JP2004218585A - 圧縮機及び圧縮機のハウジングの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐圧性に優れてなおかつ小型・軽量であって、さらには製造コストの低減と設計の自由度を高めることとを両立できる圧縮機を提供すること。
【解決手段】ハウジング11において、第1ハウジング構成体12の円筒部31及びシリンダヘッド部32、第2ハウジング構成体13の円筒部33及び底部34が、アルミニウム製外郭51,52,55,56の外側に鉄製外郭53,54,57,58が密着配置された二層構造を有している。
【選択図】 図1
【解決手段】ハウジング11において、第1ハウジング構成体12の円筒部31及びシリンダヘッド部32、第2ハウジング構成体13の円筒部33及び底部34が、アルミニウム製外郭51,52,55,56の外側に鉄製外郭53,54,57,58が密着配置された二層構造を有している。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば車両空調装置の冷凍サイクルに用いられる圧縮機、及び該圧縮機に用いられるハウジングの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、環境に対する影響を配慮して、冷凍サイクルの冷媒に二酸化炭素を用いることが提案されている。この種の冷凍サイクルは超臨界冷凍サイクルと呼ばれている。しかし、超臨界冷凍サイクルでは、圧縮機内の特に吐出圧雰囲気が、フロン冷媒の冷凍サイクルと比較して高圧となる。従って、フロン冷媒の冷凍サイクル用の圧縮機ではそれほど配慮する必要のなかったハウジングの耐圧性についても、超臨界冷凍サイクル用の圧縮機では十分な配慮が必要となる。
【0003】
通常、冷凍サイクル用の圧縮機は、アルミニウム製又は鉄製のハウジングを備えている。しかし、超臨界冷凍サイクルに用いるために、アルミニウム製のハウジングの耐圧性を確保しようとすると厚肉となり、圧縮機の寸法が増大する問題を生じてしまう。また、鉄製のハウジングでは圧縮機の重量増の問題を生じてしまう。
【0004】
このような問題を解決するために、ハウジングにおいて、耐圧性を要求される部分は鉄製として強度を高めるとともに、耐圧性をそれほど要求されない部分についてはアルミニウム製として軽量化を図ることが提案されている。すなわち、例えば特許文献1では、圧縮機のハウジングが備えるシリンダヘッドにおいて、低圧室たる吸入室と外気とを隔てる隔壁をアルミニウム系の材料により製作するとともに、吸入室と高圧室たる吐出室とを隔てる隔壁、及び吐出室と外気とを隔てる隔壁を、鉄系の材料により製作することが提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−123957号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、圧縮機のハウジングを、耐圧性の要求度合いに基づいて鉄製の部分とアルミニウム製の部分とに作り分けることは、圧縮機の製造コスト低減と設計の自由度を高めることとを両立し得ない問題を生じる。
【0007】
つまり、ハウジングの製造コストは、当然ながら形状が複雑となるほど上昇する。また、例えばハウジングを鋳造する場合、アルミニウム鋳造よりも鉄鋳造の方が寸法精度が低くなるために後加工が面倒となり、製造コストが上昇する。
【0008】
ここで、例えば、車両空調装置に用いられる圧縮機は、該圧縮機を車両に対して取り付けるための取付足がハウジングに設けられている。ハウジングの鉄製部分に対して取付足を一体形成すると該鉄製部分の形状が複雑となり、しかも、前述した鉄鋳造における寸法精度の問題から製造コストが上昇してしまう。従って、ハウジングを鉄製の部分とアルミニウム製の部分とに作り分けた場合には、圧縮機の製造コストを低減するために、取付足をアルミニウム製部分に一体形成する必要がある。よって、ハウジングにおける取付足の配置位置が限定される問題、つまり圧縮機の設計の自由度が阻害される問題を生じ、該圧縮機を適用可能な車両の種類が限定されてしまう。
【0009】
本発明の目的は、耐圧性に優れてなおかつ小型・軽量であって、さらには製造コストの低減と設計の自由度を高めることとを両立できる圧縮機、及び該圧縮機のハウジングの製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1の発明の圧縮機は、ハウジングの少なくとも一部が、アルミニウム系の材料よりなるアルミニウム製外郭と鉄系の材料よりなる鉄製外郭とを備えた多層構造を有している。従って、該多層構造の部分においては、一部が鉄製外郭であることによって耐圧性を高めることができるとともに小型化を図ることができるし、一部がアルミニウム製外郭であることによって軽量化を図ることもできる。
【0011】
また、前記鉄製外郭の配置によっても、アルミニウム製外郭の配置位置が特許文献1のように限定されることがない。言い換えれば、ハウジングにおいて耐圧性を確保したい部分にも、アルミニウム製外郭を配置することができる。従って、例えば、アルミニウム製外郭に一体形成したい圧縮機の特定部位(例えば取付足)のハウジングにおける配置位置の自由度が向上する。よって、前記特定部位を、鉄製よりも加工が容易なアルミニウム製外郭に形成することでの製造コストの低減と、設計の自由度を高めることとを両立することができる。
【0012】
請求項2の発明は請求項1において、前記ハウジングの多層構造を限定するものである。すなわち、前記ハウジングの少なくとも一部は、アルミニウム製外郭と、該アルミニウム製外郭の内側又は外側に密着配置された鉄製外郭とからなる二層構造を有している。
【0013】
請求項3の発明は請求項1又は2において、アルミニウム製外郭に一体形成することで製造コストを低減したい、圧縮機の特定部位を限定するものである。すなわち、前記圧縮機を取付対象へ取り付けるための取付足は、ハウジングのアルミニウム製外郭に一体形成されている。
【0014】
請求項4の発明は請求項3において、前記鉄製外郭は、アルミニウム製外郭の外側に配置されている。鉄製外郭には、アルミニウム製外郭の取付足を外方へ取り出すための取出孔又は切欠が形成されている。つまり、鉄製外郭の内側にアルミニウム製外郭を配置したとしても、該鉄製外郭に取出孔又は切欠を形成するのみの簡単な構成によって、アルミニウム製外郭に取付足を形成する構成を採用することができる。
【0015】
なお、ハウジングにおいて、鉄製外郭に取出孔又は切欠が形成された部分は、該鉄製外郭による補強効果が薄らいでしまう。しかし、該部分は、取付足によってアルミニウム製外郭が厚肉となっており、鉄製外郭の補強を期待しなくとも十分な強度を確保することができる。
【0016】
請求項5の発明は請求項1〜4のいずれかにおいて、前記ハウジングは、シリンダブロックを取り囲む筒状部を備えている。ハウジングにおいて少なくとも筒状部が、鉄製外郭とアルミニウム製外郭とを備えた多層構造を有している。従って、ハウジングにおいて少なくとも筒状部を、耐圧性に優れてなおかつ小型・軽量にでき、さらには製造コストの低減と設計の自由度を高めることとを両立することができる。
【0017】
請求項6の発明は請求項1〜5のいずれかにおいて、前記ハウジングは、吸入室と吐出室とを形成したシリンダヘッドを備えている。ハウジングにおいて少なくともシリンダヘッドが、鉄製外郭とアルミニウム製外郭とを備えた多層構造を有している。従って、ハウジングにおいて少なくともシリンダヘッドを、耐圧性に優れてなおかつ小型・軽量にでき、さらには製造コストの低減と設計の自由度を高めることとを両立することができる。
【0018】
請求項7の発明のハウジングの製造方法においては、アルミニウム製外郭を鋳造により製作する。そして、アルミニウム製外郭の鋳造の際には、予め製作しておいた鉄製外郭を一緒に鋳込むことで、鉄製外郭とアルミニウム製外郭とからなる多層構造のハウジングを得ることができる。
【0019】
このように、アルミニウム製外郭の鋳造の際に鉄製外郭を一緒に鋳込む手法を採用することで、例えば、両外郭を別個に製作した後、ボルト止め等によって接合する場合と比較して工程を省くことができ、ハウジングを安価に製造することができる。また、鉄製外郭が鋳型の一部をなすこととなるため、アルミニウム製外郭の鋳型を安価に製作することができるし、アルミニウム製外郭における鉄製外郭との接合部分の後加工も必要がない。これらも圧縮機の製造コストの低減につながる。
【0020】
請求項8の発明は請求項7において、前記鉄製外郭はプレス加工によって製作されている。プレス加工は、鋳造と比較して後加工がほとんど不要で、特に後加工がアルミニウム製と比較して面倒な鉄製外郭を安価に製作することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の圧縮機を、冷媒に二酸化炭素を用いた車両用空調装置の超臨界冷凍サイクルを構成する冷媒圧縮機において具体化した、第1及び第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態においては第1実施形態との相違点についてのみ説明し、第1実施形態と同一又は相当部材には同じ番号を付して説明を省略する。
【0022】
○第1実施形態
先ず、冷媒圧縮機としての容量可変型圧縮機(以下圧縮機とする)の全体構成について説明する。
【0023】
図1に示すように、圧縮機10の外郭をなすハウジング11は、第1ハウジング構成体12と第2ハウジング構成体13とからなっている。第1ハウジング構成体12は、筒状部としての円筒部31と、該円筒部31の図面左方側の開口を閉塞するようにして配置された、シリンダヘッドとしてのシリンダヘッド部32とからなっている。第2ハウジング構成体13は、円筒部33と、該円筒部33の図面右方側の開口を閉塞するようにして配置された底部34とからなっている。第1ハウジング構成体12と第2ハウジング構成体13とは、円筒部31,33の対向端面(開口端面)を以て互いに接合されるとともに、図示しないスルーボルトによって締結固定されている。
【0024】
前記ハウジング11内には、円柱状をなすシリンダブロック14が収容されている。シリンダブロック14は、第1ハウジング構成体12において円筒部31の内側に挿入配置されている。つまり、円筒部31は、シリンダブロック14を取り囲むようにして配置されている。円筒部31の内周面31aにおいてシリンダヘッド部32側には、シリンダブロック14の円筒部31内への挿入距離を規定する段差31bが形成されている。段差31bとシリンダブロック14との間には、弁・ポート形成体15が配置されている。シリンダブロック14と弁・ポート形成体15は、それらを挿通するスルーボルト16によって、第1ハウジング構成体12のシリンダヘッド部32に締結固定されている。
【0025】
前記第2ハウジング構成体13において円筒部33の内側には、シリンダブロック14とで囲まれてクランク室17が形成されている。駆動軸18は、弁・ポート形成体15に形成された透孔を遊貫するとともに、第1端部(図面左方側の端部)の先端側が、第1ハウジング構成体12のシリンダヘッド部32に突設されたボス32aを介して外方へ突出し、車両の走行駆動源であるエンジンEに対して図示しない動力伝達機構を介して作動連結されている。駆動軸18は、第2端部(図面右方側の端部)がクランク室17内に配置された状態でハウジング11に回転可能に支承されている。従って、駆動軸18は、エンジンEから動力の供給を受けて回転駆動される。
【0026】
前記第1ハウジング構成体12においてシリンダヘッド部32の内壁面32bには、弁・ポート形成体15と対向する位置に、駆動軸18の第1端部を取り囲むようにほぼ環状の隔壁32cが突設されている。隔壁32cの先端面は弁・ポート形成体15の端面に当接されている。従って、ハウジング11内において第1ハウジング構成体12と弁・ポート形成体15とで囲まれた領域内には、隔壁32cの内側に吸入室19が形成されるとともに、隔壁32cの外側には、吸入室19を取り囲むようにほぼ環状の吐出室20が区画形成されている。
【0027】
前記吸入室19内において第1ハウジング構成体12のシリンダヘッド部32には、弁・ポート形成体15と対向する側に収容凹部32dが形成されている。収容凹部32dには、駆動軸18の第1端部を封止する軸封装置21が配設されている。軸封装置21としては、メカニカルシールやリップシール等が挙げられる。
【0028】
前記シリンダブロック14には、クランク室17と吸入室19とを連通するように軸孔14aが形成されている。第2ハウジング構成体13の底部34には、クランク室17側に収容凹部34aが形成されている。駆動軸18は軸孔14a、吸入室19、収容凹部32d及びボス32aを貫通した状態で、中間部が軸孔14a内に配設された第1ラジアルベアリング22を介して、シリンダブロック14に回転可能に支持されている。駆動軸18の第2端部は、底部34の収容凹部34a内に配設された第2ラジアルベアリング23を介して第2ハウジング構成体13に回転可能に支持されている。
【0029】
前記クランク室17において駆動軸18上には、ラグプレート24が一体回転可能に固定されている。クランク室17内にはカムプレートとしての斜板25が収容されている。斜板25は、駆動軸18にスライド移動可能でかつ傾動可能に支持されている。ヒンジ機構26は、ラグプレート24と斜板25との間に介在されている。従って、斜板25は、ヒンジ機構26を介することで、ラグプレート24及び駆動軸18と同期回転可能であるとともに、駆動軸18に対して傾動可能となっている。
【0030】
複数(図面には一つのみ示す)のシリンダボア14bは、駆動軸18を等角度間隔にて取り囲むようにしてシリンダブロック14に形成されている。片頭型のピストン27は、各シリンダボア14bに往復動可能に収容されている。各ピストン27は、シュー28を介して斜板25の外周部に係留されている。従って、駆動軸18の回転にともなう斜板25の回転運動が、シュー28を介してピストン27の往復運動に変換される。
【0031】
前記シリンダボア14bの前後開口は、弁・ポート形成体15及びピストン27によって閉塞されており、シリンダボア14b内にはピストン27の往復動に応じて体積変化する圧縮室29が区画されている。そして、吸入室19の冷媒ガスは、各ピストン27の上死点位置から下死点側への移動により、弁・ポート形成体15に形成された吸入ポート15a及び吸入弁15bを介して圧縮室29に吸入される。圧縮室29に吸入された冷媒ガスは、ピストン27の下死点位置から上死点側への移動により所定の圧力にまで圧縮され、弁・ポート形成体15に形成された吐出ポート15c及び吐出弁15dを介して吐出室20に吐出される。
【0032】
前記ハウジング11の外側には、第1ハウジング構成体12の円筒部31に設けられたマフラ構成部31cと、第2ハウジング構成体13の円筒部33に設けられたマフラ構成部33aとの接合によって、中空状の吐出マフラ38が構成されている。吐出室20の冷媒ガスは、吐出マフラ38の内空間を介することで脈動が低減された後、図示しない外部冷媒回路へと排出される。
【0033】
前記ハウジング11内には抽気通路41及び給気通路42が設けられている。抽気通路41はクランク室17と吸入室19とを連通する。給気通路42は吐出室20とクランク室17とを連通する。給気通路42の途中には、電磁弁よりなる周知の構成の制御弁43が配設されている。制御弁43は、第1ハウジング構成体12のマフラ構成部31cから第2ハウジング構成体13のマフラ構成部33a側に向かって延出された取付座31dに取り付けられている。
【0034】
そして、前記制御弁43の開度を調節することで、給気通路42を介したクランク室17への高圧な吐出ガスの導入量と抽気通路41を介したクランク室17からのガス導出量とのバランスが制御され、クランク室17の内圧が決定される。クランク室17の内圧変更に応じて、ピストン27を介してのクランク室17の内圧と圧縮室29の内圧との差が変更され、斜板25の傾斜角度が変更される結果、ピストン27のストロークすなわち圧縮機10の吐出容量が調節される。
【0035】
次に、前記圧縮機10のハウジング11について詳述する。
前記ハウジング11は、第1ハウジング構成体12の円筒部31のほぼ全部とシリンダヘッド部32の一部とが、アルミニウム系の材料(純アルミニウムも含む)よりなるアルミニウム製外郭51,52と、鉄系の材料(純鉄も含む)よりなる鉄製外郭53,54とを備えた二層構造を有している。また、ハウジング11は、第2ハウジング構成体13の円筒部33のほぼ全部と底部34の一部とが、アルミニウム系の材料(純アルミニウムも含む)よりなるアルミニウム製外郭55,56と、鉄系の材料(純鉄も含む)よりなる鉄製外郭57,58とを備えた二層構造を有している。
【0036】
すなわち、前記第1ハウジング構成体12の円筒部31は、円筒状をなすアルミニウム製外郭51の外側に、同じく円筒状をなす鉄製外郭53が密着配置されてなる。第1ハウジング構成体12のシリンダヘッド部32は、アルミニウム製外郭52の外側において該外郭52に一体形成されたボス32aを避ける領域に、ドーナッツ板状の鉄製外郭54が密着配置されてなる。つまり、シリンダヘッド部32の鉄製外郭54が中央部に有する透孔54aは、該外郭54の内側に配置されたアルミニウム製外郭52のボス32aを外方へ取り出すための取出孔として機能する。なお、シリンダヘッド部32の隔壁32cは、アルミニウム製外郭52に一体形成されている。
【0037】
前記円筒部31のアルミニウム製外郭51と、シリンダヘッド部32のアルミニウム製外郭52とは一体形成されている。円筒部31の鉄製外郭53と、シリンダヘッド部32の鉄製外郭54とは一体形成されている。鉄製外郭53,54はプレス加工により製作されている。アルミニウム製外郭51,52は鋳造(例えばダイカスト)により製作されている。このアルミニウム製外郭51,52の鋳造の際には、予め製作しておいた鉄製外郭53,54が一緒に鋳込まれて、第1ハウジング構成体12が製作される。
【0038】
前記第2ハウジング構成体13の円筒部33は、円筒状をなすアルミニウム製外郭55の外側に、同じく円筒状をなす鉄製外郭57が密着配置されてなる。第2ハウジング構成体13の底部34は、アルミニウム製外郭56の外側において該外郭56の中央部を避ける領域に、ドーナッツ板状の鉄製外郭58が密着配置されてなる。
【0039】
前記円筒部33のアルミニウム製外郭55と、底部34のアルミニウム製外郭56とは一体形成されている。円筒部33の鉄製外郭57と、底部34の鉄製外郭58とは一体形成されている。鉄製外郭57,58はプレス加工により製作されている。アルミニウム製外郭55,56は鋳造(例えばダイカスト)により製作されている。このアルミニウム製外郭55,56の鋳造の際には、予め製作しておいた鉄製外郭57,58が一緒に鋳込まれて、第2ハウジング構成体13が製作される。
【0040】
さて、前記圧縮機10は車両用空調装置の冷凍サイクルを構成しており、従って当然ながら該圧縮機10は車両に搭載されることとなる。圧縮機10のハウジング11には、該圧縮機10を車両へ搭載するための取付足35〜37が複数(本実施形態においては3つ)備えられており、該取付足35〜37を以て取付対象としてのエンジンEにボルト止めされている。各取付足35〜37には、ボルトが挿通される挿通孔35a〜37aが形成されている。
【0041】
前記複数の取付足35〜37のうちの二つ(取付足35,36)は、第1ハウジング構成体12の円筒部31においてアルミニウム製外郭51に一体形成されている。この二つの取付足35,36は、駆動軸18の軸線を中心としたほぼ180°対称位置に配置されている。前述したように、円筒部31においてアルミニウム製外郭51は、鉄製外郭53の内側に配置されている。従って、鉄製外郭53には、アルミニウム製外郭51の取付足35,36を外方へ取り出すための取出孔53aがそれぞれ形成されている。
【0042】
前記複数の取付足35〜37のうちの残りの一つ(取付足37)は、第2ハウジング構成体13の底部34において、アルミニウム製外郭56に一体形成されている。この取付足37は、底部34において鉄製外郭58が配置されていない中央部に配置されている。つまり、底部34の鉄製外郭58が中央部に有する透孔58aは、該外郭58の内側に配置されたアルミニウム製外郭56の取付足37を外方へ取り出すための取出孔として機能する。
【0043】
前記第1ハウジング構成体12のマフラ構成部31cは、円筒部31のアルミニウム製外郭51に一体形成されている。円筒部31において鉄製外郭53の図面右方側の開口縁部には、アルミニウム製外郭51のマフラ構成部31cを外方へ取り出すための切欠53bが形成されている。第2ハウジング構成体13のマフラ構成部33aは、円筒部33のアルミニウム製外郭55に一体形成されている。円筒部33において鉄製外郭57の図面左方側の開口縁部には、アルミニウム製外郭55のマフラ構成部33aを外方へ取り出すための切欠57aが形成されている。
【0044】
上記構成の本実施形態においては次のような効果を奏する。
(1)ハウジング11において、第1ハウジング構成体12の円筒部31及びシリンダヘッド部32と、第2ハウジング構成体13の円筒部33及び底部34とが、アルミニウム製外郭51,52,55,56と鉄製外郭53,54,57,58とを備えた二層構造を有している。従って、該二層構造の各部分においては、一部が鉄製外郭53,54,57,58であることによって耐圧性を高めることができるとともに小型化を図ることができるし、一部がアルミニウム製外郭51,52,55,56であることによって軽量化を図ることもできる。
【0045】
また、前記鉄製外郭53,54,57,58の配置によっても、アルミニウム製外郭51,52,55,56の配置位置が特許文献1のように限定されることがない。言い換えれば、ハウジング11において耐圧性を確保したい部分にも、アルミニウム製外郭51,52,55,56を配置することができる。従って、アルミニウム製外郭51,52,55,56に一体形成したい圧縮機の特定部位(取付足35〜37やマフラ構成部31c,33aやボス32a)のハウジング11における配置位置の自由度が向上する。よって、前記特定部位を、鉄製よりも加工が容易なアルミニウム製外郭51,52,55,56に形成することでの製造コストの低減と、設計の自由度を高めることとを両立することができる。
【0046】
(2)ハウジング11の二層構造は、鉄製外郭53,54,57,58の内側にアルミニウム製外郭51,52,55,56が配置されてなる。圧縮機10をエンジンEへ取り付けるための取付足35〜37、吐出マフラ38を構成するマフラ構成部31c,33a、及び駆動軸18の第1端部を外方へ取り出すボス32aは、それぞれアルミニウム製外郭51,52,55,56に一体形成されている。鉄製外郭53,54,57,58には、アルミニウム製外郭51,52,55,56の取付足35,36及びマフラ構成部31c,33a並びにボス32aを外方へ取り出すための取出孔53a及び切欠53b,57a並びに透孔54a,58aが形成されている。
【0047】
つまり、本実施形態のように、鉄製外郭53,54,57,58の内側にアルミニウム製外郭51,52,55,56を配置したとしても、該鉄製外郭53,54,57,58に取出孔53a及び切欠53b,57a並びに透孔54a,58aを形成するのみの簡単な構成によって、アルミニウム製外郭51,52,55,56に取付足35〜37やマフラ構成部31c,33aやボス32aを形成する構成を採用することができる。
【0048】
なお、前記ハウジング11において、鉄製外郭53,54,57,58に取出孔53a又は切欠53b,57a或いは透孔54a,58aが形成された部分は、アルミニウム製外郭51,52,55,56のみの単層構造となっている。しかし、該単層部分は、取付足35,36又はマフラ構成部31c,33a或いはボス32aによってアルミニウム製外郭51,52,55,56が厚肉となっており、鉄製外郭53,54,57,58による補強を期待しなくとも十分な強度を確保することができる。
【0049】
(3)ハウジング11のアルミニウム製外郭51,52(55,56)は、鋳造により製作される。アルミニウム製外郭51,52(55,56)の鋳造の際には、予め製作しておいた鉄製外郭53,54(57,58)が一緒に鋳込まれる。
【0050】
このように、アルミニウム製外郭51,52(55,56)の鋳造の際に鉄製外郭53,54(57,58)を一緒に鋳込む手法を採用することで、例えば、両外郭を別個に製作した後、ボルト止め等によって接合する場合と比較して工程を省くことができ、ハウジング構成体12(13)を安価に製造することができる。また、鉄製外郭53,54(57,58)が鋳型の一部をなすこととなるため、アルミニウム製外郭51,52(55,56)の鋳型を安価に製作することができるし、アルミニウム製外郭51,52(55,56)における鉄製外郭53,54(57,58)との接合部分の後加工も必要がない。これらも圧縮機10の製造コストの低減につながる。
【0051】
(4)鉄製外郭53,54,57,58はプレス加工によって製作されている。プレス加工は、鋳造と比較して後加工(仕上げ加工)がほとんど不要で、特に後加工がアルミニウム製と比較して面倒な鉄製外郭53,54,57,58を安価に製作することができる。
【0052】
○第2実施形態
図2においては第2実施形態を示す。本実施形態において第1ハウジング構成体12の円筒部31は、アルミニウム製外郭51の内側に、円筒状の鉄製外郭61が密着配置されてなる。第1ハウジング構成体12のシリンダヘッド部32は、アルミニウム製外郭52の内側に鉄製外郭62が密着配置されてなる。シリンダヘッド部32の鉄製外郭62は、アルミニウム製外郭52において内壁面52aの殆どの領域を覆う立体形状(本実施形態においてはドーム形状)をなしている。シリンダヘッド部32の隔壁32cは、鉄製外郭62に一体形成されている。従って、シリンダヘッド部32内には、鉄製外郭62と弁・ポート形成体15とによって、吸入室19及び吐出室20が区画形成されている。
【0053】
前記円筒部31の鉄製外郭61とシリンダヘッド部32の鉄製外郭62とは別体であり、それぞれ別個にプレス加工によって製作されている。本実施形態においても上記第1実施形態と同様に、アルミニウム製外郭51,52の鋳造の際に、予め製作しておいた各鉄製外郭61,62が一緒に鋳込まれて、第1ハウジング構成体12が製作される。
【0054】
前記第2ハウジング構成体13の円筒部33は、アルミニウム製外郭55の内側に、円筒状をなす鉄製外郭63が密着配置されてなる。第2ハウジング構成体13の底部34には鉄製外郭が備えられていない。本実施形態においても上記第1実施形態と同様に、アルミニウム製外郭55,56の鋳造の際に、予めプレス加工によって製作しておいた鉄製外郭63が一緒に鋳込まれて、第2ハウジング構成体13が製作される。
【0055】
上記構成の本実施形態においては、第1実施形態の(1)及び(3)並びに(4)と同様な効果を奏する他、次のような効果も奏する。
(1)ハウジング11は、アルミニウム製外郭51,52,55の内側に鉄製外郭61〜63を密着配置した二層構造を有している。従って、アルミニウム製外郭51,52,55が備える、取付足35,36やマフラ構成部31c,33aを外方へ取り出すための取出孔53a(図1参照)及び切欠53b,57a(図1参照)を鉄製外郭61〜63に形成する必要がなく、該鉄製外郭61〜63の製作がさらに容易となる。
【0056】
また、前記円筒部31,33においては、取付足35,36やマフラ構成部31c,33aの形成によっても、該形成位置におけるアルミニウム製外郭51,55と鉄製外郭61,63との二層構造を維持することができる。従って、取付足35,36やマフラ構成部31c,33aの形成位置におけるハウジング11の耐圧性をさらに向上させることができる。よって、円筒部31,33を薄肉化することができ、ハウジング11をさらに軽量化することができる。
【0057】
(2)シリンダブロック14が密着される円筒部31の内周面31aは、シリンダブロック14との密着性を高めるために寸法精度が要求される。しかし、該内周面31aは、安価なプレス加工によって製作された鉄製外郭61により構成されており、例えば、該内周面31aを後加工が必要なアルミニウム鋳物(アルミニウム製外郭51)により構成する場合と比較して、圧縮機10の製造コストを低減することができる。
【0058】
(3)第1ハウジング構成体12のシリンダヘッド部32においては、その内面を鉄製外郭62が構成している。吸入室19や吐出室20の形成によって複雑となるシリンダヘッド部32の内面を、安価なプレス加工によって製作された鉄製外郭62により構成することは、例えば、後加工が必要なアルミニウム鋳物(アルミニウム製外郭52)により構成する場合と比較して、圧縮機10の製造コストを低減することができる。
【0059】
なお、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で例えば以下の態様でも実施できる。
○上記第1実施形態において取付足35〜37は、該鉄製外郭53,58に形成された取出孔53a或いは透孔58aを介して外方へ取り出されていた。しかし、取付足35〜37が、例えば円筒部31,33におけるマフラ構成部31c,33aの位置と同様な位置であるなら、言い換えれば、円筒部31,33の開口縁部に形成される構成であるなら、マフラ構成部31c,33aと同様な切欠53b,57aによって、外方へ取り出す構成を採用してもよい。つまり、ハウジング11における取付足35〜37の配置位置に応じて、取付孔又は切欠を適宜選択すればよい。
【0060】
○上記各実施形態においてハウジング11は、鉄製外郭53,54,57,58(61〜63(第2実施形態))とアルミニウム製外郭51,52,55,56とからなる二層構造を有していた。しかし、ハウジング11は二層構造に限定されるものではなく、三層や四層等の二層以外の多層構造を備えていてもよい。例えば、上記第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせることで、アルミニウム製外郭51,52,55の外側に鉄製外郭53,54,57を密着配置するとともに、アルミニウム製外郭51,52,55の内側に鉄製外郭61〜63を密着配置した三層構造とする等である。
【0061】
○上記各実施形態においては、アルミニウム製外郭51,52(55,56(第2ハウジング構成体13))の鋳造の際に、予め製作しておいた鉄製外郭53,54(57,58(第2ハウジング構成体)、61〜63(第2実施形態))を一緒に鋳込んでいた。しかし、ハウジング11の製造方法はこれに限定されるものではなく、例えば、アルミニウム製外郭と鉄製外郭をそれぞれ別個に製作した後、ボルト止め等によって両外郭を接合する手法を採用してもよい。
【0062】
○上記各実施形態において鉄製外郭53,54,57,58(61〜63(第2実施形態))は、プレス加工によって製作されていた。これを変更し、鉄製外郭53,54,57,58(61〜63)を、鋳造や鍛造等のプレス加工以外の手法によって製作すること。
【0063】
○本発明は、上記各実施形態のようにピストン式圧縮機に具体化することに限定されるものではなく、スクロール式圧縮機やベーン式圧縮機等の他の形式の圧縮機において具体化してもよい。
【0064】
上記実施形態から把握できる技術的思想について記載する。
(1)前記鉄製外郭はアルミニウム製外郭の内側に配置されている請求項3に記載の圧縮機。
【0065】
(2)前記ハウジングは、吸入室と吐出室とを形成したシリンダヘッドを備えており、該ハウジングにおいて少なくともシリンダヘッドが、アルミニウム製外郭の内側に鉄製外郭が配置された多層構造を有している請求項8に記載のハウジングの製造方法。
【0066】
(3)圧縮機に用いられるハウジングであって、少なくとも一部が、アルミニウム系の材料よりなるアルミニウム製外郭と鉄系の材料よりなる鉄製外郭とを備えた多層構造を有していることを特徴とする圧縮機のハウジング。
【0067】
(4)冷媒圧縮機として請求項1〜6のいずれか又は技術的思想(1)或いは(2)に記載の圧縮機を備えるとともに、冷媒として二酸化炭素を用いたことを特徴とする冷凍サイクル。
【0068】
【発明の効果】
上記構成の本発明によれば、耐圧性に優れてなおかつ小型・軽量であって、さらには製造コストの低減と設計の自由度を高めることとを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の圧縮機の縦断面図。
【図2】第2実施形態の圧縮機の縦断面図。
【符号の説明】
10…圧縮機としての容量可変型圧縮機、11…ハウジング、12…ハウジングを構成する第1ハウジング構成体、13…同じく第2ハウジング構成体、19…吸入室、20…吐出室、31…第1ハウジング構成体を構成する筒状部としての円筒部、32…シリンダヘッドとしてのシリンダヘッド部、33…第2ハウジング構成体を構成する円筒部、35〜37…取付足、51,52…アルミニウム製外郭、53,54…鉄製外郭、53a…取出孔、55,56…アルミニウム製外郭、57,58…鉄製外郭、58a…取出孔としての透孔、61〜63…鉄製外郭(第2実施形態)、E…取付対象としてのエンジン。
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば車両空調装置の冷凍サイクルに用いられる圧縮機、及び該圧縮機に用いられるハウジングの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、環境に対する影響を配慮して、冷凍サイクルの冷媒に二酸化炭素を用いることが提案されている。この種の冷凍サイクルは超臨界冷凍サイクルと呼ばれている。しかし、超臨界冷凍サイクルでは、圧縮機内の特に吐出圧雰囲気が、フロン冷媒の冷凍サイクルと比較して高圧となる。従って、フロン冷媒の冷凍サイクル用の圧縮機ではそれほど配慮する必要のなかったハウジングの耐圧性についても、超臨界冷凍サイクル用の圧縮機では十分な配慮が必要となる。
【0003】
通常、冷凍サイクル用の圧縮機は、アルミニウム製又は鉄製のハウジングを備えている。しかし、超臨界冷凍サイクルに用いるために、アルミニウム製のハウジングの耐圧性を確保しようとすると厚肉となり、圧縮機の寸法が増大する問題を生じてしまう。また、鉄製のハウジングでは圧縮機の重量増の問題を生じてしまう。
【0004】
このような問題を解決するために、ハウジングにおいて、耐圧性を要求される部分は鉄製として強度を高めるとともに、耐圧性をそれほど要求されない部分についてはアルミニウム製として軽量化を図ることが提案されている。すなわち、例えば特許文献1では、圧縮機のハウジングが備えるシリンダヘッドにおいて、低圧室たる吸入室と外気とを隔てる隔壁をアルミニウム系の材料により製作するとともに、吸入室と高圧室たる吐出室とを隔てる隔壁、及び吐出室と外気とを隔てる隔壁を、鉄系の材料により製作することが提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−123957号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、圧縮機のハウジングを、耐圧性の要求度合いに基づいて鉄製の部分とアルミニウム製の部分とに作り分けることは、圧縮機の製造コスト低減と設計の自由度を高めることとを両立し得ない問題を生じる。
【0007】
つまり、ハウジングの製造コストは、当然ながら形状が複雑となるほど上昇する。また、例えばハウジングを鋳造する場合、アルミニウム鋳造よりも鉄鋳造の方が寸法精度が低くなるために後加工が面倒となり、製造コストが上昇する。
【0008】
ここで、例えば、車両空調装置に用いられる圧縮機は、該圧縮機を車両に対して取り付けるための取付足がハウジングに設けられている。ハウジングの鉄製部分に対して取付足を一体形成すると該鉄製部分の形状が複雑となり、しかも、前述した鉄鋳造における寸法精度の問題から製造コストが上昇してしまう。従って、ハウジングを鉄製の部分とアルミニウム製の部分とに作り分けた場合には、圧縮機の製造コストを低減するために、取付足をアルミニウム製部分に一体形成する必要がある。よって、ハウジングにおける取付足の配置位置が限定される問題、つまり圧縮機の設計の自由度が阻害される問題を生じ、該圧縮機を適用可能な車両の種類が限定されてしまう。
【0009】
本発明の目的は、耐圧性に優れてなおかつ小型・軽量であって、さらには製造コストの低減と設計の自由度を高めることとを両立できる圧縮機、及び該圧縮機のハウジングの製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1の発明の圧縮機は、ハウジングの少なくとも一部が、アルミニウム系の材料よりなるアルミニウム製外郭と鉄系の材料よりなる鉄製外郭とを備えた多層構造を有している。従って、該多層構造の部分においては、一部が鉄製外郭であることによって耐圧性を高めることができるとともに小型化を図ることができるし、一部がアルミニウム製外郭であることによって軽量化を図ることもできる。
【0011】
また、前記鉄製外郭の配置によっても、アルミニウム製外郭の配置位置が特許文献1のように限定されることがない。言い換えれば、ハウジングにおいて耐圧性を確保したい部分にも、アルミニウム製外郭を配置することができる。従って、例えば、アルミニウム製外郭に一体形成したい圧縮機の特定部位(例えば取付足)のハウジングにおける配置位置の自由度が向上する。よって、前記特定部位を、鉄製よりも加工が容易なアルミニウム製外郭に形成することでの製造コストの低減と、設計の自由度を高めることとを両立することができる。
【0012】
請求項2の発明は請求項1において、前記ハウジングの多層構造を限定するものである。すなわち、前記ハウジングの少なくとも一部は、アルミニウム製外郭と、該アルミニウム製外郭の内側又は外側に密着配置された鉄製外郭とからなる二層構造を有している。
【0013】
請求項3の発明は請求項1又は2において、アルミニウム製外郭に一体形成することで製造コストを低減したい、圧縮機の特定部位を限定するものである。すなわち、前記圧縮機を取付対象へ取り付けるための取付足は、ハウジングのアルミニウム製外郭に一体形成されている。
【0014】
請求項4の発明は請求項3において、前記鉄製外郭は、アルミニウム製外郭の外側に配置されている。鉄製外郭には、アルミニウム製外郭の取付足を外方へ取り出すための取出孔又は切欠が形成されている。つまり、鉄製外郭の内側にアルミニウム製外郭を配置したとしても、該鉄製外郭に取出孔又は切欠を形成するのみの簡単な構成によって、アルミニウム製外郭に取付足を形成する構成を採用することができる。
【0015】
なお、ハウジングにおいて、鉄製外郭に取出孔又は切欠が形成された部分は、該鉄製外郭による補強効果が薄らいでしまう。しかし、該部分は、取付足によってアルミニウム製外郭が厚肉となっており、鉄製外郭の補強を期待しなくとも十分な強度を確保することができる。
【0016】
請求項5の発明は請求項1〜4のいずれかにおいて、前記ハウジングは、シリンダブロックを取り囲む筒状部を備えている。ハウジングにおいて少なくとも筒状部が、鉄製外郭とアルミニウム製外郭とを備えた多層構造を有している。従って、ハウジングにおいて少なくとも筒状部を、耐圧性に優れてなおかつ小型・軽量にでき、さらには製造コストの低減と設計の自由度を高めることとを両立することができる。
【0017】
請求項6の発明は請求項1〜5のいずれかにおいて、前記ハウジングは、吸入室と吐出室とを形成したシリンダヘッドを備えている。ハウジングにおいて少なくともシリンダヘッドが、鉄製外郭とアルミニウム製外郭とを備えた多層構造を有している。従って、ハウジングにおいて少なくともシリンダヘッドを、耐圧性に優れてなおかつ小型・軽量にでき、さらには製造コストの低減と設計の自由度を高めることとを両立することができる。
【0018】
請求項7の発明のハウジングの製造方法においては、アルミニウム製外郭を鋳造により製作する。そして、アルミニウム製外郭の鋳造の際には、予め製作しておいた鉄製外郭を一緒に鋳込むことで、鉄製外郭とアルミニウム製外郭とからなる多層構造のハウジングを得ることができる。
【0019】
このように、アルミニウム製外郭の鋳造の際に鉄製外郭を一緒に鋳込む手法を採用することで、例えば、両外郭を別個に製作した後、ボルト止め等によって接合する場合と比較して工程を省くことができ、ハウジングを安価に製造することができる。また、鉄製外郭が鋳型の一部をなすこととなるため、アルミニウム製外郭の鋳型を安価に製作することができるし、アルミニウム製外郭における鉄製外郭との接合部分の後加工も必要がない。これらも圧縮機の製造コストの低減につながる。
【0020】
請求項8の発明は請求項7において、前記鉄製外郭はプレス加工によって製作されている。プレス加工は、鋳造と比較して後加工がほとんど不要で、特に後加工がアルミニウム製と比較して面倒な鉄製外郭を安価に製作することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の圧縮機を、冷媒に二酸化炭素を用いた車両用空調装置の超臨界冷凍サイクルを構成する冷媒圧縮機において具体化した、第1及び第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態においては第1実施形態との相違点についてのみ説明し、第1実施形態と同一又は相当部材には同じ番号を付して説明を省略する。
【0022】
○第1実施形態
先ず、冷媒圧縮機としての容量可変型圧縮機(以下圧縮機とする)の全体構成について説明する。
【0023】
図1に示すように、圧縮機10の外郭をなすハウジング11は、第1ハウジング構成体12と第2ハウジング構成体13とからなっている。第1ハウジング構成体12は、筒状部としての円筒部31と、該円筒部31の図面左方側の開口を閉塞するようにして配置された、シリンダヘッドとしてのシリンダヘッド部32とからなっている。第2ハウジング構成体13は、円筒部33と、該円筒部33の図面右方側の開口を閉塞するようにして配置された底部34とからなっている。第1ハウジング構成体12と第2ハウジング構成体13とは、円筒部31,33の対向端面(開口端面)を以て互いに接合されるとともに、図示しないスルーボルトによって締結固定されている。
【0024】
前記ハウジング11内には、円柱状をなすシリンダブロック14が収容されている。シリンダブロック14は、第1ハウジング構成体12において円筒部31の内側に挿入配置されている。つまり、円筒部31は、シリンダブロック14を取り囲むようにして配置されている。円筒部31の内周面31aにおいてシリンダヘッド部32側には、シリンダブロック14の円筒部31内への挿入距離を規定する段差31bが形成されている。段差31bとシリンダブロック14との間には、弁・ポート形成体15が配置されている。シリンダブロック14と弁・ポート形成体15は、それらを挿通するスルーボルト16によって、第1ハウジング構成体12のシリンダヘッド部32に締結固定されている。
【0025】
前記第2ハウジング構成体13において円筒部33の内側には、シリンダブロック14とで囲まれてクランク室17が形成されている。駆動軸18は、弁・ポート形成体15に形成された透孔を遊貫するとともに、第1端部(図面左方側の端部)の先端側が、第1ハウジング構成体12のシリンダヘッド部32に突設されたボス32aを介して外方へ突出し、車両の走行駆動源であるエンジンEに対して図示しない動力伝達機構を介して作動連結されている。駆動軸18は、第2端部(図面右方側の端部)がクランク室17内に配置された状態でハウジング11に回転可能に支承されている。従って、駆動軸18は、エンジンEから動力の供給を受けて回転駆動される。
【0026】
前記第1ハウジング構成体12においてシリンダヘッド部32の内壁面32bには、弁・ポート形成体15と対向する位置に、駆動軸18の第1端部を取り囲むようにほぼ環状の隔壁32cが突設されている。隔壁32cの先端面は弁・ポート形成体15の端面に当接されている。従って、ハウジング11内において第1ハウジング構成体12と弁・ポート形成体15とで囲まれた領域内には、隔壁32cの内側に吸入室19が形成されるとともに、隔壁32cの外側には、吸入室19を取り囲むようにほぼ環状の吐出室20が区画形成されている。
【0027】
前記吸入室19内において第1ハウジング構成体12のシリンダヘッド部32には、弁・ポート形成体15と対向する側に収容凹部32dが形成されている。収容凹部32dには、駆動軸18の第1端部を封止する軸封装置21が配設されている。軸封装置21としては、メカニカルシールやリップシール等が挙げられる。
【0028】
前記シリンダブロック14には、クランク室17と吸入室19とを連通するように軸孔14aが形成されている。第2ハウジング構成体13の底部34には、クランク室17側に収容凹部34aが形成されている。駆動軸18は軸孔14a、吸入室19、収容凹部32d及びボス32aを貫通した状態で、中間部が軸孔14a内に配設された第1ラジアルベアリング22を介して、シリンダブロック14に回転可能に支持されている。駆動軸18の第2端部は、底部34の収容凹部34a内に配設された第2ラジアルベアリング23を介して第2ハウジング構成体13に回転可能に支持されている。
【0029】
前記クランク室17において駆動軸18上には、ラグプレート24が一体回転可能に固定されている。クランク室17内にはカムプレートとしての斜板25が収容されている。斜板25は、駆動軸18にスライド移動可能でかつ傾動可能に支持されている。ヒンジ機構26は、ラグプレート24と斜板25との間に介在されている。従って、斜板25は、ヒンジ機構26を介することで、ラグプレート24及び駆動軸18と同期回転可能であるとともに、駆動軸18に対して傾動可能となっている。
【0030】
複数(図面には一つのみ示す)のシリンダボア14bは、駆動軸18を等角度間隔にて取り囲むようにしてシリンダブロック14に形成されている。片頭型のピストン27は、各シリンダボア14bに往復動可能に収容されている。各ピストン27は、シュー28を介して斜板25の外周部に係留されている。従って、駆動軸18の回転にともなう斜板25の回転運動が、シュー28を介してピストン27の往復運動に変換される。
【0031】
前記シリンダボア14bの前後開口は、弁・ポート形成体15及びピストン27によって閉塞されており、シリンダボア14b内にはピストン27の往復動に応じて体積変化する圧縮室29が区画されている。そして、吸入室19の冷媒ガスは、各ピストン27の上死点位置から下死点側への移動により、弁・ポート形成体15に形成された吸入ポート15a及び吸入弁15bを介して圧縮室29に吸入される。圧縮室29に吸入された冷媒ガスは、ピストン27の下死点位置から上死点側への移動により所定の圧力にまで圧縮され、弁・ポート形成体15に形成された吐出ポート15c及び吐出弁15dを介して吐出室20に吐出される。
【0032】
前記ハウジング11の外側には、第1ハウジング構成体12の円筒部31に設けられたマフラ構成部31cと、第2ハウジング構成体13の円筒部33に設けられたマフラ構成部33aとの接合によって、中空状の吐出マフラ38が構成されている。吐出室20の冷媒ガスは、吐出マフラ38の内空間を介することで脈動が低減された後、図示しない外部冷媒回路へと排出される。
【0033】
前記ハウジング11内には抽気通路41及び給気通路42が設けられている。抽気通路41はクランク室17と吸入室19とを連通する。給気通路42は吐出室20とクランク室17とを連通する。給気通路42の途中には、電磁弁よりなる周知の構成の制御弁43が配設されている。制御弁43は、第1ハウジング構成体12のマフラ構成部31cから第2ハウジング構成体13のマフラ構成部33a側に向かって延出された取付座31dに取り付けられている。
【0034】
そして、前記制御弁43の開度を調節することで、給気通路42を介したクランク室17への高圧な吐出ガスの導入量と抽気通路41を介したクランク室17からのガス導出量とのバランスが制御され、クランク室17の内圧が決定される。クランク室17の内圧変更に応じて、ピストン27を介してのクランク室17の内圧と圧縮室29の内圧との差が変更され、斜板25の傾斜角度が変更される結果、ピストン27のストロークすなわち圧縮機10の吐出容量が調節される。
【0035】
次に、前記圧縮機10のハウジング11について詳述する。
前記ハウジング11は、第1ハウジング構成体12の円筒部31のほぼ全部とシリンダヘッド部32の一部とが、アルミニウム系の材料(純アルミニウムも含む)よりなるアルミニウム製外郭51,52と、鉄系の材料(純鉄も含む)よりなる鉄製外郭53,54とを備えた二層構造を有している。また、ハウジング11は、第2ハウジング構成体13の円筒部33のほぼ全部と底部34の一部とが、アルミニウム系の材料(純アルミニウムも含む)よりなるアルミニウム製外郭55,56と、鉄系の材料(純鉄も含む)よりなる鉄製外郭57,58とを備えた二層構造を有している。
【0036】
すなわち、前記第1ハウジング構成体12の円筒部31は、円筒状をなすアルミニウム製外郭51の外側に、同じく円筒状をなす鉄製外郭53が密着配置されてなる。第1ハウジング構成体12のシリンダヘッド部32は、アルミニウム製外郭52の外側において該外郭52に一体形成されたボス32aを避ける領域に、ドーナッツ板状の鉄製外郭54が密着配置されてなる。つまり、シリンダヘッド部32の鉄製外郭54が中央部に有する透孔54aは、該外郭54の内側に配置されたアルミニウム製外郭52のボス32aを外方へ取り出すための取出孔として機能する。なお、シリンダヘッド部32の隔壁32cは、アルミニウム製外郭52に一体形成されている。
【0037】
前記円筒部31のアルミニウム製外郭51と、シリンダヘッド部32のアルミニウム製外郭52とは一体形成されている。円筒部31の鉄製外郭53と、シリンダヘッド部32の鉄製外郭54とは一体形成されている。鉄製外郭53,54はプレス加工により製作されている。アルミニウム製外郭51,52は鋳造(例えばダイカスト)により製作されている。このアルミニウム製外郭51,52の鋳造の際には、予め製作しておいた鉄製外郭53,54が一緒に鋳込まれて、第1ハウジング構成体12が製作される。
【0038】
前記第2ハウジング構成体13の円筒部33は、円筒状をなすアルミニウム製外郭55の外側に、同じく円筒状をなす鉄製外郭57が密着配置されてなる。第2ハウジング構成体13の底部34は、アルミニウム製外郭56の外側において該外郭56の中央部を避ける領域に、ドーナッツ板状の鉄製外郭58が密着配置されてなる。
【0039】
前記円筒部33のアルミニウム製外郭55と、底部34のアルミニウム製外郭56とは一体形成されている。円筒部33の鉄製外郭57と、底部34の鉄製外郭58とは一体形成されている。鉄製外郭57,58はプレス加工により製作されている。アルミニウム製外郭55,56は鋳造(例えばダイカスト)により製作されている。このアルミニウム製外郭55,56の鋳造の際には、予め製作しておいた鉄製外郭57,58が一緒に鋳込まれて、第2ハウジング構成体13が製作される。
【0040】
さて、前記圧縮機10は車両用空調装置の冷凍サイクルを構成しており、従って当然ながら該圧縮機10は車両に搭載されることとなる。圧縮機10のハウジング11には、該圧縮機10を車両へ搭載するための取付足35〜37が複数(本実施形態においては3つ)備えられており、該取付足35〜37を以て取付対象としてのエンジンEにボルト止めされている。各取付足35〜37には、ボルトが挿通される挿通孔35a〜37aが形成されている。
【0041】
前記複数の取付足35〜37のうちの二つ(取付足35,36)は、第1ハウジング構成体12の円筒部31においてアルミニウム製外郭51に一体形成されている。この二つの取付足35,36は、駆動軸18の軸線を中心としたほぼ180°対称位置に配置されている。前述したように、円筒部31においてアルミニウム製外郭51は、鉄製外郭53の内側に配置されている。従って、鉄製外郭53には、アルミニウム製外郭51の取付足35,36を外方へ取り出すための取出孔53aがそれぞれ形成されている。
【0042】
前記複数の取付足35〜37のうちの残りの一つ(取付足37)は、第2ハウジング構成体13の底部34において、アルミニウム製外郭56に一体形成されている。この取付足37は、底部34において鉄製外郭58が配置されていない中央部に配置されている。つまり、底部34の鉄製外郭58が中央部に有する透孔58aは、該外郭58の内側に配置されたアルミニウム製外郭56の取付足37を外方へ取り出すための取出孔として機能する。
【0043】
前記第1ハウジング構成体12のマフラ構成部31cは、円筒部31のアルミニウム製外郭51に一体形成されている。円筒部31において鉄製外郭53の図面右方側の開口縁部には、アルミニウム製外郭51のマフラ構成部31cを外方へ取り出すための切欠53bが形成されている。第2ハウジング構成体13のマフラ構成部33aは、円筒部33のアルミニウム製外郭55に一体形成されている。円筒部33において鉄製外郭57の図面左方側の開口縁部には、アルミニウム製外郭55のマフラ構成部33aを外方へ取り出すための切欠57aが形成されている。
【0044】
上記構成の本実施形態においては次のような効果を奏する。
(1)ハウジング11において、第1ハウジング構成体12の円筒部31及びシリンダヘッド部32と、第2ハウジング構成体13の円筒部33及び底部34とが、アルミニウム製外郭51,52,55,56と鉄製外郭53,54,57,58とを備えた二層構造を有している。従って、該二層構造の各部分においては、一部が鉄製外郭53,54,57,58であることによって耐圧性を高めることができるとともに小型化を図ることができるし、一部がアルミニウム製外郭51,52,55,56であることによって軽量化を図ることもできる。
【0045】
また、前記鉄製外郭53,54,57,58の配置によっても、アルミニウム製外郭51,52,55,56の配置位置が特許文献1のように限定されることがない。言い換えれば、ハウジング11において耐圧性を確保したい部分にも、アルミニウム製外郭51,52,55,56を配置することができる。従って、アルミニウム製外郭51,52,55,56に一体形成したい圧縮機の特定部位(取付足35〜37やマフラ構成部31c,33aやボス32a)のハウジング11における配置位置の自由度が向上する。よって、前記特定部位を、鉄製よりも加工が容易なアルミニウム製外郭51,52,55,56に形成することでの製造コストの低減と、設計の自由度を高めることとを両立することができる。
【0046】
(2)ハウジング11の二層構造は、鉄製外郭53,54,57,58の内側にアルミニウム製外郭51,52,55,56が配置されてなる。圧縮機10をエンジンEへ取り付けるための取付足35〜37、吐出マフラ38を構成するマフラ構成部31c,33a、及び駆動軸18の第1端部を外方へ取り出すボス32aは、それぞれアルミニウム製外郭51,52,55,56に一体形成されている。鉄製外郭53,54,57,58には、アルミニウム製外郭51,52,55,56の取付足35,36及びマフラ構成部31c,33a並びにボス32aを外方へ取り出すための取出孔53a及び切欠53b,57a並びに透孔54a,58aが形成されている。
【0047】
つまり、本実施形態のように、鉄製外郭53,54,57,58の内側にアルミニウム製外郭51,52,55,56を配置したとしても、該鉄製外郭53,54,57,58に取出孔53a及び切欠53b,57a並びに透孔54a,58aを形成するのみの簡単な構成によって、アルミニウム製外郭51,52,55,56に取付足35〜37やマフラ構成部31c,33aやボス32aを形成する構成を採用することができる。
【0048】
なお、前記ハウジング11において、鉄製外郭53,54,57,58に取出孔53a又は切欠53b,57a或いは透孔54a,58aが形成された部分は、アルミニウム製外郭51,52,55,56のみの単層構造となっている。しかし、該単層部分は、取付足35,36又はマフラ構成部31c,33a或いはボス32aによってアルミニウム製外郭51,52,55,56が厚肉となっており、鉄製外郭53,54,57,58による補強を期待しなくとも十分な強度を確保することができる。
【0049】
(3)ハウジング11のアルミニウム製外郭51,52(55,56)は、鋳造により製作される。アルミニウム製外郭51,52(55,56)の鋳造の際には、予め製作しておいた鉄製外郭53,54(57,58)が一緒に鋳込まれる。
【0050】
このように、アルミニウム製外郭51,52(55,56)の鋳造の際に鉄製外郭53,54(57,58)を一緒に鋳込む手法を採用することで、例えば、両外郭を別個に製作した後、ボルト止め等によって接合する場合と比較して工程を省くことができ、ハウジング構成体12(13)を安価に製造することができる。また、鉄製外郭53,54(57,58)が鋳型の一部をなすこととなるため、アルミニウム製外郭51,52(55,56)の鋳型を安価に製作することができるし、アルミニウム製外郭51,52(55,56)における鉄製外郭53,54(57,58)との接合部分の後加工も必要がない。これらも圧縮機10の製造コストの低減につながる。
【0051】
(4)鉄製外郭53,54,57,58はプレス加工によって製作されている。プレス加工は、鋳造と比較して後加工(仕上げ加工)がほとんど不要で、特に後加工がアルミニウム製と比較して面倒な鉄製外郭53,54,57,58を安価に製作することができる。
【0052】
○第2実施形態
図2においては第2実施形態を示す。本実施形態において第1ハウジング構成体12の円筒部31は、アルミニウム製外郭51の内側に、円筒状の鉄製外郭61が密着配置されてなる。第1ハウジング構成体12のシリンダヘッド部32は、アルミニウム製外郭52の内側に鉄製外郭62が密着配置されてなる。シリンダヘッド部32の鉄製外郭62は、アルミニウム製外郭52において内壁面52aの殆どの領域を覆う立体形状(本実施形態においてはドーム形状)をなしている。シリンダヘッド部32の隔壁32cは、鉄製外郭62に一体形成されている。従って、シリンダヘッド部32内には、鉄製外郭62と弁・ポート形成体15とによって、吸入室19及び吐出室20が区画形成されている。
【0053】
前記円筒部31の鉄製外郭61とシリンダヘッド部32の鉄製外郭62とは別体であり、それぞれ別個にプレス加工によって製作されている。本実施形態においても上記第1実施形態と同様に、アルミニウム製外郭51,52の鋳造の際に、予め製作しておいた各鉄製外郭61,62が一緒に鋳込まれて、第1ハウジング構成体12が製作される。
【0054】
前記第2ハウジング構成体13の円筒部33は、アルミニウム製外郭55の内側に、円筒状をなす鉄製外郭63が密着配置されてなる。第2ハウジング構成体13の底部34には鉄製外郭が備えられていない。本実施形態においても上記第1実施形態と同様に、アルミニウム製外郭55,56の鋳造の際に、予めプレス加工によって製作しておいた鉄製外郭63が一緒に鋳込まれて、第2ハウジング構成体13が製作される。
【0055】
上記構成の本実施形態においては、第1実施形態の(1)及び(3)並びに(4)と同様な効果を奏する他、次のような効果も奏する。
(1)ハウジング11は、アルミニウム製外郭51,52,55の内側に鉄製外郭61〜63を密着配置した二層構造を有している。従って、アルミニウム製外郭51,52,55が備える、取付足35,36やマフラ構成部31c,33aを外方へ取り出すための取出孔53a(図1参照)及び切欠53b,57a(図1参照)を鉄製外郭61〜63に形成する必要がなく、該鉄製外郭61〜63の製作がさらに容易となる。
【0056】
また、前記円筒部31,33においては、取付足35,36やマフラ構成部31c,33aの形成によっても、該形成位置におけるアルミニウム製外郭51,55と鉄製外郭61,63との二層構造を維持することができる。従って、取付足35,36やマフラ構成部31c,33aの形成位置におけるハウジング11の耐圧性をさらに向上させることができる。よって、円筒部31,33を薄肉化することができ、ハウジング11をさらに軽量化することができる。
【0057】
(2)シリンダブロック14が密着される円筒部31の内周面31aは、シリンダブロック14との密着性を高めるために寸法精度が要求される。しかし、該内周面31aは、安価なプレス加工によって製作された鉄製外郭61により構成されており、例えば、該内周面31aを後加工が必要なアルミニウム鋳物(アルミニウム製外郭51)により構成する場合と比較して、圧縮機10の製造コストを低減することができる。
【0058】
(3)第1ハウジング構成体12のシリンダヘッド部32においては、その内面を鉄製外郭62が構成している。吸入室19や吐出室20の形成によって複雑となるシリンダヘッド部32の内面を、安価なプレス加工によって製作された鉄製外郭62により構成することは、例えば、後加工が必要なアルミニウム鋳物(アルミニウム製外郭52)により構成する場合と比較して、圧縮機10の製造コストを低減することができる。
【0059】
なお、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で例えば以下の態様でも実施できる。
○上記第1実施形態において取付足35〜37は、該鉄製外郭53,58に形成された取出孔53a或いは透孔58aを介して外方へ取り出されていた。しかし、取付足35〜37が、例えば円筒部31,33におけるマフラ構成部31c,33aの位置と同様な位置であるなら、言い換えれば、円筒部31,33の開口縁部に形成される構成であるなら、マフラ構成部31c,33aと同様な切欠53b,57aによって、外方へ取り出す構成を採用してもよい。つまり、ハウジング11における取付足35〜37の配置位置に応じて、取付孔又は切欠を適宜選択すればよい。
【0060】
○上記各実施形態においてハウジング11は、鉄製外郭53,54,57,58(61〜63(第2実施形態))とアルミニウム製外郭51,52,55,56とからなる二層構造を有していた。しかし、ハウジング11は二層構造に限定されるものではなく、三層や四層等の二層以外の多層構造を備えていてもよい。例えば、上記第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせることで、アルミニウム製外郭51,52,55の外側に鉄製外郭53,54,57を密着配置するとともに、アルミニウム製外郭51,52,55の内側に鉄製外郭61〜63を密着配置した三層構造とする等である。
【0061】
○上記各実施形態においては、アルミニウム製外郭51,52(55,56(第2ハウジング構成体13))の鋳造の際に、予め製作しておいた鉄製外郭53,54(57,58(第2ハウジング構成体)、61〜63(第2実施形態))を一緒に鋳込んでいた。しかし、ハウジング11の製造方法はこれに限定されるものではなく、例えば、アルミニウム製外郭と鉄製外郭をそれぞれ別個に製作した後、ボルト止め等によって両外郭を接合する手法を採用してもよい。
【0062】
○上記各実施形態において鉄製外郭53,54,57,58(61〜63(第2実施形態))は、プレス加工によって製作されていた。これを変更し、鉄製外郭53,54,57,58(61〜63)を、鋳造や鍛造等のプレス加工以外の手法によって製作すること。
【0063】
○本発明は、上記各実施形態のようにピストン式圧縮機に具体化することに限定されるものではなく、スクロール式圧縮機やベーン式圧縮機等の他の形式の圧縮機において具体化してもよい。
【0064】
上記実施形態から把握できる技術的思想について記載する。
(1)前記鉄製外郭はアルミニウム製外郭の内側に配置されている請求項3に記載の圧縮機。
【0065】
(2)前記ハウジングは、吸入室と吐出室とを形成したシリンダヘッドを備えており、該ハウジングにおいて少なくともシリンダヘッドが、アルミニウム製外郭の内側に鉄製外郭が配置された多層構造を有している請求項8に記載のハウジングの製造方法。
【0066】
(3)圧縮機に用いられるハウジングであって、少なくとも一部が、アルミニウム系の材料よりなるアルミニウム製外郭と鉄系の材料よりなる鉄製外郭とを備えた多層構造を有していることを特徴とする圧縮機のハウジング。
【0067】
(4)冷媒圧縮機として請求項1〜6のいずれか又は技術的思想(1)或いは(2)に記載の圧縮機を備えるとともに、冷媒として二酸化炭素を用いたことを特徴とする冷凍サイクル。
【0068】
【発明の効果】
上記構成の本発明によれば、耐圧性に優れてなおかつ小型・軽量であって、さらには製造コストの低減と設計の自由度を高めることとを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の圧縮機の縦断面図。
【図2】第2実施形態の圧縮機の縦断面図。
【符号の説明】
10…圧縮機としての容量可変型圧縮機、11…ハウジング、12…ハウジングを構成する第1ハウジング構成体、13…同じく第2ハウジング構成体、19…吸入室、20…吐出室、31…第1ハウジング構成体を構成する筒状部としての円筒部、32…シリンダヘッドとしてのシリンダヘッド部、33…第2ハウジング構成体を構成する円筒部、35〜37…取付足、51,52…アルミニウム製外郭、53,54…鉄製外郭、53a…取出孔、55,56…アルミニウム製外郭、57,58…鉄製外郭、58a…取出孔としての透孔、61〜63…鉄製外郭(第2実施形態)、E…取付対象としてのエンジン。
Claims (8)
- ハウジングの少なくとも一部が、アルミニウム系の材料よりなるアルミニウム製外郭と鉄系の材料よりなる鉄製外郭とを備えた多層構造を有していることを特徴とする圧縮機。
- 前記ハウジングの少なくとも一部は、アルミニウム製外郭と、該アルミニウム製外郭の内側又は外側に密着配置された鉄製外郭とからなる二層構造を有している請求項1に記載の圧縮機。
- 前記圧縮機を取付対象へ取り付けるための取付足は、ハウジングのアルミニウム製外郭に一体形成されている請求項1又は2に記載の圧縮機。
- 前記鉄製外郭はアルミニウム製外郭の外側に配置されており、該鉄製外郭にはアルミニウム製外郭の取付足を外方へ取り出すための取出孔又は切欠が形成されている請求項3に記載の圧縮機。
- 前記ハウジングは、シリンダブロックを取り囲む筒状部を備えており、該ハウジングにおいて少なくとも筒状部が、鉄製外郭とアルミニウム製外郭とを備えた多層構造を有している請求項1〜4のいずれかに記載の圧縮機。
- 前記ハウジングは、吸入室と吐出室とを形成したシリンダヘッドを備えており、該ハウジングにおいて少なくともシリンダヘッドが、鉄製外郭とアルミニウム製外郭とを備えた多層構造を有している請求項1〜5のいずれかに記載の圧縮機。
- ハウジングの少なくとも一部が、アルミニウム系の材料よりなるアルミニウム製外郭と鉄系の材料よりなる鉄製外郭とを備えた多層構造を有した圧縮機において、
前記アルミニウム製外郭は鋳造により製作されるとともに、該アルミニウム製外郭の鋳造の際には、予め製作しておいた鉄製外郭を一緒に鋳込むことを特徴とするハウジングの製造方法。 - 前記鉄製外郭はプレス加工によって製作されている請求項7に記載のハウジングの製造方法。
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