JP2004226569A - 結晶性ポリエステル - Google Patents
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Abstract
【解決手段】1,6−ヘキサンジオールを60モル%以上含有したアルコール成分と、フマル酸を60モル%以上含有したカルボン酸成分とを縮重合させて得られた、軟化点と融解熱の最大ピーク温度の比(軟化点/ピーク温度)が0.6〜1.3である結晶性ポリエステルであって、テトラヒドロフラン可溶分の数平均分子量が1500〜10000であり、軟化点(Tm)が50〜120℃である結晶性ポリエステル、前記結晶性ポリエステルを含有してなるトナー用結着樹脂、並びに前記結着樹脂を含有してなるトナー。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される静電潜像の現像に用いられるトナーの結着樹脂として用いられ得る結晶性ポリエステル、該結晶性ポリエステルを含有したトナー用結着樹脂及び該結着樹脂を含有したトナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
高速化、小型化における電子写真の大きな課題である低温定着性の改善のため、いわゆる結晶性ポリエステルと非晶質樹脂を結着樹脂として含有したトナーが知られている(特許文献1〜4)。この技術により、それなりの低温定着性が満足されるようになったものの、高機能化、小型化に対する要望は、年々高まっており、より優れた低温定着性を示し、かつ、相反する性能となる紙凝集性を有するトナー、さらには、さらなる高機能化対応として環境安定性、機内汚染等に対する改善が強く望まれている。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−222138号公報(請求項1)
【特許文献2】
特開2002−284866号公報(請求項1、4)
【特許文献3】
特開2002−287426号公報(請求項1)
【特許文献4】
特開2002−328490号公報(請求項1)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、トナーの結着樹脂として用いられた際に、より優れた低温定着性を有し、紙凝集性、さらに環境安定性及び機内汚染が改善されたトナーが得られる結晶性ポリエステル、該結晶性ポリエステルを含有したトナー用結着樹脂及び該結着樹脂を含有したトナーを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
(1) 1,6−ヘキサンジオールを60モル%以上含有したアルコール成分と、フマル酸を60モル%以上含有したカルボン酸成分とを縮重合させて得られた、軟化点と融解熱の最大ピーク温度の比(軟化点/ピーク温度)が0.6〜1.3である結晶性ポリエステルであって、テトラヒドロフラン可溶分の数平均分子量が1500〜10000であり、軟化点(Tm)が50〜120℃である結晶性ポリエステル、
(2) 前記結晶性ポリエステルを含有してなるトナー用結着樹脂、並びに
(3) 前記結着樹脂を含有してなるトナー
に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明では、アルコール成分の主成分を1,6−ヘキサンジオール、カルボン酸成分の主成分をフマル酸にすることにより、低温定着性を損なうことなく、紙凝集性、環境安定性を改善し、機内汚染を低減することができる。これは、理由は不明なるも、1,6−ヘキサンジオールとフマル酸の組み合わせにより、高い結晶性を保ち、定着後の再固化を容易にして紙凝集性を改善し、かつポリエステルの軟化点を下げることができるためと推定される。さらに、疎水性の高い1,6−ヘキサンジオールにより、高温高湿下においても安定した帯電量を維持することができる。
【0007】
本発明の結晶性ポリエステルは、軟化点が非常に低く、トナーの結着樹脂として用いることにより、トナーの低温定着性が格段に向上する。即ち、本発明の結晶性ポリエステルの軟化点は、50〜120℃であり、好ましくは60〜100℃、より好ましくは70〜90℃である。また、融解熱の最大ピーク温度は50〜120℃が好ましく、60〜100℃がより好ましく、70〜90℃が特に好ましい。
【0008】
本発明の結晶性ポリエステルのテトラヒドロフラン可溶分の数平均分子量は、残存モノマーやオリゴマーの量を制限し、機内汚染を抑制する観点から、1500〜10000であり、好ましくは2000〜8000、より好ましくは2500〜5000である。
【0009】
本発明においては、軟化点と融解熱の最大ピーク温度の比(軟化点/ピーク温度)が0.6〜1.3、好ましくは0.9〜1.2、より好ましくは0.95〜1.1である樹脂を「結晶性」樹脂といい、また軟化点と融解熱の最大ピーク温度の比(軟化点/ピーク温度)が1.3より大きく4.0以下、好ましくは1.5〜3.0である樹脂を「非晶質」樹脂という。
【0010】
アルコール成分中の1,6−ヘキサンジオールの含有量は、60モル%以上であり、好ましくは75〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%である。
【0011】
1,6−ヘキサンジオール以外のアルコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール等の炭素数2〜6の脂肪族ジオール、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス (4−ヒドロキシフェニル) プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレン(炭素数2〜3)オキサイド(平均付加モル数1〜10)付加物等の芳香族ジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の3価以上のアルコールが挙げられる。これらの中では、結晶性の観点から、炭素数2〜6の脂肪族ジオールが好ましく、1,4−ブタンジオールがより好ましい。
【0012】
カルボン酸成分中のフマル酸の含有量は、60モル%以上であり、好ましくは60〜95モル%、より好ましくは70〜80モル%である。
【0013】
その他のカルボン酸としては、アジピン酸が好ましく、その含有量は、カルボン酸成分中、5〜40モル%が好ましく、20〜30モル%がより好ましい。
【0014】
フマル酸及びアジピン酸以外のカルボン酸成分としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、セバシン酸、アゼライン酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸等の炭素数2〜30、好ましくは2〜8の脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸等が挙げられる。これらの中では、炭素数2〜8の脂肪族ジカルボン酸が好ましい。なお、カルボン酸成分としては、カルボン酸、その無水物及びそのアルキル(炭素数1〜3)エステルを指すが、これらの中では、カルボン酸が好ましい。
【0015】
カルボン酸成分とアルコール成分を構成する原料モノマー種の数は、それぞれ1種又は2種が好ましく、両者を合わせて2種又は3種であるのがより好ましい。
【0016】
なお、結晶性ポリエステルにおけるカルボン酸成分とアルコール成分のモル比(カルボン酸成分/アルコール成分)は、低分子量成分を少なくするために、0.9〜1.1が好ましく、0.95〜1.05がより好ましい。
【0017】
アルコール成分とカルボン酸成分は、不活性ガス雰囲気中にて、要すればエステル化触媒、重合禁止剤等を用いて、120〜230℃の温度で反応させること等により縮重合させることができる。具体的には、樹脂の強度を上げるために全単量体を一括仕込みしたり、低分子量成分を少なくするために2価の単量体を先ず反応させた後、3価以上の単量体を添加して反応させる等の方法を用いてもよい。また、重合の後半に反応系を減圧することにより、反応を促進させてもよい。なお、本発明の結晶性ポリエステルの軟化点、分子量を調整するためには、前記のようにカルボン酸成分とアルコール成分のモル比を調整したり、反応温度、触媒量、減圧度、反応時間、原料モノマーの種類と比率等の反応条件を選択すればよい。なお、高分子量化した本発明のポリエステルを製造する場合、原料モノマーを非反応性低粘度樹脂や溶媒とともに反応させる方法も有効な手段である。
【0018】
さらに、本発明では、本発明の結晶性ポリエステルを含有したトナー用結着樹脂及び該結着樹脂を含有したトナーを提供する。
【0019】
結着樹脂における本発明の結晶性ポリエステルの含有量は、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは5〜40重量%、特に好ましくは10〜30重量%であり、本発明の結着樹脂には、さらに非晶質樹脂が含有されているのが好ましい。
【0020】
なお、結晶性ポリエステルが2種以上の樹脂からなる場合は、その少なくとも1種、好ましくはそのいずれもが以上に説明した結晶性ポリエステルであるのが望ましい。
【0021】
非晶質樹脂としては、非晶質ポリエステル、非晶質ポリエステルポリアミド、非晶質スチレン−アクリル樹脂等のビニル系樹脂、2種以上の樹脂成分が部分的に化学結合したハイブリッド樹脂、これらの混合物等が挙げられ、これらの中では、定着性や結晶性ポリエステルとの相溶性の観点から、非晶質ポリエステル及び非晶質ポリエステル成分とビニル系樹脂成分とを有するハイブリッド樹脂が好ましく、非晶質ポリエステルがより好ましい。
【0022】
非晶質ポリエステルも、結晶性ポリエステルと同様にして製造することができる。ただし、非晶質ポリエステルとするためには、
▲1▼ 炭素数2〜6の脂肪族ジオール、炭素数2〜8の脂肪族カルボン酸化合物等の樹脂の結晶化を促進するモノマーを用いる場合は、これらのモノマーを2種以上併用して結晶化を抑制する、即ちアルコール成分及びカルボン酸成分のいずれにおいても、これらのモノマーの1種が各成分中10〜70モル%、好ましくは20〜60モル%を占め、かつこれらのモノマーが2種以上、好ましくは2〜4種用いられていること、又は
▲2▼ 樹脂の非結晶化を促進するモノマー、好ましくはアルコール成分ではビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、またはカルボン酸成分ではアルキル基もしくはアルケニル基で置換されたコハク酸が、より好ましくはビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が、各成分中、特に好ましくはアルコール成分及びカルボン酸成分のそれぞれにおいて30〜100モル%、好ましくは50〜100モル%用いられていること
が好ましい。
【0023】
また、非晶質ポリエステルポリアミドは、前記の多価アルコール成分及び多価カルボン酸成分に加えてさらに、アミド成分を形成するために、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、フェニレンジアミン等のポリアミン、6−アミノカプロン酸、ε−カプロラクタム等のアミノカルボン酸類、プロパノールアミン等のアミノアルコール等が原料モノマーとして用いられ、これらの中ではヘキサメチレンジアミン及びε−カプロラクタムが好ましい。
【0024】
非晶質ポリエステルポリアミドも、非晶質ポリエステルと同様にして製造することができる。
【0025】
ビニル樹脂はスチレンや(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸等のラジカル重合反応可能なモノマーを各種重合開始剤を用いて重合することにより得られる。なお、重合は、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、バルク重合等いずれの方法によってもよい。
【0026】
本発明において、ハイブリッド樹脂は、2種以上の樹脂を原料として得られたものであっても、1種の樹脂と他種の樹脂の原料モノマーから得られたものであっても、さらに2種以上の樹脂の原料モノマーの混合物から得られたものであってもよいが、効率よくハイブリッド樹脂を得るためには、2種以上の樹脂の原料モノマーの混合物から得られたものが好ましい。
【0027】
従って、ハイブリッド樹脂としては、各々独立した反応経路を有する二つの重合系樹脂の原料モノマー、好ましくは縮重合系樹脂の原料モノマーと付加重合系樹脂の原料モノマーを混合し、該二つの重合反応を行わせることにより得られる樹脂が好ましく、具体的には、特開平10−087839号公報に記載のハイブリッド樹脂が好ましい。
【0028】
縮重合系樹脂の代表例としては、ポリエステル、ポリエステルポリアミド、ポリアミド等が挙げられ、これらの中ではポリエステルが好ましく、前記付加重合系樹脂の代表例としては、ラジカル重合反応により得られるビニル系樹脂等が挙げられる。
【0029】
非晶質樹脂の軟化点は、好ましくは70〜180℃、より好ましくは100〜160℃、ガラス転移点は、好ましくは45〜80℃、より好ましくは55〜75℃である。なお、ガラス転移点は非晶質樹脂に特有の物性であり、融解熱の最大ピーク温度とは区別される。
【0030】
非晶質樹脂のテトラヒドロフラン(THF)可溶分の数平均分子量は、1500〜10000が好ましく、2000〜5000がより好ましい。
【0031】
なお、非晶質樹脂が2種以上の樹脂からなる場合は、その少なくとも1種、好ましくはそのいずれもが以上に説明した物性を有する非晶質樹脂であるのが望ましい。特に、低温定着性と耐オフセット性の観点から、軟化点が70℃以上、120℃未満の低軟化点樹脂と軟化点が120℃以上、160℃以下の高軟化点樹脂とが、好ましくは30/70〜95/5の重量比(低軟化点樹脂/高軟化点樹脂)で併用されているのが好ましい。
【0032】
結晶性ポリエステルと非晶質樹脂の重量比(結晶性ポリエステル/非晶質樹脂)は、保存性、低温定着性及び耐久性の観点から、1/99〜50/50が好ましく、5/95〜40/60がより好ましく、10/90〜30/70が特に好ましい。
【0033】
本発明のトナーには、本発明の結着樹脂に加えて、さらに、ワックスが含有されているのが好ましい。
【0034】
ワックスとしては、カルナウバワックス、ライスワックス等の天然エステル系ワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプッシュ等の合成ワックス、モンタンワックス等の石炭系ワックス、アルコール系ワックス等のワックスが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して含有されていてもよい。
【0035】
ワックスの融点は、結晶性ポリエステルとの相溶性及び耐オフセット性の観点から、結晶性ポリエステルの軟化点(Tm)−30℃〜Tm+20℃が好ましく、Tm−20℃〜Tm+20℃がより好ましく、Tm−15℃〜Tm+15℃が特に好ましい。特に、天然エステル系ワックスで上記融点のものが好ましい。
【0036】
ワックスの含有量は、結着樹脂100重量部に対して、0.1〜5重量部が好ましく、0.5〜2重量部がより好ましい。
【0037】
本発明のトナーには、本発明の結着樹脂に加えて、さらに、着色剤、荷電制御剤、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、流動性向上剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が、適宜含有されていてもよい。
【0038】
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146 、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾエロー等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができ、本発明のトナーは、黒トナー、カラートナー、フルカラートナーのいずれにも使用することができるが、低温定着性が特に要求されるカラートナーが好ましい。着色剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、1〜40重量部が好ましく、3〜10重量部がより好ましい。
【0039】
荷電制御剤としては、ニグロシン染料、3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等の正帯電性荷電制御剤及び含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸のアルキル誘導体の金属錯体、ベンジル酸のホウ素錯体等の負帯電性荷電制御剤が挙げられる。
【0040】
本発明のトナーは、混練粉砕法、乳化転相法、重合法等の従来より公知のいずれの方法により得られたものであってもよいが、製造が容易であり、本発明の効果が顕著に発揮されることから、混練粉砕法により得られた粉砕トナーが好ましい。なお、混練粉砕法によりトナーを得る場合、結着樹脂、着色剤等をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー又は1軸もしくは2軸の押出機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して製造することができる。さらに、トナーの表面には、必要に応じて疎水性シリカ等の流動性向上剤等が外添されていてもよい。トナーの体積平均粒径は、3〜15μmが好ましい。
【0041】
本発明のトナーは、磁性体微粉末を含有するときは単独で現像剤として、また磁性体微粉末を含有しないときは非磁性一成分系現像剤として、もしくはキャリアと混合して二成分系現像剤として、特には本発明の効果がより顕著に発揮される非磁性現像剤として使用することができる。
【0042】
【実施例】
〔軟化点〕
高化式フローテスター((株)島津製作所製、CFT−500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルを押し出すようにし、これによりフローテスターのプランジャー降下量(流れ値)−温度曲線を描き、そのS字曲線の高さをhとするときh/2に対応する温度(樹脂の半分が流出した温度)を軟化点とする。
【0043】
〔融解熱の最大ピーク温度、ガラス転移点及びワックスの融点〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で測定し、融解熱の最大ピーク温度を求める。かかる最大ピーク温度をワックスでは融点とする。また、ガラス転移点は、非晶質樹脂における前記測定で最大ピーク温度以下のベースラインの延長線と、ピークの立ち上がり部分からピークの頂点まで最大傾斜を示す接線との交点の温度とする。
【0044】
〔テトラヒドロフラン可溶分の数平均分子量(THF可溶分のMn)〕
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により分子量分布を測定する。
100ml容のフタ付ガラスビンに樹脂粉体0.25gをTHF49.75gに添加し、ボールミルで室温にて4時間混合する。次いでこの溶液をポアサイズ0.2μmのフッ素樹脂フィルター(東洋濾紙社製、DISMIC−25−JP)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とする。
溶離液としてTHFを毎分1mlの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させ、そこに試料溶液100μlを注入して測定を行う。試料の分子量は予め作成した検量線に基づき算出する。なお、分析カラムには「GMHXL+G3000HXL」(東ソー(株)製)を使用し、分子量の検量線は数種類の単分散ポリスチレンを標準試料として作成する。
【0045】
結晶性ポリエステルの製造例
表1〜3に示す原料モノマー、酸化ジブチル錫4g及びハイドロキノン2gを窒素雰囲気下、160℃で5時間かけて反応させた後、200℃に昇温して1時間反応させた。さらに8.3kPaにて所望の軟化点の樹脂が得られるまで反応させて、樹脂a〜oを得た。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
非晶質ポリエステルの製造例1
表4に示す原料モノマー及び酸化ジブチル錫4gを窒素雰囲気下、220℃で8時間かけて反応させた。さらに8.3kPaで所望の軟化点に達するまで反応させて、樹脂Aを得た。
【0050】
非晶質ポリエステルの製造例2
表4に示す無水トリメリット酸以外の原料モノマー及び酸化ジブチル錫4gを窒素雰囲気下、220℃で8時間かけて反応させた。さらに8.3kPaで1時間反応させた後、210℃で表4に示す無水トリメリット酸を添加し、所望の軟化点に達するまで反応させて、樹脂Bを得た。
【0051】
【表4】
【0052】
実施例1、3〜13、比較例1〜7
表5に示す結晶性ポリエステル20重量部、樹脂A 65重量部、樹脂B 15重量部、表5に示すワックス1重量部、カーボンブラック「MOGUL L」(キャボット社製)3.5重量部及び荷電制御剤「T−77」(保土谷化学工業社製)1重量部をヘンシェルミキサーで十分に混合した後、同方向回転二軸押出機(混練部分の全長:1560mm、スクリュー径:42mm、バレル内径:43mm)を用い、ロール回転速度を200回転/分、ロール内の加熱温度を100℃、混合物の供給速度を10kg/時に調整して溶融混練した。混練物の出口温度は約150℃、混合物の平均滞留時間は約18秒であった。得られた溶融混練物を、冷却、粗粉砕した後、ジェットミルにより粉砕し分級して、体積平均粒子径が8.0μmの粉体を得た。得られた粉体100重量部に、外添剤として「アエロジル R−972」(日本アエロジル(株)製)1.5重量部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合することにより、トナーを得た。
【0053】
実施例2
荷電制御剤として「T−77」の代わりに「LR−147」(日本カーリット社製)1重量部を、カーボンブラックの代わりに、シアン顔料「ECB−301」(大日精化社製)3.5重量部を、それぞれ使用した以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。
【0054】
試験例1〔低温定着性及び耐オフセット性〕
トナー4重量部とシリコーンコートフェライトキャリア(関東電化工業社製、平均粒子径:90μm)96重量部とを10分間ターブラーミキサーにて混合して現像剤を得た。次いで、複写機「AR−505」(シャープ(株)製、定着速度:100mm/sec)を装置外での定着が可能なように改造した装置に、現像剤を実装し、トナー付着量を0.5mg/cm2 に調整して、2cm×12cmの未定着画像を得た。定着ロールの温度を90℃から240℃へと5℃づつ順次上昇させながら未定着画像を定着させ、定着試験を行った。定着紙には、「CopyBond SF−70NA」(シャープ社製、75g/m2 )を用いた。
【0055】
a.低温定着性
各定着温度で得られた画像を、500gの荷重をかけた底面が15mm×7.5mmの砂消しゴムで5往復擦り、擦る前後の光学反射密度を反射濃度計「RD−915」(マクベス社製)を用いて測定した。両者の比率(擦り後/擦り前)が最初に70%を超える定着ローラーの温度を最低定着温度とし、以下の評価基準に従って、低温定着性を評価した。なお、この温度では定着ロールにトナーが付着する場合があるが、この点は下記の耐オフセット性で評価した。結果を表5に示す。
【0056】
〔評価基準〕
◎ : 最低定着温度が110℃未満
○ : 最低定着温度が110℃以上、130℃未満
× : 最低定着温度が130℃以上
【0057】
b.耐オフセット性
さらに、オフセットの発生を目視により観察し、以下の評価基準に従って、耐オフセット性を評価した。結果を表5に示す。
【0058】
〔評価基準〕
トナーが定着ロールに付着しなくなる温度が、
◎ : 最低定着温度+10℃未満
○ : 最低定着温度+10℃以上、+30℃未満
× : 最低定着温度+30℃以上
【0059】
試験例2〔環境安定性〕
試験例1と同様にして調製した現像剤を、40℃、16kPaの条件下で4時間放置した後、デシケーター中で20℃まで冷却した。冷却した現像剤を、20℃、相対湿度55%又は30℃、相対湿度80%の環境下でそれぞれ1日放置し、10分間攪拌した後、「q/m Meter MODEL 210HS」(TREK社製)を用いて帯電量を測定し、環境安定性を評価した。結果を表5に示す。
【0060】
〔評価基準〕
20℃、相対湿度55%で1日放置し、10分間攪拌した後の帯電量をA(μC/g)、30℃、相対湿度80%で1日放置し、10分間攪拌した後の帯電量をB(μC/g)とした時、
◎ : B/Aが0.7以上
○ : B/Aが0.5以上、0.7未満
× : B/Aが0.5未満
【0061】
試験例3〔機内汚染〕
トナー1gをスライドガラスでふたをした容器に入れ、180℃で10分間加熱し、スライドガラスに付着した揮発分を、1gのKBrで拭い取り、十分に混合し、KBr錠剤を調製した。調製したKBr錠剤について、赤外吸収スペクトルを測定し、以下の評価基準に従って揮発性を評価した。結果を表5に示す。
【0062】
〔評価基準〕
モノマー及びポリマーに起因するピーク(1720cm−1付近のピーク)が
◎ : ほとんど観測されない。
○ : かろうじて観測される。
× : はっきり観測される。
【0063】
試験例4〔紙凝集性〕
試験例1と同様にして調製した現像剤を、複写機「AR−505」(シャープ(株)製、定着温度:140℃、定着速度:100mm/sec)に実装し、「CopyBond SF−70NA」(シャープ社製、75g/m2 )を定着紙として用い、印字率10%の画像を10枚印刷した。画像を印刷した定着紙10枚を重ね合わせ、その上に、500枚の白紙の定着紙をのせて、70℃、相対湿度60%の環境下で1時間放置し、以下の評価基準に従って、紙凝集性を評価した。結果を表5に示す。
【0064】
〔評価基準〕
◎ : 放置後も紙同士はくっつかなかった。また、裏汚れもしなかった。
○ : 紙同士はくっつかなかったが、一部裏汚れした。
× : 紙同士がくっつき一束になった。
【0065】
【表5】
【0066】
以上の結果より、実施例のトナーは、比較例のトナーと対比して、低温定着性、紙凝集性、環境安定性、機内汚染及び耐オフセット性のいずれにおいても、比較的良好な結果が得られていることが分かる。
【0067】
【発明の効果】
本発明の結晶性ポリエステルをトナーの結着樹脂として用いることにより、より優れた低温定着性を有し、紙凝集性、さらに環境安定性及び機内汚染が改善されたトナーが得られるという優れた効果が奏される。
Claims (5)
- 1,6−ヘキサンジオールを60モル%以上含有したアルコール成分と、フマル酸を60モル%以上含有したカルボン酸成分とを縮重合させて得られた、軟化点と融解熱の最大ピーク温度の比(軟化点/ピーク温度)が0.6〜1.3である結晶性ポリエステルであって、テトラヒドロフラン可溶分の数平均分子量が1500〜10000であり、軟化点(Tm)が50〜120℃である結晶性ポリエステル。
- カルボン酸成分に、アジピン酸が5〜40モル%含有されている請求項1記載の結晶性ポリエステル。
- 請求項1又は2記載の結晶性ポリエステルを含有してなるトナー用結着樹脂。
- 請求項3記載の結着樹脂を含有してなるトナー。
- さらに、結晶性ポリエステルの軟化点(Tm)−30℃〜Tm+20℃の融点を有するワックスを含有してなる請求項4記載のトナー。
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