JP2004235267A - 太陽電池素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】太陽電池素子の出力特性を維持しつつ、アルミニウムとシリコンの熱収縮率の違いによって焼成後に発生する基板の反りによる後工程でのセル割れを簡易な方法で再現性よく抑制する。
【解決手段】半導体接合部を有する半導体基板1の表面側に表面電極6を有するとともに、裏面側にアルミニウム電極5からなる裏面電極を有する太陽電池素子であって、上記アルミニウム電極5中に多数の気孔部9を設けたり、セラミック粒子11を分散させる。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は太陽電池素子に関し、特に半導体接合部を有する半導体基板の裏面側にアルミニウム電極を設けた太陽電池素子に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来の太陽電池素子の裏面電極は、低コスト化の観点から、PN接合が形成された半導体基板に金属ペーストをスクリーン印刷法で塗布して酸化性雰囲気中で焼成して形成していた。また、更なる低コスト化の要請から、半導体基板の裏面側の一領域に銀ペーストを塗布して乾燥した後に、その領域の周縁部に一部が重なるようにアルミニウムペーストを塗布して乾燥して同時に焼成する同時焼成法(1段階焼成)も用いられていた(特許文献1参照)。
【0003】
従来の太陽電池素子の製造方法を図4および図5に従って説明する。P型シリコン基板1の表面側に、Pを含む拡散ソースを用いて熱拡散法でN型拡散層2を形成するとともに、窒化シリコン膜からなる反射防止膜3を形成する。また、半導体基板1の裏面側の端部に溝(不図示)を形成して拡散層2の表面側と裏面側を物理的に分離する。次いで、図5に示すように、半導体基板1の裏面側にスクリーン印刷法で銀電極4となる銀ペーストを塗布して乾燥し、その周縁部に一部が重なるように裏面側の大部分にアルミニウム電極5となるアルミニウムペーストを塗布して乾燥した後に同時に焼成することによって裏面電極4、5を形成する。このときには、半導体基板1の表面側には表面電極6として銀ペーストが櫛歯状にパターニングされているので、表面電極6も裏面電極4、5と同時焼成して形成できる。最後に、銀電極4と表面電極6に半田(不図示)を被覆して一連のセル化が終了する。
【0004】
半導体基板1の裏面側のアルミニウム電極5を形成する際に半導体基板1の裏面側にアルミニウムの拡散が起こってP層からなるBSF層7が形成され、セルの電流−電圧特性が向上して高変換効率化が達成される。
【0005】
このようにして製造された太陽電池素子10では、複数のセル同士を配線材(不図示)を用いて直列に接続して電圧を昇圧させて使用するのが一般的である。このセル同士の接続には半田が必要となるために電極に半田コーティングするが、アルミニウム電極5には半田付けが困難であるので、半田濡れ性の良好な銀電極4を形成して、これに配線材を半田付けしている。
【0006】
ところが、従来の太陽電池素子10ではアルミニウム電極5を半導体基板1の裏面側の略全面に焼き付ける際にアルミニウム電極5とシリコンからなる半導体基板1の熱収縮率の違いによって応力が発生して半導体基板1が反り、半導体基板1の割れの原因になるという問題があった。
【0007】
このような問題を回避するために、裏面電極4、5の表面をブラスト法や反応性イオンエッチング法などで厚み方向に一部エッチングすることによってアルミニウム電極5による応力を低減させる方法も提案されている(特許文献2参照)。これらの方法によれば、アルミニウム電極5の表面の応力が低減できるため、太陽電池素子10の反りを緩和して割れを抑制することができる。
【0008】
しかし、これらの方法によれば、エッチングの厚みが少なすぎれば応力を充分に低減できない反面、エッチングの厚みが厚すぎるとアルミニウム電極5の導電抵抗が向上して電極としての機能を果たさなくなってしまうという問題が発生することから、エッチングの厚みのコントロールが非常に難しいという問題があった。
【0009】
また、ブラスト法によれば、アルミニウム電極5の表面をエッチングする際に銀電極4も同時にエッチングされてしまい、銀電極4の導電抵抗が上昇して太陽電池素子10の出力特性が低下してしまうという問題が発生する。
【0010】
そこで、エッチングする厚みを見越して銀電極4を必要な厚みよりも厚く形成しておく必要があるが、銀はもともと高価な材料であり、必要以上に使用すると太陽電池素子10のコストアップを招くという問題がある。
【0011】
この問題を防ぐために、まずアルミニウム電極5のみを形成してエッチングした後に銀電極4を形成するという方法もあるが、裏面電極4、5を形成するために必ず2回以上の焼成工程が必要になり、工程の増加によるコストの上昇を招く。また、高温プロセスの増加によって太陽電池素子10の出力特性が低下する場合がある。
【0012】
一方、反応性イオンエッチング法でアルミニウム電極の表面をエッチングすれば、ガスの種類や条件を選択することによって物質毎のエッチング量の制御が可能となるため、エッチングの必要のない銀電極4の表面はエッチング量を減らし、反りの原因になるアルミニウム電極5の表面はエッチング量を増やすという制御が可能になるが、反応性イオンエッチングは装置自体も高価なうえにランニングコストも高い。また、真空装置であるため基板1枚あたりの処理時間も長く、生産性の観点から不向きであるという問題がある。さらに、その表面が粗面化されることから、後工程で太陽電池素子10の搬送を行うための真空吸着ができなかったり、後工程での割れの原因になったりするという問題があった。
【0013】
本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、太陽電池素子の出力特性を維持しつつ、アルミニウムとシリコンの熱収縮率の違いによって焼成後に発生する基板の反りによる後工程でのセル割れを簡易な方法で再現性よく抑制することを目的とする。
【0014】
【特許文献1】
特開平5−326990号公報
【特許文献2】
特開2002−353479号公報
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に係る太陽電池素子においては、半導体接合部を有する半導体基板の表面側に表面電極を有するとともに、裏面側にアルミニウム電極からなる裏面電極を有する太陽電池素子において、前記アルミニウム電極中に多数の気孔部を設けたことを特徴とする。
【0016】
上記太陽電池素子では、前記気孔部の平均最大径が0.04〜5μmであることが望ましい。
【0017】
また、上記太陽電池素子では、前記気孔部が前記アルミニウム電極中に3〜50体積%存在することが望ましい。
【0018】
また、請求項4に係る太陽電池素子においては、半導体接合部を有する半導体基板の表面側に表面電極を有するとともに、裏面側にアルミニウム電極からなる裏面電極を有する太陽電池素子において、前記アルミニウム電極中に多数のセラミック粒子を分散させたことを特徴とする。
【0019】
上記太陽電池素子では、前記セラミック粒子の平均粒径が0.04〜5μmであることが望ましい。
【0020】
また、上記太陽電池素子では、前記セラミック粒子が前記アルミニウム電極中に3〜40体積%存在することが望ましい。
【0021】
また、上記太陽電池素子では、前記セラミックス粒子がAlもしくはSiの酸化物であることが望ましい。
【0022】
また、上記太陽電池素子では、前記セラミックス粒子が中空状粒子であってもよい。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図1を用いて詳細に説明する。半導体基板1はP型単結晶シリコンまたはP型多結晶シリコンなどから成る。この半導体基板1の表面側にシート抵抗が30〜300Ω/□程度のN型不純物の拡散層2を設ける。この拡散層2はP型半導体基板1をN型不純物が飛散した雰囲気中で熱処理などして形成する。また、半導体基板1の表面側には窒化シリコン膜などから成る反射防止膜3を設ける。この反射防止膜3は例えばプラズマCVD法などで形成される。さらに、半導体基板1の表面側には銀などを主成分とする表面電極6が設けられるととともに、裏面側にはアルミニウム電極5と配線材(不図示)を接続するための銀電極4とが設けられる。
【0024】
本発明においては、図2に示すように、アルミニウム電極5中に多数の気孔部9を設ける。このようにアルミニウム電極5中に多数の気孔部9を設けると、アルミニウム電極5のヤング率が小さくなり、従来問題であったアルミニウムと半導体基板1の熱収縮率の違いによる半導体基板1の反りの発生を抑制することができ、それに起因する太陽電池素子10の割れを防ぐことができる。
【0025】
この気孔部9は、その平均最大径が0.04〜5μmにするのが望ましい。この気孔部9の平均最大径が0.04μm以下であると添加した粉体の凝集の原因となり、5μm以上であるとスクリーン印刷を行う際に目詰まりの原因となって望ましくない。なお、この気孔部9の平均最大径はSEM観察により測定できる。
【0026】
この気孔部9は、アルミニウム電極中に3〜50体積%存在することが望ましい。この気孔部9がアルミニウム電極5中に3体積%以下しか存在しないときは、反りが充分に抑制できず本発明の目的を果たすことができない。50体積%以上存在するときは、アルミニウム電極5内の抵抗が高くなり電極としての機能を充分に果たさなくなるため、太陽電池素子10の出力特性の低下につながるため不適である。この気孔部9は20〜36体積%が好適である。なお、アルミニウム電極5中の気孔部9の体積割合はSEM観察により測定できる。
【0027】
この気孔部9は半導体基板1の反りの抑制および出力特性の確保の観点からアルミニウム電極5中に均一に形成されていることが望ましいが、特に大面積や厚みの薄い、大きな反りを発生させやすい半導体基板1を使用した場合は反りの抑止効果をさらに高めるため半導体基板1側に密集して形成されていてもよいし、更に高い特性を必要とする場合はBSF効果を高めるため表面側に密集して形成されていてもよい。
【0028】
アルミニウム電極5中に気孔部9を形成するには、例えばアルミニウム粉末、有機溶剤、バインダーなどからなるアルミニウムペースト中にカーボン粒子などの気孔形成剤を分散させて酸化雰囲気中の700〜900℃程度の温度で焼成すればよい。このようにアルミニウムペースト中にカーボン粒子などの気孔形成剤を分散させて酸化雰囲気中で焼成すると、アルミニウムペースト中のカーボン粒子は600℃程度の温度から二酸化炭素となりはじめて空洞になることから、アルミニウム電極5中に気孔部9が形成されることになる。そのため、600〜700℃程度の温度領域では、その温度を一定時間維持するか、徐々に昇温することが必要であり、また空洞が潰れないようにアルミニウムの溶融温度以下の温度で焼成することが必要である。
【0029】
このような気孔部9をアルミニウム電極5中の全体にわたって均一に形成するには、アルミニムペースト中にカーボン粒子などの気孔形成剤を均一に分散させることが必要である。アルミニウムペースト中に気孔形成剤を均一に分散させるためには、充分に攪拌すればよい。また、気孔形成剤の比重がアルミニウムと大きく異なると均一に分散させにくいことから、気孔形成剤としてはできるだけアルミニウムの比重に近似したものがよい。そのような点でもカーボンはアルミニウム電極5の気孔形成剤として有効に用いることができる。
【0030】
図3は請求項4に係る太陽電池素子のアルミニウム電極部分を拡大して示す図である。請求項4に係る太陽電池素子も請求項1に係る太陽電池素子と略同じであるが、この発明では、アルミニウム電極中にAlやSiOなどのセラミック粒子11を分散させている。このようにアルミニウム電極中に多数のセラミック粒子11を分散させても、アルミニウムの熱収縮防止剤となり、従来問題であったアルミニウムと半導体基板1の熱収縮率の違いによる半導体基板1の反りの発生を抑制することができ、それに起因する太陽電池素子10の割れを防ぐことができる。
【0031】
このセラミック粒子11は、平均粒径が0.04〜5μmであることが望ましい。このセラミック粒子11の平均粒径が0.04μm以下であると凝集の原因となり、5μm以上であるとスクリーン印刷を行う際に目詰まりの原因となって望ましくない。
【0032】
このセラミック粒子11は、アルミニウム電極5中に3〜50体積%分散させることが望ましい。セラミック粒子10がアルミニウム電極中に3体積%以下しか存在しないときは、反りが充分に抑制できず本発明の目的を果たすことができない。50体積%以上存在するときは、アルミニウム電極5内の抵抗が高くなり電極としての機能を充分に果たさなくなるため、太陽電池素子10の出力特性の低下につながるため不適である。SiOの場合、10〜30体積%が好適であり、Alの場合、5〜15体積%が最適である。なお、アルミニウム電極5中のセラミック粒子11の体積割合はSEM観察により測定できる。
【0033】
このセラミック粒子11は半導体基板1の反りの抑制および出力特性の確保の観点からアルミニウム電極5中に均一に形成されていることが望ましいが、特に大面積や厚みの薄い、大きな反りを発生させやすい半導体基板1を使用した場合は反りの抑止効果をさらに高めるため半導体基板1側に密集して形成されていてもよいし、更に高い特性を必要とする場合はBSF効果を高めるため表面側に密集して形成されていてもよい。
【0034】
アルミニウム電極5中にセラミック粒子11を分散させるには、例えばアルミニウム粉末、有機溶剤、バインダーなどからなるアルミニウムペースト中にAlやSiOなどのセラミック粒子11を分散させて700〜900℃程度の温度で焼成すればよい。
【0035】
このようなAlやSiOなどのセラミック粒子11をアルミニウム電極5中の全体にわたって均一に存在させるためには、アルミニムペースト中にセラミック粒子11を均一に分散させることが必要である。アルミニウムペースト中にセラミック粒子11を均一に分散させるためには、充分に攪拌すればよい。また、セラミック粒子11の比重がアルミニウムと大きく異なると均一に分散させにくいことから、セラミック粒子11としてはできるだけアルミニウムに比重が近似したものがよい。そのような点でもAlやSiOなどはアルミニウム電極5に分散させるセラミック粒子11として有効に用いることができる。
【0036】
また、上記セラミック粒子11は中空状のセラミック粒子であってもよい。中空状のセラミック粒子の場合、添加重量が小さくても体積をかせぐことができる。
【0037】
【実施例】
アルミニウム電極の電極材料として、アルミニウム粉末、バインダー、有機溶剤、ガラスフリットからなるアルミニウムペーストにカーボン粉末をアルミニウムペーストの全重量比に対し14%含有させたアルミニウムペーストを14.5cm×14.5cmの面積で1600mg塗布し、760℃で焼成して気孔部を形成した15cm×15cm×0.35mmの太陽電池素子(焼き上がりの気孔部は28体積%)の反りと出力特性(Pm)と、アルミニウムペーストにそれぞれSiOとAlをアルミニウムペーストの全重量比に対し14%含有させた本発明によるアルミニウムペーストをそれぞれ14.5cm×14.5cmの面積で1600mg塗布し、760℃で焼成することによって得られた15cm×15cm×0.35mmの太陽電池素子の反りと出力特性(Pm)とを表1に示す(焼き上がりのSiOは20体積%、Alは10体積%)。また、上述のような気孔部を形成せず、またセラミック粒子も分散させない従来のアルミニウム電極を有する14.5cm×14.5cmの太陽電池素子の反りと出力特性(Pm)も表1に示す
【0038】
【表1】
Figure 2004235267
【0039】
表1に示すように従来の方法によって得られた太陽電池素子の反りが1.02mmであったのに対し、本発明によって得られた太陽電池素子の反りは0.69〜0.73mmに低減した。また、太陽電池素子の出力特性は従来の太陽電池が3.369Wであったのに対し、本発明による太陽電池素子は3.372〜3.385Wとほぼ同等の特性であった。
【0040】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、請求項1に係る太陽電池素子によれば、半導体接合部を有する半導体基板の裏面側のアルミニウム電極中に多数の気孔部を設けたことから、従来問題であったアルミニウムと半導体基板の熱収縮率の違いによる半導体基板の反りの発生を抑制することができ、それに起因する太陽電池素子の割れを防ぐことができる。
【0041】
また、請求項4に係る太陽電池素子によれば、半導体接合部を有する半導体基板の裏面側のアルミニウム電極中に多数のセラミック粒子を分散させたことから、従来問題であったアルミニウムと半導体基板の熱収縮率の違いによる半導体基板の反りの発生を抑制することができ、それに起因する太陽電池素子の割れを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る太陽電池素子を示す図である。
【図2】本発明に係る太陽電池素子においてアルミニウム電極に気孔部を形成した例を示す図である。
【図3】本発明に係る太陽電池素子においてアルミニウム電極にセラミック粒子を分散させた例を示す図である。
【図4】従来の太陽電池素子を示す図である。
【図5】従来の太陽電池素子の裏面電極を示す図である。
【符号の説明】
1:半導体基板、2:拡散層、3:反射防止膜、4:裏面側銀電極、5:アルミニウム電極、6:表面電極、7:裏面側半田層、8:表面側半田層、10:太陽電池素子

Claims (8)

  1. 半導体接合部を有する半導体基板の表面側に表面電極を有するとともに、裏面側にアルミニウム電極からなる裏面電極を有する太陽電池素子において、前記アルミニウム電極中に多数の気孔部を設けたことを特徴とする太陽電池素子。
  2. 前記気孔部の平均最大径が0.04〜5μmであることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池素子。
  3. 前記気孔部が前記アルミニウム電極中に3〜50体積%存在することを特徴とする請求項1に記載の太陽電池素子。
  4. 半導体接合部を有する半導体基板の表面側に表面電極を有するとともに、裏面側にアルミニウム電極からなる裏面電極を有する太陽電池素子において、前記アルミニウム電極中に多数のセラミック粒子を分散させたことを特徴とする太陽電池素子。
  5. 前記セラミック粒子の平均粒径が0.04〜5μmであることを特徴とする請求項3に記載の太陽電池素子。
  6. 前記セラミック粒子が前記アルミニウム電極中に3〜40体積%存在することを特徴とする請求項4または5に記載の太陽電池素子。
  7. 前記セラミックス粒子がAlもしくはSiの酸化物であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の太陽電池素子。
  8. 前記セラミックス粒子が中空状粒子であることを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載の太陽電池素子。
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