JP2004075753A - ポリイミド管状成形体 - Google Patents
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Abstract
【課題】レーザービームプリンターあるいはファクシミリなどの電子写真装置に用いられるポリイミド管状成形体に関し、その寿命を飛躍的に向上したポリイミド管状成形体を提供することにある。
【解決手段】ポリイミド樹脂を含有してなる筒状成形体であって、厚さが60〜100μmであり、かつJIS P8115で規定されるMIT試験による耐屈曲回数が5.0×103回以上であることを特徴とする、ポリイミド管状成形体である。本発明によれば、長時間駆動後においてもクラック発生による破損が生じることなく、安定して良好な画像を提供できることが可能となり、ひいては、電子写真装置のランニングコストを劇的に低減させることが可能となる。
【選択図】 無し
【解決手段】ポリイミド樹脂を含有してなる筒状成形体であって、厚さが60〜100μmであり、かつJIS P8115で規定されるMIT試験による耐屈曲回数が5.0×103回以上であることを特徴とする、ポリイミド管状成形体である。本発明によれば、長時間駆動後においてもクラック発生による破損が生じることなく、安定して良好な画像を提供できることが可能となり、ひいては、電子写真装置のランニングコストを劇的に低減させることが可能となる。
【選択図】 無し
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、電子写真装置の中間転写体等に用いられるポリイミド樹脂を含有する管状成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真装置は、導電性材料からなる感光体上に一様な電荷を形成し、画像信号を変調したレーザー光などで静電潜像を形成した後、帯電したトナーにより静電潜像を現像してトナー像とする。次いでこのトナー像を直接または中間転写体を介して用紙などの記録媒体に転写することにより所望の画像を得る装置である。
【0003】
ここで、感光体上のトナー像を中間転写体に一次転写し、次いで中間転写体上のトナー像を紙などの記録媒体へ二次転写する方法、即ち中間転写方式を採用した電子写真装置に用いられる中間転写体材料は、例えばポリフッ化ビニリデン(特開平5−200904号公報)、ポリカーボネート(特開平6−228335号公報)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体とポリカーボネートとのブレンド(特開平6−149083号公報)などの熱可塑性樹脂にカーボンブラック等の導電剤を分散させた導電性樹脂管状体が開示されている。
【0004】
しかしながら上記中間転写体材料では、強度や耐摩擦・耐磨耗の機械特性不足によるクラック発生や、駆動時の中間転写体の負荷により変形する場合があり、良好な転写画像が得られない問題があった。この要請から、中間転写体材料に適する材料として、高い機械強度を有するポリイミド樹脂が用いられている。
【0005】
中間転写体材料には、体積抵抗値106〜1012Ω・cm程度の、所謂中抵抗領域における抵抗値の厳密な制御が要求される。しかしポリイミドの体積抵抗値は1015〜1018Ω・cm程度と極めて高く、樹脂の抵抗値を大幅に下げることが必須である。この目的を達成するため、ポリイミド樹脂中に多量の無機紛体を含有せしめる手法が特開平5−77252号公報等で開示されている。
【0006】
しかしながら樹脂中に存在する多量の無機紛体は樹脂の靭性を著しく低下させ、その結果、既存のポリイミド樹脂を含有する中間転写体は、駆動時のクラック発生が問題となっていた。このような中間転写体を電子写真装置中に組み込んだ際、クラック発生が生じるまでの期間、すなわち部品寿命が短くなる。その結果、中間転写体の交換費用が発生し、総じて電子写真装置の高コスト化に繋がる点が非常に問題視されている。
【0007】
また、中間転写体の交換・装着などのメンテナンスを考慮すると、取扱い時の折れや座屈等が発生し難いことが要求される。上述の点を解決するためには、機械強度の高いポリイミド樹脂を含有してなる中間転写体であっても、60〜100μm程度の厚みであることが求められる。しかしながら、厚みが50μmを超えるポリイミド樹脂の靭性は、厚みが50μm以下のポリイミド樹脂のそれと比較して、著しく低減することが知られている。従って、厚みが60〜100μm程度の、ポリイミド樹脂を含有する中間転写体は、クラック発生が問題点の一つとなっていた。
【0008】
中間転写体であるポリイミド管状成形体は、駆動時には主として管状成形体の軸と垂直な方向に応力がかかっているため、クラックは、管状成形体の軸と平行な方向に特に入りやすい傾向がある。この問題を解決するため、特開平5−345369号や特開平10−198179号公報に見られるように、管状成形体の端部に破損防止の目的で補強テープを設ける手段が提案されている。しかしながら、この手法はテープ添付の工程が非常に複雑かつ困難であること、また、この工程に要するコストが発生する等の問題がある。
【0009】
また、特開平10−278109号公報では、ポリイミド管状成形体をイミド化・成形して得た後、周方向への延伸処理を行うことで、クラック発生を低減させる技術が開示されている。この技術は、ポリイミド管状成形体のクラックがポリイミド分子の分子鎖の配向方向に沿って発生しやすいという考えに基づき、ポリイミド管状成形体の軸方向と垂直方向、つまり周方向にポリイミド分子鎖を配向させることで、クラック発生の低減を可能にしている。しかしながらこの手法は、延伸処理後に管状成形体樹脂の応力緩和現象により延伸処理による効果が緩和されてしまう点、この処理に要するコストが余分に発生する点、さらには延伸処理によりポリイミド管状成形体中に導入されている導電剤も配向し、導電性に異方性が発現するため、得られる画像に悪影響を及ぼす点などの問題があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、例えば電子写真装置の中間転写体として用いた場合、部品寿命が飛躍的に向上したポリイミド管状成形体を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリイミド管状成形体のMIT試験による耐屈曲回数が一定範囲に制御されたポリイミド管状成形体を中間転写体として用いることにより、長時間での駆動でもクラックの発生を著しく低減せしめることが可能なことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、ポリイミド樹脂を含有してなる筒状成形体であって、厚さが60〜100μmであり、かつJIS P8115で規定されるMIT試験による耐屈曲回数が5.0×103回以上であることを特徴とする、ポリイミド管状成形体に関する。
【0013】
好ましい実施態様は、前記ポリイミド管状成形体の厚さが、厚さが65〜90μmであることを特徴とする、前記のポリイミド管状成形体に関する。
【0014】
更に好ましい実施態様は、ポリイミド樹脂100重量部に対し、無機粉体を3〜90重量部含有していることを特徴とする、前記いずれかに記載のポリイミド管状成形体に関する。
【0015】
更に好ましい実施態様は、前記ポリイミド管状成形体を構成するポリイミド樹脂が、ピロメリット酸二無水物に由来する残基を有しており、該残基の含有率が全酸二無水物残基を基準として50モル%以上であることを特徴とする前記いずれかに記載のポリイミド管状成形体に関する。
【0016】
更に好ましい実施態様は、前記ポリイミド管状成形体を構成するポリイミド樹脂が、4,4′−ジアミノジフェニルエーテルに由来する残基を有しており、該残基の含有率が全ジアミン残基を基準として50モル%以上であることを特徴とする前記いずれかに記載のポリイミド管状成形体に関する。
【0017】
更に好ましい実施態様は、1000Vの電圧印加時における体積抵抗率が105〜1010Ω・cmの範囲にあり、かつ、1000Vの電圧印加時における表面抵抗率が106〜1011Ω/□の範囲にあることを特徴とする、前記いずれかに記載のポリイミド管状成形体に関する。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、本発明のポリイミド管状成形体に係る実施の形態をより詳しく説明する。
【0019】
本発明に係るポリイミド管状成形体は、樹脂の主成分がポリイミドであることが重要である。ここで、樹脂の主成分とは、全樹脂成分中、ポリイミドが50重量%以上であることを言い、更には70重量%以上であることが好ましい。ポリイミドは、ポリアミック酸の硬化反応により得られるものであり、ポリアミック酸は、酸二無水物成分、好ましくは芳香族テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを有機極性溶媒中で重合反応させて得られるものである。
【0020】
テトラカルボン酸二無水物成分としては特に制限はなく、例えば、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族または脂環式テトラカルボン酸二無水物;ピロメリット酸二無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4′−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4′−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4′−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3′,4,4′−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、2,3,3′,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4′−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4′−ジフェニルメタン二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物;1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。単独で用いる場合には、ピロメリット酸二無水物が耐屈曲性を所定の範囲内に制御しやすいので好ましく、2種以上組み合わせて用いる場合においても、全酸二無水物成分を基準として50モル%以上のピロメリット酸二無水物を用いることが好ましい。酸二無水物成分及びジアミン成分は、重合反応及び硬化反応の過程で各成分由来の残基へと転化するが、ポリイミドの諸特性を決定するのは該残基である。ピロメリット酸二無水物が全酸二無水物成分を基準として50モル%以上となるように用いることで、ピロメリット酸二無水物に由来する残基の、最終的に得られるポリイミド中の含有率が、全酸二無水物残基を基準として50モル%以上となるため、耐屈曲性を所定の範囲内に制御しやすいので好ましい。
【0021】
次に用いられるジアミン成分は、ジアミンであれば特に限定されないが、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルエタン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4′−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4′−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4′−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4′−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4′−ジアミノベンズアニリド、3,5−ジアミノ−3′−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5−ジアミノ−4′−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル、2,7−ジアミノフルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4′−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2′,5,5′−テトラクロロ−4,4′−ジアミノビフェニル、2,2′−ジクロロ−4,4′−ジアミノ−5,5′−ジメトキシビフェニル、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ジアミノビフェニル、4,4′−ジアミノ−2,2′−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4′−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、1,3′−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4′−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4′−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2′−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4′−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン;ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミンおよび脂環式ジアミン等を挙げることができる。これらのジアミン化合物は単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。単独で用いる場合には、4,4′−ジアミノジフェニルエーテルが耐屈曲性を所定の範囲内に制御しやすいので好ましく、2種以上組み合わせて用いる場合においても、全ジアミン成分を基準として50モル%以上の4,4′−ジアミノジフェニルエーテルを用いることが好ましい。
【0022】
ここで該ポリアミック酸の生成反応に使用される有機極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどをあげることができ、これらを単独または混合物として用いるのが望ましいが、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素も使用可能である。溶媒は、ポリアミック酸を溶解するものであれば特に限定されない。また、水は、ポリアミック酸の分解を促進するため、可能な限り除去されねばならない。
【0023】
ポリアミック酸の硬化反応は、熱による方法、ポリアミック酸を含む原料溶液中に触媒及び硬化剤を導入する方法、光による方法など、従来既知の方法を好適に用いることができる。しかしながら、生産性向上や、弾性率などのその他物性を好適に制御できることから、ポリアミック酸を含む原料溶液中に触媒及び硬化剤を導入する方法を、硬化反応の少なくとも一部に導入することが好ましい。触媒及び硬化剤を、ポリアミック酸を含む原料溶液中に導入する方法は特に限定されず、原料溶液中に触媒及び硬化剤を混練する方法、原料溶液中に触媒のみを混練した後、硬化剤若しくは硬化剤を含む溶液を噴霧、塗布、浸漬などの方法で原料溶液に接触させる方法、原料溶液に触媒と硬化剤を含む溶液を接触させる方法などが挙げられる。
【0024】
ここでいう硬化剤とは、ポリアミック酸に対する脱水閉環剤であれば制限無く用いることが可能で、例えばその主成分として、脂肪族酸無水物、芳香族酸無水物、N,N′−ジアルキルカルボジイミド、低級脂肪族ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪族酸無水物、アリールスルホン酸ジハロゲン化物、チオニルハロゲン化物またはそれら2種類以上の混合物が、好ましく用いうる。その中でも特に、脂肪族酸無水物及び芳香族酸無水物が良好に作用する。
【0025】
またここでいう触媒とは、硬化剤のポリアミック酸に対する脱水閉環作用を促進する効果を有する成分であれば制限無く用いることが可能で、例えば、脂肪族3級アミン、芳香族3級アミン、複素環式3級アミンが用いられ得る。そのうち、イミダゾ−ル、ベンズイミダゾ−ル、イソキノリン、キノリン、またはβ−ピコリンなどの置換もしくは非置換の含窒素複素環化合物であることが好ましい。
【0026】
さらに、硬化剤及び触媒を含有する溶液中に、有機極性溶媒を導入することも適宜選択され得る。
【0027】
中間転写体は、複数のロールに掛け渡された状態で用いられる。即ち、駆動時の中間転写体は、ロールに接触している部位での屈曲と、ロールと接触していない部位での屈曲開放を交互に付与されることになる。従って、中間転写体の長時間の駆動に際してクラック発生を少なくするためには、耐屈曲性を向上させることが重要となる。耐屈曲性は、MIT試験により定量化することが可能である。MIT試験は、JIS P8115で規定される方法で、例えば、東洋精機製作所社製MIT試験機を用いて行うことができる。MIT試験による耐屈曲回数は、大きい程部品寿命が長いと言え、実用的には5.0×103回を超えることで、装置寿命の間、優れた中間転写体として用いることが可能であり、好ましくは1.0×104回以上、より好ましくは1.3×104回以上であれば、特にクラックが発生し難くなる。耐屈曲回数の上限は特に規定されないが、実質的な上限としては、1.0×106回である。
【0028】
耐屈曲性を向上せしめる方法としては、例えば、酸二無水物成分として、ピロメリット酸二無水物を、ピロメリット酸二無水物に由来する残基の、最終的に得られるポリイミド中の含有率が、全酸二無水物残基を基準として50モル%以上、好ましくは70モル%以上となるように用いることや、ジアミン成分として、4,4′−ジアミノジフェニルエーテルを、4,4′−ジアミノジフェニルエーテルに由来する残基の、最終的に得られるポリイミド中の含有率が、全ジアミン残基を基準として50モル%以上、好ましくは70モル%以上となるように用いる方法が、代表的に例示される。
【0029】
本発明に係るポリイミド管状成形体は、ポリイミド樹脂を含めば、その他の成分は特に限定されず、最終的に得られるポリイミド管状成形体の特性を制御するために、有機、無機材料を問わず、さまざまな材料を導入することができる。例えば、抵抗値の制御の目的には、カーボンブラックをはじめとする導電性無機粉体を樹脂中に適量混合する方法が最も効果的である。カーボンブラック以外にも小径金属粒体、金属酸化物粒体、また酸化チタンや各種無機粒体・ウイスカーを金属酸化物など導電性物質で皮膜形成したもの等が、同様の効果を得ることができる。さらには、LiCl等のイオン導電性物質の添加も可能である。熱伝導性を制御する目的には、例えば窒化アルミニウム、窒化ホウ素、アルミナ、炭化珪素、珪素、シリカ、グラファイト等を用いることができる。中でも、熱伝導機能が高く、離型効果を発揮し、化学的に安定で、無害であるという点で、窒化ホウ素が特に好ましい。導入される無機粉体の量は、少なすぎるとその効果を十分に発揮できない恐れがあり、多すぎると耐屈曲性を著しく低下せしめる恐れがある。そのため、ポリイミド管状成形体に導入される無機粉体の量は、ポリイミド樹脂100重量部に対し、3〜90重量部、好ましくは5〜80重量部、より好ましくは10〜70重量部であることで、得られるポリイミド管状成形体の特性を好適に制御しうる。
【0030】
本発明に係るポリイミド管状成形体の体積抵抗率は、その用途を考慮すると106〜1011Ω・cmであることが好ましい。該ポリイミド管状成形体をレーザービームプリンターの中間転写体として用いた場合、体積抵抗率が小さすぎると白抜けが発生し、また、大きすぎると転写チリが発生するため好ましくない。
【0031】
同様に、本発明に係るポリイミド管状成形体の表面抵抗率は、その用途を考慮すると107〜1012Ω/□であることが好ましい。該ポリイミド管状成形体をレーザービームプリンターの中間転写体として用いた場合、表面抵抗率が小さすぎると白抜けが発生し、また、大きすぎると転写チリが発生するため好ましくない。
【0032】
また、本発明に係るポリイミド管状成形体とは、中空状成形体を意味し、その径や厚みの大小を問わない。従ってベルトと呼ばれる事の多い大口径のものにも、チューブと呼ばれる事の多い小径のものについても適用することができるものである。また、シームレスの成形体であっても、フィルムを重ねあわせや突き合わせの手段を用いつなぎ合わせ、中空状成形体としたものについても適用することができる。但し、本発明のポリイミド管状成形体を、例えば電子写真装置の中間転写ベルトとして用いる場合には、微細な段差であっても画質の低下に繋がるおそれがあるため、フィルムの重ね合わせや突き合わせの手段でつなぎ合わせた管状成形体よりもシームレスの成形体の方が好ましい。
【0033】
また、このポリイミド管状成形体において、他の成分を有する層を外層に積層することも適宜選択され得る。外層は、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(フッ化ビニリデン)などが例示されるが、これに限定されるものではない。
【0034】
ポリイミド管状成形体の厚さは、厚すぎると耐屈曲性が著しく低下するため好ましくなく、薄すぎると折れや座屈等が発生しやすくなるため好ましくない。この要請から、ポリイミド管状成形体の厚さは、60〜100μm、より好ましくは65〜90μmであることで、中間転写体として良好に用いることができる。ポリイミド管状成形体の厚さは、例えば、マイクロゲージ等を用いて容易に測定できる。
【0035】
次にポリイミド管状成形体を製造する具体的方法について一例を示して説明する。
【0036】
テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分を有機溶媒中で重合反応させてポリイミド樹脂前駆体酸溶液、すなわちポリアミック酸溶液を調製する。この場合、前述した理由により、50モル%以上のピロメリット酸二無水物と、50モル%以上の4,4′−ジアミノジフェニルエーテルを含むジアミン成分とを反応させて得たポリアミック酸が好ましい。
【0037】
またこの際、該溶液に針状フィラーやカーボンブラックをはじめとする無機粉体を適量混入せしめることも適宜選択され得る。針状フィラー、無機紛体等の添加物を混入せしめる手法としては、有機溶媒中に添加物を混入せしめ、しかる後に該有機溶媒中で上記成分を重合反応せしめる方法、重合反応の途中段階もしくは反応終了後の溶液に添加物もしくはその分散液を混入せしめる方法が挙げられる。針状フィラーや無機紛体を分散させ、その凝集体のサイズを縮小する手法としては、ミキサーや攪拌子による攪拌、平行ロール、超音波分散、ボールミルなどの物理的手法、さらには分散剤の導入などの化学的手法が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
このようにして得られたポリイミド管状成形体原料中に、上述した触媒及び硬化剤を混練するが、その手段は特に限定されない。さらには原料中に触媒のみを混練し、筒状やフィルム状に成形した後、硬化剤を含む溶液を接触させる方法や、原料を筒状やフィルム状の形状に成形した後、触媒及び硬化剤を含む溶液を接触させる方法であっても構わない。
【0039】
上述の手段で得られたポリイミド管状成形体原料を、筒状やフィルム状に成形する。ポリイミド管状成形体原料をその形状に成形する方法は特に限定されず、ポリイミド管状成形体原料をダイスから押し出す方法、金型をポリイミド管状成形体原料に浸漬する方法、金型にポリイミド管状成形体原料を噴霧する方法が挙げられる。さらに、筒状の場合には、遠心力を応用して筒状塗布膜の厚みを一定化させる、所謂遠心成形法も用いることができる。この工程でポリイミド管状成形体原料を100℃程度、実質的には70℃〜140℃の温度で加熱することで、硬化反応を促進させることも適宜選択されうる。
【0040】
上述のプロセスを経て自己支持性が発現し半硬化状態になった塗布膜を、さらに加熱することにより、溶媒を除去するとともに硬化反応をほぼ完全に終了させる。加熱の工程は、樹脂の収縮に起因する厚みムラや成形不良を防ぐため、筒状に成形した場合は、筒状塗布膜の内部に円筒若しくは円柱成形型を挿入することが好ましく、また、フィルム状に成形した場合は、平面方向にある張力を掛けた状態で加熱することが好ましい。フィルム状に成形した場合は、適当な大きさにスリットし、その端部を重ね合わせや突き合わせにより筒状に加工する。
【0041】
このようにして、目的のポリイミド管状成形体を得ることができる。
【0042】
【実施例】
本発明に係る実施例を以下に説明する。
【0043】
(実施例1)
攪拌翼がついた容器に、モレキュラーシーブにて十分に脱水したジメチルホルムアミド(DMF)を1500g入れ、4、4′−ジアミノジフェニルエーテル200gを加え、完全に溶解するまで攪拌した。この系を約0℃に冷却し、ピロメリット酸二無水物218gを徐々に加え、よく攪拌した。系の粘度が約3×102Pa・sになったところで攪拌を停止し、ポリイミド前駆体溶液を得た。
【0044】
次に大塚化学社製フィラーBK−400HR60gとDMF300gを別の容器に入れ、よく攪拌し、さらに超音波分散機にかけることで分散液中のフィラーを均一に分散させた。BK−400HRはその表面にカーボンをコートしたチタン酸カリウムからなる針状フィラーである。
【0045】
上記で得られた針状フィラー分散液を、118g採取し、よく攪拌した。このビーカー中に、上記で得られたポリイミド前駆体溶液300gを溶かし入れ、さらによく攪拌した。このようにして、硬化後のポリイミド樹脂100重量部に対して、針状フィラーを約30重量部含有するポリイミド管状成形体原料を調製した。
【0046】
該ポリイミド管状成形体原料中に、触媒であるイソキノリンを20g、硬化剤である無水酢酸を32g混練した。
【0047】
上記で得られたポリイミド管状成形体原料を、内径82mm、外径83.5mm、長さ450mmの筒状空間中に均一に注入し、塗布膜に自己支持性が発現するまで23℃・55%RHの雰囲気中に10分間静置した。前記筒状空間は、外径82mm、長さ450mmのSUS製内筒を、内径83.5mm、長さ450mmのSUS製外筒に挿入することで形成されるものである。次いで、該塗布膜を前記内筒及び外筒から取り外し、外径80mmのSUS製円筒焼成型に装着し、100℃から380℃まで、約30分かけて昇温した。最後に系を室温まで冷却し、目的のポリイミド管状成形体を得た。
【0048】
(実施例2)
触媒及び硬化剤を含まないことを除いて、実施例1と同様の原料溶液を内径82mm、長さ450mmのガラス管の内壁に均一に流延塗布し、100℃の熱風に40分間晒すことで溶媒を揮散させた。次いで、塗布膜を該ガラス管から取り外し、外径80mmのSUS製金型に装着し、100℃から380℃まで、約30分間かけて昇温した。最後に系を室温まで冷却し、目的のポリイミド管状成形体を得た。
【0049】
(実施例3)
BK−400HRの代わりに石原産業社製金属フィラーFTL−300を用いること、及び、分散液を236g用いることを除いて、実施例1と同様にポリイミド管状成形体を調製した。FTL−300は、酸化チタンからなる針状フィラーである。上記手段で、硬化後のポリイミドの乾燥重量100重量部に対して、金属フィラーを約60重量部含有するポリイミド管状成形体原料を調製した。
【0050】
(実施例4)
BK−400HRの分散液の代わりにライオン社製カーボンブラックEC−600JDの分散液を32g用いることを除いて、実施例2と同様にポリイミド管状成形体を調製した。EC−600JDの分散液は、EC−600JDを2gとDMF300gを別の容器に入れ、よく攪拌し、さらに超音波分散機にかけることで得た。上記手段で、硬化後のポリイミドの乾燥重量100重量部に対して、カーボンブラックを約3.5重量部含有するポリイミド管状成形体原料を調製した。
【0051】
(比較例1)
ポリイミド管状成形体原料を、内径82mm、外径84.6mm、長さ450mmの筒状空間中に均一に注入することを除いて、実施例1と同様にポリイミド管状成形体を調製した。前記筒状空間は、外径82mm、長さ450mmのSUS製内筒を、内径84.6mm、長さ450mmのSUS製外筒に挿入することで形成されるものである。
【0052】
(比較例2)
FTL−300の分散液を393g用いることを除いて、実施例3と同様にポリイミド管状成形体を調製した。上記手段で、硬化後のポリイミドの乾燥重量100重量部に対して、金属フィラーを約100重量部含有するポリイミド管状成形体原料を調製した。
【0053】
(比較例3)
4、4′−ジアミノジフェニルエーテル200gの代わりにp−フェニレンジアミン108gを、また、ピロメリット酸二無水物218gの代わりに3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物294gを用いてポリイミド前駆体を調製することを除いて、実施例1と同様にポリイミド管状成形体を調製した。
【0054】
(評価試験)
・画像評価及びベルト走行試験
得られたポリイミド管状成形体を、複写機である(株)リコー製フルカラー複写機プリテールに搭載し中間転写ベルトとして用い、A4サイズの画像を10000枚形成せしめた。その後、さらに1枚の画像を形成せしめ、その画像の評価を行った。転写チリ、転写ずれ、ボソツキがない良好な画像を○、それ以外を×とした。その後、ポリイミド管状成形体の状態を目視で確認した。
・耐屈曲回数測定
得られたポリイミド管状成形体から、15mm×120mmの試験片を、その長辺が周方向及び幅方向に平行な方向にそれぞれ10本づつ切り出し、東洋精機社製MIT試験機を用いてJIS P8115に規定された方法で耐屈曲回数の測定を行った。得られた値の平均値を、該ポリイミド管状成形体の耐屈曲回数とした。
・厚み測定
ミツトヨ社製マイクロゲージを用いて、ポリイミド管状成形体からランダムに5箇所厚みを採取した。得られた値の平均値を、該ポリイミド管状成形体の厚みとした。
・体積抵抗率測定及び表面抵抗率測定
ポリイミド管状成形体から10cm×10cmの試験片を切り出し、23℃・55%RHの雰囲気に24時間以上静置した。その後、同雰囲気下にて、レジスティビティチャンバR12702Aを装備したアドバンテスト社製高抵抗測定装置R8340を用いて、印加電圧1000V、電圧印加時間10secで測定した。
【0055】
以上の結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
表1に示すように、実施例のポリイミド管状成形体は、耐屈曲性が極めて大きいことからクラック発生がなく、電子写真記録装置の中間転写ベルトとして用いた場合にも、安定して良好な画像を提供できる。これに対して比較例では、クラック発生に起因する画像不良が発生していた。これは、耐屈曲性が小さいことに由来すると考えられる。
【0057】
以上、本発明に係るポリイミド管状成形体について説明したが、本発明は上述の形態に限定されるものではない。例示するまでもなく記述した範囲内で種々の変形を加えた態様で実施できるものである。
【0058】
【発明の効果】
本発明に係るポリイミド管状成形体は、電子写真装置の中間転写体材料として用いた場合、長時間駆動後においても極めて良好な画像を提供することができる。そのため、電子写真装置の消耗品であるポリイミド管状成形体の寿命が飛躍的に向上し、ひいては、電子写真装置のランニングコストを劇的に低減させることが可能となる。
【0059】
このように、従来技術に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、電子写真装置の中間転写体等に用いられるポリイミド樹脂を含有する管状成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真装置は、導電性材料からなる感光体上に一様な電荷を形成し、画像信号を変調したレーザー光などで静電潜像を形成した後、帯電したトナーにより静電潜像を現像してトナー像とする。次いでこのトナー像を直接または中間転写体を介して用紙などの記録媒体に転写することにより所望の画像を得る装置である。
【0003】
ここで、感光体上のトナー像を中間転写体に一次転写し、次いで中間転写体上のトナー像を紙などの記録媒体へ二次転写する方法、即ち中間転写方式を採用した電子写真装置に用いられる中間転写体材料は、例えばポリフッ化ビニリデン(特開平5−200904号公報)、ポリカーボネート(特開平6−228335号公報)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体とポリカーボネートとのブレンド(特開平6−149083号公報)などの熱可塑性樹脂にカーボンブラック等の導電剤を分散させた導電性樹脂管状体が開示されている。
【0004】
しかしながら上記中間転写体材料では、強度や耐摩擦・耐磨耗の機械特性不足によるクラック発生や、駆動時の中間転写体の負荷により変形する場合があり、良好な転写画像が得られない問題があった。この要請から、中間転写体材料に適する材料として、高い機械強度を有するポリイミド樹脂が用いられている。
【0005】
中間転写体材料には、体積抵抗値106〜1012Ω・cm程度の、所謂中抵抗領域における抵抗値の厳密な制御が要求される。しかしポリイミドの体積抵抗値は1015〜1018Ω・cm程度と極めて高く、樹脂の抵抗値を大幅に下げることが必須である。この目的を達成するため、ポリイミド樹脂中に多量の無機紛体を含有せしめる手法が特開平5−77252号公報等で開示されている。
【0006】
しかしながら樹脂中に存在する多量の無機紛体は樹脂の靭性を著しく低下させ、その結果、既存のポリイミド樹脂を含有する中間転写体は、駆動時のクラック発生が問題となっていた。このような中間転写体を電子写真装置中に組み込んだ際、クラック発生が生じるまでの期間、すなわち部品寿命が短くなる。その結果、中間転写体の交換費用が発生し、総じて電子写真装置の高コスト化に繋がる点が非常に問題視されている。
【0007】
また、中間転写体の交換・装着などのメンテナンスを考慮すると、取扱い時の折れや座屈等が発生し難いことが要求される。上述の点を解決するためには、機械強度の高いポリイミド樹脂を含有してなる中間転写体であっても、60〜100μm程度の厚みであることが求められる。しかしながら、厚みが50μmを超えるポリイミド樹脂の靭性は、厚みが50μm以下のポリイミド樹脂のそれと比較して、著しく低減することが知られている。従って、厚みが60〜100μm程度の、ポリイミド樹脂を含有する中間転写体は、クラック発生が問題点の一つとなっていた。
【0008】
中間転写体であるポリイミド管状成形体は、駆動時には主として管状成形体の軸と垂直な方向に応力がかかっているため、クラックは、管状成形体の軸と平行な方向に特に入りやすい傾向がある。この問題を解決するため、特開平5−345369号や特開平10−198179号公報に見られるように、管状成形体の端部に破損防止の目的で補強テープを設ける手段が提案されている。しかしながら、この手法はテープ添付の工程が非常に複雑かつ困難であること、また、この工程に要するコストが発生する等の問題がある。
【0009】
また、特開平10−278109号公報では、ポリイミド管状成形体をイミド化・成形して得た後、周方向への延伸処理を行うことで、クラック発生を低減させる技術が開示されている。この技術は、ポリイミド管状成形体のクラックがポリイミド分子の分子鎖の配向方向に沿って発生しやすいという考えに基づき、ポリイミド管状成形体の軸方向と垂直方向、つまり周方向にポリイミド分子鎖を配向させることで、クラック発生の低減を可能にしている。しかしながらこの手法は、延伸処理後に管状成形体樹脂の応力緩和現象により延伸処理による効果が緩和されてしまう点、この処理に要するコストが余分に発生する点、さらには延伸処理によりポリイミド管状成形体中に導入されている導電剤も配向し、導電性に異方性が発現するため、得られる画像に悪影響を及ぼす点などの問題があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、例えば電子写真装置の中間転写体として用いた場合、部品寿命が飛躍的に向上したポリイミド管状成形体を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリイミド管状成形体のMIT試験による耐屈曲回数が一定範囲に制御されたポリイミド管状成形体を中間転写体として用いることにより、長時間での駆動でもクラックの発生を著しく低減せしめることが可能なことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、ポリイミド樹脂を含有してなる筒状成形体であって、厚さが60〜100μmであり、かつJIS P8115で規定されるMIT試験による耐屈曲回数が5.0×103回以上であることを特徴とする、ポリイミド管状成形体に関する。
【0013】
好ましい実施態様は、前記ポリイミド管状成形体の厚さが、厚さが65〜90μmであることを特徴とする、前記のポリイミド管状成形体に関する。
【0014】
更に好ましい実施態様は、ポリイミド樹脂100重量部に対し、無機粉体を3〜90重量部含有していることを特徴とする、前記いずれかに記載のポリイミド管状成形体に関する。
【0015】
更に好ましい実施態様は、前記ポリイミド管状成形体を構成するポリイミド樹脂が、ピロメリット酸二無水物に由来する残基を有しており、該残基の含有率が全酸二無水物残基を基準として50モル%以上であることを特徴とする前記いずれかに記載のポリイミド管状成形体に関する。
【0016】
更に好ましい実施態様は、前記ポリイミド管状成形体を構成するポリイミド樹脂が、4,4′−ジアミノジフェニルエーテルに由来する残基を有しており、該残基の含有率が全ジアミン残基を基準として50モル%以上であることを特徴とする前記いずれかに記載のポリイミド管状成形体に関する。
【0017】
更に好ましい実施態様は、1000Vの電圧印加時における体積抵抗率が105〜1010Ω・cmの範囲にあり、かつ、1000Vの電圧印加時における表面抵抗率が106〜1011Ω/□の範囲にあることを特徴とする、前記いずれかに記載のポリイミド管状成形体に関する。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、本発明のポリイミド管状成形体に係る実施の形態をより詳しく説明する。
【0019】
本発明に係るポリイミド管状成形体は、樹脂の主成分がポリイミドであることが重要である。ここで、樹脂の主成分とは、全樹脂成分中、ポリイミドが50重量%以上であることを言い、更には70重量%以上であることが好ましい。ポリイミドは、ポリアミック酸の硬化反応により得られるものであり、ポリアミック酸は、酸二無水物成分、好ましくは芳香族テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを有機極性溶媒中で重合反応させて得られるものである。
【0020】
テトラカルボン酸二無水物成分としては特に制限はなく、例えば、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族または脂環式テトラカルボン酸二無水物;ピロメリット酸二無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4′−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4′−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4′−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3′,4,4′−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、2,3,3′,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4′−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4′−ジフェニルメタン二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物;1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。単独で用いる場合には、ピロメリット酸二無水物が耐屈曲性を所定の範囲内に制御しやすいので好ましく、2種以上組み合わせて用いる場合においても、全酸二無水物成分を基準として50モル%以上のピロメリット酸二無水物を用いることが好ましい。酸二無水物成分及びジアミン成分は、重合反応及び硬化反応の過程で各成分由来の残基へと転化するが、ポリイミドの諸特性を決定するのは該残基である。ピロメリット酸二無水物が全酸二無水物成分を基準として50モル%以上となるように用いることで、ピロメリット酸二無水物に由来する残基の、最終的に得られるポリイミド中の含有率が、全酸二無水物残基を基準として50モル%以上となるため、耐屈曲性を所定の範囲内に制御しやすいので好ましい。
【0021】
次に用いられるジアミン成分は、ジアミンであれば特に限定されないが、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルエタン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4′−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4′−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4′−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4′−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4′−ジアミノベンズアニリド、3,5−ジアミノ−3′−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5−ジアミノ−4′−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル、2,7−ジアミノフルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4′−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2′,5,5′−テトラクロロ−4,4′−ジアミノビフェニル、2,2′−ジクロロ−4,4′−ジアミノ−5,5′−ジメトキシビフェニル、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ジアミノビフェニル、4,4′−ジアミノ−2,2′−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4′−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、1,3′−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4′−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4′−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2′−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4′−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン;ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミンおよび脂環式ジアミン等を挙げることができる。これらのジアミン化合物は単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。単独で用いる場合には、4,4′−ジアミノジフェニルエーテルが耐屈曲性を所定の範囲内に制御しやすいので好ましく、2種以上組み合わせて用いる場合においても、全ジアミン成分を基準として50モル%以上の4,4′−ジアミノジフェニルエーテルを用いることが好ましい。
【0022】
ここで該ポリアミック酸の生成反応に使用される有機極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどをあげることができ、これらを単独または混合物として用いるのが望ましいが、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素も使用可能である。溶媒は、ポリアミック酸を溶解するものであれば特に限定されない。また、水は、ポリアミック酸の分解を促進するため、可能な限り除去されねばならない。
【0023】
ポリアミック酸の硬化反応は、熱による方法、ポリアミック酸を含む原料溶液中に触媒及び硬化剤を導入する方法、光による方法など、従来既知の方法を好適に用いることができる。しかしながら、生産性向上や、弾性率などのその他物性を好適に制御できることから、ポリアミック酸を含む原料溶液中に触媒及び硬化剤を導入する方法を、硬化反応の少なくとも一部に導入することが好ましい。触媒及び硬化剤を、ポリアミック酸を含む原料溶液中に導入する方法は特に限定されず、原料溶液中に触媒及び硬化剤を混練する方法、原料溶液中に触媒のみを混練した後、硬化剤若しくは硬化剤を含む溶液を噴霧、塗布、浸漬などの方法で原料溶液に接触させる方法、原料溶液に触媒と硬化剤を含む溶液を接触させる方法などが挙げられる。
【0024】
ここでいう硬化剤とは、ポリアミック酸に対する脱水閉環剤であれば制限無く用いることが可能で、例えばその主成分として、脂肪族酸無水物、芳香族酸無水物、N,N′−ジアルキルカルボジイミド、低級脂肪族ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪族酸無水物、アリールスルホン酸ジハロゲン化物、チオニルハロゲン化物またはそれら2種類以上の混合物が、好ましく用いうる。その中でも特に、脂肪族酸無水物及び芳香族酸無水物が良好に作用する。
【0025】
またここでいう触媒とは、硬化剤のポリアミック酸に対する脱水閉環作用を促進する効果を有する成分であれば制限無く用いることが可能で、例えば、脂肪族3級アミン、芳香族3級アミン、複素環式3級アミンが用いられ得る。そのうち、イミダゾ−ル、ベンズイミダゾ−ル、イソキノリン、キノリン、またはβ−ピコリンなどの置換もしくは非置換の含窒素複素環化合物であることが好ましい。
【0026】
さらに、硬化剤及び触媒を含有する溶液中に、有機極性溶媒を導入することも適宜選択され得る。
【0027】
中間転写体は、複数のロールに掛け渡された状態で用いられる。即ち、駆動時の中間転写体は、ロールに接触している部位での屈曲と、ロールと接触していない部位での屈曲開放を交互に付与されることになる。従って、中間転写体の長時間の駆動に際してクラック発生を少なくするためには、耐屈曲性を向上させることが重要となる。耐屈曲性は、MIT試験により定量化することが可能である。MIT試験は、JIS P8115で規定される方法で、例えば、東洋精機製作所社製MIT試験機を用いて行うことができる。MIT試験による耐屈曲回数は、大きい程部品寿命が長いと言え、実用的には5.0×103回を超えることで、装置寿命の間、優れた中間転写体として用いることが可能であり、好ましくは1.0×104回以上、より好ましくは1.3×104回以上であれば、特にクラックが発生し難くなる。耐屈曲回数の上限は特に規定されないが、実質的な上限としては、1.0×106回である。
【0028】
耐屈曲性を向上せしめる方法としては、例えば、酸二無水物成分として、ピロメリット酸二無水物を、ピロメリット酸二無水物に由来する残基の、最終的に得られるポリイミド中の含有率が、全酸二無水物残基を基準として50モル%以上、好ましくは70モル%以上となるように用いることや、ジアミン成分として、4,4′−ジアミノジフェニルエーテルを、4,4′−ジアミノジフェニルエーテルに由来する残基の、最終的に得られるポリイミド中の含有率が、全ジアミン残基を基準として50モル%以上、好ましくは70モル%以上となるように用いる方法が、代表的に例示される。
【0029】
本発明に係るポリイミド管状成形体は、ポリイミド樹脂を含めば、その他の成分は特に限定されず、最終的に得られるポリイミド管状成形体の特性を制御するために、有機、無機材料を問わず、さまざまな材料を導入することができる。例えば、抵抗値の制御の目的には、カーボンブラックをはじめとする導電性無機粉体を樹脂中に適量混合する方法が最も効果的である。カーボンブラック以外にも小径金属粒体、金属酸化物粒体、また酸化チタンや各種無機粒体・ウイスカーを金属酸化物など導電性物質で皮膜形成したもの等が、同様の効果を得ることができる。さらには、LiCl等のイオン導電性物質の添加も可能である。熱伝導性を制御する目的には、例えば窒化アルミニウム、窒化ホウ素、アルミナ、炭化珪素、珪素、シリカ、グラファイト等を用いることができる。中でも、熱伝導機能が高く、離型効果を発揮し、化学的に安定で、無害であるという点で、窒化ホウ素が特に好ましい。導入される無機粉体の量は、少なすぎるとその効果を十分に発揮できない恐れがあり、多すぎると耐屈曲性を著しく低下せしめる恐れがある。そのため、ポリイミド管状成形体に導入される無機粉体の量は、ポリイミド樹脂100重量部に対し、3〜90重量部、好ましくは5〜80重量部、より好ましくは10〜70重量部であることで、得られるポリイミド管状成形体の特性を好適に制御しうる。
【0030】
本発明に係るポリイミド管状成形体の体積抵抗率は、その用途を考慮すると106〜1011Ω・cmであることが好ましい。該ポリイミド管状成形体をレーザービームプリンターの中間転写体として用いた場合、体積抵抗率が小さすぎると白抜けが発生し、また、大きすぎると転写チリが発生するため好ましくない。
【0031】
同様に、本発明に係るポリイミド管状成形体の表面抵抗率は、その用途を考慮すると107〜1012Ω/□であることが好ましい。該ポリイミド管状成形体をレーザービームプリンターの中間転写体として用いた場合、表面抵抗率が小さすぎると白抜けが発生し、また、大きすぎると転写チリが発生するため好ましくない。
【0032】
また、本発明に係るポリイミド管状成形体とは、中空状成形体を意味し、その径や厚みの大小を問わない。従ってベルトと呼ばれる事の多い大口径のものにも、チューブと呼ばれる事の多い小径のものについても適用することができるものである。また、シームレスの成形体であっても、フィルムを重ねあわせや突き合わせの手段を用いつなぎ合わせ、中空状成形体としたものについても適用することができる。但し、本発明のポリイミド管状成形体を、例えば電子写真装置の中間転写ベルトとして用いる場合には、微細な段差であっても画質の低下に繋がるおそれがあるため、フィルムの重ね合わせや突き合わせの手段でつなぎ合わせた管状成形体よりもシームレスの成形体の方が好ましい。
【0033】
また、このポリイミド管状成形体において、他の成分を有する層を外層に積層することも適宜選択され得る。外層は、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(フッ化ビニリデン)などが例示されるが、これに限定されるものではない。
【0034】
ポリイミド管状成形体の厚さは、厚すぎると耐屈曲性が著しく低下するため好ましくなく、薄すぎると折れや座屈等が発生しやすくなるため好ましくない。この要請から、ポリイミド管状成形体の厚さは、60〜100μm、より好ましくは65〜90μmであることで、中間転写体として良好に用いることができる。ポリイミド管状成形体の厚さは、例えば、マイクロゲージ等を用いて容易に測定できる。
【0035】
次にポリイミド管状成形体を製造する具体的方法について一例を示して説明する。
【0036】
テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分を有機溶媒中で重合反応させてポリイミド樹脂前駆体酸溶液、すなわちポリアミック酸溶液を調製する。この場合、前述した理由により、50モル%以上のピロメリット酸二無水物と、50モル%以上の4,4′−ジアミノジフェニルエーテルを含むジアミン成分とを反応させて得たポリアミック酸が好ましい。
【0037】
またこの際、該溶液に針状フィラーやカーボンブラックをはじめとする無機粉体を適量混入せしめることも適宜選択され得る。針状フィラー、無機紛体等の添加物を混入せしめる手法としては、有機溶媒中に添加物を混入せしめ、しかる後に該有機溶媒中で上記成分を重合反応せしめる方法、重合反応の途中段階もしくは反応終了後の溶液に添加物もしくはその分散液を混入せしめる方法が挙げられる。針状フィラーや無機紛体を分散させ、その凝集体のサイズを縮小する手法としては、ミキサーや攪拌子による攪拌、平行ロール、超音波分散、ボールミルなどの物理的手法、さらには分散剤の導入などの化学的手法が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
このようにして得られたポリイミド管状成形体原料中に、上述した触媒及び硬化剤を混練するが、その手段は特に限定されない。さらには原料中に触媒のみを混練し、筒状やフィルム状に成形した後、硬化剤を含む溶液を接触させる方法や、原料を筒状やフィルム状の形状に成形した後、触媒及び硬化剤を含む溶液を接触させる方法であっても構わない。
【0039】
上述の手段で得られたポリイミド管状成形体原料を、筒状やフィルム状に成形する。ポリイミド管状成形体原料をその形状に成形する方法は特に限定されず、ポリイミド管状成形体原料をダイスから押し出す方法、金型をポリイミド管状成形体原料に浸漬する方法、金型にポリイミド管状成形体原料を噴霧する方法が挙げられる。さらに、筒状の場合には、遠心力を応用して筒状塗布膜の厚みを一定化させる、所謂遠心成形法も用いることができる。この工程でポリイミド管状成形体原料を100℃程度、実質的には70℃〜140℃の温度で加熱することで、硬化反応を促進させることも適宜選択されうる。
【0040】
上述のプロセスを経て自己支持性が発現し半硬化状態になった塗布膜を、さらに加熱することにより、溶媒を除去するとともに硬化反応をほぼ完全に終了させる。加熱の工程は、樹脂の収縮に起因する厚みムラや成形不良を防ぐため、筒状に成形した場合は、筒状塗布膜の内部に円筒若しくは円柱成形型を挿入することが好ましく、また、フィルム状に成形した場合は、平面方向にある張力を掛けた状態で加熱することが好ましい。フィルム状に成形した場合は、適当な大きさにスリットし、その端部を重ね合わせや突き合わせにより筒状に加工する。
【0041】
このようにして、目的のポリイミド管状成形体を得ることができる。
【0042】
【実施例】
本発明に係る実施例を以下に説明する。
【0043】
(実施例1)
攪拌翼がついた容器に、モレキュラーシーブにて十分に脱水したジメチルホルムアミド(DMF)を1500g入れ、4、4′−ジアミノジフェニルエーテル200gを加え、完全に溶解するまで攪拌した。この系を約0℃に冷却し、ピロメリット酸二無水物218gを徐々に加え、よく攪拌した。系の粘度が約3×102Pa・sになったところで攪拌を停止し、ポリイミド前駆体溶液を得た。
【0044】
次に大塚化学社製フィラーBK−400HR60gとDMF300gを別の容器に入れ、よく攪拌し、さらに超音波分散機にかけることで分散液中のフィラーを均一に分散させた。BK−400HRはその表面にカーボンをコートしたチタン酸カリウムからなる針状フィラーである。
【0045】
上記で得られた針状フィラー分散液を、118g採取し、よく攪拌した。このビーカー中に、上記で得られたポリイミド前駆体溶液300gを溶かし入れ、さらによく攪拌した。このようにして、硬化後のポリイミド樹脂100重量部に対して、針状フィラーを約30重量部含有するポリイミド管状成形体原料を調製した。
【0046】
該ポリイミド管状成形体原料中に、触媒であるイソキノリンを20g、硬化剤である無水酢酸を32g混練した。
【0047】
上記で得られたポリイミド管状成形体原料を、内径82mm、外径83.5mm、長さ450mmの筒状空間中に均一に注入し、塗布膜に自己支持性が発現するまで23℃・55%RHの雰囲気中に10分間静置した。前記筒状空間は、外径82mm、長さ450mmのSUS製内筒を、内径83.5mm、長さ450mmのSUS製外筒に挿入することで形成されるものである。次いで、該塗布膜を前記内筒及び外筒から取り外し、外径80mmのSUS製円筒焼成型に装着し、100℃から380℃まで、約30分かけて昇温した。最後に系を室温まで冷却し、目的のポリイミド管状成形体を得た。
【0048】
(実施例2)
触媒及び硬化剤を含まないことを除いて、実施例1と同様の原料溶液を内径82mm、長さ450mmのガラス管の内壁に均一に流延塗布し、100℃の熱風に40分間晒すことで溶媒を揮散させた。次いで、塗布膜を該ガラス管から取り外し、外径80mmのSUS製金型に装着し、100℃から380℃まで、約30分間かけて昇温した。最後に系を室温まで冷却し、目的のポリイミド管状成形体を得た。
【0049】
(実施例3)
BK−400HRの代わりに石原産業社製金属フィラーFTL−300を用いること、及び、分散液を236g用いることを除いて、実施例1と同様にポリイミド管状成形体を調製した。FTL−300は、酸化チタンからなる針状フィラーである。上記手段で、硬化後のポリイミドの乾燥重量100重量部に対して、金属フィラーを約60重量部含有するポリイミド管状成形体原料を調製した。
【0050】
(実施例4)
BK−400HRの分散液の代わりにライオン社製カーボンブラックEC−600JDの分散液を32g用いることを除いて、実施例2と同様にポリイミド管状成形体を調製した。EC−600JDの分散液は、EC−600JDを2gとDMF300gを別の容器に入れ、よく攪拌し、さらに超音波分散機にかけることで得た。上記手段で、硬化後のポリイミドの乾燥重量100重量部に対して、カーボンブラックを約3.5重量部含有するポリイミド管状成形体原料を調製した。
【0051】
(比較例1)
ポリイミド管状成形体原料を、内径82mm、外径84.6mm、長さ450mmの筒状空間中に均一に注入することを除いて、実施例1と同様にポリイミド管状成形体を調製した。前記筒状空間は、外径82mm、長さ450mmのSUS製内筒を、内径84.6mm、長さ450mmのSUS製外筒に挿入することで形成されるものである。
【0052】
(比較例2)
FTL−300の分散液を393g用いることを除いて、実施例3と同様にポリイミド管状成形体を調製した。上記手段で、硬化後のポリイミドの乾燥重量100重量部に対して、金属フィラーを約100重量部含有するポリイミド管状成形体原料を調製した。
【0053】
(比較例3)
4、4′−ジアミノジフェニルエーテル200gの代わりにp−フェニレンジアミン108gを、また、ピロメリット酸二無水物218gの代わりに3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物294gを用いてポリイミド前駆体を調製することを除いて、実施例1と同様にポリイミド管状成形体を調製した。
【0054】
(評価試験)
・画像評価及びベルト走行試験
得られたポリイミド管状成形体を、複写機である(株)リコー製フルカラー複写機プリテールに搭載し中間転写ベルトとして用い、A4サイズの画像を10000枚形成せしめた。その後、さらに1枚の画像を形成せしめ、その画像の評価を行った。転写チリ、転写ずれ、ボソツキがない良好な画像を○、それ以外を×とした。その後、ポリイミド管状成形体の状態を目視で確認した。
・耐屈曲回数測定
得られたポリイミド管状成形体から、15mm×120mmの試験片を、その長辺が周方向及び幅方向に平行な方向にそれぞれ10本づつ切り出し、東洋精機社製MIT試験機を用いてJIS P8115に規定された方法で耐屈曲回数の測定を行った。得られた値の平均値を、該ポリイミド管状成形体の耐屈曲回数とした。
・厚み測定
ミツトヨ社製マイクロゲージを用いて、ポリイミド管状成形体からランダムに5箇所厚みを採取した。得られた値の平均値を、該ポリイミド管状成形体の厚みとした。
・体積抵抗率測定及び表面抵抗率測定
ポリイミド管状成形体から10cm×10cmの試験片を切り出し、23℃・55%RHの雰囲気に24時間以上静置した。その後、同雰囲気下にて、レジスティビティチャンバR12702Aを装備したアドバンテスト社製高抵抗測定装置R8340を用いて、印加電圧1000V、電圧印加時間10secで測定した。
【0055】
以上の結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
表1に示すように、実施例のポリイミド管状成形体は、耐屈曲性が極めて大きいことからクラック発生がなく、電子写真記録装置の中間転写ベルトとして用いた場合にも、安定して良好な画像を提供できる。これに対して比較例では、クラック発生に起因する画像不良が発生していた。これは、耐屈曲性が小さいことに由来すると考えられる。
【0057】
以上、本発明に係るポリイミド管状成形体について説明したが、本発明は上述の形態に限定されるものではない。例示するまでもなく記述した範囲内で種々の変形を加えた態様で実施できるものである。
【0058】
【発明の効果】
本発明に係るポリイミド管状成形体は、電子写真装置の中間転写体材料として用いた場合、長時間駆動後においても極めて良好な画像を提供することができる。そのため、電子写真装置の消耗品であるポリイミド管状成形体の寿命が飛躍的に向上し、ひいては、電子写真装置のランニングコストを劇的に低減させることが可能となる。
【0059】
このように、従来技術に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大である。
Claims (6)
- ポリイミド樹脂を含有してなる筒状成形体であって、厚さが60〜100μmであり、かつJIS P8115で規定されるMIT試験による耐屈曲回数が5.0×103回以上であることを特徴とする、ポリイミド管状成形体。
- 厚さが65〜90μmであることを特徴とする、請求項1記載のポリイミド管状成形体。
- ポリイミド樹脂100重量部に対し、無機粉体を3〜90重量部含有していることを特徴とする、請求項1〜2のいずれかに記載のポリイミド管状成形体。
- 前記ポリイミド管状成形体を構成するポリイミド樹脂が、ピロメリット酸二無水物に由来する残基を有しており、該残基の含有率が全酸二無水物残基を基準として50モル%以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のポリイミド管状成形体。
- 前記ポリイミド管状成形体を構成するポリイミド樹脂が、4,4′−ジアミノジフェニルエーテルに由来する残基を有しており、該残基の含有率が全ジアミン残基を基準として50モル%以上であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のポリイミド管状成形体。
- 1000Vの電圧印加時における体積抵抗率が105〜1010Ω・cmの範囲にあり、かつ、1000Vの電圧印加時における表面抵抗率が106〜1011Ω/□の範囲にあることを特徴とする、請求項1〜5いずれか記載のポリイミド管状成形体。
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JP2006053190A (ja) * | 2004-08-09 | 2006-02-23 | Fuji Xerox Co Ltd | ポリイミド樹脂無端ベルト及び画像形成装置 |
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2002
- 2002-08-13 JP JP2002235308A patent/JP2004075753A/ja active Pending
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