JP2004252356A - プラスチック光ファイバケーブル及びプラグ付きプラスチック光ファイバケーブル - Google Patents
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Abstract
【解決手段】コア部と、該コア部の外周に配置されたクラッド部からなるプラスチック光ファイバ素線の外周に、被覆層を設けてなるプラスチック光ファイバケーブルであって、前記コア部はポリカーボネート系樹脂からなり、前記クラッド部のうち、少なくともその最外周層はビニリデンフルオライド単位を10〜40質量%、テトラフルオロエチレン単位を45〜70質量%、ヘキサフルオロプロピレン単位を15〜30質量%含んだ共重合体であって、融点が135℃以上であり、ショアD硬度(ASTM−D648)が46〜70の範囲にある樹脂からなり、前記被覆層のうち、少なくともその最内周層はポリアミド系樹脂を主成分とした樹脂からなることを特徴としたプラスチック光ファイバケーブル。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等の移動体内の通信用配線に好適な、耐湿熱特性に優れたプラスチック光ファイバケーブル、プラグ付き光ファイバケーブル及びこれを用いた光伝送部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチック光ファイバ(以下適宜「POF」という。)は、石英系光ファイバと比較して伝送距離は短いものの、安価で、軽量、大口径であり、端面加工や取り扱いが容易である等の長所を有しており、屋内配線あるいは自動車内配線のような短・中距離通信用途における高速通信媒体としての利用が期待されている。
特に近年、自動車内通信分野において、カーナビゲーションシステムや、CD、DVD等のオーディオシステム等を代表とするマルチメディア情報が車内でも取り扱われるようになり、高速データ伝送への要求が高まってきていること、あるいはハーネスケーブルの軽量化、安価な通信システムの構築等への要求も高まっていることもあり、POFの自動車内通信分野への展開が行われつつある。
【0003】
現在実用化されている通信用POFは、コア部とその周囲にコア材よりも屈折率の低いクラッド材からなるクラッド部を配置したコア−クラッド構造を有している。従来、このような通信用POFのコア材としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート、ポリスチレンなど各種の非晶性樹脂材料が提案されてきた。
【0004】
このようなPOFは、通常コア−クラッド構造よりなる素線部の外周に被覆層を設けたPOFケーブルとして用いられるが、自動車内通信用配線として用いられる場合には、特にエンジンルーム付近やルーフ付近等のように、温度が85℃付近まで上昇するような空間内で長期間使用される場合が発生する。
【0005】
また、POFケーブルを実装した基板をリフロー半田工程に供する工程で、条件によってはPOFケーブル端面の温度が、一時的に125℃程度に達するような状況で使用される場合もある。この場合、プラグ内のPOF素線に熱膨張・収縮等の形態変化が生じ、被覆層に対してPOF素線の突き出しや引っ込み(ピストニング)等が生じる場合がある。このようなピストニングが生じた場合、光源又は受光素子とPOF端面との距離が変化して、結合損失が大きくなるため、POFから出射される光の受光量が変動し、システムに障害が発生するおそれがある。
【0006】
上記のような理由により、特に自動車内通信用等の高温高湿環境下で使用されるPOFケーブルには、温度85℃、相対湿度95%の雰囲気下に長期間、あるいは温度125℃程度の高温雰囲気下に短期間曝された後においても、耐湿熱安定性に優れていることが要求される。
【0007】
さらに、POFケーブルには、その末端にプラグやコネクタ等を固定する際のケーブル加工性や、振動に対しPOFを保護する、あるいはピストニングの発生を抑える観点から、POF素線と被覆層が強固に密着していることもあわせて要求される。
【0008】
さらにまた、上記のような高温条件下においては、プラグやコネクタ等を固定した付近で、POFのクラッド部が熱変形を受けることにより、伝送損失が悪化するおそれがある。そのため、POFのクラッド部には、125℃程度の高温条件下においても、熱変形の起こりにくいことが要求される。
【0009】
以上のような理由から、POFケーブルが、温度85℃、相対湿度95%条件下に長期間、あるいは温度125℃に達するような高温条件下に短期間曝された時の、耐湿熱安定性を向上させることを目的として、ポリカーボネート系樹脂(PC系樹脂)をコア材として用いる提案や、あるいはクラッド材又は被覆材の選択、改善に関する提案が数多く行われてきた。
【0010】
例えば、特開平03−068904号公報(特許文献1)には、コア材として粘度平均分子量が18000〜28000の範囲のPC系樹脂を用い、クラッド材には、フツ化ビニリデン(VdF)とテトラフルオロエチレン(TFE)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)との三元共重合体を用いることにより、成形性,伝送損失、耐熱性の向上したPOFが得られることが記載されている。
【0011】
また、特開2000−275448号公報(特許文献2)には、コア材にはPC系樹脂を用い、クラッド材にはVdF成分が40〜62モル%、TFE成分が28〜40モル%、HFP成分が8〜22モル%からなり、23℃におけるショアD硬度(ASTM D2240)の値が35〜45の三元共重合体を用い、被覆層にナイロン12又はVdF系樹脂を用いることで、伝送性能と耐熱性を向上し、高温高湿下での信頼性を向上させるPOFケーブルが得られることが記載されている。
【特許文献1】
特開平03−068904号公報
【特許文献2】
特開2000−275448号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの公報に記載された技術では、自動車内通信用配線等に求められているような高温高湿下での耐湿熱安定性を、未だ十分に満足することが出来ない。
【0013】
特開平03−068904号公報に記載されているように、クラッド材に用いられているVdF/TFE/HFP共重合体は、POFのクラッド材として一般的に用いられているVdFとTFEの二元共重合体(共重合組成比が、80/20質量%)と比較して、結晶性が低く、透明性に優れたものであるが、エラストマー性が顕著であったり、コア材であるPC系樹脂との密着性が低く、コア−クラッド間で剥離がおこりやすくなったり、熱変形温度が低いために、温度が125℃付近に達する高温環境下においてはクラッド部分が変形しやすくなるおそれがあった。
【0014】
また、特開2000−275448号公報に開示されているように、ショアD硬度の値が35〜45の範囲にある、特定組成のVdF/TFE/HFP共重合体からなる樹脂をクラッドの最外層に使用し、その外周にポリアミド樹脂等の被覆層を施したPOFケーブルは、クラッド材の熱変形温度が低く、柔らかい素材であるため、被覆層形成時におこる変形や損傷を防ぐためにPOF素線を熱的に保護するための保護層あるいは予備被覆層を施す必要があったり、被覆層が施されても高温下で機械的作用を受けるとクラッドの形状が変形し光学特性が劣化したり、さらには、コネクタ部のカシメ部分が緩む等のおそれもあったため、125℃に達するような高温環境下での実用に耐え得るものではなかった。
【0015】
本発明の目的は、温度85℃、相対湿度95%環境下に長期間、あるいは温度125℃の環境下に短期間曝された後も、耐湿熱安定性に優れたPOFケーブル、プラグ付きPOFケーブル、及び光伝送部品を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、コア部と、該コア部の外周に配置されたクラッド部からなるプラスチック光ファイバ素線の外周に、被覆層を設けてなる光ファイバケーブルであって、前記コア部はポリカーボネート系樹脂からなり、前記クラッド部のうち少なくともその最外周層はビニリデンフルオライド単位を10〜40質量%、テトラフルオロエチレン単位を45〜70質量%、ヘキサフルオロプロピレン単位を15〜30質量%含んだ共重合体であって、融点が135℃以上で、ショアD硬度(ASTM−D648)が46〜70の範囲にある樹脂からなり、前記被覆層のうち少なくともその最内周層はポリアミド系樹脂を主成分とした樹脂からなることを特徴とした耐熱プラスチック光ファイバケーブルに関する。
【0017】
また本発明は、上記のプラスチック光ファイバケーブルの少なくとも一端にプラグが接続されているプラグ付きプラスチック光ファイバケーブルに関する。
【0018】
また本発明は、上記のプラスチック光ファイバケーブルあるいはその一端にプラグが設けられたプラグ付きプラスチック光ファイバケーブルと、該ケーブルの被覆層に接着された他の部品からなる光伝送部品に関する。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
本発明のPOFケーブルは、コア材としてPC系樹脂を用い、クラッド材として、特定の組成範囲のVdF単位とTFE単位とHFP単位からなる三元共重合体を少なくともクラッド最外周層に使用したコア−クラッド構造よりなるPOF素線の外周に、ポリアミド系樹脂よりなる被覆層を形成したものである。
【0020】
本発明においてコア部を構成するPC系樹脂としては公知のものが使用でき、特に限定するものではないが、耐熱性の点から芳香族系PC系樹脂が好ましく、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(ビスフェノールAF)、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンの中から選ばれる1種または2種以上の2価フェノール化合物を含むビスフェノール含有成分に、カーボネート前駆物質を反応させて得られる芳香族PC又はその共重合体が好ましい。
【0021】
上記の中でも、ビスフェノールAの含有量が50質量%以上であるビスフェノール含有成分にカーボネート前駆物質を反応させて得られる芳香族PC又はその共重合体が、高温環境下におけるPOFケーブルの長寿命化という点から好ましい。
【0022】
上記のカーボネート前駆物質としては公知の各種のものを用いることができ、例えばホスゲン、ジフェニルカーボネートなどが挙げられる。
【0023】
上記のPC系樹脂として市販されているものには、例えば、市販品のユーピロンH3000、H4000、ODX(以上、三菱エンジニアリング・プラスチック社製)、マクロロン2205、2405、2605、CD2005(以上、バイエル製)、タフロンA1700、A1900、A2200、MD1500(以上、出光石油化学社製)、パンライトL−1225L、L−1225Y、LV−2225Y、AD5503(以上、帝人化成製)、ST−3000(帝人バイエルポリテック製)、レキサン101R、121R、5221C、OQ1020C(以上、GE・プラスチック製)、カリバー301−15、301−22、301−30(以上、住友ダウ・ケミカル製)等があり、それらをコア材として用いることができる。
【0024】
またPC系樹脂は、通常ASTM−D570に準拠して測定した吸水率が0.15〜0.24%の範囲にあるが、本発明のPOFでは、温度85℃相対湿度95%条件下における耐湿熱性を向上させる観点からは、吸水率が0.19%以下であるPC系樹脂を用いることが好ましく、0.16%以下であればより好ましい。このようなPC系樹脂をコア材に用いることで、温度85℃湿度95%のような高温多湿の環境にPOFが長期間放置された場合においても、POFの伝送損失の増加を抑制することができる。
【0025】
また、上記コア部に用いられるPC系樹脂は、ISO−62に準拠して測定したメルトフローインデックス(MFR)(温度300℃、荷重1.2kgf(11.8N)の条件で直径2mm、長さ8mmのノズルから10分間に吐出される重合体の量(g))が10〜100の範囲にあることが好ましく、20〜50の範囲がより好ましい。これはメルトフローインデックスが小さすぎると、成形性が低下したり、PCの分子鎖の配向複屈折が大きくなる傾向がある。又、このMFRが大きすぎると、POFの屈曲性および加工性が低下する傾向がある。
【0026】
本発明では、クラッド部の少なくとも最外周層に、特定組成のVdF単位とTFE単位とHFP単位からなる3元共重合体であって、融点が135℃以上であり、ショアD硬度(ASTM−D648)が46〜70の範囲にある樹脂を用いることが特徴である。
【0027】
上記の三元共重合体は、VdF単位を10〜40質量%、TFE単位を45〜70質量%、HFP単位を15〜30質量%の範囲で含有することを特徴としており、好ましくはVdF単位を15〜30質量%、TFE単位を50〜65質量%、HFP単位を16〜25質量%の範囲で含有することである。
【0028】
上記の組成範囲にある3元共重合体は、融点が135℃以上であるため、125℃の高温環境下にPOFケーブルが置かれた場合においても、クラッド材の形状が熱変形を起こすことで光学特性が低下する、或いは、コネクタ部のカシメ部分が緩むといった問題が発生することがない。
【0029】
しかも、上記の三元共重合体は、共重合成分中にHFP単位を15〜30%の範囲で含有するため、透明性が大きく損なわれることなく維持されており、PC系樹脂からなるコア材の外周にこのような三元共重合体をクラッド材として直接被覆した場合も、POFの伝送損失は良好に保たれる。
【0030】
また、上記の三元共重合体は、PC系樹脂との密着性が十分であるため、コア材とクラッド材が剥離して伝送損失の低下を招くこともない。さらにPC系樹脂をコア材としたPOFの紡糸温度付近における成型加工性、流動安定性も良好である。
【0031】
また、クラッド部を構成する上記の三元共重合体のISO−62に準拠して測定したメルトフローインデックス(MFR)(温度230℃、荷重5kgf(4.9N)の条件で直径2mm、長さ8mmのノズルから10分間に吐出される重合体の量(g))は5〜200であることが、POFの紡糸安定性の点から好ましい。
【0032】
また、クラッド部を構成する上記の三元共重合体の23℃におけるショアD硬度(ASTM−D2240)は、46〜70の範囲にあることが好ましく、50〜60の範囲であることがより好ましい。
【0033】
クラッド部を構成する上記3元共重合体のショアD硬度が46未満である場合は、熱変形温度や融点が低下する傾向にあるため、被覆層が施されても、POFが高温条件下で機械的作用を受けた場合、クラッドの形状が変形して光学特性が低下したり、コネクタ部のカシメ部分が緩む等のおそれがある。また、ショアD硬度が70より高い場合は、コアを構成するPC系樹脂や、被覆層を構成するポリアミド系樹脂との密着性が低下する傾向にある。
【0034】
また、クラッド部を構成する上記の三元共重合体の屈折率(アッベ屈折率計で、ナトリウムD線を用いて23℃で測定)は、1.33〜1.41であることが好ましい。これは、POFの曲げ損失光量を十分に低減できるとともに、POFの取り込み光量を増やすことで材料自体の散乱による光量損失を抑制できるためである。
【0035】
また、クラッド部は、単一層であっても複数層であってもよい。クラッド部が複数層からなる多層構造を有する場合、最外層には上記三元共重合体樹脂を用いるが、最外周層以外の層には例えば、公知のVdF系樹脂、フルオロアルキルメタクリレート系樹脂、VdF系樹脂とメタクリレート系樹脂との混合物など他の材料を使用してもよい。また、この場合、コアに接する最内層のクラッド(第1クラッド)には、比較的透明性に優れるとともに、コアに対する密着性に優れ、且つ第1クラッドの外側の第2クラッドに対する密着性が優れているものを使用することが好ましい。
【0036】
第1クラッドに用いられる重合体としては、例えば、良好な透明性および耐熱性を有しながら、屈曲性および加工性に優れる重合体として、下記一般式(VII)
CH2=CX−COO(CH2)m(CF2)nY (VII)
(式中、Xは水素原子またはメチル基、Yは水素原子またはフッ素原子を示し、mは1又は2、nは1〜12の整数を示す。)
で表されるフルオロアルキル(メタ)アクリレートの単位(A)15〜90質量%と、他の共重合可能な単量体の単位(B)10〜85質量%からなり、屈折率が1.39〜1.475の範囲にある共重合体を用いることができる。
POFに対して特に高帯域が要求される場合には、第1クラッド材として、下記一般式(VIII)、
CH2=C(CH3)COO−(CH2)m(CF2)nCF3 (VIII)
(式中、mは1又は2、nは5〜12の整数を示す。)
で表わされる長鎖フルオロアルキルメタクリレートの単位(C)0〜50質量%と、下記一般式(IX)
CH2=C(CH3)COO−CH2(CF2)mX (IX)
(式中、Xは水素原子またはフッ素原子、mは1〜4の整数を示す。)
で表わされる短鎖フルオロアルキルメタクリレートの単位(D)0〜50質量%と、他の共重合可能な単量体の単位(E)50〜80質量%からなる共重合体であって、屈折率が1.45〜1.48の範囲にある共重合体を用いることができる。
但し、第1クラッドの屈折率が高すぎると、第2クラッドによる曲げ光量損失の抑制効果が不十分になる傾向があるため、POFが使用される環境に応じて伝送帯域と曲げ光量損失とのバランスをとることが望ましい。
また、POFに対して特に低曲げ損失が要求される場合には、第1クラッド材として、長鎖フルオロアルキルメタクリレート単位(C)0〜80質量%と、短鎖フルオロアルキルメタクリレート単位(D)10〜90質量%と、他の共重合可能な単量体単位(E)10〜50質量%とからなる共重合体であって、屈折率が1.39〜1.435の範囲にある共重合体を用いることができる。
また、POFに対して特に耐熱性が要求される場合には、下記一般式(X)
CH2=C(F)COO−CH2(CF2)mX (X)
(式中、Xは水素原子またはフッ素原子、mは1〜4の整数を示す。)
で表わされるα−フルオロアクリル酸エステルの単位(F)からなる構造単位を有する共重合体であって、屈折率が1.38〜1.435の範囲にあり、ガラス転移温度が100℃以上である共重合体を用いることができる。
このようなα−フルオロアクリル酸エステルの単位としては、α−フルオロアクリル酸メチル、α−フルオロアクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、α−フルオロアクリル酸2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル等の単位が挙げられる。
【0037】
一般にPOF素線には、紡糸時の延伸配向による歪みや、冷却過程中に発生する残留熱応力歪みが存在し、これらは、高温環境下でPOFケーブルが使用される場合に熱収縮やピストニングが発生する原因となる。
【0038】
POFケーブルが、高々85℃付近の温度環境下で使用される場合には、上記の残留歪みの影響は無視できるほどに小さい。しかし、POFケーブルが、105〜125℃付近の温度環境下で使用される場合には、125℃環境下に24時間放置した際のPOF素線の軸方向の熱収縮率が0.9%以下であることが好ましい。素線部の熱収縮率が0.9%より大きいと、ポリアミド系樹脂からなる被覆層を被覆することによっても、POFケーブルを105〜125℃の温度環境下で使用した場合、被覆層によってPOF素線の収縮を十分に抑制することができずピストニングが発生しやすくなる。POF素線の軸方向の熱収縮率は、高温下でのPOF素線の寸法安定性のより一層の向上及びPOFのピストニングのより一層の低減を図る点からは、0.6%以下がより好ましく、0.4%以下がさらに好ましい。
【0039】
上記の熱収縮特性を満足するPOF素線を得る方法としては、例えば、POF素線自体に熱処理あるいは緩和処理を施す方法が用いられる。
【0040】
上記POF素線の熱処理および緩和処理は、延伸配向の低下を抑制し、熱収縮率を低減し、機械特性に優れたPOF素線を得る点から、コア材のPC系樹脂のガラス転移温度(Tg)以下で実施することが好ましい。より好ましくは、(Tg−40)℃〜(Tg−5)℃の範囲であり、さらに好ましくは(Tg−30)℃〜(Tg−10)℃の範囲である。これら処理温度が高すぎる場合には、POFの製造において一般的に強度付与を目的として施される延伸配向が低下し易くなるためPOFの強度が低下する傾向にあり、また、コア部に微結晶が生成し易くなるため散乱損失が増加する傾向にある。一方、処理温度が低すぎる場合には、所望の熱収縮特性を得るためには、熱処理を非常に長時間行うか、を繰り返し行うことが必要となる。
【0041】
POF素線の熱処理の方法としては、熱風循環式オーブン等の加熱媒体中にPOF素線を通過させ、炉前後のPOF素線の供給、排出速度を調整することで行うことができる。また、このような処理を行う際、延伸配向の保存性を高める点から、POF素線に数百gf(数千mN)の張力を付与して行うことが好ましい。あるいは、ボビンにPOF素線を巻いた状態で、乾熱式オーブン中に所定時間放置することにより行うこともできる(バッチ熱処理)。
【0042】
バッチ熱処理を行う時間は、材料、バッチ熱処理温度、POF生産時のPOFの延伸率などに依存するため、適宜調整する必要があるが、100時間以内になるようにバッチ熱処理温度を調整することが好ましい。より好ましくは1〜100時間、さらに好ましくは1〜80時間である。100時間以上かけてバッジ熱処理を行うと、熱劣化や、構造不整等が生じるおそれがある。
【0043】
バッチ熱処理の前に行われるPOFの延伸工程におけるPOFの延伸率は、機械的強度付与のために1.3〜3倍とすることが好ましい。
【0044】
本発明のPOFケーブルにおいて、POF素線を被覆する被覆層は単一層であっても複数層であってもよいが、少なくともその最内周層にはポリアミド系樹脂からなる層を設けることが好ましい。
【0045】
特に、本発明においては、前述の三元共重合体をPOF素線のクラッド材としているため、被覆材に特定のポリアミド系樹脂を用いることによってPOF素線と被覆層との密着性をより一層向上させることができ、その結果、ピストニングの発生を効果的に抑止できる。
なお、この密着性は、後述の引抜強度を指標として評価することができる。
【0046】
本発明において、被覆材として用いられるポリアミド系樹脂としては、例えば、ナイロン10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6−10、ナイロン6−12、これら各ナイロンの構成成分の2種以上からなるナイロン共重合体、これら各ナイロンの構成成分と他の共重合成からなる共重合体、これらナイロンの構成成分に加え他の成分として柔軟なセグメントが導入されたナイロン系エラストマー等が挙げられる。これらは、単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、このようなポリアミド系樹脂による所望の特性を損なわない範囲内であれば、他の樹脂や化合物を混合してもよい。
【0047】
上記のポリアミド系樹脂の中でも、特にナイロン11及びナイロン12は、耐熱収縮性、耐屈曲性、耐摩耗性に優れ、比較的融点が低いために加工性も良く、更には前述の3元共重合体からなるクラッド部の最外周層との密着性もより優れているため、ピストニングの発生を効果的に抑止できる。
【0048】
クラッド部の最外周層と被覆層との密着性をより十分なものとする方法として、被覆層に(被覆層が複数からなる場合は少なくともその最内周層に)、有機酸あるいは有機酸無水物を添加してもよい。この場合、有機酸あるいは有機酸無水物の含有量は、0.2〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%である。この含有量が少なすぎると、十分な密着性向上効果が得られなくなる傾向にあり、多すぎると樹脂の流動性が低下するおそれや、POFケーブル表面の平滑性が低下するおそれがある。使用する有機酸、有機酸無水物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、サリチル酸、コハク酸、グルタル酸、フタル酸、及びこれらの無水物などを挙げることができる。その中でも、無水マレイン酸が、少量の添加量で高い密着効果が得られることから、特に好ましい。
【0049】
また、クラッド部の最外周層と被覆層との密着性をより十分なものとする方法として、被覆層の少なくとも最内周層に、末端アミノ基を30〜300μeq/gの範囲で含有するポリアミド系樹脂を用いてもよい。末端アミノ基の含有量が上記の範囲より少ない場合には、密着性向上の効果が十分に得られなくなる傾向にあり、多い場合には樹脂の流動性が低下するおそれや、POFケーブル表面の平滑性が低下する傾向にある。上記のようなポリアミド系樹脂としては、例えば、EMS社製のGrilamide−L16A(商品名)等が挙げられる。
【0050】
本発明のPOFケーブルでは、POF素線と被覆材のポリアミド系樹脂の間に適当な密着層を設けることによっても、POF素線と被覆層との密着性をさらに向上させることができる。
【0051】
例えば、上記の密着層として、ポリアミド系樹脂とVdF単位を含む重合体との混合物を用いることができる。具体的に両者を混合する比率は、前者が45〜85質量%に対して後者が15〜55質量%の範囲であることが好ましく、前者が50〜65重量%に対して後者が35〜50重量%の範囲であることがより好ましい。
【0052】
上記混合物に用いられるポリアミド系樹脂としては、例えば、ナイロン10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6−10、ナイロン6−12が挙げられる。また、上記VdF単位を含む重合体としては、例えばVdFとTFEとの共重合体、VdFとヘキサフルオロアセトンとの共重合体、VdFとトリフルオロエチレンとの共重合体、VdFとHFPとの共重合体、VdFとTFEとHFPとの共重合体、VdFとTFEとヘキサフルオロアセトンとの共重合体、エチレンとTFEとHFPとの共重合体等が挙げられる。
【0053】
また、密着層として、熱可塑性ウレタン系樹脂からなる層を設けることによっても、POF素線と被覆層との密着性をより一層向上させることができる。この密着層に用いられる熱可塑性ウレタン系樹脂としては、PC系ポリウレタン、アジペート系ポリウレタン、エーテル系ポリウレタン、又はこれらのいずれかを主成分とする樹脂組成物が好ましい。PC系ポリウレタン及びアジペート系ポリウレタンは初期密着強度がより大きいという特徴があり、エーテル系ポリウレタンはPOFが高温多湿環境下に置かれても、密着強度の低下がより抑えられるという特徴がある。なお、このような熱可塑性ウレタン系樹脂による所望の特性を損なわない範囲内であれば、他の樹脂や化合物を混合してもよい。
【0054】
上記密着層に用いられる熱可塑性ウレタン系樹脂としては、例えば、パンデックスT−1000シリーズ、T−8000シリーズ、T−9000シリーズ(以上、DICバイエルポリマー社製)等を挙げることができる。
【0055】
上記密着層の厚みは5〜600μmの範囲が好ましく、10〜100μmの範囲がより好ましく、さらに20〜50μmの範囲が特に好ましい。前記範囲より小さい場合、POFと密着層との所望の密着性が十分に得られないおそれがある。また、前記範囲より大きい場合、前述したように、POFケーブルの端にプラグをかしめて取り付けたプラグ付きPOFケーブルとして使用する場合、プラグが外れ易くなるおそれがある。
【0056】
以上のようにして得られた上記のPOF素線と、上記の被覆層(または密着層及び被覆層)を組み合わせることにより、上記POF素線と上記被覆層間の引抜き強度も高まる。この引抜強度が25N以上であれば、POF素線と被覆層間の密着性が十分であると言え、強固に固定化されたコネクタ部の端などで、振動などの機械的作用によって発生する可能性のあるPOF素線の破断を防止することができる。この引抜強度は30N以上であることが好ましく、より好ましくは40N以上である。
【0057】
また、上記の組み合わせとすることで、POF素線と被覆層間の高い密着性、POF素線の低熱収縮と相まって、温度125℃環境下に24時間放置した後のPOFケーブルの軸方向の熱収縮率を0.8%以下程度にまで小さくすることができる。
【0058】
また、POFケーブルの製造時においては、POF素線に被覆材を被覆する時の温度条件、被覆速度、クロスヘッド・ダイス等の形状等の条件を適宜選択し、POF素線の配向を緩和させたり、或いはケーブル層の配向を抑制しながら被覆することによって、熱収縮をより低減できる。
【0059】
以上により、本発明のPOFケーブルでは、POF素線のピストニング現象を、受発光特性を劣化させない範囲、すなわち、125℃で100時間熱処理したときの、POFケーブル1mあたりのPOF素線の各受発光端でのピストニングの発生量を0.1mm以下、受光端と発光端とを併せても0.2mm以下とすることができるが、この大きさは位置精度、公差の範囲内で許容することが可能な範囲である。このピストニングの発生量は、より好ましくは1mあたり0.05mm以下である。このような値であれば、100℃環境下で長期間にわたり連続使用する場合においてもPOFの受発光特性の劣化がほとんど発生することはない。
【0060】
また、本発明のPOFケーブルの高温環境下での伝送損失の増加は、125℃で100時間の熱処理を施した後の状態で1.5dB/m以下であることが好ましく、1.0dB/m以下がより好ましく、0.5dB/m以下がさらに好ましい。
【0061】
さらに、本発明のPOFケーブルの高温高湿環境下での伝送損失の増加は、温度85℃、相対湿度95%条件下で1000時間の熱処理を施した後の状態で0.1dB/m以下が好ましい。この伝送損失の増加が十分に低ければ、POFケーブルは自動車内通信配線として、十分な耐湿熱性を示す。
【0062】
特に、POFケーブルの最大長が1mとなるE/O、O/E変換ユニット中において光学素子と変換ユニットの筐体に接続されるPOFケーブルとして使用した場合、ピストニング及び伝送損失が上記範囲内にあれば、高温環境下における特性の低下が抑えられ、高い信頼性をもって使用することができる。
【0063】
また、本発明のPOFケーブルは、光ファイバへの外光の入射を防止するために、クラッド部の外周に形成した上述の被覆層(一次被覆層)にカーボンブラック等の黒色無機成分を含有させることもできる。被覆層が複数の層から形成されている場合は、少なくとも一層に含有させることができる。
【0064】
また、耐久性、耐環境特性などをさらに向上させるために、クラッド部の外周に形成した上述の被覆層(一次被覆層)の外周に熱可塑性樹脂からなる二次被覆層を有していてもよい。
【0065】
また、POFケーブルの被覆層に着色剤を含有させ、POFケーブルの識別性、意匠性を容易に高めることができる。着色剤としては公知のものを使用できるが、無機顔料が、染料系の着色剤に比較して高温下などでPOF素線に移行しにくく、伝送損失が低下しにくいため好ましい。
【0066】
また、本発明のPOFケーブルでは、難燃性を付与するために、POFケーブルの被覆層(すなわち、被覆層として一次被覆層のみが形成されている場合には一次被覆層あるいはその最外層、被覆層が一次被覆層とその外周に形成された二次被覆層とからなる場合には二次被覆層あるいはその最外層)に、難燃剤を含有させることが好ましい。難燃剤としては、各種金属水酸化物、燐化合物、トリアジン系化合物などが挙げられるが、ポリアミド系樹脂の難燃性の向上効果が大きいトリアジン系化合物を用いることが好ましく、中でもメラミンシアヌレートがより好ましい。
【0067】
本発明のPOFケーブルは、公知の方法により製造できる。例えば、クロスヘッド型被覆装置を用いた押し出し被覆により、POF素線に一次被覆層と二次被覆層を順次設ける方法や、POF素線に、一次被覆層と二次被覆層、または密着層と一次被覆層を同時に積層して複合被覆する方法などが挙げられる。
【0068】
本発明のPOFケーブルは、その片端あるいは両端に接続用プラグを設けることによって、プラグ付きPOFケーブル、ポイントセンサーなどとしても使用することが可能である。なお、使用されるプラグとしては、通常、POFケーブルのプラグとして使用されているものを、その目的に応じて使用することができる。
【0069】
また、本発明のPOFケーブルは、コネクタ等の他の部品に接続して光伝送部品として使用する場合、部品のPOFケーブルと接続する部位をPOFケーブルの被覆層と同じポリアミド樹脂で形成することで、POFケーブルと部品を接続した後に、レーザー光、電子線などを照射し、POFケーブルと部品とを熱融着させ固定化することが可能となる。このような方法でPOFケーブルと部品とを固定することにより、通常のPOFケーブルの固定方法であるカシメ処理も不要となり、強固にPOFケーブルと部品を接続させることができる。
【0070】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。なお、実施例における評価、測定は以下の方法により実施した。
【0071】
(ショアD硬度)
ASTM D2240に準拠し、高分子計器(株)ASKER CL−150を用いて測定した。
【0072】
(メルトフローインデックス)
メルトフローインデックスは、JIS K7210に準じ、300℃、荷重1.2kgf(11.8N)の条件下で直径2mm、長さ8mmのノズルから10分間に吐出される重合体量を測定した。
【0073】
(屈折率)
溶融プレスにより厚さ200μmのフィルム状の試験片を形成し、アッベの屈折計を用い、室温23℃におけるナトリウムD線の屈折率(nD 23)を測定した。
【0074】
(末端アミノ基濃度 )
ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度(μeq/g)の測定は、ポリアミド樹脂をフェノール/メタノール(体積比10/1)の混合溶媒に溶解し、0.01N−HClを用いた電位差滴定法による中和滴定によって行った。
【0075】
(伝送損失)
波長が650nm、入射光のNA(開口数)0.1の光を用い、25m−1mカットバック法により伝送損失(dB/km)を測定した。
【0076】
(耐湿熱試験)
POFを、温度125℃のオーブンに100時間、および温度85℃、相対湿度95%のオーブンに1000時間放置した後、波長が650nm、入射光NA0.1の光を用いて、25m−1mカットバック法により伝送損失(dB/m)を測定した。
【0077】
(POF素線及びPOFケーブルの熱収縮率の評価)
試長間距離を1mとしたPOF素線又はPOFケーブルを125℃の乾燥機内でつり下げ、24時間後の試長間距離の変化量を測定し、繊維軸方向の収縮率を求めた。
【0078】
(ピストニングの評価)
POFケーブルの端部において、二次被覆層を剥離して一次被覆層を露出させ、一次被覆層の直径よりも50μm大きい内径を有するプラグに挿入し、一次被覆層をかしめて固定して、プラグ付きPOFケーブルを作製した。得られた長さ100cmのプラグ付きPOFケーブルを、125℃の乾燥機内に、24時間放置した後、プラグ端面からのPOFケーブル素線部の被覆層に対する突出または引込みの長さを測定した。
【0079】
(被覆層の引抜強度)
被覆層の引抜強度(剥離強度)は、図1に示すように、POFケーブル10を保持する治具12と、治具12の一端部に形成された突起14を把持するチャック8と、POFケーブル10の剥離部分5を把持するチャック7とを備えた測定装置20を用いて測定した。治具12には、POFケーブル10の被覆部分4が収容される保持室13と、POFケーブル10の剥離部分5よりも大きく被覆部分4よりも狭い貫通孔15が形成されている。
【0080】
測定にあたっては、一端側の被覆層を剥離したPOFケーブルを用意し、POFケーブルの被覆部分4の長さが30mmになるように切断した。なお、POF素線と一次被覆層との間の引抜強度(一次引抜強度)を測定する場合は一次被覆層および二次被覆層を剥離し、一次被覆層と二次被覆層との間の引抜強度(二次引抜強度)を測定する場合は、二次被覆層のみを剥離した。
【0081】
次に、治具12に形成されている保持室13内にPOFケーブルの被覆部分4を収容し、POFケーブルの剥離部分5を貫通孔15から抜き出した。次に、治具12の一端部に形成されている突起14をチャック8で把持し、POFケーブルの剥離部分5をチャック7で把持した。
【0082】
次に、POFケーブル10の中心軸方向(図中矢印方向)に沿って、一定速度50mm/minでチャック8を移動させて治具12を引っ張り、POFケーブル10の被覆部分4において剥離部分5よりも厚い部分を引き抜いた。このときの引き抜き応力と、POFケーブル10の被覆部分4において剥離部分5よりも厚い部分の引き抜き方向へのずれ量との関係を示す曲線から、引き抜く際の応力のピーク値を読みとり引抜強度とした。
【0083】
また、引抜強度の熱安定性を見るため、長さ100cmのPOFケーブルを85℃、相対湿度85%のオーブンに500時間放置した後の、引抜強度についても、同様の方法で測定した
【0084】
(実施例1)
コア材としてPC系樹脂(出光石油化学社製、タフロンA1700)、クラッド材としてVdF/TFE/HFP共重合体(27/53/20質量%、ショアD硬度53、屈折率1.355、融点155℃)を用い、これらを300℃の紡糸ヘッドに供給し、同心円状複合ノズルを用いて複合紡糸した後、温度155℃に設定した延伸装置で1.3倍に延伸して、直径1mm、クラッド部の厚み10μmのPOF素線を得た。このPOF素線を125℃で24時間熱処理した後の熱収縮率は0.60%であった。なお、コア材に用いたPC系樹脂の吸水率は0.23%、メルトフローインデックス(MFR)は27であった。
【0085】
次いで、このPOF素線に、クロスヘッドケーブル被覆装置(クロスヘッドダイの温度:220℃)を用いて、ナイロン12(EMS社製、Grilamide−L16A)を被覆して厚みが250μmの一次被覆層を形成し、外径1.5mmのPOFケーブルを得た。また、POF素線と一次被覆層との引抜強度は30Nであり、POFケーブルを125℃で24時間熱処理した後の熱収縮率は0.63%であった。125℃で24時間熱処理した後のPOFケーブル1m当たりのピストニング量は20μmであった。このPOFケーブルの初期伝送損失は893dB/km、125℃で100時間熱処理した後の伝送損失は1399dB/kmであり、伝送損失の増加は0.505dB/mであった。一方、POFケーブルをこの85℃湿度95%で1000時間熱処理した後の伝送損失は934dB/kmであり、伝送損失の増加は0.041dB/mであった。
【0086】
また、このPOFケーブルの一次被覆層の上からプラグをカシメ固定して、プラグ付きPOFケーブルを得た。
得られたPOFケーブルは高温環境下での伝送特性の低下およびピストニングが少なく、POF素線と被覆層、被覆層とプラグの密着も強く、自動車内通信用途として優れたPOFケーブルであった。
【0087】
(実施例2〜9、比較例1〜3)
コア材、クラッド材、一次被覆材として、表1に記載の材料を用いた以外は、実施例1と同様にしてPOF素線、及びPOFケーブルを作製した。得られたPOFケーブルの各種特性を評価し、その結果を表2、表3に示した。なお、実施例7〜9、比較例3では、クラッド部の外周に表1に記載の密着層を形成した上に、一次被覆層を被覆した。
【0088】
この様に、本発明である実施例1〜9では、比較例1〜3と比べて温度85℃、相対湿度95%の高湿熱下においても、また温度125℃の高温条件下においても伝送損失の増加は小さく、優れた耐湿熱性を有する。特に実施例5〜9のように、吸水率が0.19%であるPC系樹脂をコア材に使用したものは、85℃相対湿度95%条件下に長期間放置した後の伝送損失の増加及びピストニングが小さく、耐湿熱安定性に優れていた。
【0089】
また、比較例1〜3は、クラッド材の融点が低く、125℃の高温条件下においては、ピストニングの発生が顕著であった。
【0090】
また、実施例4および実施例6のように、POF素線と被覆層との引き抜き強度が25N以下の場合は、ピストニングが大きかったが、実施例7〜9のように密着層を設けることでピストニングを抑制することができる。
【表1】
表1中の略号及び略称は下記の内容を示す。
PC:ポリカーボネート系樹脂
VdF/TFE:フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体
VdF/TFE/HFP:フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体
PA12(a):ナイロン12(ダイセル・デグサ社製、ダイアミド−L1640)
PA12(b):ナイロン12(EMS社製、Grilamide−L16A)
PA11/VdF−TFE共重合体の混合物:PA11とVdF/TFE共重合体(80/20モル%)との混合物(混合比55/45(質量%))
PC系TPU:ポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタン樹脂(DICバイエルポリマー社製、パンデックスT−9290)
エーテル系TPU:エーテル系熱可塑性ポリウレタン樹脂(DICバイエルポリマー社製、パンデックスT−8190)
【表2】
【表3】
【発明の効果】
本発明によれば、高温高湿環境下においてもPOF素線と被覆層との密着性が高く、耐湿熱安定性に優れた、自動車などの車載用途に特に好適なPOFケーブル、プラグ付きPOFケーブル及び光伝送部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】被覆層の引抜強度の測定方法を説明するための図である。
【符号の説明】
4 被覆部分
5 剥離部分
8、7 チャック
10 POFケーブル
12 治具
13 保持室
14 突起
15 貫通孔
20 測定装置
Claims (10)
- コア部と、該コア部の外周に配置されたクラッド部からなるプラスチック光ファイバ素線の外周に、被覆層を設けてなるプラスチック光ファイバケーブルであって、前記コア部はポリカーボネート系樹脂からなり、前記クラッド部のうち、少なくともその最外周層はビニリデンフルオライド単位を10〜40質量%、テトラフルオロエチレン単位を45〜70質量%、ヘキサフルオロプロピレン単位を15〜30質量%含んだ共重合体であって、融点が135℃以上であり、ショアD硬度(ASTM−D648)が46〜70の範囲にある樹脂からなり、前記被覆層のうち少なくともその最内周層はポリアミド系樹脂を主成分とした樹脂からなることを特徴としたプラスチック光ファイバケーブル。
- 前記コア部が、吸水率(ASTM―D570)が0.19%以下の範囲にあるポリカーボネート系樹脂からなることを特徴とした、請求項1に記載のプラスチック光ファイバケーブル。
- 前記クラッド部のうち、少なくともその最外周層が、ビニリデンフルオライド単位を15〜30質量%、テトラフルオロエチレン単位を50〜65質量%、ヘキサフルオロプロピレン単位を16〜25質量%含んだ共重合体であって、融点が145℃以上であり、ショアD硬度(ASTM−D648)が50〜70の範囲にある樹脂からなることを特徴とした、請求項1又は2に記載のプラスチック光ファイバケーブル。
- 125℃の環境下に24時間放置した後の、プラスチック光ファイバ素線の軸方向の収縮率が0.9%以下であることを特徴とした請求項1〜3の何れか一項に記載のプラスチック光ファイバケーブル。
- 前記被覆層のうち少なくともその最内周層が、ナイロン11又はナイロン12を主成分とする樹脂からなることを特徴とした、請求項1〜4の何れか一項に記載のプラスチック光ファイバケーブル。
- 前記被覆層のうち少なくともその最内周層が、ポリアミド系樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部の無水マレイン酸を含有する樹脂組成物からなることを特徴とした、請求項1〜5の何れか一項に記載のプラスチック光ファイバケーブル。
- 前記被覆層のうち少なくともその最内周層が、末端アミノ基を30〜300μeq/gの範囲で含有するポリアミド系樹脂組成物からなることを特徴とした、請求項1〜5の何れか一項に記載のプラスチック光ファイバケーブル。
- 前記プラスチック光ファイバ素線と前記被覆層の最内周層との間に、熱可塑性ウレタン系樹脂、またはポリアミド系樹脂とVdF単位を含む重合体との混合物からなる密着層を設けたことを特徴とした、請求項1〜5の何れか一項に記載のプラスチック光ファイバケーブル。
- 請求項1〜8のいずれか一項に記載のプラスチック光ファイバケーブルの少なくとも一端にプラグが接続されているプラグ付きプラスチック光ファイバケーブル。
- 請求項1〜9のいずれか一項に記載のプラスチック光ファイバケーブルまたはプラグ付きプラスチック光ファイバケーブルと、該ケーブルの被覆層に接着された他の部品からなる光伝送部品。
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JP2003044874A JP2004252356A (ja) | 2003-02-21 | 2003-02-21 | プラスチック光ファイバケーブル及びプラグ付きプラスチック光ファイバケーブル |
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JP2012027304A (ja) * | 2010-07-26 | 2012-02-09 | Asahi Kasei E-Materials Corp | プラスチック光ファイバ素線及びケーブル |
WO2022009653A1 (ja) * | 2020-07-09 | 2022-01-13 | 東レ株式会社 | プラスチック光ファイバ、医療用照明機器、医療用センサー機器、医療用光線治療機器およびプラスチック光ファイバコード |
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2003
- 2003-02-21 JP JP2003044874A patent/JP2004252356A/ja active Pending
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