JP2012251266A - 炭素繊維前駆体アクリル繊維束 - Google Patents
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Abstract
Description
しかし、シリコーン系油剤は加熱により架橋反応が進行して高粘度化し、その粘着物が前駆体繊維束の製造工程や、耐炎化工程で使用される繊維搬送ローラーやガイドなどの表面に堆積しやすかった。そのため、前駆体繊維束や耐炎化繊維束が、繊維搬送ローラーやガイドに巻き付いたり引っかかったりして断糸するなどの操業性低下を引き起こす原因になることがあった。
近年、炭素繊維の需要拡大により、生産設備の大型化、生産効率の向上の要望が高まる中、上記の焼成工程におけるケイ素化合物の生成による工業的な生産性の低下は解決しなければならない課題の1つである。
また、空気中250℃で2時間加熱した後の残存率が80質量%以上である耐熱樹脂とシリコーンとを組み合わせた油剤組成物が提案されている(特許文献2参照)。
さらに、ビスフェノールA系の芳香族化合物とアミノ変性シリコーンとを組み合わせた油剤組成物(特許文献3、4参照)や、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の脂肪酸エステルを主成分とする油剤組成物(特許文献5参照)が提案されている。
また、分子内に3個以上のエステル基を有するエステル化合物を用いることによりシリコーン含有量を低減させた油剤組成物が提案されている(特許文献6参照)。
さらに、反応性官能基を有する化合物を10質量%以上含み、シリコーン化合物を含有しない、またはシリコーン化合物を含有する場合はケイ素質量に換算して2質量%以下の範囲とする油剤組成物が提案されている(特許文献7参照)。
また、特許文献2に記載の油剤組成物は、耐熱樹脂としてビスフェノールA系の芳香族エステルを用いているので耐熱性は極めて高いものの、単繊維間の融着を防止する効果が十分ではなかった。さらに、機械的物性に優れた炭素繊維束が安定して得られにくいという問題があった。
さらに、特許文献6に記載の油剤組成物の場合、分子内に3個以上のエステル基を有するエステル化合物だけでは耐炎化工程における集束性を維持することが困難であった。そのため、シリコーン化合物が必須成分となっており、焼成工程において問題となるケイ素化合物の発生は避けられない。
また、特許文献7に記載の油剤組成物は、100〜145℃における油剤組成物の粘度を上げることで油剤付着性を高めることができるが、粘度が高いがために油剤処理後の前駆体繊維束が紡糸工程において繊維搬送ローラーに付着し、繊維束が巻き付くなどの工程障害を引き起こす問題があった。
一方、シリコーン系油剤では、上述したように、高粘度化による操業性の低下やケイ素化合物の生成による工業的な生産性の低下が問題であった。
つまり、シリコーン系油剤による操業性や工業的な生産性の低下の問題と、シリコーン含有量を低減した、あるいは非シリコーン成分のみの油剤組成物による融着防止性、前駆体繊維束の集束性、炭素繊維束の機械的物性の低下の問題は表裏一体の関係にあり、従来技術ではこの両者の課題を全て解決することはできない。
さらに、前記エステル化合物(B)が、下記式(3)で示されるエステル化合物(B1)および/または下記式(4)で示されるエステル化合物(B2)であることが好ましい。
さらに、前記非イオン系界面活性剤が、下記式(5)で示されるブロック共重合型ポリエーテルおよび/または下記式(6)で示されるポリオキシエチレンアルキルエーテルであることが好ましい。
本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維束は、油剤処理によってアクリル繊維からなる炭素繊維前駆体繊維束(以下、「前駆体繊維束」とも表記する。)に特定のエステル化合物が付着した繊維束である。
本発明に用いる、油剤処理前の前駆体繊維束としては、公知技術により紡糸されたアクリル繊維束を用いることができる。具体的には、アクリロニトリル系重合体を紡糸して得られるアクリル繊維束が挙げられる。
アクリロニトリル系重合体は、アクリロニトリルを主な単量体とし、これを重合して得られる重合体である。アクリロニトリル系重合体は、アクリロニトリルのみから得られるホモポリマーであってもよく、主成分であるアクリロニトリルに加えて他の単量体を併用したアクリロニトリル系共重合体であってもよい。
アクリロニトリルと共重合可能なビニル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有ビニル系単量体がより好ましい。アクリロニトリル系共重合体におけるカルボキシル基含有ビニル系単量体単位の含有量は0.5〜2.0質量%が好ましい。
これらビニル系単量体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、紡糸原液は適正な粘度・流動性を必要とするため、重合体濃度は25質量%を超えない範囲が好ましい。
凝固浴として溶剤を含む水溶液を用いる場合、水溶液中の溶剤濃度は、ボイドがなく緻密な構造を形成させ高性能な炭素繊維束を得られ、かつ延伸性が確保でき生産性に優れる等の理由から、50〜85質量%、凝固浴の温度は10〜60℃が好ましい。
浴中延伸は、通常50〜98℃の水浴中で1回あるいは2回以上の多段に分割するなどして行い、空中延伸と浴中延伸の合計倍率が2〜10倍になるように凝固糸を延伸するのが、得られる炭素繊維束の性能の点から好ましい。
油剤処理の工程で用いられる油剤組成物は、特定のエステル化合物(A)と、1または2つの芳香環を有するエステル化合物(B)とを必須成分として含む。
エステル化合物(A)は、下記式(1)で示されるエステル化合物(A1)および/または下記式(2)で示されるエステル化合物(A2)であり、耐炎化工程において十分な耐熱性を有しているうえに、芳香環を有していないことから熱分解性にも優れ、炭素化工程において低分子化して炉内流通ガスと共に系外に排出されやすく、工程障害や品質低下の原因になりにくい。
また、エステル化合物(A)は、後述する界面活性剤を用い、乳化法によって水分中に分散しやすい。そのため、前駆体繊維束に油剤組成物を均一に付着させることができ、良好な機械的物性を有する炭素繊維束を得るための炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造に効果的である。
R1〜R2は、同じ構造であってもよいし、個々に独立した構造であってもよい。
アルキル基としては、例えばn−およびiso−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−およびiso−ノニル基、n−およびiso−デシル基、n−およびiso−ウンデシル基、n−およびiso−ドデシル基、n−およびiso−トリデシル基、n−およびiso−テトラデシル基、n−およびiso−ヘキサデシル基、n−およびiso−ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル、並びにドコシル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、例えばオクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、オレイル基、ガドレイル基、並びに2−エチルデセニル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、例えば1−および2−オクチニル基、1−および2−ノニニル基、1−および2−デシニル基、1−および2−ウンデシニル基、1−および2−ドデシニル基、1−および2−トリデシニル基、1−および2−テトラデシニル基、1−および2−ヘキサデシニル基、1−および2−ステアリニル基、1−および2−ノナデシニル基、1−および2−エイコシニル基、1−および2−ヘンイコシニル基、並びに1−および2−ドコシニル基等が挙げられる。
シクロヘキサンジカルボン酸としては、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のいずれでもよいが、合成のし易さ、耐熱性の点で1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が好ましい。
1価の脂肪族アルコールの炭素数は15〜22が好ましい。
なお、式(1)中のR1〜R2は、炭素数8〜22の1価の脂肪族アルコールに由来する。
これら脂肪族アルコールは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
R3およびR5の場合、炭化水素基の炭素数が8以上であれば、エステル化合物(A2)の熱的安定性を良好に維持できるので、耐炎化工程において十分な融着防止効果が得られる。一方、炭化水素基の炭素数が22以下であれば、エステル化合物(A2)の粘度が高くなりすぎず、固形化しにくいので、該エステル化合物(A2)を含む油剤組成物のエマルションを容易に調製でき、油剤組成物が前駆体繊維束に均一に付着する。R3およびR5の炭化水素基の炭素数は15〜22が好ましい。
R3およびR5は、同じ構造であってもよいし、個々に独立した構造であってもよい。
R4が炭化水素基の場合、炭素数は5〜10が好ましく、ポリアルキレングリコールから2つの水酸基を除去した残基の場合、オキシアルキレン基の炭素数は4が好ましい。
アルキル基としては、例えばエチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、n−およびiso−ヘプチル基、n−およびiso−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−およびiso−ノニル基、n−およびiso−デシル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、例えばエテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、例えばエチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、へキシニル基、へプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基等が挙げられる。
一方、R4がオキシアルキレン基の炭素数が2〜4であるポリアルキレングリコールから2つの水酸基を除去した残基の場合、R4としてはオキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシテトラメチレン基、オキシブチレン基などのオキシエチレン基の任意の炭素原子から水素を1つ取除いた置換基が挙げられ、直鎖状もしくは分岐鎖状であってもよい。
シクロヘキサンジカルボン酸としては、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のいずれでもよいが、剛性のし易さ、耐熱性の点で1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が好ましい。
1価の脂肪族アルコールの炭素数は15〜22が好ましい。
炭素数8〜22の1価の脂肪族アルコールとしては、エステル化合物(A1)の説明において先に例示した脂肪族アルコールが挙げられる。
なお、式(2)中のR3およびR5は、炭素数8〜22の1価の脂肪族アルコールに由来する。
多価アルコールの炭素数は5〜10が好ましく、5〜8がより好ましい。
なお、R4は、炭素数2〜10の多価アルコールまたは後述の炭素数2〜4のポリオキシアルキレングリコールに由来する。
このような多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−イソプロピル−1,4−ブタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の2価アルコール;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、グリセリン等の3価アルコールなどが挙げられるが、油剤組成物を低粘度下し、均一に油剤を前駆体繊維束に付着させる観点から、2価アルコールが好ましい。
なお、1分子中にシクロヘキシル環を3つ以上有すると、油剤組成物の粘度が高くなりやすく水中に分散しにくくなるうえに、エマルションの安定性が低下しやすくなる。従って、シクロヘキシル環の数は1または2つが好ましい。
エステル化合物(A)の含有量は30〜50質量%がより好ましい。
この炭素繊維束の強度向上の効果を十分に得るためには、エステル化合物(B)を油剤組成物100質量%中、10質量%以上含有させるのが好ましい。ただし、エステル化合物(B)の含有量が多くなりすぎると、焼成工程において前駆体繊維束に付着したエステル化合物(B)が分解し、この分解生成物由来の変性物が焼成設備内に堆積するなどして工程障害となる場合がある。従って、エステル化合物(B)の含有量の上限値は40質量%以下が好ましい。
エステル化合物(B)の含有量は20〜30質量%がより好ましい。
R6〜R8は、同じ構造であってもよいし、個々に独立した構造であってもよい。
R9〜R10は、同じ構造であってもよいし、個々に独立した構造であってもよい。
なお、式(4)で示されるエステル化合物は、複数の化合物の混合物である場合もある。従って、oおよびpはそれぞれ整数でない場合もあり得る。
非イオン系界面活性剤の含有量は、油剤組成物100質量%中、5〜40質量%が好ましい。非イオン系界面活性剤の含有量が5質量%未満であると、乳化しにくく、乳化物の安定性が悪くなる場合がある。一方、非イオン系界面活性剤の含有量が40質量%を超えると、油剤組成物が付着した前駆体繊維束の集束性が低下するうえ、該前駆体繊維束を焼成して得られる炭素繊維束の機械的物性が低下しやすくなる。
これら非イオン系界面活性剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
R11〜R12は、EO、POとの均衡、その他の油剤組成物成分を考慮して決定されるが、水素原子、あるいは炭素数1〜5の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、より好ましくは水素原子である。
x、y、zはそれぞれ独立して、1〜500であり、20〜300が好ましい。
また、xおよびzの合計と、yとの比(x+z:y)が90:10〜60:40であることが好ましい。
さらに、ブロック共重合型ポリエーテルは、100℃における動粘度が300〜15000mm2/sであることが好ましい。動粘度が上記範囲内であれば、油剤組成物の過剰な繊維内部への浸透を防ぎ、かつ前駆体繊維束に付与した後の乾燥工程において、油剤組成物の粘性により搬送ローラー等に単繊維が取られて巻きつくなどの工程障害が起こりにくくなる。
これらの中でも、油剤組成物を効率よく乳化するために、その他の油剤組成物成分に馴染みやすい適度な親油性を付与できる点でドデシル基が特に好ましい。
なお、R13は油剤組成物の親油性に関与する要素であり、nは油剤組成物の親水性に関与する要素である。従って、nの値は、R13との組み合わせにより適宜決定される。
酸化防止剤は公知の様々な物質を用いることができるが、フェノール系、硫黄系の酸化防止剤が好適である。
フェノール系酸化防止剤の具体例としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、トリエチレングリコールビス〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート等が挙げられる。
硫黄系の酸化防止剤の具体例としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート等が挙げられる。
これら酸化防止剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
帯電防止剤としては公知の物質を用いることができる。帯電防止剤はイオン型と非イオン型に大別され、イオン型としてはアニオン系、カチオン系及び両性系があり、非イオン型ではポリエチレングリコール型、多価アルコール型がある。帯電防止の観点からイオン型が好ましく、中でも脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキシド付加物硫酸エステル塩、高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキシド付加物硫酸リン酸エステル塩、第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤、高級アルコールエチレンオキシド付加物ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステルなどが好ましく用いられる。
これら帯電防止剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
油剤組成物を前駆体繊維束へ付与する際は、油剤組成物を水中に分散させて、平均粒子径が0.01〜0.3μmのミセルを形成させた水系乳化溶液(エマルション)を用いるのが好ましい。
ミセルの平均粒子径が上記範囲内であれば、前駆体繊維束の表面に油剤組成物をより均一に付与できる。
なお、水系乳化溶液中のミセルの平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、「LA−910」)を用いて測定することができる。
また、酸化防止剤を含有させる場合は、酸化防止剤を予めエステル化合物(A)に溶解しておくことが好ましい。
各成分の混合または水中分散は、プロペラ攪拌、ホモミキサー、ホモジナイザー等を使用して行うことができる。特に、高粘度の油剤組成物を用いて後述する油剤処理液を調製する場合には、150MPa以上に加圧可能な超高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。
なお、「所定の濃度」は油剤処理時の前駆体繊維束の状態によって調整される。所定の濃度とした分散液を、以下「油剤処理液」という。
浴中延伸の後に洗浄を行う場合は、浴中延伸および洗浄を行った後に得られる水膨潤状態にある繊維束に油剤組成物の水系乳化溶液を付与することもできる。
油剤処理液を水膨潤状態の前駆体繊維束に付着させる方法としては、ローラーの下部を油剤処理液に浸漬させ、そのローラーの上部に前駆体繊維束を接触させるローラー付着法、ポンプで一定量の油剤処理液をガイドから吐出し、そのガイド表面に前駆体繊維束を接触させるガイド付着法、ノズルから一定量の油剤処理液を前駆体繊維束に噴射するスプレー付着法、油剤処理液の中に前駆体繊維束を浸漬した後にローラー等で絞って余分な油剤処理液を除去するディップ付着法等の公知の方法を用いることができる。
これらの方法の中でも、均一付着の観点から、前駆体繊維束に十分に油剤処理液を浸透させ、余分な処理液を除去するディップ付着法が好ましい。より均一に付着するためには油剤処理の工程を2つ以上の多段にし、繰り返し付与することも有効である。
水系乳化溶液が付与された前駆体繊維束は、続く乾燥工程で乾燥緻密化される。
乾燥緻密化の温度は、繊維のガラス転移温度を超えた温度で行う必要があるが、実質的には含水状態から乾燥状態によって異なることもある。例えば温度が100〜200℃程度の加熱ローラーによる方法にて緻密乾燥化するのが好ましい。このとき加熱ローラーの個数は、1個でもよく、複数個でもよい。
緻密乾燥化した前駆体繊維束には、加熱ローラーにより加圧水蒸気延伸処理を施すのが好ましい。該加圧水蒸気延伸処理により、得られる炭素繊維前駆体アクリル繊維束の緻密性や配向度をさらに高めることができる。
ここで、加圧水蒸気延伸とは、加圧水蒸気雰囲気中で延伸を行う方法である。加圧水蒸気延伸は、高倍率の延伸が可能であることから、より高速で安定な紡糸が行えると同時に、得られる繊維の緻密性や配向度向上にも寄与する。
そして、炭素繊維前駆体アクリル繊維束は焼成工程に移され、炭素繊維束となる。
このようにして得られる本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維束は、油剤組成物が乾燥繊維質量に対して0.5〜2.0質量%付着しいていることが好ましく、より好ましくは0.7〜1.5質量%である。油剤組成物の付着量が0.5質量%未満であると、油剤組成物本来の機能を十分に発現することが困難となる場合がある。一方、油剤組成物の付着量が2.0質量%を超えると、過剰に付着した油剤組成物が、焼成工程において高分子化して、単繊維間の接着の誘因となる場合がある。
ここで、「乾燥繊維質量」とは、乾燥緻密化処理された後の前駆体繊維束の乾燥繊維質量のことである。
さらに、油剤組成物が非イオン系界面活性剤や酸化防止剤を含有する場合、炭素繊維前駆体アクリル繊維束は、非イオン系界面活性剤が乾燥繊維質量に対して0.05〜0.5質量%付着していることが好ましく、酸化防止剤が乾燥繊維質量に対して0.01〜0.05質量%付着していることが好ましい。非イオン系界面活性剤の付着量が上記範囲内であれば、油剤組成物の水系乳化溶液(エマルション)が調製しやすく、過剰な界面活性剤により油剤処理槽で泡立ちが起こったり、繊維束の集束性を低下させたりすることを抑制できる。また、酸化防止剤の付着量が上記範囲内であれば、酸化防止効果が十分に得られ、前駆体繊維束の製造過程において前駆体繊維束に付着した上記エステル化合物(A)ならびにエステル化合物(B)が熱ロール等により加熱されて酸化されることがない。加えて、油剤組成物の水系乳化溶液(エマルション)を調製する際にも影響を与えにくい。
メチルエチルケトンによるソックスレー抽出法に準拠し、90℃のメチルエチルケトンに炭素繊維前駆体アクリル繊維束を8時間浸漬させて油剤組成物を抽出し、抽出前の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の質量W1、および抽出後の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の質量W2をそれぞれ測定し、下記式(i)により油剤組成物の付着量を求める。
油剤組成物の付着量(質量%)=(W1−W2)/W1×100 ・・・(i)
また、炭素繊維前駆体アクリル繊維束に付着した油剤組成物の構成は、油剤処理槽中の油剤組成物の収支バランスから、調製した油剤組成物の構成と同じであることが好ましい。
このように、本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維束によれば、従来のシリコーン系油剤の問題と、シリコーンの含有率を低減した、あるいは非シリコーン成分のみの油剤組成物の問題を共に解決できる。
本実施例に用いた各成分、および各種測定方法、評価方法は以下の通りである。
<エステル化合物(A)>
・A−1:1,4−シクロヘキサンジカルボン酸とオレイルアルコール(モル比1.0:2.0)から成るエステル化合物(上記式(1)の構造で、R1およびR2が共にオレイル基であるエステル化合物)
・A−2:1,4−シクロヘキサンジカルボン酸とオレイルアルコールと3−メチル1,5−ペンタンジオール(モル比2.0:2.0:1.0)から成るエステル化合物(上記式(2)の構造で、R3およびR5が共にオレイル基であり、R4が−CH2CH2CHCH3CH2CH2−であるエステル化合物)
・B−1:上記式(3)の構造で、R6〜R8が共にイソデシル基であるトリイソデシルトリメリテート(花王株式会社製、製品名:トリメックスT−10)
・B−2:上記式(4)の構造で、R9およびR10が共にラウリル基であり、o、pが共に約1であるポリオキシエチレンビスフェノールAジラウレート(花王株式会社製、製品名:エキセパールBP−DL)
・C−1:トリイソオクタデカン酸トリメチロールプロパン(和光純薬工業株式会社製)
・C−2:ペンタエリトリトールテトラステアラート(東京化成工業株式会社製、製品コード:P0739)
・D−1:上記式(5)の構造で、x=75、y=30、z=75、R11およびR12が共に水素原子であるPO/EOブロック共重合型ポリエーテル(BASFジャパン株式会社製、商品名:Pluronic PE6800)
・D−2:上記式(6)の構造で、n=9、R13がドデシル基であるノナエチレングリコールドデシルエーテル(日光ケミカルズ株式会社、商品名:NIKKOL BL−9EX)
・E−1:1級側鎖アミノ変性シリコーン(Gelest,Inc.社製、商品名:AMS−132)
・E−2:両末端アミノ変性シリコーン(Gelest,Inc.社製、商品名:DMS−A21)
・テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(株式会社エーピーアイ コーポレーション製、商品名:トミノックスTT)
<油剤付着量の測定>
炭素繊維前駆体アクリル繊維束を105℃で1時間乾燥させた後、メチルエチルケトンによるソックスレー抽出法に準拠し、90℃のメチルエチルケトンに8時間浸漬して付着した油剤組成物を溶媒抽出した。抽出前の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の質量W1、および抽出後の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の質量W2をそれぞれ測定し、上記式(i)により油剤組成物の付着量を求めた。なお、油剤付着量の測定は、油剤組成物がその効力を発現する適正な範囲で前駆体繊維束に付与されていることを確認するものである。
炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造過程の最終ローラー、すなわち該繊維束をボビンに巻き取る直前のローラー上での炭素繊維前駆体アクリル繊維束の状態を目視にて観察し、以下の評価基準にて集束性を評価した。なお、集束性の評価は、炭素繊維前駆体アクリル繊維束の生産性、続く炭素化工程におけるハンドリング性を考慮した炭素繊維前駆体アクリル繊維束の品質を評価するものである。
○:集束しており、トウ幅が一定で、隣接する繊維束と接触しない。
△:集束しているが、トウ幅が一定ではない、あるいはトウ幅が広い。
×:繊維束中に空間があり、集束していない。
炭素繊維前駆体アクリル繊維束を24時間連続して製造したときに、搬送ローラーへ単繊維が巻き付き、除去した頻度により操業性を評価した。評価基準は以下の通りとした。なお、操業性の評価は、炭素繊維前駆体アクリル繊維束の安定生産の目安となる指標である。
○:除去回数(回/24時間)が1回以下。
△:除去回数(回/24時間)が2〜5回。
×:除去回数(回/24時間)が6回以上。
耐炎化繊維束を105℃で2時間乾燥させ、繊維束の質量(W3)を測定した。
次に、乾燥した耐炎化繊維束をソックスレー抽出器にてクロロホルムとメタノール混合物(体積比1:1)で8時間還流した。ついで、メタノールで洗浄した後に室温(25℃)の98%濃硫酸に12時間浸漬し、耐炎化繊維束に残存した油剤組成物およびその由来物を除去した。その後、再びメタノールで十分洗浄し、さらに105℃で1時間乾燥させた後、繊維束の質量(W4)を測定し、下記式(ii)により耐炎化繊維束における油剤組成物およびその由来物の残存量(残存油剤量)を求めた。なお、残存油剤量の測定は、耐炎化工程における油剤組成物による単繊維間の融着防止効果が、耐炎化工程が完了するまで保たれているか否かを推察する評価である。
残存油剤量(質量%)=(1−W4/W3)×100 ・・・(ii)
炭素繊維束を長さ3mmに切断し、アセトン中に分散させ、10分間攪拌した後の全単繊維数と、単繊維同士が融着している数(融着数)を計数し、単繊維100本当たりの融着数を算出し、以下の評価基準にて評価した。なお、単繊維間融着数の測定は、炭素繊維束の品質を評価するものである。
○:融着数(個/100本)が1個以下。
×:融着数(個/100本)が1個超。
炭素繊維束の製造を開始し、定常安定化した状態で炭素繊維束のサンプリングを行い、JIS−R−7608に規定されているエポキシ樹脂含浸ストランド法に準じて、炭素繊維束のストランド強度を測定した。なお、測定回数は10回とし、その平均値を評価の対象とした。
耐炎化工程におけるシリコーン由来のケイ素化合物飛散量は、炭素繊維前駆体アクリル繊維束と、それを耐炎化した耐炎化繊維束のケイ素(Si)含有量をICP発光分析法により測定し、それらの差から計算されるSi量の変化を耐炎化工程で飛散したSi量(Si飛散量)とし、評価の指標とした。
具体的には、炭素繊維前駆体アクリル繊維束および耐炎化繊維束をそれぞれ鋏で細かく粉砕した試料を密閉るつぼに50mg秤量し、粉末状としたNaOH、KOHを各0.25g加え、マッフル炉にて210℃で150分間加熱分解した。これを蒸留水で溶解し、100mLに定容したものを測定試料として用い、ICP発光分析法にて各測定試料のSi含有量を求め、下記式(iii)によりSi飛散量を求めた。ICP発光分析装置には、サーモエレクトロン株式会社製の「IRIS Advantage AP」を用いた。
Si飛散量(mg/kg)=炭素繊維前駆体アクリル繊維束のSi含有量−耐炎化繊維束のSi含有量 ・・・(iii)
<油剤組成物の調製>
予め酸化防止剤を加熱混合して分散させたエステル化合物(A−1)に、エステル化合物(B−1、B−2)を混合攪拌した。そこに非イオン系界面活性剤(D−1、D−2)を加え、混合攪拌した。十分に攪拌した後、油剤組成物の濃度が30質量%になるようにイオン交換水をさらに加え、ホモミキサーで乳化した。この状態でのミセルの平均粒子径をレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、商品名:LA−910)を用いて測定したところ、1.0μm程度であった。
その後、さらに高圧ホモジナイザーにより、ミセルの平均粒子径が0.2μm以下になるまで分散し、油剤組成物の水系乳化溶液(エマルション)を得た。
油剤組成物中の各成分の種類と配合量(質量%)を表1に示す。
油剤組成物を付着させる前駆体繊維束は、次の方法で調製した。アクリロニトリル系共重合体(組成比:アクリロニトリル/アクリルアミド/メタクリル酸=96.5/2.7/0.8(質量比))を21質量%の割合でジメチルアセトアミドに分散し、加熱溶解して紡糸原液を調製し、濃度67質量%のジメチルアセトアミド水溶液を満たした38℃の凝固浴中に孔径(直径)50μm、孔数12000の紡糸ノズルより吐出し凝固糸とした。凝固糸は水洗槽中で脱溶媒するとともに3倍に延伸して水膨潤状態の前駆体繊維束とした。
先に得られた油剤組成物の水系乳化溶液をイオン交換水で希釈して、油剤組成物の濃度が1.3質量%になるように調整した油剤処理液を満たした油剤処理槽に、水膨潤状態の前駆体繊維束を導き、水系乳化溶液を付与させた。
その後、水系乳化溶液が付与された前駆体繊維束を表面温度150℃のローラーにて乾燥緻密化した後に、圧力0.3MPaの水蒸気中で5倍延伸を施し、炭素繊維前駆体アクリル繊維束を得た。
製造工程における集束性および操業性を評価し、得られた炭素繊維前駆体アクリル繊維束の油剤付着量を測定した。また、油剤付着量の測定値と油剤組成物の組成から、各成分の付着量を求めた。これらの結果を表1に示す。
得られた炭素繊維前駆体アクリル繊維束を、220〜260℃の温度勾配を有する耐炎化炉に通して耐炎化し、耐炎化繊維束とした。
引き続き、該耐炎化繊維束を窒素雰囲気中で400〜1400℃の温度勾配を有する炭素化炉を3分間かけて通過させて焼成し、炭素繊維束とした。
炭素繊維前駆体アクリル繊維束を耐炎化して得られた耐炎化繊維束に残存する油剤組成物およびその由来物の量(残存油剤量)と、耐炎化工程におけるSi飛散量を測定した。また、得られた炭素繊維束の単繊維間融着数、およびストランド強度を測定した。これらの結果を表1に示す。
油剤組成物を構成する各成分の種類と配合量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして油剤組成物を調製し、炭素繊維前駆体アクリル繊維束および炭素繊維束を製造し、各測定および評価を実施した。結果を表1に示す。
油剤組成物を構成する各成分の種類と配合量を表2に示すように変更し、エステル化合物(B)、鎖状脂肪族エステル、またはこれらの混合物に、非イオン系界面活性剤を加えた以外は、実施例1と同様にして油剤組成物を調製した。
なお、酸化防止剤は、エステル化合物(B)、鎖状脂肪族エステル、またはアミノ変性シリコーンのいずれかに予め分散させた。また、アミノ変性シリコーンを用いる場合は、エステル化合物(B)に非イオン系界面活性剤を攪拌混合した後に加えた。また、アミノ変性シリコーンを用い、エステル化合物(B)を用いない比較例9、10の場合は、予め酸化防止剤を分散させたアミノ変性シリコーンに界面活性剤を入れ混合攪拌した後に、イオン交換水を加えた。
このようにして調製した油剤組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして炭素繊維前駆体アクリル繊維束および炭素繊維束を製造し、各測定および評価を実施した。結果を表2に示す。
なお、油剤組成物中のエステル化合物(A)の割合が比較的高く、かつエステル化合物(B)としてトリイソデシルトリメリテート(B−1)を併用した実施例4,5の場合、集束性が他の実施例と比較して劣る傾向にあったが、問題となるレベルではなかった。
全ての実施例において、炭素繊維束を連続的に製造していく上で、工程上、何ら問題がない状況であった。
さらに、各実施例で得られた炭素繊維束は、単繊維間の融着数が実質的に無く、ストランド強度が高い数値を示し、機械的物性に優れていた。また、シリコーンを全く含有しないことから、焼成工程におけるSi飛散量は実質的に無く、焼成工程における工程負荷が少なく良好であった。
エステル化合物(A)以外の成分とその配合量が同じで、エステル化合物(A)の種類が異なる場合(実施例1と2)、エステル化合物(A)として、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸とオレイルアルコールと3メチル1,5ペンタジオール(モル比2.0:2.0:1.0)から成るエステル化合物(A−2)を用いた場合(実施例2)の方が炭素繊維束のストランド強度が高かった。
エステル化合物(A)の代わりに鎖状脂肪族エステル(C−1、C−2)を用いた場合(比較例3〜6、11)、油剤付着量は適正な量であり、焼成工程におけるSi飛散量は実質的に無く、良好であったが、集束性が不足する場合があった。また、操業性が悪く、融着数が多かった。さらに、炭素繊維束のストランド強度が各実施例に比べて劣っていた。
中でもエステル(B)を含有せずに、鎖状脂肪族エステルと非イオン系界面活性剤と酸化防止剤からなる場合(比較例5、6)は、耐炎化工程後に耐炎化繊維束に残存する油剤組成物およびその由来物の量が少なく、耐炎化工程において油剤組成物としての機能が保たれていないことが示唆された。また、ストランド強度は著しく劣る結果であった。
また、酸化防止剤を多く含む場合(比較例11)は、集束性、操業性に劣り、得られた炭素繊維束には融着が多く見られ、ストランド強度は各実施例と比較しても著しく劣っていた。
アミノ変性シリコーンを含有させた場合(比較例8〜10)、集束性および操業性は良好で、耐炎化工程後の耐炎化糸での油剤組成物およびその由来物の残存量も多く、製造された炭素繊維束の融着も無く良好であった。また、各実施例と同等のストランド強度であった。しかし、シリコーンを用いたことにより発生する耐炎化工程でのケイ素飛散量が多く、工業的に連続して生産するためには焼成工程への負荷が大きいという問題があった。
この炭素繊維前駆体アクリル繊維束から得られた炭素繊維束は、プリプレグ化したのち複合材料に成形することもできる。また、この炭素繊維束を用いた複合材料は、ゴルフシャフトや釣り竿などのスポーツ用途、さらには構造材料として自動車や航空宇宙用途、また各種ガス貯蔵タンク用途などに好適に用いることができ、有用である。
Claims (6)
- 乾燥繊維質量に対して、前記エステル化合物(A1)および/またはエステル化合物(A2)が0.4〜1.0質量%付着し、前記エステル化合物(B)が0.1〜0.6質量%付着した、請求項1に記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維束。
- 非イオン系界面活性剤が、乾燥繊維質量に対して0.05〜0.5質量%さらに付着した、請求項1〜3のいずれか一項に記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維束。
- 酸化防止剤が、乾燥繊維質量に対して0.01〜0.05質量%さらに付着した、請求項1〜5のいずれか一項に記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維束。
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