JP2003320523A - ポリイミド成型体の製造方法及びポリイミド成型体製造用装置 - Google Patents

ポリイミド成型体の製造方法及びポリイミド成型体製造用装置

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JP2003320523A JP2002129154A JP2002129154A JP2003320523A JP 2003320523 A JP2003320523 A JP 2003320523A JP 2002129154 A JP2002129154 A JP 2002129154A JP 2002129154 A JP2002129154 A JP 2002129154A JP 2003320523 A JP2003320523 A JP 2003320523A
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Hitoshi Nojiri
仁志 野尻
正美 ▲柳▼田
Masami Yanagida
Akio Matsutani
晃男 松谷
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Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
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Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 生産性と寸法精度に優れたポリイミド成型体
の製造方法を提供するものである。特にレーザービーム
プリンターあるいはファクシミリなどの電子写真装置に
用いられるポリイミド管状体の製造方法に適用すると有
用である。 【解決手段】 ポリアミド酸を主成分とする溶液と脱水
剤とを混合した樹脂溶液と、ポリアミド酸を主成分とす
る溶液と脱水触媒とを混合した樹脂溶液とを好ましくは
スタティックミキサーを用いて混合する工程を有し、さ
らには混合された溶液を金型内に注入し、自己支持性が
発現した後、型内から取り出すか、あるいは型の一部を
離脱せしめることで樹脂中の溶剤の乾燥が可能な状態と
し、加熱・乾燥する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はポリアミド酸溶液を
乾燥・イミド化することによって得られる方式のポリイ
ミド成型体の製造方法及び製造用装置に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリイミド樹脂は、優れた耐熱性、寸法
安定性、機械強度、化学的安定性を有し、フレキシブル
プリント基板、耐熱電線絶縁材料、耐磨耗性部材等、種
々の用途に使用されている。また、その管状形成物は、
例えば精密駆動伝達ベルトや複写機やレーザービームプ
リンターなどの電子写真装置用の、熱定着用ベルト、中
間転写ベルト等への応用が挙げられる。
【0003】ポリイミドの成型体は、従来その形状によ
りいくつかの方法が使い分けられて製造されている。フ
ィルム状の場合、連続で製造する事が可能であり、主に
樹脂溶液をエンドレスの支持体上にキャストし、自己支
持性を発現するまで加熱・乾燥し、その後半硬化のフィ
ルムを支持体から引き剥がし、両端をチャックやピンで
固定しながら加熱炉中を搬送し、高温での加熱を行って
ポリイミドフィルムとして巻き取る、という方法がとら
れる。
【0004】上記のような方法は、連続でロールとして
巻き取る形で生産する場合に有効であるが、バッチ式で
各種部品類を製造しようとする場合、種々の困難な問題
が生ずる。部品形態が管状体すなわちチューブやベルト
の類いであった場合を例にとって説明する。
【0005】従来、ポリイミドの管状体は以下のような
方法で製造されていた。たとえば、溶媒中にポリアミド
酸を分散あるいは溶解させたポリイミド前駆体溶液を、
表面処理をした円柱状又は円筒状の金型外表面に塗布を
する、あるいは円筒状の金型内表面に塗布をし、厚み調
整をした後、加熱によって溶媒を蒸散させ、あるいはさ
らに加熱することによってポリイミド管状体を製造して
いた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記の方法で製造する
場合、課題に直面する工程はポリアミド酸溶液を型に塗
布した後、これを自己支持性が出るまで乾燥・硬化させ
る工程である。少なくとも自己支持性が発現するまでの
間は、ポリアミド酸溶液は流動性を有するのであるか
ら、型に塗布した状態で樹脂の形状を維持しようとする
と、例えば塗布型を回転させるなどの処置が必要とな
る。そうでないと、塗布型の筒状体を縦置きした場合、
ポリアミド酸溶液は筒の下方に垂れて、そのまま乾燥・
硬化させると、下部の厚みが厚く、上部の厚みが薄い管
状物となる。また横置きにした場合も同様に下方に垂れ
るため、周の一部が厚く、他部が薄い管状物となる。非
常に粘度の高いポリアミド酸溶液を用いるとしても、乾
燥のために加熱することにより粘度低下するので、やは
り垂れは防止しがたい。加熱しても垂れないほどに粘度
を高くすると、塗布が困難になる。
【0007】横置きの場合に限り、塗布型を回転させる
ことによりこの問題は解決されるが、塗布型を回転させ
ながら乾燥・硬化の工程に進めることは、工業的な量産
で連続工程を考える場合、回転ステージ上にのせた塗布
型を加熱炉内を通すなどの工夫が必要であり装置上非常
に複雑なものとなる。また回転可能な装置を乾燥のため
加熱下にさらすのみならず冷却と加熱のヒートサイクル
をも繰り返すことになり、装置の寿命を考えると工業的
に不利であることは明確である。
【0008】また、管状樹脂を造る別の手法として、押
し出し成形法や、インジェクション法、さらには液状樹
脂を型に注入する方法があるが、これらは基本的に熱可
塑性の樹脂に対する方法であり、一般的に非熱可塑性樹
脂であるポリイミドの成形には不向きである。さらに
は、これらの方法では、厚さ数10μmの薄物を形成す
ることは困難であり、また寸法精度にも限界があった。
しかも、これらの方法では、装置及び治具が極めて大型
かつ高価になるという致命的な欠陥を有する。
【0009】該問題は、金型の形状を変えて管状以外の
形状とする場合も共通の問題であることは明白である。
【0010】一方、ポリアミド酸をポリイミドに転換す
る方法として化学硬化剤を用いる事そのものは公知であ
り、フィルムの連続的生産において既に工業化されてい
る。にもかかわらず、これを成型体の成型に用いる事が
これまでなされていなかった理由は下記の二点による。
一点は化学硬化剤を一旦混合すると、常温においても一
定の速度で硬化反応が進行するため、所定の形状に成型
する作業の途中で硬化により成型不良など不都合が生じ
る可能性があることである。もう一点は、通常上述のフ
ィルムの連続生産における化学硬化剤の混合方式が、樹
脂と化学硬化剤(代表的には酸無水物と3級アミンの混
合溶液)をミキサーで混合する方法であったため、連続
の生産には向いても、バッチ式の成型体製造ではこのミ
キサー部分以降で滞留による硬化進行がおこるために、
向かなかったためである。
【0011】本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意
研究を重ねた結果、工業的に極めて簡便な手法でのポリ
イミド成型体の製造方法を想到するに至ったのである。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明のポリイミド成型体の製造方法は、少なくと
も以下に示すA液とB液とを混合する工程を有すること
を特徴とする。 A液:脱水剤を含有し、ポリアミド酸を主成分とする溶
液 B液:脱水触媒を含有し、ポリアミド酸を主成分とする
溶液 ここで、前記A液と前記B液とを混合する手段は、好ま
しくは、スタティックミキサーによる。また、混合前の
前記A液と前記B液の液温は、好ましくは20℃以下で
ある。
【0013】一つの実施態様において、前記本発明の製
造方法は、以下の各工程を有する。 (1)前記A液と前記B液とを混合して得た混合溶液を
金型内に注入する工程 (2)該混合溶液中のポリアミド酸が自己支持性のある
半成型体に変化した後、該半成型体を型内から取り出す
か、あるいは型の一部を離脱せしめる工程 (3)該半成型体を加熱し、該半成型体の表面及び内部
に存在する溶剤を乾燥してポリイミド成型体とする工程 そして、この様な本発明のポリイミド成型体の製造方法
は、成型体の形状が管状体である場合に特に適してい
る。
【0014】また、本発明はポリイミド成型体製造用装
置を提供し、該装置は以下の(イ)〜(ニ)の各装置か
ら構成される事を特徴とする。 (イ)前記A液用のサービスタンク (ロ)前記B液用のサービスタンク (ハ)前記A液と前記B液を各々のサービスタンクから
定量的に払い出す装置 (ニ)サービスタンクから払い出された前記A液と前記
B液とを混合して混合溶液にする混合装置 ここで、前記混合装置は、好ましくはスタティックミキ
サーである。
【0015】また、本発明のポリイミド成型体製造用装
置は、一つの実施態様において、前記の構成に加えて
(ホ)前記混合溶液が充填され、成型体の形状を規定す
る成型用金型を有しており、金型により規定される成型
体の形状を管状とすることも可能である。
【0016】
【発明の実施の形態】[基本工程]本発明のポリイミド
成型体の製造方法は、ポリアミド酸を主成分とする溶液
中で脱水剤と脱水触媒を作用させ、ポリアミド酸の全部
または一部をポリイミドに転化する工程を含む。
【0017】<ポリアミド酸を主成分とする溶液>ポリ
アミド酸を主成分とする溶液は、例えば芳香族テトラカ
ルボン酸成分とジアミン成分を有機極性溶媒中で重合反
応させて得られるものである。
【0018】芳香族テトラカルボン酸成分としては特に
制限はなく、例えば、ブタンテトラカルボン酸二無水
物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二
無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブ
タンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタ
ンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボ
キシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカ
ルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,
5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5
−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチ
ル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水
物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,
3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族また
は脂環式テトラカルボン酸二無水物;ピロメリット酸二
無水物、3,3´4,4´−ベンゾフェノンテトラカル
ボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ビフェニルスル
ホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフ
タレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナ
フタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4
´−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、
3,3´,4,4´−ジメチルジフェニルシランテトラ
カルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−テトラフェ
ニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4
−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4´−ビス
(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフ
ィド二無水物、4,4´−ビス(3,4−ジカルボキシ
フェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4´−
ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプ
ロパン二無水物、3,3´,4,4´−パーフルオロイ
ソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3´,4,4
´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタ
ル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フ
ェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m
−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水
物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4´−ジフェ
ニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)
−4,4´−ジフェニルメタン二無水物等の芳香族テト
ラカルボン酸二無水物;1,3,3a,4,5,9b−
ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナ
フト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,
3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−
(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−
ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,
3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−
5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニ
ル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等
の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等を
挙げることができる。これらのテトラカルボン酸二無水
物は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることが
できる。
【0019】ジアミンは、ジアミンであれば特に限定さ
れないが、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェ
ニレンジアミン、4,4´−ジアミノジフェニルメタ
ン、4,4´−ジアミノジフェニルエタン、4,4´−
ジアミノジフェニルエーテル、4,4´−ジアミノジフ
ェニルスルフィド、4,4´−ジアミノジフェニルスル
フォン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチ
ル−4,4´−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−
(4´−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルイ
ンダン、6−アミノ−1−(4´−アミノフェニル)−
1,3,3−トリメチルインダン、4,4´−ジアミノ
ベンズアニリド、3,5−ジアミノ−3´−トリフルオ
ロメチルベンズアニリド、3,5−ジアミノ−4´−ト
リフルオロメチルベンズアニリド、3,4´−ジアミノ
ジフェニルエーテル、2,7−ジアミノフルオレン、
2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプ
ロパン、4,4´−メチレン−ビス(2−クロロアニリ
ン)、2,2´,5,5´−テトラクロロ−4,4´−
ジアミノビフェニル、2,2´−ジクロロ−4,4´−
ジアミノ−5,5´−ジメトキシビフェニル、3,3´
−ジメトキシ−4,4´−ジアミノビフェニル、4,4
´−ジアミノ−2,2´−ビス(トリフルオロメチル)
ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキ
シ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−ア
ミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、
1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,
4´−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、
1,3´−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、
9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,
4´−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリ
ン、4,4´−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビ
スアニリン、2,2´−ビス[4−(4−アミノ−2−
トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフル
オロプロパン、4,4´−ビス[4−(4−アミノ−2
−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロ
ビフェニル等の芳香族ジアミン、ジアミノテトラフェニ
ルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と
当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香
族ジアミン、1,1−メタキシリレンジアミン、1,3
−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタ
メチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチ
レンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミ
ン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジ
アミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミ
ン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチ
レンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]−ウ
ンデシレンジメチルジアミン、4,4´−メチレンビス
(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミンおよび脂
環式ジアミン等を挙げることができる。
【0020】これらのジアミン化合物は単独でまたは2
種以上組み合わせて用いることができる。ジアミンは、
芳香族ジアミンを用いることが好ましいが、特に限定さ
れるものではない。
【0021】ここで該ポリアミド酸の生成反応に使用さ
れる有機極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキ
シド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶
媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチル
ホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメ
チルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなど
のアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、
N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、
フェノール、o−、m−、またはp−クレゾール、キシ
レノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフ
ェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジ
オキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノー
ル、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソル
ブ等のセロソルブ系溶媒あるいはヘキサメチルホスホル
アミド、γ−ブチロラクトンなどをあげることができ、
これらを単独または混合物として用いるのが望ましい
が、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素
も使用可能である。溶媒は、ポリアミド酸を溶解するも
のであれば特に限定されない。
【0022】本発明におけるポリアミド酸溶液には、完
成したポリイミド成型体の抵抗値、強度、対紫外線性、
耐湿性等の制御のために、一般的に樹脂の特性制御に用
いられている種々の添加物を添加する方法を応用するこ
とができる。例えば、ポリイミド管状体として電子写真
装置の転写もしくは中間転写ベルト用途に用いる場合、
その体積抵抗値を1×106〜1015Ω・cm好ましく
は1×107〜1013Ω・cmの範囲に制御する事が極
めて重要であるが、これを実現するための具体的方法と
しては、一般的に絶縁性樹脂の導電化・抵抗値低下・静
電気防止などの手段に用いられる、カーボンブラックを
はじめとする導電性無機粉体を樹脂中に適量混合する方
法が最も効果的である。カーボンブラック以外にも小径
金属粒体、金属酸化物粒体、また酸化チタンや各種無機
粒体・ウイスカーを金属酸化物など導電性物質で皮膜形
成したもの等が、同様の効果を得ることができる。さら
には、LiCl等のイオン導電性物質の添加も可能であ
る。また例えば、電子写真装置のトナー定着ベルトとし
て用いることを考える場合、ポリイミド管状体樹脂中に
熱伝導性の無機紛体を導入することで、その熱定着能力
を向上することができる。熱伝導性無機粉末としては、
熱伝導機能を有する無機粉末であれば特に制限はなく、
例えば窒化アルミニウム、窒化ホウ素、アルミナ、炭化
珪素、珪素、シリカ、グラファイト等があげられる。な
かでも、熱伝導機能が高く、離型効果を発揮し、化学的
に安定で、無害であるという点で、窒化ホウ素が好まし
い。また、駆動ベルト等の力伝達の用途では、より強度
を向上させるために例えばガラス短繊維のような強度向
上のために通常用いられる種々の添加物を加えることも
できる。
【0023】上述の無機紛体類は、単独または複数の混
合系で用いることにより、ポリイミド成型体の用途に応
じて適宜選択されうる。添加物の添加量は、添加物の種
類及び目的によって適宜適量が選択されるが、概ねポリ
イミド固形分に対して1〜150wt%程度が用いられ
うる。150wt%を超える量は、添加物の種類によっ
てはポリイミドの強度を低下させる可能性がある。一方
1%以下の添加量では通常の物理的特性例えば伝熱性や
強度などを改良するためには効果が得られないが、例え
ばLiCl等のイオン導電性の化合物等は極めて少量の
添加で電気抵抗低下の効果があり、その限りではない。
【0024】上記準備されたポリアミド酸を主成分とす
る有機溶媒溶液は、有機溶媒にポリアミド酸として5〜
25wt%程度含有するのが適当である。ただし、無機
添加物の添加量によって、この範囲を超えても良好な加
工が可能な場合もあり、特には限定されない。また、溶
液の粘度としては1〜1000Pa・secの範囲が好
ましい。
【0025】<脱水剤>脱水剤としては、酸無水物化合
物を用いる事ができる。酸無水物としては、脱水作用を
有するものであれば種々のものを用いうるが、無水酢酸
が活性の点から最も好ましく、反応後生成物が比較的低
沸点で速やかに系から除かれる点においても好適であ
る。
【0026】<脱水触媒>脱水触媒として最も適切なの
は3級アミン化合物である。3級アミンとしては、イソ
キノリン等のキノリン類、β−ピコリン等のピコリン
類、トリエチルアミン等の脂肪族3級アミン等を上げる
こと事ができる。適度な活性を有し、出来上がったポリ
イミド管状体の機械的強度を高めるために特に好ましい
ものとしては、イソキノリンやβ−ピコリンがあげられ
る。
【0027】[脱水剤と脱水触媒の混合方法]本発明の
ポリイミド成型体の製造方法では、以下のA液及びB液
を調整し、これらを混合することにより、脱水剤と脱水
触媒を含有するポリアミド酸溶液とする。 A液:脱水剤を含有し、ポリアミド酸を主成分とする溶
液 B液:脱水触媒を含有し、ポリアミド酸を主成分とする
溶液 脱水剤と脱水触媒をポリアミド酸溶液に混合する混合方
法としては、ポリアミド酸溶液に対して、化学硬化剤
(脱水剤と脱水触媒及び必要に応じて有機溶媒の混合
液)を添加する方法が一般的に発想される方法である
が、その場合、成型に用いられるポリアミド酸溶液が一
般的に高粘度であるのに対して化学硬化剤は低粘度なの
で、混合が困難であり、回転羽ミキサー等による高速混
合が必要となる。この方法に比較し、本発明の方法によ
れば、混合するA液とB液の粘度に大きな差が生じにく
いため、よりマイルドな混合条件で均一な混合が可能と
なる。例えば、スタティックミキサーを用いての混合も
可能であり、混合による発熱の防止、混合による樹脂分
子鎖の切断の防止、さらには樹脂に無機フィラーを添加
する場合にはそれら無機フィラーの破壊防止の効果があ
る点でより優れている。またバッチ式の生産工程となる
成型品の場合、必要な量だけを確実に混合できる本発明
の方法が、連続での混合を前提とする上記方法より優れ
ている。
【0028】この方法は、脱水剤と脱水触媒の硬化能力
が、非加熱下(具体的には20℃以下)にあっては、脱
水剤単独、あるいは脱水触媒単独では発揮されず、これ
らが同一溶液中に共存して初めてポリアミド酸の硬化反
応を開始せしめるという特徴を利用した、独特な方法で
あると言える。従って、混合前のA液とB液の液温は、
20℃以下が適当である。 なお、ポリアミド酸溶液、
脱水剤および脱水触媒をスタティックミキサーを用いて
混合する方式としては、以下の4通りの方法が考えられ
るが、本発明において第4の方式を採用した理由は、ス
タティックミキサーを用いる場合、前述したように2つ
の溶液の粘度が近い方が均一で容易な混合が可能である
ためである。 第1の方式:一方の液にポリアミド酸樹脂溶液、他方の
液に少なくとも脱水剤と脱水触媒を含む溶液を用いる。 第2の方式:一方の液にポリアミド酸樹脂と脱水剤を含
む溶液、他方の液に脱水触媒を含む溶液を用いる。 第3の方式:一方の液にポリアミド酸樹脂と脱水触媒を
含む溶液、他方の液に脱水剤を含む溶液を用いる。 第4の方式:一方の液にポリアミド酸樹脂と脱水剤を含
む溶液、他方の液にポリアミド酸樹脂と脱水触媒を含む
溶液を用いる。
【0029】[ポリイミド成型体製造用装置]上記の製
造法を実現できる製造装置として、以下の(イ)〜
(ニ)の各装置から構成されるポリイミド成型体製造用
装置を挙げることができる。 (イ)前記A液用のサービスタンク (ロ)前記B液用のサービスタンク (ハ)前記A液と前記B液を各々のサービスタンクから
定量的に払い出す装置 (ニ)サービスタンクから払い出された前記A液と前記
B液とを混合して混合溶液にする混合装置 本発明ではポリアミド酸を主成分とする有機溶媒溶液
(A液、B液)を2種用意し、一方には脱水剤、他方に
は脱水触媒を予め含有せしめておき、A液とB液とを、
混合せしめる事により硬化反応を開始させるのである
が、この際、重要なことは、この一連の作業が連続で気
層を含まない状態で行われることである。このため、
A、B各液のサービスタンク(イ及びロ)から、各液を
定量的に払い出す装置(ハ)、混合装置(ニ)を接続す
る配管は連続した一連の装置として構築されるのが好ま
しい。それにより、気泡の含有による製品の欠陥などを
防止する事ができる。
【0030】また、サービスタンク(イ及びロ)や配管
は、A、B各液の液温が20℃を越えないように冷却機
構を備えたものが好ましい。さらに、(ニ)の混合装置
にも冷却機構が設けられていることが好ましい。
【0031】また、混合装置は、上述したようにスタテ
ィックミキサーが好ましい。
【0032】なお、(ハ)の各液を定量的に払い出す装
置としては、ギアポンプが好ましく、高粘度のポリアミ
ド酸溶液をサービスタンクから精度良く払い出して混合
装置に供給することが可能である。
【0033】[より好ましい実施態様]本発明の、より
好ましい製造方法と装置を以下に説明する。
【0034】まず、ポリイミド成型体製造用装置は、上
記で述べた構成に加えて、(ホ)前記混合溶液が充填さ
れ、成型体の形状を規定する成型用金型を有している事
が好ましい。
【0035】このような装置を用いて、以下の(1)〜
(3)の各工程を進めることによって、目的のポリイミ
ド成型体が製造できる。 (1)前記A液と前記B液とを混合して得た混合溶液を
金型内に注入する。 (2)該混合溶液中のポリアミド酸が自己支持性のある
半成型体に変化した後、該半成型体を型内から取り出す
か、あるいは型の一部を離脱せしめる。 (3)該半成型体を加熱し、該半成型体の表面及び内部
に存在する溶剤を乾燥してポリイミド成型体とする。
【0036】なお、ここで言う半成型体とは、ポリアミ
ド酸のイミド化が不完全及び/又はポリアミド酸溶液の
溶媒の乾燥が不完全ではあるものの、成型体の形状がほ
ぼ出来上がった、流動性のない(自己支持性のある)物
体のことを指している。
【0037】また、このような半成型体は、まだ多くの
溶剤が内部に含まれていたり表面に付着しているので、
これを乾燥させるために上記(2)の工程では半成型体
を型内から取り出すか、あるいは型の一部を離脱せしめ
て、解放系とするのである。
【0038】2つの反応性成分をそれぞれ計量し、これ
をスタティックミキサー等により混合して成形型に注入
するという一連の工程は、LIMまたはRIMと呼ばれ
る工法として知られている。しかしながら、本発明はR
IM機の単純な応用ではなく、ポリイミド成形独特の問
題点を克服し、その特徴を利用した物である点で、大き
く異なる。以下にその点を詳細に説明する。
【0039】通常RIM(またはLIM)成型では、成
型前に混合された複数成分が直接反応して反応生成物を
形成するものであるが、本発明ではA液、B液ともに樹
脂成分としては共通のポリアミド酸を組成として含有す
るものであり、硬化はA液中の成分とB液中の成分が直
接反応生成物を生成するのでなく、A液中の脱水剤とB
液中の脱水触媒が混合される事により、高温での加熱な
しでもポリアミド酸のポリイミドへの転換反応を開始せ
しめるというメカニズムとなっている。
【0040】また通常のRIM(またはLIM)成形に
おいては、無溶剤型の反応成分系を用いるものであり、
型内で硬化したものがそのまま成型体となる。従って硬
化物を取り出す際には硬化した固まりを型から強制的に
抜き取る操作が必要であり、型表面に離型剤を用いたと
しても、かなりの力をかけて脱型することになる。その
ため、一定以上の径の棒状体等では有用であるが、チュ
ーブやベルトのようなフィルム状のものでは、脱型の際
に製品自体が変形を起こすことになり、不向きである。
本発明に於いては、ポリアミド酸溶液がポリイミド化す
るに従い、樹脂の許容含溶剤量が低下していくために非
許容量の溶剤が硬化樹脂表面に沁み出してくることを利
用し、この沁み出し液を一種の潤滑剤として利用する事
により型からの容易な取外しを実現するというユニーク
な方法なのである。
【0041】本発明におけるポリイミド成型体とは、主
にポリイミドからなる対称形管状、非対称形管状、を含
む様々な形状のものをいうが、特に本発明が有効で、か
つ工業的に利用範囲の広い管状体(ベルトあるいはチュ
ーブ状の形態)を例にとって、さらに具体的に本発明の
実施形態を説明する。
【0042】言うまでもないことだが、管状のポリイミ
ド成型体を製造する場合には管状のキャビティが形成さ
れた金型が適している。
【0043】A液とB液が混合され、少なくとも、ポリ
アミド酸、有機溶媒、脱水剤および脱水触媒からなる混
合溶液は、流動性を維持している間に成型用金型の管状
のキャビティ内に供給される。ポリアミド酸が化学硬化
剤の効果で流動性が無くなり自己支持性のある半成型管
状体に変化したら、溶剤を乾燥させるために半成型管状
体を成型用金型から取り出し、この自己支持性のある半
成型管状体を加熱用の型に外嵌し、加熱し、溶剤の乾燥
とイミド化を進める。
【0044】成型用金型が、相対的に移動可能な内型と
外型からなる筒型である場合には、半成型管状体の乾燥
は外型を離脱せしめるだけでも可能となるので、その場
合には半成型管状体を成型用金型から取り出す必要はな
い。外型を離脱せしめた成型用金型の内型上で加熱し、
溶剤の乾燥とイミド化を進めれば良い。。
【0045】相対的に移動可能な内型と外型からなる筒
状の金型内へのポリアミド酸溶液の供給とその後の管状
体成型工程を更に詳しく説明する。脱水剤と脱水触媒が
混合された後のポリアミド酸溶液(混合溶液)は、筒状
型に供給され、型内を満たす。この工程は大きく2種の
方法で実施される。第一の方法は、予め外型と内型が筒
状空間を形成するようにセットされており、該空間に混
合溶液が注入される方法である。第二の方法は、外型と
内型は相互に移動可能であり、混合溶液が供給される段
階では、内型と外型は離れており、いずれかの型に樹脂
が供給されたのち、型のいずれかまたは両方が移動する
ことにより結果として筒状空間が形成されて、該空間に
混合溶液が充填される形をとるものである。
【0046】それぞれの方法の場合について詳細に説明
する。
【0047】第一の方法の場合、供給された混合溶液が
空気を噛み込む事の無いように型内に充填されることが
特に重要となる。そのために例えば下記のようないくつ
かの工夫が行いうる。混合溶液を円筒状の型内に供給す
るにあたって、供給口も円筒状にし、全周にわたって均
一に樹脂が充填するようにする。型と供給口の接続にあ
たって、接続部分で空気の噛み込みがおこらないよう
に、型同士の寸法精度を高いものにすることも重要であ
る。型を縦置きにし、型の下部より混合溶液の充填を行
うようにすれば、泡は上方に押し出されるので良好であ
る。また型内を満たすのに必要な量より大目の量を供給
することにより、注入時に一旦入った泡を押し出して安
定化した後に供給を止める方法も有効である。原料の歩
留まりは低下するものの、製品になった後に欠陥により
歩留まりが低下するのに対して、原料時点の歩留まりは
影響が小さいため、泡欠陥防止のために混合溶液を余分
に使うことには意味がある。
【0048】次に第二の方法について、具体例をいくつ
か示すことによって説明を加える。
【0049】例えば図1−1のような状態で、外型とな
る型の内壁に混合溶液を十分量塗布した状態にしてお
く。ここに図1−2のように内型を挿入し、筒状空間に
混合溶液が満たされる状態とする。この際余分な混合溶
液は型からはみ出す。はみ出した余分な混合溶液は、工
程の適当な部分で除去することができる。他の例として
外型は図2−1のように容器状になっていてもかまわな
い。この場合、混合溶液は外型の内壁に塗布されている
必要は無く、容器底部に溜まった状態にしておけば、こ
こに内型が挿入されることにより、図2−2のように自
動的に、樹脂が筒状空間に満たされていくことになる。
【0050】上記筒状型の材質としては、金属、ガラ
ス、セラミックス、樹脂などを適宜使用できる。型の塗
布表面は、形成されたポリイミド管状体を取り外しやす
くするため、ガラスやフッ素樹脂などでコートしてお
く、あるいは剥離剤を塗布しておく等の表面の好剥離化
処理を施しておく事ができる。ただし、化学硬化剤を混
合することによりポリアミド酸はポリイミドに変換し、
そのため樹脂の許容含溶剤量が減少し、樹脂は自発的に
溶剤を滲出させる。この滲出液が自己支持性を持った樹
脂と型との間に液膜として形成され、これが潤滑剤とな
って自己支持性を有した半成型体をスムーズに取り外す
ことができるため、筒状型をポリアミド酸が自己支持性
を発現するまでの中間的硬化用型としてのみ使用する場
合には、従来のような型の離型性に関する工夫は必ずし
も必要ないのも本法の利点である。また、前述した内型
をそのまま最終加熱乾燥型としても利用する場合も、従
来の塗布法であると、樹脂の硬化後の剥離性と、塗布時
のハジキ防止が二律背反となり、それを解決するために
樹脂粘度や型の表面性状に制限が加えられたのである
が、本法であれば、そのような制限を加える必要が無
い。
【0051】成型用金型の表面粗さ(Ra)は、10μ
m以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは1μm
以下であることが望ましい。表面粗さが10μm以上で
あると、繰り返しの使用において、ポリアミド酸溶液や
溶液中の無機紛体が表面に付着堆積し、樹脂管状体の離
型性を低下させる可能性もある。ただし、完成したポリ
イミド管状体の表面にさらに樹脂をコートする事が必要
な場合、コートされる樹脂の密着性を向上させるため一
定レベルの表面の凹凸はあったほうが好ましい場合もあ
る。この場合、表面粗さを一定レベルに規定するため
に、上述の付着堆積の問題を回避でき高い離型性を確保
できる範囲で、型の表面を研磨などの物理的な表面加工
をすることも適宜選択されうる。この場合も、上述の潤
滑性は有利に働き、化学硬化剤を用いない場合に比較し
て樹脂の付着自体が起こりにくいため、より自由度が高
いのである。
【0052】ここまで述べてきた方法において、混合装
置から成型用金型内に、脱水剤と脱水触媒が混合された
ポリアミド酸溶液を供給するにあたり、混合装置内を含
めて金型内に到達する以前の配管中でのポリアミド酸の
硬化を防ぐ方法として、反応の進行を遅くするために冷
却を行う事は有効であるが、それでもなお、ライン中の
樹脂溶液の滞留などにより偏在的に硬化が進行すること
が懸念される場合、いずれかの溶液に常温硬化阻害剤を
混合しておき、型に混合溶液を注入後に加熱により部分
イミド化させて非流動化させる方法も取りうる。そのよ
うな常温硬化阻害剤の例としてはアセチルアセトンをあ
げることができる。
【0053】化学硬化剤成分(脱水剤と脱水触媒)をポ
リアミド酸溶液と混合してからポリアミド酸溶液が自己
支持性を有するようになるまでの時間は、化学硬化剤の
濃度により制御することができる。その時間をさらに短
くするための手段として、ポリアミド酸溶液中に、塩化
金属化合物を添加する方法も行われ得る。塩化金属化合
物としては、金属塩化物、金属ヨウ化物、金属硝酸塩等
種々のものが適用可能で、より具体的にはSnCl2
AuI3、AgNO3等を挙げることができる。
【0054】また、ポリアミド酸溶液ならびに脱水剤や
脱水触媒中の水分はできるだけ少なくなるよう制御する
のが好ましい、水分の存在は化学硬化剤の成分である酸
無水物を開環させる効果があるため、速やかな化学硬化
を妨げ、その結果化学硬化剤混合後のポリアミド酸が自
己支持性を得るまでの時間が長くなってしまい、生産性
を低下させる。また水分は、ポリアミド酸高分子そのも
のの分解にも寄与しうることから化学硬化剤混合前か
ら、できるだけポリアミド酸溶液中の水分は少ない方が
好ましい。具体的には、水分は0.5%以下さらに好ま
しくは500ppm以下とすることが好ましい。含水分
量を下げるための方法としては、用いる溶媒を予め脱水
処理されたものを用いる、作業をドライエアーや不活性
ガス気流下で行うなどの方法を取りうる。
【0055】次にポリアミド酸が化学硬化剤の効果によ
り自己支持性が発現し、型内で部分硬化したポリアミド
酸(あるいは部分的にポリアミド酸部位を残したポリイ
ミド)管状体が形成された後の工程について説明する。
【0056】これ以降の工程は大きく二つの工程をとる
ことができる。一つは、管状体形状を規制した筒状外型
と筒状内型のうち筒状外型のみを外し、筒状内型ごと、
該管状体を加熱・焼成し、ポリイミド管状体を形成する
方法。もう一つは、自己支持性を発現した管状体を焼成
用の別の型に挿入しなおして、これを加熱・焼成するこ
とでポリイミド管状体を形成する方法である。
【0057】それぞれの方法の特徴に付いて説明を加え
る。第一の方法、すなわち内型をそのまま焼成用型とし
て用いる場合についてであるが、この場合内型には、後
の焼成の工程で扱いやすいように、内型の形状を工夫す
ることができる。例えば内型の両端部にハンドリング用
の棒状突起を形成しておき、この部分を使って、焼成炉
中を移動させるといったことが考えられる。また、内型
側に自己支持性を発現した管状の半成型体が残るように
するため、外型の表面を内型の表面より樹脂離れの良い
組成または/かつ形状にする方法や、混合溶液を型から
余分にはみ出すような形で注入し半硬化させ、はみ出し
た部分を内型ごと押さえて外型を外すなどの方法をとる
こともできる。内型をそのまま焼成型として用いる方法
は、半成型体を嵌め換える必要なく連続した工程をとる
ことができるため、より生産性に優れる。
【0058】第二の方法、すなわち、自己支持性を発現
した管状体を別の型に挿入して加熱・焼成する方法であ
るが、この場合、まず自己支持性を発現した半成型体を
型から取りはずし、その後焼成用型に再挿入する方法も
取り得るし、あるいは相互に移動可能な筒状外型と筒状
内型のうち、内型のみを脱し、これに代わって焼成用型
を挿入し、その後筒状外型を脱す方法がとりうる。この
際、図3のように内型を外すのと同時に焼成用型を挿入
する方法も取り得る。半成型体が操作上のミスなどによ
り破損を受けにくいという点で、型から一旦取り外すこ
との無い方法のほうが、より好ましい。
【0059】このような移し替えを行う方法は、加熱・
焼成用の型の表面に対する制限がより緩和されるため、
むしろ脱型のための工夫を積極的に型に施すことができ
るという利点がある。例えば、焼成型を表面に微細な穴
を多数有し、型の内側から外側に向かって空気を放出で
きるような連続的空孔を有する通気性の多孔体(例とし
て、焼結金属やセラミックスが挙げられる)を用い、焼
成後、空気を放出することにより、ポリイミド管状体と
型の間に空気層を形成し、そのことにより容易にポリイ
ミド管状体を型から外すことができる。混合溶液を注入
し自己支持性を発現させるための型にこのような多孔体
を用いることは、混合溶液が穴の中にわずかであっても
滲入するため好ましくない。したがって、このような型
の移し替えの工程が必要である。自己支持性発現のため
の型の内型をそのまま焼成型として用いる方法に比べ、
1工程余分に必要となるものの、脱型のための型の工夫
を行いやすいため、樹脂の組成などによっては、結果的
にこの方法の方が生産性が高くなることもある。樹脂の
型への密着性の違い等に応じて、両者を使い分けること
ができる。
【0060】自己支持性が発現した管状の半成型体を2
重管型から取り外したり、あるいは、外型のみを取り外
すためには、半成型体につかみしろ、あるいはおさえし
ろが必要となる。それを形成するための方法としては、
例えば過剰に樹脂を注入し、端部より樹脂がはみ出した
状態で半硬化させることができる。また、外金型の少な
くと片方の端部を分割型とし、その部分を半硬化後に取
り外す方法も有効である。
【0061】移し替えを行う場合においても行わない場
合においても、焼成用の内型に自己支持性を有した半成
型体が外嵌された状態(外型がない状態)とした後、加
熱により溶剤の乾燥とイミド化を進行させる。熱で自己
支持性を発現させる従来の方法(熱硬化法)では、自己
支持性を発現することは溶剤量が相当量減少しているこ
とを意味するが、本法の場合、自己支持性が発現した状
態で、樹脂はまだ大量に溶剤を含有している。従って、
乾燥に際しては、主たる溶媒の沸点以下から加熱を開始
し、順次焼成温度を上げることにより、発泡現象や熱ス
トレスによる破壊を避けることができる。
【0062】強度発現に必要な温度まで加熱したら系を
冷却し、目的のポリイミド管状体を得ることができる。
強度発現に必要な温度はポリイミドの組成によっても異
なるが、概ね350℃〜550℃である。
【0063】冷却の後、ポリイミド管状体を型より取り
外すのであるが、この際に上述のように、金型を多孔体
としておいて、この多孔体の内側から外側に向かって空
気放出させながら行えば容易に取り外すことができる。
また、型に超音波振動子を取り付け、超音波振動により
密着を解消することも有効である。多孔体としては、セ
ラミックス多孔体、金属多孔体、カーボン多孔体等を用
いうる。また、多孔体は焼結体のような連続体だけでな
く、例えば板状金属にパンチングやドリルにより微細な
穴を設け、これを筒状に溶接するといった方法でも得ら
れる。その際、板状金属を加工した筒状体だけでは強度
上不十分な場合、そのさらに内側により粗な状態で空気
放出用の穴のあけられた金型をはめ込むなどの方法を取
ることもできる。(図4参照)
【0064】
【実施例】本発明に関わる実施例のひとつは以下の通り
である。
【0065】(実施例)攪拌羽がついた容器にジメチル
ホルムアミド(DMF)8.20kgを入れ、窒素気流
下4、4´−ジアミノジフェニルエーテル862gを溶
解し、これにピロメリット酸二無水物を938gを少量
づつ加え、よく攪拌した。系の粘度が約300Pa・s
ecになったところで攪拌を停止し、ポリアミド酸溶液
を得た。次に、石原産業社FT−300を1.05kg
とDMF4.50kgを別の容器に入れ、よく攪拌し、
さらに超音波分散機にかけることで分散液中の金属フィ
ラーを均一に分散させフィラー分散液を得た。上記で得
られたポリアミド酸溶液に対して、上記で得られた分散
液を溶かし入れ、よく攪拌した。
【0066】上記樹脂混合溶液を7.82kg取り分
け、これに0.13kgのイソキノリンを加えて、よく
攪拌し、攪拌を継続しながら減圧下において脱泡を行っ
た。これをB液とする。
【0067】同様に上記樹脂混合用液7.73kgに無
水酢酸0.22kgを加え、同様に攪拌、脱泡を行っ
た。これをA液とする。
【0068】A液とB液をそれぞれ200gづつを計量
し、これをスタティックミキサー(10mmφ、翼数2
4)で混合して下記金型のクリアランス中に注入した。
【0069】該金型は、長さ400mm、外径81mm
のSUS製円柱金型(内型)と、長さ400mm内径8
2.4mm外形92.4mmのSUS製円筒状金型(外
型)とを円盤状台座の上でクリアランスがほぼ均一にな
るように縦置きでセットされたものである。なお外型内
面はSUSの通常の表面仕上げ状態のままであり、内型
の外面には剥離性をより向上させるためのフッ素樹脂コ
ートを施した。
【0070】外型下部に設けた樹脂注入口より上述の送
り出された化学硬化剤混合溶液を注入し上部より若干は
み出す状態で注入を中止した。
【0071】30℃の環境下7分経過した段階で、塗布
されたポリアミド酸溶液膜は自己支持性を得ており、ま
ず内型を取り外した。内型が存在した空間に、外径80
mmの多孔性金属(神戸製鋼社製ヒポラス)の円筒(こ
れを焼成型と称する)に挿入した。なお、この焼成型は
内側から外側に向かって空気を放出させるための空気導
入口が設けられており、焼成型外周表面にはフッ素系の
剥離剤をスプレーしておいた。外型外周に設けられたヒ
ーターにより、約60℃程度まで加熱することで、半硬
化ポリアミド酸管状体は外型内面との密着力以上の収縮
力を発生させ、そのことにより外型から剥離し、焼成型
の外面に密着した。この焼成型ごと半硬化ポリアミド酸
管状体を100℃で10分、200℃で5分、300℃
で5分、400℃で3分加熱し、管状の半成型体をほぼ
完全にイミド化すると同時に残溶剤を揮発せしめた。続
いて型を室温まで徐冷した。続いて焼成型の内側から外
側に向けて空気を放出せしめることで管状体を容易に取
り外す事ができた。目的のポリイミド管状体を得た。
【0072】以上、本発明に係わるポリイミド成型体
(管状体)の製造方法について説明したが、本発明は上
述の形態に限定されるものではない。例示するまでもな
く記述した範囲内で種々の変形を加えた態様で実施でき
るものである。
【0073】
【発明の効果】本発明に係るポリイミド成型体の製造法
は、以上説明したように、ポリアミド酸をイミド化して
得られるポリイミド成型体の製造方法であり、イミド化
について化学的硬化法を適用するにあたり、ポリアミド
酸樹脂溶液に脱水剤を混合した溶液と、ポリアミド酸樹
脂溶液に脱水(硬化)触媒を混合した溶液を、混合させ
る工程を用いる事を特徴とするものである。さらに、両
溶液が混合された後、これを金型内に注入して自己支持
性を発現させた後、乾燥可能な状態に金型の嵌め替え等
を行い、加熱・乾燥することにより、ポリイミド成型体
を得ようとするものである。
【0074】このことにより、化学硬化剤の混合に際し
て、温度の上昇もなく、また添加した無機物の破壊など
も起こさずに、安定した状態で成型可能である。また、
金型内での自己支持性発現という工程を経ることで、極
めて正確に管状体の厚みを規制し、塗布法などに比較し
て一旦規制した厚みが変化することなく、しかも化学硬
化剤の効果で短時間で自己支持性を発現し、なおかつ自
己支持性を発現した成型体を型より容易に脱着でき、極
めて操作容易に製造が可能である。化学硬化剤を混合し
た溶液を次々に多数準備された型に注入していくことに
より、半連続的に生産が可能であり、極めて高い生産性
を実現できるとともに、上述のような作業性のよさによ
り破損などが生じにくく、また閉鎖された空間で初期の
固化がなされるため、ゴミ等の付着による不良も少ない
など歩留まりの向上効果も顕著である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 相対的に移動可能な内型と外型からなる筒状
の金型内へのポリアミド酸溶液の供給方法の一例を示す
図である。
【図2】 相対的に移動可能な内型と外型からなる筒状
の金型内へのポリアミド酸溶液の供給方法の別の一例を
示す図である。
【図3】 内型を外すのと同時に焼成用型を挿入する方
法を示す図である。
【図4】 筒状型の強度が不十分な場合に、そのさらに
内側により粗な状態で空気放出用の穴のあけられた金型
をはめ込む方法を示す図である。
フロントページの続き Fターム(参考) 4F201 AA40 AC05 AG08 AG16 BA01 BC02 BC31 BD01 BK06 BN44 BQ45 4F204 AA40 AG08 AH12 AH33 EA03 EA04 EB01 EE01 EF01 EF27 EK13 EK17 EK24 EK25 EW01 EW05 EW06

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも以下に示すA液とB液とを混
    合する工程を有することを特徴とする、ポリイミド成型
    体の製造方法。 A液:脱水剤を含有し、ポリアミド酸を主成分とする溶
    液 B液:脱水触媒を含有し、ポリアミド酸を主成分とする
    溶液
  2. 【請求項2】 前記A液と前記B液とを混合する手段
    が、スタティックミキサーによるものである事を特徴と
    する、請求項1に記載のポリイミド成型体の製造方法。
  3. 【請求項3】 以下の各工程を有する請求項1または請
    求項2に記載のポリイミド成型体の製造方法。 (1)前記A液と前記B液とを混合して得た混合溶液を
    金型内に注入する工程 (2)該混合溶液中のポリアミド酸が自己支持性のある
    半成型体に変化した後、該半成型体を型内から取り出す
    か、あるいは型の一部を離脱せしめる工程 (3)該半成型体を加熱し、該半成型体の表面及び内部
    に存在する溶剤を乾燥してポリイミド成型体とする工程
  4. 【請求項4】 混合前の前記A液と前記B液の液温が、
    20℃以下である事を特徴とする、請求項1ないし請求
    項3のいずれか1項に記載のポリイミド成型体の製造方
    法。
  5. 【請求項5】 成型体の形状が管状体である事を特徴と
    する、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の
    ポリイミド成型体の製造方法。
  6. 【請求項6】 以下の(イ)〜(ニ)の各装置から構成
    される事を特徴とする、ポリイミド成型体製造用装置。 (イ)前記A液用のサービスタンク (ロ)前記B液用のサービスタンク (ハ)前記A液と前記B液を各々のサービスタンクから
    定量的に払い出す装置 (ニ)サービスタンクから払い出された前記A液と前記
    B液とを混合して混合溶液にする混合装置
  7. 【請求項7】 前記混合装置が、スタティックミキサー
    であることを特徴とする、請求項6に記載のポリイミド
    成型体製造用装置。
  8. 【請求項8】 以下の(ホ)の装置を有する事を特徴と
    する、請求項6または請求項7に記載のポリイミド成型
    体製造用装置。 (ホ)前記混合溶液が充填され、成型体の形状を規定す
    る成型用金型
  9. 【請求項9】 金型により規定される成型体の形状が管
    状である、請求項8に記載のポリイミド成型体製造用装
    置。
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