JP2011066044A - 太陽電池素子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】パッシベーション膜に対する開口の形成や精細な精度の位置合わせを必要とすることなく裏面電極を形成が可能で、電極形成時のシリコン基板の劣化が小さい裏面パッシベーション構造の太陽電池素子の製造方法を得ること。
【解決手段】シリコン基板の一方の面に形成される表面凹凸部を備えた受光面と、他方の面に形成されるパッシベーション膜とを有する太陽電池素子の製造方法であって、パッシベーション膜上にアルミニウムを主成分としガラス成分を10〜25重量部含んだ導電ペーストを印刷してアルミ電極を形成する工程(ステップS7)と、アルミ電極を焼成してパッシベーション膜をファイヤスルーさせ、アルミ電極をシリコン基板に接触させる焼成工程(ステップS9)と、焼成工程においてシリコン基板とアルミ電極との界面に生じたガラス層をフッ酸処理によって除去する工程(ステップS11)とを含む。
【選択図】図2

Description

本発明は、太陽電池素子の製造方法に関する。
従来の太陽電池は、例えばp型多結晶シリコン基板の表面全体にn型の拡散層が形成され、受光面側である表面に微小な凹凸と表面電極とが設けられた構造となっている。微小凹凸上には反射防止膜としてシリコン窒化膜が形成されている。また、多結晶シリコン基板の裏面には、裏面電極が設けられる。
上記従来の太陽電池素子の製造方法について説明する。まず、アルカリ溶液とアルコールとの混合液やフッ酸と硝酸との混酸によるウェットエッチングプロセスを用いるか、又はRIE(Reactive Ion Etching)法などのドライエッチングプロセスを用い、p型多結晶シリコン基板の表面に微小凹凸を形成する。この表面の凹凸は、太陽電池素子の表面から素子外へ出ようとする光を反射して閉じ込めることで、光電変換効率を上げることを目的としたものである。次に、オキシ塩化リン(POCl)ガス中での気相拡散法によってp型多結晶シリコン基板にn型拡散層を形成する。その後、表面にできた酸化膜をフッ化水素に浸して除去した後に、反射防止膜としての窒化シリコンをプラズマCVD(化学的気相成長法)によって多結晶シリコン基板の表面に形成する。次に、表面側には銀ペーストを用いた印刷法によって表電極を形成し、裏面側にはアルミニウムペーストを用いた印刷法によって裏電極を形成する。そして、約200℃で乾燥させてから700〜800℃程度で焼成することで太陽電池素子が完成する。
太陽電池素子の裏面の構造によって変換効率を向上させる方法としては、結晶及び界面の欠陥を水素終端して再結合を抑えるための裏面にパッシベーション膜を設ける方法(特許文献1参照)や、裏面反射膜(BSR(Back Surface Reflection))を形成することで長波長の光を裏面で反射して光利用率を上げる方法などが検討されている。
裏面にパッシベーション膜を備えた構造(裏面パッシベーション構造)の太陽電池素子における裏面電極形成方法としては、パッシベーション膜をシリコン基板の裏面に形成した後に、写真製版法や機械研磨やレーザ加工などでパッシベーション膜に開口部を設け、その開口部に重なるようにアルミニウムペーストを用いて電極をスクリーン印刷する方法(特許文献2参照)や、パッシベーション膜上に導電ペーストを塗布して電極を形成した後にこれを焼成し、ファイヤスルー(焼成時に導電ペーストがパッシベーション膜に浸透して貫通すること)によって基板−電極間の電気的な接続を取る方法(特許文献3参照)がある。
特開平09−045945号公報 特開2002−270869号公報 特開2007−299844号公報
従来の裏面パッシベーション構造の太陽電池素子での裏面電極形成方法のうちの前者は、シリコン基板の裏面のパッシベーション膜の開口部に合わせて裏面電極を形成する必要があり、高精度の位置あわせが必要であった。また、パッシベーション膜に開口部を形成する方法としては、写真製版法(レジスト塗布、露光、エッチング処理など)や機械研磨や耐酸性レジスト塗布などが用いられているが、特に写真製版法に関しては、多数の微小形状を形成することができるが、工程数が多く時間とコストがかかるという欠点がある。
従来の裏面パッシベーション構造の太陽電池素子での裏面電極形成方法の後者は、表電極の形成と同様に導電ペーストの反応性を利用して、絶縁膜であるパッシベーション膜をファイヤスルーして電気的導通をとるものであるが、アルミニウムを主成分とするペーストは銀を主成分とするペーストと比較して絶縁膜をファイヤスルーする能力が低いため、十分な電気導通を確保することが難しい。特許文献3に開示されているように、裏電極焼成後に表電極を焼成するなどして2回焼成を行えば、電極を形成した基板を加熱することによってアルミニウムとシリコンとの反応が促進されて電気的導通が取れやすくなるが、焼成を2回行うことでシリコン基板に劣化が生じ、太陽電池セルの特性が劣化するという問題が生じてしまう。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、パッシベーション膜に対する開口の形成や精細な精度の位置合わせを必要とすることなく裏面電極を形成が可能で、電極形成時のシリコン基板の劣化が小さい裏面パッシベーション構造の太陽電池素子の製造方法を得ることを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、半導体基板の一方の面に形成される微小凹凸を持つ受光面と、他方の面に形成されるパッシベーション膜とを有する太陽電池素子を製造する方法であって、パッシベーション膜上にアルミニウムを主成分としガラス成分を10〜25重量部含んだ導電ペーストを印刷して裏面電極を形成する工程と、裏面電極を焼成してパッシベーション膜をファイヤスルーさせ、裏面電極を半導体基板に接触させる焼成工程と、焼成工程において半導体基板と裏面電極との界面に生じたガラス層をフッ酸処理によって除去する工程とを含むことを特徴とする。
本発明によれば、裏面パッシベーション構造の太陽電池素子の裏面電極を、パッシベーション膜に対する開口の形成や精細な精度の位置合わせを必要とすることなく形成でき、電極形成時のシリコン基板の劣化を小さくできるという顕著な効果を奏する。
図1は、本発明にかかる太陽電池素子の製造方法の実施の形態1によって製造される太陽電池素子の断面及び底面を示す図である。 図2は、本発明の実施の形態1の太陽電池素子の製造方法の流れを示すフローチャートである。 図3は、本発明の実施の形態1の太陽電池素子の製造方法による製造過程での太陽電池素子の断面を示す図である。 図4は、本発明にかかる太陽電池素子の製造方法の実施の形態1によって製造される太陽電池素子の裏面を示す図である。 図5は、本発明にかかる太陽電池素子の製造方法の実施の形態1におけるガラスフリットの量と太陽電池素子の直列抵抗との関係を示す図である。
以下に、本発明にかかる太陽電池素子の製造方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、これらの実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明にかかる太陽電池素子の製造方法の実施の形態1によって製造された太陽電池セルの断面及び底面を示す図である。図1(a)は断面図、図1(b)は底面図であり、図1(a)に示される断面は、図1(b)における1a−1a断面である。本実施の形態にかかる製造方法によって製造される太陽電池素子は、基板としてp型の単結晶又は多結晶のシリコン基板(以下、シリコン基板という。)を用いている。なお、基板はこれに限定されるものではなく、n型のシリコン基板や単結晶シリコン基板を用いても良い。シリコン基板1の受光面側には、光を閉じ込めるための表面凹凸部2が形成されている。シリコン基板1の表面凹凸部2には約0.2μmのn型拡散層(不図示)が形成され、PN接合部を形成している。n型拡散層の上には、反射を低減して光利用効率を向上させるための反射防止膜3が設けられている。反射防止膜3の上には、多数の細いグリッド電極とそれと直交する数本の太いバス電極とからなる表電極4が形成されている。
太陽電池素子の裏面には、シリコンの欠陥を水素で終端し、少数キャリアの再結合を抑制するパッシベーション膜5がシリコン基板1上に形成されている。パッシベーション膜5の上には、部分的にアルミ電極6が形成されている。アルミ電極6は、パッシベーション膜5を貫通してシリコン基板1と接触導通している。アルミ電極6の下には、焼成によるアルミニウムとシリコンとの合金層7(以下、Al−Si合金層という。)が形成され、その下にはアルミニウムの拡散によるP層であるBSF(Back Surface Field)層8が形成されている。また、パッシベーション膜5上にはBSRとしての裏面反射膜9が形成されている。
次に、本実施の形態にかかる太陽電池素子の製造方法について説明する。図2に、本発明の実施の形態1の太陽電池素子の製造方法の流れを示す。図3に、本実施の形態の太陽電池素子の製造方法による製造過程での太陽電池素子の断面を示す。まず、シリコン基板1(例えばp型多結晶シリコン基板)をフッ化水素及び純水で洗浄する(図2ステップS1、図3(a))。そして、シリコン基板1の受光面側の表面に表面凹凸部2を形成する(図2ステップS2、図3(b))。この工程では、例えば水酸化ナトリウムとイソプロピルアルコールとの混合溶液に浸し、表面凹凸部2が10μm程度になるようにウェットエッチングを行う。又は、RIEなどのドライエッチングプロセスでシリコン基板1の表面に1〜3μm程度の凹凸形状を形成したり、プラズマCVD法を用いてシリコン基板1の表面にエッチングマスクを形成し、そこに複数の開口部を形成してからフッ硝酸でエッチングして半球状の微小凹凸部を形成しても良い。後者の凹凸形成方法では、多結晶シリコンの面方位によらず規則正しい配列の凹凸が形成でき、光閉じ込め効果が高くなる。
そして、表面凹凸部2を形成したシリコン基板1にオキシ塩化リン(POCl)ガス中で気相拡散法を施し、高温でリンを熱拡散させてシリコン基板1表面にn型層を形成する(拡散工程、図2ステップS3)。この時拡散させるリン濃度は、オキシ塩化リンガスの濃度及び温度雰囲気、加熱時間によって制御することが可能である。リンを拡散させた後のシリコン基板1のシート抵抗は、概ね40〜80Ω/□であった。
拡散工程後に、反射防止膜3を形成する(図2ステップS4、図3(c))。反射防止膜3の形成にはプラズマCVD法を用い、シランとアンモニアとの混合ガスを用い窒化シリコン膜を形成する。窒化シリコン膜は約60〜80nm形成した。
次に、裏面側の構造を形成する。まず、拡散工程においてシリコン基板1の裏面にもn型層が形成されているため、水酸化ナトリウム溶液を用いてシリコン基板1の裏面をエッチングすることによってn型層を除去する(図2ステップS5)。そして、n型層を除去したシリコン基板1の裏面に、パッシベーション膜5を形成する(図2ステップS6、図3(d))。パッシベーション膜5は、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜などを適用可能であるが、ここでは反射防止膜3と同じ窒化シリコン膜をプラズマCVD法で形成する。この窒化シリコン膜は、加熱時に膜中の水素がシリコンへ拡散し、シリコンの欠陥を水素終端して電子と正孔との再結合を抑える。
後述するように、アルミ電極6の基となるアルミニウムペーストがパッシベーション膜5を貫通してシリコン基板1と接触導通するには、パッシベーション膜5の膜厚をなるべく薄くした方が安定した接触導通が得られやすくなる。パッシベーション膜5の膜厚を変えてシリコン基板1のライフタイムを調べたところ、80nmの膜厚があれば十分なパッシベーション効果を持ち、それ以上膜厚を増やしてもシリコン基板1のライフタイムは大きく増加しないことが確認できた。このため、本実施の形態においてパッシベーション膜5は80〜100nm程度の膜厚で形成する。これにより、シリコン基板1−アルミ電極6の安定した電気的導通と、十分なパッシベーション効果とを両立する。
次に、パッシベーション膜5の上に、アルミニウムペーストを用いた印刷法によってアルミ電極6を形成する。印刷は、金属メッシュ上に写真製版法で抜かれた樹脂膜のパターンをマスクとしてアルミ粒子を含むペーストをスキージで押し込み、マスク開口部を透過してパターンを形成する。印刷法でアルミ電極6を形成した後に、約200℃で乾燥させる(図2ステップS7、図3(e))。アルミ電極6は、例えば直径約100μmの円形ドットを0.5mm程度のピッチで配列して所望の形状に形成する。なお、裏面電極の形状は図1に示すようなドット形状に限定されるわけではなく、図4に(a)に示すようなライン形状や、図4(b)に示すような格子形状などでも良い。
ここで、電極形成に用いる導電ペーストについて説明する。一般的に、シリコン基板1の裏面にはアルミ粒子を主成分とし、樹脂成分、有機溶剤、ガラスフリットから成るペーストを用い、シリコン基板1の裏面全体にペースト層を形成し、約700〜800℃で焼成することによって、電極下にアルミニウムを拡散させてBSF層8を形成し、シリコン基板1のとの電気的導通を確立する。裏面パッシベーション構造の太陽電池素子の場合は、裏面電極を部分的に形成すると、裏面全体にBSF層を形成する場合と比べて電気的導通を有する面積が小さくなって十分な接触抵抗をとりにくくなる。特に、多結晶基板は基板内に結晶粒界があって基板内品質が均一ではなく、部分的に電気的導通が異なるため、セル特性の劣化が大きい。従って、アルミニウムペーストでパッシベーション膜5をファイヤスルーしてシリコン基板1との電気的導通を十分に得ることは困難であった。
この問題を解決するためには、アルミニウムペーストのシリコン基板1やパッシベーション膜5に対する反応性を大きくする必要がある。このために、従来のアルミニウムペーストに含まれるガラスフリットの組成比は、ペースト全体を100重量部とした場合に3〜5重量部であるのに対して、本実施の形態においてはペースト全体を100重量部とした場合に約10〜25重量部とした。
図5に、ガラスフリット量と太陽電池素子の直列抵抗との関係を示す。太陽電池素子の直列抵抗は、太陽光シミュレータを用いて測定した素子の電流値及び電圧値からの換算値である。直列抵抗が0.005Ω以下だと曲線因子が0.76以上の良好な変換効率が得られるが、直列抵抗が0.010Ω以上であると曲線因子が0.70よりも小さくなって十分な変換効率が得られなくなる。
図5に示されるように、ガラスフリットのペースト全体に対する重量比が10重量部未満であると、太陽電池素子の直列抵抗が0.005Ωよりも大きくなって十分な電気的導通が得られない。これは、アルミニウムペーストがパッシベーション膜5をファイヤスルーできず十分な電気導電性が取れないためである。また、ガラスフリットのペースト全体に対する重量比が25重量部を超過する場合も、太陽電池素子の直列抵抗が0.005Ωよりも大きくなって十分な電気導電性が得られない。これは、アルミ電極6とシリコン基板1との間に厚いガラス層が形成されてしまい、電気的導通抵抗が高くなるためである。ペースト全体に占めるガラスフリットの割合が10〜25重量部程度のとき、直列抵抗は0.005Ω以下となり、良好な電気的接触が実現される。すなわち、ペースト全体に占めるガラスフリットの割合を10〜25重量部程度とすることで、アルミ電極6とシリコン基板1との界面に、後段で説明するフッ酸処理で十分に除去できないほど厚くガラス層が形成されることを防ぎつつ、導電ペースト中のガラス成分にパッシベーション膜5を確実に溶解させてファイヤスルーを実現できる。
また、ガラスフリットの軟化点を低くするとシリコン基板1及びパッシベーション膜5に対するアルミニウムペーストの反応性が向上する。例えば、ガラスフリットの融点を約450℃以下にしたり、平均粒径を小さく(例えば1μm以下)することで、約400〜450℃でガラスフリットが軟化し、パッシベーション膜5を侵食してシリコン基板1と電気的に導通するため、アルミ電極6とシリコン基板1との抵抗を十分に低くできる。
太陽電池素子の製造方法の流れの説明に戻る。アルミ電極6を形成した後、銀を含むペーストを用いた印刷法によって数本のバス電極と複数本のグリッド電極からなる表電極4を形成する。形成した表電極4は約200℃で乾燥させる(図2ステップS8、図3(f))。
以上でシリコン基板1の表裏の電極の印刷法による形成が完了する。続いて、電極を焼成する(図2ステップS9、図3(g))。焼成は赤外線加熱炉を用いて約800℃以上で行う。これにより、表電極4及びアルミ電極6がそれぞれn型拡散層及びパッシベーション膜5をファイヤスルーによって貫通し、シリコン基板1と電気的に導通する。アルミ電極6は、アルミニウムがシリコンと溶融してAl−Si合金層7を形成し、その下にP層(BSF層)8が形成される。
この焼成条件として、アルミ電極6がパッシベーション膜5をファイヤスルーするのに十分な熱をかけることが必要であるが、シリコン基板1に多くの熱を与えると基板品質の劣化によってライフタイムが減少して光電子の変換効率が低下する。よって、アルミ電極6のファイヤスルーを実現しつつシリコン基板1の品質を劣化させないようにするには、ピーク温度を高くして焼成処理を短時間で行う必要がある。
従来の焼成処理では、焼成炉のピーク温度は700〜800℃で、500℃以上の雰囲気を30℃/秒程度で昇降温させていた。これに対し、本実施の形態では、ピーク温度は高温であるが、より急激に温度を昇降させることによって焼成時間を短時間として、シリコン基板1の品質を劣化させることなく十分な電気的導通を得ている。一例として、ピーク温度800〜850℃、温度昇降速度60〜80℃/秒で焼成を行うことで、シリコン基板1の品質を劣化させることなく十分な電気的導通が得られる。ピーク温度を850℃以上に高くすると、表電極を形成する銀ペーストが拡散層であるn型層を突き抜けて短絡してしまい、直列抵抗が低下してしまう不具合が生じる。また、温度昇降速度を80℃/秒以上に上げると、アルミニウムペースト内のガラスフリットの溶融が不十分となって電極の密着性が下がり、後の工程で剥離する不具合が生じる。
焼成後のワークは、水素を含む不活性気体(例えばアルゴン)で炉内の空気を置換したクリーンオーブンにおいて約400℃、10分間ほどの加熱処理(アニール処理)を行う(図2ステップS10)。アニール処理を行うことで、水素がシリコン基板内部に到達して欠陥を埋め、光−電子変換効率が向上する。
アニール処理後は、アルミ電極6とシリコン基板1との間は、太陽光シミュレータで測定した電流値及び電圧値を基に換算した直列抵抗で0.010Ωの大きな抵抗値を持っており、太陽電池素子として十分な特性が得られない。これは、前工程で用いたアルミニウムペーストが従来に比べて多くのガラスフリットを含有しており、焼成によって溶融したガラスフリットがシリコン基板1とアルミ電極6との界面に占める面積が大きく、電流の流れを阻害しているためである。ガラスフリットは、アルミ電極6とシリコン基板1とを密着させるのに大きな役割を果たしているが、絶縁性であるため、アルミ電極6とシリコン基板1との電気的導通の面ではこれを妨げるように作用する。したがって、アルミ電極6とシリコン基板1との界面に存在するガラスを除去して電気的導通を改善するためにフッ酸処理を行う(図2ステップS11)。フッ酸と純水とを概ね1:100の割合で混合した液に約20秒間浸漬すると、アルミ電極6とシリコン基板1との界面のガラスがある程度除去され、アルミ電極6とシリコン基板1との間の電気的抵抗が低くなる。例えば、上記のフッ酸処理を行うことにより、アルミ電極6とシリコン基板1との間の抵抗値は、太陽光シミュレータで測定した電流値及び電圧値を基に換算した直列抵抗で0.005Ωにまで低く抑えられる。
フッ酸処理を行ったワークは、純水で洗浄後に乾燥する。その後、裏面反射膜9を形成する。スパッタ法によってAgを厚さ500〜800nm程度成膜して裏面反射膜9を形成することで太陽電池素子が完成する(図2ステップS12、図3(h))。
上記の製造工程によって製造した裏面パッシベーション構造の太陽電池素子は、電極形成前にパッシベーション膜に開口を設ける必要がないため、簡単かつ少ない工数で電極形成が可能である。また、開口位置に合わせて電極を形成する必要がないため、電極形成時に精細な精度の位置合わせが必要とならない。さらに、一度の焼成でアルミ電極とシリコン基板との電気的導通を確立するため、シリコン基板の品質が劣化しにくい。
実施の形態2.
本発明にかかる半導体膜の製造方法の実施の形態2として、裏面電極用のアルミニウムペーストに含まれるガラスフリット材料を変更してアルミ電極−シリコン基板間の抵抗を改善する例について説明する。太陽電池素子としての構造は、実施の形態1と同様である。
アルミニウムペーストに含まれるガラスフリットとしては、一般に酸化鉛(PbO)を主成分として酸化ホウ素(B)や二酸化ケイ素(SiO)を添加したものが用いられているが、ガラス製品の鉛フリー化の流れからリン酸塩系ガラス(P)、ビスマス酸塩系ガラス(Bi)、ホウ酸塩系ガラス(B)、酸化亜鉛系ガラス(ZnO)を主にしたものへ移行している。ここで、ホウ素はアルミニウムと同様に拡散してP層(BSF層)を形成する物質としても働くため、ホウ酸塩系ガラスを含んだガラスフリットを用いた場合には、BSF層を分析するとBSF層へのホウ素(B)の拡散が確認される。
アルミニウムペーストでファイヤスルーを行う裏面パッシベーション構造では、裏面にはアルミ電極を部分的に配置するため、ベタアルミ構造よりもシリコン基板との接触面積が小さくなる。これにより、シリコン基板−アルミ電極間の導通が不十分となって直列抵抗の増大によって太陽電池素子の特性が劣化する。よって、接触抵抗を改善するためには、十分なP拡散層を持つBSF層を形成する必要があるが、ペーストの主成分であるアルミニウムの拡散だけでは十分とは言えない。
上記のように、ホウ素はアルミニウムと同様に拡散してP層(BSF層)を形成する物質としても働くため、接触抵抗を改善するには、ガラスフリットのガラス成分に占めるホウ素(B)の割合を高くすると大きな効果がある。ホウ素は、酸化ホウ素(B)の形でガラスフリット100重量部に対して約25重量部以上の組成比にすることが望ましい。または、ホウ素やホウ素化合物をアルミニウムペーストに混入しても良い。
しかしながら、酸化ホウ素の含有率が高くなるとガラスフリットの軟化点が高くなる傾向にある。そこで、ファイヤスルーによってシリコン基板−アルミ電極の良好な電気的導通を得るために、本実施の形態では、一例として、ピーク温度は約830〜850℃の高温、かつ500℃以上の雰囲気を温度昇降速度約80℃/秒で急激に温度を昇降させる条件(温度プロファイル)にて焼成を行うことで、シリコン基板1の品質を劣化させることなくシリコン基板―アルミ電極間の良好な電気的導通を実現する。
本実施の形態においては、ガラスフリットに含まれるホウ素がシリコン基板に拡散することによって、十分なP拡散層を持つBSF層が形成され、シリコン基板−アルミ電極の良好な電気的導通を実現できる。
なお、上記各実施の形態は本発明の好適な実施の一例であり、本発明はこれらに限定されることなく、様々な変形が可能である。
以上のように、本発明にかかる太陽電池素子の製造方法は、裏面パッシベーション構造の太陽電池素子を製造するのに有用であり、特に、太陽電池素子製造時の歩留まりの向上や太陽電池素子の性能向上を図るのに適している。
1 シリコン基板
2 表面凹凸部
3 反射防止膜
4 表電極
5 パッシベーション膜
6 アルミ電極
7 Al−Si合金層
8 BSF層(P層)
9 裏面反射膜(BSR)

Claims (5)

  1. 半導体基板の一方の面に形成される微小凹凸を持つ受光面と、他方の面に形成されるパッシベーション膜とを有する太陽電池素子を製造する方法であって、
    前記パッシベーション膜上にアルミニウムを主成分としガラス成分を10〜25重量部含んだ導電ペーストを印刷して裏面電極を形成する工程と、
    前記裏面電極を焼成して前記パッシベーション膜をファイヤスルーさせ、前記裏面電極を前記半導体基板に接触させる焼成工程と、
    前記焼成工程において前記半導体基板と前記裏面電極との界面に生じたガラス層をフッ酸処理によって除去する工程とを含むことを特徴とする太陽電池素子の製造方法。
  2. 前記パッシベーション膜を、膜厚80〜120nmで前記半導体基板の前記他方の面に形成することを特徴とする請求項1に記載の太陽電池素子の製造方法。
  3. 前記導電ペーストは、ホウ素を含んだガラスフリットを前記ガラス成分として含有し、該ホウ素を含んだガラスフリットは前記ガラス成分の25重量部以上を占めることを特徴とする請求項1又は2記載の太陽電池素子の製造方法。
  4. 前記焼成工程においては、ピーク温度800〜850℃、温度昇降速度60℃/秒以上の条件下で前記裏面電極を焼成することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の太陽電池素子の製造方法。
  5. 前記導電ペーストは、前記ガラス成分を、平均粒径が1μm以下のガラスフリットとして含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の太陽電池素子の製造方法。
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