JP2004211240A - 炭素繊維、炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維、およびそれらの製造方法 - Google Patents

炭素繊維、炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維、およびそれらの製造方法 Download PDF

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孝浩 奥屋
Kozo Mise
興造 三瀬
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Abstract

【課題】アクリロニトリル系前駆体繊維の紡糸工程や、炭素繊維に転換する際の焼成工程において、単繊維間の固着や融着が無く、珪素化合物の発生を抑制することにより工程通過性が良く、炭素繊維の工業的な生産性を高めると同時に、優れた品質の炭素繊維を製造することができる炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維とその製造方法等を提供する。
【解決手段】(A)式(1)で示される化合物を80〜97質量%;(B)アミノ変性シリコーンを2〜15質量%;(C)酸化防止剤を1〜10質量%含有し、(A)+(B)+(C)が100質量%である油剤組成物を含有し、単繊維引張強度が7.0cN/dtex以上、ヨウ素吸着量が繊維質量当たり0.5質量%以下、広角X線回析による結晶配向度(π)が90%以上、珪素含有量が繊維質量に対して500ppm以下である炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維及びその製造方法等を提供する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、品質および物性の優れた炭素繊維、それを製造するための炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維、およびそれらを安定に製造するための製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、炭素繊維は、優れた物性、特に優れた引張弾性率を有することから、高強度繊維、特に熱可塑性樹脂に添加される複合材料用の強化繊維として広く利用されている。
この炭素繊維は、例えば、炭素繊維用のアクリロニトリル系前駆体繊維を紡糸する紡糸工程、次いで200〜400℃の酸化性雰囲気中で前記前駆体繊維を加熱処理して耐炎化繊維に転換する耐炎化工程、その後更に不活性雰囲気中で300〜3000℃に加熱して炭素化する炭素化工程を経て製造される(耐炎化工程及び炭素化工程を合わせて焼成工程という)。しかしながら、上記耐炎化工程において得られた耐炎化繊維の各単繊維同士が固着又は融着すると、その後の炭素化工程における焼成が不均一となり、得られた炭素繊維に毛羽や束切れが生じ、製品価値の低下の原因となる。この固着や融着を回避するためには、前駆体繊維に油剤組成物を付与することが知られており、これまで多くの油剤組成物が検討されている。
【0003】
例えば、シリコーン系油剤組成物は、高い耐熱性を有し、単繊維間の固着や融着を効果的に抑えることで知られている(例えば、特許文献1〜4)。
しかし、シリコーン系油剤を使用すると、焼成工程において、シリコーン系油剤由来の酸化珪素などの珪素化合物が発生し、焼成炉壁や排ガス処理ラインに付着・堆積して操業性の低下をもたらす。また、珪素化合物が、焼成工程のガイド・ローラー類に付着して工程通過性を低下させたり、ガイドローラーを通過中の炭素繊維に再び付着して炭素繊維の品質を低下させる場合がある。また、焼成工程で単繊維内部に残存する珪素は、炭素繊維に転換する際にボイドや欠陥になりやすい。さらに、珪素の含有量が高い炭素繊維は、トウの拡がり性が悪い傾向があり、例えばプリプレグ成型時にスプリットが発生しやすいなどの問題があった。
【0004】
これに対して、シリコーン系油剤組成物を含まない前駆体繊維用油剤組成物も提唱されている(例えば、特許文献5〜7)。これらの油剤組成物は、焼成時に珪素化合物が発生しないこと、及び原料が安価なことから有利である。しかし、シリコーン系油剤組成物に比べると耐熱性が低く、また、単繊維間の平滑性および離型性が劣り、焼成時の単繊維間の固着または融着を防止するには不十分である。さらに、焼成工程でタール化しやすいため、前駆体繊維への付着量を低下しなければ炭素繊維の性能が不十分であり、そのため紡糸工程での集束性の悪化、焼成工程での毛羽の発生やローラーへの巻き付き、糸切れ等が生じる原因となっていた。
【0005】
一方、シリコーン系油剤の耐熱性や、単繊維間の平滑性および離型性を利用しつつ、焼成工程における珪素化合物の飛散を低減させる方法は、アミノ変性シリコーンを主成分とする油剤の付着量を減らす、油剤中のアミノ変性シリコーンの配合比を下げる、等の方法があるが、単繊維間の固着または融着が発生したり、紡糸工程での集束性が悪くなるなど、工程通過性にも炭素繊維の性能にも問題があった。
例えば、特許文献8では、水膨潤状態のアクリロニトリル系繊維に、アミノ変性シリコーンと耐熱樹脂、吸湿剤からなる油剤組成物を繊維質量に対し0.05〜1質量%付与することで、焼成工程における珪素化合物の発生を低減させることが述べられている。
しかし、アミノ変性シリコーンの繊維内部への浸透抑制については考慮されておらず、耐熱性や単繊維間の平滑性および離型性が十分に発揮されず、焼成時の単繊維間の固着または融着を防止するには不十分であった。また、油剤組成物の前駆体繊維への付着量が低い為、紡糸工程での集束性が悪くなり、焼成工程での毛羽の発生やローラーへの巻き付き、糸切れなど、工程通過性が不十分であった。
【0006】
また、特許文献9では、水膨潤状態のアクリロニトリル系繊維に非イオン活性剤および/又はカチオン活性剤を付与し、乾燥緻密化処理の後にシリコーン化合物(あるいは非イオン活性剤などとの混合物)を付与することで前駆体繊維の紡糸工程や焼成工程における接着を抑制し、高強度の炭素繊維が製造できることが述べられている。
この方法でも、焼成工程における珪素化合物の飛散を抑制することは可能であるが、非イオン活性剤および/又はカチオン活性剤は耐熱性が不十分であり、付与した後の乾燥緻密化処理の際に単繊維間の接着が生じるため、耐炎化工程および炭素化工程の通過性や炭素繊維の性能が不十分であった。
また、特許文献10では、水膨潤状態のアクリロニトリル系繊維にシリコーンを含有した油剤組成物を少量付与し、乾燥緻密化処理の後に再度シリコーンを含有した油剤組成物を付与することで前駆体繊維の紡糸工程や焼成工程における接着を抑制し、高強度のアクリロニトリル系炭素繊維が製造できることが述べられている。
【0007】
しかし、水膨潤状態のアクリロニトリル系繊維に油剤組成物を少量付与した場合、均一付着性が不十分であり、乾燥緻密化処理の際に単繊維間の接着が生じやすい。それを防ぐためには、比較的低温で乾燥緻密化処理を行わなければならず、乾燥装置が大規模となる。また、この発明では、焼成工程における珪素化合物の発生量低下は、十分なものとは言えなかった。
このように、従来の技術では、単繊維間の固着や融着が無く、珪素含有量が低く、優れた品質の炭素繊維を、安定に生産することが困難であった。
【0008】
【特許文献1】
特開昭51−116225号公報
【特許文献2】
特開昭63−135510号公報
【特許文献3】
特開昭63−203878号公報
【特許文献4】
特開平5−140821号公報等
【特許文献5】
WO97/09474号公報
【特許文献6】
特開平9−78340号公報
【特許文献7】
特開平11−36135号公報
【特許文献8】
特開2000−199183号公報
【特許文献9】
特開昭59−137508号公報
【特許文献10】
特開平11−241230号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、優れた品質で安価な炭素繊維を提供することにある。また、アクリロニトリル系前駆体繊維の紡糸工程や、炭素繊維に転換する際の焼成工程において、単繊維間の固着や融着が無く、珪素化合物の発生を抑制することにより工程通過性が良く、炭素繊維の工業的な生産性を高めると同時に、優れた品質の炭素繊維を製造することができる炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維とその製造方法、およびそれを用いた炭素繊維の製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記した問題点を解決するための本発明は次の構成からなる。
(A)下記式(1)で示される化合物を80〜97質量%;
Figure 2004211240
(式中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数7〜21のアルキル基であり;A及びAは、それぞれ独立してエチレン基又はプロピレン基であり;m及びnは、それぞれ独立して1〜5の整数を表す)
(B)アミノ変性シリコーンを2〜15質量%;及び、
(C)酸化防止剤を1〜10質量%、
含有し、(A)+(B)+(C)が100質量%である油剤組成物を含有し、単繊維引張強度が7.0cN/dtex以上であり、ヨウ素吸着量が繊維質量当たり0.5質量%以下であり、広角X線回析による結晶配向度(π)が90%以上であり、珪素含有量が繊維質量に対して500ppm以下である炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維であり、より好ましくは、珪素含有量が300ppm以下である炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維である。
また、上記炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維を焼成することを特徴とする炭素繊維の製造方法である。
更に、珪素含有量が100ppm以下、より好ましくは、珪素含有量が50ppm以下であり、樹脂含浸ストランド弾性率が210〜350GPaであり、ストランドの強度が4900MPa以上であり、更に伸度が2.06%以上であることを特徴とする炭素繊維である。
又、より好ましくは、単繊維直径が4.0〜10μmである上述の炭素繊維である。
【0011】
加えて、本発明は次の構成からなる。
(1) アクリロニトリル系共重合体を紡糸した水膨潤状態の糸条に、アミノ変性シリコーンを1〜15質量%含有する油剤組成物を繊維質量当たり1.0〜2.0質量%付与し、次いで乾燥する第一油剤付与工程;(2)第一油剤付与工程で得られた前駆体繊維に、アミノ変性シリコーンを50質量%以上含有する油剤組成物を繊維質量当たり0.01〜0.2質量%付与し、次いで乾燥する第二油剤付与工程;とを有することを特徴とする、炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維の製造方法である。
また、第一油剤付与工程における油剤組成物が、以下の成分:
Figure 2004211240
(A)下記式(1)で示される化合物を80〜98質量%;
(式中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数7〜21のアルキル基であり;A及びAは、それぞれ独立してエチレン基又はプロピレン基であり;m及びnは、それぞれ独立して1〜5の整数を表す)
(B)アミノ変性シリコーンを1〜15質量%;及び、
(C)酸化防止剤を1〜10質量%、
含有し、(A)+(B)+(C)が100質量%である油剤組成物である、上記炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維の製造方法である。
更に、上記方法により得られた炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維を焼成することを特徴とする炭素繊維の製造方法である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維、炭素繊維、およびそれらの製造方法について詳細に説明する。
(1) 炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維
本発明の炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維は、珪素化合物含有油剤組成物を付与してなる炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維である。
(1−1) 珪素化合物含有油剤組成物
珪素化合物含有油剤組成物は、炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維に付与される。珪素化合物含有油剤組成物は、例えば、エステル化合物、珪素化合物及び酸化防止剤等が含まれる。
【0013】
(1−1−1)エステル化合物
エステル化合物は、アクリロニトリル系前駆体繊維の集束性の向上と紡糸での工程安定性、更には引き続く焼成工程での通過性向上を目的として、珪素化合物含有油剤組成物に添加される。
本発明の珪素化合物含有油剤組成物において使用されるエステル化合物としては、例えば、脂肪酸エステル化合物、芳香族系エステル化合物等が挙げられる。好ましくは、エチレンオキシド付加型の両末端高級脂肪酸エステル化合物、プロピレンオキシド付加型の両末端高級脂肪酸エステル化合物が適当である。より好ましくは、ビスフェノールAのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド付加型の両末端高級脂肪酸エステル化合物であり、具体的には、下記式(1)で示される化合物である。このような化合物は耐熱性が高いことから耐炎化工程での工程通過性を良好にできる。
【0014】
Figure 2004211240
式中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数7〜21のアルキル基である。R及びRとして好ましくは、RCOO−基又はRCOO−基が、ラウリン酸基、ミリスチン酸基、パルミチン酸基、ステアリン酸基等の高級脂肪酸から選択されることが適当である。
また、A及びAは、それぞれ独立してエチレン基又はプロピレン基である。つまり、AO及びAOは、それぞれ独立してエチレンオキシド残基又はプロピレンオキシド残基である。
m及びnは、それぞれ独立して1〜5の整数である。m及びnが、この範囲内であれば、式(1)の化合物の耐熱性が損なわれることもない。
このエステル化合物は、珪素化合物含有油剤組成物に対し、例えば、80〜97質量%含有することが適当である。80質量%以上であれば、焼成工程での珪素化合物の発生が充分に抑制され、また炭素繊維の珪素含有量も低く抑えられ、97質量%以下であれば、炭素繊維前駆体又は耐炎化された繊維同士の固着又は融着を有意に防止することができる。
【0015】
(1−1−2)珪素化合物
珪素化合物としては、例えば、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン等が挙げられる。中でも好ましくは、アミノ変性シリコーンであり、より好ましくは、下記式(2)及び(3)のようなものが挙げられる。
Figure 2004211240
(式中、pは、10≦p≦10000を満たす整数、qは、1≦q≦100を満たす整数である。)
Figure 2004211240
(式中、rは、10≦r≦10000を満たす整数である。)
この珪素化合物は、珪素化合物含有油剤組成物に対し、例えば、2〜15質量%含有することが適当である。2質量%以上であれば炭素繊維前駆体又は耐炎化された繊維同士の固着又は融着を有意に防止することができ、又、15質量%以下であれば焼成工程での珪素化合物の発生が充分に抑制され、炭素繊維の珪素含有量も低く抑えられる。
【0016】
(1−1−3)酸化防止剤
酸化防止剤は、珪素化合物含有油剤組成物、特に珪素化合物含有油剤組成物中のエステル化合物の熱劣化を防止させることを目的として珪素化合物含有油剤組成物に添加される。
ここで、酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリチル‐テトラキス〔3‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール‐ビス〔3‐(3‐t‐ブチル‐5‐メチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル‐3‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5‐トリス(4‐t‐ブチル‐3‐ヒドロキシ‐2,6‐ジメチルベンジル)イソシアヌル酸、2,2‐チオ‐ジエチレンビス〔3‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、4,4’‐ブチリデンビス(3‐メチル‐6‐t‐ブチルフェニル‐ジトリデシルホスファイト)等並びにこれらの組合せが挙げられる。
この酸化防止剤は、珪素化合物含有油剤組成物に対し、1〜10質量%含有することが適当である。1質量%以上であれば、耐熱性向上効果が十分に得られ、また、10質量%以下であれば、珪素化合物含有油剤組成物の乳化安定性が損なわれることもなく、炭素繊維前駆体繊維の焼成工程において酸化防止剤の残渣が炭素繊維に残存することもなく、また、10質量%程度であれば耐熱性の向上効果は十分得られるからである。
【0017】
(1−1−4)その他、珪素化合物含有油剤組成物には、炭素繊維前駆体繊維及び炭素繊維の特性向上のために帯電防止剤、浸透剤、消泡剤、防腐剤などを適宜配合してもよい。
【0018】
(1−1−5)このような珪素化合物含有油剤組成物は、炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維に対して、この油剤組成物が付着した炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維の全質量当たり1.0〜2.0質量%付与されることが好ましい。1.0質量%以上であれば、炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維を紡糸する工程での前駆体繊維の集束性が不足することもなく、また、毛羽立ちが多くなることもないので好ましい。また、2.0質量%以下であれば、焼成して得られる炭素繊維の性能が低下することもないので好ましい。
【0019】
(1−2) 炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維の特性
(1−2−1)珪素含有量
得られた炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維の珪素含有量は、この油剤組成物が付着した炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維の全質量当たり500ppm以下、好ましくは、300ppm以下であることが適当である。含有する珪素は、上記珪素化合物含有油剤組成物に由来するものであることが好ましい。珪素含有量が500ppm以下であれば、焼成工程での珪素化合物の発生が充分に抑制され、また炭素繊維の珪素含有量も低く抑えられる。
【0020】
(1−2−2)単繊維間接着数
本発明の炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維の単繊維間接着数は、例えば、20以下であることが好ましい。より好ましくは10以下である。単繊維間接着数が20以下であれば、固着又は融着の少ない炭素繊維を得ることができ、炭素繊維の固着又は融着に伴う炭素繊維の性能の低下も回避できるので好ましい。ここで、単繊維間接着数とは、炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維の単繊維12000本当たり、10本以上の単繊維同士が接着している群の数をいう。単繊維間接着数の測定方法としては、例えば、前駆体繊維のトウを3mm長に切断し、アセトン中に分散させ、マグネティックスターラーを用い10分間攪拌する。その後、単繊維12000本当たり、10本以上の単繊維同士が接着している群の数(接着数)を計数する方法がある。
【0021】
(1−2−3)単繊維繊度
本発明の炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維の単繊維繊度は、例えば、0.6〜2dtexであることが好ましい。
前駆体繊維の単繊維繊度が0.6dtex以上であれば、焼成工程において毛羽が生じることもなく、また、得られる炭素繊維の切断や毛羽立ちも防止することができるので好ましい。また、単繊維繊度が2dtex以下であれば、焼成工程において前駆体繊維に焼け斑が生じることもなく、得られた炭素繊維が十分な引張強度を有することになるので好ましい。
(1−2−4)単繊維引張強度
本発明の炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維の単繊維引張強度は、例えば、7.0cN/dtex以上、好ましくは7.2cN/dtex以上であることが適当である。単繊維引張強度が7.0cN/dtex以上であれば、焼成して得られる炭素繊維の力学的性能が十分発揮されるので好ましい。
【0022】
(1−2−5)ヨウ素吸着量
本発明の炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維のヨウ素吸着量は、この油剤組成物が付着した前駆体繊維質量当たり0.5質量%以下、好ましくは、0.3質量%以下であることが適当である。ヨウ素吸着量が0.5質量%以下であれば、この前駆体繊維の構造の緻密性または配向性が損なわれず均質になり、炭素繊維に転換する焼成時に欠陥となり難いため、得られる炭素繊維の性能が低下することもないので好ましい。ここで、ヨウ素吸着量とは、前駆体繊維が吸着するヨウ素量であり、繊維構造の緻密性の程度を示す尺度である。小さいほど繊維が緻密であることを示す。
【0023】
(1−2−6)広角X線回折による結晶配向度(π)
本発明の炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維の広角X線回析による結晶配向度(π)は、90%以上、好ましくは、92%〜95%であることが適当である。結晶配向度(π)が90%以上であれば、前駆体繊維の引張強度・弾性率が低くなることもなく、これを焼成して得られる炭素繊維の力学的性能が不十分になることもないので好ましい。また、結晶配向度πの非常に高いものを得ようとすると、さらに高い延伸倍率が必要になり、安定した紡糸が困難になるので、工業的に製造が容易な範囲は通常95%以下である。ここで、広角X線解析による結晶配向度(π)とは、繊維を構成する共重合体分子鎖の繊維軸方向における配向の程度を示す尺度であり、広角X線解析法による繊維の赤道線上回折点の円周方向強度分布の半価幅Hから、配向度π(%)=((180−H)/180)×100 によって算出される値である。
【0024】
(1−3)炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維の製造方法
本発明における炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維の製造方法は、アクリロニトリル系共重合体を原料とし、(1) このアクリロニトリル系共重合体を紡糸した水膨潤状態の糸条に、アミノ変性シリコーンを1〜15質量%含有する油剤組成物を繊維質量当たり1.0〜2.0質量%付与し、次いで乾燥する第一油剤付与工程;(2)第一油剤付与工程で得られた前駆体繊維に、アミノ変性シリコーンを50質量%以上含有する油剤組成物を繊維質量当たり0.01〜0.2質量%付与し、次いで乾燥する第二油剤付与工程;
とを有することを特徴とする、炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維の製造方法である。
【0025】
本発明で使用されるアクリロニトリル系共重合体の重合方法は溶液重合、スラリー重合等公知の重合法の何れでも用いることができる。
また、本発明のアクリロニトリル系共重合体(以下、単に共重合体ともいう。)の組成は特に限定されるものではないが、アクリロニトリル単位95質量%以上、好ましくは95〜98.5質量%と、アクリロニトリルと共重合可能なビニル系モノマー単位5質量%以下とからなることが好ましい。更に、共重合可能なビニル系モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、又は、これらのアルカリ金属塩もしくはアンモニウム塩及びアクリルアミド等のモノマー群から選ばれる1種以上のモノマーが耐炎化反応を促進する上で好ましい。アクリロニトリル単位が95質量%以上の場合は、炭素繊維に転換する際の焼成工程で繊維の熱融着を招くことなく、炭素繊維の品質および性能を維持できるので好ましい。また、共重合体自体の耐熱性が低くなることもなく、前駆体繊維を紡糸する際、繊維の乾燥あるいは加熱ローラーや加圧水蒸気による延伸のような工程において、単繊維間の接着を回避できる。一方、アクリロニトリル単位が98.5質量%以下の場合には、溶剤への溶解性が低下することもなく、紡糸原液の安定性を維持できると共に共重合体の析出凝固性が高くならず、前駆体繊維の安定した製造が可能となるので好ましい。
【0026】
本発明で使用される糸条は、上記アクリロニトリル系共重合体を紡糸することによって得られる。ここで紡糸方法は、前記共重合体を湿式紡糸して、凝固繊維とした後、浴中延伸、または空中延伸と浴中延伸による一次延伸と、加圧水蒸気延伸による二次延伸とを行うことが好ましい。
まず、湿式紡糸の際には、前述のアクリロニトリル系共重合体を、溶剤に溶解し紡糸原液とする。このときの溶剤は、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドおよびジメチルホルムアミド等の有機溶剤や塩化亜鉛、チオシアン酸ナトリウム等の無機化合物の水溶液等の公知のものから適宜選択して使用することができる。
紡糸賦形は、上記紡糸原液をノズル孔より凝固浴中に紡出することで行う。凝固浴としては、紡糸原液に用いられる溶剤を含む水溶液を通常用いる。
次に、凝固繊維を一次延伸する。浴中延伸は、凝固糸を凝固浴中または延伸浴中で延伸する。あるいは、一部空中延伸した後に、浴中延伸してもよい。浴中延伸は通常50〜98℃の延伸浴中で1回あるいは2回以上の多段に分割するなどして行われ、その前後あるいは同時に洗浄を行ってもよい。
【0027】
本発明では、上記のようにして浴中延伸、洗浄した後のアクリロニトリル系共重合体を紡糸した水膨潤状態にある糸条に、まず、第一の油剤付与を行う。第一の油剤付与に使用される油剤組成物は、下記式(1)で示されるビスフェノールAのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド付加物の両末端高級脂肪酸エステル化物を80〜98質量%含有し、アミノ変性シリコーンを1〜15質量%含有し、酸化防止剤を1〜10質量%含有することが好ましい。
Figure 2004211240
式(1)で示されるビスフェノールAのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド付加物の両末端高級脂肪酸エステル化物において、式中のRおよびRはそれぞれ独立して炭素数7〜21のアルキル基であり、RまたはRを形成するカルボン酸としては、具体的にはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸から選ばれることが好ましい。
【0028】
エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドの付加モル数m、nは、1〜5が好ましい。付加モル数がこの範囲内であれば、式(1)の化合物の長所である耐熱性が十分に発揮される。また本発明の油剤組成物における式(1)の化合物の含有量は80〜98質量%の範囲内にするのがよい。この範囲にあれば、前記油剤組成物のアミノ変性シリコーンの含有量を1〜15質量%にすることができ、好ましい。アミノ変性シリコーンの含有量が1質量%以上であれば、アミノ変性シリコーンの耐熱性や単繊維間の平滑性および離型性が十分に発揮され、油剤付着処理後の乾燥緻密化時に単繊維間接着を回避でき、炭素繊維の性能を十分に発揮できる。アミノ変性シリコーンの含有量が15質量%以下であれば、油剤付着処理後の乾燥緻密化時に単繊維間接着を防止する効果を十分に発揮しつつ前駆体繊維の集束性を保持できるので好ましい。また、アミノ変性シリコーン含有量を減らすことで、焼成での珪素化合物の発生を抑制するという本発明の目的も達成することができる。
【0029】
アミノ変性シリコーンの種類については、特に限定されないが、具体例として下記式(2)や式(3)のようなものが挙げられる。
Figure 2004211240
(式中、pは、10≦p≦10000を満たす整数、qは、1≦q≦100を満たす整数である。)
Figure 2004211240
(式中、rは、10≦r≦10000を満たす整数である。)
前記油剤組成物において、酸化防止剤を1〜10質量%含有することが好ましい。酸化防止剤が1質量%以上であれば、耐熱性向上効果が十分に得られ、耐炎化工程での工程安定性が付与でき、又、10質量%以下であれば、炭素繊維前駆体繊維の焼成工程において酸化防止剤の残渣が炭素繊維に残存することもなく、炭素繊維の強度の低下が見られない。
なお、第一の油剤付与における油剤組成物には、その特性向上のために、帯電防止剤、消泡剤、防腐剤などを適宜配合することは差し支えない。
【0030】
また、第一の油剤付与は、前記油剤組成物と界面活性剤とを混合し水に分散させ、乳化粒径0.2〜0.5μmの油剤乳化物として、水膨潤状態にある糸条に付着処理することが重要である。このとき、乳化する際の水の量に特に制限はない。乳化粒径が0.2μm以上の場合、水膨潤状態にある糸条の内部まで油剤組成物が浸透しすぎることもなく、油剤組成物の付着量を上げたりアミノ変性シリコーンの含有量を増やすことなくアミノ変性シリコーンの耐熱性や単繊維間の平滑性および離型性を十分発揮させることができるので好ましい。乳化粒径が0.5μm以下の場合、十分な乳化安定性が得られるため好ましい。
【0031】
乳化粒径は、乳化の方法や、界面活性剤の種類および界面活性剤の使用量などを変えることにより調節される。
乳化に使用される界面活性剤はノニオン系界面活性剤が好ましい。本発明におけるノニオン系界面活性剤には、特に制限はないが、好適な例としてはポリオキシアルキレングリコール脂肪酸エステル、脂肪族アルコールのアルキレンオキシド付加物、アルキル置換フェノールのアルキレンオキシド付加物などが挙げられ、疎水部のアルキル鎖は直鎖状でも分岐していてもよい。このノニオン系界面活性剤のHLBは6〜16であることが望ましい。また、これらのノニオン系界面活性剤が焼成工程において加熱残渣として耐炎化糸や炭素化糸に残存することは好ましくないので、空気中250℃で2時間加熱後の残渣率が1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。この様なノニオン系界面活性剤の親水部のオキシアルキレン単位の繰り返し数、オキシアルキレン単位の種類やオキシアルキレン単位の繰り返しの形態は、油剤乳化物の安定性を考慮して適宜選択することができる。
【0032】
前記油剤組成物と上記ノニオン系界面活性剤との混合比は、質量比85:15〜65:35の範囲とすることが好ましい。ノニオン系界面活性剤の比率がこの範囲内であれば、油剤乳化物の安定性が低下して繊維への付着斑(ムラ)が生じることもなく、また、炭素繊維の性能が低下する事もないので好ましい。
さらに、第一の油剤付与は、前記油剤組成物を油剤付与及び乾燥後の繊維質量当たり1.0〜2.0質量%となるように付着することが重要である。油剤組成物の繊維質量当たりの付着量が、1.0質量%以上であれば、紡糸工程での集束性が十分であり、2.0質量%以下であれば、炭素繊維の性能が低下することもなく好ましい。
次に、第一の油剤付与を行った糸条は加熱ローラーなどによって乾燥緻密化を行う。乾燥温度、時間は適宜選択することができるが、120℃〜190℃の加熱ローラーにより乾燥緻密化することが好ましい。加熱ローラーの温度が120℃以上の場合、加熱ローラーの本数を多くすることなく充分に加熱することができ、また、加熱ローラーの温度が190℃以下の場合は、単繊維間接着を回避して、炭素繊維の性能を十分発揮することができる。
【0033】
本発明では、次いで行われる二次延伸の前または二次延伸後の糸条に、第二の油剤付与を行う。第二の油剤付与を二次延伸後の糸条に行う場合は、二次延伸後の糸条を一旦巻き取り、それを焼成する直前に第二の油剤付与を行っても差し支えないが、第二の油剤付与を行った糸条は、加熱ローラーなどによって乾燥することが、油剤組成物を糸条に均一に付着させる上で好ましい。
第二の油剤付与は、アミノ変性シリコーンを50質量%以上含有する油剤組成物を付与する。第二の油剤付与における油剤組成物のアミノ変性シリコーンの含有量が50質量%以上では、アミノ変性シリコーンの耐熱性や単繊維間の平滑性および離型性を十分に発揮することができ、焼成工程で繊維同士の固着又は融着を有意に防止することができ、炭素繊維の性能を十分に発揮することができるため好ましい。
アミノ変性シリコーンの種類については、第一の油剤付与における油剤組成物と同様に特に限定されるものではなく、また、第一の油剤付与における油剤組成物と異なる種類のものを使用してもよい。
なお、第二の油剤付与における油剤組成物には、その特性向上のために酸化防止剤、帯電防止剤、浸透剤、消泡剤、防腐剤などを適宜配合することは差し支えない。
【0034】
また、第二の油剤付与では、乾燥緻密化後の糸条は油剤組成物が繊維内部に浸透しにくいことや、油剤組成物を糸条に均一に付着させることなどの理由から、油剤組成物と界面活性剤を混合し水に分散させ、乳化粒径0.1μm以下の油剤乳化物として糸条に付与することが重要である。乳化粒径は、乳化の方法や、界面活性剤の種類および界面活性剤の使用量などを変えることにより調節される。第一の油剤付与の場合と同様に、界面活性剤の種類は特に限定されるものではないが、ノニオン系界面活性剤が好ましい。また、これらのノニオン系界面活性剤が焼成工程において加熱残渣として耐炎化糸や炭素化糸に残存することは好ましくないので、空気中250℃で2時間加熱後の残渣率が1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。前記油剤組成物と上記ノニオン系界面活性剤との混合比は、質量比85:15〜65:35の範囲とすることが好ましい。ノニオン系界面活性剤の比率がこの範囲であれば、油剤乳化物の安定性が低下して繊維への付着斑(ムラ)が生じることもなく、また、炭素繊維の性能が低下することもないので好ましい。
【0035】
さらに、第二の油剤付与では、油剤組成物が、油剤付与及び乾燥後の繊維質量当たり0.01〜0.2質量%となるように付与することが重要である。油剤組成物が繊維質量当たり0.01質量%以上であれば、アミノ変性シリコーンの耐熱性や単繊維間の平滑性および離型性が十分に発揮され、焼成工程で繊維同士の固着又は融着を有意に防止することができ、炭素繊維の性能が低下することもない。また、油剤組成物が繊維質量当たり0.2質量%以下であれば、焼成での珪素化合物の発生を抑制するという本発明の目的にも合致する。
【0036】
本発明で行われる二次延伸は、加圧水蒸気延伸法により行うことが好ましい。加圧水蒸気延伸法は、加圧水蒸気雰囲気中で延伸を行う方法であって、高倍率の延伸が可能であることから、より高速で安定な紡糸が行えると同時に、得られる繊維の緻密性や配向度向上にも寄与する。
また、本発明では、全延伸倍率(一次延伸と二次延伸の相乗)を13以上、かつ全延伸倍率に対する二次延伸倍率の割合(二次延伸倍率/全延伸倍率)を0.2より大きくすることが好ましい。これにより、紡糸安定性に優れ、湿式紡糸法を用いたものであっても、引っ張り特性および緻密性や配向性が極めて優れた前駆体繊維が得られる。
【0037】
前記したような好ましい方法で製造された前駆体繊維は、焼成することにより、品質および物性の優れた炭素繊維とすることができる。
焼成において、耐炎化処理法は種々の方法を取り得るが、通常、空気中200〜400℃の温度で得られる耐炎化糸の密度が1.26〜1.4となるように、所望により延伸または収縮処理を加えながら行うのが好ましい。
次いで得られた耐炎化糸は不活性雰囲気下300〜3000℃の温度で処理し炭素繊維とする。また、こうして得られた炭素繊維は、目的に応じて、表面処理やサイジングなどを適用することができる。
【0038】
(2)炭素繊維
本発明の炭素繊維は、例えば、前駆体繊維を紡糸し、焼成することによって得られる。
前駆体繊維としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ピッチおよびセルロース等が挙げられる。
好ましくは、上記(1)で示されるような炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維を焼成して得られた炭素繊維、若しくは、上記(1−3)で製造された炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維を焼成して得られた炭素繊維であることが適当である。
前駆体繊維の焼成は、前述した耐炎化工程及び炭素化工程により行われる。より具体的には、本発明の炭素繊維は、例えば、200〜400℃の空気、酸化窒素等の酸化性雰囲気中で前記前駆体繊維を加熱処理して耐炎化繊維に転換する耐炎化工程、その後更に窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性雰囲気中で300〜3000℃に加熱して炭素化する炭素化工程を経て製造される。
【0039】
(2−1)炭素繊維の特性
(2−1−1)珪素含有量
本発明における炭素繊維の珪素含有量は、炭素繊維の全質量当たり、100ppm以下、好ましくは、50ppm以下であることが適当である。含有する珪素は、例えば、珪素化合物含有油剤組成物が付与された前駆体繊維を焼成することによって残存した珪素に由来する。100ppm以下である場合、その炭素繊維は、プリプレグ成型時にトウの拡がり性が良好である。
(2−1−2)樹脂含浸ストランドの強度、弾性率、伸度
本発明の炭素繊維は、樹脂含浸ストランド弾性率は210〜350GPaであり、樹脂含浸ストランド強度は4900MPa以上で、更に伸度は2.06%以上、より好ましくは2.10%以上のものである。樹脂含浸ストランドの強度、弾性率、伸度のすべてがこの範囲であれば、炭素繊維が添加される複合材料の性能を十分に発揮させることができるので好ましい。
【0040】
(2−1−3)単繊維直径
本発明における炭素繊維の単繊維直径は4.0〜10μmであることが適当であり、より好ましくは5.0〜10μmである。高い引張強度を発現するためには、炭素繊維の単繊維直径を低下することが有効である。単繊維直径が4.0μm以上であれば、この炭素繊維を複合材料に添加して加工する際に、繊維の切断や毛羽が発生することもない。また、単繊維直径が10μm以下であれば、炭素繊維の焼成工程において前駆体繊維に焼け斑が生じることを防止できるので好ましい。
【0041】
【実施例】
以下に実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。実施例および比較例における、共重合体組成、ノニオン系界面活性剤加熱残渣率、油剤乳化物の乳化粒径、耐炎化炉珪素化合物飛散量、前駆体繊維の単繊維引張強度、ヨウ素吸着量、広角X線解析による結晶配向度、炭素繊維の単繊維直径、樹脂含浸ストランド強度・弾性率・伸度、前駆体繊維および炭素繊維の単繊維間接着数、珪素の含有量は以下の方法により評価した。
また、実施例および比較例における主要な油剤付与条件を表1に、前駆体繊維と炭素繊維の特性、および耐炎化での珪素化合物飛散状態を表2に、それぞれまとめて示した。
【0042】
[共重合体組成]
1H−NMR法(日本電子GSX−400型超伝導FT−NMR)により測定した。
[ノニオン系界面活性剤加熱残渣率]
アルミシャーレ(直径60mm、深さ10mm)にノニオン系界面活性剤2.0gを精秤し、空気中250℃で2時間加熱した後の残分について残渣率を算出した。加熱残渣率が大きいほど、ノニオン系界面活性剤の熱劣化物が耐炎化糸や炭素化糸に残存する可能性が大きい事を意味する。
[油剤乳化物の乳化粒径]
堀場製作所製レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置「LA−910」により、粒度分布を測定し、平均メジアン径を乳化粒径とした。
[耐炎化炉珪素化合物飛散量]
炭素繊維を1週間連続して製造した時の耐炎化炉の掃除頻度により、耐炎化炉内の珪素化合物飛散量を表した。掃除は、耐炎化炉のエアー循環ラインの珪素化合物量捕捉用フィルターが詰まって、循環ポンプの圧損が大きくなった段階で焼成を中断して行った。珪素化合物飛散の評価基準は下記の通りである。
○:掃除回数(回/1週間)≦1
×:掃除回数(回/1週間)>1
【0043】
[前駆体繊維の単繊維引張強度]
単繊維を採取し、温度23℃、湿度50%の雰囲気中、試料長(掴み間隔)2cm、引っ張り速度2cm/分にてテンシロンによる引っ張り試験を行った。
強度表示は、単繊維の繊度(dtex;単繊維10000mあたりの質量)を求め、cN/dtexにて示した。
[ヨウ素吸着量の測定法]
前駆体繊維2gを精秤採取し、100mlの三角フラスコに入れる。これにヨウ素溶液(ヨウ化カリウム100g、酢酸90g、2,4−ジクロロフェノール10g、ヨウ素50gを蒸留水に溶解し1000mlの溶液とする)100mlを入れ60℃で50分間振とうしヨウ素吸着処理を行った。この後吸着処理糸を30分間イオン交換水にて洗浄し、さらに蒸留水にて洗い流した後、遠心脱水する。脱水糸を300mlビーカーに入れ、ジメチルスルホキシド200mlを加え60℃にて溶解した。この溶液を0.01mol/l硝酸銀水溶液で電位差滴定しヨウ素吸着量を求めた。
【0044】
[広角X線解析による結晶配向度の測定法]
広角X線解析法によるポリアクリロニトリル系繊維の赤道線上解析点の円周方向強度分布の半価幅Hから次式によって算出される値である。
配向度π(%)=((180−H)/180)×100
広角X線解析(カウンター法)
(1)X線発生装置
理学電気(株)製 RU−200
X線源:CuKα(Niフィルター使用)
出力:40KV 190mA
(2)ゴニオメーター
理学電気(株)製 2155D1
スリット系:2MM 0.5゜×1゜
検出器:シンチレーションカウンター
[炭素繊維の単繊維直径]
炭素繊維トウの、単位長さ当たりの質量と密度、およびフィラメント数から単糸断面積を計算し、真円と仮定して直径を算出した。
[炭素繊維の樹脂含浸ストランド強度・弾性率・伸度]
JIS−7601に準じて測定した。
伸度は、樹脂含浸ストランド強度・弾性率の値から次式によって算出した。
・伸度(%)=(強度(MPa)/1000)/弾性率(GPa)×100
[単繊維間接着数]
前駆体繊維または炭素繊維のトウを3mm長に切断し、アセトン中に分散させ、マグネティックスターラーを用い10分間攪拌した後、単繊維12000本当たり、10本以上の単繊維同士が接着している群の数(接着数)を計数し算出した。
【0045】
[珪素の含有量]
<前駆体繊維の珪素の含有量>
はさみで細断した試料50mgを密閉ルツボに秤量し、NaOH、KOH混合粉体試薬を0.5g加え、試料と試薬を混ぜ、210℃マッフル炉で2.5時間加熱処理を行い、マッフル炉から取り出してさました後、密閉型ボンベ内のPtルツボを取り出し、蒸留水で溶解しながら100mlポリメスフラスコに定容し、ICP発光分析法で珪素の定量を行う。
<炭素繊維の珪素の含有量>
試料を風袋既知のPtルツボに入れ600〜700℃マッフル炉で灰化し、質量を測定して灰分を求め、炭酸ナトリウム0.25gを加え、バーナーで溶融し、蒸留水で溶解しながら50mlポリメスフラスコに定容し、ICP発光分析法で珪素の定量を行う。
【0046】
[実施例1]
アクリロニトリル共重合体を、共重合体濃度21質量%となるようにジメチルアセトアミドに溶解して紡糸原液とした。この紡糸原液を、12000ホールのノズルを用いて濃度70質量%、温度35℃のジメチルアセトアミド水溶液中に吐出して湿式紡糸した。
次に、凝固繊維を空中にて1.5倍の延伸を施し、沸水中で3倍延伸しながら洗浄・脱溶剤した後、表1(実施例1)の第一の油剤付与条件で油剤付与を行い、140℃の加熱ローラーにて乾燥緻密化し、加圧水蒸気中にて3倍延伸した。その後、表1(実施例1)の第二の油剤付与条件で油剤付与を行い、180℃の加熱ローラーにて再乾燥し、前駆体繊維を得た。
なお、第一および第二の油剤付与において、油剤乳化物は、油剤組成物とノニオン乳化剤を混合したものにイオン交換水を加え、ホモミキサーで乳化し、さらに高圧ホモジナイザーで所定の乳化粒径になるよう圧力を調整し二次乳化を行った。
紡糸工程中、単繊維切れ・毛羽の発生はほとんど認められず、紡糸安定性は良好であった。この前駆体繊維は、珪素の含有量は200ppmで、単繊維間の接着はなく、単繊維繊度は1.2dtex、単繊維の引張強度は7.6cN/dtex、ヨウ素吸着量は0.2質量%、広角X線解析による結晶配向度πは93%であった。
この前駆体繊維を空気中230〜260℃の温度勾配を有する熱風循環式耐炎化炉にて30分熱処理し、繊維密度が1.36g/cmの耐炎化繊維とし、引き続きこの繊維を窒素雰囲気下で300〜1400℃の温度勾配を有する炭素化炉で焼成して炭素繊維に転換した。焼成工程中、単繊維切れ・毛羽の発生はほとんど認められなかった。得られた炭素繊維は、珪素の含有量が45ppmであり、単繊維の直径が7.1μmであり、単繊維間の接着は見られなかった。樹脂含浸ストランドの強度は5100MPa、弾性率は240GPa、伸度は2.13%であった。また、耐炎化工程では珪素化合物の堆積はほとんど見られず、焼成開始から一週間の期間で連続して、安定な品質の炭素繊維が製造可能であった。
【0047】
[実施例2〜5]
表1(実施例2〜5)に示した条件で、第一の油剤付与および第二の油剤付与を行う以外は、実施例1と同様の方法で前駆体繊維および炭素繊維を製造し、評価した。
いずれも、紡糸工程中、単繊維切れ・毛羽の発生はほとんど認められず、紡糸安定性は良好であった。この前駆体繊維は、表2(実施例2〜5)に示したとおり、珪素の含有量は低く、単繊維間の接着はなかった。
また、焼成工程中、単繊維切れ・毛羽の発生はほとんど認められず、耐炎化工程では珪素化合物の堆積はほとんど見られず、焼成開始から一週間の期間で連続して、安定な品質の炭素繊維が製造可能であった。得られた炭素繊維は、表2(実施例2〜5)に示したとおり、珪素の含有量は低く、かつ優れた物性を有している。
【0048】
[比較例1]
表1(比較例1)の第一の油剤付与条件で油剤付与を行い、かつ第二の油剤付与は行わない以外は、実施例1と同様の方法で前駆体繊維および炭素繊維を製造し、評価した。
焼成開始直後の炭素繊維の性能は、表2(比較例1)に示す通り、まずまずであったが、耐炎化炉には焼成開始から徐々に珪素化合物が堆積し、焼成開始から2日後から炭素繊維に単糸毛羽が目立ち始め、安定した品質の炭素繊維の製造が困難であった。また、焼成開始から3日後に、耐炎化炉のエアー循環ラインの珪素化合物捕捉用フィルターが詰まって、循環ポンプの圧損が大きり焼成を中断した。
【0049】
[比較例2〜4]
表1(比較例2〜4)に示した条件で、第一の油剤付与および第二の油剤付与を行う以外は、実施例1と同様の方法で前駆体繊維および炭素繊維を製造し、評価した。
表2(比較例2〜4)に示す通り、炭素繊維の品質が実施例より劣る結果となった。
[比較例5]
表1(比較例5)の第一の油剤付与条件で油剤付与を行い、かつ第二の油剤付与は行わない以外は、実施例1と同様の方法で前駆体繊維を製造した。
紡糸工程中、集束性がわるく、単繊維切れ・毛羽が多発し、前駆体繊維の製造が困難であった。
[比較例6]
表1(比較例6)に示した条件で、第一の油剤付与および第二の油剤付与を行う以外は、実施例1と同様の方法で前駆体繊維および炭素繊維を製造した。
焼成工程中で毛羽や束切れが多発し、炭素繊維の製造が困難であった。
【0050】
【表1】
Figure 2004211240
【0051】
表1の油剤組成物の成分Aは、式(1)で示されるビスフェノールAのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド付加物の両末端高級脂肪酸エステル化物、成分Bはアミノ変性シリコーン、成分Cは酸化防止剤である。
また、成分A−(1)〜(3)、成分B−(1)〜(2)、成分C−(1)〜(2)、および界面活性剤であるD−(1)は、次の物質を表す。
A−(1)ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物のジラウリルエステル。m=1,n=1
A−(2)ビスフェノールAのエチレンオキシド4モル付加物のジラウリルエステル。m=2,n=2
A−(3)ビスフェノールAのエチレンオキシド12モル付加物のジラウリルエステル。m=6,n=6
B−(1)式(2)で示されるアミノ変性シリコーン(p=60,q=1)
B−(2)式(2)で示されるアミノ変性シリコーン(p=300,q=8)
C−(1)ペンタエリスリチル‐テトラキス〔3‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕
C−(2)トリエチレングリコール‐ビス〔3‐(3‐t‐ブチル‐5‐メチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕
D−(1)ポリオキシエチレンラウリルエーテル[EO(エチレンオキサイド):10モル,HLB:14.0]
加熱残渣(250℃、2時間加熱後の質量)0.4質量%
【0052】
【表2】
Figure 2004211240
【0053】
【発明の効果】
本発明により、物性や品質が優れるとともに安定であり、トウの拡がり性の良好な炭素繊維、それを製造可能な前駆体繊維が安価に得ることができる。
また、耐炎化工程および炭素化工程でのシリコーン分解物の飛散量が少ないため、耐炎化工程および炭素化工程での操業性、工程通過性が著しく改善され、このように優れた炭素繊維および前駆体繊維を好適に製造できる製造方法が提供された。

Claims (11)

  1. 以下の成分:
    (A)下記式(1)で示される化合物を80〜97質量%;
    Figure 2004211240
    (式中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数7〜21のアルキル基であり;A及びAは、それぞれ独立してエチレン基又はプロピレン基であり;m及びnは、それぞれ独立して1〜5の整数を表す)
    (B)アミノ変性シリコーンを2〜15質量%;及び、
    (C)酸化防止剤を1〜10質量%、
    含有し、(A)+(B)+(C)が100質量%である油剤組成物を含有し、単繊維引張強度が7.0cN/dtex以上であり、ヨウ素吸着量が繊維質量当たり0.5質量%以下であり、広角X線回析による結晶配向度(π)が90%以上であり、珪素含有量が繊維質量に対して500ppm以下である炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維。
  2. 珪素含有量が300ppm以下である、請求項1に記載の炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維。
  3. 珪素含有量が100ppm以下であり、樹脂含浸ストランド弾性率が210〜350GPaであり、ストランドの強度が4900MPa以上であり、更に伸度が2.06%以上であることを特徴とする、炭素繊維。
  4. 珪素含有量が50ppm以下である、請求項3に記載の炭素繊維。
  5. 単繊維直径が4.0〜10μmである、請求項3又は4に記載の炭素繊維。
  6. (1) アクリロニトリル系共重合体を紡糸した水膨潤状態の糸条に、アミノ変性シリコーンを1〜15質量%含有する油剤組成物を繊維質量当たり1.0〜2.0質量%付与し、次いで乾燥する第一油剤付与工程;
    (2)第一油剤付与工程で得られた前駆体繊維に、アミノ変性シリコーンを50質量%以上含有する油剤組成物を繊維質量当たり0.01〜0.2質量%付与し、次いで乾燥する第二油剤付与工程;
    とを有することを特徴とする、炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維の製造方法。
  7. 第一油剤付与工程における油剤組成物が、以下の成分:
    Figure 2004211240
    (A)下記式(1)で示される化合物を80〜98質量%;
    (式中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数7〜21のアルキル基であり;A及びAは、それぞれ独立してエチレン基又はプロピレン基であり;m及びnは、それぞれ独立して1〜5の整数を表す)
    (B)アミノ変性シリコーンを1〜15質量%;及び、
    (C)酸化防止剤を1〜10質量%、
    含有し、(A)+(B)+(C)が100質量%である油剤組成物である、請求項6記載の炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維の製造方法。
  8. 第一油剤付与工程における油剤組成物が、油剤組成物と、250℃で2時間加熱後の残渣率が1.0質量%以下のノニオン系界面活性剤とを、質量比85:15〜65:35で混合して水に分散させた、乳化粒径0.2〜0.5μmの乳化物として存在する、請求項6又は7記載の炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維の製造方法。
  9. 第二油剤付与工程における油剤組成物が、油剤組成物と、250℃で2時間加熱後の残渣率が1.0質量%以下のノニオン系界面活性剤とを、質量比85:15〜65:35で混合して水に分散させた、乳化粒径0.1μm以下の乳化物として存在する、請求項6〜8のいずれかに記載の炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維の製造方法。
  10. 請求項1又は2記載の炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維を焼成することを特徴とする炭素繊維の製造方法。
  11. 請求項6〜請求項9のいずれかに記載の方法により得られた炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維を焼成することを特徴とする炭素繊維の製造方法。
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