JP2004277538A - 透明性成形材料組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】人造大理石用成形材料として従来一般に使用されている成型装置で容易に成形が可能で、機械的強度に優れ高い透明性を与える透明性成形材料組成物を提供することにある。
【解決手段】(メタ)アクリル系重合体0〜50重量%含有する(メタ)アクリル系単量体100重量部に対して、アクリルパウダー50〜300重量部、架橋用単量体1.0〜50重量部、重合開始剤0.1〜10重量部を必須成分として混練してなる透明性成形材料組成物である。
【選択図】 なし
【解決手段】(メタ)アクリル系重合体0〜50重量%含有する(メタ)アクリル系単量体100重量部に対して、アクリルパウダー50〜300重量部、架橋用単量体1.0〜50重量部、重合開始剤0.1〜10重量部を必須成分として混練してなる透明性成形材料組成物である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、人造大理石用成形材料で機械的強度に優れ、高い透明性を付与し得る、加圧成型機で容易に成形可能な透明性成形材料組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
(メタ)アクリル系樹脂に無機充填材を配合した(メタ)アクリル系人造大理石は、成形品外観、耐変色性、耐候性等に優れ、更に居住空間におけるスチレンフリー化に対応して浴槽、洗面ボウル、キッチンカウンター用に見直されている材料である。無機充填材には加工性に優れ、かつ成形型を傷めない水酸化アルミニウムが好んで使用される傾向にある。
【0003】
しかしながら、水酸化アルミニウムと(メタ)アクリル系樹脂とは屈折率が異なるために成形品が白く濁り透明性が失われるという欠点が生ずる。特に加飾材を配合した場合、柄の立体感が失われ高級感のある加飾効果が得られない。
【0004】
上記の問題を解決するために種々検討がなされている。例えば、アクリル系人造大理石に透明性を付与し、かつ耐傷付き性と離型性を改良するために、粒径10μm〜40μmのシリカ粉末を配合した注入成形向けの樹脂組成物に関する技術が報告されている(特許文献1)。しかしながら、シリカの使用により耐傷付き性が不十分であり、かつ充填材量が多いために透明性の付与が不十分である。
【0005】
また、真空成形により製造したアクリルシートの裏面をFRP層にて補強する技術も数多くみられる(例えば、特許文献2)。本技術では、アクリルの透明層が一定厚みで存在するために高級感があり深み感のある成形品が得られる。更に中間層に加飾層を設けることで高級感のある加飾効果が得られる。しかし、アクリルシートの形状に自由度が無く市場のニーズに応える少量多品種への対応が困難である点や、製造工程が煩雑であってコストアップを伴う点がある等が問題となっている。
【0006】
一方、二軸混練機を使用し50℃以上にてアクリル系単量体とアクリル系重合体とを混合する高粘度アクリルシラップを製造する技術が提案されている(例えば、特許文献3)。しかしながら、この方法は特に透明性成形材料の製造を意図したものではなく透明性成形材料に関してはなんら言及されていない。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−161182号公報
【特許文献2】
特開平8−333680号公報
【特許文献3】
特開平10−158332号公報
【0008】
従って、特別な成形装置を用いることなく従来一般に使用されている成形装置によりアクリル系成形材料から加圧成形等により透明性に優れた成形品、特に人造大理石等を容易に成形することが可能なアクリル系透明性成型材料が求められている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の事情に鑑み為されたもので、特に人造大理石用成形材料として従来一般に使用されている成型装置で容易に成形が可能で、機械的強度に優れ高い透明性を与える透明性成形材料組成物を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題につき鋭意研究した結果、以下に示す特定組成の成形材料組成物により、上記課題を解決し得ることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1)(メタ)アクリル系重合体0〜50重量%含有する(メタ)アクリル系単量100重量部に対して、アクリルパウダー50〜300重量部、架橋用単量体1.0〜50重量部、重合開始剤0.1〜10重量部を必須成分として混練してなる透明性成形材料組成物。
(2)(メタ)アクリル系重合体の一部が、ガラス転移温度−10℃以下のゴム状重合体に(メタ)アクリル系単量体をグラフト重合した平均粒径0.05〜100μmのゴムグラフト化重合体であることを特徴とする上記(1)記載の透明性成形材料組成物。
(3)40℃以上の温度で混練することを特徴とする上記(1)または(2)のいずれかに記載の透明性成形材料組成物。
(4)10〜60℃の温度条件下で熟成して(メタ)アクリル系重合体を溶解することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の透明性成形材料組成物。
を要旨とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、(メタ)アクリル系重合体0〜50重量%含有する(メタ)アクリル系単量体100重量部に対して、アクリルパウダー50〜300重量部、架橋用単量体1.0〜50重量部、重合開始剤0.1〜10重量部を必須成分とし、さらに増粘剤、無機充填剤、その他の添加剤をて混練してなる(メタ)アクリル系透明性成形材料組成物(以下、単に「成形材料組成物」ということがある)に関する。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル系重合体を含有する(メタ)アクリル系単量体」を「アクリルシラップ」と称する。
【0013】
本発明の成形材料組成物は、従来(メタ)アクリル系透明性成形材料組成物に充填剤として汎用されている溶融シリカに替えて、有機系充填剤のアクリルパウダーを充填剤として使用することが特徴の一つである。これによりに高い透明性を有し、従来のシリカを充填剤とする成形物に劣らぬ優れた機械的強度を有する成形物を得ることができる。
【0014】
本発明の成形材料組成物に使用される上記のアクリルパウダーは、その形状は特に限定されないが通常は粒径0.1μm〜1.0mmのほぼ球形状のものが用いられる。アクリルパウダーは、(メタ)アクリル系単量体またはアクリルシラップ100重量部に対して、50〜300重量部の範囲で使用されるが、70〜200重量部が好ましい。50重量部よりも少ない場合は、所期の機械的強度、透明性が得られず、300重量部を超える量では、粘度が高くなり成形材料組成物の調製が困難となり、機械的強度が低下する虞がある。
【0015】
本発明における(メタ)アクリル系単量体は、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、アクリル酸、ベンジル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、コハク酸2−(メタ)アクロイルオキシエチル、マレイン酸2−(メタ)アクロイルオキシエチル、フタル酸2−(メタ)アクロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸2−(メタ)アクリオイルオキシエチル、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が例示できるが、これらに限定されるものでない。これらは、2種類以上を適宜混合して用いても良い。
【0016】
本発明における成形材料組成物には耐熱性を付与する作用を有する架橋用単量体が使用される。該架橋用単量体としては多官能(メタ)アクリレート系モノマーが使用することができ、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、1,1−ジメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリル酸とポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の多価アルコールとの多価エステル、ジビニルベンゼン、トリアリールイソシアヌレート、アリールメタクリレート等の多官能(メタ)アクリレート系モノマー、ビスフェノール系エポキシ(メタ)アクリレート、ノボラック系エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシアクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートが例示できる。これらは、必要に応じて単独であるいは二種以上を併用して使用することができる。
【0017】
架橋用単量体の使用量は、(メタ)アクリル系単量体またはアクリルシラップ100重量部に対して1.0〜50重量%の範囲で使用されることが必要であり、3.0〜40重量%が好ましく、5.0〜30重量%が更に好ましい。1.0重量%未満であると、得られる成形物の耐熱性が低く、型から取り出す際に変形して不良品となる虞がある。また、成形物の光沢も冷却過程で著しく失われる。50重量%を越えると、成形物が硬く脆くなり耐衝撃性が低下して、例えば、運搬時の衝撃や硬い物が落下した際に割れて不良品となる虞がある。
【0018】
本発明においてアクリルシラップは(メタ)アクリル系重合体が50重量%以下含有しする。該(メタ)アクリル系重合体は、上記(メタ)アクリル系単量体を適宜重合させたものであり、その重量平均分子量が、10,000〜600,000の範囲にあるものが機械的特性、成形性が良好であり好ましく、30,000〜250,000の範囲であることが更に好ましい。重量平均分子量が10,000未満であると、得られる成形品の機械的物性が低下し、600,000を超えると、(メタ)アクリル系単量体の粘度が高くなりすぎ作業性が低下するため好ましくない。尚、ここでいう重量平均分子量とはゲルパーミッションクロマトグラフィー(GPC)にて測定したものである。
【0019】
上記(メタ)アクリル系重合体を含有する(メタ)アクリル系単量体、すなわちアクリルシラップを得るには、(メタ)アクリル系単量体の重合反応を制御して、(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量が上記記載の範囲内になるように部分重合を行いアクリルシラップ中における重合体の含有量を調整することにより得ることができる。このように重量平均分子量および重合体含有量を望ましい範囲に調整するためには、連鎖移動剤を添加して重合反応を行うことにより所望の範囲に調整することができる。また、上記の範囲内にある分子量の異なる(メタ)アクリル系重合体を適宜混合して用いることもできる。また、本発明のアクリルシラップは、(メタ)アクリル系単量体に、別途調製した上記範囲内の重量平均分子量を有する(メタ)アクリル系重合体を混合して調製することもできる。
【0020】
本発明のアクリルシラップ中における(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル系単量体と(メタ)アクリル系重合体との全体を100として、(メタ)アクリル系重合体の含有量が50重量%以下の範囲で存在するようにすることが必要である。(メタ)アクリル系重合体の含有量が50重量%を超える場合にはアクリルシラップの粘度が高くなりすぎ作業性が低下する虞れがあり好ましくない。(メタ)アクリル系重合体の含有量が40重量%以下の範囲で存在することが作業性、機械的物性の点から特に好ましい。
【0021】
上記連鎖移動剤としては、アクリル系単量体の重合反応に使用されるそれ自体公知のものが使用できる。具体的には、例えば、t−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン;チオフェノール、チオナフトール等の芳香族メルカプタン;チオグリコール酸;チオグリコール酸オクチル、エチレングリコールジチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス−(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス−(チオグリコレート)等のチオグリコール酸アルキルエステル;β−メルカプトプロピオン酸;β−メルカプトプロピオン酸のアルキルエステル等のチオール化合物が好ましく用いられるが、特に限定されるものではない。これら連鎖移動剤は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0022】
連鎖移動剤の使用量は、所望する(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量に応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、(メタ)アクリル系単量体に対して80重量%以下で、好ましくは10〜60重量%の範囲で適宜で使用すればよい。
【0023】
本発明においてアクリルシラップを適切な作業性を有する成形材料組成物とするために増粘性を付与することができる。増粘性を付与する方法としてはアクリル系重合体分子鎖に金属酸化物と反応する酸基を導入する方法がある。導入方法としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルの一部を酸基含有ビニルモノマーで置き換え重合させる方法や、水酸基含有ビニルモノマーを使用して水酸基を導入した重合体と酸無水物とを反応させる方法等が酸基の導入に使用できるがこれらは特に制限されない。ここで用いる酸基含有ビニルモノマーとしては、特に制限を受けないが、入手が容易なこと、経済性、取り扱い性が良好なこと、機械的特性、耐水性等のバランスがとれていること等から、(メタ)アクリル酸が好ましく用いられる。これら酸基含有ビニルモノマーは、二種類以上を適宜混合して用いても良い。
【0024】
本発明における重合開始剤は、加熱もしくは触媒の作用により自らもしくはその分解物が、(メタ)アクリル系単量体またはアクリルシラップの活性部位と反応し、硬化反応を開始する作用を有するものである。このような重合開始剤は特に限定されないが、次のようなものが例示される。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,4,4−トリメチルベンジルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−イソブチレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシベンゾエート、t−アミルクメンヒドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等の有機過酸化物が挙げられる。また、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独であるいは2種以上を適宜組合わせて用いてもよい。
【0025】
重合開始剤の使用量はアクリルシラップの種類、または(メタ)アクリル系単量体の種類等によって適宜選択されるが、通常は、アクリルシラップまたは(メタ)アクリル系単量体100重量部に対して、0.01〜10重量部であり、好ましくは0.1〜5重量部であり、さらに好ましくは0.5〜3重量部である。
【0026】
本発明の成形材料組成物には増粘剤を併用することができる。増粘剤は成形材料組成物を加圧成形に適した取り扱い性の良いタックの無い粘度となるように増粘させる作用を有する。この増粘剤としては、上記作用を有するものであれば特に限定されないが、アルカリ土類金属の酸化物および水酸化物等の無機系増粘剤が特に好ましい。具体的には、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。また、アクリルシラップに対して膨潤性を有するポリメチルメタクリレート等の熱可塑ポリマーを増粘剤として使用することもできる。これら増粘剤は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0027】
増粘剤の使用量は、その種類や成形材料組成物の用途等により変化し得るが、一般的には、(メタ)アクリル系単量体またはアクリルシラップ100重量部に対し0.1〜30重量部の範囲とするのが好適である。上記の範囲内で使用することにより、増粘後の粘度をプレス成形等の加圧成形に好適な範囲に調整、設定することができる。その使用量が0.1重量部未満であると、十分な増粘が得られずタックのある取り扱い性の悪い成形材料組成物となる虞がある。30重量部を超えて使用すると、増粘後の粘度が高くなりすぎ、成形時の作業性および成形材料組成物の流動性が低下する虞があるので好ましくない。特に成形材料組成物の流動性が低下すると、成形品の表面平滑性や外観等の表面性が悪化するとともに、充填剤の偏りによる成形品の機械的物性が低下する虞がある。また、金属酸化物の過剰使用は、成形品の耐煮沸性を低下させる要因ともなる。
【0028】
本発明において成形品の耐衝撃性を付与するためにアクリルシラップの(メタ)アクリル系重合体の一部をゴムグラフト化重合体とすることができる。該ゴムグラフト化重合体は、上記(メタ)アクリル系単量体をガラス転移温度が−10℃以下のゴム状重合体にグラフト重合させて得られる。ガラス転移温度が−10℃以下で(メタ)アクリル系単量体とグラフト共重合可能なゴム状重合体としては、アクリルゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン−イソプレン共重合体、ポリクロロプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、などの共役ジエン系ゴムまたはその水素添加物、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体ゴム、ポリイソブチレンゴムなどのオレフィン系ゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマーなどの熱可塑エラストマー等が例示できる。尚、共重合体の場合はガラス転移温度の低い方が−10℃以下であれば良い。これらは単独で使用してもよく、適宜2種類以上を混合して用いてもよい。
【0029】
上記ゴムグラフト化重合体はアクリルシラップ中に、平均粒径0.05〜100μmの範囲で良好な分散状態で分散しており、硬化後も成形品中に上記の平均粒径の範囲で良好に分散して優れた耐衝撃性を発現する。分散状態が十分でない場合には所望する十分な耐衝撃性が発現されず、更には成形品への色むら等外観不良の原因ともなる。なお、本発明においてはゴムグラフト状重合体がアクリルシラップ及び成形品に良好な分散を示すために、特に合成時及び成形時の条件や方法は制限されない。上記ゴムグラフト化重合体の分散粒径が0.05μm未満であると、分散状態は良好であっても衝撃エネルギーを吸収する効果が不十分となる。100μmを超えると、分散が不十分となり衝撃エネルギーを吸収する効果が不十分である。また、ゴム状重合体のガラス転移温度が−10℃よりも高いと十分に衝撃エネルギーを吸収できない虞がある。尚、分散状態は、例えば、平板成形品を薄くスライスしてオスミウム酸で染色しこれを透過型電子顕微鏡で粒子を撮影し観察することにより確認することができる。
【0030】
本発明の成形材料組成物において、(メタ)アクリル系重合体は部分的に未溶解の状態で存在させることができる。部分的に未溶解の状態で存在させるには、特に方法は限定されないが、例えば混練時間を短めに調整したり、または混練温度を低めに設定することで部分的に未溶解の状態で存在させることが可能である。このように成形材料組成物中おいて(メタ)アクリル系重合体の溶解状態を調整することにより曇りガラス調の風合いを有する成形物を得ることができる。また、(メタ)アクリル系重合体を加飾材として着色されたものを使用することによって、独特の加飾効果を与えることができる。尚、着色方法およびその色は制限されず、また部分的に着色した重合体を使用しても良いし、全ての重合体を着色しても良い。
【0031】
本発明の成形材料組成物には半透明の風合いを付与し収縮率を下げる目的で無機系または有機系充填材を併用することができる。無機系充填剤としては、具体的には、水酸化アルミニウム、シリカ、ガラスパウダー、炭酸カルシウム、アルミナ、クレー、タルク、ミルドファイバー、珪砂、川砂、珪藻土、雲母粉末、石膏、寒水砂、アスベスト粉等の無機系充填剤、および、ポリマービーズ等の有機系充填剤が挙げられる。上記充填剤のうち、水酸化アルミニウム、シリカ、およびガラスパウダーからなる群より選ばれる少なくとも一種の無機系充填剤が特に好ましい。上記充填剤は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。また、充填剤の平均粒径等の形態は、特に限定されるものではない。
【0032】
上記充填剤の配合量は、(メタ)アクリル系単量体またはアクリルシラップ100重量部に対して、1〜100重量部の範囲が使用され、10〜100重量部の範囲内で使用されるのがより好ましい。充填剤の配合量が1重量部未満の場合には、加える効果が発揮されない。充填剤の配合量が100重量部を超えると、透明性が失われ本発明の効果が得られない。上記充填剤は、さらに、アクリルシラップ界面との接着性を向上させるためにカップリング処理したものであってもよい。これにより、人造大理石成形物等の耐衝撃性、強度、耐水性等の物性を向上させることができる。これら、カップリング処理剤としては、特に限定されるものではないが、シラン系カップリング剤、クロム系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤等が挙げられる。また、これらは単独で用いてもよく、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0033】
本発明の成形材料組成物にはその他の公知の添加剤を使用することができる。具体的には、成形時の硬化収縮を抑制する効果を与える低収縮剤、機械強度を向上させる効果がある繊維強化材、成形型からの離型性を確保する内部離型材、重合調節剤、酸化防止剤、湿潤剤(減粘剤)、着色剤、紫外線吸収剤、チクソトロピー付与剤、難燃剤等公知のものを例示できる。これら、添加剤の使用量はその種類、および所望する効果により適宜定めればよく特に限定されるものではない。また、その使用方法も単独で用いてもよく、二種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0034】
上記低収縮剤としては、具体的には、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカプロラクタム、飽和ポリエステル、スチレン−アクリロニトリル共重合体、酢酸ビニル−スチレン共重合体、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、メタクリル酸メチル−多官能メタクリレート共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体などのゴム状重合体などが用いられる。また、これらの熱可塑ポリマーは部分的に架橋構造を導入されたものであっても良い。使用量に関しては、前記のように特に限定されないが、(メタ)アクリル系単量体またはアクリルシラップ100重量部に対して、2〜20重量部の範囲とするのが好適である。2重量部未満では低収縮効果が無く、20重量部を越える場合は成型体の透明感等を低下させ、更にコスト的にも不利になるので好ましくない。
【0035】
上記繊維強化材としては、具体的には、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミックからなる繊維等の無機繊維;アラミドやポリエステル等からなる有機繊維;天然繊維等が挙げられるが、特に限定されるものではない。また、繊維の形態は、ロービング、クロス、マット、織物、チョップドロービング、チョップドストランド等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら繊維補強材は、単独で用いてもよく、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。使用量に関しては、前記のように特に限定されないが、(メタ)アクリル系単量体またはアクリルシラップ100重量部に対して、1〜20重量部の範囲とするのが好ましい。1重量部未満では補強効果が無く、20重量部を越える場合は成形品の表面が悪くなる虞がある。
【0036】
上記内部離型剤としては、具体的には、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アミド、トリフェニルホスフェート、アルキルホスフェート、一般に用いられるワックス類、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0037】
上記湿潤剤としては、市販されているものがそのまま使用できる。例えば、BYKケミー株式会社から「W−995」、「W−996」、「W−9010」、「W−960」、「W−965」、「W−990」等の商品名で市販されているものが挙げられるが、これらはその使用目的によって適宜選択して使用される。
【0038】
また、記重合調整剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、メトキシハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン等の重合禁止剤が挙げられる。これら重合調製剤は、予めアクリルシラップに十分溶解しておくことが好ましい。上記酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチルヒドロキシトルエン等のヒンダードフェノール系のものが好んで用いられる。
【0039】
上記着色剤は、公知の無機顔料や有機顔料、紫外線吸収剤は、ベンゾフェノン等、チクソトロピー付与剤は、シリカ等、難燃剤は、リン酸エステル類等それぞれ市販されているものが使用できる。
【0040】
本発明の成形材料組成物は、アクリルシラップまたは(メタ)アクリル系単量体と、アクリルパウダー、架橋用単量体、重合開始剤、さらに所望に応じて増粘剤、無機充填剤、その他の添加剤などの混合物を混練することにより調製される。40℃以上の温度で混練することにより相互の溶解性(混和性)が良好となり、混練効率が高められ生産性の向上が図れるので好ましい。
【0041】
また、混練した成型材料組成物を10〜60℃の温度条件下で熟成を行なうと、成型材料組成物中における(メタ)アクリル系重合体の不十分な溶解部分の溶解が促進され透明性の向上が図れるので好ましい。熟成時間は特に制限されないが、通常2〜50時間程度が望ましい。
また成型材料組成物中における(メタ)アクリル系重合体の不十分な溶解部分を溶解させるには、使用する重合開始剤と成形温度との組み合わせにより成形時間を意識的に長くして成形過程中に(メタ)アクリル系重合体を溶解させることもできる。また、本発明の成形材料組成物は、混練後において、ブロック状あるいは離型性フィルムに挟み込んで厚み1mm以下のシート状にも加工できる。さらにこの組成物は、組成物中の混合物が溶解することにより増粘するため、成形時の取り扱い性に優れている。
【0042】
本発明による成形材料組成物は、加圧成形、インジェクション成形、トランスファー成形、注入成形等いずれの成形方法にも使用することができ、従来一般に使用されるそれぞれの成形機により適宜成形を行うことができる。成形温度は特に制限されず一般的には40〜150℃の範囲が好ましいが、成形方法により適宜選択される。
【0043】
【実施例】
以下に、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。尚、「部」は「重量部」を示し、「%」は「重量%」を示す。
【0044】
合成例1(アクリルシラップAC−1の合成)
温度計、還流冷却機、定量ポンプ攪拌装置を取り付けた3リットルセパラブル4つ口フラスコに、メタクリル酸メチル970g、メタクリル酸24g、連鎖移動剤としての1−ドデカンチオール(花王(株)製、商品名「チオカルコール20」)6gを投入した。次いで加熱し100℃まで昇温した。内容液が還流していることを確認した後、2,2−アゾビスイゾブチロニトリル0.15gをメタクリル酸メチル1000gに溶解した溶液を、3時間を要して一定速度で反応容器内に滴下して塊状重合を行った。滴下終了後1時間加熱を継続し、次いで重合禁止剤として2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(精工化学(株)製、商品名「スワノックス」)1gを加え重合を停止した。その後室温まで冷却してアクリルシラップを得た(アクリルシラップAC−1)。該アクリルシラップ中のポリマー分子量は重量平均で100,000、粘度は6000mPa・s、不揮発分(以下「NVM」と記す)32%、酸価は8mgKOH/gであった。尚、粘度はJIS−K 6901に準じてB型粘度計(ブルックフィールド型粘度計)にて測定した値である(測定温度:25℃)。
【0045】
合成例2 (アクリルシラップAC−2の合成)
メタクリル酸メチル998gおよび1−ドデカンチオール2gを初期仕込み溶液とし、1,1‘−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(日本ヒドラジン(株)製、商品名「ABNV」)0.05gを1000gのメタクリル酸メチルに溶解して滴下する以外は合成例1と同様にして塊状重合を行った。得られたアクリルシラップの粘度が2,000 mPa・sであったので、800gのメタクリル酸メチルを添加してアクリルシラップ(AC−2)を得た。得られたシラップ中のポリマー分子量は重量平均で200,000、シラップの粘度は200mPa・s、NVMは18%であった。
【0046】
合成例3(増粘型ゴムグラフト化重合体含有アクリルシラップの合成)
合成例1に使用したと同様の反応容器を用いて、メタクリル酸メチル860g、メタクリル酸(24gおよびスチレン・ブタジエンゴム100gを溶解した、これに1−ドデカンチオール6.4gを加えたものに、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.05gを1000gのメタクリル酸メチルに溶解した溶液をモノマーの沸点下で滴下して塊状重合を行った。次いで重合禁止剤としての2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール1gを加え重合を停止した。その後室温まで冷却しアクリルシラップ(AC−3)を得た。得られたゴムグラフトアクリルシラップ(ゴムグラフト化重合体アクリルシラップ)中のポリマー分子量は重量平均で100,000、アクリルシラップの粘度は6,000mPa・s、NVMは30%、酸価は8mgKOH/gであった。
【0047】
実施例1
合成例1で得たAC−1 100部、トリメチロールプロパントリメタクリレート(日本ユピカ(株)製、商品名TMPTMA)5部、重合開始剤(日本油脂(株)製、商品名「パーキュアーHOT」)2部、アクリルパウダー(旭化成(株)製、商品名「デルパウダー80N」)150部、酸化マグネシウム(協和化学(株)製、商品名「キョーワマグ#150」)1部、ステアリン酸亜鉛(アデカファインケミカル(株)製、商品名「ZNS−P」)5部を40℃で双腕型ニーダーにて攪拌混練し、透明性BMCを調製した。調製したBMCを40℃で8時間熟成してアクリルパウダーを完全に溶解させた。熟成後のBMCを下記成形条件にて加圧成形し、半透明調の平板(30cm×30cm、厚さ(t):0.5cm)、平板―1およびミニバスタブ−1を得た。
【0048】
平板およびミニバスタブの成形条件−1(加圧成形)
使用機器:100tプレス機/金型使用
金型温度:120℃(表面)、110℃(裏面)
成形圧力:8MPa
成形時間:10分
【0049】
実施例2
合成例2で得たAC−2を使用し、増粘剤を使用せず、ステアリン酸亜鉛の代わりにステアリン酸(日本油脂(株)製、商品名「さくら」)を使用する以外は実施例1と同様にして半透明調の平板―2およびミニバスタブ−2を得た。
【0050】
実施例3
合成例3で得たAC−3を使用する以外は実施例1と同様にして半透明調の平板―3およびミニバスタブ−3を得た。
【0051】
実施例4
80℃で攪拌混練する以外は実施例1と同様にして完全透明調の平板−4およびミニバスタブ−4を得た。
【0052】
実施例5
アクリルシラップの代わりにメタクリル酸メチルを100部、アクリルパウダーを200部使用する以外は実施例2と同様にして半透明調の平板−5およびミニバスタブ−5を得た。
【0053】
実施例6
アクリルシラップの代わりにメタクリル酸メチルを70部、ネオペンチルグリコールジメタクリレート(日立化成(株)製、商品名「FA−125M」)30部、アクリルパウダーを200部使用する以外は実施例2と同様にして半透明調の平板−6およびミニバスタブ−6を得た。
【0054】
実施例7
溶融シリカ(福島窯業(株)製、商品名「F−115C」)を50部使用する以外は実施例1と同様にして半透明調の平板−7およびミニバスタブ−7を得た。
【0055】
実施例8
合成例2で得たAC−2100部、トリメチロールプロパントリメタクリレート5部、パーキュアーHOT2部、アクリルパウダー100部、ステアリン酸3部を20℃の条件下ディゾルバーにて攪拌混練し、40℃で熟成することで透明性成形材料を調製した。調製した成形材料をアルミニウム型に流し込み50℃の条件化8時間かけて重合し、完全透明調の平板(30cm×30cm、厚さ(t):0.5cm)、平板―8およびミニバスタブ−8を得た。
【0056】
実施例9
合成例2で得たAC−2 90部、ネオペンチルグリコールジメタクリレート 10部、重合開始剤(日本油脂(株)製、商品名「パーロイルTCP」) 1部、アクリルパウダー100部、ステアリン酸3部を20℃の条件下ディゾルバーにて攪拌混練し、40℃で熟成して透明性成形材料を調製した。調製した成形材料を製品面90℃、裏面80℃のFRP型に流し込み10分間で成形して、完全透明調の平板(30cm×30cm、厚さ(t):0.5cm)、平板―9およびミニバスタブ−9を得た。
【0057】
比較例1
アクリルパウダーの代わり溶融シリカ 200部を使用する以外は実施例1と同様にして平板―10およびミニバスタブ−10を得た。しかし、光線透過率が不十分であった。
【0058】
比較例2
アクリルパウダーを使用せずの代わり溶融シリカ 30部を使用する以外は実施例1と同様にして成形したが、収縮が大きく平板およびミニバスタブは得られなかった。従って、以後の試験は中止した。
【0059】
得られた成形物を以下の方法で評価した。結果を表1に示した。
成形性試験
得られた平板成形物及びミニバスタブ成形物の状態を目視により評価した。
○:異常なし。 △:微細クラック有り。 ×:割れ有り。
【0060】
衝撃試験
平板成形物を所定の大きさにカットし、JIS−K5400のデュポン式(8.3.2)に準拠して、衝撃試験を行った。撃ち型は先端半径1/4インチ、重りは300gを使用し、割れもしくはひびが発生する高さを5cm間隔で測定した。割れもしくはひびが発生しない最大高さを求めた。
【0061】
透明性
日本電色工業(株)製NDH−1001DPにて成形物の光線透過率を測定した。
【0062】
引張強度及び引張り伸び
平板成形物を所定の大きさにカットし、JIS−K7113に準じて測定した。試験速度は1mm/min、試験温度は25℃である。破断時の強度および伸び率を求めた。
【0063】
【表1】
【0064】
【発明の効果】
本発明の透明性成形材料組成物は、従来の成型機で成形でき、屈折率の近い無機系充填材を使用した従来の人造大理石よりも大幅に透明性に優れ、更に従来の人造大理石よりも機械強度に優れるので、次世代の高透明性成形品への展開が容易に可能である。また、ゴムグラフト化重合体を使用することで耐衝撃性の向上も可能となる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、人造大理石用成形材料で機械的強度に優れ、高い透明性を付与し得る、加圧成型機で容易に成形可能な透明性成形材料組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
(メタ)アクリル系樹脂に無機充填材を配合した(メタ)アクリル系人造大理石は、成形品外観、耐変色性、耐候性等に優れ、更に居住空間におけるスチレンフリー化に対応して浴槽、洗面ボウル、キッチンカウンター用に見直されている材料である。無機充填材には加工性に優れ、かつ成形型を傷めない水酸化アルミニウムが好んで使用される傾向にある。
【0003】
しかしながら、水酸化アルミニウムと(メタ)アクリル系樹脂とは屈折率が異なるために成形品が白く濁り透明性が失われるという欠点が生ずる。特に加飾材を配合した場合、柄の立体感が失われ高級感のある加飾効果が得られない。
【0004】
上記の問題を解決するために種々検討がなされている。例えば、アクリル系人造大理石に透明性を付与し、かつ耐傷付き性と離型性を改良するために、粒径10μm〜40μmのシリカ粉末を配合した注入成形向けの樹脂組成物に関する技術が報告されている(特許文献1)。しかしながら、シリカの使用により耐傷付き性が不十分であり、かつ充填材量が多いために透明性の付与が不十分である。
【0005】
また、真空成形により製造したアクリルシートの裏面をFRP層にて補強する技術も数多くみられる(例えば、特許文献2)。本技術では、アクリルの透明層が一定厚みで存在するために高級感があり深み感のある成形品が得られる。更に中間層に加飾層を設けることで高級感のある加飾効果が得られる。しかし、アクリルシートの形状に自由度が無く市場のニーズに応える少量多品種への対応が困難である点や、製造工程が煩雑であってコストアップを伴う点がある等が問題となっている。
【0006】
一方、二軸混練機を使用し50℃以上にてアクリル系単量体とアクリル系重合体とを混合する高粘度アクリルシラップを製造する技術が提案されている(例えば、特許文献3)。しかしながら、この方法は特に透明性成形材料の製造を意図したものではなく透明性成形材料に関してはなんら言及されていない。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−161182号公報
【特許文献2】
特開平8−333680号公報
【特許文献3】
特開平10−158332号公報
【0008】
従って、特別な成形装置を用いることなく従来一般に使用されている成形装置によりアクリル系成形材料から加圧成形等により透明性に優れた成形品、特に人造大理石等を容易に成形することが可能なアクリル系透明性成型材料が求められている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の事情に鑑み為されたもので、特に人造大理石用成形材料として従来一般に使用されている成型装置で容易に成形が可能で、機械的強度に優れ高い透明性を与える透明性成形材料組成物を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題につき鋭意研究した結果、以下に示す特定組成の成形材料組成物により、上記課題を解決し得ることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1)(メタ)アクリル系重合体0〜50重量%含有する(メタ)アクリル系単量100重量部に対して、アクリルパウダー50〜300重量部、架橋用単量体1.0〜50重量部、重合開始剤0.1〜10重量部を必須成分として混練してなる透明性成形材料組成物。
(2)(メタ)アクリル系重合体の一部が、ガラス転移温度−10℃以下のゴム状重合体に(メタ)アクリル系単量体をグラフト重合した平均粒径0.05〜100μmのゴムグラフト化重合体であることを特徴とする上記(1)記載の透明性成形材料組成物。
(3)40℃以上の温度で混練することを特徴とする上記(1)または(2)のいずれかに記載の透明性成形材料組成物。
(4)10〜60℃の温度条件下で熟成して(メタ)アクリル系重合体を溶解することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の透明性成形材料組成物。
を要旨とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、(メタ)アクリル系重合体0〜50重量%含有する(メタ)アクリル系単量体100重量部に対して、アクリルパウダー50〜300重量部、架橋用単量体1.0〜50重量部、重合開始剤0.1〜10重量部を必須成分とし、さらに増粘剤、無機充填剤、その他の添加剤をて混練してなる(メタ)アクリル系透明性成形材料組成物(以下、単に「成形材料組成物」ということがある)に関する。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル系重合体を含有する(メタ)アクリル系単量体」を「アクリルシラップ」と称する。
【0013】
本発明の成形材料組成物は、従来(メタ)アクリル系透明性成形材料組成物に充填剤として汎用されている溶融シリカに替えて、有機系充填剤のアクリルパウダーを充填剤として使用することが特徴の一つである。これによりに高い透明性を有し、従来のシリカを充填剤とする成形物に劣らぬ優れた機械的強度を有する成形物を得ることができる。
【0014】
本発明の成形材料組成物に使用される上記のアクリルパウダーは、その形状は特に限定されないが通常は粒径0.1μm〜1.0mmのほぼ球形状のものが用いられる。アクリルパウダーは、(メタ)アクリル系単量体またはアクリルシラップ100重量部に対して、50〜300重量部の範囲で使用されるが、70〜200重量部が好ましい。50重量部よりも少ない場合は、所期の機械的強度、透明性が得られず、300重量部を超える量では、粘度が高くなり成形材料組成物の調製が困難となり、機械的強度が低下する虞がある。
【0015】
本発明における(メタ)アクリル系単量体は、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、アクリル酸、ベンジル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、コハク酸2−(メタ)アクロイルオキシエチル、マレイン酸2−(メタ)アクロイルオキシエチル、フタル酸2−(メタ)アクロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸2−(メタ)アクリオイルオキシエチル、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が例示できるが、これらに限定されるものでない。これらは、2種類以上を適宜混合して用いても良い。
【0016】
本発明における成形材料組成物には耐熱性を付与する作用を有する架橋用単量体が使用される。該架橋用単量体としては多官能(メタ)アクリレート系モノマーが使用することができ、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、1,1−ジメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリル酸とポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の多価アルコールとの多価エステル、ジビニルベンゼン、トリアリールイソシアヌレート、アリールメタクリレート等の多官能(メタ)アクリレート系モノマー、ビスフェノール系エポキシ(メタ)アクリレート、ノボラック系エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシアクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートが例示できる。これらは、必要に応じて単独であるいは二種以上を併用して使用することができる。
【0017】
架橋用単量体の使用量は、(メタ)アクリル系単量体またはアクリルシラップ100重量部に対して1.0〜50重量%の範囲で使用されることが必要であり、3.0〜40重量%が好ましく、5.0〜30重量%が更に好ましい。1.0重量%未満であると、得られる成形物の耐熱性が低く、型から取り出す際に変形して不良品となる虞がある。また、成形物の光沢も冷却過程で著しく失われる。50重量%を越えると、成形物が硬く脆くなり耐衝撃性が低下して、例えば、運搬時の衝撃や硬い物が落下した際に割れて不良品となる虞がある。
【0018】
本発明においてアクリルシラップは(メタ)アクリル系重合体が50重量%以下含有しする。該(メタ)アクリル系重合体は、上記(メタ)アクリル系単量体を適宜重合させたものであり、その重量平均分子量が、10,000〜600,000の範囲にあるものが機械的特性、成形性が良好であり好ましく、30,000〜250,000の範囲であることが更に好ましい。重量平均分子量が10,000未満であると、得られる成形品の機械的物性が低下し、600,000を超えると、(メタ)アクリル系単量体の粘度が高くなりすぎ作業性が低下するため好ましくない。尚、ここでいう重量平均分子量とはゲルパーミッションクロマトグラフィー(GPC)にて測定したものである。
【0019】
上記(メタ)アクリル系重合体を含有する(メタ)アクリル系単量体、すなわちアクリルシラップを得るには、(メタ)アクリル系単量体の重合反応を制御して、(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量が上記記載の範囲内になるように部分重合を行いアクリルシラップ中における重合体の含有量を調整することにより得ることができる。このように重量平均分子量および重合体含有量を望ましい範囲に調整するためには、連鎖移動剤を添加して重合反応を行うことにより所望の範囲に調整することができる。また、上記の範囲内にある分子量の異なる(メタ)アクリル系重合体を適宜混合して用いることもできる。また、本発明のアクリルシラップは、(メタ)アクリル系単量体に、別途調製した上記範囲内の重量平均分子量を有する(メタ)アクリル系重合体を混合して調製することもできる。
【0020】
本発明のアクリルシラップ中における(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル系単量体と(メタ)アクリル系重合体との全体を100として、(メタ)アクリル系重合体の含有量が50重量%以下の範囲で存在するようにすることが必要である。(メタ)アクリル系重合体の含有量が50重量%を超える場合にはアクリルシラップの粘度が高くなりすぎ作業性が低下する虞れがあり好ましくない。(メタ)アクリル系重合体の含有量が40重量%以下の範囲で存在することが作業性、機械的物性の点から特に好ましい。
【0021】
上記連鎖移動剤としては、アクリル系単量体の重合反応に使用されるそれ自体公知のものが使用できる。具体的には、例えば、t−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン;チオフェノール、チオナフトール等の芳香族メルカプタン;チオグリコール酸;チオグリコール酸オクチル、エチレングリコールジチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス−(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス−(チオグリコレート)等のチオグリコール酸アルキルエステル;β−メルカプトプロピオン酸;β−メルカプトプロピオン酸のアルキルエステル等のチオール化合物が好ましく用いられるが、特に限定されるものではない。これら連鎖移動剤は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0022】
連鎖移動剤の使用量は、所望する(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量に応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、(メタ)アクリル系単量体に対して80重量%以下で、好ましくは10〜60重量%の範囲で適宜で使用すればよい。
【0023】
本発明においてアクリルシラップを適切な作業性を有する成形材料組成物とするために増粘性を付与することができる。増粘性を付与する方法としてはアクリル系重合体分子鎖に金属酸化物と反応する酸基を導入する方法がある。導入方法としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルの一部を酸基含有ビニルモノマーで置き換え重合させる方法や、水酸基含有ビニルモノマーを使用して水酸基を導入した重合体と酸無水物とを反応させる方法等が酸基の導入に使用できるがこれらは特に制限されない。ここで用いる酸基含有ビニルモノマーとしては、特に制限を受けないが、入手が容易なこと、経済性、取り扱い性が良好なこと、機械的特性、耐水性等のバランスがとれていること等から、(メタ)アクリル酸が好ましく用いられる。これら酸基含有ビニルモノマーは、二種類以上を適宜混合して用いても良い。
【0024】
本発明における重合開始剤は、加熱もしくは触媒の作用により自らもしくはその分解物が、(メタ)アクリル系単量体またはアクリルシラップの活性部位と反応し、硬化反応を開始する作用を有するものである。このような重合開始剤は特に限定されないが、次のようなものが例示される。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,4,4−トリメチルベンジルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−イソブチレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシベンゾエート、t−アミルクメンヒドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等の有機過酸化物が挙げられる。また、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独であるいは2種以上を適宜組合わせて用いてもよい。
【0025】
重合開始剤の使用量はアクリルシラップの種類、または(メタ)アクリル系単量体の種類等によって適宜選択されるが、通常は、アクリルシラップまたは(メタ)アクリル系単量体100重量部に対して、0.01〜10重量部であり、好ましくは0.1〜5重量部であり、さらに好ましくは0.5〜3重量部である。
【0026】
本発明の成形材料組成物には増粘剤を併用することができる。増粘剤は成形材料組成物を加圧成形に適した取り扱い性の良いタックの無い粘度となるように増粘させる作用を有する。この増粘剤としては、上記作用を有するものであれば特に限定されないが、アルカリ土類金属の酸化物および水酸化物等の無機系増粘剤が特に好ましい。具体的には、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。また、アクリルシラップに対して膨潤性を有するポリメチルメタクリレート等の熱可塑ポリマーを増粘剤として使用することもできる。これら増粘剤は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0027】
増粘剤の使用量は、その種類や成形材料組成物の用途等により変化し得るが、一般的には、(メタ)アクリル系単量体またはアクリルシラップ100重量部に対し0.1〜30重量部の範囲とするのが好適である。上記の範囲内で使用することにより、増粘後の粘度をプレス成形等の加圧成形に好適な範囲に調整、設定することができる。その使用量が0.1重量部未満であると、十分な増粘が得られずタックのある取り扱い性の悪い成形材料組成物となる虞がある。30重量部を超えて使用すると、増粘後の粘度が高くなりすぎ、成形時の作業性および成形材料組成物の流動性が低下する虞があるので好ましくない。特に成形材料組成物の流動性が低下すると、成形品の表面平滑性や外観等の表面性が悪化するとともに、充填剤の偏りによる成形品の機械的物性が低下する虞がある。また、金属酸化物の過剰使用は、成形品の耐煮沸性を低下させる要因ともなる。
【0028】
本発明において成形品の耐衝撃性を付与するためにアクリルシラップの(メタ)アクリル系重合体の一部をゴムグラフト化重合体とすることができる。該ゴムグラフト化重合体は、上記(メタ)アクリル系単量体をガラス転移温度が−10℃以下のゴム状重合体にグラフト重合させて得られる。ガラス転移温度が−10℃以下で(メタ)アクリル系単量体とグラフト共重合可能なゴム状重合体としては、アクリルゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン−イソプレン共重合体、ポリクロロプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、などの共役ジエン系ゴムまたはその水素添加物、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体ゴム、ポリイソブチレンゴムなどのオレフィン系ゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマーなどの熱可塑エラストマー等が例示できる。尚、共重合体の場合はガラス転移温度の低い方が−10℃以下であれば良い。これらは単独で使用してもよく、適宜2種類以上を混合して用いてもよい。
【0029】
上記ゴムグラフト化重合体はアクリルシラップ中に、平均粒径0.05〜100μmの範囲で良好な分散状態で分散しており、硬化後も成形品中に上記の平均粒径の範囲で良好に分散して優れた耐衝撃性を発現する。分散状態が十分でない場合には所望する十分な耐衝撃性が発現されず、更には成形品への色むら等外観不良の原因ともなる。なお、本発明においてはゴムグラフト状重合体がアクリルシラップ及び成形品に良好な分散を示すために、特に合成時及び成形時の条件や方法は制限されない。上記ゴムグラフト化重合体の分散粒径が0.05μm未満であると、分散状態は良好であっても衝撃エネルギーを吸収する効果が不十分となる。100μmを超えると、分散が不十分となり衝撃エネルギーを吸収する効果が不十分である。また、ゴム状重合体のガラス転移温度が−10℃よりも高いと十分に衝撃エネルギーを吸収できない虞がある。尚、分散状態は、例えば、平板成形品を薄くスライスしてオスミウム酸で染色しこれを透過型電子顕微鏡で粒子を撮影し観察することにより確認することができる。
【0030】
本発明の成形材料組成物において、(メタ)アクリル系重合体は部分的に未溶解の状態で存在させることができる。部分的に未溶解の状態で存在させるには、特に方法は限定されないが、例えば混練時間を短めに調整したり、または混練温度を低めに設定することで部分的に未溶解の状態で存在させることが可能である。このように成形材料組成物中おいて(メタ)アクリル系重合体の溶解状態を調整することにより曇りガラス調の風合いを有する成形物を得ることができる。また、(メタ)アクリル系重合体を加飾材として着色されたものを使用することによって、独特の加飾効果を与えることができる。尚、着色方法およびその色は制限されず、また部分的に着色した重合体を使用しても良いし、全ての重合体を着色しても良い。
【0031】
本発明の成形材料組成物には半透明の風合いを付与し収縮率を下げる目的で無機系または有機系充填材を併用することができる。無機系充填剤としては、具体的には、水酸化アルミニウム、シリカ、ガラスパウダー、炭酸カルシウム、アルミナ、クレー、タルク、ミルドファイバー、珪砂、川砂、珪藻土、雲母粉末、石膏、寒水砂、アスベスト粉等の無機系充填剤、および、ポリマービーズ等の有機系充填剤が挙げられる。上記充填剤のうち、水酸化アルミニウム、シリカ、およびガラスパウダーからなる群より選ばれる少なくとも一種の無機系充填剤が特に好ましい。上記充填剤は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。また、充填剤の平均粒径等の形態は、特に限定されるものではない。
【0032】
上記充填剤の配合量は、(メタ)アクリル系単量体またはアクリルシラップ100重量部に対して、1〜100重量部の範囲が使用され、10〜100重量部の範囲内で使用されるのがより好ましい。充填剤の配合量が1重量部未満の場合には、加える効果が発揮されない。充填剤の配合量が100重量部を超えると、透明性が失われ本発明の効果が得られない。上記充填剤は、さらに、アクリルシラップ界面との接着性を向上させるためにカップリング処理したものであってもよい。これにより、人造大理石成形物等の耐衝撃性、強度、耐水性等の物性を向上させることができる。これら、カップリング処理剤としては、特に限定されるものではないが、シラン系カップリング剤、クロム系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤等が挙げられる。また、これらは単独で用いてもよく、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0033】
本発明の成形材料組成物にはその他の公知の添加剤を使用することができる。具体的には、成形時の硬化収縮を抑制する効果を与える低収縮剤、機械強度を向上させる効果がある繊維強化材、成形型からの離型性を確保する内部離型材、重合調節剤、酸化防止剤、湿潤剤(減粘剤)、着色剤、紫外線吸収剤、チクソトロピー付与剤、難燃剤等公知のものを例示できる。これら、添加剤の使用量はその種類、および所望する効果により適宜定めればよく特に限定されるものではない。また、その使用方法も単独で用いてもよく、二種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0034】
上記低収縮剤としては、具体的には、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカプロラクタム、飽和ポリエステル、スチレン−アクリロニトリル共重合体、酢酸ビニル−スチレン共重合体、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、メタクリル酸メチル−多官能メタクリレート共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体などのゴム状重合体などが用いられる。また、これらの熱可塑ポリマーは部分的に架橋構造を導入されたものであっても良い。使用量に関しては、前記のように特に限定されないが、(メタ)アクリル系単量体またはアクリルシラップ100重量部に対して、2〜20重量部の範囲とするのが好適である。2重量部未満では低収縮効果が無く、20重量部を越える場合は成型体の透明感等を低下させ、更にコスト的にも不利になるので好ましくない。
【0035】
上記繊維強化材としては、具体的には、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミックからなる繊維等の無機繊維;アラミドやポリエステル等からなる有機繊維;天然繊維等が挙げられるが、特に限定されるものではない。また、繊維の形態は、ロービング、クロス、マット、織物、チョップドロービング、チョップドストランド等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら繊維補強材は、単独で用いてもよく、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。使用量に関しては、前記のように特に限定されないが、(メタ)アクリル系単量体またはアクリルシラップ100重量部に対して、1〜20重量部の範囲とするのが好ましい。1重量部未満では補強効果が無く、20重量部を越える場合は成形品の表面が悪くなる虞がある。
【0036】
上記内部離型剤としては、具体的には、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アミド、トリフェニルホスフェート、アルキルホスフェート、一般に用いられるワックス類、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0037】
上記湿潤剤としては、市販されているものがそのまま使用できる。例えば、BYKケミー株式会社から「W−995」、「W−996」、「W−9010」、「W−960」、「W−965」、「W−990」等の商品名で市販されているものが挙げられるが、これらはその使用目的によって適宜選択して使用される。
【0038】
また、記重合調整剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、メトキシハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン等の重合禁止剤が挙げられる。これら重合調製剤は、予めアクリルシラップに十分溶解しておくことが好ましい。上記酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチルヒドロキシトルエン等のヒンダードフェノール系のものが好んで用いられる。
【0039】
上記着色剤は、公知の無機顔料や有機顔料、紫外線吸収剤は、ベンゾフェノン等、チクソトロピー付与剤は、シリカ等、難燃剤は、リン酸エステル類等それぞれ市販されているものが使用できる。
【0040】
本発明の成形材料組成物は、アクリルシラップまたは(メタ)アクリル系単量体と、アクリルパウダー、架橋用単量体、重合開始剤、さらに所望に応じて増粘剤、無機充填剤、その他の添加剤などの混合物を混練することにより調製される。40℃以上の温度で混練することにより相互の溶解性(混和性)が良好となり、混練効率が高められ生産性の向上が図れるので好ましい。
【0041】
また、混練した成型材料組成物を10〜60℃の温度条件下で熟成を行なうと、成型材料組成物中における(メタ)アクリル系重合体の不十分な溶解部分の溶解が促進され透明性の向上が図れるので好ましい。熟成時間は特に制限されないが、通常2〜50時間程度が望ましい。
また成型材料組成物中における(メタ)アクリル系重合体の不十分な溶解部分を溶解させるには、使用する重合開始剤と成形温度との組み合わせにより成形時間を意識的に長くして成形過程中に(メタ)アクリル系重合体を溶解させることもできる。また、本発明の成形材料組成物は、混練後において、ブロック状あるいは離型性フィルムに挟み込んで厚み1mm以下のシート状にも加工できる。さらにこの組成物は、組成物中の混合物が溶解することにより増粘するため、成形時の取り扱い性に優れている。
【0042】
本発明による成形材料組成物は、加圧成形、インジェクション成形、トランスファー成形、注入成形等いずれの成形方法にも使用することができ、従来一般に使用されるそれぞれの成形機により適宜成形を行うことができる。成形温度は特に制限されず一般的には40〜150℃の範囲が好ましいが、成形方法により適宜選択される。
【0043】
【実施例】
以下に、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。尚、「部」は「重量部」を示し、「%」は「重量%」を示す。
【0044】
合成例1(アクリルシラップAC−1の合成)
温度計、還流冷却機、定量ポンプ攪拌装置を取り付けた3リットルセパラブル4つ口フラスコに、メタクリル酸メチル970g、メタクリル酸24g、連鎖移動剤としての1−ドデカンチオール(花王(株)製、商品名「チオカルコール20」)6gを投入した。次いで加熱し100℃まで昇温した。内容液が還流していることを確認した後、2,2−アゾビスイゾブチロニトリル0.15gをメタクリル酸メチル1000gに溶解した溶液を、3時間を要して一定速度で反応容器内に滴下して塊状重合を行った。滴下終了後1時間加熱を継続し、次いで重合禁止剤として2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(精工化学(株)製、商品名「スワノックス」)1gを加え重合を停止した。その後室温まで冷却してアクリルシラップを得た(アクリルシラップAC−1)。該アクリルシラップ中のポリマー分子量は重量平均で100,000、粘度は6000mPa・s、不揮発分(以下「NVM」と記す)32%、酸価は8mgKOH/gであった。尚、粘度はJIS−K 6901に準じてB型粘度計(ブルックフィールド型粘度計)にて測定した値である(測定温度:25℃)。
【0045】
合成例2 (アクリルシラップAC−2の合成)
メタクリル酸メチル998gおよび1−ドデカンチオール2gを初期仕込み溶液とし、1,1‘−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(日本ヒドラジン(株)製、商品名「ABNV」)0.05gを1000gのメタクリル酸メチルに溶解して滴下する以外は合成例1と同様にして塊状重合を行った。得られたアクリルシラップの粘度が2,000 mPa・sであったので、800gのメタクリル酸メチルを添加してアクリルシラップ(AC−2)を得た。得られたシラップ中のポリマー分子量は重量平均で200,000、シラップの粘度は200mPa・s、NVMは18%であった。
【0046】
合成例3(増粘型ゴムグラフト化重合体含有アクリルシラップの合成)
合成例1に使用したと同様の反応容器を用いて、メタクリル酸メチル860g、メタクリル酸(24gおよびスチレン・ブタジエンゴム100gを溶解した、これに1−ドデカンチオール6.4gを加えたものに、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.05gを1000gのメタクリル酸メチルに溶解した溶液をモノマーの沸点下で滴下して塊状重合を行った。次いで重合禁止剤としての2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール1gを加え重合を停止した。その後室温まで冷却しアクリルシラップ(AC−3)を得た。得られたゴムグラフトアクリルシラップ(ゴムグラフト化重合体アクリルシラップ)中のポリマー分子量は重量平均で100,000、アクリルシラップの粘度は6,000mPa・s、NVMは30%、酸価は8mgKOH/gであった。
【0047】
実施例1
合成例1で得たAC−1 100部、トリメチロールプロパントリメタクリレート(日本ユピカ(株)製、商品名TMPTMA)5部、重合開始剤(日本油脂(株)製、商品名「パーキュアーHOT」)2部、アクリルパウダー(旭化成(株)製、商品名「デルパウダー80N」)150部、酸化マグネシウム(協和化学(株)製、商品名「キョーワマグ#150」)1部、ステアリン酸亜鉛(アデカファインケミカル(株)製、商品名「ZNS−P」)5部を40℃で双腕型ニーダーにて攪拌混練し、透明性BMCを調製した。調製したBMCを40℃で8時間熟成してアクリルパウダーを完全に溶解させた。熟成後のBMCを下記成形条件にて加圧成形し、半透明調の平板(30cm×30cm、厚さ(t):0.5cm)、平板―1およびミニバスタブ−1を得た。
【0048】
平板およびミニバスタブの成形条件−1(加圧成形)
使用機器:100tプレス機/金型使用
金型温度:120℃(表面)、110℃(裏面)
成形圧力:8MPa
成形時間:10分
【0049】
実施例2
合成例2で得たAC−2を使用し、増粘剤を使用せず、ステアリン酸亜鉛の代わりにステアリン酸(日本油脂(株)製、商品名「さくら」)を使用する以外は実施例1と同様にして半透明調の平板―2およびミニバスタブ−2を得た。
【0050】
実施例3
合成例3で得たAC−3を使用する以外は実施例1と同様にして半透明調の平板―3およびミニバスタブ−3を得た。
【0051】
実施例4
80℃で攪拌混練する以外は実施例1と同様にして完全透明調の平板−4およびミニバスタブ−4を得た。
【0052】
実施例5
アクリルシラップの代わりにメタクリル酸メチルを100部、アクリルパウダーを200部使用する以外は実施例2と同様にして半透明調の平板−5およびミニバスタブ−5を得た。
【0053】
実施例6
アクリルシラップの代わりにメタクリル酸メチルを70部、ネオペンチルグリコールジメタクリレート(日立化成(株)製、商品名「FA−125M」)30部、アクリルパウダーを200部使用する以外は実施例2と同様にして半透明調の平板−6およびミニバスタブ−6を得た。
【0054】
実施例7
溶融シリカ(福島窯業(株)製、商品名「F−115C」)を50部使用する以外は実施例1と同様にして半透明調の平板−7およびミニバスタブ−7を得た。
【0055】
実施例8
合成例2で得たAC−2100部、トリメチロールプロパントリメタクリレート5部、パーキュアーHOT2部、アクリルパウダー100部、ステアリン酸3部を20℃の条件下ディゾルバーにて攪拌混練し、40℃で熟成することで透明性成形材料を調製した。調製した成形材料をアルミニウム型に流し込み50℃の条件化8時間かけて重合し、完全透明調の平板(30cm×30cm、厚さ(t):0.5cm)、平板―8およびミニバスタブ−8を得た。
【0056】
実施例9
合成例2で得たAC−2 90部、ネオペンチルグリコールジメタクリレート 10部、重合開始剤(日本油脂(株)製、商品名「パーロイルTCP」) 1部、アクリルパウダー100部、ステアリン酸3部を20℃の条件下ディゾルバーにて攪拌混練し、40℃で熟成して透明性成形材料を調製した。調製した成形材料を製品面90℃、裏面80℃のFRP型に流し込み10分間で成形して、完全透明調の平板(30cm×30cm、厚さ(t):0.5cm)、平板―9およびミニバスタブ−9を得た。
【0057】
比較例1
アクリルパウダーの代わり溶融シリカ 200部を使用する以外は実施例1と同様にして平板―10およびミニバスタブ−10を得た。しかし、光線透過率が不十分であった。
【0058】
比較例2
アクリルパウダーを使用せずの代わり溶融シリカ 30部を使用する以外は実施例1と同様にして成形したが、収縮が大きく平板およびミニバスタブは得られなかった。従って、以後の試験は中止した。
【0059】
得られた成形物を以下の方法で評価した。結果を表1に示した。
成形性試験
得られた平板成形物及びミニバスタブ成形物の状態を目視により評価した。
○:異常なし。 △:微細クラック有り。 ×:割れ有り。
【0060】
衝撃試験
平板成形物を所定の大きさにカットし、JIS−K5400のデュポン式(8.3.2)に準拠して、衝撃試験を行った。撃ち型は先端半径1/4インチ、重りは300gを使用し、割れもしくはひびが発生する高さを5cm間隔で測定した。割れもしくはひびが発生しない最大高さを求めた。
【0061】
透明性
日本電色工業(株)製NDH−1001DPにて成形物の光線透過率を測定した。
【0062】
引張強度及び引張り伸び
平板成形物を所定の大きさにカットし、JIS−K7113に準じて測定した。試験速度は1mm/min、試験温度は25℃である。破断時の強度および伸び率を求めた。
【0063】
【表1】
【0064】
【発明の効果】
本発明の透明性成形材料組成物は、従来の成型機で成形でき、屈折率の近い無機系充填材を使用した従来の人造大理石よりも大幅に透明性に優れ、更に従来の人造大理石よりも機械強度に優れるので、次世代の高透明性成形品への展開が容易に可能である。また、ゴムグラフト化重合体を使用することで耐衝撃性の向上も可能となる。
Claims (4)
- (メタ)アクリル系重合体0〜50重量%含有する(メタ)アクリル系単量体100重量部に対して、アクリルパウダー50〜300重量部、架橋用単量体1.0〜50重量部、重合開始剤0.1〜10重量部を必須成分として混練してなる透明性成形材料組成物。
- (メタ)アクリル系重合体の一部が、ガラス転移温度−10℃以下のゴム状重合体に(メタ)アクリル系単量体をグラフト重合した平均粒径0.05〜100μmのゴムグラフト化重合体であることを特徴とする請求項1記載の透明性成形材料組成物。
- 40℃以上の温度で混練することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の透明性成形材料組成物。
- 10〜60℃の温度条件下で熟成して(メタ)アクリル系重合体を溶解することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透明性成形材料組成物。
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JP2008511745A (ja) * | 2004-11-08 | 2008-04-17 | エルジー・ケム・リミテッド | (メタ)アクリルシロップの製造方法 |
JP2009500289A (ja) * | 2005-07-15 | 2009-01-08 | チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド | アクリル系人造大理石用組成物 |
JP2016180024A (ja) * | 2015-03-23 | 2016-10-13 | 国立大学法人 岡山大学 | 組成物及びその製造方法 |
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2003
- 2003-03-14 JP JP2003069675A patent/JP2004277538A/ja active Pending
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