ストライプ状のカソード電極12の射影像の延びる方向と90度を成す。
[工程−410]
次に、例えばフォトレジスト材料から成るエッチング用マスクを用いてゲート電極14及び絶縁層13をRIE法に基づきエッチングし、ゲート電極14及び絶縁層13に開口部15を形成し、開口部15の底部にカソード電極12を露出させる(図10の(B)参照)。開口部15の直径を約2〜50μmとする。
[工程−420]
次に、エッチング用マスクを除去し、ゲート電極14上、絶縁層13上、及び開口部15の側壁面上に剥離層51を形成する(図11の(A)参照)。かかる剥離層51を形成するには、例えば、フォトレジスト材料をスピンコーティング法により全面に塗布し、開口部15の底部の一部分のみを除去するようなパターニングを行う。この時点で、開口部15の実質的な直径は、約1〜20μmに縮径される。
[工程−430]
次に、図11の(B)に示すように、全面に組成物原料から成る導電性組成物層52を形成する。ここで使用する組成物原料は、例えば、導電性粒子として平均粒径約0.1μmの黒鉛粒子を60重量%、バインダとして4号の水ガラスを40重量%含む。この組成物原料を、例えば1400rpm、10秒間の条件で全面にスピンコートする。開口部15内における導電性組成物層52の表面は、組成物原料の表面張力に起因して、開口部15の側壁面に沿って迫り上がり、開口部15の中央部に向かって窪む。その後、導電性組成物層52に含まれる水分を除去するための仮焼成を、例えば大気中、400゜Cで30分間行う。
組成物原料において、バインダは、(1)それ自身が導電性粒子の分散媒であってもよいし、(2)導電性粒子を被覆していてもよいし、(3)適当な溶媒に分散あるいは溶解されることによって、導電性粒子の分散媒を構成してもよい。(3)のケースの典型例は水ガラスであり、日本工業規格(JIS)K1408に規定される1号乃至4号、又はこれらの同等品を使用することができる。1号乃至4号は、水ガラスの構成成分である酸化ナトリウム(Na2O)1モルに対する酸化珪素(SiO2)のモル数(約2〜4モル)の違いに基づく4段階の等級であり、それぞれ粘度が大きく異なる。従って、リフトオフ・プロセスで水ガラスを使用する際には、水ガラスに分散させる導電性粒子の種類や含有量、剥離層51との親和性、開口部15のアスペクト比等の諸条件を考慮して、最適な等級の水ガラスを選択するか、又は、これらの等級と同等の水ガラスを調製して使用することが好ましい。
バインダは一般に導電性に劣るので、導電性組成物中の導電性粒子の含有量に対してバインダの含有量が多過ぎると、形成される電子放出電極16Aの電気抵抗値が上昇し、電子放出が円滑に行われなくなる虞がある。従って、例えば水ガラス中に導電性粒子としてカーボン系材料粒子を分散させて成る組成物原料を例にとると、組成物原料の全重量に占めるカーボン系材料粒子の割合は、電子放出電極16Aの電気抵抗値、組成物原料の粘度、導電性粒子同士の接着性等の特性を考慮し、概ね30〜95重量%の範囲に選択することが好ましい。カーボン系材料粒子の割合をかかる範囲内に選択することにより、形成される電子放出電極16Aの電気抵抗値を十分に下げると共に、カーボン系材料粒子同士の接着性を良好に保つことが可能となる。但し、導電性粒子としてカーボン系材料粒子にアルミナ粒子を混合して用いた場合には、導電性粒子同士の接着性が低下する傾向があるので、アルミナ粒子の含有量に応じてカーボン系材料粒子の割合を高めることが好ましく、60重量%以上とすることが特に好ましい。尚、組成物原料には、導電性粒子の分散状態を安定化させるための分散剤や、pH調整剤、乾燥剤、硬化剤、防腐剤等の添加剤が含まれていてもよい。尚、導電性粒子を結合剤(バインダ)の被膜で覆った粉体を、適当な分散媒中に分散させて成る組成物原料を用いてもよい。
一例として、王冠状の電子放出電極16Aの直径を概ね1〜20μmとし、導電性粒子としてカーボン系材料粒子を使用した場合、カーボン系材料粒子の粒径は概ね0.1μm〜1μmの範囲とすることが好ましい。カーボン系材料粒子の粒径をかかる範囲に選択することにより、王冠状の電子放出電極16Aの縁部に十分に高い機械的強度が備わり、且つ、カソード電極12に対する電子放出電極16Aの密着性が良好となる。
[工程−440]
次に、図11の(C)に示すように、剥離層51を除去する。剥離は、2重量%の水酸化ナトリウム水溶液中に、30秒間浸漬することにより行う。このとき、超音波振動を加えながら剥離を行ってもよい。これにより、剥離層51と共に剥離層51上の導電性組成物層52の部分が除去され、開口部15の底部に露出したカソード電極12上の導電性組成物層52の部分のみが残される。この残存した部分が電子放出電極16Aとなる。電子放出電極16Aの形状は、表面が開口部15の中央部に向かって窪み、王冠状となる。[工程−440]が終了した時点における状態を、図12に示す。図12の(B)は、電界放出素子の一部を示す模式的な斜視図であり、図12の(A)は図12の(B)の線A−Aに沿った模式的な一部端面図である。図12の(B)では、電子放出電極16Aの全体が見えるように、絶縁層13とゲート電極14との一部を切り欠いている。尚、1つの電子放出領域(重複領域)には、5〜100個程度の電子放出電極16Aを設けることで十分である。尚、導電性粒子が電子放出電極16Aの表面に確実に露出するように、電子放出電極16Aの表面に露出したバインダをエッチングによって除去してもよい。
[工程−450]
次に、電子放出電極16Aの焼成を行う。焼成は、乾燥大気中、400゜C、30分間の条件で行う。尚、焼成温度は、組成物原料に含まれるバインダの種類に応じて選択すればよい。例えば、バインダが水ガラスのような無機材料である場合には、無機材料を焼成し得る温度で熱処理を行えばよい。バインダが熱硬化性樹脂である場合には、熱硬化性樹脂を硬化し得る温度で熱処理を行えばよい。但し、導電性粒子同士の密着性を保つために、熱硬化性樹脂が過度に分解したり炭化する虞のない温度で熱処理を行うことが好適である。いずれのバインダを用いるにしても、熱処理温度は、ゲート電極やカソード電極、絶縁層に損傷や欠陥が生じない温度とする必要がある。熱処理雰囲気は、ゲート電極やカソード電極の電気抵抗率が酸化によって上昇したり、あるいはゲート電極やカソード電極に欠陥や損傷が生ずることがないように、不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。尚、バインダとして熱可塑性樹脂を使用した場合には、熱処理を必要としない場合がある。
実施例5においては、各電子放出領域を、複数の扁平型電界放出素子から構成した。
扁平型電界放出素子から成る第1の構造を有する電界放出素子の模式的な一部断面図を、図13の(C)に示す。扁平型電界放出素子は、例えばガラスから成る基板11上に形成されたカソード電極12、基板11及びカソード電極12上に形成された絶縁層13、絶縁層13上に形成されたゲート電極14、ゲート電極14及び絶縁層13を貫通する開口部15、並びに、開口部15の底部に位置するカソード電極12の部分の上に設けられた扁平の電子放出電極16Bから成る。ここで、電子放出電極16Bは、図13の(C)の紙面垂直方向に延びたストライプ状のカソード電極12上に形成されている。また、ゲート電極14は、図13の(C)の紙面左右方向に延びている。カソード電極12及びゲート電極14はクロム(Cr)から成る。電子放出電極16Bは、具体的には、グラファイト粉末から成る薄層から構成されている。また、電界放出素子の動作安定化、電子放出特性の均一化のために、カソード電極12と電子放出電極16Bとの間にSiCから成る抵抗体層60が設けられている。図13の(C)に示した扁平型電界放出素子においては、カソード電極12の表面の全域に亙って、抵抗体層60及び電子放出電極16Bが形成されているが、このような構造に限定するものではなく、要は、少なくとも開口部15の底部に電子放出電極16Bが設けられていればよい。
以下、基板等の模式的な一部断面図である図13を参照して、扁平型電界放出素子の製造方法を説明する。
[工程−500]
先ず、基板11上に、クロム(Cr)から成るカソード電極用導電材料層をスパッタ法にて形成した後、リソグラフィ技術及びドライエッチング技術に基づきカソード電極用導電材料層をパターニングする。これによって、ストライプ状のカソード電極12を基板11上に形成することができる(図13の(A)参照)。尚、カソード電極12は、図13の紙面垂直方向に延びている。
[工程−510]
次に、カソード電極12上に、電子放出電極16Bを形成する。具体的には、先ず、全面にスパッタ法にてSiCから成る抵抗体層60を形成し、次いで、抵抗体層60の上にグラファイト粉末塗料から成る電子放出電極16Bをスピンコーティング法にて形成し、電子放出電極16Bを乾燥させる。その後、電子放出電極16B及び抵抗体層60を公知の方法に基づきパターニングする(図13の(B)参照)。電子放出領域は電子放出電極16Bから構成される。
[工程−520]
次に、全面に絶縁層13を形成する。具体的には、電子放出電極16B及び基板11上に、例えば、スパッタ法にてSiO2から成る絶縁層13を形成する。尚、絶縁層13を、ガラスペーストをスクリーン印刷する方法や、SiO2層をCVD法にて形成する方法に基づき形成することもできる。その後、ストライプ状のゲート電極14を絶縁層13上に形成する。
[工程−530]
次に、ゲート電極14及び絶縁層13上にエッチング用マスクを形成した後、ゲート電極14及び絶縁層13に開口部15を形成し、開口部15の底部に電子放出電極16Bを露出させる。その後、エッチング用マスクを除去し、電子放出電極16B中の有機溶剤を除去するために、400゜C、30分の熱処理を施す。こうして、図13の(C)に示した電界放出素子を得ることができる。
扁平型電界放出素子から成る第1の構造を有する電界放出素子の変形例の模式的な一部断面図を、図14の(C)に示す。図14の(C)に示す扁平型電界放出素子においては、電子放出電極16Bの構造が、図13の(C)に示した扁平型電界放出素子と若干異なっている。以下、基板等の模式的な一部断面図である図14を参照して、かかる電界放出素子の製造方法を説明する。
[工程−600]
先ず、基板11上にカソード電極用導電材料層を形成する。具体的には、基板11の全面にレジスト材料層(図示せず)を形成した後、カソード電極を形成すべき部分のレジスト材料層を除去する。その後、全面にクロム(Cr)から成るカソード電極用導電材料層をスパッタ法にて形成する。更に、全面にスパッタ法にてSiCから成る抵抗体層60を形成し、次いで、抵抗体層60の上にグラファイト粉末塗料層をスピンコーティング法にて形成し、グラファイト粉末塗料層を乾燥させる。その後、剥離液を用いてレジスト材料層を除去すると、レジスト材料層上に形成されたカソード電極用導電材料層、抵抗体層60及びグラファイト粉末塗料層も除去される。こうして、所謂リフトオフ法に基づき、カソード電極12、抵抗体層60及び電子放出電極16Bが積層された構造を得ることができる(図14の(A)参照)。
[工程−610]
次に、全面に絶縁層13を形成した後、絶縁層13上にストライプ状のゲート電極14を形成する(図14の(B)参照)。その後、ゲート電極14及び絶縁層13に開口部15を形成することによって、開口部15の底部に電子放出電極16Bを露出させる(図14の(C)参照)。開口部15の底部に露出したカソード電極12の表面に設けられた電子放出電極16Bから電子放出領域が構成される。
扁平型電界放出素子から成る第1の構造を有する電界放出素子の別の変形例の模式的な一部端面図を、図16の(B)に示す。この扁平型電界放出素子においては、電子放出電極16Cは、CVD法に基づき形成された炭素薄膜から構成されている。
電子放出電極を炭素薄膜から構成することは、炭素(C)の仕事関数が低く、高い放出電子電流を達成することができるので、好ましい。炭素薄膜から電子を放出させるためには、炭素薄膜が適切な電界(例えば、106ボルト/m程度の強度を有する電界)中に置かれた状態とすればよい。
ところで、レジスト層をエッチング用マスクとして使用し、酸素ガスを用いてダイヤモンド薄膜のような炭素薄膜のプラズマエッチングを行った場合、エッチング反応系における反応副生成物として(CH)x系あるいは(CF)x系等の炭素系ポリマーが堆積性物質として生成する。一般に、プラズマエッチングにおいて堆積性物質がエッチング反応系に生成した場合、この堆積性物質はイオン入射確率の低いレジスト層の側壁面、あるいは被エッチング物の加工端面に堆積して所謂側壁保護膜を形成し、被エッチング物の異方性加工によって得られる形状の達成に寄与する。しかしながら、酸素ガスをエッチング用ガスとして使用した場合には、炭素系ポリマーから成る側壁保護膜は、生成しても、直ちに酸素ガスによって除去されてしまう。また、酸素ガスをエッチング用ガスとして使用した場合には、レジスト層の消耗も激しい。これらの理由により、従来のダイヤモンド薄膜の酸素プラズマ加工においては、ダイヤモンド薄膜のマスクの寸法に対する寸法変換差が大きく、異方性加工も困難な場合が多い。
このような問題を解決するためには、例えば、カソード電極の表面に炭素薄膜選択成長領域を形成し、炭素薄膜選択成長領域上に炭素薄膜から成る電子放出電極を形成する構成とすればよい。即ち、この電界放出素子の製造においては、基板上にカソード電極を形成した後、カソード電極の表面に炭素薄膜選択成長領域を形成し、その後、炭素薄膜選択成長領域上に炭素薄膜(電子放出電極に相当する)を形成する。尚、カソード電極の表面に炭素薄膜選択成長領域を形成する工程を、炭素薄膜選択成長領域形成工程と呼ぶ。
ここで、炭素薄膜選択成長領域は、表面に金属粒子が付着したカソード電極の部分、若しくは、表面に金属薄膜が形成されたカソード電極の部分であることが好ましい。尚、炭素薄膜選択成長領域における炭素薄膜の選択成長を一層確実なものとするために、炭素薄膜選択成長領域の表面には、硫黄(S)、ホウ素(B)又はリン(P)が付着していることが望ましく、これらの物質は一種の触媒としての作用を果たすと考えられ、これによって、炭素薄膜の選択成長性を一層向上させることができる。尚、炭素薄膜選択成長領域は、開口部の底部に位置するカソード電極の部分の表面に形成されていればよく、開口部の底部に位置するカソード電極の部分から開口部の底部以外のカソード電極の部分の表面に延在するように形成されていてもよい。また、炭素薄膜選択成長領域は、開口部の底部に位置するカソード電極の部分の表面の全面に形成されていても、部分的に形成されていてもよい。
炭素薄膜選択成長領域形成工程は、炭素薄膜選択成長領域を形成すべきカソード電極の部分の表面(以下、単にカソード電極表面と呼ぶ場合がある)に、金属粒子を付着させ、若しくは、金属薄膜を形成する工程から成り、以て、表面に金属粒子が付着し、若しくは、表面に金属薄膜が形成されたカソード電極の部分から成る炭素薄膜選択成長領域を得ることが好ましい。また、この場合、炭素薄膜選択成長領域における炭素薄膜の選択成長を一層確実なものとするために、炭素薄膜選択成長領域の表面に、硫黄(S)、ホウ素(B)又はリン(P)を付着させることが望ましく、これによって、炭素薄膜の選択成長性を一層向上させることができる。炭素薄膜選択成長領域の表面に硫黄、ホウ素又はリンを付着させる方法としては、例えば、硫黄、ホウ素又はリンを含む化合物から成る化合物層を炭素薄膜選択成長領域の表面に形成し、次いで、例えば加熱処理を化合物層に施すことによって化合物層を構成する化合物を分解させ、炭素薄膜選択成長領域の表面に硫黄、ホウ素又はリンを残す方法を挙げることができる。硫黄を含む化合物としてチオナフテン、チオフテン、チオフェンを例示することができる。ホウ素を含む化合物として、トリフェニルボロンを例示することができる。リンを含む化合物として、トリフェニルフォスフィンを例示することができる。
あるいは又、炭素薄膜選択成長領域における炭素薄膜の選択成長を一層確実なものとするために、カソード電極表面に、金属粒子を付着させ、若しくは、金属薄膜を形成した後、金属粒子の表面若しくは金属薄膜の表面の金属酸化物(所謂、自然酸化膜)を除去することが望ましい。金属粒子の表面若しくは金属薄膜の表面の金属酸化物の除去を、例えば、水素ガス雰囲気におけるマイクロ波プラズマ法、トランス結合型プラズマ法、誘導結合型プラズマ法、電子サイクロトロン共鳴プラズマ法、RFプラズマ法等に基づくプラズマ還元処理、アルゴンガス雰囲気におけるスパッタ処理、若しくは、例えばフッ酸等の酸や塩基を用いた洗浄処理によって行うことが望ましい。尚、炭素薄膜選択成長領域の表面に硫黄、ホウ素又はリンを付着させる工程、あるいは又、金属粒子の表面若しくは金属薄膜の表面の金属酸化物を除去する工程を含む場合、絶縁層に開口部を設けた後、炭素薄膜選択成長領域上に炭素薄膜を形成する前にこれらの工程を実行することが好ましい。
炭素薄膜選択成長領域を得るためにカソード電極表面に金属粒子を付着させる方法として、例えば、炭素薄膜選択成長領域を形成すべきカソード電極の領域以外の領域を適切な材料(例えば、マスク層)で被覆した状態で、溶媒と金属粒子から成る層を炭素薄膜選択成長領域を形成すべきカソード電極表面に形成した後、溶媒を除去し、金属粒子を残す方法を挙げることができる。あるいは又、カソード電極表面に金属粒子を付着させる工程として、例えば、炭素薄膜選択成長領域を形成すべきカソード電極の領域以外の領域を適切な材料(例えば、マスク層)で被覆した状態で、金属粒子を構成する金属原子を含む金属化合物粒子をカソード電極表面に付着させた後、金属化合物粒子を加熱することによって分解し、以て、表面に金属粒子が付着したカソード電極の部分から成る炭素薄膜選択成長領域を得る方法を挙げることができる。この場合、具体的には、溶媒と金属化合物粒子から成る層を炭素薄膜選択成長領域を形成すべきカソード電極表面に形成した後、溶媒を除去し、金属化合物粒子を残す方法を例示することができる。金属化合物粒子は、金属粒子を構成する金属のハロゲン化物(例えば、ヨウ化物、塩化物、臭化物等)、酸化物、水酸化物及び有機金属から成る群から選択された少なくとも1種類の材料から成ることが好ましい。尚、これらの方法においては、適切な段階で、炭素薄膜選択成長領域を形成すべきカソード電極の領域以外の領域を被覆した材料(例えば、マスク層)を除去する。
炭素薄膜選択成長領域を得るためにカソード電極表面に金属薄膜を形成する方法として、例えば、炭素薄膜選択成長領域を形成すべきカソード電極の領域以外の領域を適切な材料で被覆した状態での、電解メッキ法、無電解メッキ法、MOCVD法を含むCVD法(化学的気相成長法)、物理的気相成長法(PVD法、Physical Vapor Deposition 法)等の公知の方法を挙げることができる。尚、物理的気相成長法として、(a)電子ビーム加熱法、抵抗加熱法、フラッシュ蒸着等の各種真空蒸着法、(b)プラズマ蒸着法、(c)2極スパッタ法、直流スパッタ法、直流マグネトロンスパッタ法、高周波スパッタ法、マグネトロンスパッタ法、イオンビームスパッタ法、バイアススパッタ法等の各種スパッタ法、(d)DC(direct current)法、RF法、多陰極法、活性化反応法、電界蒸着法、高周波イオンプレーティング法、反応性イオンプレーティング法等の各種イオンプレーティング法を挙げることができる。
ここで、炭素薄膜選択成長領域を形成するための金属粒子あるいは金属薄膜は、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)、鉄(Fe)、銅(Cu)、白金(Pt)及び亜鉛(Zn)から成る群から選択された少なくとも1種類の金属から構成されていることが好ましい。
炭素薄膜として、グラファイト薄膜、アモルファスカーボン薄膜、ダイヤモンドライクカーボン薄膜、あるいはフラーレン薄膜を挙げることができる。炭素薄膜の形成方法として、マイクロ波プラズマ法、トランス結合型プラズマ法、誘導結合型プラズマ法、電子サイクロトロン共鳴プラズマ法、RFプラズマ法等に基づくCVD法を例示することができる。炭素薄膜の形態には、薄膜状はもとより、炭素のウィスカー、炭素のナノチューブ(中空及び中実を含む)が包含される。
尚、カソード電極の構造としては、導電材料層の1層構成とすることもできるし、下層導電材料層、下層導電材料層上に形成された抵抗体層、抵抗体層上に形成された上層導電材料層の3層構成とすることもできる。後者の場合、上層導電材料層の表面に炭素薄膜選択成長領域を形成する。このように、抵抗体層を設けることによって、電子放出電極における電子放出特性の均一化を図ることができる。
以下、基板等の模式的な一部端面図である図15及び図16を参照して、扁平型電界放出素子の製造方法の一例を説明する。
[工程−700]
先ず、例えばガラスから成る基板11上にカソード電極用導電材料層を形成し、次いで、周知のリソグラフィ技術及びRIE法に基づきカソード電極用導電材料層をパターニングすることによって、ストライプ状のカソード電極12を基板11上に形成する。ストライプ状のカソード電極12は、図面の紙面左右方向に延びている。カソード電極12は、例えばスパッタ法により形成された厚さ約0.2μmのクロム(Cr)層から成る。
[工程−710]
その後、全面に、具体的には、基板11上及びカソード電極12上に絶縁層13を形成する。
[工程−720]
次いで、ストライプ状のゲート電極14を絶縁層13上に形成した後、ゲート電極14及び絶縁層13に開口部15を形成し、開口部15の底部にカソード電極12を露出させる(図15の(A)参照)。ストライプ状のゲート電極14は図面の紙面垂直方向に延びている。開口部15の平面形状は、例えば直径1μm〜30μmの円形である。開口部15を、例えば、1画素分の領域(重複領域)に1個〜3000個程度形成すればよい。
[工程−730]
次に、開口部15の底部に露出したカソード電極12上に、電子放出電極16Cを形成する。具体的には、先ず、開口部15の底部に位置するカソード電極12の部分の表面に炭素薄膜選択成長領域70を形成する。そのために、先ず、開口部15の底部の中央部にカソード電極12の表面が露出したマスク層71を形成する(図15の(B)参照)。具体的には、レジスト材料層をスピンコーティング法にて開口部15内を含む全面に成膜した後、リソグラフィ技術に基づき、開口部15の底部の中央部に位置するレジスト材料層に孔部を形成することによって、マスク層71を得ることができる。マスク層71は、開口部15の底部に位置するカソード電極12の一部分、開口部15の側壁、ゲート電極14及び絶縁層13を被覆している。これによって、次の工程で、開口部15の底部の中央部に位置するカソード電極12の部分の表面に炭素薄膜選択成長領域を形成するが、カソード電極12とゲート電極14とが金属粒子によって短絡することを確実に防止し得る。
次に、露出したカソード電極12の表面を含むマスク層71上に、金属粒子を付着させる。具体的には、ニッケル(Ni)微粒子をポリシロキサン溶液中に分散させた溶液(溶媒としてイソプロピルアルコールを使用)をスピンコーティング法にて全面に塗布し、炭素薄膜選択成長領域70を形成すべきカソード電極12の部分の表面に溶媒と金属粒子から成る層を形成する。その後、マスク層71を除去し、400゜C程度に加熱することによって溶媒を除去し、露出したカソード電極12の表面に金属粒子72を残すことで、炭素薄膜選択成長領域70を得ることができる(図16の(A)参照)。尚、ポリシロキサンは、露出したカソード電極12の表面に金属粒子72を固定させる機能(所謂、接着機能)を有する。
[工程−740]
その後、炭素薄膜選択成長領域70上に、厚さ約0.2μmの炭素薄膜73を形成し、電子放出電極16Cを得る。この状態を図16の(B)に示す。マイクロ波プラズマCVD法に基づく炭素薄膜73の成膜条件を、以下の表2に例示する。
[表2]
[炭素薄膜の成膜条件]
使用ガス :CH4/H2=100/10SCCM
圧力 :1.3×103Pa
マイクロ波パワー:500W(13.56MHz)
成膜温度 :500゜C
平面型電界放出素子から成る第2の構造を有する電界放出素子の模式的な一部断面図を、図17の(C)に示す。この平面型電界放出素子は、例えばガラスから成る基板11上に形成されたストライプ状のカソード電極12、基板11及びカソード電極12上に形成された絶縁層13、絶縁層13上に形成されたストライプ状のゲート電極14、並びに、ゲート電極14及び絶縁層13を貫通し、底部にカソード電極12が露出した開口部15から成る。カソード電極12は、図17の(C)の紙面垂直方向に延び、ゲート電極14は、図17の(C)の紙面左右方向に延びている。カソード電極12及びゲート電極14はクロム(Cr)から成り、絶縁層13はSiO2から成る。ここで、開口部15の底部に露出したカソード電極12の部分が電子放出領域116に相当する。
以下、基板等の模式的な一部断面図である図17を参照して、平面型電界放出素子の製造方法を説明する。
[工程−800]
先ず、基板11上に電子放出領域116として機能するカソード電極12を形成する。具体的には、基板11上に、クロム(Cr)から成るカソード電極用導電材料層をスパッタ法にて形成した後、リソグラフィ技術及びドライエッチング技術に基づきカソード電極用導電材料層をパターニングする。これによって、ストライプ状のカソード電極12を基板11上に形成することができる(図17の(A)参照)。尚、カソード電極12は、図17の紙面垂直方向に延びている。
[工程−810]
次に、例えばCVD法にてSiO2から成る絶縁層13を、基板11及びカソード電極12の上に形成する。尚、絶縁層13を、スクリーン印刷法に基づきガラスペーストから形成することもできる。
[工程−820]
その後、ストライプ状のゲート電極14を絶縁層13上に形成する。具体的には、先ず、全面にクロムから成る導電材料層をスパッタ法にて形成した後、リソグラフィ技術及びドライエッチング技術に基づき導電材料層をパターニングする。これによって、ストライプ状のゲート電極14を形成することができる(図17の(B)参照)。尚、ゲート電極14は、図17の紙面左右方向に延びている。例えばスクリーン印刷法にて、ストライプ状のゲート電極14を絶縁層13上に、直接形成することもできる。
[工程−830]
次に、ゲート電極14及び絶縁層13に開口部15を形成し、開口部15の底部に電子放出領域116として機能するカソード電極12を露出させる(図17の(C)参照)。
図18の(A)に模式的な一部断面図を示す平面型電界放出素子が図17の(C)に示した平面型電界放出素子と相違する点は、開口部15の底部に露出したカソード電極12の表面(電子放出領域116に相当する)に、微小凹凸部12Aが形成されている点にある。このような平面型電界放出素子は、以下の製造方法にて製造することができる。
[工程−900]
先ず、実施例8の[工程−800]〜[工程−820]と略同様にして、基板11上にストライプ状のカソード電極12を形成し、全面に絶縁層13を形成した後、ストライプ状のゲート電極14を絶縁層13上に形成する。即ち、例えばガラスから成る基板11の上に、スパッタ法により厚さ約0.2μmのタングステン層を成膜し、通常の手順に従ってこのタングステン層をストライプ状にパターニングし、カソード電極12を形成する。次に、基板11及びカソード電極12上に絶縁層13を形成する。絶縁層13は、TEOS(テトラエトキシシラン)を原料ガスとして用いるCVD法により形成することができる。更に、この絶縁層13の上に、例えば厚さ約0.2μmのクロムから成る導電材料層を成膜し、ストライプ状にパターニングして、ゲート電極14を形成する。ここまでのプロセスが終了した状態は、実質的に、図17の(B)に示したと同様である。
[工程−910]
次に、[工程−830]と同様にして、ゲート電極14及び絶縁層13に開口部15を形成し、開口部15の底部にカソード電極12を露出させる。その後、開口部15の底部に露出したカソード電極12の部分に、微小凹凸部12Aを形成する。微小凹凸部12Aの形成に際しては、エッチングガスとしてSF6を用い、カソード電極12を構成するタングステンの結晶粒と粒界との間でエッチング速度の差が大きくなるような条件を設定してRIE法に基づくドライエッチングを行う。その結果、タングステンの結晶粒径をほぼ反映した寸法を有する微小凹凸部12Aを形成することができる。
このような平面型電界放出素子の構成においては、カソード電極12の微小凹凸部12A、より具体的には微小凹凸部12Aの凸部に、ゲート電極14から大きな電界が加わる。このとき凸部に集中する電界は、カソード電極12の表面が平滑である場合に比べて大きいため、凸部からは量子トンネル効果によって電子が効率良く放出される。従って、開口部15の底部に単に平滑なカソード電極12が露出している平面型電界放出素子に比べて、平面型表示装置に組み込まれた場合の輝度の向上が期待できる。それ故、図18の(A)に示した平面型電界放出素子によれば、ゲート電極14とカソード電極12との間の電位差が比較的小さくても、十分な放出電子電流密度を得ることができ、平面型表示装置の高輝度化が達成される。あるいは、同じ輝度を達成するために必要なゲート電圧が低くて済み、以て、低消費電力化を達成することが可能である。
尚、絶縁層13をエッチングすることによって開口部15を形成し、しかる後に異方性エッチング技術に基づきカソード電極12に微小凹凸部12Aを形成したが、開口部15を形成するためのエッチングによって、微小凹凸部12Aを同時に形成することも可能である。即ち、絶縁層13をエッチングする際に、ある程度のイオンスパッタ作用が期待できる異方的なエッチング条件を採用し、垂直壁を有する開口部15が形成された後もエッチングを継続することにより、開口部15の底部に露出したカソード電極12の部分に微小凹凸部12Aを形成することができる。その後、絶縁層13の等方性エッチングを行えばよい。
また、[工程−800]と同様の工程において、基板11上に、タングステンから成るカソード電極用導電材料層をスパッタ法にて形成した後、リソグラフィ技術及びドライエッチング技術に基づきカソード電極用導電材料層をパターニングし、次いで、カソード電極用導電材料層の表面に微小凹凸部12Aを形成した後、[工程−810]〜[工程−830]と同様の工程を実行することによって、図18の(A)に示したと同様の電界放出素子を作製することもできる。
あるいは又、[工程−800]と同様の工程において、基板11上に、タングステンから成るカソード電極用導電材料層をスパッタ法にて形成した後、カソード電極用導電材料層の表面に微小凹凸部12Aを形成し、次いで、リソグラフィ技術及びドライエッチング技術に基づきカソード電極用導電材料層をパターニングした後、[工程−810]〜[工程−830]と同様の工程を実行することによって、図18の(A)に示したと同様の電界放出素子を作製することもできる。
図18の(B)には、図18の(A)に示した電界放出素子の変形例を示す。図18の(B)に示す電界放出素子においては、微小凹凸部12Aの先端部の平均高さ位置が、絶縁層13の下面位置よりも基板側に存在している(即ち、下がっている)。かかる電界放出素子を形成するには、[工程−910]におけるドライエッチングの継続時間を延長すればよい。このような構成によれば、開口部15の中央部近傍の電界強度を一層高めることができる。
図19には、電子放出領域116に相当するカソード電極12の表面(より具体的には、少なくとも微小凹凸部12A上)に被覆層12Bが形成されている平面型電界放出素子を示す。
この被覆層12Bは、カソード電極12を構成する材料よりも仕事関数Φの小さい材料から構成することが好ましく、どのような材料を選択するかは、カソード電極12を構成する材料の仕事関数、ゲート電極14とカソード電極12との間の電位差、要求される放出電子電流密度の大きさ等に基づいて決定すればよい。被覆層12Bの構成材料として、アモルファスダイヤモンドを例示することができる。被覆層12Bをアモルファスダイヤモンドを用いて構成した場合には、5×107V/m以下の電界強度にて、平面型表示装置に必要な放出電子電流密度を得ることができる。
被覆層12Bの厚さは、微小凹凸部12Aを反映し得る程度に選択する。これは、被覆層12Bによって微小凹凸部12Aの凹部が埋め込まれ、電子放出領域の表面が平滑化されてしまっては、微小凹凸部12Aを設けた意味が無くなるからである。従って、微小凹凸部12Aの寸法にも依るが、例えば微小凹凸部12Aが電子放出領域の結晶粒径を反映して形成されている場合には、被覆層12Bの厚さを概ね30〜100nm程度に選択することが好ましい。また、微小凹凸部12Aの先端部の平均高さ位置を絶縁層の下面位置よりも下げる場合には、厳密には、被覆層12Bの先端部の平均高さ位置を絶縁層の下面位置よりも下げることが、一層好ましい。
具体的には、[工程−910]の後、全面に例えばCVD法によりアモルファスダイヤモンドから成る被覆層12Bを形成すればよい。尚、被覆層12Bは、ゲート電極14及び絶縁層13の上に形成されたエッチング用マスク(図示せず)の上にも堆積するが、この堆積部分はエッチング用マスクの除去時、同時に除去される。原料ガスとして例えばCH4/H2混合ガスや、CO/H2混合ガスを使用したCVD法に基づき被覆層12Bを形成することができ、それぞれ炭素を含む化合物の熱分解によってアモルファスダイヤモンドから成る被覆層12Bが形成される。
あるいは又、[工程−800]と同様の工程において、基板11上に、タングステンから成るカソード電極用導電材料層をスパッタ法にて形成した後、リソグラフィ技術及びドライエッチング技術に基づきカソード電極用導電材料層をパターニングし、その後、カソード電極用導電材料層の表面に微小凹凸部12Aを形成し、次いで、被覆層12Bを形成した後、[工程−810]〜[工程−830]と同様の工程を実行することによって、図19に示す電界放出素子を作製することもできる。
あるいは又、[工程−800]と同様の工程において、基板11上に、タングステンから成るカソード電極用導電材料層をスパッタ法にて形成した後、カソード電極用導電材料層の表面に微小凹凸部12Aを形成し、次いで、被覆層12Bを形成した後、リソグラフィ技術及びドライエッチング技術に基づき被覆層12B、カソード電極用導電材料層をパターニングした後、[工程−810]〜[工程−830]と同様の工程を実行することによって、図19に示す電界放出素子を作製することもできる。
あるいは又、被覆層を構成する材料として、かかる材料の2次電子利得δがカソード電極を構成する導電性材料の2次電子利得δよりも大きくなるような材料を適宜選択することもできる。
尚、図17の(C)に示した平面型電界放出素子の電子放出領域116(カソード電極12の表面)に被覆層を形成してもよい。この場合には、[工程−830]の後、開口部15の底部に露出したカソード電極12の表面に被覆層12Bを形成すればよく、あるいは又、[工程−800]において、例えば、基板11上にカソード電極用導電材料層を形成した後、カソード電極用導電材料層上に被覆層12Bを形成し、次いで、リソグラフィ技術及びドライエッチング技術に基づき、これらの層をパターニングすればよい。
クレータ型電界放出素子の模式的な一部断面図を、図23の(B)に示す。クレータ型電界放出素子は、電子を放出する複数の隆起部112Aと、各隆起部112Aに囲まれた凹部112Bとを有するカソード電極112が、基板11上に備えられている。尚、絶縁層13及びゲート電極14を取り除いた模式的な斜視図を図22の(B)に示す。
凹部の形状は特に限定されないが、典型的には略球面を成す。これは、かかるクレータ型電界放出素子の製造方法において球体が使用され、凹部112Bが球体の形状の一部を反映して形成されることと関連している。従って、凹部112Bが略球面を成す場合、凹部112Bを囲む隆起部112Aは円環状となり、この場合の凹部112Bと隆起部112Aとは、全体としてクレータあるいはカルデラのような形状を呈する。隆起部112Aは電子を放出する部分であるため、電子放出効率を高める観点からは、その先端部112Cが先鋭であることが特に好ましい。隆起部112Aの先端部112Cのプロファイルは、不規則な凹凸を有していても、あるいは滑らかであってもよい。1画素内における隆起部112Aの配置は規則的であってもランダムであってもよい。尚、凹部112Bは、凹部112Bの周方向に沿って連続した隆起部112Aにより囲まれていてもよいし、場合によっては、凹部112Bの周方向に沿って不連続な隆起部112Aにより囲まれていてもよい。
このようなクレータ型電界放出素子の製造方法において、基板上にストライプ状のカソード電極を形成する工程は、より具体的には、
複数の球体を被覆したストライプ状のカソード電極を基板上に形成する工程と、
球体を除去することによって、球体を被覆したカソード電極の部分を除去し、以て、電子を放出する複数の隆起部と、各隆起部に囲まれ、且つ、球体の形状の一部を反映した凹部とを有するカソード電極を形成する工程、
から成る。
球体の状態変化及び/又は化学変化によって、球体を除去することが好ましい。ここで、球体の状態変化及び/又は化学変化とは、膨張、昇華、発泡、ガス発生、分解、燃焼、炭化等の変化若しくはこれらの組合せを意味する。例えば、球体が有機材料から成る場合、球体を燃焼させることによって除去することが一層好ましい。尚、球体の除去と球体を被覆するカソード電極の部分の除去、あるいは、球体の除去と球体を被覆するカソード電極、絶縁層及びゲート電極の部分の除去は、必ずしも同時に起こらなくてもよい。例えば、球体を被覆するカソード電極の部分、あるいはこれに加えて絶縁層やゲート電極の部分を除去した後に球体の一部が残存している場合、残存した球体の除去を後から行えばよい。
特に、球体が有機材料から成る場合、球体を例えば燃焼させると、例えば、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気が発生し、球体近傍の閉鎖空間の圧力が高まり、球体近傍のカソード電極は或る耐圧限界を超えた時点で破裂する。この破裂の勢いによって、球体を被覆するカソード電極の部分が飛散し、隆起部及び凹部が形成され、しかも、球体が除去される。あるいは又、球体を例えば燃焼させると、同様の機構に基づき、カソード電極と絶縁層とゲート電極は或る耐圧限界を超えた時点で破裂する。この破裂の勢いによって、球体を被覆するカソード電極と絶縁層とゲート電極の部分が飛散し、隆起部及び凹部と同時に開口部が形成され、しかも、球体が除去される。即ち、球体を除去する以前には絶縁層及びゲート電極には開口部が存在せず、球体の除去に伴って開口部が形成される。このとき、球体の燃焼の初期過程は閉鎖空間内で進行するため、球体の一部は炭化する可能性もある。球体を被覆するカソード電極の部分の厚さを、破裂によって飛散し得る程度に薄くすることが好ましい。また、球体を被覆するカソード電極、絶縁層及びゲート電極の部分の厚さを、破裂によって飛散し得る程度に薄くすることが好ましく、特に、絶縁層については、球体を被覆していない部分の厚さを球体の直径と同程度にすることが好適である。
後述する実施例12においても、球体の状態変化及び/又は化学変化によって球体を除去することができるが、カソード電極の破裂を伴わないので、外力によって除去を行う方が簡便な場合もある。また、後述する実施例13では、球体を除去する前の時点で既に開口部が完成されているが、開口部の大きさが球体の直径よりも大きい場合には、球体を外力によって除去することができる。ここで、外力とは、空気又は不活性ガスの吹付け圧力、洗浄液の吹付け圧力、磁気吸引力、静電気力、遠心力等の物理的な力である。尚、実施例12、実施例13においては、実施例10と異なり、球体を被覆する部分のカソード電極、あるいは、場合によっては、更に絶縁層やゲート電極を飛散させる必要がないので、カソード電極、絶縁層あるいはゲート電極の残渣が発生し難いという利点がある。
後述する実施例12、実施例13で使用される球体は、少なくとも表面が、カソード電極、構成に依っては絶縁層やゲート電極を構成する材料の各界面張力(表面張力)に比べて、大きな界面張力を有する材料から構成されていることが好ましい。これにより、実施例13では、カソード電極、絶縁層及びゲート電極は球体の少なくとも頂部を被覆することがなく、開口部が最初から絶縁層及びゲート電極に形成された状態が得られる。開口部の直径がどの程度になるかは、例えば、カソード電極、絶縁層やゲート電極を構成する材料の厚さと球体の直径との関係や、カソード電極、絶縁層やゲート電極の形成方法、カソード電極、絶縁層やゲート電極を構成する材料の界面張力(表面張力)に依存する。
後述する実施例12、実施例13において、球体は、少なくとも表面が界面張力に関する上述の条件を満たしていればよい。つまり、カソード電極、絶縁層及びゲート電極の各界面張力よりも大きな界面張力を有している部分は、球体の表面のみであっても全体であってもよく、また、球体の表面及び/又は全体の構成材料は、無機材料、有機材料、あるいは無機材料と有機材料の組合せのいずれであってもよい。実施例12、実施例13において、カソード電極やゲート電極が通常の金属系材料から構成され、絶縁層がガラス等の酸化シリコン系材料から構成される場合、金属系材料の表面には吸着水分に由来する水酸基、絶縁層の表面にはSi−O結合のダングリング・ボンドと吸着水分とに由来する水酸基が存在し、親水性の高い状態にあるのが普通である。従って、疎水性の表面処理層を有する球体を用いることが、特に有効である。疎水性の表面処理層の構成材料として、フッ素系樹脂、例えばポリテトラフルオロエチレンを挙げることができる。球体が疎水性の表面処理層を有する場合、疎水性の表面処理層の内側の部分を芯材と称することにすると、芯材の構成材料は、ガラス、セラミックス、フッ素系樹脂以外の高分子材料のいずれであってもよい。
球体を構成する有機材料は特に限定されないが、汎用の高分子材料が好適である。但し、重合度が極端に大きかったり、多重結合含有量が極端に多い高分子材料では、燃焼温度が高くなり過ぎ、燃焼による球体の除去時、カソード電極や絶縁層、ゲート電極に悪影響が及ぶ虞がある。それ故、これらに対する悪影響が生じる虞のない温度にて燃焼若しくは炭化させることが可能な高分子材料を選択することが好ましい。特に、絶縁層をガラスペーストのような、後工程において焼成を要する材料を用いて形成する場合には、工数をなるべく減少させる観点から、ガラスペーストの焼成温度にて燃焼若しくは炭化可能な高分子材料を選択することが好適である。ガラスペーストの典型的な焼成温度は約530゜Cなので、かかる高分子材料の燃焼温度は350〜500゜C程度であることが好ましい。代表的な高分子材料として、スチレン系、ウレタン系、アクリル系、ビニル系、ジビニルベンゼン系、メラミン系、ホルムアルデヒド系、ポリメチレン系のホモポリマー又は共重合体を挙げることができる。あるいは又、球体として、基板上での確実な配置を確保するために、付着力を有する固着タイプの球体を使用することもできる。固着タイプの球体として、アクリル系樹脂から成る球体を例示することができる。
あるいは又、例えば、塩化ビニリデン・アクリロニトリル共重合体を外殻とし、発泡材としてイソブタンを内包し、カプセル化した加熱膨張型マイクロスフェアを球体として使用することができる。実施例10において、かかる加熱膨張型マイクロスフェアを用い、熱膨張型マイクロスフェアを加熱すると、外殻のポリマーが軟化し、しかも、内包されたイソブタンがガス化して膨張する結果、粒径が膨張前と比較して約4倍程度の真球の中空体が形成される。その結果、実施例10において、電子を放出する隆起部、及び、隆起部に囲まれ、且つ、球体の形状の一部を反映した凹部を、カソード電極に形成することができる。また、かかる凹部や隆起部に加え、ゲート電極及び絶縁層を貫通した開口部を形成することもできる。尚、熱膨張型マイクロスフェアの加熱による膨張も、本明細書においては、球体の除去という概念に包含する。その後、熱膨張型マイクロスフェアを適切な溶剤を用いて取り除けばよい。
実施例10においては、基板上に複数の球体を配置した後、球体を被覆するカソード電極を形成すればよい。この場合においては、あるいは又、後述する実施例12、実施例13においては、基板上への複数の球体の配置方法として、球体を基板上に散布する乾式法を挙げることができる。球体の散布には、例えば、液晶表示装置の製造分野において、パネル間隔を一定に維持するためのスペーサを散布する技術を応用することができる。具体的には、圧搾気体で球体をノズルから噴射する、所謂スプレーガンを用いることができる。尚、球体をノズルから噴射する際、球体を揮発性の溶剤中に分散させた状態としてもよい。あるいは、静電粉体塗装の分野で通常使用されている装置や方法を利用して球体を散布することもできる。例えば、コロナ放電を利用した静電粉体吹付けガンにより負に帯電させた球体を、接地した基板に向かって吹き付けることができる。使用する球体は、後述するように非常に小さいため、基板上に散布されると基板の表面に例えば静電気力によって付着し、以降の工程においても容易に基板から脱落することはない。基板上に複数の球体の配置した後、球体を加圧すれば、基板上の複数の球体の重なりを解消することができ、球体を基板上で単層に密に配置することができる。
あるいは、後述する実施例11のように、球体とカソード電極材料とを分散媒中に分散させて成る組成物から成る組成物層を基板上に形成し、以て、基板上に複数の球体を配置し、カソード電極材料から成るカソード電極で球体を被覆した後、分散媒を除去することもできる。組成物の性状としては、スラリーやペーストが可能であり、これらの所望の性状に応じ、分散媒の組成や粘度を適宜選択すればよい。組成物層を基板上に形成する方法としては、スクリーン印刷法が好適である。カソード電極材料は、典型的には、分散媒中における沈降速度が球体よりも遅い微粒子であることが好適である。かかる微粒子を構成する材料として、カーボン、バリウム、ストロンチウム、鉄を挙げることができる。分散媒を除去した後、必要に応じてカソード電極の焼成を行う。組成物層を基板上に形成する方法としては、噴霧法、滴下法、スピンコーティング法、スクリーン印刷法を挙げることができる。尚、球体が配置されると共に、カソード電極材料から成るカソード電極で球体が被覆されるが、組成物層の形成方法に依っては、かかるカソード電極のパターニングを行う必要がある。
あるいは、後述する実施例12、実施例13にあっては、球体を分散媒中に分散させて成る組成物から成る組成物層を基板上に形成し、以て、基板上に複数の球体を配置した後、分散媒を除去することができる。組成物の性状としては、スラリーやペーストが可能であり、これらの所望の性状に応じ、分散媒の組成や粘度を適宜選択すればよい。典型的には、イソプロピルアルコール等の有機溶媒を分散媒として用い、蒸発により分散媒を除去することができる。組成物層を基板上に形成する方法としては、噴霧法、滴下法、スピンコーティング法、スクリーン印刷法を挙げることができる。
ところで、ゲート電極とカソード電極は互いに異なる方向(例えば、ストライプ状のゲート電極の射影像とストライプ状のカソード電極の射影像とが成す角度が90度)に延びており、且つ、例えばストライプ状にパターニングされており、電子放出領域(重複領域)に位置する隆起部から電子が放出される。従って、隆起部は、機能上、電子放出領域(重複領域)にのみ存在すればよい。但し、たとえ電子放出領域(重複領域)以外の領域に隆起部及び凹部が存在していたとしても、このような隆起部及び凹部は絶縁層に被覆されたまま、何ら電子を放出するといった機能を果たさない。従って、球体を全面に配置しても何ら問題は生じない。
これに対して、球体を被覆したカソード電極、絶縁層及びゲート電極(ゲート電極)の各部分を除去する場合、個々の球体の配置位置と開口部の形成位置とが一対一に対応するため、電子放出領域(重複領域)以外の領域にも開口部が形成される。以下、電子放出領域(重複領域)以外の領域に形成される開口部を「無効開口部」と呼び、電子放出に寄与する本来の開口部と区別する。ところで、電子放出領域(重複領域)以外の領域に無効開口部が形成されたとしても、この無効開口部は電界放出素子として何ら機能せず、電子放出領域(重複領域)に形成される電界放出素子の動作に何ら悪影響を及ぼさない。なぜなら、無効開口部の底部に隆起部及び凹部が露出していても、無効開口部の上端部にゲート電極が形成されていないからであり、あるいは又、無効開口部の上端部にゲート電極が形成されていても底部に隆起部及び凹部が露出していないか、あるいは、無効開口部の底部に隆起部及び凹部が露出しておらず、しかも、上端部にゲート電極が形成されておらず、単に基板の表面が露出しているか、のいずれかであるからである。従って、球体を全面に配置しても何ら問題は生じない。尚、電子放出領域(重複領域)とそれ以外の領域との境界線上に形成された孔は、開口部に含まれる。
球体の直径は、所望の開口部の直径、凹部の直径、電界放出素子を用いて構成される平面型表示装置の表示画面寸法、画素数、重複領域の寸法、1画素を構成すべき電界放出素子の個数に応じて選択することができるが、0.1〜10μmの範囲で選択することが好ましい。例えば、液晶表示装置のスペーサとして市販されている球体は、粒径分布が1〜3%と良好なので、これを利用することが好適である。球体の形状は真球であることが理想的ではあるが、必ずしも真球である必要はない。また、電界放出素子の製造方法に依っては、上述したように、球体の配置された場所に開口部か無効開口部のいずれかが形成され得るが、基板上には球体を100〜5000個/mm2程度の密度で配置することが好適である。例えば球体を約1000個/mm2の密度で基板上に配置すると、例えば重複領域の寸法を仮に0.5mm×0.2mmとした場合、この重複領域内に約100個の球体が存在し、約100個の隆起部が形成されることになる。1つの重複領域にこの程度の個数の隆起部が形成されていれば、球体の粒径分布や真球度のばらつきに起因する凹部の直径のばらつきはほぼ平均化され、実用上、1画素(又は1サブピクセル)当たりの放出電子電流密度や輝度はほぼ均一となる。
実施例10あるいは後述する実施例11〜実施例13においては、球体の形状の一部が電子放出電極を構成する凹部の形状に反映される。隆起部の先端部のプロファイルは、不規則な凹凸を有していても、あるいは滑らかであってもよいが、特に、実施例10や実施例11においては、この先端部はカソード電極の破断により形成されるため、隆起部の先端部が不規則形状となり易い。破断により隆起部に先端部が先鋭化すると、先端部が高効率の電子放出電極として機能し得るので、好都合である。実施例10〜実施例13においては、凹部を囲む隆起部はいずれも概ね円環状となり、この場合の凹部と隆起部とは、全体としてクレータあるいはカルデラのような形状を呈する。
基板上における隆起部の配置は規則的であってもランダムであってもよく、球体の配置方法に依存する。上述の乾式法あるいは湿式法を採用した場合、基板上における隆起部の配置はランダムとなる。尚、凹部の周方向に沿って連続した隆起部により凹部が囲まれていてもよいし、場合によっては、凹部の周方向に沿って不連続な隆起部により凹部が囲まれていてもよい。
実施例10〜実施例13において、絶縁層の形成後、絶縁層に開口部を形成する場合、隆起部の先端部に損傷が生じないように、隆起部を得た後、保護層を形成し、開口部の形成後、保護層を取り除く構成とすることもできる。保護層を構成する材料として、クロムを例示することができる。
以下、図20〜図23を参照して、実施例10の電界放出素子の製造方法を説明するが、図20の(A)、図21の(A)、図22の(A)は模式的な一部端面図であり、図23の(A)及び(B)は模式的な一部断面図であり、図20の(B)、図21の(B)及び図22の(B)は、図20の(A)、図21の(A)及び図22の(A)よりも広い範囲を模式的に示す一部斜視図である。
[工程−1000]
先ず、複数の球体80を被覆したカソード電極112を基板11上に形成する。具体的には、先ず、例えばガラスから成る基板11上の全面に、球体80を配置する。球体80は、例えばポリメチレン系の高分子材料から成り、平均直径約5μm、粒径分布1%未満である。球体80を、スプレーガンを用い、基板11上におおよそ1000個/mm2の密度でランダムに配置する。スプレーガンを用いた散布は、球体を揮発性溶剤と混合して噴霧する方式、あるいは粉末状態のままノズルから噴射する方式のいずれでもよい。配置された球体80は、静電気力で基板11上に保持されている。この状態を図20の(A)及び(B)に示す。
[工程−1010]
次に、球体80及び基板11上にカソード電極112を形成する。カソード電極112を形成した状態を、図21の(A)及び(B)に示す。カソード電極112は、例えばカーボンペーストをストライプ状にスクリーン印刷することによって形成することができる。このとき、球体80は基板11上の全面に配置されているので、球体80の中には、図21の(B)に示すように、カソード電極112で被覆されないものも当然存在する。次に、カソード電極112に含まれる水分や溶剤を除去し、且つ、カソード電極112を平坦化するために、例えば150゜Cにてカソード電極112を乾燥する。この温度では、球体80は何ら状態変化及び/又は化学変化を起こさない。尚、上述のようなカーボンペーストを用いたスクリーン印刷に替えて、カソード電極112を構成するカソード電極用導電材料層を全面に形成し、このカソード電極用導電材料層を通常のリソグラフィ技術とドライエッチング技術を用いてパターニングし、ストライプ状のカソード電極112を形成することもできる。リソグラフィ技術を適用する場合、通常、レジスト層をスピンコーティング法により形成するが、スピンコーティング時の基板11の回転数が500rpm程度、回転時間が数秒間程度であれば、球体80は脱落したり変位することなく、基板11上に保持され得る。
[工程−1020]
次に、球体80を除去することによって、球体80を被覆したカソード電極112の部分を除去し、以て、電子を放出する複数の隆起部112Aと、各隆起部112Aに囲まれ、且つ、球体80の形状の一部を反映した凹部112Bとを有するカソード電極112を形成する。この状態を、図22の(A)及び(B)に示す。具体的には、カソード電極112の焼成を兼ね、約530゜Cにて加熱を行うことにより球体80を燃焼させる。球体80の燃焼に伴って球体80が閉じ込められていた閉鎖空間の圧力が上昇し、球体80を被覆するカソード電極112の部分が或る耐圧限界を超えた時点で破裂して除去される。その結果、基板11上に形成されたカソード電極112の一部分に、隆起部112A及び凹部112Bが形成される。尚、球体を除去した後に、球体の一部分が残渣として残る場合には、使用する球体を構成する材料にも依るが、適切な洗浄液を用いて残渣を除去すればよい。
[工程−1030]
その後、カソード電極112及び基板11上に絶縁層13を形成する。具体的には、例えば、ガラスペーストを全面に約5μmの厚さにスクリーン印刷する。次に、絶縁層13に含まれる水分や溶剤を除去し、且つ、絶縁層13を平坦化するために、例えば150゜Cにて絶縁層13を乾燥する。上述のようなガラスペーストを用いたスクリーン印刷に替えて、例えばプラズマCVD法によりSiO2膜を形成してもよい。
[工程−1040]
次に、絶縁層13上に、ストライプ状のゲート電極14を形成する(図23の(A)参照)。ゲート電極14は、例えばカーボンペーストをストライプ状にスクリーン印刷することによって形成することができる。このときのストライプ状のゲート電極14の射影像の延びる方向は、ストライプ状のカソード電極112の射影像の延びる方向と90度の角度を成している。次に、ゲート電極14に含まれる水分や溶剤を除去し、且つ、ゲート電極14を平坦化するために、例えば150゜Cにてゲート電極14を乾燥した後、ゲート電極14及び絶縁層13を構成する材料を焼成する。尚、カーボンペーストを用いたスクリーン印刷に替えて、ゲート電極14を構成する導電材料層を絶縁層13の全面に形成し、次いで、導電材料層を通常のリソグラフィ技術とドライエッチング技術を用いてパターニングしてもよい。
[工程−1050]
その後、ゲート電極14の射影像とカソード電極112の射影像とが重複する重複領域において、ゲート電極14及び絶縁層13に開口部15を形成し、以て、開口部15の底部に複数の複数の隆起部112A及び凹部112Bを露出させる。開口部15の形成は、通常のリソグラフィ技術によるレジストマスクの形成と、レジストマスクを用いたエッチングにより行うことができる。但し、カソード電極112に対して十分に高いエッチング選択比が確保できる条件でエッチングを行うことが好ましい。あるいは又、隆起部112Aを形成した後、例えば、クロムから成る保護層を形成しておき、開口部15を形成した後、保護層を取り除くことが好ましい。その後、レジストマスクを除去する。こうして、図23の(B)に示した電界放出素子を得ることができる。
尚、実施例10の製造方法の変形例として、[工程−1010]の後、[工程−1030]〜[工程−1050]を実行し、次いで、[工程−1020]を実行してもよい。この場合、球体の燃焼とゲート電極14及び絶縁層13を構成する材料の焼成を同時に行えばよい。
あるいは又、[工程−1010]の後、[工程−1030]を実行し、更に、[工程−1040]と同様の工程において、開口部を有していないストライプ状のゲート電極を絶縁層上に形成した後、[工程−1020]を実行する。これによって、球体80を被覆したカソード電極112、絶縁層13及びゲート電極14の各部分が除去され、以て、ゲート電極14及び絶縁層13を貫通した開口部が形成されると共に、電子を放出する隆起部112Aと、隆起部112Aに囲まれ、且つ、球体80の形状の一部を反映した凹部112Bとから成る電子放出電極を、開口部の底部に位置するカソード電極112に形成することができる。即ち、球体80の燃焼に伴って球体80が閉じ込められている閉鎖空間の圧力が上昇し、球体を被覆する部分のカソード電極112と絶縁層13とゲート電極14とが或る耐圧限界を超えた時点で破裂し、隆起部112A及び凹部112Bと同時に開口部が形成され、しかも、球体80が除去される。開口部は、ゲート電極14及び絶縁層13を貫通し、且つ、球体80の形状の一部を反映している。また、開口部の底部には、電子を放出する隆起部112A、及び、隆起部112Aに囲まれ、且つ、球体80の形状の一部を反映した凹部112Bが残る。
実施例11は、クレータ型電界放出素子の製造方法の変形である。実施例11の製造方法を図24を参照して説明するが、基板11上に複数の球体80を配置する工程が、球体80とカソード電極材料とを分散媒中に分散させて成る組成物から成る組成物層81を基板11上に形成し、以て、基板11上に複数の球体80を配置し、カソード電極材料から成るカソード電極112で球体を被覆した後、分散媒を除去する工程から成る、即ち、湿式法から成る点が、実施例10の製造方法と相違する。
[工程−1100]
先ず、基板11上に複数の球体80を配置する。具体的には、球体80とカソード電極材料81Bとを分散媒81A中に分散させて成る組成物から成る組成物層81を基板11上に形成する。即ち、例えば、イソプロピルアルコールを分散媒81Aとして使用し、平均直径約5μmのポリメチレン系の高分子材料から成る球体80と、平均直径約0.05μmのカーボン粒子をカソード電極材料81Bとして分散媒81A中に分散させて成る組成物を基板11上にストライプ状にスクリーン印刷し、組成物層81を形成する。図24の(A)には、組成物層81の形成直後の状態を示す。
[工程−1110]
基板11に保持された組成物層81中では、間もなく球体80が沈降して基板11上に配置されると共に、球体80から基板11上に亙ってカソード電極材料81Bが沈降し、カソード電極材料81Bから成るカソード電極112が形成される。これによって、基板11上に複数の球体80を配置し、カソード電極材料から成るカソード電極112で球体80を被覆することができる。この状態を、図24の(B)に示す。
[工程−1120]
その後、分散媒81Aを例えば蒸発させることによって除去する。この状態を、図24の(C)に示す。
[工程−1130]
次いで、実施例10の[工程−1020]〜[工程−1050]と同様の工程、あるいは、実施例10の製造方法の変形例を実行することによって、図23の(B)に示したと同様の電界放出素子を完成することができる。
実施例12も、クレータ型電界放出素子の製造方法の変形である。実施例12の製造方法において、基板上にストライプ状のカソード電極を形成する工程は、より具体的には、
基板上に複数の球体を配置する工程と、
電子を放出する複数の隆起部と、各隆起部に囲まれ、且つ、球体の形状の一部を反映した凹部とを有し、各隆起部が球体の周囲に形成されたカソード電極を、基板上に設ける工程と、
球体を除去する工程、
から成る。基板上への複数の球体の配置は、球体の散布によって行う。また、球体は疎水性の表面処理層を有する。以下、実施例12を、図25を参照して説明する。
[工程−1200]
先ず、基板11上に複数の球体180を配置する。具体的には、ガラスから成る基板11上の全面に、複数の球体180を配置する。この球体180は、例えばジビニルベンゼン系の高分子材料から成る芯材180Aをポリテトラフルオロエチレン系樹脂から成る表面処理層180Bで被覆して成り、平均直径約5μm、粒径分布1%未満である。球体180を、スプレーガンを用い、基板11上におおよそ1000個/mm2の密度でランダムに配置する。配置された球体180は、静電気力で基板11上に吸着されている。ここまでのプロセスが終了した状態を、図25の(A)に示す。
[工程−1210]
次に、電子を放出する複数の隆起部112Aと、各隆起部112Aに囲まれ、且つ、球体180の形状の一部を反映した凹部112Bとを有し、各隆起部112Aが球体180の周囲に形成されたカソード電極112を、基板11上に設ける。具体的には、実施例10で述べたと同様に、例えばカーボンペーストをストライプ状にスクリーン印刷するが、実施例12では、球体180の表面が表面処理層180Bにより疎水性を帯びているために、球体180の上にスクリーン印刷されたカーボンペーストは直ちに弾かれて落下し、球体180の周囲に堆積して隆起部112Aが形成される。隆起部112Aの先端部112Cは、実施例10の場合ほど先鋭とはならない。球体180と基板11との間に入り込んだカソード電極112の部分が、凹部112Bとなる。図25の(B)では、カソード電極112と球体180との間に隙間が存在するように図示されているが、カソード電極112と球体180とは接触している場合もある。その後、カソード電極112を例えば150゜Cにて乾燥させる。ここまでのプロセスが終了した状態を、図25の(B)に示す。
[工程−1220]
次に、球体180に外力を与えることによって、基板11上から球体180を除去する。具体的な除去方法としては、洗浄や圧搾気体の吹付けを挙げることができる。ここまでのプロセスが終了した状態を、図25の(C)に示す。尚、球体の除去は、球体の状態変化及び/又は化学変化に基づいて、より具体的には、例えば、燃焼によって球体を除去することも可能である。以下に説明する実施例13においても同様である。
[工程−1230]
その後、実施例10の[工程−1030]〜[工程−1050]を実行することによって、図23の(B)に示したと略同様の電界放出素子を得ることができる。
尚、実施例12の製造方法の変形例として、[工程−1210]の後、実施例10の[工程−1030]〜[工程−1050]を実行し、次いで、[工程−1220]を実行してもよい。
実施例13も、クレータ型電界放出素子の製造方法の変形である。実施例13の製造方法において、基板上にストライプ状のカソード電極を形成する工程は、より具体的には、
基板上に複数の球体を配置する工程と、
電子を放出する複数の隆起部と、各隆起部に囲まれ、且つ、球体の形状の一部を反映した凹部とを有し、各隆起部が球体の周囲に形成されたカソード電極を基板上に設ける工程、
から成る。尚、全面に絶縁層を設ける際、球体の上方に開口部が形成された絶縁層を、カソード電極及び基板上に設ける。球体の除去は、開口部の形成後に行う。実施例13の電界放出素子の製造方法においては、基板上への複数の球体の配置は、球体の散布によって行う。また、球体は疎水性の表面処理層を有する。以下、実施例13を、図26及び図27を参照して説明する。
[工程−1300]
先ず、基板11上に複数の球体180を配置する。具体的には、実施例12の[工程−1200]と同様の工程を実行する。
[工程−1310]
その後、電子を放出する複数の隆起部112Aと、各隆起部112Aに囲まれ、且つ、球体180の形状の一部を反映した凹部112Bとを有し、各隆起部112Aが球体180の周囲に形成されたカソード電極112を、基板11上に設ける。具体的には、実施例12の[工程−1210]と同様の工程を実行する。
[工程−1320]
次に、球体の上方に開口部15Aが形成された絶縁層113を、カソード電極112及び基板11上に設ける。具体的には、例えば、ガラスペーストを全面に約5μmの厚さにスクリーン印刷する。ガラスペーストを用いたスクリーン印刷は、実施例10と同様に行うことができるが、球体180の表面が表面処理層180Bにより疎水性を帯びているために、球体180の上にスクリーン印刷されたガラスペーストは直ちに弾かれて落下し、自らの表面張力により絶縁層113の球体180の上の部分は収縮する。その結果、球体180の頂部は絶縁層113に覆われることなく、開口部15A内に露出する。この状態を図26の(A)に示す。図示した例では、開口部15Aの上端部の直径は球体180の直径よりも大きいが、表面処理層180Bの界面張力が、ガラスペーストの界面張力よりも小さい場合には、開口部15Aの直径が小さくなる傾向にある。逆に、表面処理層180Bの界面張力が、ガラスペーストの界面張力よりも著しく大きい場合には、開口部15Aの直径は大きくなり易い。その後、絶縁層113を例えば150゜Cにて乾燥させる。
[工程−1330]
次に、開口部15Aと連通する開口部15Bを有するゲート電極114を絶縁層113上に形成する。具体的には、例えば、カーボンペーストをストライプ状にスクリーン印刷する。カーボンペーストを用いたスクリーン印刷は、実施例10と同様に行えばよいが、球体180の表面が表面処理層180Bにより疎水性を帯びているために、球体180の上にスクリーン印刷されたカーボンペーストは直ちに弾かれて、自らの表面張力により収縮し、絶縁層113の表面のみに付着した状態となる。このとき、ゲート電極114は、図示するように、絶縁層113の開口端部から開口部15A内へ若干回り込むように形成されることもある。その後、ゲート電極114を例えば150゜Cにて乾燥させる。ここまでのプロセスが終了した状態を、図26の(B)に示す。尚、表面処理層180Bの界面張力が、カーボンペーストの界面張力よりも小さい場合には、開口部15Aの直径が小さくなる傾向にある。逆に、表面処理層180Bの界面張力が、カーボンペーストの界面張力よりも著しく大きい場合には、開口部15Aの直径は大きくなり易い。
[工程−1340]
次に、開口部15B,15Aの底部に露出した球体180を除去する。具体的には、カソード電極112と絶縁層113とゲート電極114の焼成を兼ね、ガラスペーストの典型的な焼成温度である約530゜Cにて加熱を行うことにより、球体180を燃焼させる。このとき、実施例10と異なり、絶縁層113及びゲート電極114には開口部15A,15Bが最初から形成されているので、カソード電極112や絶縁層113、ゲート電極114の一部が飛散することはなく、球体180は速やかに除去される。尚、開口部15A,15Bの上端部の直径が球体180の直径よりも大きい場合、球体180を燃焼させなくとも、例えば、洗浄や圧搾気体の吹付け等の外力によって球体180を除去することが可能である。ここまでのプロセスが終了した状態を、図27の(A)に示す。
[工程−1350]
その後、開口部15Aの側壁面に相当する絶縁層113の一部を等方的にエッチングすると、図27の(B)に示す電界放出素子を完成することができる。ここでは、ゲート電極114の端部が下方を向いているが、このことは、開口部15内の電界強度を高める上で好ましい。
実施例14はエッジ型電界放出素子に関する。このエッジ型電界放出素子の模式的な一部断面図を図28の(A)に示す。このエッジ型電界放出素子は、基板11上に形成されたストライプ状のカソード電極212と、基板11及びカソード電極212上に形成された絶縁層13と、絶縁層13上に形成されたストライプ状のゲート電極14から構成されており、開口部15がゲート電極14及び絶縁層13に設けられている。開口部15の底部にはカソード電極212のエッジ部212Aが露出している。カソード電極212及びゲート電極14に電圧を印加することによって、カソード電極212のエッジ部212Aから電子が放出される。
尚、図28の(B)に示すように、開口部15内のカソード電極212の下の基板11に凹部11Aが形成されていてもよい。あるいは又、模式的な一部断面図を図28の(C)に示すように、基板11上に形成された第1のゲート電極14Aと、基板11及び第1のゲート電極14A上に形成された第1の絶縁層13Aと、第1の絶縁層13A上に形成されたカソード電極212と、第1の絶縁層13A及びカソード電極212に形成された第2の絶縁層13Bと、第2の絶縁層13B上に形成された第2のゲート電極14Bから構成することもできる。そして、開口部15が、第2のゲート電極14B、第2の絶縁層13B、カソード電極212及び第1の絶縁層13Aに設けられており、開口部15の側壁にはカソード電極212のエッジ部212Aが露出している。カソード電極212並びに第1のゲート電極14A、第2のゲート電極14Bに電圧を印加することによって、カソード電極212のエッジ部212Aから電子が放出される。
例えば、図28の(C)に示したエッジ型電界放出素子の製造方法を、基板等の模式的な一部端面図である図29を参照して、以下、説明する。
[工程−1400]
先ず、例えばガラスから成る基板11の上に、スパッタリングにより厚さ約0.2μmのタングステン膜を成膜し、通常の手順に従ってフォトリソグラフィ技術及びドライエッチング技術によりこのタングステン膜をパターニングし、第1のゲート電極14Aを形成する。次に、全面に、SiO2から成る厚さ0.3μmの第1の絶縁層13Aを形成した後、第1の絶縁層13Aの上にタングステンから成るストライプ状のカソード電極212を形成する(図29の(A)参照)。
[工程−1410]
その後、全面に、例えばSiO2から成る厚さ0.7μmの第2の絶縁層13Bを形成し、次いで、第2の絶縁層13B上にストライプ状の第2のゲート電極14Bを形成する(図29の(B)参照)。第2のゲート電極14Bの構成材料や厚さについては、第1のゲート電極14Aと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
[工程−1420]
次に、全面にレジスト層90を形成した後、レジスト層90に第2のゲート電極14Bの表面を一部露出させるようにレジスト開口部90Aを形成する。レジスト開口部90Aの平面形状は矩形である。矩形の長辺はおおよそ100μm、短辺は数μm〜10μmである。続いて、レジスト開口部90Aの底面に露出した第2のゲート電極14Bを例えばRIE法により異方的にエッチングし、開口部を形成する。次に、開口部の底面に露出した第2の絶縁層13Bを等方的にエッチングし、開口部を形成する(図29の(C)参照)。第2の絶縁層13BをSiO2を用いて形成しているので、緩衝化フッ酸水溶液を用いたウェットエッチングを行う。第2の絶縁層13Bに形成された開口部の壁面は、第2のゲート電極14Bに形成された開口部の開口端面よりも後退するが、このときの後退量はエッチング時間の長短により制御することができる。ここでは、第2の絶縁層13Bに形成された開口部の下端が、第2のゲート電極14Bに形成された開口部の開口端面よりも後退するまで、ウェットエッチングを行う。
次に、開口部の底面に露出したカソード電極212を、イオンを主エッチング種とする条件によりドライエッチングする。イオンを主エッチング種とするドライエッチングでは、被エッチング物へのバイアス電圧の印加やプラズマと磁界との相互作用を利用して荷電粒子であるイオンを加速することができるため、一般には異方性エッチングが進行し、被エッチング物の加工面は垂直壁となる。しかし、この工程では、プラズマ中の主エッチング種の中にも垂直以外の角度を有する入射成分が若干存在すること、及び開口部の端部における散乱によってもこの斜め入射成分が生ずることにより、カソード電極212の露出面の中で、本来であれば開口部によって遮蔽されてイオンが到達しないはずの領域にも、ある程度の確率で主エッチング種が入射する。このとき、基板11の法線に対する入射角の小さい主エッチング種ほど入射確率は高く、入射角の大きい主エッチング種ほど入射確率は低い。
従って、カソード電極212に形成された開口部の上端部の位置は、第2の絶縁層13Bに形成された開口部の下端部とほぼ揃っているものの、カソード電極212に形成された開口部の下端部の位置はその上端部よりも突出した状態となる。つまり、カソード電極212のエッジ部212Aの厚さが、突出方向の先端部に向けて薄くなり、エッジ部212Aが先鋭化される。例えば、エッチング・ガスとしてSF6を用いることにより、カソード電極212の良好な加工を行うことができる。
次に、カソード電極212に形成された開口部の底面に露出した第1の絶縁層13Aを等方的にエッチングし、第1の絶縁層13Aに開口部を形成し、開口部15を完成させる。ここでは、緩衝化フッ酸水溶液を用いたウェットエッチングを行う。第1の絶縁層13Aに形成された開口部の壁面は、カソード電極212に形成された開口部の下端部よりも後退する。このときの後退量はエッチング時間の長短により制御可能である。開口部15の完成後にレジスト層90を除去すると、図28の(C)に示した構成を得ることができる。
実施例15においては、本発明の蛍光体粉末を陰極線管に適用した。また、表示用パネルを陰極線管のフェースプレートとした。カラー受像管用ガラスバルブの一部を切り欠いた模式図を図30に示すように、フェースプレート300は、ガラスパネル301とファンネル302とをガラス接着剤によって接合されて成る。ファンネル302の近傍のガラスパネル301にはテンションバンド307が巻かれており、カラー受像管用ガラスバルブの強度を高めている。図31に模式的な斜視図を示すように、色選別機構303には、スリット304が設けられている。そして、アパーチャーグリル型の色選別機構303は、スリット304の延びる方向に張力を加えた状態で、抵抗溶接法やレーザ溶接法によってフレーム部材305に取り付けられている。フレーム部材305は、スプリングから成る取付具306によってガラスパネル301に着脱自在に取り付けられている。ガラスパネル301の内面301Aには、発光層314が形成されている。ここで、発光層314は、実施例1にて説明した蛍光体粉末から構成されている。尚、発光層314の上にはメタルバック膜が形成されているが、メタルバック膜の図示は省略した。
ガラスパネル等の模式的な一部端面図である図32及び図33を参照して、フェースプレートの製造方法の概要、特に、発光層314の形成方法を説明する。ここで、ストライプ型のカラー発光層の形成は、ガラスパネル301の垂直方向と平行に延びたストライプ状のスリット304が設けられたアパーチャグリル型の色選別機構303が取り付けられたガラスパネル301を用いて行われる。尚、図32の(B)にのみ、色選別機構303を図示した。
先ず、ガラスパネル301の内面301Aに感光性被膜310を塗布し、乾燥させた後(図32の(A)参照)、露光光源(図示せず)から射出され、色選別機構303に設けられたストライプ状のスリット304を通過した紫外線によって、感光性被膜310にストライプ状の露光領域311を形成する(図32の(B)参照)。尚、この露光処理は、赤、緑、青のそれぞれの発光層を形成するために、露光光源の位置をずらして、3回行う。次いで、感光性被膜310を現像して選択的に除去し、感光性被膜の残部(露光、現像後の感光性被膜)312をガラスパネル301の内面301Aに残す(図32の(C)参照)。その後、全面にカーボン剤を塗布し、リフトオフ法にて感光性被膜の残部312及びその上のカーボン剤を除去することによって、カーボン剤から成るストライプ状のブラックマトリクス313を形成する(図33の(A)参照)。その後、露出したガラスパネル301の内面(ブラックマトリクス313の間の露出したフェースプレート300の内面の部分301B)に、赤、緑、青のストライプ状の各発光層314を形成する(図33の(B)参照)。具体的には、実施例1にて説明した各蛍光体粉末(蛍光体粒子)から調製された蛍光体粉末組成物を使用し、例えば、赤色の感光性の蛍光体粉末組成物(蛍光体スラリー)を全面に塗布し、露光、現像し、次いで、緑色の感光性の蛍光体粉末組成物(蛍光体スラリー)を全面に塗布し、露光、現像し、更に、青色の感光性の蛍光体粉末組成物(蛍光体スラリー)を全面に塗布し、露光、現像すればよい。
尚、色選別機構は、ドットタイプのシャドウマスク型あるいはスロットタイプのシャドウマスク型であってもよい。
実施例16においては、本発明の蛍光体粉末をプラズマ表示装置(PDP)に適用した。AC型プラズマ表示装置の典型的な構成例を、図34に示す。このAC型プラズマ表示装置は所謂3電極型に属し、一対の放電維持電極413の間で主に放電が生じる。図34に示すAC型プラズマ表示装置は、フロントパネル410とリアパネル420とが周縁部で貼り合わされて成る。リアパネル420上の発光層424の発光は、フロントパネル410を通して観察される。
フロントパネル410は、透明な第1の基板411と、第1の基板411上にストライプ状に設けられ、透明導電材料から成る対になった放電維持電極413と、放電維持電極413のインピーダンスを低下させるために設けられ、放電維持電極413よりも電気抵抗率の低い材料から成るバス電極412と、バス電極412及び放電維持電極413上を含む第1の基板411上に形成された誘電体膜として機能する保護層414とから構成されている。
一方、リアパネル420は、第2の基板(支持体)421と、第2の基板421上にストライプ状に設けられたアドレス電極(データ電極とも呼ばれる)422と、アドレス電極422上を含む第2の基板421上に形成された誘電体膜423と、誘電体膜423上であって隣り合うアドレス電極422の間の領域にアドレス電極422と平行に延びる絶縁性の隔壁425と、誘電体膜423上から隔壁425の側壁面上に亙って設けられた発光層424とから構成されている。発光層424は、赤色発光層424R、緑色発光層424G、及び、青色発光層424Bから構成されており、これらの各色の発光層424R,424G,424Bが所定の順序に従って設けられている。ここで、発光層424R,424G,424Bは、実施例1にて説明した蛍光体粉末から構成されている。発光層の形成方法として、実施例1にて説明した各蛍光体粉末(蛍光体粒子)から調製された蛍光体粉末組成物を使用した、厚膜印刷法、蛍光体粒子をスプレーする方法、発光層の形成予定部位に予め粘着性物質を付けておき、蛍光体粒子を付着させる方法、感光性の蛍光体ペーストを使用し、露光及び現像によって発光層をパターニングする方法、全面に発光層を形成した後に不要部をサンドブラスト法により除去する方法を挙げることができる。
図34は分解斜視図であり、実際にはリアパネル側の隔壁425の頂部がフロントパネル側の保護層414に当接している。一対の放電維持電極413と、2つの隔壁425の間に位置するアドレス電極422とが重複する領域が、放電セルに相当する。そして、隣り合う隔壁425と発光層424と保護層414とによって囲まれた空間内には、希ガスが封入されている。
放電維持電極413が延びる方向とアドレス電極422が延びる方向とは90度の角度を成しており、一対の放電維持電極413と、3原色を発光する発光層424R,424G,424Bの1組とが重複する領域が1画素に相当する。グロー放電が一対の放電維持電極413間で生じることから、このタイプのプラズマ表示装置は「面放電型」と称される。放電セルにおいては、希ガス中でのグロー放電に基づき発生した真空紫外線の照射によって励起された発光層が、蛍光体材料の種類に応じた特有の発光色を呈する。尚、封入された希ガスの種類に応じた波長を有する真空紫外線が発生する。希ガスとして、He(共鳴線の波長=58.4nm)、Ne(同74.4nm)、Ar(同107nm)、Kr(同124nm)、Xe(同147nm)を単独で用いるか、又は混合して用いることが可能であるが、ペニング効果による放電開始電圧の低下が期待できる混合ガスが特に有用である。かかる混合ガスとしては、Ne−Ar混合ガス、He−Xe混合ガス、Ne−Xe混合ガスを挙げることができる。尚、これらの希ガスの中でも最も長い共鳴線波長を有するXeは、波長172nmの強い真空紫外線も放射するので、好適な希ガスである。
以上、本発明を、好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例にて説明した平面型表示装置や陰極線管、プラズマ表示装置、冷陰極電界電子放出表示装置、冷陰極電界電子放出素子の構造、構成、蛍光体粉末組成物の組成、その調製方法は例示であり、適宜変更することができるし、平面型表示装置や冷陰極電界電子放出素子、陰極線管の製造方法も例示であり、適宜変更することができる。
更には、冷陰極電界電子放出素子の製造において使用した各種材料も例示であり、適宜変更することができる。冷陰極電界電子放出素子においては、専ら1つの開口部に1つの電子放出電極が対応する形態を説明したが、冷陰極電界電子放出素子の構造に依っては、1つの開口部に複数の電子放出電極が対応した形態、あるいは、複数の開口部に1つの電子放出電極が対応する形態とすることもできる。
また、図35に模式的な一部断面図及び平面図を示すように、基板11上に電子放出領域を形成し、併せて、基板11上にゲート電極支持部である隔壁513を形成し、複数の孔部515が形成されたストライプ状の導電材料箔514Aを、複数の孔部515が電子放出領域の上方に位置するように、隔壁513によって支持された状態に配設し、以て、ストライプ状の導電材料箔514Aから構成され、複数の孔部515を有するゲート電極514を電子放出領域の上方に位置させる構成の冷陰極電界電子放出素子とすることもできる。尚、隔壁513と隔壁513の間には開口部が存在する。尚、導電材料箔514Aは、隔壁513の頂面に、熱硬化性接着剤(例えばエポキシ系接着剤)にて固定すればよいし、あるいは又、ストライプ状の導電材料箔514Aの両端部は、基板11の周辺部に固定されている構造とすることもできる。より具体的には、例えば、基板11の周辺部に突出部(図示せず)を予め形成しておき、この突出部の頂面に導電材料箔514Aを構成する材料と同じ材料の薄膜(図示せず)を形成しておく。そして、ストライプ状の導電材料箔514Aを張架した状態で、かかる薄膜に、例えばレーザを用いて溶接すればよい。尚、突出部は、例えば、隔壁513の形成と同時に形成することができる。また、隔壁513は、基板11上に、例えば、サンドブラスト法に基づき形成することができる。
孔部515の平面形状は円形に限定されない。導電材料箔514Aに設けられた孔部515の形状の変形例を図36の(A)、(B)、(C)及び(D)に例示する。
収束電極600が設けられた電界放出素子の模式的な一部端面図を図37に例示する。図37に示した例においては、ゲート電極14及び絶縁層13の上に第2の絶縁層601が形成され、第2の絶縁層601の上に収束電極600が形成されている。収束電極600及び第2の絶縁層601には、開口部15と連通した開口部602が設けられている。尚、スピント型電界放出素子を例示したが、電界放出素子はこれに限定するものではなく、上述した各種の電界放出素子を用いることができる。
このような収束電極600が組み合わされた電界放出素子は、実質的に、ゲート電極14及び絶縁層13の上に第2の絶縁層601を形成した後、第2の絶縁層601の上に収束電極600を形成し、次いで、収束電極600及び第2の絶縁層601に開口部602を形成する工程を、上述の各種の電界放出素子の製造方法の工程に含ませることによって製造することができるので、詳細な説明は省略する。尚、収束電極のパターニングに依存して、1又は複数の電子放出電極、あるいは、1又は複数の画素に対応する収束電極ユニットが集合した形式の収束電極とすることもでき、あるいは又、有効領域を1枚のシート状の導電材料で被覆した形式の収束電極とすることもできる。
尚、収束電極は、このような方法にて形成するだけでなく、例えば、厚さ数十μmの42%Ni−Feアロイから成る金属板の両面に、例えばSiO2から成る絶縁膜を形成した後、各画素に対応した領域にパンチングやエッチングすることによって開口部を形成することによって収束電極を作製することもできる。そして、カソードパネル、金属板、アノードパネルを積み重ね、両パネルの外周部に枠体を配置し、加熱処理を施すことによって、金属板の一方の面形成された絶縁膜と絶縁層13とを接着させ、金属板の他方の面に形成された絶縁膜とアノードパネルとを接着し、これらの部材を一体化させ、その後、真空封入することで、表示装置を完成させることもできる。あるいは又、カソードパネルと金属板を積み重ね、加熱処理を施すことによって、これらを接着させ、次いで、カソードパネルとアノードパネルの組立を行うことで、表示装置を完成させることもできる。
更には、表面伝導型電子放出素子と通称される素子から電子放出領域を構成することもできる。この表面伝導型電子放出素子は、例えばガラスから成る基板上に酸化錫(SnO2)、金(Au)、酸化インジウム(In23)/酸化錫(SnO2)、カーボン、酸化パラジウム(PdO)等の導電材料から成り、微小面積を有し、所定の間隔(ギャップ)を開けて配された一対の電極がマトリクス状に形成されて成る。それぞれの電極の上には炭素薄膜が形成されている。そして、一対の電極の内の一方の電極に行方向配線が接続され、一対の電極の内の他方の電極に列方向配線が接続された構成を有する。一対の電極に電圧を印加することによって、ギャップを挟んで向かい合った炭素薄膜に電界が加わり、炭素薄膜から電子が放出される。かかる電子を表示用パネル(アノードパネル)上の発光層(蛍光体層)に衝突させることによって、発光層(蛍光体層)が励起されて発光し、所望の画像を得ることができる。
実施例1の蛍光体粉末の製造方法の概要を説明するための流れ図である。 実施例2の蛍光体粉末の製造方法の概要を説明するための流れ図である。 実施例3の蛍光体粉末の製造方法の概要を説明するための流れ図である。 実施例1における平面型表示装置の模式的な一部端面図である。 発光層がマトリクス状に配置された表示用パネルの模式的な平面図、及び、模式的な一部断面図である。 発光層がストライプ状に配置された表示用パネルの模式的な平面図、及び、模式的な一部断面図である。 表示用パネルの製造方法の一例を説明するための支持体等の模式的な一部端面図である。 スピント型電界放出素子から成る第1の構造を有する実施例1の電界放出素子の製造方法を説明するための基板等の模式的な一部端面図である。 図8に引き続き、スピント型電界放出素子から成る第1の構造を有する実施例1の電界放出素子の製造方法を説明するための基板等の模式的な一部端面図である。 クラウン型電界放出素子から成る第1の構造を有する実施例4の電界放出素子の製造方法を説明するための基板等の模式的な一部端面図である。 図10に引き続き、クラウン型電界放出素子から成る第1の構造を有する実施例4の電界放出素子の製造方法を説明するための基板等の模式的な一部端面図である。 図11に引き続き、クラウン型電界放出素子から成る第1の構造を有する実施例4の電界放出素子の製造方法を説明するための基板等の模式的な一部端面図、及び、部分的な斜視図である。 扁平型電界放出素子から成る第1の構造を有する実施例5の電界放出素子の製造方法を説明するための基板等の模式的な一部断面図である。 扁平型電界放出素子から成る第1の構造を有する実施例6の電界放出素子の製造方法を説明するための基板等の模式的な一部断面図である。 扁平型電界放出素子から成る第1の構造を有する実施例7の電界放出素子の製造方法を説明するための基板等の模式的な一部端面図である。 図15に引き続き、扁平型電界放出素子から成る第1の構造を有する実施例7の電界放出素子の製造方法を説明するための基板等の模式的な一部端面図である。 平面型電界放出素子から成る第2の構造を有する実施例8の電界放出素子の製造方法を説明するための基板等の模式的な一部断面図である。 平面型電界放出素子から成る第2の構造を有する電界放出素子の変形例の模式的な一部断面図である。 平面型電界放出素子から成る第2の構造を有する電界放出素子の別の変形例の模式的な一部断面図である。 平面型電界放出素子から成る第2の構造を有する実施例10の電界放出素子の製造方法を説明するための基板等の模式的な一部端面図、及び、部分的な斜視図である。 図20に引き続き、平面型電界放出素子から成る第2の構造を有する実施例10の電界放出素子の製造方法を説明するための基板等の模式的な一部端面図、及び、部分的な斜視図である。 図21に引き続き、平面型電界放出素子から成る第2の構造を有する実施例10の電界放出素子の製造方法を説明するための基板等の模式的な一部端面図、及び、部分的な斜視図である。 図22に引き続き、平面型電界放出素子から成る第2の構造を有する実施例10の電界放出素子の製造方法を説明するための基板等の模式的な一部断面図である。 平面型電界放出素子から成る第2の構造を有する実施例11の電界放出素子の製造方法を説明するための基板等の模式的な一部断面図である。 平面型電界放出素子から成る第2の構造を有する実施例12の電界放出素子の製造方法を説明するための基板等の模式的な一部端面図である。 平面型電界放出素子から成る第2の構造を有する実施例13の電界放出素子の製造方法を説明するための基板等の模式的な一部端面図である。 図26に引き続き、平面型電界放出素子から成る第2の構造を有する実施例13の電界放出素子の製造方法を説明するための基板等の模式的な一部端面図である。 エッジ型電界放出素子から成る第3の構造を有する実施例14の電界放出素子の模式的な一部断面図である。 エッジ型電界放出素子から成る第3の構造を有する実施例14の電界放出素子の製造方法を説明するための基板等の模式的な一部端面図である。 カラー受像管用ガラスバルブの一部を切り欠いた模式図である。 アパーチャーグリル型の色選別機構の模式的な斜視図である。 カラー受像管用ガラスバルブの製造工程を説明するためのフェースプレート等の模式的な一部端面図である。 図32に引き続き、カラー受像管用ガラスバルブの製造工程を説明するためのフェースプレート等の模式的な一部端面図である。 プラズマ表示装置の概念的な分解斜視図である。 電界放出素子の変形例の模式的な一部断面図及び平面図である。 ゲート電極の有する複数の開口部を示す模式的な平面図である。 本発明の第1の態様に係る平面型表示装置における電解放出素子及び収束電極の模式的な一部端面図である。 加速電圧を31.5キロボルトとし、発光層をZnSから構成したときの、発光層に入射した電子のエネルギー損失と、発光層への電子の侵入深さの関係をベーテの式に基づきモンテカルロシミュレーションを行った結果を示すグラフである。 加速電圧を6キロボルトとし、発光層をZnSから構成したときの、発光層に入射した電子のエネルギー損失と、発光層への電子の侵入深さの関係をベーテの式に基づきモンテカルロシミュレーションを行った結果を示すグラフである。 加速電圧を6キロボルトとし、発光層をZnSから構成したときの、発光層に入射した電子のエネルギー損失と、発光層への電子の侵入深さの関係をベーテの式に基づきモンテカルロシミュレーションを行った結果を示すグラフである。 加速電圧を6キロボルトとし、発光層をZn及びZnSから構成したときの、発光層に入射した電子のエネルギー損失と、発光層への電子の侵入深さの関係をベーテの式に基づきモンテカルロシミュレーションを行った結果を示すグラフである。
符号の説明
10・・・背面パネル、11・・・基板、11A・・・凹部、12,112,212・・・カソード電極、112A・・・隆起部、112B・・・凹部、112C・・・先端部、212A・・・エッジ部、13,13A,13B,113・・・絶縁層、14,14A,14B,114・・・ゲート電極、15,15A,15B・・・開口部、16,16A,16B・・・電子放出電極、20・・・表示用パネル、21・・・支持体、22,22R,22G,22B・・・発光層、23・・・ブラックマトリクス、24,25・・・アノード電極、31・・・カソード電極駆動回路、32・・・ゲート電極駆動回路、33・・・加速電源(アノード電極駆動回路)、40・・・感光性被膜、41・・・感光領域、42・・・感光性被膜の残部、43・・・マスク、44・・・孔部、51・・・剥離層、52・・・導電性組成物層、60・・・抵抗体層、70・・・炭素薄膜選択成長領域、71・・・マスク層、72・・・金属粒子、73・・・炭素薄膜、80,180・・・球体、180A・・・芯材、180B・・・表面処理層、81・・・組成物層、81A・・・分散媒、81B・・・カソード電極材料、90・・・レジスト層、90A・・・レジスト開口部、300・・・カラー受像管用ガラスバルブ、301・・・フェースプレート、301A・・・フェースプレートの内面、302・・・ファンネル、303・・・色選別機構、304・・・スリット、305・・・フレーム部材、306・・・取付具、307・・・テンションバンド、310・・・感光性被膜、311・・・露光領域、312・・・感光性被膜の残部、313・・・ブラックマトリクス、314・・・発光層、410・・・フロントパネル、411・・・第1の基板、412・・・バス電極、413・・・放電維持電極、414・・・保護層、420・・・リアパネル、424・・・発光層、421・・・第2の基板、422・・・アドレス電極、423・・・誘電体膜、425・・・隔壁

Claims (14)

  1. 燐酸を含有する化合物層によって表面が被覆されていることを特徴とする蛍光体粉末。
  2. 化合物層の平均厚さは、1nm乃至5nmであることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体粉末。
  3. 化合物層は、燐酸亜鉛又は燐酸カルシウムから成ることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体粉末。
  4. II−VI族元素から成るコア材、付活剤、及び、共付活剤から成り、
    コア材を1重量部としたとき、付活剤の割合は1×10-4重量部乃至1×10-3重量部であり、且つ、付活剤のモル濃度を1.00としたとき、共付活剤のモル濃度は0.95乃至1.05であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体粉末。
  5. コア材を構成する元素は亜鉛及び硫黄であり、付活剤を構成する元素は銀であり、共付活剤を構成する元素はアルミニウムであることを特徴とする請求項4に記載の蛍光体粉末。
  6. コア材を構成する元素は亜鉛及び硫黄であり、付活剤を構成する元素は銅であり、共付活剤を構成する元素はアルミニウムであることを特徴とする請求項4に記載の蛍光体粉末。
  7. 蛍光体粉末の製造工程における焼成工程の焼成温度を低下させるためにコア材を付活剤及び共付活剤と混合する工程において添加された塩素系化合物の蛍光体粉末に含まれる塩素濃度が20ppm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項4に記載の蛍光体粉末。
  8. 化合物層の直下の蛍光体粉末表面から表面結晶欠陥層あるいは表面歪み層が除去されていることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体粉末。
  9. 支持体、真空空間中から飛来した電子の照射によって発光する蛍光体粉末から成る発光層、及び、電極から成る表示用パネルであって、
    該蛍光体粉末は、燐酸を含有する化合物層によって表面が被覆されていることを特徴とする表示用パネル。
  10. 表示用パネルと、複数の電子放出領域を有する背面パネルとが真空空間を挟んで対向配置されて成る平面型表示装置であって、
    表示用パネルは、支持体、電子放出領域から飛来した電子の照射によって発光する蛍光体粉末から成る発光層、及び、電極から成り、
    該蛍光体粉末は、燐酸を含有する化合物層によって表面が被覆されていることを特徴とする平面型表示装置。
  11. 溶液の調製工程及び反応工程を経てコア材を製造した後、該コア材を付活剤及び共付活剤と混合し、次いで、焼成工程、表面処理工程を経て蛍光体粉末を製造する方法であって、
    表面処理工程において、蛍光体粉末の表面を、燐酸を含有する化合物層で被覆することを特徴とする蛍光体粉末の製造方法。
  12. 蛍光体粉末は、II−VI族元素から成るコア材、付活剤、及び、共付活剤から成り、
    コア材を1重量部としたとき、付活剤の割合は1×10-4重量部乃至1×10-3重量部であり、且つ、付活剤のモル濃度を1.00としたとき、共付活剤のモル濃度は0.95乃至1.05であることを特徴とする請求項11に記載の蛍光体粉末の製造方法。
  13. コア材を構成する元素は亜鉛及び硫黄であり、付活剤を構成する元素は銀であり、共付活剤を構成する元素はアルミニウムであることを特徴とする請求項12に記載の蛍光体粉末の製造方法。
  14. コア材を構成する元素は亜鉛及び硫黄であり、付活剤を構成する元素は銅であり、共付活剤を構成する元素はアルミニウムであることを特徴とする請求項12に記載の蛍光体粉末の製造方法。
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