JP2004148706A - ポリイミド筒状体の製造方法 - Google Patents

ポリイミド筒状体の製造方法 Download PDF

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Tomohiro Ozuru
大▲づる▼  智博
正美 ▲柳▼田
Masami Yanagida
Hitoshi Nojiri
仁志 野尻
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Abstract

【課題】電子写真機器やレーザービームプリンタなどに用いるポリイミド筒状体において、溶媒痕または気泡痕がなく、また均一でムラがなく高品質であり、さらに工業的にサイクルタイムの短い、ポリイミド筒状体の製造方法を提供する。
【解決手段】部分イミド化したポリアミック酸のゲル筒状体を円筒形状の焼成用型に外嵌し、ゲル筒状体外表面の溶媒又はゲル筒状体と焼成用型間にある気体若しくは溶媒を取り除いた後、焼成することを特徴とするポリイミド筒状体の製造方法。例えば、減圧状態下にゲル筒状体をおいて溶剤若しくは気泡を取り除く、またはかきとり器を用いてゲル筒状体の溶剤若しくは気泡を取り除く方法により上記課題を解決する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真記録装置において像の中間転写体となる中間転写ベルトや、像の転写を兼用しつつ印刷シートの搬送を行う転写搬送ベルト、さらにはトナーの熱定着に用いられる定着ベルトなどに使用されるポリイミド樹脂を主成分とする筒状体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリイミド樹脂は、優れた耐熱性、寸法安定性、機械強度、化学的安定性等を有するため、例えば、フレキシブルプリント基板、耐熱電線絶縁材料等に代表される種々の用途に使用されている。また、その筒状成形物は、同様の理由から、例えば、精密駆動伝達ベルトや複写機或いはレーザービームプリンターなどの電子写真装置用の熱定着用ベルト、中間転写ベルト等への応用が期待されている。
【0003】
このポリイミド筒状体は、従来、以下のような方法で製造されていた。例えば、溶媒中にポリアミック酸を溶解(若しくは分散)させたポリイミド前駆体溶液(若しくは分散液)を、表面処理を施した円柱状又は円筒状の金型外表面に塗布する(例えば、特許文献1、2参照)、或いは円筒状の金型内表面に塗布し(例えば、特許文献3参照)、厚みを調整した後、加熱によって溶媒を蒸散させ、さらにイミド化を進めるために別の型に外嵌し、350℃から550℃程度の高温で加熱することによってポリイミド筒状体を製造していた。
【0004】
高品質のポリイミド筒状体を得るためには、溶剤を蒸散し自己支持性をもつ部分イミド化されたポリアミック酸の筒状体(以下、ゲル筒状体とも言う。)の時点で欠陥のないゲル筒状体である必要がある。しかしながらそれ以上に、高温でさらにイミド化を促進する工程で欠陥を発生させないことが重要である。
【0005】
なかでも以下の方法、例えば、ポリアミック酸を主成分とするポリイミド前駆体溶液とイミド化を促進するための化学キュア剤を混合した後、該混合溶液が流動性を維持している間に筒状に成形する方法であって、ポリアミック酸が化学キュア剤によって部分イミド化して非流動化した後に、この自己支持性のあるゲル筒状体を加熱硬化用の型に外嵌して加熱・乾燥する方法は、型を用いて成形するため、筒状に成形する時点において筒状体の寸法を正確に規定できる点や、化学キュア剤の働きによって溶媒の除去が促進される点から、工業的な生産方法として好適である。
【0006】
しかしながら、ポリアミック酸が部分イミド化したゲル状態は、溶液から固体への遷移状態であるため非常に不安定である。例えば、ゲル筒状体は収縮し続けようとするし、例えば、化学キュア剤を用いた場合は、溶媒が常にしみ出てくる。筒状に成形したものを、ゲル筒状体の収縮が止まるまで、または溶媒のしみ出しが止まるまで放置することは工業的に好ましくなく、ゲル筒状体の収縮や溶媒のしみ出しを加味して取り扱うことが必要となる。
【0007】
【特許文献1】
特開昭64‐22514号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平3‐180309号公報
【0009】
【特許文献3】
特開昭60‐166424号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記溶剤のしみ出し等が及ぼす悪影響を解決することを課題とする。溶剤が残ったまま焼成するとできあがったポリイミド筒状体に、溶剤痕が生じる。また、焼成用の型とゲル筒状体の間に溶剤や気泡が残ってしまうと、同様に溶剤痕や気泡痕が発生する。この溶剤痕や気泡痕が存在する箇所は、物性が他の箇所と異なるため、均一なポリイミド筒状体とは言えなくなる。このような溶媒痕または気泡痕のない、均一でムラのないポリイミド筒状体を得る方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、工業的に極めて有用な、生産性に優れた、ポリイミド筒状体の製造方法を確立するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、部分イミド化したポリアミック酸のゲル筒状体を円筒形状の焼成用型に外嵌し、ゲル筒状体外表面の溶媒又はゲル筒状体と焼成用型間にある気体若しくは溶媒を取り除いた後、焼成することを特徴とするポリイミド筒状体の製造方法に関する。
【0013】
好ましい実施態様は、減圧雰囲気下で、ゲル筒状体外表面の溶媒又はゲル筒状体と焼成用型間にある気体若しくは溶媒を取り除くことを特徴とする前記のポリイミド筒状体の製造方法に関する。
【0014】
更に好ましい実施態様は、リング状、板状、若しくはそれらが分割された形状のかきとり器を用いて前記ゲル筒状体の外表面をかきとることにより、ゲル筒状体外表面の溶媒又はゲル筒状体と焼成用型間にある気体若しくは溶媒を取り除くことを特徴とする前記いずれかに記載のポリイミド筒状体の製造方法に関する。
【0015】
更に好ましい実施態様は、前記ゲル筒状体を固定するために、ゲル筒状体の端部に治具を取り付けることを特徴とする前記いずれかに記載のポリイミド筒状体の製造方法に関する。
【0016】
更に好ましい実施態様は、前記ゲル筒状体よりしみ出る溶剤を一箇所に固定させない焼成装置を用いて焼成することを特徴とする前記いずれかに記載のポリイミド筒状体の製造方法に関する。
【0017】
更に好ましい実施態様は、前記焼成装置が焼成用型の中心軸を水平方向から0度より大きく90度以下の範囲で傾斜させた構造を有することを特徴とする前記いずれかに記載のポリイミド筒状体の製造方法に関する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明におけるポリイミド筒状体の製造方法についての実施態様を詳しく説明する。
【0019】
本発明に係るポリイミド筒状体は、樹脂の主成分がポリイミドであることが重要である。ここで、樹脂の主成分とは、全樹脂成分中、ポリイミドが50重量%以上であることを言い、更には70重量%以上であることが好ましい。
【0020】
本発明に係るポリイミド筒状体において、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸は、例えば、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分を有機極性溶媒中で重合反応させることにより得ることができる。
【0021】
テトラカルボン酸二無水物成分としては特に制限はなく、例えば、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族または脂環式テトラカルボン酸二無水物;ピロメリット酸二無水物、3,3´4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4´−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4´−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4´−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3´,4,4´−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4´−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4´−ジフェニルメタン二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物;1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0022】
ジアミン成分としては、ジアミンであれば特に限定されないが、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4´−ジアミノジフェニルメタン、4,4´−ジアミノジフェニルエタン、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル、4,4´−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4´−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4´−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4´−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4´−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4´−ジアミノベンズアニリド、3,5−ジアミノ−3´−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5−ジアミノ−4´−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4´−ジアミノジフェニルエーテル、2,7−ジアミノフルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4´−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2´,5,5´−テトラクロロ−4,4´−ジアミノビフェニル、2,2´−ジクロロ−4,4´−ジアミノ−5,5´−ジメトキシビフェニル、3,3´−ジメトキシ−4,4´−ジアミノビフェニル、4,4´−ジアミノ−2,2´−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4´−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、1,3´−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4´−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4´−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2´−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4´−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン;ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミンまたは脂環式ジアミン等を挙げることができる。これらのジアミン化合物は単独または2種以上組み合わせて用いることができる。ジアミンは、焼成後のポリイミドの熱力学的な物性の点から、芳香族ジアミンを用いることが好ましいが、特に限定されるものではない。
【0023】
ここで前記ポリアミック酸の生成反応に使用される有機極性溶媒としては、ポリアミック酸を溶解するものであれば特に限定されないが、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどをあげることができ、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素も使用可能である。これらは単独または混合物として用いることができる。
【0024】
本発明において、ポリアミック酸溶液には、得られるポリイミド筒状体の抵抗値、強度、耐紫外線性、耐湿性等を制御するために、樹脂の特性制御のために一般的に用いられている公知の種々の添加物を添加することができる。
【0025】
例えば、ポリイミド筒状体を電子写真装置の転写もしくは中間転写ベルトとして用いる場合、その体積抵抗値を1×10〜1015Ω・cm、好ましくは1×10〜1012Ω・cmの範囲に制御する事が極めて重要であるが、一般的に絶縁性樹脂の導電化・抵抗値低下・静電気防止などの手段に用いられる、カーボンブラックをはじめとする導電性無機粉体を適量混合することにより、これを実現できる。カーボンブラック以外にも小径金属粒体、金属酸化物粒体、また酸化チタンや各種無機粒体・ウイスカーを金属酸化物などの導電性物質で皮膜形成したもの等を添加することにより、同様の効果を得ることができる。さらには、LiCl等のイオン導電性物質の添加も可能である。
【0026】
また例えば、電子写真装置のトナー定着ベルトとして用いることを考える場合、ポリイミド筒状体樹脂中に熱伝導性の無機紛体を導入することで、その熱定着能力を向上することができる。熱伝導性無機粉体としては、熱伝導機能を有する無機粉体であれば特に制限はなく、例えば窒化アルミニウム、窒化ホウ素、アルミナ、炭化珪素、珪素、シリカ、グラファイト等があげられる。なかでも、熱伝導機能が高く、離型効果を発揮し、化学的に安定で、無害であるという点で、窒化ホウ素が好ましい。
【0027】
また、駆動ベルト等の力伝達の用途では、より強度を向上させるために、例えばガラス短繊維のような強度向上のために通常用いられる種々の添加物を加えることもできる。上述の無機紛体類は、単独または複数の混合系で用いることが可能で、ポリイミド筒状体の用途に応じて適宜選択されうる。
【0028】
前記添加物の添加量は、添加物の種類及び目的によって適宜適量が選択されるが、概ねポリイミド固形分に対して1〜50重量%程度が用いられうる。添加量が50重量%を超える場合は、添加物の種類によってはポリイミドの強度を低下させる可能性がある。一方、添加量が1重量%以下では通常の物理的特性、例えば伝熱性や強度などを改良するための効果は得られにくい。ただし、例えばLiCl等のイオン導電性の化合物等は極めて少量の添加により電気抵抗を低下させる効果があるため、このような場合は上記添加量に制限されない。
【0029】
上記準備されたポリアミック酸を主成分とする有機溶媒溶液は、有機溶媒にポリアミック酸として5〜25重量%程度含有するのが適当である。ただし、無機添加物の添加量によって、この範囲を超えても良好な加工が可能な場合もあるため、特に限定されない。また、溶液の粘度としてはポリアミック酸の濃度と分子量である程度決まってしまうものであるが、低粘度のものは分子量が小さすぎて焼成後のポリイミド筒状体の物理的強度が低くなる場合があり、逆に高粘度のものは作業性が悪く、例えば移送用ポンプの能力が足りなくなるといった場合があるため、概ね1〜1000Pa・secの範囲が好ましい。
【0030】
ポリアミック酸の硬化反応は、熱による方法、ポリアミック酸を含む原料溶液中に化学キュア剤を導入する方法、光による方法など、従来既知の方法を好適に用いることができる。しかしながら、生産性向上や、弾性率などのその他物性を好適に制御できることから、ポリアミック酸を含む原料溶液中に化学キュア剤を導入する方法を、硬化反応の少なくとも一部に導入することが好ましい。
【0031】
上記の様なポリアミック酸を主たる成分とする溶液に化学キュア剤を反応させる方法としては、溶液状態で筒状に形成したものを化学キュア剤に浸漬させる方法、および溶液状態で化学キュア剤を混合する方法の2種があげられる。前者はゲル化が表面から進行するので、内部まで完全にゲル化するために、ある程度時間が必要である。後者は化学キュア剤を混合させた瞬間からゲル化が進行するため、混合状態で保存することが難しく、速やかに筒状体としての形状を形成する必要がある。
【0032】
筒状体に形成する方法としては、開口部がリング状であるダイより押し出す方法、円筒状の型の内側表面に塗付する方法、円筒状または円柱状の型の外側表面に塗付する方法、塗付されたものを回転させることによりレベリングさせる方法、図1のように円筒状または円柱状の内筒と円筒状の外筒の間に溶液を注入して筒状体に形成する方法などがある。
【0033】
このとき内筒外面と外筒内面の表面粗さ(Ra)は、10μm以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは1μm以下であることが望ましい。10μmより表面粗さが大きいと、繰り返しの使用において、樹脂や樹脂中の無機紛体が表面に付着堆積し、樹脂筒状体の離型性を低下させる可能性がある。ただし、完成したポリイミド筒状体の表面にさらに樹脂をコートする事等が必要な場合、コートされる樹脂との密着性を向上させるため、一定レベルで表面に凹凸があった方が好ましい場合もある。この場合、表面粗さを一定レベルに規定するために、上述した樹脂の付着堆積の問題を回避でき、高い離型性を確保できる範囲で、型の表面を研磨等により物理的に表面加工することも適宜選択されうる。この場合も、後述するようにしみ出た溶剤による潤滑性が有利に働き、化学キュア剤を用いない場合に比較して樹脂の付着自体が起こりにくいため、より円筒状型の表面の加工自由度が高いのである。
【0034】
本発明で、化学キュア剤とは、積極的な加熱を行わなくともポリアミック酸をポリイミドに閉環させる化学的な作用効果を有する薬剤を意味し、通常、酸無水物化合物及び/又は3級アミンを好適に用いることができる。
【0035】
酸無水物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水安息香酸が例示されるが、脱水作用を有するものであれば特に制限無く、種々のものを用いうる。なかでも、活性の点、更に反応後生成物が比較的低沸点で速やかに系から除かれる点から、無水酢酸が好適である。
【0036】
3級アミンとしては、イソキノリン等のキノリン類、β−ピコリン等のピコリン類、トリエチルアミン等の脂肪族3級アミン等をあげることができる。適度な活性を有し、でき上がったポリイミド筒状体の機械的強度を高めるために特に好ましいものとしては、イソキノリンやβ−ピコリンがあげられる。
【0037】
化学キュア剤の有効成分が、ポリアミック酸高分子そのものの溶解性を有しない場合、ポリアミック酸を溶解できる溶媒との混合物を化学キュア剤として用いることが好ましい。例えば、無水酢酸は多くのポリアミック酸に対して貧溶媒であるため、これに3級アミンを加えたとしても、無水酢酸が主たる成分となる該溶液をポリアミック酸に直接混合した場合、均一混合までに時間がかかってしまうのである。また均一に混合されるまでの間、部分的にポリアミック酸が十分溶解されていない状態となるため、この部分で未溶解ゲル分の発生や、添加された無機物の不均一化等、成形後の欠陥となりうる現象が起こる場合がある。
【0038】
ポリアミック酸を溶解できる溶媒の例としては、ポリアミック酸の重合溶媒として例示したものが同様に用いられ、なかでもポリアミック酸の重合に用いたものと同一の溶媒を用いる事が特に好ましい。該溶剤は化学キュア剤の成分に対して、概ね10〜50重量%程度用いられる。ただし、これについてもポリアミック酸の組成とそれを溶解する溶媒組成によって適量は異なるため、必要量は適宜選択されるものであり、特に限定されるものではない。
【0039】
ポリアミック酸溶液と化学キュア剤とを混合させる方法としては、浸漬法の場合はポリアミック酸溶液を円筒状の型の内側表面に塗付したもの、または円筒状若しくは円柱状の型の外側表面に塗付したものを化学キュア剤の浴槽に浸漬させ表面よりゲル化を進行させる方法がある。ただし、この場合は内部まで化学キュア剤が浸透する時間が必要である。開口部がリング状のダイより押し出したものを化学キュア剤の浴槽に浸漬させる場合は溶液のカーテンの両面よりゲル化が進行し、片面よりゲル化が進行する方法より短時間でゲル化が完了する。もうひとつの方法としては、ポリアミック酸溶液をミキサー装置中に導入し、別ラインでミキサー中に導入される化学キュア剤と連続的に混合均一化することがあげられる。
【0040】
この際、重要なことは、この一連の作業が連続で気相を含まない状態で行われることである。ポリアミック酸と化学キュア剤溶液を別途容器に取り混ぜて攪拌するといった方法で混合を行うと、混合にあたって空気をかみこみ、混合後にこれを脱泡する作業が必要になる。脱泡を放置による自然脱泡により行おうとすると、その間に硬化が進行しすぎて後の成形が不可能になる場合がある。一方、遠心脱泡を行うと時間は短縮できるが、添加したフィラー類が遠心力により偏ってしまうため、フィラー類を添加する系では用いることができず、用途が限定されることになる。
【0041】
ポリアミック酸溶液と化学キュア剤溶液とを均一にすばやく混合するため、ミキサーの形態及びその使用方法には、該目的を達成するために用いられる種々の手段を用い得る。例えば、混合不良を防止するため、通常樹脂溶液の流れにそって複数段×複数枚の攪拌翼を有することが好ましい。また化学キュア剤の投入口は前記攪拌翼上段(上流段)の位置の側面に設けるのが通常であるが、より攪拌効率を上げるため攪拌軸及び翼中に化学キュア剤ラインを設け、攪拌翼の先端や途中に1箇所または複数箇所の投入口を設けることもできる。また攪拌翼の回転数が高いほど攪拌効率は向上するが、高すぎると攪拌熱による発熱が顕著になり、攪拌中にイミド化が進行することがあるため、ミキサーには冷却装置が付加される方が好ましく、その冷却能力に応じて溶液温度が高くなりすぎないよう回転数を制限する方が好ましい。
【0042】
ミキサーから型内に化学キュア剤溶液が混合されたポリアミック酸溶液が供給されるにあたり、ミキサー内を含めて型内に到達する以前のライン中でのポリアミック酸の硬化を防ぐ方法として、上述のような冷却を行う事は有効であるが、それでもなお、ライン中の樹脂溶液の滞留などにより偏在的に硬化が進行することが懸念される場合、化学キュア剤またはポリアミック酸を主成分とする溶液に常温硬化阻害剤を混合しておき、筒状型に混合溶液を注入した後に加熱により部分イミド化させて非流動化させる方法も取りうる。そのような常温硬化阻害剤の例としては、アセチルアセトンをあげることができる。
【0043】
化学キュア剤をポリアミック酸溶液と混合してからポリアミック酸溶液が自己支持性を有するようになるまでの時間は、化学キュア剤の濃度により制御することができる。その時間をさらに短くするための手段として、ポリアミック酸溶液中に、金属塩を添加する方法も行われ得る。金属塩としては、金属塩化物、金属ヨウ化物、金属硝酸塩等種々のものが適用可能で、より具体的にはSnCl、AuI、AgNO等を挙げることができる。
【0044】
また、ポリアミック酸溶液ならびに化学キュア剤溶液中の水分はできる限り少なくなるよう制御するのが好ましい。水分の存在は、化学キュア剤の成分である酸無水物を開環させる効果があるため、速やかな化学キュアを妨げ、その結果、化学キュア剤混合後のポリアミック酸が自己支持性を発現するまでの時間が長くなってしまう。また水分は、ポリアミック酸高分子そのものの分解にも寄与しうることから、化学キュア剤を混合する前からできる限りポリアミック酸溶液中の水分は少ない方が好ましい。具体的には、水分は0.5重量%以下、さらには500ppm以下とすることが好ましい。含水分量を下げるための方法としては、予め脱水処理された溶媒を用いる、作業をドライエアーや不活性ガス気流下で行うなどの方法を取り得る。
【0045】
次にポリアミック酸が自己支持性を発現し、部分イミド化したポリアミック酸(あるいは部分的にポリアミック酸部位を残したポリイミド)筒状体が形成された後の工程について説明する。
【0046】
本発明において、部分イミド化したゲルとは、ポリアミック酸から脱水反応によって高分子鎖が部分的にイミド化し、溶剤に不溶となった状態を意味する。この部分イミド化した状態には、加熱のみの場合でも化学キュア剤を用いた場合でも到達させることは可能であり、また両方を併用する方法も可能である。この部分イミド化したポリアミック酸のゲル筒状体(以下、単にゲル筒状体と言う。)を高温で加熱する前に、焼成用の型に外嵌する。ここで、ゲル筒状体とは部分イミド化したポリアミック酸のゲル状態で円筒状に成形されたものを意味する。
【0047】
ポリイミド筒状体を電子写真記録装置用の材料用途に使用する場合、厳しい寸法精度が要求される。しかしながらゲル筒状体はイミド化してポリイミドとなるときに必ず体積収縮する。これを自由収縮させることによって筒状体を得ることもできるが、所望の寸法を得るためには焼成時に焼型を用いることが必須である。それゆえゲル筒状体を円柱もしくは円筒状の焼成型に外嵌し、でき上がった筒状体の内周面を規定することによって高い寸法精度をもつポリイミド筒状体を得ることができる。焼成用の型はできあがったポリイミド筒状体の寸法と内側の表面粗さを規定するので、これに適したものであれば特に制限はない。また、必ずしも円筒もしくは円柱状である必要は無く、断面が真円ではなく楕円であっても、多角形で角を面取りしたものであっても特に支障はない。もっとも円筒状の形状が加工の容易さ、その熱容量の小ささより望ましい。さらに、後述するように溶剤の滞留を防ぐという点でも円筒状の形状が好適である。前記型の材質については使用される溶媒と焼成温度に耐えうるものであれば特に制限はない。ただし、後に詳述するように、気体と液体の通過性を有する通気性金属を用いることも可能である。
【0048】
ゲル筒状体は焼成用の型に外嵌されるが、このときゲル筒状体はイミド化の進行途中にある。ゲル筒状体に自己支持性が発現した時点で焼成用の型に外嵌するのが好ましいが、前記ゲル内の溶媒は常にしみでてくる状態であり、またゲルに力を加えると容易に変形する。このようなゲル筒状体を外嵌するためにはゲル筒状体よりも内径の小さい型を使用するのが好ましい。もちろんゲル筒状体の伸縮性を生かして、径の等しい、若しくは大き目の型にゲル筒状体を外嵌する方法もある。ただし、ゲルの強度が弱いときに外力を加えると焼成した後にその影響が残る場合があるため、十分時間をかけてゲルの強度が向上した時点で外嵌することが好ましい。
【0049】
外嵌時には溶剤のしみ出しと、焼成用の型とゲル筒状体の間に気泡が入るというゲル筒状体製造に係る特有の問題がある。これを放置して焼成した場合、多くはその痕跡ができあがったポリイミド筒状体に見られる。その理由として、溶剤が外表面に多量に存在した場合、加熱時に周りの部分とは温度差を生じるためイミド化の程度が異なり、それゆえ溶剤が多量に存在した部分は変色し(溶剤痕)、物性的にも異なるものとなる。また、溶剤や気体が内表面(ゲル筒状体と焼成用円筒の間)に偏って存在した場合は、ゲルを変形、膨張させ、厚みを薄くさせ、時に外側凸に膨らんだまま焼成されることもある。変形はないまでも型にゲルが密着しない状態で焼成することにより温度履歴が全く異なるものとなり、外表面に溶剤が多量に存在した場合と同様に変色し(気泡痕)、物性的にも異なるものとなる場合がある。以上に詳述したような理由により、部分イミド化したポリアミック酸のゲル筒状体を円筒形状の焼成用型に外嵌し、ゲル筒状体外表面の溶媒又はゲル筒状体と焼成用型間にある気体若しくは溶媒を取り除いた後、焼成することが、焼成後に均一でムラのないポリイミド筒状体を得るための重要な要因である。
【0050】
なお、本発明において、前記溶媒若しくは気体を取り除いたとは、イミド化を進める焼成用型を備えた焼成炉にゲル筒状体を投入した場合、ゲル筒状体より発生するガス濃度が爆発限界より低く、実用上問題がない程度まで溶剤のしみ出しが減少した状態をいう。もちろん焼成炉の構造によっては、溶剤の発生がほとんどないことが必要になる場合もあるが、しみ出した溶剤を速やかに系外に排出するような構造を有する焼成炉であれば、溶剤の乾燥とイミド化を同じ焼成炉で行うことが可能となる。例えば、焼成炉にゲル筒状体を投入後、温度条件等を設定して前記溶媒若しくは気体を取り除いた後、イミド化を行う条件に温度等を変更して、最終のポリイミド筒状体を得ることができる。
【0051】
前記溶媒若しくは気体の除去方法としては、一つには減圧雰囲気下で取り除く方法がある。例えば、焼成型に外嵌したゲル筒状体を密閉状態において減圧することがあげられる。減圧は、真空ポンプにて行うのが工業的には容易であり、揮発した溶媒はオイルに混入しないようにトラップを用いて回収するのが望ましい。到達減圧度は、真空ポンプの能力、密閉容器のリーク量、ゲル筒状体より放出される溶剤と気体の放出量により左右されるが、工業的にはより簡便に所定の時間だけ減圧状態におく方法が取られ得る。この際に長時間減圧するとゲル内の溶剤が揮発し、その蒸発せん熱でゲル筒状体の温度が下がりすぎて、常圧にしたときに雰囲気中の水分が結露してその表面があれてしまうと言う現象が生じる。従って、温度が低下しない条件下で減圧することが好ましい。また、急な減圧は溶剤の突沸をまねき、ゲル筒状体を破壊してしまう場合があるので注意が必要である。このとき焼成型に通気性を有するものを用いた場合は、外表面だけでなく、ゲル筒状体と焼成型間の溶剤も速やかに取り除くことができる点から、好ましい。
【0052】
ゲル筒状体より溶媒と気体を除去する他の方法は、外表面にリング状、若しくはそれを分割した形状でゲル筒状体外表面に円弧で接触するもの、または板状でゲル筒状体外表面に線分で接触するものであって、好ましくはゲル筒状体の外表面に密着する形状を有するかきとり器を接触させてかきとる方法があげられる。かきとり器はその表面に滑性を有し、耐溶剤性と一定の強度があるものが好ましい。例えば、フッ素ゴム、フッ素系樹脂、シリコンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、ステンレスやアルミニウムに滑性を有する皮膜として無電解ニッケルとPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)をコーティングしたもの等があげられる。
【0053】
かきとり方向としては、ゲル筒状体を回転させて円周方向にかきとる方法もあげられるが、ゲル筒状体と焼成用型間にある溶媒若しくは気体を取り除くためには、最終的には端部の軸方向から取り除くことが好ましい。円筒の焼成型を中心軸の周りに周方向に回転させた場合は、板状のかきとり器を接触させ、トラバースさせただけでは効率よく取り除くことができない。例えば、より簡便には軸方向を鉛直または水平から0度より大きく90度以下の範囲で傾けた状態に配し、溶剤が流れる向きにかきとる方法があげられる。この際に、かきとり器のゲル筒状体に対する圧力が強すぎるとゲル筒状体が動いて焼成用型から外れてしまう場合があり、また逆に弱すぎると溶剤と気体が残ってしまう恐れがある。例えば、図2に示すようにゲル筒状体の片端を治具で固定し、ゲル筒状体が外れないようにして、圧力を加えてかきとるのが好適である。
【0054】
ゲル筒状体を焼成するときにゲル筒状体の片端または両端を治具で固定してゲル筒状体を固定する方法がある。焼成初期の段階でもゲル筒状体からは溶媒がしみでており、これが潤滑剤の役目をするため、ゲル筒状体は焼成型より動いて外れる可能性がある。これを防ぐためには治具でゲル筒状体を固定するか、ゲル筒状体が周方向に十分収縮して、その収縮力でゲル筒状体が移動しないようにして乾燥させるのが好ましい。
【0055】
上記焼成装置には円筒状の焼成用型を、軸方向を水平にして、その円周方向に回転させる方法もある。水平にすることによりゲル筒状体が動きにくく、さらに回転させることにより溶媒が一箇所に滞留するのを妨ぐことができる。溶剤が一箇所に滞留すると、その箇所において溶剤痕が発生する可能性があるため、水平にした場合は回転させることが好ましい。しかし、溶剤がゲル筒状体から流れ出して、ゲル筒状体と焼成用型から除去されるためには、あえて回転させずに一箇所に集める方法も有効である。焼成装置が焼成用型の中心軸を水平方向から0度より大きく90度以下の範囲で任意に傾斜させた構造を有する場合には、溶媒はゲル筒状体の一箇所に集められ、焼成用型を伝って系外に排出されるか、或いは表面張力の限界を超えた分は滴下するため、好ましい。上記方法を用いることにより、焼成炉に複雑な回転機構を有することなく、均一な焼成が可能になる。このときにゲル筒状体が自重で滑って動かないようにその片端または両端にゲル筒状体を固定する治具を取り付けることが好適である。
【0056】
焼成はゲル筒状体内の溶剤が発泡等の悪影響を及ぼさないように、溶剤の沸点以下の温度から加熱し、ポリイミドの組成によっても異なるが、最終的には350℃〜550℃まで加熱するのが好ましい。これによりイミド化が完了し、最終的な製品となるポリイミド筒状体を得ることができる。
【0057】
以上、本発明にかかるポリイミド筒状体の製造方法について説明したが、本発明はこれらの実施の態様のみに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づき、種々なる改良、変更、修正を加えた態様で実施しうるものである。次に、本発明のポリイミド筒状体の製造方法について、実施例をあげてより詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみによって限定されるものではない。
【0058】
【実施例】
(実施例1)
攪拌翼がついた容器に、ジメチルホルムアミド(DMF)820gを入れ、窒素気流下で4、4’−ジアミノジフェニルエーテル86.2gを溶解し、これにピロメリット酸二無水物93.8gを少量ずつ加え、よく攪拌した。系の粘度が約300Pa・secになったところで攪拌を停止し、ポリアミック酸のDMF溶液を得た。次に金属フィラーTM−200(大塚化学株式会社製)60gとDMF300gを別の容器に入れ、よく攪拌し、さらに超音波分散機にかけることで分散液中の金属フィラーを均一に分散させ分散液Aを得た。また、さらに別の容器にカーボンブラック3030B(三菱化学株式会社製)15gとDMF300gを入れよく攪拌し、超音波分散機にかけて分散液Bを得た。上記で得られたポリアミック酸溶液に対して、前記分散液A270gおよび分散液B151.2gを溶かし入れた。さらに、化学キュア剤としてイソキノリン25gを加えて、よく攪拌した。
【0059】
得られた混合溶液を、長さ400mm、内径82mmの円筒型ガラス型の内側に一様に塗布した。次にガラス型の内径とのクリアランスが0.7mmに調整された金型をガラス型の中を移動させることで、ガラス型の内側に0.7mmの厚さを有するポリアミック酸の塗布膜を形成せしめた。成分が、重量比で無水酢酸:DMF=2:1である化学キュア剤の構成成分を含む液を調製した。調製された液を入れた液槽中でガラス型を回転させながら、型の下部を液中に漬け、塗布された樹脂層が液と接触するようにした。
【0060】
型の回転を継続し、15分経過した段階で、塗布されたポリアミック酸塗布膜は自己支持性を得ており、厚さ約500μmであった。この半硬化したゲル筒状体は、ガラス型から容易に取り外すことができた。このゲル筒状体を、表面にフッ素系の剥離剤をスプレーしておいた、外径80mmの金属製円筒に挿入した。このゲル筒状体の片端部にステンレス製のバンドを固く締め付けた。これを密閉可能な容器にバンドを上部にして垂直にセットし、ガラス製のトラップをドライアイス/メタノールで冷却したものを取り付け、真空ポンプで10分減圧した。次にこの円筒を焼成炉に垂直にセットし、100℃で10分、200℃で5分、300℃で5分、400℃で3分加熱し、半硬化状態のゲル筒状体を完全にイミド化すると同時に残溶剤を揮発させた。続いて成形型を室温まで徐冷して筒状体を取り外し、膜厚60μmのポリイミド筒状体を得た。得られたポリイミド筒状体は、溶剤痕も気泡痕も無く均一な外観を有していた。
【0061】
(実施例2)
実施例1と同様にしてゲル筒状体を得た。得られた筒状体をフッ素系の剥離剤をスプレーしておいた、外径80mmの金属製円筒に挿入し、ゲル筒状体の片端部にステンレス製のバンドを固く締め付けた。次にPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製のリングを分割した形状を有するかきとり器を用いて、ゲル筒状体の溶媒をこすりとった。また、ゲル筒状体と金属製円筒の間にはいった気泡を注意して取り除いた。この円筒を焼成炉に垂直にセットし、100℃で15分、200℃で5分、300℃で5分、400℃で3分加熱し、半硬化状態のゲル筒状体を完全にイミド化すると同時に残溶剤を揮発させた。続いて成形型を室温まで徐冷して筒状体を取り外し、膜厚60μmのポリイミド筒状体を得た。得られたポリイミド筒状体は溶剤痕も気泡痕も無く均一な外観を有していた。
【0062】
(実施例3)
攪拌羽がついた容器にジメチルホルムアミド(DMF)8.20kgを入れ、窒素気流下で4、4´−ジアミノジフェニルエーテル862gを溶解し、これにピロメリット酸二無水物938gを少量ずつ加え、よく攪拌した。系の粘度が約300Pa・secになったところで攪拌を停止し、ポリアミック酸溶液を得た。次に、金属酸化物フィラーである石原産業社製FTL−300を1.05kgとDMF4.50kgを別の容器に入れ、よく攪拌し、さらに超音波分散機にかけることで分散液中の金属フィラーを均一に分散させフィラー分散液を得た。上記で得られたポリアミック酸溶液に対して、前記分散液を溶かし入れ、よく攪拌した。その後、攪拌を継続しながら容器を減圧下において脱泡を行った。
【0063】
また、さらに別の容器にイソキノリン1.3kgと無水酢酸2.2kgとDMF4.0kgを加えよく攪拌し、化学キュア剤溶液を調製した。重量比でポリアミック酸溶液100に対して化学キュア剤溶液10の比率で、各液の容器下部から配管を通じてギアポンプを用いて多段多翼型のミキサー装置に送り込み、回転数約200rpmで両液を攪拌しながら送り出した。
【0064】
一方、長さ400mm、外径81mmの円柱金型と、長さ400mm内径82.4mm外形92.4mmの円筒状金型とを円盤状台座の上でクリアランスがほぼ均一になるように縦置きでセットし、外型下部に設けた樹脂注入口より上述の送り出された化学キュア剤混合溶液を注入し、上部より若干はみ出す状態で注入を中止した。
【0065】
30℃の環境下15分経過した段階で、塗布されたポリアミック酸溶液膜は自己支持性を得ており、まず内型を取り外した。内型と樹脂の接触面積のほうが、外型と樹脂の接触面積より小さいため、特に工夫をしなくても、容易に内型のみを取り外すことができた。内型が存在した空間に、外径80mmの金属製円筒を挿入した。なお、この円筒は内側から外側に向かって空気を放出させるための空気導入口が設けられており、外周表面にはフッ素系の剥離剤をスプレーしておいた。樹脂のはみ出し部分を押さえながら、外型を取りはずした。次にゲル筒状体の片端部にステンレス製のバンドを固く締め付けた。そして、リングを分割した形状を有するPTFE製のかきとり器でゲル筒状体の溶媒をこすりとった。また、ゲル筒状体と金属製円筒の間にはいった気泡を注意して取り除いた。該円筒ごとゲル筒状体を100℃で15分加熱したが、このとき該円筒を水平より20度傾斜させて加熱した。その後、200℃で5分、300℃で5分、400℃で3分加熱し、半硬化状態の筒状体を完全にイミド化すると同時に残溶剤を揮発せしめた。続いて型を室温まで徐冷し、金属製円筒からポリイミド筒状体を取り外し、目的のポリイミド筒状体を得た。
【0066】
【発明の効果】
本発明に係るポリイミド筒状体の製造方法は、ゲル筒状体を高温加熱用の型に嵌めかえた後に、しみ出てきた溶媒をかきとって、または焼成型とゲル筒状体の間にある気泡若しくは溶媒をかきとることによって、溶媒痕や気泡痕のない均一な品質を有するポリイミド筒状体を安価に製造できるものであり、サイクルタイムが短く工業的に好ましい。
【0067】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るゲル筒状体の形成方法の一実施形態を示す説明図である。
【図2】本発明に係るかきとり機を説明するための説明図である。
【符号の説明】
1 :円筒状または円柱状の内筒
2 :円筒状の外筒
3 :内筒と外筒を組み上げた状態
4 :注入ライン
5 :密閉用の蓋
6 :焼成用型
7 :ゲル筒状体固定用治具
8 :ゲル筒状体
9 :かきとり治具

Claims (6)

  1. 部分イミド化したポリアミック酸のゲル筒状体を円筒形状の焼成用型に外嵌し、ゲル筒状体外表面の溶媒又はゲル筒状体と焼成用型間にある気体若しくは溶媒を取り除いた後、焼成することを特徴とするポリイミド筒状体の製造方法。
  2. 減圧雰囲気下で、ゲル筒状体外表面の溶媒又はゲル筒状体と焼成用型間にある気体若しくは溶媒を取り除くことを特徴とする請求項1記載のポリイミド筒状体の製造方法。
  3. リング状、板状、若しくはそれらが分割された形状のかきとり器を用いて前記ゲル筒状体の外表面をかきとることにより、ゲル筒状体外表面の溶媒又はゲル筒状体と焼成用型間にある気体若しくは溶媒を取り除くことを特徴とする請求項1または2に記載のポリイミド筒状体の製造方法。
  4. 前記ゲル筒状体を固定するために、ゲル筒状体の端部に治具を取り付けることを特徴とする請求項1〜3に記載のポリイミド筒状体の製造方法。
  5. 前記ゲル筒状体よりしみ出る溶剤を一箇所に固定させない焼成装置を用いて焼成することを特徴とする請求項1〜4に記載のポリイミド筒状体の製造方法。
  6. 前記焼成装置が焼成用型の中心軸を水平方向から0度より大きく90度以下の範囲で傾斜させた構造を有することを特徴とする請求項1〜5に記載のポリイミド筒状体の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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