JP2013249572A - 炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤、炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤組成物、および炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤処理液 - Google Patents
炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤、炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤組成物、および炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤処理液 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】特定の化合物A、B、C、D、E、およびFからなる群より選ばれる2種以上の化合物を含む、炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤、該油剤を含有する炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤組成物、該油剤組成物が水中分散した炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤処理液。
【選択図】なし
Description
しかし、シリコーン系油剤は加熱により架橋反応が進行して高粘度化し、その粘着物が前駆体繊維束の製造工程や、耐炎化工程で使用される繊維搬送ローラーやガイドなどの表面に堆積しやすかった。そのため、前駆体繊維束や耐炎化繊維束が、繊維搬送ローラーやガイドに巻き付いたり引っかかったりして断糸するなどの操業性低下を引き起こす原因になることがあった。
近年、炭素繊維の需要拡大により、生産設備の大型化、生産効率の向上の要望が高まる中、上記の焼成工程におけるケイ素化合物の生成による工業的な生産性の低下は解決しなければならない課題の1つである。
また、空気中250℃で2時間加熱した後の残存率が80質量%以上である耐熱樹脂とシリコーンとを組み合わせた油剤組成物が提案されている(特許文献2参照)。
さらに、ビスフェノールA系の芳香族化合物とアミノ変性シリコーンとを組み合わせた油剤組成物(特許文献3、4参照)や、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の脂肪酸エステルを主成分とする油剤組成物(特許文献5参照)が提案されている。
また、分子内に3個以上のエステル基を有するエステル化合物を用いることによりシリコーン含有量を低減させた油剤組成物が提案されている(特許文献6参照)。
さらに、分子内に3個以上のエステル基を有するエステル化合物と水溶性アマイド系化合物とを併用することで、シリコーン含有量を低減しつつ、繊維間の融着防止と安定した操業性とを両立させることができることが報告されている(特許文献7参照)。
また、反応性官能基を有する化合物を10質量%以上含み、シリコーン化合物を含有しない、またはシリコーン化合物を含有する場合はケイ素質量に換算して2質量%以下の範囲とする油剤組成物が提案されている(特許文献8参照)。
さらに、アミノアルキレン基を側鎖に有するアクリル系重合体を0.2〜20重量%、特定のエステル化合物を60〜90重量%、および界面活性剤10〜40重量%からなる油剤組成物が提案されている(特許文献9参照)。
また、特許文献2に記載の油剤組成物は、耐熱樹脂としてビスフェノールA系の芳香族エステルを用いているので耐熱性は極めて高いものの、単繊維間の融着を防止する効果が十分ではなかった。さらに、機械的物性に優れた炭素繊維束が安定して得られにくいという問題があった。
さらに、特許文献6に記載の油剤組成物の場合、分子内に3個以上のエステル基を有するエステル化合物だけでは耐炎化工程における集束性を維持することが困難であった。そのため、シリコーン化合物が必須成分となっており、焼成工程において問題となるケイ素化合物の発生は避けられない。
加えて水溶性のアマイド化合物を含有した特許文献7に記載の油剤組成物においても、実質的にシリコーンが存在しない系では安定した操業と製品の品質を維持することができなかった。
また、特許文献8に記載の油剤組成物は、100〜145℃における油剤組成物の粘度を上げることで油剤付着性を高めることができるが、粘度が高いがために油剤処理後の前駆体繊維束が紡糸工程において繊維搬送ローラーに付着し、繊維束が巻き付くなどの工程障害を引き起こす問題があった。
さらに、特許文献9に記載の油剤組成物は、耐炎化工程における単繊維の基質同士が接着する融着は防げるものの、油剤成分が単繊維間に接着剤として存在するため膠着は避けられない。また、この膠着により、耐炎化工程での繊維束内部への酸素の拡散が阻害されることにより耐炎化処理が均一に行われず、続く炭素化工程で毛羽や束切れといった障害となる問題があった。
一方、シリコーン系油剤では、上述したように、高粘度化による操業性の低下やケイ素化合物の生成による工業的な生産性の低下が問題であった。
つまり、シリコーン系油剤による操業性や工業的な生産性の低下の問題と、シリコーン含有量を低減した、あるいは非シリコーン成分のみの油剤組成物による融着防止性、前駆体繊維束の集束性、炭素繊維束の機械的物性の低下の問題は表裏一体の関係にあり、従来技術ではこの両者の課題を全て解決することはできない。
A:ヒドロキシ安息香酸と、炭素数8〜20の1価の脂肪族アルコールとの反応により得られる化合物A。
B:シクロヘキサンジカルボン酸と、炭素数8〜22の1価の脂肪族アルコールとの反応により得られる化合物B。
C:シクロヘキサンジカルボン酸と、炭素数8〜22の1価の脂肪族アルコールと、炭素数2〜10の多価アルコールおよび/またはオキシアルキレン基の炭素数が2〜4のポリオキシアルキレングリコールとの反応により得られる化合物C。
D:シクロヘキサンジメタノールおよび/またはシクロヘキサンジオールと、炭素数8〜22の脂肪酸との反応により得られる化合物D。
E:シクロヘキサンジメタノールおよび/またはシクロヘキサンジオールと、炭素数8〜22の脂肪酸と、ダイマー酸との反応により得られる化合物E。
F:3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシル=イソシアネートと、炭素数8〜22の1価の脂肪族アルコールおよびそのポリオキシアルキレンエーテル化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物との反応により得られる化合物F。
また、本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤組成物は、前記炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤と、非イオン系界面活性剤を含有することを特徴とする。
ここで、前記炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤100質量部に対して、前記非イオン系界面活性剤を20〜150質量部含有することが好ましい。
さらに、前記炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤100質量部に対して、酸化防止剤を1〜5質量部含有することが好ましい。
また、本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤処理液は、前記炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤組成物が水中で分散していることを特徴とする。
[炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤]
本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤(以下、単に「油剤」とも表記する。)は、以下に記載のグループA、B、C、D、E、およびFからなる群より選ばれる2種以上の化合物を含み、アクリル繊維からなる油剤処理前の炭素繊維前駆体アクリル繊維束へ付与される。ここで、「2種以上の化合物」とは、異なる2つ以上のグループ(群)の中から化合物が選ばれることを意味する。なお、1つのグループ(群)の中からは1つの化合物が選ばれてもよいし、2つ以上の化合物が選ばれてもよい。
以下、本明細書中において、油剤処理前の炭素繊維前駆体アクリル繊維束を「前駆体繊維束」という。
グループAに含まれる化合物Aは、ヒドロキシ安息香酸と、炭素数8〜20の1価の脂肪族アルコールとの縮合反応により得られる化合物(以下、「ヒドロキシ安息香酸エステル」ともいう。)である。
また、ヒドロキシ安息香酸エステルは、後述する非イオン系界面活性剤を用い、乳化法によって水分中に安定に分散するため、前駆体繊維束に均一に付着しやすく、良好な機械的物性を有する炭素繊維束を得るための炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造に効果的である。
1価の脂肪族アルコールの炭素数は8〜20である。炭素数が8以上であれば、ヒドロキシ安息香酸エステルの熱的安定性を良好に維持できるので、耐炎化工程において十分な融着防止効果が得られる。一方、炭素数が20以下であれば、ヒドロキシ安息香酸エステルの粘度が高くなりすぎず、固形化しにくいので、油剤であるヒドロキシ安息香酸エステルを含む油剤組成物のエマルションを容易に調製でき、油剤が前駆体繊維束に均一に付着する。
1価の脂肪族アルコールの炭素数は11〜20が好ましく、14〜20がより好ましい。
これら脂肪族アルコールは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
従って、式(1a)中のR1aは、炭素数8〜20の1価の脂肪族アルコールに由来する。R1aとしては、炭素数8〜20のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基のいずれでもよく、直鎖状もしくは分岐鎖状であってもよい。R1aは、11〜20が好ましく、14〜20がより好ましい。
アルキル基としては、例えばn−およびiso−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−およびiso−ノニル基、n−およびiso−デシル基、n−およびiso−ウンデシル基、n−およびiso−ドデシル基、n−およびiso−トリデシル基、n−およびiso−テトラデシル基、n−およびiso−ヘキサデシル基、n−およびiso−ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、例えばオクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、例えば1−および2−オクチニル基、1−および2−ノニニル基、1−および2−デシニル基、1−および2−ウンデシニル基、1−および2−ドデシニル基、1−および2−トリデシニル基、1−および2−テトラデシニル基、1−および2−ヘキサデシニル基、1−および2−オクタデシニル基、1−および2−ノナデシニル基、1−および2−エイコシニル基等が挙げられる。
縮合反応に供するヒドロキシ安息香酸とアルコール成分のモル比は、ヒドロキシ安息香酸1モルに対して、炭素数8〜20の1価の脂肪族アルコールが0.9〜1.3モルが好ましく、1.0〜1.2モルがより好ましい。なお、エステル化触媒を用いる場合は、縮合反応後、触媒を不活性化して、吸着剤により除去することが、ストランド強度の観点から好ましい。
グループBに含まれる化合物Bは、カルボン酸成分として、シクロヘキサンジカルボン酸と、アルコール成分として、炭素数8〜22の1価の脂肪族アルコールとの縮合反応により得られる化合物(以下、「シクロヘキサンジカルボン酸エステルB」ともいう。)である。
一方、グループCに含まれる化合物Cは、カルボン酸成分として、シクロヘキサンジカルボン酸と、アルコール成分として、炭素数8〜22の1価の脂肪族アルコールと、炭素数2〜10の多価アルコールおよび/またはオキシアルキレン基の炭素数が2〜4のポリオキシアルキレングリコールとの縮合反応により得られる化合物(以下、「シクロヘキサンジカルボン酸エステルC」ともいう。)である。
以下、化合物Bと化合物Cとを総称して、「シクロヘキサンジカルボン酸エステル」ともいう。
また、シクロヘキサンジカルボン酸エステルは、後述する非イオン系界面活性剤を用い、乳化法によって水分中に分散しやすいため、前駆体繊維束に均一に付着しやすく、良好な機械的物性を有する炭素繊維束を得るための炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造に効果的である。
シクロヘキサンジカルボン酸は、酸無水物であってもよく、炭素数1〜3の短鎖アルコールとのエステルであってもよい。炭素数1〜3の短鎖アルコールとしては、メタノール、エタノール、ノルマル又はイソプロパノールが挙げられる。
1価の脂肪族アルコールの炭素数は8〜22である。炭素数が8以上であれば、シクロヘキサンジカルボン酸エステルの熱的安定性を良好に維持できるので、耐炎化工程において十分な融着防止効果が得られる。一方、炭素数が22以下であれば、シクロヘキサンジカルボン酸エステルの粘度が高くなりすぎず、固形化しにくいので、油剤であるシクロヘキサンジカルボン酸エステルを含む油剤組成物のエマルションを容易に調製でき、油剤が前駆体繊維束に均一に付着する。
1価の脂肪族アルコールの炭素数は、上記の観点から、12〜22が好ましく、15〜22がより好ましい。
これら脂肪族アルコールは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
多価アルコールの炭素数は、上記の観点から、5〜10が好ましく、5〜8がより好ましい。
このような多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−イソプロピル−1,4−ブタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の2価アルコール;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、グリセリン等の3価アルコールなどが挙げられるが、油剤組成物を低粘度下し、均一に油剤を前駆体繊維束に付着させる観点から、2価アルコールが好ましい。
オキシアルキレン基の炭素数が2以上であれば、シクロヘキサンジカルボン酸エステルの熱的安定性を良好に維持できるので、耐炎化工程において十分な融着防止効果が得られる。一方、オキシアルキレン基の炭素数が4以下であれば、シクロヘキサンジカルボン酸エステルの粘度が高くなりすぎず、固形化しにくいので、油剤であるシクロヘキサンジカルボン酸エステルを含む油剤組成物のエマルションを容易に調製でき、油剤が前駆体繊維束に均一に付着させることが可能となる。
炭素数2〜10の多価アルコールとオキシアルキレン基の炭素数が2〜4のポリオキシアルキレングリコールとは、両方用いてもよく、いずれか一方用いてもよい。
R1bおよびR2bは、同じ構造であってもよいし、個々に独立した構造であってもよい。
アルキル基としては、例えばn−およびiso−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−およびiso−ノニル基、n−およびiso−デシル基、n−およびiso−ウンデシル基、n−およびiso−ドデシル基、n−およびiso−トリデシル基、n−およびiso−テトラデシル基、n−およびiso−ヘキサデシル基、n−およびiso−ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル、並びにドコシル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、例えばオクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、オレイル基、ガドレイル基、並びに2−エチルデセニル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、例えば1−および2−オクチニル基、1−および2−ノニニル基、1−および2−デシニル基、1−および2−ウンデシニル基、1−および2−ドデシニル基、1−および2−トリデシニル基、1−および2−テトラデシニル基、1−および2−ヘキサデシニル基、1−および2−ステアリニル基、1−および2−ノナデシニル基、1−および2−エイコシニル基、1−および2−ヘンイコシニル基、並びに1−および2−ドコシニル基等が挙げられる。
反応温度は、好ましくは160〜250℃、より好ましくは180〜230℃である。
縮合反応に供するカルボン酸成分とアルコール成分のモル比は、シクロヘキサンジカルボン酸1モルに対して、炭素数8〜22の1価の脂肪族アルコールが1.8〜2.2モルが好ましく、1.9〜2.1モルがより好ましい。
なお、エステル化触媒を用いる場合は、縮合反応後、触媒を不活性化して、吸着剤により除去することが、ストランド強度の観点から好ましい。
R3bおよびR5bの場合、炭化水素基の炭素数が8以上であれば、シクロヘキサンジカルボン酸エステルCの熱的安定性を良好に維持できるので、耐炎化工程において十分な融着防止効果が得られる。一方、炭化水素基の炭素数が22以下であれば、シクロヘキサンジカルボン酸エステルCの粘度が高くなりすぎず、固形化しにくいので、油剤であるシクロヘキサンジカルボン酸エステルCを含む油剤組成物のエマルションを容易に調製でき、油剤が前駆体繊維束に均一に付着する。R3bおよびR5bの炭化水素基の炭素数は、それぞれ独立して、12〜22好ましく、15〜22が更に好ましい。
R3bおよびR5bは、同じ構造であってもよいし、個々に独立した構造であってもよい。
R4bが炭化水素基の場合、炭素数は5〜10が好ましく、ポリアルキレングリコールから2つの水酸基を除去した残基の場合、オキシアルキレン基の炭素数は4が好ましい。
R3bおよびR5bは、同じ構造であってもよいし、個々に独立した構造であってもよい。
R4bが炭素数2〜10の多価アルコールに由来する場合、R4bは、直鎖状もしくは分岐鎖状の飽和又は不飽和の2価の炭化水素基が好ましく、具体的には、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基の任意の炭素原子から水素を1つ取除いた置換基が好ましく挙げられる。炭素数は、前述のとおり、5〜10が好ましく、5〜8がより好ましい。
アルキル基としては、例えばエチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、n−およびiso−ヘプチル基、n−およびiso−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−およびiso−ノニル基、n−およびiso−デシル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、例えばエテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、例えばエチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、へキシニル基、へプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基等が挙げられる。
一方、R4bがポリオキシアルキレングリコールに由来する場合、R4bは、ポリオキシアルキレングリコールから2つの水酸基を除去した二価の残基であり、具体的には、−(OA)pb−1−A−で表わされる(ここで、OAは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基、pbは平均モル数を示す。)。pbは、1〜15が好ましく、1〜10がより好ましく、2〜8が更に好ましい。
オキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシテトラメチレン基、オキシブチレン基などが挙げられる。
縮合反応に供するカルボン酸成分とアルコール成分のモル比は、副反応を抑制する観点から、シクロヘキサンジカルボン酸1モルに対して、炭素数8〜22の1価の脂肪族アルコールを0.8〜1.6モル、且つ炭素数2〜10の多価アルコール及び/又はポリオキシアルキレングリコールを0.2〜0.6モル用いるのが好ましく、炭素数8〜22の1価の脂肪族アルコールが0.9〜1.4モル、且つ炭素数2〜10の多価アルコール及び/又はポリオキシアルキレングリコールを0.3〜0.55モル用いるのがより好ましく、炭素数8〜22の1価の脂肪族アルコールを0.9〜1.2モル、且つ炭素数2〜10の多価アルコール及び/又はポリオキシアルキレングリコールを0.4〜0.55モル用いるのが更に好ましい。
また、縮合反応に供するアルコール成分中、炭素数8〜22の1価の脂肪族アルコールと、炭素数2〜10の多価アルコールとポリオキシアルキレングリコールとの合計モル比は、炭素数8〜22の1価の脂肪族アルコール1モルに対して、炭素数2〜10の多価アルコールとポリオキシアルキレングリコールとの合計0.1〜0.6モルが好ましく、0.2〜0.6モルがより好ましく、0.4〜0.6モルが更に好ましい。
なお、1分子中のシクロヘキシル環の数は、油剤組成物としたときの粘度が低く、水中に分散し易くなるうえに、エマルションの安定性が良好なため、1または2が好ましい。
グループDに含まれる化合物Dは、シクロヘキサンジメタノールおよび/またはシクロヘキサンジオールと、炭素数8〜22の脂肪酸との縮合反応により得られる化合物、すなわちシクロヘキサンジメタノールエステルまたはシクロヘキサンジオールエステル(以下、これらを総称して「エステル(I)」とも表記する。)である。
一方、グループEに含まれる化合物Eは、シクロヘキサンジメタノールおよび/またはシクロヘキサンジオールと、炭素数8〜22の脂肪酸と、ダイマー酸との縮合反応により得られる化合物、すなわちシクロヘキサンジメタノールエステルまたはシクロヘキサンジオールエステル(以下、これらを総称して「エステル(II)」とも表記する。)である。
また、これらエステル(I)およびエステル(II)は脂肪族エステルであるため、熱分解性にも優れ、炭素化工程において低分子化して炉内流通ガスと共に系外に排出されやすく、工程障害や品質低下の原因になりにくい。
シクロヘキサンジメタノールとしては、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールのいずれでもよいが、合成のし易さ、耐熱性の点で1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
一方、シクロヘキサンジオールとしては、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオールのいずれでもよいが、合成のし易さ、耐熱性の点で1,4−シクロヘキサンジオールが好ましい。
炭化水素基の炭素数が7以上であれば、エステル(I)の熱的安定性を良好に維持できるので、耐炎化工程において十分な融着防止効果が得られる。一方、炭化水素基の炭素数が21以下であれば、エステル(I)の粘度が高くなりすぎず、油剤であるエステル(I)を含む油剤組成物のエマルションを容易に調製でき、油剤が前駆体繊維束に均一に付着する。
炭化水素基の炭素数は、上記の観点から11〜21が好ましく、15〜21が更に好ましい。すなわち、炭素数12〜22の脂肪酸が好ましく、炭素数16〜22の脂肪酸が更に好ましい。
炭素数8〜22の脂肪酸は炭素数1〜3の短鎖アルコールとのエステルであってもよい。炭素数1〜3の短鎖アルコールとしては、メタノール、エタノール、ノルマル又はイソプロパノールが挙げられる。
これら脂肪酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
R1cおよびR2cは、同じ構造であってもよいし、個々に独立した構造であってもよい。
アルキル基としては、例えばn−およびiso−ヘプチル基、n−およびiso−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−およびiso−ノニル基、n−およびiso−デシル基、n−およびiso−ウンデシル基、n−およびiso−ドデシル基、n−およびiso−トリデシル基、n−およびiso−テトラデシル基、n−およびiso−ヘキサデシル基、n−およびiso−ヘプタデシル基、ステアリル基、ノナデシル基、エイコシル基、並びにヘンエイコシル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、例えばヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、オレイル基、ガドレイル基、並びに2−エチルデセニル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、例えば1−および2−ドデシニル基、1−および2−トリデシニル基、1−および2−テトラデシニル基、1−および2−ヘキサデシニル基、1−および2−ステアリニル基、1−および2−ノナデシニル基、並びに1−および2−エイコシニル基等が挙げられる。
エステル(I)の原料として、1,4−シクロヘキサンジメタノールを使用する場合、ncは1となり、1,4−シクロヘキサンジオールを使用する場合、ncは0となる。
反応温度は、好ましくは160〜250℃、より好ましくは180〜230℃である。
縮合反応に供するカルボン酸成分とアルコール成分のモル比は、シクロヘキサンジメタノールとシクロヘキサンジオールとの合計1モルに対して、炭素数8〜22の脂肪酸1.8〜2.2モルが好ましく、1.9〜2.1モルがより好ましい。
なお、エステル化触媒を用いる場合は、縮合反応後、触媒を不活性化して、吸着剤により除去することが、ストランド強度の観点から好ましい。
シクロヘキサンジメタノール、およびシクロヘキサンジオールとしては、エステル(I)の説明において先に例示したシクロヘキサンジメタノール、およびシクロヘキサンジオールが挙げられる。
炭化水素基の炭素数が7以上であれば、エステル(II)の熱的安定性を良好に維持できるので、耐炎化工程において十分な融着防止効果が得られる。一方、炭化水素基の炭素数が21以下であれば、エステル(II)の粘度が高くなりすぎず、油剤であるエステル(II)を含む油剤組成物のエマルションを容易に調製でき、油剤が前駆体繊維束に均一に付着する。
炭化水素基の炭素数は、上記の観点から11〜21が好ましく、15〜21が更に好ましい。すなわち、炭素数12〜22の脂肪酸が好ましく、炭素数16〜22の脂肪酸が更に好ましい。
炭素数8〜22の脂肪酸としては、エステル(I)の説明において先に例示した脂肪酸が挙げられる。
ダイマー酸としては、炭素数16〜20の不飽和脂肪酸を二量化して得られる炭素数32〜40のジカルボン酸(HOOC−R4c’−COOH)が好ましい。
この場合、R4c’は炭素数30〜38の炭化水素基となる。炭化水素基の炭素数が30以上であれば、エステル(II)の熱的安定性を良好に維持できるので、耐炎化工程において十分な融着防止効果が得られる。一方、炭化水素基の炭素数が38以下であれば、エステル(II)の粘度が高くなりすぎず、油剤であるエステル(II)を含む油剤組成物のエマルションを容易に調製でき、油剤が前駆体繊維束に均一に付着する。
これらの観点から、R4c’は炭素数30〜38が好ましく、34が好ましい。すなわち、ダイマー酸としては炭素数32〜40のジカルボン酸が好ましく、36のジカルボン酸がより好ましい。
炭素数8〜22の脂肪酸及びダイマー酸は、前述のように、炭素数1〜3の短鎖アルコールとのエステルであってもよい。
R3cおよびR5cの炭化水素基の炭素数は、それぞれ独立して、11〜21が好ましく、15〜21が更に好ましく、R4cの炭化水素基の炭素数は34が好ましい。
R3cおよびR5cは、同じ構造であってもよいし、個々に独立した構造であってもよい。
R4cとしては、ダイマー酸の説明において先に例示したR4c’と同じ二価の置換基が挙げられる。
エステル(II)の原料として、1,4−シクロヘキサンジメタノールを使用する場合、mcは1となり、1,4−シクロヘキサンジオールを使用する場合、mcは0となる。
縮合反応に供するカルボン酸成分とアルコール成分のモル比は、副反応を抑制し、低粘度化する観点から、シクロヘキサンジメタノールとシクロヘキサンジオールとの合計1モルに対して、炭素数8〜22の脂肪酸を0.8〜1.6モル、且つダイマー酸を0.2〜0.6モル用いるのが好ましく、炭素数8〜22の脂肪酸を0.9〜1.4モル、且つダイマー酸を0.3〜0.55モル用いるのがより好ましく、炭素数8〜22の脂肪酸を1.0〜1.4モル、且つダイマー酸を0.3〜0.5モル用いるのが更に好ましい。
また、縮合反応に供するカルボン酸成分中、炭素数8〜22の脂肪酸とダイマー酸とのモル比は、炭素数8〜22の脂肪酸1モルに対して、ダイマー酸が0.1〜0.6モルが好ましく、0.1〜0.5モルがより好ましく、0.2〜0.4モルが更に好ましい。
グループFに含まれる化合物Fは、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシル=イソシアネート(イソホロンジイソシアネート)と、炭素数8〜22の1価の脂肪族アルコールおよびそのポリオキシアルキレンエーテル化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物との反応により得られる化合物(以下、「イソホロンジイソシアネート−脂肪族アルコール付加物」ともいう。)である。
また、イソホロンジイソシアネート−脂肪族アルコール付加物は、後述する非イオン系界面活性剤を用い、乳化法によって水分中に分散しやすいため、前駆体繊維束に均一に付着しやすく、良好な機械的物性を有する炭素繊維束を得るための炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造に効果的である。
1価の脂肪族アルコールの炭素数は8〜22である。炭素数が8以上であれば、イソホロンジイソシアネート−脂肪族アルコール付加物の熱的安定性を良好に維持できるので、耐炎化工程において十分な融着防止効果が得られる。一方、炭素数が22以下であれば、イソホロンジイソシアネート−脂肪族アルコール付加物の粘度が高くなりすぎず、固形化しにくいので、油剤成分であるイソホロンジイソシアネート−脂肪族アルコール付加物を含む油剤組成物のエマルションを容易に調製でき、油剤が前駆体繊維束に均一に付着する。
1価の脂肪族アルコールの炭素数は11〜22が好ましく、15〜22がより好ましい。
これら脂肪族アルコールは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
炭素数8〜22の1価の脂肪族アルコールは、炭素数が8以上であれば、最終的に油剤とした際に熱的安定性を良好に維持できるので、耐炎化工程において十分な融着防止効果が得られる。一方、炭素数が22以下であれば、油剤の粘度が高くなりすぎず、固形化しにくいので、油剤を含む油剤組成物のエマルションを容易に調製でき、油剤が前駆体繊維束に均一に付着する。脂肪族アルコールの炭素数は11〜22が好ましく、15〜22がより好ましい。
アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドが挙げられ、好ましくはエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドである。
また、アルキレンオキサイドの平均付加モル数は、脂肪族アルコールの炭素数とのバランスで決定されるが、脂肪族アルコールの炭素数が上記の好ましい範囲にある場合、アルキレンオキサイドの付加量は0〜5モルが好ましく、0〜3モルがより好ましい。
R1dおよびR4dの炭素数が8以上であれば、イソホロンジイソシアネート−脂肪族アルコール付加物の熱的安定性を良好に維持できるので、耐炎化工程において十分な融着防止効果が得られる。一方、炭化水素基の炭素数が22以下であれば、イソホロンジイソシアネート−脂肪族アルコール付加物の粘度が高くなりすぎず、固形化しにくいので、油剤であるイソホロンジイソシアネート−脂肪族アルコール付加物を含む油剤組成物のエマルションを容易に調製でき、油剤が前駆体繊維束に均一に付着する。炭化水素基の炭素数は11〜22が好ましく、15〜22がより好ましい。
従って、式(1d)中のR1dおよびR4dは、炭素数8〜22の1価の脂肪族アルコールに由来し、炭素数8〜22のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基のいずれでもよく、直鎖状もしくは分岐鎖状であってもよい。
アルキル基としては、例えばn−およびiso−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−およびiso−ノニル基、n−およびiso−デシル基、n−およびiso−ウンデシル基、n−およびiso−ドデシル基、n−およびiso−トリデシル基、n−およびiso−テトラデシル基、n−およびiso−ヘキサデシル基、n−およびiso−ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル、並びにドコシル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、例えばオクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、ガドレイル基、並びに2−エチルデセニル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、例えば1−および2−オクチニル基、1−および2−ノニニル基、1−および2−デシニル基、1−および2−ウンデシニル基、1−および2−ドデシニル基、1−および2−トリデシニル基、1−および2−テトラデシニル基、1−および2−ヘキサデシニル基、1−および2−オクタデシニル基、1−および2−ノナデシニル基、1−および2−エイコシニル基、1−および2−ヘンイコシニル基、並びに1−および2−ドコシニル基等が挙げられる。
R1dおよびR4dは、同じ構造であってもよいし、個々に独立した構造であってもよい。
R2dおよびR3dは、炭素数2〜4のアルキレン基である。具体的にはエチレン基、プロピレン基、ブチレン基である。好ましくはエチレン基、プロピレン基である。R2dおよびR3dは、同じ構造であってもよいし、個々に独立した構造であってもよい。
ndおよびmdは、上述したようにアルキレンオキサイドの付加量を示すものである。ポリアルキレンオキサイド構造は必須の構造ではなく、すなわちndおよびmdは0であっても差し支えない。親水性、繊維との親和性を向上させる目的で導入する場合は、ndおよびmdは各々5モルまで入れることができる。
反応に供するイソホロンジイソシアネートと、炭素数8〜22の1価の脂肪族アルコールおよびそのポリオキシアルキレンエーテル化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物とのモル比は、イソホロンジイソシアネート1モルに対して、前記化合物が1.8〜2.2モルが好ましく、1.9〜2.1モルがより好ましい。
本発明の油剤は、前述のグループA、B、C、D、E、およびFからなる群より選ばれる2種以上の化合物を含むが、これらの中でもグループAから選ばれる化合物Aおよび/またはグループFから選ばれる化合物Fを必須として含むことが、得られる炭素繊維束のストランド強度の観点から好ましい。より好ましい組み合わせとしては、炭素繊維束のストランド強度の観点から、化合物Aと化合物B、化合物Aと化合物C、化合物Aと化合物E、化合物Aと化合物F、化合物Fと化合物B、化合物Fと化合物C、化合物Fと化合物D、化合物Fと化合物Eを含む組み合わせが挙げられる。
また、本発明の油剤は、耐炎化工程において飛散せずに安定して前駆体繊維束の表面に残存しやすい点で、グループCを含むことが好ましく、機械的物性に優れる炭素繊維束が得られやすい点で、グループEを含むことが好ましい。
これらの観点から、グループA、C、E、およびFからなる群から選ばれる2種以上の化合物を含むことがより好ましい。この場合も、同様に異なる2つ以上のグループの中から化合物が選ばれることを意味する。
本発明の油剤が2種の化合物を含む場合、選ばれた2種の化合物の質量比は、得られる炭素繊維束のストランド強度の観点から1/3〜3/1が好ましく、1/2〜2/1がより好ましい。
本発明の油剤は、2〜4種の化合物を含むことが好ましく、2〜3種の化合物を含むことがより好ましい。
本発明の油剤は、界面活性剤などと混合して油剤組成物とし、該油剤組成物を水中に分散させた形態で前駆体繊維束に付与されるのが好ましく、より均一に油剤を前駆体繊維束に付与できる。
本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤組成物(以下、単に「油剤組成物」とも表記する。)は、上述した本発明の油剤と、非イオン系界面活性剤とを含有する。
非イオン系界面活性剤の含有量は、油剤100質量部に対し、20〜150質量部が好ましく、20〜100質量部がより好ましい。非イオン系界面活性剤の含有量が20質量部以上であれば乳化しやすく、乳化物の安定性が良好となる。一方、非イオン系界面活性剤の含有量が150質量部以下であれば、油剤組成物が付着した前駆体繊維束の集束性が低下するのを抑制できる。加えて、該前駆体繊維束を焼成して得られる炭素繊維束の機械的物性が低下しにくい。
これら非イオン系界面活性剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
R1eおよびR2eは、EO、POとの均衡、その他の油剤組成物成分を考慮して決定されるが、水素原子、あるいは炭素数1〜5の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、より好ましくは水素原子である。
x、y、zはそれぞれ独立して、1〜500であり、20〜300が好ましい。
また、xおよびzの合計と、yとの比(x+z:y)が90:10〜60:40であることが好ましい。
さらに、ブロック共重合型ポリエーテルは、100℃における動粘度が300〜15000mm2/sであることが好ましい。動粘度が上記範囲内であれば、油剤組成物の過剰な繊維内部への浸透を防ぎ、かつ前駆体繊維束に付与した後の乾燥工程において、油剤組成物の粘性により搬送ローラー等に単繊維が取られて巻きつくなどの工程障害が起こりにくくなる。
これらの中でも、油剤組成物を効率よく乳化するために、その他の油剤組成物成分に馴染みやすい適度な親油性を付与できる点でドデシル基が特に好ましい。
なお、R3eは油剤組成物の親油性に関与する要素であり、rは油剤組成物の親水性に関与する要素である。従って、rの値は、R3eとの組み合わせにより適宜決定される。
酸化防止剤の含有量は、油剤100質量部に対し、1〜5質量部が好ましく、1〜3質量部がより好ましい。酸化防止剤の含有量が1質量部以上であれば酸化防止効果が十分に得られる。一方、酸化防止剤の含有量が5質量部以下であれば、酸化防止剤が油剤組成物中に均一に分散しやすくなる。
フェノール系酸化防止剤の具体例としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、トリエチレングリコールビス〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート等が挙げられる。
硫黄系の酸化防止剤の具体例としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート等が挙げられる。
これら酸化防止剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
帯電防止剤としては公知の物質を用いることができる。帯電防止剤はイオン型と非イオン型に大別され、イオン型としてはアニオン系、カチオン系及び両性系があり、非イオン型ではポリエチレングリコール型、多価アルコール型がある。帯電防止の観点からイオン型が好ましく、中でも脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキシド付加物硫酸エステル塩、高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキシド付加物硫酸リン酸エステル塩、第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤、高級アルコールエチレンオキシド付加物ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステルなどが好ましく用いられる。
これら帯電防止剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、本発明の油剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、本発明の油剤以外の公知の油剤(例えば脂肪族エステルやアミノ変性シリコーンなど)を含有してもよい。ただし、ケイ素化合物の生成を抑制することを考慮すると、アミノ変性シリコーンなどのシリコーン系油剤は含有しないのが好ましい。全油剤中、本発明の油剤の含有量は60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、実質100質量%が特に好ましい。
このように、本発明の油剤および油剤組成物によれば、従来のシリコーンを主成分とする油剤組成物の問題と、シリコーンの含有率を低減した、あるいは非シリコーン成分のみの油剤組成物の問題を共に解決できる。
以下、本発明の油剤組成物を用いて前駆体繊維束を油剤処理し、炭素繊維前駆体アクリル繊維束を製造する方法の一例について説明する。
炭素繊維前駆体アクリル繊維束は、例えば本発明の油剤組成物を、水膨潤状態の前駆体繊維束に付与し(油剤処理)、ついで油剤処理された前駆体繊維束を乾燥緻密化することで得られる。
アクリロニトリル系重合体は、アクリロニトリルを主な単量体とし、これを重合して得られる重合体である。アクリロニトリル系重合体は、アクリロニトリルのみから得られるホモポリマーであってもよく、主成分であるアクリロニトリルに加えて他の単量体を併用したアクリロニトリル系共重合体であってもよい。
アクリロニトリルと共重合可能なビニル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有ビニル系単量体がより好ましい。アクリロニトリル系共重合体におけるカルボキシル基含有ビニル系単量体単位の含有量は0.5〜2.0質量%が好ましい。
これらビニル系単量体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、紡糸原液は適正な粘度・流動性を必要とするため、重合体濃度は25質量%を超えない範囲が好ましい。
凝固浴として溶剤を含む水溶液を用いる場合、水溶液中の溶剤濃度は、ボイドがなく緻密な構造を形成させ高性能な炭素繊維束を得られ、かつ延伸性が確保でき生産性に優れる等の理由から、50〜85質量%、凝固浴の温度は10〜60℃が好ましい。
浴中延伸は、通常50〜98℃の水浴中で1回あるいは2回以上の多段に分割するなどして行い、空中延伸と浴中延伸の合計倍率が2〜10倍になるように凝固糸を延伸するのが、得られる炭素繊維束の性能の点から好ましい。
乳化粒子の平均粒子径が上記範囲内であれば、前駆体繊維束の表面に油剤をより均一に付与できる。
なお、油剤処理液中の乳化粒子の平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、「LA−910」)を用いて測定することができる。
本発明の油剤と非イオン系界面活性剤などを混合して油剤組成物とし、これを攪拌しながら水を加え、油剤組成物が水に分散したエマルション(水系乳化液)を得る。
酸化防止剤を含有させる場合は、酸化防止剤を予め油剤に溶解しておくことが好ましい。
各成分の混合または水中分散は、プロペラ攪拌、ホモミキサー、ホモジナイザー等を使用して行うことができる。特に、高粘度の油剤組成物を用いて水系乳化液を調製する場合には、150MPa以上に加圧可能な超高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。
なお、「所定の濃度」は油剤処理時の前駆体繊維束の状態によって調整される。
浴中延伸の後に洗浄を行う場合は、浴中延伸および洗浄を行った後に得られる水膨潤状態にある繊維束に油剤処理液を付着することもできる。
これらの方法の中でも、均一付着の観点から、前駆体繊維束に十分に油剤処理液を浸透させ、余分な処理液を除去するディップ付着法が好ましい。より均一に付着するためには油剤処理の工程を2つ以上の多段にし、繰り返し付与することも有効である。
乾燥緻密化の温度は、繊維のガラス転移温度を超えた温度で行う必要があるが、実質的には含水状態から乾燥状態によって異なることもある。例えば温度が100〜200℃程度の加熱ローラーによる方法にて緻密乾燥化するのが好ましい。このとき加熱ローラーの個数は、1個でもよく、複数個でもよい。
ここで、加圧水蒸気延伸とは、加圧水蒸気雰囲気中で延伸を行う方法である。加圧水蒸気延伸は、高倍率の延伸が可能であることから、より高速で安定な紡糸が行えると同時に、得られる繊維の緻密性や配向度向上にも寄与する。
ここで、「乾燥繊維質量」とは、乾燥緻密化処理された後の前駆体繊維束の乾燥繊維質量のことである。
メチルエチルケトンによるソックスレー抽出法に準拠し、90℃に加熱気化したメチルエチルケトンを還流させながら炭素繊維前駆体アクリル繊維束と8時間接触させ、油剤組成物を抽出し、抽出前に105℃で2時間乾燥した炭素繊維前駆体アクリル繊維束の質量W1、および抽出後に105℃で2時間乾燥した炭素繊維前駆体アクリル繊維束の質量W2をそれぞれ測定し、下記式(i)により油剤組成物の付着量を求める。
油剤組成物の付着量(質量%)=(W1−W2)/W1×100 ・・・(i)
耐炎化工程では、炭素繊維前駆体アクリル繊維束を酸化性雰囲気下で加熱処理して耐炎化繊維束に転換する。
耐炎化条件としては、酸化性雰囲気中200〜300℃の緊張下、密度が好ましくは1.28〜1.42g/cm3、より好ましくは1.29〜1.40g/cm3になるまで加熱するのがよい。密度が1.28g/cm3未満であると、次の工程である炭素化工程の際に単繊維間接着が起こりやすく、炭素化工程で糸切れが発生する。また、密度が1.42g/cm3より大きくするためには、耐炎化工程が長くなり、経済性の面から好ましくない。雰囲気については、空気、酸素、二酸化窒素など公知の酸化性雰囲気を採用できるが、経済性の面から空気が好ましい。
炭素化工程では、耐炎化繊維束を不活性雰囲気下で炭素化して炭素繊維束を得る。
炭素化は最高温度が1000℃以上の不活性雰囲気で行う。不活性雰囲気を形成するガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウムなどのいずれの不活性ガスでも差し支えないが、経済面から窒素を用いることが好ましい。
炭素化工程の初期の段階、すなわち処理温度300〜400℃では、繊維の成分であるポリアクリロニトリル共重合体の切断および架橋反応が起きる。この温度領域においては300℃/分以下の昇温速度で緩やかに繊維の温度を上げることが、最終的に得られる炭素繊維束の機械的物性を向上させるために好ましい。
また、処理温度400〜900℃においてはポリアクリロニトリル共重合体の熱分解が起こり、次第に炭素構造が構築される。この炭素構造を構築する段階においては、炭素構造の規則配向が促されるため、緊張下で延伸をかけながら処理するのが好ましい。よって、900℃以下における温度勾配や延伸(張力)をコントロールするために、最終的な炭素化工程とは別に前工程(前炭素化工程)を設置することがより好ましい。
黒鉛化の条件としては、最高温度が2000℃以上の不活性雰囲気中、伸長率3〜15%の範囲で伸長しながら行うことが好ましい。伸長率が3%未満の場合は十分な機械的物性を有する高弾性の炭素繊維束(黒鉛化繊維束)が得られにくい。これは、所定の弾性率を有する炭素繊維束を得ようとする場合に、伸長率の低い条件ほどより高い処理温度が必要であるためである。一方、伸長率が15%を超える場合は、表層と内部において、伸長による炭素構造の成長促進効果の差が大きくなり、不均一な炭素繊維束を形成し、物性が低下する。
表面処理の方法に制限はないが、電解質溶液中で電解酸化する方法が好ましい。電解酸化は、炭素繊維束の表面で酸素を発生させることで表面に含酸素官能基を導入し、表面改質処理をするものである。
電解質としては、硫酸、塩酸、硝酸などの酸やそれらの塩類を用いることができる。
電解酸化の条件として、電解液の温度は室温以下、電解質濃度は1〜15質量%、電気量は100クーロン/g以下が好ましい。
また、この炭素繊維前駆体アクリル繊維束を焼成して得られる炭素繊維束は、機械的物性に優れ、高品質であり、様々な構造材料に用いられる繊維強化樹脂複合材料に用いる強化繊維として好適である。
本実施例に用いた各成分、および各種測定方法、評価方法は以下の通りである。
<ヒドロキシ安息香酸エステル>
・A−1:4−ヒドロキシ安息香酸とオレイルアルコール(モル比1.0:1.0)からなるエステル化合物(前記式(1a)の構造で、R1aがオクタデセニル基(オレイル基)であるエステル化合物)
1Lの四つ口フラスコに、4−ヒドロキシ安息香酸207g(1.5モル)と、オレイルアルコール486g(1.8モル)と、触媒としてオクチル酸スズ0.69g(0.1質量%)を秤取り、窒素吹き込み下、200℃で6時間、さらに220℃で5時間エステル化反応を行った。
その後、230℃、666.61Paの減圧下でスチームを吹き込みながら過剰のアルコール除去を行い、70〜80℃まで冷却し、85質量%リン酸0.43gを加え30分攪拌を続けた後、濾過を行い、A−1を得た。
・B―1:1,4−シクロヘキサンジカルボン酸とオレイルアルコール(モル比1.0:2.0)からなるエステル化合物(前記式(1b)の構造で、R1bおよびR2bが共にオレイル基であるエステル化合物)
・C−1:1,4−シクロヘキサンジカルボン酸とオレイルアルコールと3−メチル1,5−ペンタンジオール(モル比2.0:2.0:1.0)からなるエステル化合物(前記式(2b)の構造で、R3bおよびR5bが共にオレイル基であり、R4bが−CH2CH2CHCH3CH2CH2−であるエステル化合物)
B−1;
1Lの四つ口フラスコに、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸メチル(小倉合成工業株式会社製)180g(0.9モル)と、オレイルアルコール(新日本理化株式会社製、商品名:リカコール90B)486g(1.8モル)と、触媒としてジブチルスズオキシド(和光純薬工業株式会社製)0.33gを秤取り、窒素吹き込み下、200〜205℃で脱メタノール反応を行った。このときのメタノール留出量は57gであった。
その後、70〜80℃まで冷却し、85質量%リン酸(和光純薬工業株式会社製)0.34gを加え30分攪拌を続け、反応系が白濁したことを確認し、さらに吸着剤(協和化学工業株式会社製、商品名:キョーワード600S)1.1gを加え30分間攪拌した後、濾過を行い、B−1を得た。
1Lの四つ口フラスコに、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸メチル(小倉合成工業株式会社製)240g(1.2モル)と、オレイルアルコール(新日本理化株式会社製、商品名:リカコール90B)324g(1.2モル)と、3−メチル−1,5−ペンタンジオール(和光純薬工業株式会社製)70.8g(0.6モル)と、触媒としてジブチルスズオキシド(和光純薬工業株式会社製)0.32gを秤取り、窒素吹き込み下、200〜205℃で脱メタノール反応を行った。このときのメタノール留出量は76gであった。
その後、70〜80℃まで冷却し、85質量%リン酸(和光純薬工業株式会社製)0.33gを加え30分攪拌を続け、反応系が白濁した事を確認し、さらに吸着剤(協和化学工業株式会社製、商品名:キョーワード600S)1.1gを加え30分間攪拌した後、濾過を行い、C−1を得た。
なお、上述したB−1、C−1は、脱メタノール反応によるエステル交換反応法で合成したが、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸とアルコールからのエステル化反応でも得ることができる。
・D−1:1,4−シクロヘキサンジメタノールと、オレイン酸(モル比1.0:2.0)から成るエステル化合物(前記式(1c)の構造で、R1cおよびR2cが共に炭素数17のアルケニル基(ヘプタデセニル基)であり、ncが1であるエステル化合物)
・E−1:1,4−シクロヘキサンジメタノールと、オレイン酸と、オレイン酸を二量化したダイマー酸(モル比1.0:1.25:0.375)から成るエステル化合物(前記式(2c)の構造で、R3cおよびR5cが共に炭素数17のアルケニル基(ヘプタデセニル基)であり、R4cが炭素数34のアルケニル基(テトラトリアコンテニル基)の炭素原子から水素を1つ取除いた置換基であり、mcが1であるエステル化合物)
・D−2:1,4−シクロヘキサンジメタノールとオレイン酸とカプリル酸(モル比1.0:0.5:1.5)から成るエステル化合物(前記式(1c)の構造で、R1cが炭素数17のアルケニル基(ヘプタデセニル基)と炭素数7のアルキル基(n−ヘプチル基)の混合であり、R2cがヘプタデセニル基とn−ヘプチル基の混合であり、ncが1であるエステル化合物)
D−1;
1Lの四つ口フラスコに、1,4−シクロヘキサンジメタノール(和光純薬工業株式会社製)144g(1.0モル)と、オレイン酸(花王株式会社製、商品名:ルナックOA)580g(2.0モル)と、触媒としてジブチルスズオキシド(和光純薬工業株式会社製)0.35gを秤取り、窒素吹き込み下、220〜230℃で脱水エステル化反応を行った。反応は、反応系の酸価が10mgKOH/g以下になるまで続けた。
その後、70〜80℃まで冷却し、85質量%リン酸(和光純薬工業株式会社製)0.36gを加え30分攪拌を続けて、反応系が白濁したことを確認し、さらに吸着剤(協和化学工業株式会社製、商品名:キョーワード600S)1.3gを加え30分間攪拌した後、濾過を行い、化合物D−1を得た。
1,4−シクロヘキサンジメタノール(和光純薬工業株式会社製)144g(1.0モル)と、オレイン酸(花王株式会社製、商品名:ルナックOA)145g(0.5モル)と、カプリル酸(和光純薬工業株式会社製、商品名:オクタン酸)216g(1.5モル)と、触媒としてジブチルスズオキシド(和光純薬工業株式会社製)0.35gを秤取り、窒素吹き込み下、D−1と同様の条件でD−2を得た。
1Lの四つ口フラスコに、1,4−シクロヘキサンジメタノール(和光純薬工業株式会社製)144g(1.0モル)と、オレイン酸(花王株式会社製、商品名:ルナックOA)350g(1.25モル)と、ダイマー酸(シグマアルドリッチジャパン株式会社製)213.8g(0.375モル)と、触媒としてジブチルスズオキシド(和光純薬工業株式会社製)0.35gを秤取り、窒素吹き込み下、D−1と同様の条件でE−1を得た。
・F−1:3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシル=イソシアネートとオレイルアルコール(モル比1.0:2.0)からなる化合物(上記式(1d)の構造で、R1dおよびR4dが共にオクタデセニル基(オレイル基)、ndおよびmdが共に0である化合物)
3Lの四つ口フラスコに、オレイルアルコール1970g(7.2モル)を秤取り、窒素雰囲気下、攪拌しながら3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシル=イソシアネート800g(3.6モル)を、室温で滴下ロートを用いて滴下した。その後100℃で10時間反応させ、F−1を得た。
・K−1:トリイソデシルトリメリテート(花王株式会社製、商品名:トリメックスT−10)
・K−2:ポリオキシエチレンビスフェノールAラウリン酸エステル(花王株式会社製、商品名:エキセパールBP−DL)
・G−1:ペンタエリトリトールテトラステアラート(東京化成工業株式会社製、製品コード:P0739)
・H−1:上記式(1e)の構造で、x≒75、y≒30、z≒75、R1eおよびR2eが共に水素原子であるPO/EOブロック共重合型ポリエーテル(三洋化成工業株式会社製、商品名:ニューポールPE−68)
・H−2:上記式(2e)の構造で、r≒9、R3eがラウリル基であるポリオキシエチレンラウリルエーテル(和光純薬工業株式会社、商品名:ニッコールBL−9EX)
・H−3:上記式(2e)の構造で、r≒7、R3eがラウリル基であるポリオキシエチレンラウリルエーテル(日本エマルジョン株式会社、商品名:EMALEX707)
・I−1:1級側鎖アミノ変性シリコーン(信越化学工業株式会社製、商品名:KF−865)
・I−2:両末端アミノ変性シリコーン(信越化学工業株式会社製、商品名:KF−8012)
・J−1:ジアルキルエチルメチルアンモニウムエトサルフェート(ライオン・アクゾ株式会社製、商品名:アーカード2HT−50ES)
・J−2:ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド(花王株式会社製、商品名:コータミン24P)
・J−3:N−エチルN,N−ジメチル−9−オクタデセン−1−アミニウム・(硫酸エチル)アニオン(Hangzou Sage Chemical Co.,Ltd.)
<油剤付着量の測定>
炭素繊維前駆体アクリル繊維束を105℃で1時間乾燥させた後、メチルエチルケトンによるソックスレー抽出法に準拠し、90℃に加熱気化したメチルエチルケトンを還流させながら炭素繊維前駆体アクリル繊維束と8時間接触させ、付着した油剤組成物を溶媒抽出した。メチルエチルケトンは、炭素繊維前駆体アクリル繊維束に付着した油剤組成物が抽出できる十分な量を用いればよい。
抽出前に105℃で2時間乾燥した炭素繊維前駆体アクリル繊維束の質量W1、および抽出後に105℃で2時間乾燥した炭素繊維前駆体アクリル繊維束の質量W2をそれぞれ測定し、上記式(i)により油剤組成物の付着量を求めた。なお、油剤付着量の測定は、油剤組成物がその効力を発現する適正な範囲で前駆体繊維束に付与されていることを確認するものである。
炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造過程の最終ローラー、すなわち該繊維束をボビンに巻き取る直前のローラー上での炭素繊維前駆体アクリル繊維束の状態を目視にて観察し、以下の評価基準にて集束性を評価した。なお、集束性の評価は、炭素繊維前駆体アクリル繊維束の生産性、続く炭素化工程におけるハンドリング性を考慮した炭素繊維前駆体アクリル繊維束の品質を評価するものである。
A:集束しており、トウ幅が一定で、隣接する繊維束と接触しない。
B:集束しているが、トウ幅が一定ではない、あるいはトウ幅が広い。
C:繊維束中に空間があり、集束していない。
炭素繊維前駆体アクリル繊維束を24時間連続して製造したときに、搬送ローラーへ単繊維が巻き付き、除去した頻度により操業性を評価した。評価基準は以下の通りとした。なお、操業性の評価は、炭素繊維前駆体アクリル繊維束の安定生産の目安となる指標である。
A:除去回数(回/24時間)が1回以下。
B:除去回数(回/24時間)が2〜5回。
C:除去回数(回/24時間)が6回以上。
炭素繊維束を長さ3mmに切断し、アセトン中に分散させ、10分間攪拌した後の全単繊維数と、単繊維同士が融着している数(融着数)を計数し、単繊維100本当たりの融着数を算出し、以下の評価基準にて評価した。なお、単繊維間融着数の測定は、炭素繊維束の品質を評価するものである。
A:融着数(個/100本)が1個以下。
C:融着数(個/100本)が1個超。
炭素繊維束の製造を開始し、定常安定化した状態で炭素繊維束のサンプリングを行い、JIS−R−7608に規定されているエポキシ樹脂含浸ストランド法に準じて、炭素繊維束のストランド強度を測定した。なお、測定回数は10回とし、その平均値を評価の対象とした。
耐炎化工程におけるシリコーン由来のケイ素化合物飛散量は、炭素繊維前駆体アクリル繊維束と、それを耐炎化した耐炎化繊維束のケイ素(Si)含有量をICP発光分析法により測定し、それらの差から計算されるSi量の変化を耐炎化工程で飛散したSi量(Si飛散量)とし、評価の指標とした。
具体的には、炭素繊維前駆体アクリル繊維束および耐炎化繊維束をそれぞれ鋏で細かく粉砕した試料を密閉るつぼに50mg秤量し、粉末状としたNaOH、KOHを各0.25g加え、マッフル炉にて210℃で150分間加熱分解した。これを蒸留水で溶解し、100mLに定容したものを測定試料として用い、ICP発光分析法にて各測定試料のSi含有量を求め、下記式(ii)によりSi飛散量を求めた。ICP発光分析装置には、サーモエレクトロン株式会社製の「IRIS Advantage AP」を用いた。
Si飛散量(mg/kg)=炭素繊維前駆体アクリル繊維束のSi含有量−耐炎化繊維束のSi含有量 ・・・(ii)
<油剤組成物および油剤処理液の調製>
エステル化合物(A−1)とエステル化合物(B−1)を混合攪拌して油剤を調製した。そこに非イオン系界面活性剤(H−1、H−3)を加え、混合攪拌し、油剤組成物を調製した。
十分に攪拌した後、油剤組成物の濃度が30質量%になるようにイオン交換水をさらに加え、ホモミキサーで乳化した。この状態でのミセルの平均粒子径をレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、商品名:LA−910)を用いて測定したところ、3.0μm程度であった。
その後、さらに高圧ホモジナイザーにより、ミセルの平均粒子径が0.3μm以下になるまで分散し、油剤組成物の水系乳化液(エマルション)を得た。得られた水系乳化液をイオン交換水でさらに希釈し、油剤組成物の濃度が1.3質量%の油剤処理液を調製した。
油剤組成物中の各成分の種類と配合量(質量%)を表1に示す。
油剤を付着させる前駆体繊維束は、次の方法で調製した。アクリロニトリル系共重合体(組成比:アクリロニトリル/アクリルアミド/メタクリル酸=96.5/2.7/0.8(質量比))を21質量%の割合でジメチルアセトアミドに分散し、加熱溶解して紡糸原液を調製し、濃度67質量%のジメチルアセトアミド水溶液を満たした38℃の凝固浴中に孔径(直径)50μm、孔数50000の紡糸ノズルより吐出し凝固糸とした。凝固糸は水洗槽中で脱溶媒するとともに3倍に延伸して水膨潤状態の前駆体繊維束とした。
先に得られた油剤処理液を満たした油剤処理槽に水膨潤状態の前駆体繊維束を導き、油剤を付与させた。
その後、油剤が付与された前駆体繊維束を表面温度150℃のローラーにて乾燥緻密化した後に、圧力0.3MPaの水蒸気中で5倍延伸を施し、炭素繊維前駆体アクリル繊維束を得た。得られた炭素繊維前駆体アクリル繊維束のフィラメント数は50000本、単繊維繊度は1.3dTexであった。
製造工程における集束性および操業性を評価し、得られた炭素繊維前駆体アクリル繊維束の油剤付着量を測定した。結果を表1に示す。
得られた炭素繊維前駆体アクリル繊維束を、220〜260℃の温度勾配を有する耐炎化炉に40分かけて通して耐炎化し、耐炎化繊維束とした。
引き続き、該耐炎化繊維束を窒素雰囲気中で400〜1400℃の温度勾配を有する炭素化炉を3分間かけて通過させて焼成し、炭素繊維束とした。
耐炎化工程におけるSi飛散量を測定した。また、得られた炭素繊維束の単繊維間融着数、およびストランド強度を測定した。これらの結果を表1に示す。
油剤組成物を構成する各成分の種類と配合量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして油剤組成物および油剤処理液を調製し、炭素繊維前駆体アクリル繊維束および炭素繊維束を製造し、各測定および評価を実施した。結果を表1に示す。
なお、帯電防止剤を添加する場合は、エマルション化し、所定の粒子径まで微細化した後に添加した。
<油剤組成物および油剤処理液の調製>
エステル化合物(A−1)とエステル化合物(D−1)を混合攪拌して油剤を調製した。そこに非イオン系界面活性剤(H−1、H−3)を加え、混合攪拌し、油剤組成物を調製した。
十分に攪拌した後、油剤組成物の濃度が30質量%になるようにイオン交換水をさらに加え、ホモミキサーで乳化した。この状態でのミセルの平均粒子径をレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、商品名:LA−910)を用いて測定したところ、3.0μm程度であった。
その後、さらに高圧ホモジナイザーにより、ミセルの平均粒子径が0.3μm以下になるまで分散し、油剤組成物の水系乳化液(エマルション)を得た。得られた水系乳化液をイオン交換水でさらに希釈し、油剤組成物の濃度が1.3質量%の油剤処理液を調製した。
油剤組成物中の各成分の種類と配合量(質量%)を表2に示す。
得られた油剤処理液を用いた以外は、実施例1と同様にして炭素繊維前駆体アクリル繊維束および炭素繊維束を製造し、各測定および評価を実施した。結果を表2に示す。
油剤組成物を構成する各成分の種類と配合量を表2に示すように変更した以外は、実施例8と同様にして油剤組成物および油剤処理液を調製し、炭素繊維前駆体アクリル繊維束および炭素繊維束を製造し、各測定および評価を実施した。結果を表2に示す。
なお、帯電防止剤を添加する場合は、エマルション化し、所定の粒子径まで微細化した後に添加した。
<油剤組成物および油剤処理液の調製>
エステル化合物(A−1)とエステル化合物(B−1)とイソホロンジイソシアネート−脂肪族アルコール付加物(F−1)を混合攪拌して油剤を調製した。そこに非イオン系界面活性剤(H−1、H−3)を加え、混合攪拌し、油剤組成物を調製した。
十分に攪拌した後、油剤組成物の濃度が30質量%になるようにイオン交換水をさらに加え、ホモミキサーで乳化した。この状態でのミセルの平均粒子径をレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、商品名:LA−910)を用いて測定したところ、3.0μm程度であった。
その後、さらに高圧ホモジナイザーにより、ミセルの平均粒子径が0.3μm以下になるまで分散し、油剤組成物の水系乳化液(エマルション)を得た。得られた水系乳化液をイオン交換水でさらに希釈し、油剤組成物の濃度が1.3質量%の油剤処理液を調製した。
油剤組成物中の各成分の種類と配合量(質量%)を表3に示す。
得られた油剤処理液を用いた以外は、実施例1と同様にして炭素繊維前駆体アクリル繊維束および炭素繊維束を製造し、各測定および評価を実施した。結果を表3に示す。
油剤組成物を構成する各成分の種類と配合量を表3に示すように変更した以外は、実施例16と同様にして油剤組成物および油剤処理液を調製し、炭素繊維前駆体アクリル繊維束および炭素繊維束を製造し、各測定および評価を実施した。結果を表3に示す。
なお、帯電防止剤を添加する場合は、エマルション化し、所定の粒子径まで微細化した後に添加した。
<油剤組成物および油剤処理液の調製>
エステル化合物(A−1)とエステル化合物(D−1)とイソホロンジイソシアネート−アルコール付加物(F−1)を混合攪拌して油剤を調製した。そこに非イオン系界面活性剤(H−1、H−3)を加え、混合攪拌し、油剤組成物を調製した。
十分に攪拌した後、油剤組成物の濃度が30質量%になるようにイオン交換水をさらに加え、ホモミキサーで乳化した。この状態でのミセルの平均粒子径をレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、商品名:LA−910)を用いて測定したところ、5.0μm程度であった。
その後、さらに高圧ホモジナイザーにより、ミセルの平均粒子径が0.3μm以下になるまで分散し、油剤組成物の水系乳化液(エマルション)を得た。得られた水系乳化液をイオン交換水でさらに希釈し、油剤組成物の濃度が1.3質量%の油剤処理液を調製した。
油剤組成物中の各成分の種類と配合量(質量%)を表4に示す。
得られた油剤処理液を用いた以外は、実施例1と同様にして炭素繊維前駆体アクリル繊維束および炭素繊維束を製造し、各測定および評価を実施した。結果を表4に示す。
油剤組成物を構成する各成分の種類と配合量を表4に示すように変更した以外は、実施例23と同様にして油剤組成物および油剤処理液を調製し、炭素繊維前駆体アクリル繊維束および炭素繊維束を製造し、各測定および評価を実施した。結果を表4に示す。
なお、帯電防止剤を添加する場合は、エマルション化し、所定の粒子径まで微細化した後に添加した。
<油剤組成物および油剤処理液の調製>
イソホロンジイソシアネート−アルコール付加物(F−1)とエステル化合物(B−1)を混合攪拌して油剤を調製した。そこに非イオン系界面活性剤(H−1、H−3)を加え、混合攪拌し、油剤組成物を調製した。
十分に攪拌した後、油剤組成物の濃度が30質量%になるようにイオン交換水をさらに加え、ホモミキサーで乳化した。この状態でのミセルの平均粒子径をレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、商品名:LA−910)を用いて測定したところ、5.0μm程度であった。
その後、さらに高圧ホモジナイザーにより、ミセルの平均粒子径が0.3μm以下になるまで分散し、油剤組成物の水系乳化液(エマルション)を得た。得られた水系乳化液をイオン交換水でさらに希釈し、油剤組成物の濃度が1.3質量%の油剤処理液を調製した。
油剤組成物中の各成分の種類と配合量(質量%)を表5に示す。
得られた油剤処理液を用いた以外は、実施例1と同様にして炭素繊維前駆体アクリル繊維束および炭素繊維束を製造し、各測定および評価を実施した。結果を表5に示す。
油剤組成物を構成する各成分の種類と配合量を表5に示すように変更した以外は、実施例30と同様にして油剤組成物および油剤処理液を調製し、炭素繊維前駆体アクリル繊維束および炭素繊維束を製造し、各測定および評価を実施した。結果を表5に示す。
なお、帯電防止剤を添加する場合は、エマルション化し、所定の粒子径まで微細化した後に添加した。
<油剤組成物および油剤処理液の調製>
イソホロンジイソシアネート−アルコール付加物(F−1)とエステル化合物(D−1)を混合攪拌して油剤を調製した。そこに非イオン系界面活性剤(H−1、H−3)を加え、混合攪拌し、油剤組成物を調製した。
十分に攪拌した後、油剤組成物の濃度が30質量%になるようにイオン交換水をさらに加え、ホモミキサーで乳化した。この状態でのミセルの平均粒子径をレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、商品名:LA−910)を用いて測定したところ、5.0μm程度であった。
その後、さらに高圧ホモジナイザーにより、ミセルの平均粒子径が0.3μm以下になるまで分散し、油剤組成物の水系乳化液(エマルション)を得た。得られた水系乳化液をイオン交換水でさらに希釈し、油剤組成物の濃度が1.3質量%の油剤処理液を調製した。
油剤組成物中の各成分の種類と配合量(質量%)を表6に示す。
得られた油剤処理液を用いた以外は、実施例1と同様にして炭素繊維前駆体アクリル繊維束および炭素繊維束を製造し、各測定および評価を実施した。結果を表6に示す。
油剤組成物を構成する各成分の種類と配合量を表6に示すように変更した以外は、実施例37と同様にして油剤組成物および油剤処理液を調製し、炭素繊維前駆体アクリル繊維束および炭素繊維束を製造し、各測定および評価を実施した。結果を表6に示す。
なお、帯電防止剤を添加する場合は、エマルション化し、所定の粒子径まで微細化した後に添加した。
<油剤組成物および油剤処理液の調製>
油剤組成物を構成する各成分の種類と配合量を表7に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして油剤組成物および油剤処理液を調製した。
なお、帯電防止剤を添加する場合は、エマルション化し、所定の粒子径まで微細化した後に添加した。
また、アミノ変性シリコーンを用いる場合は、エステル化合物に非イオン系界面活性剤を攪拌混合した後に加えた。また、アミノ変性シリコーンを用い、エステル化合物を用いない比較例7、8の場合は、アミノ変性シリコーンに非イオン系界面活性剤を入れ混合攪拌した後に、イオン交換水を加えた。
このようにして調製した油剤処理液を用いた以外は、実施例1と同様にして炭素繊維前駆体アクリル繊維束および炭素繊維束を製造し、各測定および評価を実施した。結果を表7に示す。
アミノ変性シリコーンを15〜20質量%含有し、上記エステル化合物(K−1)、(K−2)、(G−1)を合計で40〜60質量%含有した比較例3〜6の場合、融着数は少なく良好であったが、操業安定性に問題があった。
本発明の油剤が付着した炭素繊維前駆体アクリル繊維束から得られた炭素繊維束は、プリプレグ化した後、複合材料に成形することもできる。また、炭素繊維束を用いた複合材料は、ゴルフシャフトや釣り竿などのスポーツ用途、さらには構造材料として自動車や航空宇宙用途、また各種ガス貯蔵タンク用途などに好適に用いることができ、有用である。
Claims (12)
- 以下のA、B、C、D、E、およびFからなる群より選ばれる2種以上の化合物を含む、炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤。
A:ヒドロキシ安息香酸と、炭素数8〜20の1価の脂肪族アルコールとの反応により得られる化合物A。
B:シクロヘキサンジカルボン酸と、炭素数8〜22の1価の脂肪族アルコールとの反応により得られる化合物B。
C:シクロヘキサンジカルボン酸と、炭素数8〜22の1価の脂肪族アルコールと、炭素数2〜10の多価アルコールおよび/またはオキシアルキレン基の炭素数が2〜4のポリオキシアルキレングリコールとの反応により得られる化合物C。
D:シクロヘキサンジメタノールおよび/またはシクロヘキサンジオールと、炭素数8〜22の脂肪酸との反応により得られる化合物D。
E:シクロヘキサンジメタノールおよび/またはシクロヘキサンジオールと、炭素数8〜22の脂肪酸と、ダイマー酸との反応により得られる化合物E。
F:3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシル=イソシアネートと、炭素数8〜22の1価の脂肪族アルコールおよびそのポリオキシアルキレンエーテル化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物との反応により得られる化合物F。 - 少なくとも前記化合物Aおよび/または化合物Fを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤。
- 請求項1〜8のいずれか一項に記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤と、非イオン系界面活性剤を含有する、炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤組成物。
- 前記炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤100質量部に対して、前記非イオン系界面活性剤を20〜150質量部含有する、請求項9に記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤組成物。
- 前記炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤100質量部に対して、酸化防止剤を1〜5質量部含有する、請求項9または10に記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤組成物。
- 請求項9〜11のいずれか一項に記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤組成物が水中で分散している、炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤処理液。
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