JP2004213773A - 磁気記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】支持体上に六方晶系フェライト粉末を結合剤中に分散してなる磁性層を有し、他方の面にバック層を有する磁気記録媒体であって、六方晶系フェライト粉末の平均板径が15〜40nmであり、磁性層の厚みが0.01〜0.5μmであり、カッピング量が−5〜+5%であり、かつ磁性層の表面電気抵抗Rsが108Ω/sq以下であることを特徴とする磁気記録媒体。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
強磁性粉末を結合剤中に分散してなる上層磁性層を支持体上に設けた磁気記録媒体に関し、更に詳しくは、優れた電磁変換特性を有し、ヘッドタッチが安定し、出力変動の少ない磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気記録媒体は、録音用テープ、ビデオテープあるいはフロッピーディスクなど広く用いられている。一般に、磁気記録媒体の構成は、支持体上に磁性層を積層し、テープ状媒体においては必要に応じて磁性層とは反対の面にバック層を積層する。ディスク状媒体においては支持体の両面に磁性層を積層する。
そして、一般に、塗布型磁気記録媒体の磁性層は、強磁性粉末を結合剤(バインダー)中に分散し、潤滑剤、研磨剤、必要に応じてカーボンを添加したものを支持体上に塗布積層して形成される。
近年は、磁性層高出力化のために磁性層の薄層化が提案されており、そのために支持体と磁性層の間に中間層を積層する磁気記録媒体が提案されている。
また、蒸着型磁気記録媒体においては、真空蒸着法で磁性膜が支持体上に作成される。磁性体はコバルトを主体とした金属または合金を酸素雰囲気中で蒸着し、必要に応じて蒸着された磁性膜上に保護膜、潤滑剤膜を形成する。
こうして得られた磁気記録媒体に対して、音楽録音再生用のオーディオテープにおいては、より高度の原音再生能力が要求され、ビデオテープについては、原画再生能力が優れていること、コンピュータ用バックアップテープあるいはディスクでは保存性に優れ、耐久性がよくデータの欠損がないことが要求されている。
【0003】
上記のような各種要求を満たすよう磁気記録媒体が優れた電磁変換特性を有し、かつ耐久性を確保するために、磁性体の高Hc化、高配向化、薄層塗布化、磁性層の保護膜の開発、磁性層/バック層の摩擦係数の低減のための潤滑剤の開発などが行われている。
一方、記録再生装置側では、単位面積当たりの記録容量を上げる手段として記録周波数を短波長化、磁気記録ヘッドの挟トラック化が進められている。
また、電磁誘導を動作原理とする磁気ヘッド(誘導型磁気ヘッド)は、更に高密度記録再生領域で使用するには限界が見え始めている。すなわち、大きな再生出力を得るためには再生ヘッドのコイル巻数を多くする必要があるが、インダクタンスが増加し高周波での抵抗が増加し、結果として再生出力が低下する。
近年、MR(磁気抵抗)を動作原理とする再生ヘッドが提案され、ハードディスク等で使用され始めている。MRヘッドは誘導型磁気ヘッドに比較して数倍の再生出力が得られ、かつ誘導コイルを用いないため、インピーダンスノイズ等の機器ノイズが大幅に低下し、磁気記録媒体のノイズを下げることで大きなSN比を得ることが可能になってきた。換言すれば従来機器ノイズに隠れていた磁気記録媒体ノイズを小さくすれば良好な記録再生が行え、高密度記録特性が飛躍的に向上できることになる。
MRヘッドは、高感度で充分な再生出力が得られるので、比較的飽和磁化σsが低い磁性体微粒子を用いると低ノイズ化によって高いC/N比が得られる。例えば、特許文献1には、バリウムフェライト(BaFe)微粒子を用いてMRヘッドで再生した例が開示されている。
しかしながら、MRヘッドは、ヘッドタッチの影響が大きく、テープのカッピングや磁性層表面の静電気等が出力変動の原因となっている。特にリニアー走行系でMRヘッドを使用する場合、トラック間で出力差が生じてしまう等の問題があった。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−302243号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、トラック間出力差が少なく、かつS/Nの高い電磁変換特性の優れた磁気記録媒体を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、支持体の一方の面に六方晶系フェライト粉末を結合剤中に分散してなる磁性層を有し、他方の面にバック層を有する磁気記録媒体であって、六方晶系フェライト粉末の平均板径が15〜40nmであり、磁性層の厚みが0.01〜0.5μmであり、カッピング量が−5〜+5%であり、かつ磁性層の表面電気抵抗Rsが108Ω/sq以下であることを特徴とする磁気記録媒体である。
【0007】
本発明は、磁気テープをリニアー走行系のMRヘッドで再生した場合に磁気テープのカッピング量及び磁性層の表面電気抵抗を上記所定に少なく制御するとテープ幅方向に複数設けられたMRヘッドへのヘッドタッチがテープ幅方向で一定に良好であるためにトラック間出力差が低く抑制できると共に高S/Nが得られるものである。
【0008】
本発明において、カッピング量Cとは、テープを10cmきりだし、平坦な盤上にフリーな状態で磁性層が上側に向くように置いたとき、テープ巾方向に磁性層が上に凸となって樋状に変形した場合は符号をプラスとし、バック層が上側に向くように置いたとき、バック層が上に凸となって樋状に変形した場合は符号をマイナスとし、盤面からその凸に変形したテープ上端部の距離Lのテープ幅Wに対する割合とする。即ち、C(%)=100L/Wである。
本発明ではカッピング量Cは−5〜+5%、好ましくは−3〜+3%に制御される。
カッピング量を上記範囲に制御する手段としては、特に制限は無いが、バック層を設けると共にその厚みを調整することが有効な手段である。
バック層厚みは、0.1〜1μmが好ましく、0.3〜0.7μmが更に好ましい。
【0009】
本発明の磁性層の表面電気抵抗Rsは、108Ω/sq以下、好ましくは105〜107Ω/sqに調整される。このように表面電気抵抗を小さくすることにより静電気の発生を抑制し、ヘッド等への張り付きを防止することができる。
表面電気抵抗を上記範囲とする手段としては、カーボンブラックなどの導電性材料を磁性層、下層、バック層等に添加することが挙げられる。
【0010】
本発明の磁性層は、特定サイズの六方晶系フェライト粉末を含む。
本発明に用いられる六方晶系フェライト粉末としては、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、鉛フェライト、カルシウムフェライト、これらの置換体、例えば、Co置換体等が挙げられる。具体的にはマグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト、更に一部スピネル相を含有したマグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト等が挙げられ、その他所定の原子以外にAl、Si、S,Sc、Ti、V,Cr、Cu,Y,Mo,Rh,Pd,Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P,Co,Mn,Zn、Ni、Sr、B、Ge、Nbなどの原子を含んでもかまわない。一般にはCo−Ti,Co−Ti−Zr、Co−Nb,Co−Ti−Zn,Co−Zn−Nb,Ni−Ti−Zn,Nb−Zn,Ni−Ti、Zn−Ti、Zn−Ni等の元素を添加した物を使用することができる。
本発明に用いられる六方晶系フェライト粉末は、通常六角板状の粉体であり、そのサイズは以下のようにして測定する。
【0011】
本明細書において、六方晶系フェライト粉末のように種々の粉体のサイズ(以下、「粉体サイズ」と言う)は、高分解能透過型電子顕微鏡写真及び画像解析装置より求められる。高分解能透過型電子顕微鏡写真の粉体の輪郭を画像解析装置でなぞり、粉体のサイズを求めることができる。即ち、粉体サイズは、▲1▼粉体の形状が針状、紡錘状、柱状(ただし、高さが底面の最大長径より大きい)等の場合は、粉体を構成する長軸の長さ、即ち長軸長で表され、▲2▼粉体の形状が板状乃至柱状(ただし、厚さ乃至高さが板面乃至底面の最大長径より小さい)場合は、その板面乃至底面の最大長径で表され、▲3▼粉体の形状が球形、多面体状、不特定形等であって、かつ形状から粉体を構成する長軸を特定できない場合は、円相当径で表される。円相当径とは、円投影法で求められるものを言う。
【0012】
また、該粉体の平均粉体サイズは、上記粉体サイズの算術平均であり、約350個の一次粒子について上記の如く測定を実施して求めたものである。一次粒子とは、凝集のない独立した粉体をいう。
また、該粉体の平均針状比は、上記測定において粉体の短軸の長さ(長軸に直行する軸で最大のもの)、即ち短軸長を測定し、各粉体の(長軸長/短軸長)の値の算術平均を指す。ここで、短軸長とは、上記粉体サイズの定義で▲1▼の場合は、粉体を構成する短軸の長さを、同じく▲2▼の場合は、厚さ乃至高さを各々指し、▲3▼の場合は、長軸と短軸の区別がないから、(長軸長/短軸長)は、便宜上1とみなす。
そして、粉体の形状が特定の場合、例えば、上記粉体サイズの定義▲1▼の場合は、平均粉体サイズを平均長軸長と言い、同定義▲2▼の場合は平均粉体サイズを平均板径と言い、(最大長径/厚さ乃至高さ)の算術平均を平均板状比という。同定義▲3▼の場合は平均粉体サイズを平均粒子径という。
【0013】
本発明では六方晶系フェライト粉末の平均板径は15〜40nm、好ましくは20〜30nmの範囲である。
特にトラック密度を上げるため、MRヘッドで再生する場合は、低ノイズにする必要があり、板径は40nm以下が好ましいが、15nmより小さいと熱揺らぎのため安定な磁化が望めない。40nm超ではノイズが高く、いずれも高密度磁気記録には向かない。平均板状比は1〜15が望ましい。好ましくは1〜7である。平均板状比が小さいと磁性層中の充填性は高くなり好ましいが、十分な配向性が得られない。15より大きいと粒子間のスタッキングによりノイズが大きくなる。この粒子サイズ範囲のBET法による比表面積は30〜200m2/gを示す。比表面積は概ね粒子板径と板厚からの算術計算値と符号する。粒子板径・板厚の分布は通常狭いほど好ましい。平均粉体サイズに対する標準偏差で表すとσ/平均粉体サイズ=0.1〜2.0である。粉体サイズ分布をシャープにするには粒子生成反応系をできるだけ均一にすると共に、生成した粒子に分布改良処理を施すことも行われている。たとえば酸溶液中で超微細粒子を選別的に溶解する方法等も知られている。磁性体で測定される抗磁力Hcは500Oe〜5000Oe(≒40〜400kA/m)程度まで作成できる。Hcは高い方が高密度記録に有利であるが、記録ヘッドの能力で制限される。Hcは粉体サイズ(板径・板厚)、含有元素の種類と量、元素の置換サイト、粒子生成反応条件等により制御できる。飽和磁化σsは30〜80A・m2/kgであることが好ましい。微粒子になるほど小さくなる傾向がある。製法では結晶化温度、または熱処理温度時間を小さくする方法、添加する化合物を増量する、表面処理量を多くする方法等がある。またW型六方晶フェライトを用いることも可能である。磁性体を分散する際に磁性体粒子表面を分散媒、ポリマーに合った物質で処理することも行われている。表面処理材は無機化合物、有機化合物が使用される。主な化合物としてはSi、Al、P、等の酸化物または水酸化物、各種シランカップリング剤、各種チタンカップリング剤が代表例である。量は磁性体に対して0.1〜10%である。磁性体のpHも分散に重要である。通常4〜12程度で分散媒、ポリマーにより最適値があるが、媒体の化学的安定性、保存性から6〜11程度が選択される。磁性体に含まれる水分も分散に影響する。分散媒、ポリマーにより最適値があるが通常0.01〜2.0%が選ばれる。六方晶フェライトの製法としては、▲1▼酸化バリウム・酸化鉄・鉄を置換する金属酸化物とガラス形成物質として酸化ホウ素等を所望のフェライト組成になるように混合した後溶融し、急冷して非晶質体とし、次いで再加熱処理した後、洗浄・粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得ガラス結晶化法、▲2▼バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後100℃以上で液相加熱した後洗浄・乾燥・粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る水熱反応法、▲3▼バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後乾燥し1100℃以下で処理し、粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る共沈法等があるが、本発明は製法を選ばない。
また、六方晶系フェライト粉末には後述する分散剤、潤滑剤、界面活性剤、帯電防止剤などで分散前にあらかじめ処理を行うこともできる。具体的には、特公昭44−14090号公報、特公昭45−18372号公報、特公昭47−22062号公報、特公昭47−22513号公報、特公昭46−28466号公報、特公昭46−38755号公報、特公昭47−4286号公報、特公昭47−12422号公報、特公昭47−17284号公報、特公昭47−18509号公報、特公昭47−18573号公報、特公昭39−10307号公報、特公昭48−39639号公報、米国特許3026215号、同3031341号、同3100194号、同3242005号、同3389014号などに記載されている。
【0014】
六方晶系フェライト粉末の含水率は0.03〜2質量%とするのが望ましい。後述する結合剤の種類によって六方晶系フェライト粉末の含水率は最適化するのが望ましい。
【0015】
本発明の磁気記録媒体の磁性層に用いる結合剤(バインダー)としては、従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂等を用いることができる。好ましい結合剤は、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、ニトロセルロース等の繊維素系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂である。その中でも、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂を用いるのが、バック層の硬度が磁性層の硬度に近くなりバック写りを低減することができるため、より好ましい。さらに、結合剤の一部に、環状構造とエーテル基とを含むポリウレタン樹脂を含むことが、分散性を向上させるという観点から好ましい。
【0016】
特に好ましい結合剤は、ジオールと有機ジイソシアネートとの反応により得られるポリウレタン樹脂であって、上記ジオールとして、環状構造を有する短鎖ジオールおよびエーテル結合を有する長鎖ジオールを、ポリウレタン樹脂を基準として、それぞれ17〜40質量%および10〜50質量%含有するものからなり、かつ上記長鎖ジオール中のエーテル結合を、ポリウレタン樹脂に対して、1.0〜5.0モル/g含有するものである。Tgは、−20〜150℃、好ましくは20〜120℃、更に好ましくは50〜100℃である。
【0017】
長鎖ジオールの環状部分が脂肪族、芳香族のいずれであっても、塗膜Tgが50〜150℃、好ましくは70〜100℃、カレンダー処理温度±30℃=塗膜Tgになるように塗膜Tgを最適化し、カレンダー成形性と塗膜強度を両立できるように、結合剤組成を調整することが好ましい。
【0018】
結合剤は、通常ポリイソシアネート硬化剤により、硬化させられる。ポリウレタン樹脂100質量部に対する硬化剤の使用量は0〜150質量部、好ましくは0〜100質量部、更に好ましくは0〜50質量部である。
【0019】
ポリウレタン樹脂中の水酸基の含有量は、1分子あたり3〜20個であるのが好ましく、より好ましくは1分子あたり4〜5個である。1分子あたり3個未満であるとポリイソシアネート硬化剤との反応性が低下するために、塗膜強度と耐久性が低下しやすい。また、20個より多いと、溶剤への溶解性と分散性が低下しやすい。ポリウレタン樹脂中の水酸基の含有量を調整するために、ポリウレタン樹脂の合成に際し、水酸基が3官能以上の化合物を用いることができる。具体的には、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、無水トリメリット酸、グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサントリオール、特公平6−64726号に記載されるポリエステルポリオールを原料とする2塩基酸と該化合物をグリコール成分として得られる3官能以上水酸基を有する分岐ポリエステル、ポリエーテルエステル等が挙げられる。好ましいのは3官能のものであり、4官能以上になると反応過程においてゲル化しやすくなる。
【0020】
また、ポリウレタン樹脂は、分子中に−SO3M、−OSO3M、−COOM、−PO3MM′、−OPO3MM′、−NRR′、−N+RR′R″COO−(ここで、M及びM′は、各々独立に水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニウム基であり、R及びRは各々独立に炭素数1〜12のアルキル基、R″は炭素数1〜12のN結合アルキレン基を示す)から選ばれた少なくとも1種の極性基を含むことが好ましく、特に好ましくは、−SO3M、−OSO3Mである。これらの極性基の量は、好ましくは1×10−5〜2×10−4eq/gであり、特に好ましくは5×10−5〜1×10−4eq/gである。1×10−5eq/gより少ないと粉体への吸着が不充分となるために分散性が低下し、2×10−4eq/gより多くなると溶剤への溶解性が低下するので分散性が低下する傾向がある。
【0021】
ポリウレタン樹脂の数平均分子量(Mn)は、5000〜100,000が好ましく、さらに好ましくは10,000〜50,000であり、特に好ましくは20,000〜40,000である。5000未満では、塗膜の強度や耐久性が低くなり、100,000より多いと溶剤への溶解性や分散性が低くなる傾向がある。
【0022】
ポリウレタン樹脂の環状構造は剛直性に影響し、エーテル基は柔軟性に寄与する。上記のポリウレタン樹脂は、溶解性が高く、慣性半径(分子の広がり)が大きく、粉体の分散性が良好である。また、ポリウレタン樹脂自身の硬さ(高Tg、高ヤング率)と靱性(伸び)の2つの特性を兼ね備えている。
【0023】
本発明において、磁性層形成用塗料は、上記成分以外に、α−Al2O3、Cr2O3等の研磨剤、カーボンブラック等の帯電防止剤、脂肪酸、脂肪酸エステル、シリコーンオイル等の潤滑剤、分散剤など通常使用されている添加剤あるいは充填剤を含んでいてもよい。これらは、従来から磁気記録媒体の磁性層に用いられているものを適宜用いることができる。また、各成分の分散等、磁性層形成用塗料の調製も、従来の方法を適宜採用して行うことができる。
【0024】
本発明の磁気記録媒体の磁性層は、Tgが30〜150℃であることが、走行耐久性を向上させるという観点から好ましい。さらに磁性層の厚みは、デジタル記録性能を高めるための磁化反転の鋭さという観点から、0.01〜0.5μm、好ましくは0.05〜0.2μmである。さらに、本発明の磁気記録媒体は、角形比が0.82以上であり、かつSFDが0.5以下であることが、高出力、高消去特性という観点から好ましい。
【0025】
本発明の磁気記録媒体は、支持体の一方の面に磁性層、その他面にバック層を有するものを広く含む。本発明の磁気記録媒体には、磁性層以外の層を有するものも含まれる。例えば、非磁性粉末を含む非磁性層、軟磁性粉末を含む軟磁性層、第2の磁性層、クッション層、オーバーコート層、接着層、保護層を有していてもよい。これらの層は、その機能を有効に発揮することができるように適切な位置に設けることができる。
【0026】
本発明の磁気記録媒体として好ましいのは、支持体と磁性層の間に、非磁性無機粉末と結合剤(バインダー)を含む非磁性層を有する磁気記録媒体である。非磁性無機粉末は、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等の無機化合物や非磁性金属から選択することができる。無機化合物としては、例えば酸化チタン(TiO2、TiO)、α化率90〜100%のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、α−酸化鉄、酸化クロム、酸化亜鉛、酸化すず、酸化タングステン、酸化バナジウム、炭化ケイ素、酸化セリウム、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、二酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデン、ゲーサイト、水酸化アルミニウムなどを単独又は組合せで使用することができる。特に好ましいのは二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、硫酸バリウムであり、更に好ましいのは二酸化チタン又は酸化鉄である。非磁性金属としては、Cu、Ti、Zn、Al等が挙げられる。これら非磁性粉末の平均粒子径は、0.005〜2μmであるのが好ましいが、必要に応じて平均粒子径の異なる非磁性粉末を組み合わせたり、単独の非磁性粉末でも粒子径分布を広くして同様の効果をもたせることもできる。とりわけ好ましいのは、平均粒子径が0.01〜0.2μmの非磁性粉末である。非磁性粉末のpHは6〜9であるのが特に好ましい。非磁性粉末の比表面積は1〜100m2/g、好ましくは5〜50m2/g、更に好ましくは7〜40m2/gである。非磁性粉末の結晶子サイズは0.01〜2μmであるのが好ましい。DBPを用いた吸油量は5〜100ml/100g、好ましくは10〜80ml/100g、更に好ましくは20〜60ml/100gである。比重は1〜12、好ましくは3〜6である。形状は、針状、紡錘状、球状、多面体状、板状のいずれの形状であっても良い。
【0027】
非磁性層の結合剤、帯電防止剤、潤滑剤、分散剤、添加剤、溶剤、分散方法その他は、上記の磁性層のものを適宜適用できる。特に、結合剤量、種類、添加剤、分散剤の添加量、種類に関しては磁性層に関する公知技術が適用できる。
【0028】
非磁性層の厚みは0.1〜3μm、好ましくは0.5〜2μm、より好ましくは0.8〜1.5μmにすることができる。非磁性層の厚さは、磁性層よりも厚いのが好ましい。また、磁性層を2層有する磁気記録媒体も好ましい。この場合は、磁性層厚みは、総和とする。
【0029】
本発明の磁気記録媒体のバック層には、金属酸化物を使用するのが好ましい。金属酸化物としては、酸化チタン、α−酸化鉄又はこれらの混合物のいずれかを用いるのが好ましい。酸化チタンとα−酸化鉄は、通常使用されるものを用いることができる。また、粒子の形状は特に制限されない。球状の場合は、粒子径が0.01〜0.1μmであるものが、また、針状の場合は、針状比が2〜20であるものが適当であり、長軸長が0.05〜0.3μmであるものが好ましい。金属酸化物の表面の少なくとも一部は、別の化合物に変性され、又は別の化合物、例えば、Al2O3、SiO2、ZrO2で被覆されていてもよい。
【0030】
バック層には、耐電防止のためにカーボンブラックを使用するのが好ましい。バック層に使用するカーボンブラックは、磁気記録テープに通常使用されているものを広く用いることができる。例えば、ゴム用ファーネスブラック、ゴム用サーマルブラック、カラー用カーボンブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。バック層の凹凸が磁性層に写らないようにするために、カーボンブラックの粒子径は0.3μm以下にするのが好ましい。特に好ましい粒子径は、0.01〜0.1μmである。また、バック層におけるカーボンブラックの使用量は、光学透過濃度(マクベス社製TR−927の透過値)が2.0以下になる範囲にするのが好ましい。
【0031】
走行耐久性を向上させる上で、平均粒子サイズの異なる2種類のカーボンブラックをバック層に使用することが有利である。この場合、平均粒子サイズが0.01から0.04μmの範囲にある第1のカーボンブラックと、平均粒子サイズが0.05から0.3μmの範囲にある第2のカーボンブラックとの組み合わせが好ましい。第2のカーボンブラックの含有量は、金属酸化物と第1のカーボンブラックとの合計量を100質量部として、0.1から10質量部が適しており、0.3から3質量部が好ましい。
【0032】
金属酸化物とカーボンブラックの質量比は60/40〜90/10、より好ましくは70/30〜80/20にすることが適当である。このように、金属酸化物をカーボンブラックよりも多量に含有させることによって、粉体の分散性が良好で面が平滑なバック層を形成することができる。このような組成を有するバック層形成用塗料は、従来のカーボンブラックを主体とするバックコート形成用塗料に比べて、チキソトロピー性が高い。このため、高濃度でエクストルージョン方式やグラビア方式などの塗布を行うことが可能である。このような高濃度塗料を塗布することによって、その膜厚が薄いにもかかわらず支持体との接着強度が大きくて、力学強度が高いバック層を形成することができる。
【0033】
結合剤の使用量は、金属酸化物とカーボンブラックの合計質量を100質量部として10〜40質量部の範囲から選ばれ、より好ましくは20〜32質量部にする。このようにして形成されるバック層の膜強度は高く、表面電気抵抗は低くなる。
【0034】
バック層の結合剤には、従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂等を用いることができる。そして、バック層は、上記金属酸化物、帯電防止剤などの粒状成分と結合剤を有機溶剤に分散したバック層形成用塗料を調製し、該塗料を支持体の磁性層とは反対の面に塗布することによって形成することができる。上記の好ましい態様のように、カーボンブラックよりも金属酸化物の使用量を多くすれば十分な分散性を確保することができるため、従来必要とされていたロール混練を行わずにバック層形成用塗料を調製することができる。また、カーボンブラック含有比率が低ければ、シクロヘキサノンを溶剤として使用しても乾燥後の残留シクロヘキサン量を低減することができる。
【0035】
本発明の磁気記録媒体には、磁性層、非磁性層及びバック層以外に、軟磁性粉末を含む軟磁性層、第2の磁性層、クッション層、オーバーコート層、接着層、保護層を有しても良い。これらの層は、その機能を有効に発揮することが出来るように適切な位置に設けることができる。
【0036】
本発明の磁気記録媒体は、例えば、乾燥後の層厚が上記の所定の範囲内になるように、走行下にある支持体の表面に上記各層形成用塗料を塗布してゆくことによって製造することができる。複数の磁性塗料もしくは非磁性塗料を逐次あるいは同時に重層塗布してもよい。各層形成用塗料を塗布するための塗布機としては、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押出しコート、エアナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビヤコート、キスコート、キャストコート、スプレイコート、スピンコート等が利用できる。これらについては例えば(株)総合技術センター発行の「最新コーティング技術」(昭和58年5月31日)を参考にできる。
【0037】
本発明の磁気記録媒体において、片面に2以上の層を有する磁気記録テープを製造するには、例えば以下の方法を用いることができる。
(a)磁性塗料の塗布で一般的に適用されるグラビア、ロール、ブレード、エクストルージョン等の塗布装置によってまず下層を塗布し、下層が乾燥する前に特公平1−46186号公報、特開昭60−238179号公報、特開平2−265672号公報等に開示されている支持体加圧型エクストルージョン塗布装置等を用いて、上層を塗布する方法。
(b)特開昭63−88080号公報、特開平2−17971号公報、特開平2−265672号公報に開示されている塗料通液スリットを2個有する一つの塗布ヘッド等を用いて、上下層をほぼ同時に塗布する方法。
(c)特開平2−174965号公報に開示されているバックアップロール付きのエクストルージョン塗布装置等を用いて、上下層をほぼ同時に塗布する方法。
【0038】
塗布した磁性層は、磁性層中に含まれる強磁性粉末を磁場配向処理した後に乾燥する。磁場配向処理は、当業者に周知の方法によって適宜行うことができる。
【0039】
磁性層は、乾燥後にスーパーカレンダーロールなどを用いて表面平滑化処理する。表面平滑化処理を行うことにより、乾燥時の溶剤の除去によって生じた空孔が消滅し磁性層中の強磁性粉末の充填率が向上する。このため、電磁変換特性の高い磁気記録媒体(テープ)を得ることができる。
【0040】
カレンダー処理には、通常ロールとしてはエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の耐熱性プラスチックロールを使用する。また金属ロールで処理することもできる。
【0041】
本発明の磁気記録媒体は、平滑性が良好な表面を有しているのが好ましい。平滑性を良好にするためには、例えば上述したように特定の結合剤を選んで形成した磁性層に上記カレンダー処理を施すのが有効である。カレンダー処理は、カレンダーロールの温度を60〜100℃、好ましくは70〜100℃、特に好ましくは80〜100℃にし、圧力を100〜500kg/cm(98〜490kN/m)、好ましくは200〜450kg/cm(196〜441kN/m)、特に好ましくは300〜400kg/cm(294〜392kN/m)にして行う。得られた磁気記録媒体(テープ)は、裁断機などを使用して所望の大きさに裁断して使用することができる。カレンダー処理を経た磁気記録媒体(テープ)は、熱処理を行い、熱収縮量を小さくすることが好ましい。
【0042】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を示し、本発明を更に詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。以下の記載において「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」をそれぞれ示す。
【0043】
実施例1〜8、比較例1〜6
【0044】
【0045】
上記各層形成用塗料のそれぞれについて、各成分をオープンニ−ダで混練したのち、サンドミルを用いて分散させ、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、下層非磁性層形成用塗料及び磁性層形成用塗料をそれぞれ調製した。
得られた下層非磁性層形成用塗料を、乾燥後の厚さが1.5μmとなるようにさらにその直後にその上に磁性層の厚さが表1記載の所定となるように、厚さ7μmで磁性層塗布面の中心線表面粗さが3nmのPET支持体上に同時重層塗布を行い、両層がまだ湿潤状態にあるうちに配向させ乾燥後、7段のカレンダで温度90℃、線圧294kN/mにて処理を行い、その後、乾燥後の厚みが表1記載の所定となるように下記組成のバック層を塗布した。1/2インチ幅にスリットして、磁気テープを得た。
尚、比較例6は、下層のカーボンブラック量を20部から10部に変更した。
【0046】
【0047】
上記得られた磁気記録テープの各特性の測定は次のように行った。
(1)磁性層、バック層及び下層厚味
各層の厚みは超薄切片を透過型電子顕微鏡で観察・撮影し、写真倍率を補正して求めた。
(2)電磁変換特性
ヘッドを固定した1/2インチリニアシステムで測定した。ヘッド/テープ相対速度は10m/secとした。記録は飽和磁化1.4TのMIGヘッド(ギャップ長:0.2μm、トラック幅18μm)を使い記録電流は、各テープの最適記録電流に設定した。再生ヘッドには素子厚み25nm、シールド間隔0.2μmの異方性型MRヘッド(A−MR)を用いた。
▲1▼S/N:記録波長0.2μmの信号を記録し、再生信号をシバソク製のスペクトラムアナライザーで周波数分析し、キャリア信号(波長0.2μm)の出力と、スペクトル全帯域の積分ノイズとの比をS/Nとした。
▲2▼トラック間出力差(dB):テープ中央の上記キャリア信号測定値からテープエッジからテープ幅の1/4のところの同測定値を差し引いた値として求めた。
(3)磁性層表面の表面電気抵抗Rs
IEC式Rs測定ジグを使用し、(1/2幅)デジタル超絶縁抵抗測定機(タケダ理研TR−811A)で電圧50Vで測定した。
評価結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
表中、BaFeサイズは、バリウムフェライト粉体の平均板径を示す。表面電気抵抗で例えば、1.00E+07は、1.00×10+7を意味する(他も同様である)。比較例7は、静電気により測定できなかった。
上表より、本発明のMRヘッドを用いた実施例は、比較例に比べてS/N及びトラック間出力差に優れることが分かる。
【0050】
【発明の効果】
本発明は、磁性層に用いる六方晶系フェライト粉末の平均板径を15〜40nm、磁性層の厚みを0.01〜0.5μm、カッピング量を−5〜+5%、かつ磁性層の表面電気抵抗Rsを108Ω/sq以下とし、バック層を備えた磁気記録媒体としたことにより、電磁変換特性に優れかつトラック間出力差のない磁気記録媒体を提供することができる。
Claims (1)
- 支持体上に六方晶系フェライト粉末を結合剤中に分散してなる磁性層を有し、他方の面にバック層を有する磁気記録媒体であって、六方晶系フェライト粉末の平均板径が15〜40nmであり、磁性層の厚みが0.01〜0.5μmであり、カッピング量が−5〜+5%であり、かつ磁性層の表面電気抵抗Rsが108Ω/sq以下であることを特徴とする磁気記録媒体。
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