JP2004230755A - 管状体成形用金型及びこれを用いた管状体の製造方法 - Google Patents

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Tomohiro Ozuru
大▲づる▼  智博
正美 ▲柳▼田
Masami Yanagida
Hitoshi Nojiri
仁志 野尻
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Abstract

【課題】例えば、電子写真機器やレーザービームプリンタなどに用いるポリイミド管状体の製造に用いられる管状体成形用金型おいて、従来品よりも価格的に安価で、物理的強度にも優れた成形用金型を提供する。更に該金型を用いたポリイミド管状体の製造方法を提供する。
【解決手段】円筒形状の金属製金型であって、該金型の内外側に通気性を有する金属部位を部分的に有する、管状体成形用金型である。更に、加熱および/または焼成後に、成形用金型から管状体を取り外す工程を含む管状体の製造方法であって、前記成形用金型として、内外側に通気性を有する金属部位を部分的に有する上記金型を用いることを特徴とする、管状体の製造方法。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、管状体の成形に適した金型および該金型を用いた管状体の製造方法に関し、より好ましくは、電子写真記録装置において、像を形成する感光体、像の中間転写体となる中間転写ベルトや、像の転写を兼用しつつ印刷シートの搬送を行う転写搬送ベルト、さらにはトナーの熱定着に用いられる定着ベルト等に使用される、ポリイミド樹脂を主成分とする管状体の成形に適した金型および該金型を用いたポリイミド管状体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
管状成形体は様々な分野でその用途に応じて種々利用されているが、中でもポリイミド管状体は、優れた耐熱性、寸法安定性、機械的強度、化学的安定性等を有する理由から、例えば、精密駆動伝達ベルト又は複写機若しくはレーザービームプリンターなどの電子写真装置用の熱定着用ベルト若しくは中間転写ベルト等で利用され、或いは応用が期待されている。
【0003】
上記のポリイミド管状体は、従来、以下のような方法で製造されていた。例えば、溶媒中にポリアミック酸を溶解若しくは分散させた、ポリイミド前駆体溶液若しくは分散液を、表面処理を施した円柱状又は円筒状の金型外表面に塗布(例えば、特許文献1、2参照)、或いは円筒状の金型内表面に塗布し(例えば、特許文献3参照)、厚みを調整した後、加熱によって溶媒を蒸散させる。次いで、さらにイミド化を進めるために別の型に外嵌し(例えば、特許文献4参照)、350℃から550℃程度の高温で加熱する方法が例示される。
【0004】
ポリイミド管状体は、その利用における性質上、寸法、特に円周が正確に規定される必要がある。このため、上記の手法に例示されるまでも無く、円筒型もしくは円柱型の表面に樹脂を接触させ、しかる後に加熱や冷却、または溶媒除去などの方法で管状に加工することが必須である。しかしながら、既存の手法では、成形用金型からポリイミド管状体を抜き取る作業が非常に困難であり、上記の作業中に、ポリイミド管状体が破損し、歩留まりが低下する等の問題があった。前記成形用金型との剥離性を向上させるため、金型にセラミックコーティングや樹脂コーティングを施すなどの手法が用いられてきたが、これらの方法は、コーティングの作業が煩雑になること、或いはコーティング剤が高価であること等から、最終的に得られるポリイミド管状体のコストを高める要因となっていた。更に、これらの方法では、上記コーティング剤がポリイミド管状体に移る場合があり、ポリイミド管状体の特性を低減させるという致命的な欠陥を有していた。
【0005】
また、柔軟性円筒体を成形用金型として用いる方法も提案されている(例えば、特許文献5参照)。しかし、上記手法では柔軟性円筒体の強度が弱く、小さい力で挫屈などの永久変形を生じてしまうこと、また、繰り返しの加熱に対する耐性が低いため、柔軟性円筒体が数回の使用で熱疲労破壊すること、さらには前記柔軟性円筒体の単価が非常に高い等の課題があり、結果として、最終的に得られるポリイミド管状体のコストを著しく引き上げてしまう等の問題があった。
【0006】
そこで、本発明者らは、成形用金型に外嵌されたポリイミド管状体の内側と外側の圧力の差を設けることにより成形用金型からの抜き取りを容易にする方法を提案している(例えば、特許文献6参照)。上記方法によれば、通気性を有する成形用金型の内部の圧力を上昇させ、および/または成形用金型の外部の圧力を低下することで、成形用金型の外面にあるポリイミド管状体と成形用金型との間に空気の層が形成され、成形用金型からポリイミド管状体を容易に抜き出すことができる。
【0007】
【特許文献1】
特開昭64‐22514号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平3‐180309号公報
【0009】
【特許文献3】
特開昭60‐166424号公報
【0010】
【特許文献4】
特開平10‐258434号公報
【0011】
【特許文献5】
特開平10‐296761号公報
【0012】
【特許文献6】
特開2002‐172627号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、例えば、ポリイミド管状体の用途のひとつであるカラー複写機やカラーレーザープリンターにおいては、一つのドラムにブラック、イエロー、シアン、マゼンタの4色が内蔵された4サイクル機から、各色ごとに独立した4連タンデム機への世代交代が進行中であることから、ポリイミド管状体も周長の長いものが必要となってきており、径の大きい成形用金型が用いられるようになってきている。径の小さいポリイミド管状体から径の大きいポリイミド管状体へとユーザーニーズが変化しても、それに要求される寸法精度、コストダウン等の要求は変わらないため、特に通気性金属を成形用金型として用いた場合、金型の価格とその寿命の短さが、コストアップの大きな要因となっていた。通気性金属は高価な金属微粒子を固めて母材とし、その母材より円筒形状の成形用金型を製作する。それまでの金型では円筒状に成形するときに、その内部を削りだすことから、高価な通気性金属の大部分を無駄にしていた。始めから円筒状に通気性金属を成形する方法もあるが、その場合も高価な金型が必要となり、通気性金属で作製された金型のコストアップを招いていた。さらに、通気性金属は微粒子を固めてすき間を形成するというその特性上、機械的強度は通常の金属より弱いため、その取り扱いが難しく、破損等による寿命の短さが悩みの種であった。
【0014】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、工業的に極めて有用であり、大幅なコストダウンが可能な、管状体の成形用金型を実用化し、それを用いた管状体の製造方法を確立するに至った。
【0015】
即ち本発明の第1は、 円筒形状の金属製金型であって、該金型の内外側に通気性を有する金属部位を部分的に有する、管状体成形用金型に関する。
【0016】
好ましい実施態様は、前記金型の円筒形状面に、複数の貫通孔がほぼ均一に分布するように穿孔した後、該貫通孔に通気性を有する金属を充填した構造を有することを特徴とする、前記の管状体成形用金型に関する。
【0017】
更に好ましい実施態様は、前記通気性を有する金属部位の面積が、金型の円筒形状面の面積に対し、0.5〜50%の範囲であることを特徴とする、前記何れかに記載の管状体成形用金型に関する。
【0018】
更に好ましい実施態様は、前記管状体が、ポリイミド樹脂を主成分とするポリイミド管状体であることを特徴とする、前記何れかに記載の管状体成形用金型に関する。
【0019】
本発明の第2は、 加熱および/または焼成後に、成形用金型から管状体を取り外す工程を含む管状体の製造方法であって、成形用金型として前記何れかに記載の金型を用いることを特徴とする、管状体の製造方法に関する。
【0020】
本発明に係る管状体成形用金型は加工の容易さから円筒形状のものが好ましい。前記金型において通気性を有する金属部位を部分的に有するためには、例えば、金属円筒に内外側を貫通する多数の穴を設け、この穴に通気性金属を埋め込み、しかる後に外表面を研磨して規定の寸法を有する成形用金型を得る方法等が例示され得る。
【0021】
本発明者らは、成形用金型全体が通気性金属で形成されなくとも、例えば、図1のように通気性を有する部位が金型中にほぼ均一に分布している場合は、後述するようにポリイミド管状体の取り外しが支障なく行えることを見出した。この場合は、金型全体を通気性金属から作製するのに比較し、高価な通気性金属の使用量を大幅に減らすことが可能なため、金型の制作費を大幅に安くすることができる。
【0022】
例えば、前記通気性を有する金属部位の個数と大きさから、金型の円筒形状面全体の面積に対する通気性金属部位の面積比が決定されるが、通気性を確保するという観点から、通気性を有する金属部位は面積比で0.5%以上、更には1%以上であることが好ましい。一方、面積比が大きすぎると機械的強度が弱くなるため、面積比は50%以下、更には30%以下であることが好ましい。なお、金型の両端部で実際に成形に用いない部分は、上記面積比の計算には含めないものとする。
【0023】
さらに管状体が金型から簡単に取り外しできるためには、通気性を有する金属部位がほぼ均一に分布していることが好ましい。例えば、前記通気性を有する金属部位は千鳥状に配置されても、格子状に配置されても、らせん状に配置されても何ら問題はなく、ランダムに配置されていても実質的に均一に分布していれば何ら問題はないが(図1〜4参照)、中でも物理的強度の点から、千鳥状、格子状若しくはらせん状に配置されることが好ましい。なお、実質的に均一に分布とは、通気性を有する金属部位が、例えば金型の一方面に局所的に集中することなく分布することを意味し、例えば、必ずしも通気性を有する金属部位が等距離間隔を保って均一に分布することを指すものではない。
【0024】
通気性金属としては種々のものが選択され得る。例えばヒポラス(商品名 株式会社神戸製鋼所製)やポーセラックスII(商品名 新東工業株式会社製)が好適である。通気性金属自体の強度は一般のステンレス素材よりも劣るが、例えば、通常のステンレスを円筒状金型の素材として用い、部分的に通気性金属を用いた場合は、通気性金属を用いて金型全体を作製する場合と比較し、金型全体の機械的強度が向上する。取り扱い方法においても通常の取り扱いが可能となり、移動或いは急激な温度変化による破損などの金型の短寿命化を防ぐことができる。例えば、金型に傷が入った場合、通気性金属の補修は困難だが、部分的に通気性金属を用いた金型の場合は傷の入った箇所のみ交換することが可能であり、通気性金属でない部位では通常の補修が可能になる。
【0025】
このようにポリイミド管状体に大口径のものが求められるなか、金型が大型化するにつれて高騰する製作費を低減させることが可能であり、結果として、得られるポリイミド管状体も安価になる。
【0026】
加熱および/または焼成後に、ポリイミド管状体は成形用金型に密着した状態にあるが、本発明の金型を用いた場合は、例えば、以下の方法により金型からポリイミド管状体を容易に取り出すことができる。まず、成形用金型の両端を密封し、又は両端若しくは一端を密封した他端から、内部の圧力を制御する装置につながる機構を設け、次に成形用金型の内部と外部に圧力の差を設けてポリイミド管状体を成形用金型から取り外すことができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施態様を詳しく説明する。
【0028】
本発明に係る管状体の成分は特に限定されるものではなく、本発明に係る管状体成形用金型を用いて成形できるものであれば、制限無く用いることができる。例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフッ化ビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル等の樹脂を含む組成物が例示されうるが、中でも、優れた耐熱性、寸法安定性、機械強度、化学的安定性等を有する理由から、ポリイミド樹脂を主成分とする管状体であることが好ましい。ここで樹脂の主成分とは、全樹脂成分中、ポリイミドが50重量%以上であることを言い、更には70重量%以上であることが好ましい。
【0029】
本発明における上記のポリイミド管状体に関し、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸は、例えば、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分を有機極性溶媒中で重合反応させることにより得ることができる。
【0030】
テトラカルボン酸二無水物成分としては特に制限はなく、例えば、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族または脂環式テトラカルボン酸二無水物;ピロメリット酸二無水物、3,3´4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4´−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4´−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4´−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3´,4,4´−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4´−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4´−ジフェニルメタン二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物;1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0031】
ジアミン成分としては、ジアミンであれば特に限定されないが、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4´−ジアミノジフェニルメタン、4,4´−ジアミノジフェニルエタン、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル、4,4´−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4´−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4´−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4´−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4´−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4´−ジアミノベンズアニリド、3,5−ジアミノ−3´−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5−ジアミノ−4´−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4´−ジアミノジフェニルエーテル、2,7−ジアミノフルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4´−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2´,5,5´−テトラクロロ−4,4´−ジアミノビフェニル、2,2´−ジクロロ−4,4´−ジアミノ−5,5´−ジメトキシビフェニル、3,3´−ジメトキシ−4,4´−ジアミノビフェニル、4,4´−ジアミノ−2,2´−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4´−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、1,3´−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4´−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4´−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2´−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4´−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン;ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミンまたは脂環式ジアミン等を挙げることができる。これらのジアミン化合物は単独または2種以上組み合わせて用いることができる。ジアミンは、焼成後のポリイミドの熱力学的な物性の点から、芳香族ジアミンを用いることが好ましいが、特に限定されるものではない。
【0032】
ここで前記ポリアミック酸の生成反応に使用される有機極性溶媒としては、ポリアミック酸を溶解するものであれば特に限定されないが、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどをあげることができる。更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素も使用可能である。これらは単独または混合物として用いることができる。
【0033】
本発明において、ポリアミック酸溶液には、得られるポリイミド管状体の抵抗値、強度、耐紫外線性、耐湿性等を制御するために、樹脂の特性制御のために一般的に用いられている公知の種々の添加物を添加することができる。
【0034】
例えば、ポリイミド管状体を電子写真装置の転写もしくは中間転写ベルトとして用いる場合、その体積抵抗値を1×10〜1015Ω・cm、好ましくは1×10〜1012Ω・cmの範囲に制御する事が極めて重要であるが、一般的に絶縁性樹脂の導電化・抵抗値低下・静電気防止などの手段に用いられる、カーボンブラックをはじめとする導電性無機粉体を適量混合することにより、これを実現できる。カーボンブラック以外にも小径金属粒体、金属酸化物粒体、また酸化チタンや各種無機粒体・ウイスカーを金属酸化物などの導電性物質で皮膜形成したもの等を添加することにより、同様の効果を得ることができる。さらには、LiCl等のイオン導電性物質の添加も可能である。
【0035】
また例えば、電子写真装置のトナー定着ベルトとして用いることを考える場合、ポリイミド管状体樹脂中に熱伝導性の無機紛体を導入することで、その熱定着能力を向上することができる。熱伝導性無機粉体としては、熱伝導機能を有する無機粉体であれば特に制限はなく、例えば窒化アルミニウム、窒化ホウ素、アルミナ、炭化珪素、珪素、シリカ、グラファイト等があげられる。なかでも、熱伝導機能が高く、離型効果を発揮し、化学的に安定で、無害であるという点で、窒化ホウ素が好ましい。
【0036】
また、駆動ベルト等の力伝達の用途では、より強度を向上させるために、例えばガラス短繊維のような強度向上のために通常用いられる種々の添加物を加えることもできる。上述の無機紛体類は、単独または複数の混合系で用いることが可能で、ポリイミド管状体の用途に応じて適宜選択されうる。
【0037】
前記添加物の添加量は、添加物の種類及び目的によって適宜適量が選択されるが、概ねポリイミド固形分に対して1〜50重量%程度が用いられうる。添加量が50重量%を超える場合は、添加物の種類によってはポリイミドの強度を低下させる可能性がある。一方、添加量が1重量%以下では通常の物理的特性、例えば伝熱性や強度などを改良するための効果は得られにくい。ただし、例えばLiCl等のイオン導電性の化合物等は極めて少量の添加により電気抵抗を低下させる効果があるため、このような場合は上記添加量に制限されない。
【0038】
上記準備されたポリアミック酸を主成分とする有機溶媒溶液は、有機溶媒にポリアミック酸として5〜25重量%程度含有するのが適当である。ただし、無機添加物の添加量によって、この範囲を超えても良好な加工が可能な場合もあるため、特に限定されない。また、溶液の粘度としてはポリアミック酸の濃度と分子量である程度決まってしまうものであるが、低粘度のものは分子量が小さすぎて成形後のポリイミド管状体の物理的強度が低くなる場合があり、逆に高粘度のものは作業性が悪く、例えば移送用ポンプの能力が足りなくなるといった場合があるため、概ね1〜1000Pa・secの範囲が好ましい。
【0039】
ポリアミック酸の硬化反応は、熱による方法、ポリアミック酸を含む原料溶液中に化学キュア剤を導入する方法、光による方法など、従来既知の方法を好適に用いることができる。しかしながら、生産性向上や、弾性率などのその他物性を好適に制御できることから、ポリアミック酸を含む原料溶液中に化学キュア剤を導入する方法を、硬化反応の少なくとも一部に導入することが好ましい。
【0040】
上記準備されたポリアミック酸を主成分とする有機溶媒溶液を管状体に成形する方法としては特に限定されることはないが、円筒状または円柱状の内筒と円筒状の外筒の間に該溶液を注入して管状体に形成する方法などがある。特に本発明に係る成形用金型を前記内筒として用いる方法は、ポリアミック酸が自己支持性を発現した後そのまま加熱できるため好適である。
【0041】
このとき内筒外面と外筒内面の表面粗さ(Ra)は、10μm以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは1μm以下であることが望ましい。10μmより表面粗さが大きいと、繰り返しの使用において、樹脂や樹脂中の無機紛体が表面に付着堆積し、管状体の離型性を低下させる可能性がある。ただし、完成したポリイミド管状体の表面にさらに樹脂をコートする事等が必要な場合、コートされる樹脂との密着性を向上させるため、一定レベルで表面に凹凸があった方が好ましい場合もある。この場合、表面粗さを一定レベルに規定するために、上述した樹脂の付着堆積の問題を回避でき、高い離型性を確保できる範囲で、型の表面を研磨等により物理的に表面加工することも適宜選択されうる。この場合も、化学キュア剤を導入する方法では、しみ出た溶剤による潤滑性が有利に働くため、化学キュア剤を用いない場合に比較して樹脂の付着自体が起こりにくい。このため、より円筒状型の表面の加工自由度が高くなる。
【0042】
本発明で、化学キュア剤とは、積極的な加熱を行わなくともポリアミック酸をポリイミドに閉環させる化学的な作用効果を有する薬剤を意味し、通常、酸無水物化合物及び/又は3級アミンを好適に用いることができる。
【0043】
酸無水物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水安息香酸が例示されるが、脱水作用を有するものであれば特に制限無く、種々のものを用いうる。なかでも、活性の点、更に反応後生成物が比較的低沸点で速やかに系から除かれる点から、無水酢酸が好適である。
【0044】
3級アミンとしては、イソキノリン等のキノリン類、β−ピコリン等のピコリン類、トリエチルアミン等の脂肪族3級アミン等をあげることができる。適度な活性を有し、でき上がったポリイミド管状体の機械的強度を高めるために特に好ましいものとしては、イソキノリンやβ−ピコリンがあげられる。
【0045】
化学キュア剤の有効成分が、ポリアミック酸高分子そのものの溶解性を有しない場合、ポリアミック酸を溶解できる溶媒との混合物を化学キュア剤として用いることが好ましい。例えば、無水酢酸は多くのポリアミック酸に対して貧溶媒であるため、これに3級アミンを加えたとしても、無水酢酸が主たる成分となる該溶液をポリアミック酸に直接混合した場合、均一混合までに時間がかかってしまうのである。また均一に混合されるまでの間、部分的にポリアミック酸が十分溶解されていない状態となるため、この部分で未溶解ゲル分の発生や、添加された無機物の不均一化等、成形後の欠陥となりうる現象が起こる場合がある。
【0046】
ポリアミック酸を溶解できる溶媒の例としては、ポリアミック酸の重合溶媒として例示したものが同様に用いられ、なかでもポリアミック酸の重合に用いたものと同一の溶媒を用いる事が特に好ましい。該溶剤は化学キュア剤の成分に対して、概ね10〜50重量%程度用いられる。ただし、これについてもポリアミック酸の組成とそれを溶解する溶媒組成によって適量は異なるため、必要量は適宜選択されるものであり、特に限定されるものではない。
【0047】
ポリアミック酸溶液と化学キュア剤とを混合させる方法の一つとして、溶液状態で円筒状に形成したものを化学キュア剤に浸漬させる方法が挙げられる。上記浸漬法としてはポリアミック酸溶液を円筒状の型の内側表面に塗布したもの、または円筒状若しくは円柱状の型の外側表面に塗布したものを化学キュア剤の浴槽に浸漬させ表面より閉環反応を進行させる方法がある。ただし、この場合は内部まで化学キュア剤が浸透するために時間が必要である。開口部がリング状のダイより押し出したものを化学キュア剤の浴槽に浸漬させる場合は溶液のカーテンの両面より反応が進行し、片面より反応が進行する方法より短時間で閉環反応が進行する。
【0048】
もう一つの方法としては、溶液状態で化学キュア剤を混合する方法も挙げられる。この場合は、化学キュア剤を混合させた瞬間から反応が進行するため、混合状態で保存することが難しく、速やかに管状体としての形状を形成する必要がある。例えば、ポリアミック酸溶液をミキサー装置中に導入し、別ラインでミキサー中に導入される化学キュア剤と連続的に混合均一化することが例示されうる。この際、重要なことは、この一連の作業が連続で気相を含まない状態で行われることである。ポリアミック酸と化学キュア剤溶液を別途容器に取り混ぜて攪拌するといった方法で混合を行うと、混合にあたって空気をかみこみ、混合後にこれを脱泡する作業が必要になる。脱泡を放置による自然脱泡により行おうとすると、その間に硬化が進行しすぎて後の成形が不可能になる場合がある。一方、遠心脱泡を行うと時間は短縮できるが、添加したフィラー類が遠心力により偏ってしまうため、フィラー類を添加する系では用いることができず、用途が限定されることになる。
【0049】
ポリアミック酸溶液と化学キュア剤溶液とを均一にすばやく混合するため、ミキサーの形態及びその使用方法には、該目的を達成するための種々の手段を用い得る。例えば、混合不良を防止するため、通常樹脂溶液の流れにそって複数段×複数枚の攪拌翼を有することが好ましい。また化学キュア剤の投入口は前記攪拌翼上段(上流段)の位置の側面に設けるのが通常であるが、より攪拌効率を上げるため攪拌軸及び翼中に化学キュア剤ラインを設け、攪拌翼の先端や途中に1箇所または複数箇所の投入口を設けることもできる。また攪拌翼の回転数が高いほど攪拌効率は向上するが、高すぎると攪拌熱による発熱が顕著になり、攪拌中にイミド化が進行することがあるため、ミキサーには冷却装置が付加される方が好ましく、その冷却能力に応じて溶液温度が高くなりすぎないよう回転数を制限する方が好ましい。
【0050】
ミキサーから型内に化学キュア剤溶液が混合されたポリアミック酸溶液が供給されるにあたり、ミキサー内を含めて型内に到達する以前のライン中でのポリアミック酸の硬化を防ぐ方法として、上述のような冷却を行う事は有効であるが、それでもなお、ライン中の樹脂溶液の滞留などにより偏在的に反応が進行することが懸念される場合、化学キュア剤またはポリアミック酸を主成分とする溶液に常温硬化阻害剤を混合しておき、円筒状型に混合溶液を注入した後に加熱により部分イミド化させて非流動化させる方法も取りうる。そのような常温硬化阻害剤の例としては、アセチルアセトンをあげることができる。
【0051】
化学キュア剤をポリアミック酸溶液と混合してからポリアミック酸溶液が自己支持性を有するようになるまでの時間は、化学キュア剤の濃度により制御することができる。その時間をさらに短くするための手段として、ポリアミック酸溶液中に、金属塩を添加する方法も行われ得る。金属塩としては、金属塩化物、金属ヨウ化物、金属硝酸塩等種々のものが適用可能で、より具体的にはSnCl、AuI、AgNO等を挙げることができる。
【0052】
また、ポリアミック酸溶液ならびに化学キュア剤溶液中の水分はできる限り少なくなるよう制御するのが好ましい。水分の存在は、化学キュア剤の成分である酸無水物を開環させる効果があるため、速やかな化学キュアを妨げ、その結果、化学キュア剤混合後のポリアミック酸が自己支持性を発現するまでの時間が長くなってしまう。また水分は、ポリアミック酸高分子そのものの分解にも寄与しうることから、化学キュア剤を混合する前からできる限りポリアミック酸溶液中の水分は少ない方が好ましい。具体的には、水分は0.5重量%以下、さらには500ppm以下とすることが好ましい。含水分量を下げるための方法としては、予め脱水処理された溶媒を用いる、作業をドライエアーや不活性ガス気流下で行うなどの方法を取り得る。
【0053】
次にポリアミック酸が自己支持性を発現し、管状体が形成された後の工程について説明する。
【0054】
本発明において、前記の自己支持性を発現した状態とは、ポリアミック酸から脱水反応によって高分子鎖が部分的にイミド化し、溶剤に不溶となった状態、または加熱により溶剤が揮発した状態を言う。加熱のみの場合でも化学キュア剤を用いた場合でも到達させることは可能であり、また両方を併用する方法も可能である。この自己支持性を発現した管状体を高温で加熱する前に、焼成用の成形用型に外嵌する。
【0055】
ポリイミド管状体を電子写真記録装置用の材料用途に使用する場合、前述したように厳しい寸法精度が要求される。しかしながらポリイミド前駆体の管状体はイミド化してポリイミドとなるときに必ず体積収縮する。これを自由収縮させることによって管状体を得ることもできるが、所望の寸法を得るためには焼成時に成形用金型を用いることが好ましい。それゆえポリイミド前駆体の管状体を円柱もしくは円筒状の成形用型に外嵌し、でき上がった管状体の内周面を規定することによって高い寸法精度をもつポリイミド管状体を得ることができる。
【0056】
なお、本発明に係る管状体成形用金型はできあがったポリイミド管状体の寸法と内側の表面粗さを規定するが、必ずしも完全な円筒状である必要は無く、断面が真円ではなく楕円である場合も包含し、更に場合によっては多角形で角を面取りした形状である場合も包含されうる。もっとも円筒状の形状が、加工の容易さ、その熱容量の小ささの点からより望ましい。さらに、後述するように溶剤の滞留を防ぐという点でも円筒状の形状が好適である。
【0057】
本発明に係る通気性金属を部分的に用いた構造を有する管状体成形用金型は上記の条件を満たし、特に、成形(焼成)後のポリイミド管状体の取り外し時にその真価を発揮するものである。
【0058】
前記ポリイミド前駆体の管状体は成形用の金型に外嵌されるが、このときポリイミド前駆体の管状体はイミド化の進行途中にある。ポリイミド前駆体の管状体に自己支持性が発現した時点で前記成形用の金型に外嵌するのが好ましいが、前記ポリイミド前駆体の管状体内の溶媒は常にしみでてくる状態であり、またゲルに力を加えると容易に変形する。このようなポリイミド前駆体の管状体を外嵌するためには管状体よりも内径の小さい金型を使用するのが好ましい。もちろんポリイミド前駆体の管状体の伸縮性を生かして、径の等しい、若しくは大き目の型に管状体を外嵌する方法もある。ただし、ポリイミド前駆体の管状体の強度が弱いときに外力を加えると成形(焼成)した後にその影響が残る場合があるため、充分時間をかけてポリイミド前駆体の管状体の強度が向上した時点で外嵌することが好ましい。
【0059】
外嵌時には溶媒のしみ出しと、成形用金型とポリイミド前駆体の管状体の間に気泡が入るというポリイミド管状体製造に係る特有の問題がある。これを放置して成形(焼成)した場合、多くはその痕跡ができあがったポリイミド管状体に見られる。その理由として、溶媒が外表面に多量に存在した場合、加熱時に周りの部分とは温度差を生じるためイミド化の程度が異なり、それゆえ溶媒が多量に存在した部分は変色し(溶剤痕)、物性的にも異なるものとなる。また、溶媒や気体が内表面(ポリイミド前駆体の管状体と成形用金型の間)に偏って存在した場合は、ポリイミド前駆体の管状体を変形、膨張させ、厚みを薄くさせ、時に外側凸に膨らんだまま成形されることもある。変形はないまでも金型にポリイミド前駆体の管状体が密着しない状態で成形することにより温度履歴が全く異なるものとなり、外表面に溶剤が多量に存在した場合と同様に変色し(気泡痕)、物性的にも異なるものとなる場合がある。以上に詳述したような理由により、自己支持性をもつポリイミド前駆体の管状体を円筒形状の成形用金型に外嵌し、管状体外表面の溶媒又は管状体と成形用金型間にある気体若しくは溶媒を取り除いた後、成形することが、成形後に均一でムラのないポリイミド管状体を得るための重要な要因である。
【0060】
なお、本発明において、前記溶媒若しくは気体を取り除いたとは、イミド化を進める成形用金型を備えた焼成炉にポリイミド前駆体の管状体を投入した場合、管状体より発生するガス濃度が爆発限界より低く、実用上問題がない程度まで溶剤のしみ出しが減少した状態をいう。もちろん焼成炉の構造によっては、溶媒の発生がほとんどないことが必要になる場合もあるが、しみ出した溶剤を速やかに系外に排出するような構造を有する焼成炉であれば、溶媒の乾燥とイミド化を同じ焼成炉で行うことが可能となる。例えば、焼成炉にポリイミド前駆体の管状体を投入後、温度条件等を設定して前記溶媒若しくは気体を取り除いた後、イミド化を行う条件に温度等を変更して、最終のポリイミド管状体を得ることができる。
【0061】
前記溶媒若しくは気体の除去方法としては、一つには減圧雰囲気下で取り除く方法がある。例えば、成形用金型に外嵌したポリイミド前駆体の管状体を密閉状態において減圧することがあげられる。減圧は、真空ポンプにて行うのが工業的には容易であり、揮発した溶媒はオイルに混入しないようにトラップを用いて回収するのが望ましい。到達減圧度は、真空ポンプの能力、密閉容器のリーク量、ポリイミド前駆体の管状体より放出される溶媒と気体の放出量により左右されるが、工業的にはより簡便に所定の時間だけ減圧状態におく方法が取られ得る。この際に長時間減圧するとポリイミド前駆体の管状体の溶媒が揮発し、その蒸発せん熱で管状体の温度が下がりすぎて、常圧にしたときに雰囲気中の水分が結露してその表面があれてしまうという現象が生じる。従って、温度が低下しない条件下で減圧することが好ましい。また、急な減圧は溶媒の突沸をまねき、ポリイミド前駆体の管状体を破壊してしまう場合があるので注意が必要である。このとき成形用金型に通気性を有するものを用いた場合は、外表面だけでなく、ポリイミド前駆体の管状体と成形用金型間の溶媒も速やかに取り除くことができる点から、好ましい。
【0062】
ポリイミド前駆体の管状体より溶媒と気体を除去する他の方法は、管状体の外表面に密着する形状を有するかきとり器を接触させてかきとる方法があげられる。かきとり器はその表面に滑性を有し、耐溶剤性と一定の強度があるものが好ましい。例えば、フッ素ゴム、フッ素系樹脂、シリコンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、ステンレスやアルミニウムに滑性を有する皮膜として無電解ニッケルとPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)をコーティングしたもの等があげられる。
【0063】
成形(焼成)は管状体内の溶媒が発泡等の悪影響を及ぼさないように、溶媒の沸点以下の温度から加熱し、ポリイミドの組成によっても異なるが、最終的には350℃〜550℃まで加熱するのが好ましい。これによりイミド化が完了し、最終的な製品となるポリイミド管状体を得ることができる。
【0064】
次に、成形せしめたポリイミド管状体を、例えば、以下に示す手法で成形用金型から取り外すことができる。先ず、成形用金型の両端を密封する、又は両端から若しくはどちらか一端を密封した他端から内部の圧力を制御する装置に繋がる機構を設ける。次に、成形用金型の内部の圧力を上昇させる、および/または成形用金型の外部の圧力を下げることで、前記金型からポリイミド管状体を抜き出すことができる。圧力を上昇せしめる手段としては、エアコンプレッサによる圧縮空気の導入が好ましいが、この限りではない。また、圧力を減少せしめる手段としては、ロータリーポンプ、ディフュージョンポンプなどの真空ポンプが好ましいが、この限りではない。外部の圧力を制御する手段としては、ベルジャーや加圧容器など、ある程度の圧力に耐えられる構造を有した密閉容器に前記成形用金型を封入し、その中の圧力を変化させることで行われる。この密閉容器の中に、ヒーターや冷却装置などの付随装置を設けることも適宜選択されうる。
【0065】
以上、本発明に係る管状体成形用金型および該金型を用いた管状体の製造方法について説明したが、本発明はこれらの実施の態様のみに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づき、種々なる改良、変更、修正を加えた態様で実施しうるものである。
【0066】
次に、本発明について実施例をあげてより詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみによって限定されるものではない。
【0067】
【実施例】
(実施例1)
SUS316の母材より外径82mm×内径64mm×長さ500mmの円筒状の金属製筒を削りだした。つぎに、両端部を除いた領域(約435mmの長さ)に、千鳥状に貫通孔を穿孔した。円周上に5個、全体で90個の貫通孔のすべてに通気性金属を埋め込んだ。なお、通気性金属はヒポラス(商品名 株式会社神戸製鋼所製)を用い、直径10mm×長さ10mmの円柱状に放電加工で切り出したものを用いた。端部をねじ切り加工後、最後に外径80mmになるまで研削加工で仕上げた。通気性を有する金属部位の面積は、金型の円筒形状面の面積に対し、約6.5%であった。
【0068】
(比較例1)
SUS316の母材より外径80mm×内径64mm×長さ500mmの円筒状の金属製筒を削りだした。
【0069】
(実施例2)
攪拌翼がついた容器に、ジメチルホルムアミド(DMF)820gを入れ、窒素気流下で4、4’−ジアミノジフェニルエーテル86.2gを溶解し、これにピロメリット酸二無水物93.8gを少量ずつ加え、よく攪拌した。系の粘度が約300Pa・secになったところで攪拌を停止し、ポリアミック酸のDMF溶液を得た。次に金属フィラーTM−200(大塚化学株式会社製)60gとDMF300gを別の容器に入れ、よく攪拌し、さらに超音波分散機にかけることで分散液中の金属フィラーを均一に分散させ分散液Aを得た。また、さらに別の容器にカーボンブラック3030B(三菱化学株式会社製)15gとDMF300gを入れよく攪拌し、超音波分散機にかけて分散液Bを得た。上記で得られたポリアミック酸溶液に対して、前記分散液A270gおよび分散液B151.2gを溶かし入れた。さらに、化学キュア剤としてイソキノリン25gを加えて、よく攪拌した。
【0070】
得られた混合溶液を、長さ400mm、内径82mmの円筒状ガラス型の内側に一様に塗布した。次にガラス型の内径とのクリアランスが0.7mmに調整された金型をガラス型の中を移動させることで、ガラス型の内側に0.7mmの厚さを有するポリアミック酸の塗布膜を形成せしめた。成分が、重量比で無水酢酸:DMF=2:1である化学キュア剤の構成成分を含む液を調製した。調製された液を入れた液槽中でガラス型を回転させながら、型の下部を液中に漬け、塗布された樹脂層が液と接触するようにした。
【0071】
型の回転を継続し、15分経過した段階で、塗布されたポリアミック酸塗布膜は自己支持性を得ており、厚さ約500μmであった。この半硬化したポリイミド前駆体の管状体は、ガラス型から容易に取り外すことができた。この管状体を、表面にフッ素系の剥離剤をスプレーしておいた、実施例1で作製した金属製円筒状金型に挿入した。この管状体の片端部にステンレス製のバンドを固く締め付けた。これを密閉可能な容器にバンドを上部にして垂直にセットし、ガラス製のトラップをドライアイス/メタノールで冷却したものを取り付け、真空ポンプで10分減圧した。次にこの金型を焼成炉に垂直にセットし、100℃で10分、200℃で5分、300℃で5分、400℃で3分間加熱し、半硬化状態の管状体を完全にイミド化すると同時に残溶剤を揮発させた。続いて該金型を室温まで徐冷した後、該金型の片端を金属製の蓋で密閉し、他端をエアコンプレッサに繋いだ。エアコンプレッサで金型内部の圧力を3気圧以上にすることで、前記金型からポリイミド管状体が浮き上がり、該管状体を容易に取り出すことができた。得られたポリイミド管状体は、膜厚60μmで破損個所もなく均一な外観を有していた。
【0072】
(比較例2)
実施例2と同様にして半硬化したポリイミド前駆体の管状体を得た。得られた管状体をフッ素系の剥離剤をスプレーしておいた、比較例1で作製した外径80mmの金属製円筒状金型に挿入し、実施例2と同様にして成形した。成形後、金型内部および外部の圧力を変化させないままでポリイミド管状体を取り外そうと奮闘努力したが、樹脂の密着性が強く、該管状体の一部を破損させるまで取り外すことはできなかった。
【0073】
(比較例3)
通気性金属ヒポラスの母材(外径280mm×長さ約570mmの円柱)を外径251mm×内径230mm×長さ550mmに荒削りした。つぎに、内側を放電加工して内径231mmに仕上げ加工を行なった。熱処理を行なう前に脱脂洗浄を行ない、真空炉で熱処理を行なった。最後に外径を250mmに仕上げるために研削加工を行なったが加工途中で工具が接触し、表面に打痕が生じたため管状体の成形に使用できなかった。
【0074】
【発明の効果】
本発明の一つである、管状体成形用金型は通気性金属を部分的に用いた構造である。部分的に通気性金属を使用することで、金型全体を通気性金属で形成する必要がなく、小片のみを使用可能なため高価な通気性金属のロスが少なく金型の製作費が大幅に安価となる。管状体に大口径のものが求められる中、金型が大型化するにつれて高騰する製作費を低減させることが可能である。さらに、通気性金属自体の強度は一般のステンレス素材よりも劣るが、通常の金属を円筒の基本素材として用い、部分的に通気性金属を用いることにより金型全体の機械的強度が向上し、破損による金型の短寿命化を防ぐことができる。また本発明の成形用金型を用いて、例えば、ポリイミド管状体の取り外しを行なう場合、取り外しの際にポリイミド管状体の破損等がなく歩留まりが向上する。そのため、総じてポリイミド管状体の製造コストが低減し、もってポリイミド管状体を安価に製造可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る、通気性金属を千鳥状に用いた管状体成形用金型の一実施形態を示す説明図である。
【図2】本発明に係る、通気性金属を格子状に用いた管状体成形用金型の一実施形態を示す説明図である。
【図3】本発明に係る、通気性金属をらせん状に用いた管状体成形用金型の一実施形態を示す説明図である。
【図4】本発明に係る、通気性金属をランダムに用いた管状体成形用金型の一実施形態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 :通気性を有する金属部位
2 :円筒形状の金属製金型

Claims (5)

  1. 円筒形状の金属製金型であって、該金型の内外側に通気性を有する金属部位を部分的に有する、管状体成形用金型。
  2. 前記金型の円筒形状面に、複数の貫通孔がほぼ均一に分布するように穿孔した後、該貫通孔に通気性を有する金属を充填した構造を有することを特徴とする、請求項1記載の管状体成形用金型。
  3. 前記通気性を有する金属部位の面積が、金型の円筒形状面の面積に対し、0.5〜50%の範囲であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の管状体成形用金型。
  4. 前記管状体が、ポリイミド樹脂を主成分とするポリイミド管状体であることを特徴とする、請求項1乃至3に記載の管状体成形用金型。
  5. 加熱および/または焼成後に、成形用金型から管状体を取り外す工程を含む管状体の製造方法であって、前記成形用金型として請求項1乃至4に記載の金型を用いることを特徴とする、管状体の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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