JP2012251267A - 炭素繊維前駆体アクリル繊維束 - Google Patents

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Abstract

【課題】集束性および操業性に優れ、かつ炭素繊維束製造工程における単繊維間の融着を効果的に防止すると共に、機械的物性に優れた炭素繊維束を生産性よく得ることができる炭素繊維前駆体アクリル繊維束の提供。
【解決手段】下記式(1)で示されるエステル化合物(A1)および/または下記式(2)で示されるエステル化合物(A2)と、アミノ変性シリコーンとが付着した、炭素繊維前駆体アクリル繊維束。
[化1]
Figure 2012251267

[化2]
Figure 2012251267

【選択図】なし

Description

本発明は、炭素繊維前駆体アクリル繊維束に関する。
従来、炭素繊維束の製造方法として、アクリル繊維などからなる炭素繊維前駆体繊維束(以下、「前駆体繊維束」とも表記する。)を200〜400℃の酸素存在雰囲気下で加熱処理することにより耐炎化繊維束に転換し(耐炎化工程)、引き続いて1000℃以上の不活性雰囲気下で炭素化して(炭素化工程)、炭素繊維束を得る方法が知られている。この方法で得られた炭素繊維束は、優れた機械的物性により、特に複合材料用の強化繊維として工業的に広く利用されている。
しかし、炭素繊維束の製造方法において、前駆体繊維束を耐炎化繊維束に転換する耐炎化工程で単繊維間に融着が発生し、耐炎化工程およびそれに続く炭素化工程(以下、耐炎化工程と炭素化工程を総合して「焼成工程」とも表記する。)において、毛羽や束切れといった工程障害が発生する場合があった。この単繊維間の融着を防止する方法として、前駆体繊維束の表面に油剤組成物を付与する方法(油剤処理)が知られており、多くの油剤組成物が検討されてきた。
油剤組成物としては、これまで、単繊維間の融着を防止する効果を有するシリコーンを主成分とするシリコーン系油剤が一般的に用いられていた。
しかし、シリコーン系油剤は加熱により架橋反応が進行して高粘度化し、その粘着物が前駆体繊維束の製造工程や、耐炎化工程で使用される繊維搬送ローラーやガイドなどの表面に堆積しやすかった。そのため、前駆体繊維束や耐炎化繊維束が、繊維搬送ローラーやガイドに巻き付いたり引っかかったりして断糸するなどの操業性低下を引き起こす原因になることがあった。
また、シリコーン系油剤が付着した前駆体繊維束は、焼成工程において酸化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素などのケイ素化合物を生成しやすく、工業的な生産性や製品の品質を低下させるという問題を有していた。
そこで、油剤処理された前駆体繊維束のケイ素含有量を低減することを目的として、シリコーンの含有率を低減した油剤組成物が提案されている。例えば、多環芳香族化合物を50〜100質量%含有する乳化剤を40〜100質量%含有させ、シリコーン含有量を低減させた油剤組成物が提案されている(特許文献1参照)。
また、空気中250℃で2時間加熱した後の残存率が80質量%以上である耐熱樹脂とシリコーンとを組み合わせた油剤組成物が提案されている(特許文献2参照)。
さらに、ビスフェノールA系の芳香族化合物とアミノ変性シリコーンとを組み合わせた油剤組成物(特許文献3、4参照)や、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の脂肪酸エステルを主成分とする油剤組成物(特許文献5参照)が提案されている。
また、反応性官能基を有する化合物を10質量%以上含み、シリコーン化合物を含有しない、またはシリコーン化合物を含有する場合はケイ素質量に換算して2質量%以下の範囲とする油剤組成物が提案されている(特許文献6参照)。
特開2005−264384号公報 特開2000−199183号公報 特開2003−55881号公報 特開2004−149937号公報 国際公開第97/009474号パンフレット 特開2005−264361号公報
しかしながら、特許文献1に記載の油剤組成物では、乳化剤の含有量が多いため乳化物の安定性は高くなるものの、この油剤組成物を付着させた前駆体繊維束の集束性が低下しやすく、高い生産効率で製造するには適していなかった。さらに、機械的物性に優れた炭素繊維束が得られにくいという問題があった。
また、特許文献2に記載の油剤組成物は、耐熱樹脂としてビスフェノールA系の芳香族エステルを用いているので耐熱性は極めて高いものの、単繊維間の融着を防止する効果が十分ではなかった。さらに、機械的物性に優れた炭素繊維束が安定して得られにくいという問題があった。
また、特許文献3〜5に記載の油剤組成物においても、機械的物性に優れた炭素繊維束を安定して製造できるものではなかった。加えて、これらの油剤組成物に含まれるビスフェノールA系の化合物は、内分泌撹乱物質(いわゆる環境ホルモン)に該当する疑いがあるので、使用に際しては注意を払う必要があった。
また、特許文献6に記載の油剤組成物は、100〜145℃における油剤組成物の粘度を上げることで油剤付着性を高めることができるが、粘度が高いがために油剤処理後の前駆体繊維束が紡糸工程において繊維搬送ローラーに付着し、繊維束が巻き付くなどの工程障害を引き起こす問題があった。
このように、シリコーン含有量を低減した油剤組成物、あるいは非シリコーン成分のみの油剤組成物では、シリコーン系油剤に比べて、融着防止性や油剤処理された前駆体繊維束の集束性が低下したり、得られる炭素繊維束の機械的物性が劣ったりする傾向にあった。そのため、高品質な炭素繊維束を安定して得ることが困難であった。また、比較的に耐熱性が良好であるビスフェノールA系の化合物を用いた場合、この化合物は内分泌撹乱物質に該当する疑いがあるため、使用に際して注意を払う必要があった。
一方、シリコーン系油剤では、上述したように、高粘度化による操業性の低下やケイ素化合物の生成による工業的な生産性の低下が問題であった。
つまり、シリコーン系油剤による操業性や工業的な生産性の低下の問題と、シリコーン含有量を低減した、あるいは非シリコーン成分のみの油剤組成物による融着防止性、前駆体繊維束の集束性、炭素繊維束の機械的物性の低下の問題は表裏一体の関係にあり、従来技術ではこの両者の課題を全て解決することはできない。また、取扱性も考慮すると、シリコーン系油剤を代替できる技術は未だ見出されていない。
本発明の目的は、集束性および操業性に優れ、かつ炭素繊維束製造工程における単繊維間の融着を効果的に防止すると共に、機械的物性に優れた炭素繊維束を生産性よく得ることができる炭素繊維前駆体アクリル繊維束を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討した結果、油剤組成物の非シリコーン成分としてシクロヘキサンジメタノールエステル化合物および/またはシクロヘキサンジオールエステル化合物と、アミノ変性シリコーンを用いることにより、上述したシリコーン系油剤の問題と、シリコーンの含有率を低減した、あるいは非シリコーン成分のみの油剤組成物の問題を共に解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維束は、下記式(1)で示されるエステル化合物(A1)および/または下記式(2)で示されるエステル化合物(A2)と、アミノ変性シリコーンとが付着したことを特徴とする。
Figure 2012251267
式(1)中、R〜Rはそれぞれ独立して、炭素数7〜21の炭化水素基であり、nは0または1である。
Figure 2012251267
式(2)中、RおよびRはそれぞれ独立して、炭素数7〜21の炭化水素基であり、Rは炭素数30〜38の炭化水素基であり、mは0または1である。
また、乾燥繊維質量に対して、前記エステル化合物(A1)および/またはエステル化合物(A2)が0.4〜1.5質量%付着し、前記アミノ変性シリコーンが0.01〜0.5質量%付着したことが好ましい。
さらに、前記アミノ変性シリコーンが、下記式(3)で示されるアミノ変性シリコーンであり、かつ、25℃における動粘度が50〜500mm/s、アミノ当量が2000〜6000g/molであることが好ましい。
Figure 2012251267
式(3)中、oおよびpは1以上の任意の数であり、qは1〜5である。
また、非イオン系界面活性剤がさらに付着したことが好ましい。
さらに、前記非イオン系界面活性剤が、乾燥繊維質量に対して0.1〜0.3質量%付着したことが好ましい。
また、前記非イオン系界面活性剤の乾燥繊維質量に対する付着量が、前記エステル化合物(A1)および/または前記エステル化合物(A2)と、前記アミノ変性シリコーンの乾燥繊維質量に対する付着量の合計100質量部に対して、10〜30質量部であることが好ましい。
さらに、前記非イオン系界面活性剤が、下記式(4)で示されるブロック共重合型ポリエーテルおよび/または下記式(5)で示されるポリオキシエチレンアルキルエーテルであることが好ましい。
Figure 2012251267
式(4)中、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜24の炭化水素基であり、x、y、zはそれぞれ独立して、1〜500である。
Figure 2012251267
式(5)中、Rは炭素数10〜20の炭化水素基であり、rは3〜20である。
また、酸化防止剤が、乾燥繊維質量に対して0.01〜0.1質量%さらに付着したことが好ましい。
本発明によれば、集束性および操業性に優れ、かつ炭素繊維束製造工程における単繊維間の融着を効果的に防止すると共に、機械的物性に優れた炭素繊維束を生産性よく得ることができる炭素繊維前駆体アクリル繊維束を提供できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維束は、油剤処理によってアクリル繊維からなる炭素繊維前駆体繊維束(以下、「前駆体繊維束」とも表記する。)に特定のエステル化合物が付着した繊維束である。
<前駆体繊維束>
本発明に用いる、油剤処理前の前駆体繊維束としては、公知技術により紡糸されたアクリル繊維束を用いることができる。具体的には、アクリロニトリル系重合体を紡糸して得られるアクリル繊維束が挙げられる。
アクリロニトリル系重合体は、アクリロニトリルを主な単量体とし、これを重合して得られる重合体である。アクリロニトリル系重合体は、アクリロニトリルのみから得られるホモポリマーであってもよく、主成分であるアクリロニトリルに加えて他の単量体を併用したアクリロニトリル系共重合体であってもよい。
アクリロニトリル系共重合体におけるアクリロニトリル単位の含有量は、96.0〜98.5質量%であることが焼成工程での繊維の熱融着防止、共重合体の耐熱性、紡糸原液の安定性、および炭素繊維にした際の品質の観点でより好ましい。アクリロニトリル単位が96質量%以上の場合は、炭素繊維に転換する際の焼成工程で繊維の熱融着を招くことなく、炭素繊維の優れた品質および性能を維持できるので好ましい。また、共重合体自体の耐熱性が低くなることもなく、前駆体繊維を紡糸する際、繊維の乾燥あるいは加熱ローラーや加圧水蒸気による延伸のような工程において、単繊維間の接着を回避できる。一方、アクリロニトリル単位が98.5質量%以下の場合には、溶剤への溶解性が低下することもなく、紡糸原液の安定性を維持できると共に共重合体の析出凝固性が高くならず、前駆体繊維の安定した製造が可能となるので好ましい。
共重合体を用いる場合のアクリロニトリル以外の単量体としては、アクリロニトリルと共重合可能なビニル系単量体から適宣選択することができ、耐炎化反応を促進する作用を有するアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、または、これらのアルカリ金属塩もしくはアンモニウム塩、アクリルアミド等の単量体から選択すると、耐炎化を促進できるので好ましい。
アクリロニトリルと共重合可能なビニル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有ビニル系単量体がより好ましい。アクリロニトリル系共重合体におけるカルボキシル基含有ビニル系単量体単位の含有量は0.5〜2.0質量%が好ましい。
これらビニル系単量体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
紡糸の際には、アクリロニトリル系重合体を溶剤に溶解し、紡糸原液とする。このときの溶剤には、ジメチルアセトアミドあるいはジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の有機溶剤、または塩化亜鉛やチオシアン酸ナトリウム等の無機化合物水溶液等、公知のものから適宜選択して使用することができる。これらの中でも、生産性向上の観点から凝固速度が早いジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドおよびジメチルホルムアミドが好ましく、ジメチルアセトアミドがより好ましい。
また、緻密な凝固糸を得るためには、紡糸原液の重合体濃度がある程度以上になるように紡糸原液を調製することが好ましい。具体的には、紡糸原液中の重合体濃度が17質量%以上になるように調製することが好ましく、より好ましくは19質量%以上である。
なお、紡糸原液は適正な粘度・流動性を必要とするため、重合体濃度は25質量%を超えない範囲が好ましい。
紡糸方法は、上述した紡糸原液を直接凝固浴中に紡出する湿式紡糸法、空気中で凝固する乾式紡糸法、および一旦空気中に紡出した後に浴中凝固させる乾湿式紡糸法など公知の紡糸方法を適宜採用できるが、より高い性能を有する炭素繊維束を得るには湿式紡糸法または乾湿式紡糸法が好ましい。
湿式紡糸法または乾湿式紡糸法による紡糸賦形は、紡糸原液を円形断面の孔を有するノズルより凝固浴中に紡出することで行うことができる。凝固浴としては、紡糸原液に用いられる溶剤を含む水溶液を用いるのが溶剤回収の容易さの観点から好ましい。
凝固浴として溶剤を含む水溶液を用いる場合、水溶液中の溶剤濃度は、ボイドがなく緻密な構造を形成させ高性能な炭素繊維束を得られ、かつ延伸性が確保でき生産性に優れる等の理由から、50〜85質量%、凝固浴の温度は10〜60℃が好ましい。
重合体あるいは共重合体を溶剤に溶解し、紡糸原液として凝固浴中に吐出して繊維化して得た凝固糸には、凝固浴中または延伸浴中で延伸する浴中延伸を行うことができる。あるいは、一部空中延伸した後に、浴中延伸してもよく、延伸の前後あるいは延伸と同時に水洗を行って水膨潤状態の前駆体繊維束を得ることができる。
浴中延伸は、通常50〜98℃の水浴中で1回あるいは2回以上の多段に分割するなどして行い、空中延伸と浴中延伸の合計倍率が2〜10倍になるように凝固糸を延伸するのが、得られる炭素繊維束の性能の点から好ましい。
本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維束は、このようにして得られた前駆体繊維束に油剤組成物を付与し(油剤処理)、さらに油剤処理された前駆体繊維束を乾燥緻密化して得られる。
<油剤処理>
油剤処理の工程で用いられる油剤組成物は、特定のエステル化合物(A)と、アミノ変性シリコーンとを必須成分として含む。
エステル化合物(A)は、下記式(1)で示されるエステル化合物(A1)および/または下記式(2)で示されるエステル化合物(A2)であり、シリコーン、特にアミノ変性シリコーンとの相溶性に優れるので、前駆体繊維束に油剤組成物を均一に付着させることができ、良好な機械的物性を有する炭素繊維束を得るための炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造に効果的である。
また、エステル化合物(A)は脂肪族エステルであるため、熱分解性にも優れ、炭素化工程において低分子化して炉内流通ガスと共に系外に排出されやすく、工程障害や品質低下の原因になりにくい。
Figure 2012251267
Figure 2012251267
式(1)中、R〜Rはそれぞれ独立して、炭素数7〜21の炭化水素基である。炭化水素基の炭素数が7以上であれば、エステル化合物(A1)の熱的安定性を良好に維持できるので、耐炎化工程において十分な融着防止効果が得られる。一方、炭化水素基の炭素数が21以下であれば、エステル化合物(A1)の粘度が高くなりすぎず、該エステル化合物(A1)を含む油剤組成物のエマルションを容易に調製でき、油剤組成物が前駆体繊維束に均一に付着する。炭化水素基の炭素数は15〜21が好ましい。
〜Rは、同じ構造であってもよいし、個々に独立した構造であってもよい。
〜Rは、炭素数7〜21のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基のいずれでもよく、直鎖状もしくは分岐鎖状であってもよい。
アルキル基としては、例えばn−およびiso−ヘプチル基、n−およびiso−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−およびiso−ノニル基、n−およびiso−デシル基、n−およびiso−ウンデシル基、n−およびiso−ドデシル基、n−およびiso−トリデシル基、n−およびiso−テトラデシル基、n−およびiso−ヘキサデシル基、n−およびiso−ヘプタデシル基、ステアリル基、ノナデシル基、エイコシル基、並びにヘンエイコシル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、例えばヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、オレイル基、ガドレイル基、並びに2−エチルデセニル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、例えば1−および2−ドデシニル基、1−および2−トリデシニル基、1−および2−テトラデシニル基、1−および2−ヘキサデシニル基、1−および2−ステアリニル基、1−および2−ノナデシニル基、並びに1−および2−エイコシニル基等が挙げられる。
式(1)中、nは0または1である。
エステル化合物(A1)は、シクロヘキサンジメタノールおよび/またはシクロヘキサンジオールと、炭素数8〜22の脂肪酸との縮合反応により得られる。縮合反応は公知の方法を採用できる。
シクロヘキサンジメタノールとしては、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールのいずれでもよいが、合成のし易さ、耐熱性の点で1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
一方、シクロヘキサンジオールとしては、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオールのいずれでもよいが、合成のし易さ、耐熱性の点で1,4−シクロヘキサンジオールが好ましい。
なお、エステル化合物(A1)の原料として、1,4−シクロヘキサンジメタノールを使用する場合、nは1となり、1,4−シクロヘキサンジオールを使用する場合、nは0となる。
脂肪酸の炭素数は8〜22である。すなわち、該脂肪酸の炭化水素基部分は、炭素数が7〜21である。
炭化水素基の炭素数が7以上であれば、エステル化合物(A1)の熱的安定性を良好に維持できるので、耐炎化工程において十分な融着防止効果が得られる。一方、炭化水素基の炭素数が21以下であれば、エステル化合物(A1)の粘度が高くなりすぎず、該エステル化合物(A1)を含む油剤組成物のエマルションを容易に調製でき、油剤組成物が前駆体繊維束に均一に付着する。
炭化水素基の炭素数は15〜21が好ましい。すなわち、脂肪酸としては炭素数16〜22の脂肪酸が好ましい。
なお、式(1)中のR〜Rは、脂肪酸の炭化水素基に由来する。
炭素数8〜22の脂肪酸としては、例えばカプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、ベヘン酸などが挙げられる。中でも後述する油剤処理液の調製の際に水中に分散しやすくなり、紡糸工程において繊維搬送ローラーへ付着した場合に搬送ローラーに繊維が巻き付くなどの工程障害が起こりにくく、かつ所望の耐熱性を有するという、ハンドリング・工程通過性・性能のバランスの点で、オレイン酸が好ましい。
これら脂肪酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
一方、式(2)中、RおよびRはそれぞれ独立して、炭素数7〜21の炭化水素基であり、Rは炭素数30〜38の炭化水素基である。
およびRの場合、炭化水素基の炭素数が7以上であれば、エステル化合物(A2)の熱的安定性を良好に維持できるので、耐炎化工程において十分な融着防止効果が得られる。一方、炭化水素基の炭素数が21以下であれば、エステル化合物(A2)の粘度が高くなりすぎず、該エステル化合物(A2)を含む油剤組成物のエマルションを容易に調製でき、油剤組成物が前駆体繊維束に均一に付着する。炭化水素基の炭素数は15〜21が好ましい。
およびRは、同じ構造であってもよいし、個々に独立した構造であってもよい。
およびRは、炭素数7〜21のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基のいずれでもよく、直鎖状もしくは分岐鎖状であってもよい。これらアルキル基、アルケニル基、アルキニル基としては、エステル化合物(A1)のR〜Rの説明において先に例示したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
一方、Rの場合、炭化水素基の炭素数が30以上であれば、エステル化合物(A2)の熱的安定性を良好に維持できるので、耐炎化工程において十分な融着防止効果が得られる。一方、炭化水素基の炭素数が38以下であれば、エステル化合物(A2)の粘度が高くなりすぎず、該エステル化合物(A2)を含む油剤組成物のエマルションを容易に調製でき、油剤組成物が前駆体繊維束に均一に付着する。
としては、炭素数30〜38のアルカン、アルケン、またはアルキンの任意の炭素原子から水素を2つ取除いた二価の置換基が挙げられ、直鎖状もしくは分岐鎖状であってもよい。このような二価の置換基としては、炭素数30〜38のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基の任意の炭素原子から水素を1つ取除いた置換基が挙げられる。
アルキル基としては、例えばトリアコンチル基、ヘントリアコンチル基、ドトリアコンチル基、トリトリアコンチル基、テトラトリアコンチル基、ペンタトリアコンチル基、ヘキサトリアコンチル基、ヘプタトリアコンチル基、オクタトリアコンチル基などが挙げられる。
アルケニル基としては、トリアコンテニル基、ヘントリアコンテニル基、ドトリアコンテニル基、トリトリアコンテニル基、テトラトリアコンテニル基、ペンタトリアコンテニル基、ヘキサトリアコンテニル基、ヘプタトリアコンテニル基、オクタトリアコンテニル基などが挙げられる。
アルキニル基としては、トリアコンチニル基、ヘントリアコンチニル基、ドトリアコンチニル基、トリトリアコンチニル基、テトラトリアコンチニル基、ペンタトリアコンチニル基、ヘキサトリアコンチニル基、ヘプタトリアコンチニル基、オクタトリアコンチニル基などが挙げられる。
式(2)中、mは0または1である。
エステル化合物(A2)は、シクロヘキサンジメタノールおよび/またはシクロヘキサンジオールと、炭素数8〜22の脂肪酸と、ダイマー酸との縮合反応により得られる。縮合反応は公知の方法を採用できる。
シクロヘキサンジメタノール、およびシクロヘキサンジオールとしては、エステル化合物(A2)の説明において先に例示したシクロヘキサンジメタノール、およびシクロヘキサンジオールが挙げられる。
なお、エステル化合物(A2)の原料として、1,4−シクロヘキサンジメタノールを使用する場合、mは1となり、1,4−シクロヘキサンジオールを使用する場合、mは0となる。
脂肪酸の炭素数は8〜22である。すなわち、該脂肪酸の炭化水素基部分は、炭素数が7〜21である。
炭化水素基の炭素数が7以上であれば、エステル化合物(A2)の熱的安定性を良好に維持できるので、耐炎化工程において十分な融着防止効果が得られる。一方、炭化水素基の炭素数が21以下であれば、エステル化合物(A2)の粘度が高くなりすぎず、該エステル化合物(A2)を含む油剤組成物のエマルションを容易に調製でき、油剤組成物が前駆体繊維束に均一に付着する。
炭化水素基の炭素数は15〜21が好ましい。すなわち、脂肪酸としては炭素数16〜22の脂肪酸が好ましい。
炭素数8〜22の脂肪酸としては、エステル化合物(A1)の説明において先に例示した脂肪酸が挙げられる。
なお、式(2)中のRおよびRは、脂肪酸の炭化水素基に由来する。
ダイマー酸は、脂肪酸が二量化したものである。
ダイマー酸としては、炭素数16〜20の脂肪酸を二量化して得られる炭素数32〜40のジカルボン酸(HOOC−R4’−COOH)が好ましい。
ここで、R4’は炭素数30〜38の炭化水素基である。炭化水素基の炭素数が30以上であれば、エステル化合物(A2)の熱的安定性を良好に維持できるので、耐炎化工程において十分な融着防止効果が得られる。一方、炭化水素基の炭素数が38以下であれば、エステル化合物(A2)の粘度が高くなりすぎず、該エステル化合物(A2)を含む油剤組成物のエマルションを容易に調製でき、油剤組成物が前駆体繊維束に均一に付着する。
4’としては、具体的に、炭素数30〜38のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基の任意の炭素原子から水素を1つ取除いた置換基が挙げられる。
なお、式(2)中のRは、ダイマー酸の炭化水素基(R4’)に由来する。
上述したエステル化合物(A)は、非シリコーン系化合物である。
エステル化合物(A)は、油剤組成物100質量%中に40〜80質量%含まれるのが好ましい。エステル化合物(A)の含有量が40質量%以上であれば、後述するシリコーン系化合物(特にアミノ変性シリコーン)を油剤組成物に配合しても、このシリコーン系化合物とのバランスを良好に維持でき、油剤組成物が前駆体繊維束に均一に付着しやすくなる。その結果、油剤組成物が付着した前駆体繊維束を焼成して得られる炭素繊維束は、安定した物性を発現しやすくなる。
ところで、詳しくは後述するが、油剤組成物は水へ分散させた状態(エマルション)で前駆体繊維束へ付与する。エステル化合物(A)の含有量が80質量%以下であれば、シリコーン系化合物を油剤組成物に配合しても、油剤組成物が水中で容易に分散するので、安定したエマルションを調製でき、前駆体繊維束に均一に付着しやすい。その結果、油剤組成物が付着した前駆体繊維束を焼成して得られる炭素繊維束は、安定した物性を発現しやすくなる。
油剤組成物は、上述したエステル化合物(A)の他に、シリコーン系化合物としてアミノ変性シリコーンを含有する。アミノ変性シリコーンを含有することで、この油剤組成物が付着した前駆体繊維束を焼成して得られる炭素繊維束の機械的物性(特に強度)が向上する。
この炭素繊維束の強度向上の効果を十分に得るためには、アミノ変性シリコーンを油剤組成物100質量%中、5質量%以上含有させるのが好ましい。ただし、アミノ変性シリコーンの含有量が多くなりすぎると、焼成工程において前駆体繊維束に付着したアミノ変性シリコーンからケイ素化合物が発生・飛散し、工業的な生産性や炭素繊維束の品質の低下を招く恐れがある。従って、アミノ変性シリコーンの含有量の上限値は40質量%以下が好ましい。
アミノ変性シリコーンとしては、25℃における動粘度が50〜500mm/s、アミノ当量が2000〜6000g/molであり、下記式(3)で示される1級側鎖のアミノ変性シリコーン(3)が好ましい。
Figure 2012251267
アミノ変性シリコーン(3)は、油剤組成物の前駆体繊維束に対する親和性および耐熱性の向上に有効である。
アミノ変性シリコーン(3)は、25℃における動粘度が50〜500mm/sであり、100〜300mm/sであることが好ましい。動粘度が50mm/s未満であると、上述したエステル化合物と分離しやすくなり、前駆体繊維束表面における油剤組成物の付着状態が不均一となり、耐炎化工程での単繊維間の融着を十分に防止しにくくなる。一方、動粘度が500mm/sを超えると、油剤組成物のエマルションの調製が困難になる。また、油剤組成物のエマルションの安定性が低下し、前駆体繊維束に均一に付着しにくくなる。
アミノ変性シリコーン(3)の動粘度は、JIS−Z−8803に規定されている“液体の粘度−測定方法”、あるいはASTM D 445−46Tに準拠して測定される値であり、例えばウッベローデ粘度計を用いて測定できる。
アミノ変性シリコーン(3)は、アミノ当量が2000〜6000g/molであり、4000〜6000g/molであることが好ましい。アミノ当量が2000g/mol未満であると、シリコーン1分子中のアミノ基の数が多くなりすぎ、アミノ変性シリコーン(3)の熱安定性が低下し、工程障害の要因となる。一方、アミノ当量が6000g/molを超えると、シリコーン1分子中のアミノ基の数が少なくなりすぎ、前駆体繊維束との馴染みが悪くなり、油剤組成物が均一に付着しにくくなる。アミノ基当量が上記範囲内であれば、前駆体繊維束との馴染みやすさと、シリコーンの熱安定性を両立できる。
アミノ変性シリコーン(3)は、上記式(3)で示される構造を有する。式(3)中、oおよびpは1以上の任意の数であり、qは1〜5である。
アミノ変性シリコーン(3)としては、式(3)のアミノ変性部がアミノプロピル基(−CNH)、すなわち式(3)のアミノ変性部においてqが3であり、oが10〜300、好ましくは50〜200、pが2〜10、好ましくは2〜5となるような構造が好ましい。
式(3)のoおよびpが上記範囲内から外れると、炭素繊維束の性能発現性や耐熱性が低下しやすくなる。特にoが10未満であると、耐熱性が低く単繊維間の融着を防止しにくくなる傾向にある。また、oが300を超えると、油剤組成物の水への分散が非常に困難となりエマルションが調製しにくくなる。また、エマルションの安定性が低下し、前駆体繊維束に均一に付着しにくくなる。
一方、pが2未満であると、前駆体繊維束との親和性が低下するため、単繊維間の融着を効果的に防止しにくくなる。また、pが10を超えると、油剤組成物そのものの耐熱性が低下して、やはり単繊維間の融着を防止しにくくなる。
なお、式(3)で示されるアミノ変性シリコーン(3)は、複数の化合物の混合物である場合もある。従って、o、p、qはそれぞれ整数でない場合もあり得る。
なお、式(3)中のo、pはアミノ変性シリコーン(3)の動粘度およびアミノ当量からの推算値として概算することができる。一方、qは合成原料によって定まる値である。
o、pを求める手順は、まずアミノ変性シリコーン(3)の動粘度を測定し、測定された動粘度の値からA.J.Barryの式(logη=1.00+0.0123M0.5、(η:25℃における動粘度、M:分子量))により分子量を算出する。ついで、この分子量とアミノ当量から、1分子あたりの平均のアミノ基数「p」が求まる。分子量、「p」、「q」が定まることで「o」の値を決定することができる。
アミノ変性シリコーン(3)としては、市販品を用いることができ、例えばGelest,Inc.社製の「AMS−132」;信越化学工業株式会社製の「KF−868」、「KF−8008」などが好適である。
油剤組成物は、非イオン系界面活性剤を含有してもよい。
非イオン系界面活性剤の含有量は、油剤組成物100質量%中、10〜40質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましい。非イオン系界面活性剤の含有量が10質量%未満であると、乳化しにくく、乳化物の安定性が悪くなる場合がある。一方、非イオン系界面活性剤の含有量が40質量%を超えると、油剤組成物が付着した前駆体繊維束の集束性が低下するうえ、該前駆体繊維束を焼成して得られる炭素繊維束の機械的物性が低下しやすくなる。
非イオン系界面活性剤としては、公知の様々な物質を用いることができるが、下記式(4)で示されるプロピレンオキサイド(PO)ユニットとエチレンオキサイド(EO)ユニットからなるブロック共重合型ポリエーテル、および/または、下記式(5)で示されるEOユニットからなるポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。
Figure 2012251267
Figure 2012251267
式(4)中、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜24のアルキル基、または炭素数3〜12のシクロアルキル基である。アルキル基は直鎖状であってもよく分岐鎖状であってもよい。
〜Rは、EO、POとの均衡、その他の油剤組成物成分を考慮して決定されるが、水素原子、あるいは炭素数1〜5の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、より好ましくは水素原子である。
式(4)中、xおよびzはEOの付加モル数を示し、yはPOの付加モル数を示す。
x、y、zはそれぞれ独立して、1〜500であり、10〜100が好ましい。
また、xおよびzの合計と、yとの比(x+z:y)が90:50〜10:50であることが好ましい。
また、ブロック共重合型ポリエーテルは、数平均分子量が2000〜10000であることが好ましい。数平均分子量が上記範囲内であれば、油剤組成物として要求される熱的安定性と水への分散性を共に有することが可能となる。
さらに、ブロック共重合型ポリエーテルは、100℃における動粘度が10〜500mm/sであることが好ましい。動粘度が上記範囲内であれば、油剤組成物の過剰な繊維内部への浸透を防ぎ、かつ前駆体繊維束に付与した後の乾燥工程において、油剤組成物の粘性により搬送ローラー等に単繊維が取られて巻きつくなどの工程障害が起こりにくくなる。
なお、ブロック共重合型ポリエーテルの動粘度は、アミノ変性シリコーンの動粘度と同様にして測定できる。
一方、式(5)中、Rは炭素数10〜20の炭化水素基である。炭素数が10未満であると、油剤組成物の熱的安定性が低下しやすくなると共に、適切な親油性を発現しにくくなる。一方、炭素数が20を超えると、油剤組成物の粘度が高くなったり、油剤組成物が固形化したりして、操業性が低下する場合がある。また、親水基とのバランスが悪くなり、乳化性能が低下する場合がある。
の炭化水素基としては、飽和鎖式炭化水素基や飽和環式炭化水素基等の飽和炭化水素基が好ましく、具体的にはデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。
これらの中でも、油剤組成物を効率よく乳化するために、その他の油剤組成物成分に馴染みやすい適度な親油性を付与できる点でドデシル基が特に好ましい。
式(5)中、rはEOの付加モル数を示し、3〜20であり、5〜15が好ましく、5〜10がより好ましい。rが3未満であると、水と馴染みにくくなり、乳化性能が得られにくくなる。一方、rが20を超えると、粘性が高くなり、油剤組成物の構成成分として用いた場合、得られる油剤組成物が付着した前駆体繊維束の分繊性が低下しやすくなる。
なお、Rは油剤組成物の親油性に関与する要素であり、rは油剤組成物の親水性に関与する要素である。従って、rの値は、Rとの組み合わせにより適宜決定される。
非イオン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば上記式(4)で示される非イオン系界面活性剤としてBASFジャパン株式会社製の「Pluronic PE6800」や、株式会社ADEKA製の「アデカプルロニック L−44」;上記式(5)で示される非イオン系界面活性剤として日光ケミカルズ株式会社の「NIKKOL BL−9EX」などが好適である。
油剤組成物は、必要に応じて酸化防止剤を含有してもよい。
酸化防止剤は公知の様々な物質を用いることができるが、フェノール系、硫黄系の酸化防止剤が好適である。
フェノール系酸化防止剤の具体例としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、トリエチレングリコールビス〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート等が挙げられる。
硫黄系の酸化防止剤の具体例としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート等が挙げられる。
これら酸化防止剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、酸化防止剤としては、アミノ変性シリコーン、特に上記式(3)で示されるアミノ変性シリコーン(3)に作用するものが特に好ましく、上記の中では、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンと、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]が好ましい。
酸化防止剤の含有量は、油剤組成物100質量%中、1〜5質量%が好ましく、1〜3質量%がより好ましい。酸化防止剤の含有量が1質量%未満であると、酸化防止効果が十分に得られにくくなる。そのため、油剤組成物中にシリコーン系化合物が含まれている場合、前駆体繊維束に付着したシリコーン系化合物が、熱ローラー等により加熱されて樹脂化する場合がある。シリコーン系化合物が樹脂化するとローラー等の表面に堆積しやすくなる。その結果、炭素繊維前駆体アクリル繊維束や炭素繊維束の製造過程において、前駆体繊維束や耐炎化繊維束がローラー等に巻き付いたり引っかかったりして工程障害を招き、操業性が低下する。一方、酸化防止剤の含有量が5質量%を超えると、酸化防止剤が油剤組成物中に均一に分散しにくくなる。
さらに、油剤組成物は、その特性向上を目的として、必要に応じて帯電防止剤を含有してもよい。
帯電防止剤としては公知の物質を用いることができる。帯電防止剤はイオン型と非イオン型に大別され、イオン型としてはアニオン系、カチオン系及び両性系があり、非イオン型ではポリエチレングリコール型、多価アルコール型がある。帯電防止の観点からイオン型が好ましく、中でも脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキシド付加物硫酸エステル塩、高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキシド付加物硫酸リン酸エステル塩、第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤、高級アルコールエチレンオキシド付加物ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステルなどが好ましく用いられる。
これら帯電防止剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
さらに、油剤組成物は、前駆体繊維束に付着させるための設備や使用環境によって、工程の安定性や油剤組成物の安定性、付着特性を向上させることを目的として、消泡剤、防腐剤、抗菌剤、浸透剤などの添加物を含有してもよい。
上述した油剤組成物を用いて、前駆体繊維束を油剤処理する。
油剤組成物を前駆体繊維束へ付与する際は、油剤組成物を水中に分散させて、平均粒子径が0.01〜0.5μmのミセルを形成させた水系乳化溶液(エマルション)を用いるのが好ましい。
ミセルの平均粒子径が上記範囲内であれば、前駆体繊維束の表面に油剤組成物をより均一に付与できる。
なお、水系乳化溶液中のミセルの平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、「LA−910」)を用いて測定することができる。
水系乳化溶液は、例えば以下のようにして調製できる。すなわち、エステル化合物(A)とアミノ変性シリコーンを混合し、この混合物に必要に応じて非イオン系界面活性剤(例えばブロック共重合型ポリエーテルなど)を加え、攪拌しながらさらに水を加えることで、油剤組成物が水に分散したエマルションが得られる。
また、酸化防止剤を含有させる場合は、酸化防止剤を予めエステル化合物に溶解しておくことが好ましい。
各成分の混合または水中分散は、プロペラ攪拌、ホモミキサー、ホモジナイザー等を使用して行うことができる。特に、高粘度のアミノ変性シリコーン(3)を用いる場合には、150MPa以上に加圧可能な超高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。
水系乳化溶液中の油剤組成物の濃度は、2〜40質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましく、20〜30質量%が特に好ましい。油剤組成物の濃度が2質量%未満であると、必要な量の油剤組成物を水膨潤状態の前駆体繊維束に付与することが困難となる。一方、油剤組成物の濃度が40質量%を超えると、水系乳化溶液が不安定となり乳化の破壊が起こりやすくなる。
油剤組成物を前駆体繊維束に付与する際、前記水系乳化溶液に、さらにイオン交換水を加えて所定の濃度に希釈して用いることが好ましい。
なお、「所定の濃度」は油剤処理時の前駆体繊維束の状態によって調整される。所定の濃度とした分散液を、以下「油剤処理液」という。
油剤組成物の前駆体繊維束への付与は、上述した浴中延伸後の水膨潤状態にある前駆体繊維束に油剤組成物の水系乳化溶液を付与することにより行うことができる。
浴中延伸の後に洗浄を行う場合は、浴中延伸および洗浄を行った後に得られる水膨潤状態にある繊維束に油剤組成物の水系乳化溶液を付与することもできる。
油剤組成物を水膨潤状態の前駆体繊維束に付与する方法としては、油剤組成物が水中に分散した水系乳化溶液に、イオン交換水を加えて所定の濃度に希釈して油剤処理液とした後、水膨潤状態の前駆体繊維束に付着させる手法を用いることができる。
油剤処理液を水膨潤状態の前駆体繊維束に付着させる方法としては、ローラーの下部を油剤処理液に浸漬させ、そのローラーの上部に前駆体繊維束を接触させるローラー付着法、ポンプで一定量の油剤処理液をガイドから吐出し、そのガイド表面に前駆体繊維束を接触させるガイド付着法、ノズルから一定量の油剤処理液を前駆体繊維束に噴射するスプレー付着法、油剤処理液の中に前駆体繊維束を浸漬した後にローラー等で絞って余分な油剤処理液を除去するディップ付着法等の公知の方法を用いることができる。
これらの方法の中でも、均一付着の観点から、前駆体繊維束に十分に油剤処理液を浸透させ、余分な処理液を除去するディップ付着法が好ましい。より均一に付着するためには油剤処理の工程を2つ以上の多段にし、繰り返し付与することも有効である。
<乾燥緻密化処理>
水系乳化溶液が付与された前駆体繊維束は、続く乾燥工程で乾燥緻密化される。
乾燥緻密化の温度は、繊維のガラス転移温度を超えた温度で行う必要があるが、実質的には含水状態から乾燥状態によって異なることもある。例えば温度が100〜200℃程度の加熱ローラーによる方法にて緻密乾燥化するのが好ましい。このとき加熱ローラーの個数は、1個でもよく、複数個でもよい。
<二次延伸処理>
緻密乾燥化した前駆体繊維束には、加熱ローラーにより加圧水蒸気延伸処理を施すのが好ましい。該加圧水蒸気延伸処理により、得られる炭素繊維前駆体アクリル繊維束の緻密性や配向度をさらに高めることができる。
ここで、加圧水蒸気延伸とは、加圧水蒸気雰囲気中で延伸を行う方法である。加圧水蒸気延伸は、高倍率の延伸が可能であることから、より高速で安定な紡糸が行えると同時に、得られる繊維の緻密性や配向度向上にも寄与する。
加圧水蒸気延伸処理においては、加圧水蒸気延伸装置直前の加熱ローラーの温度を120〜190℃、加圧水蒸気延伸における水蒸気圧力の変動率を0.5%以下に制御することが好ましい。このように加熱ローラーの温度および水蒸気圧力の変動率を制御することにより、繊維束になされる延伸倍率の変動、およびそれによって発生するトウ繊度の変動を抑制することができる。加熱ローラーの温度が120℃未満では前駆体繊維束の温度が十分に上がらず延伸性が低下しやすくなる。
加圧水蒸気延伸における水蒸気の圧力は、加熱ローラーによる延伸の抑制や加圧水蒸気延伸法の特徴が明確に現れるようにするため、200kPa・g(ゲージ圧、以下同じ。)以上が好ましい。この水蒸気圧は、処理時間との兼ね合いで適宜調節することが好ましいが、高圧にすると水蒸気の漏れが増大したりする場合があるので、工業的には600kPa・g程度以下が好ましい。
乾燥緻密化処理および加熱ローラーによる二次延伸処理を経て得られる炭素繊維前駆体アクリル繊維束は、室温のローラーを通し、常温の状態まで冷却した後にワインダーでボビンに巻き取られる、あるいはケンスに振込まれて収納される。
そして、炭素繊維前駆体アクリル繊維束は焼成工程に移され、炭素繊維束となる。
<炭素繊維前駆体アクリル繊維束>
このようにして得られる本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維束は、油剤組成物が乾燥繊維質量に対して0.41〜2.0質量%付着しいていることが好ましく、より好ましくは0.5〜1.5質量%である。油剤組成物の付着量が0.41質量%未満であると、油剤組成物本来の機能を十分に発現することが困難となる場合がある。一方、油剤組成物の付着量が2.0質量%を超えると、過剰に付着した油剤組成物が、焼成工程において高分子化して、単繊維間の接着の誘因となる場合がある。
ここで、「乾燥繊維質量」とは、乾燥緻密化処理された後の前駆体繊維束の乾燥繊維質量のことである。
また、炭素繊維前駆体アクリル繊維束は、エステル化合物(A)が乾燥繊維質量に対して0.4〜1.5質量%付着していることが好ましく、より好ましくは0.5〜1.5質量%である。エステル化合物(A)の付着量が0.4質量%以上であれば、油剤組成物本来の機能を十分に発現しやすくなる。一方、エステル化合物(A)の付着量が1.5質量%以下であれば、過剰に付着した油剤組成物が、焼成工程において高分子化して、単繊維間の接着の誘因となることを抑制しやすくなる。
また、炭素繊維前駆体アクリル繊維束は、アミノ変性シリコーンが乾燥繊維質量に対して0.01〜0.5質量%付着していることが好ましく、より好ましくは0.3〜0.5質量%である。アミノ変性シリコーンの付着量が0.01質量%以上であれば、耐炎化工程において十分な融着防止効果が得られやすく、良好な機械的物性が得られやすくなる。一方、アミノ変性シリコーンの付着量が0.5質量%以下であれば、焼成工程において前駆体繊維束に付着したシリコーン化合物から発生・飛散するケイ素化合物を減少でき、工業的な生産性や炭素繊維束の品質の低下を抑制しやすくなる。
さらに、油剤組成物が非イオン系界面活性剤や酸化防止剤を含有する場合、炭素繊維前駆体アクリル繊維束は、非イオン系界面活性剤が乾燥繊維質量に対して0.1〜0.3質量%付着していることが好ましく、酸化防止剤が乾燥繊維質量に対して0.01〜0.1質量%付着していることが好ましい。非イオン系界面活性剤の付着量が上記範囲内であれば、油剤組成物の水系乳化溶液(エマルション)が調製しやすく、過剰な界面活性剤により油剤処理槽で泡立ちが起こったり、繊維束の集束性を低下させたりすることを抑制できる。また、酸化防止剤の付着量が上記範囲内であれば、酸化防止効果が十分に得られ、前駆体繊維束の製造過程において前駆体繊維束に付着した上記エステル化合物(A)が熱ロール等により加熱されて酸化されることがない。加えて、油剤組成物の水系乳化溶液(エマルション)を調製する際にも影響を与えにくい。
油剤組成物の付着量は、以下のようにして求められる。
メチルエチルケトンによるソックスレー抽出法に準拠し、90℃のメチルエチルケトンに炭素繊維前駆体アクリル繊維束を8時間浸漬させて油剤組成物を抽出し、抽出前の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の質量W、および抽出後の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の質量Wをそれぞれ測定し、下記式(i)により油剤組成物の付着量を求める。
油剤組成物の付着量(質量%)=(W−W)/W×100 ・・・(i)
なお、炭素繊維前駆体アクリル繊維束に付着した油剤組成物に含まれる各成分の付着量は、油剤組成物の付着量と、油剤組成物の組成から算出できる。
また、炭素繊維前駆体アクリル繊維束に付着した油剤組成物の構成は、油剤処理槽中の油剤組成物の収支バランスから、調製した油剤組成物の構成と同じであることが好ましい。
以上説明したように、本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維束は、特定のエステル化合物(A)とアミノ変性シリコーンが付着しているので、集束性に優れる。さらに、焼成工程において単繊維間の融着を防止し、かつケイ素化合物の生成やシリコーン分解物の飛散を抑制できるので、操業性、工程通過性が著しく改善され、工業的な生産性を維持できる。従って、機械的物性に優れた炭素繊維束を生産性よく得ることができる。
このように、本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維束によれば、従来のシリコーン系油剤の問題と、シリコーンの含有率を低減した、あるいは非シリコーン成分のみの油剤組成物の問題を共に解決できる。
本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維束を焼成して得られる炭素繊維束は、機械的物性に優れ、高品質であり、様々な構造材料に用いられる繊維強化樹脂複合材料に用いる強化繊維として好適である。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらによって限定されるものではない。
本実施例に用いた各成分、および各種測定方法、評価方法は以下の通りである。
[成分]
<エステル化合物(A)>
・A−1:1,4−シクロヘキサンジメタノールと、オレイン酸(モル比1.0:2.0)から成るエステル化合物(上記式(1)の構造で、RおよびRが共に炭素数17のアルケニル基(ヘプタデセニル基)であり、nが1であるエステル化合物)
・A−2:1,4−シクロヘキサンジメタノールと、オレイン酸と、オレイン酸を二量化したダイマー酸(モル比1.0:2.5:0.75)から成るエステル化合物(上記式(2)の構造で、RおよびRが共に炭素数17のアルケニル基(ヘプタデセニル基)であり、Rが炭素数34のアルケニル基(テトラトリアコンテニル基)の炭素原子から水素を1つ取除いた置換基であり、mが1であるエステル化合物)
・A−3:1,4−シクロヘキサンジメタノールとオレイン酸とカプリル酸(モル比1.0:0.5:1.5)から成るエステル化合物(上記式(1)の構造で、Rが炭素数17のアルケニル基(ヘプタデセニル基)であり、Rが炭素数7のアルキル基(n−ヘプチル基)であり、nが1であるエステル化合物)
<芳香族エステル>
・B−1:ポリオキシエチレンビスフェノールAラウリン酸エステル(花王株式会社製、製品名:エキセパールBP−DL)
・B−2:ジオクチルフタレート(シグマアルドリッチ社製、製品コード:D201154)
<脂肪族エステル>
・C−1:ポリエチレングリコールジアクリレート(日本油脂株式会社製、製品名:ブレンマー ADE150)
・C−2:ペンタエリスリトールテトラステアレート(日本油脂株式会社製、製品名:ユニスター H−476)
<アミノ変性シリコーン>
・D−1:上記式(3)の構造で、25℃における粘度が90mm/s、アミノ当量が2500g/molであるアミノ変性シリコーン(Gelest,Inc.製、商品名:AMS−132)
・D−2:上記式(3)の構造で、25℃における粘度が110mm/s、アミノ当量が5000g/molであるアミノ変性シリコーン(信越化学工業株式会社製、商品名:KF−868)
・D−3:上記式(3)の構造で、25℃における粘度が450mm/s、アミノ当量が5700g/molであるアミノ変性シリコーン(信越化学工業株式会社製、商品名:KF−8008)
・D−4:25℃における粘度が10000mm/s、アミノ当量が7000g/molである1級及び1、2級アミンを側鎖に持つアミノ変性シリコーン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名:TSF4707)
<非イオン系界面活性剤>
・E−1:上記式(4)の構造で、x=75、y=30、z=75、RおよびRが共に水素原子であるPO/EOブロック共重合型ポリエーテル(BASFジャパン株式会社製、商品名:Pluronic PE6800)
・E−2:上記式(4)の構造で、x=10、y=20、z=10、RおよびRが共に水素原子であるPO/EOブロック共重合型ポリエーテル(株式会社ADEKA製、商品名:アデカプルロニック L−44)
・E−3:ノナエチレングリコールドデシルエーテル(日光ケミカルズ株式会社、商品名:NIKKOL BL−9EX)
<酸化防止剤>
・テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(株式会社エーピーアイ コーポレーション製、商品名:トミノックスTT)
[測定・評価]
<油剤付着量の測定>
炭素繊維前駆体アクリル繊維束を105℃で1時間乾燥させた後、メチルエチルケトンによるソックスレー抽出法に準拠し、90℃のメチルエチルケトンに8時間浸漬して付着した油剤組成物を溶媒抽出した。抽出前の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の質量W、および抽出後の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の質量Wをそれぞれ測定し、上記式(i)により油剤組成物の付着量を求めた。
<集束性の評価>
炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造過程の最終ローラー、すなわち該繊維束をボビンに巻き取る直前のローラー上での炭素繊維前駆体アクリル繊維束の状態を目視にて観察し、以下の評価基準にて集束性を評価した。
○:集束しており、トウ幅が一定で、隣接する繊維束と接触しない。
△:集束しているが、トウ幅が一定ではない、あるいはトウ幅が広い。
×:繊維束中に空間があり、集束していない。
<操業性の評価>
炭素繊維前駆体アクリル繊維束を24時間連続して製造したときに、搬送ローラーへ単繊維が巻き付き、除去した頻度により操業性を評価した。評価基準は以下の通りとした。
○:除去回数(回/24時間)が1回以下。
△:除去回数(回/24時間)が2〜5回。
×:除去回数(回/24時間)が6回以上。
<単繊維間融着数の測定>
炭素繊維束を長さ3mmに切断し、アセトン中に分散させ、10分間攪拌した後の全単繊維数と、単繊維同士が融着している数(融着数)を計数し、単繊維100本当たりの融着数を算出し、以下の評価基準にて評価した。
○:融着数(個/100本)が1個以下。
×:融着数(個/100本)が1個超。
<ストランド強度の測定>
炭素繊維束の製造を開始し、定常安定化した状態で炭素繊維束のサンプリングを行い、JIS−R−7608に規定されているエポキシ樹脂含浸ストランド法に準じて、炭素繊維束のストランド強度を測定した。なお、測定回数は10回とし、その平均値を評価の対象とした。
<Si飛散量の測定>
耐炎化工程におけるシリコーン由来のケイ素化合物飛散量は、炭素繊維前駆体アクリル繊維束と、それを耐炎化した耐炎化繊維束のケイ素(Si)含有量をICP発光分析法により測定し、それらの差から計算されるSi量の変化を耐炎化工程で飛散したSi量(Si飛散量)とし、評価の指標とした。
具体的には、炭素繊維前駆体アクリル繊維束および耐炎化繊維束をそれぞれ鋏で細かく粉砕した試料を密閉るつぼに50mg秤量し、粉末状としたNaOH、KOHを各0.25g加え、マッフル炉にて210℃で150分間加熱分解した。これを蒸留水で溶解し、100mLに定容したものを測定試料として用い、ICP発光分析法にて各測定試料のSi含有量を求め、下記式(ii)によりSi飛散量を求めた。ICP発光分析装置には、サーモエレクトロン株式会社製の「IRIS Advantage AP」を用いた。
Si飛散量(mg/kg)=炭素繊維前駆体アクリル繊維束のSi含有量−耐炎化繊維束のSi含有量 ・・・(ii)
[実施例1]
<油剤組成物の調製>
予め酸化防止剤を溶解させたエステル化合物(A−1)に、非イオン系界面活性剤(E−1〜E−3)を混合攪拌し、そこにアミノ変性シリコーン(D−1)を加え、油剤組成物の濃度が30質量%になるようにイオン交換水をさらに加え、ホモミキサーで乳化した。この状態でのミセルの平均粒子径をレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、商品名:LA−910)を用いて測定したところ、2μm程度であった。
その後、さらに高圧ホモジナイザーにより、ミセルの平均粒子径が0.2μm以下になるまで分散し、油剤組成物の水系乳化溶液(エマルション)を得た。
油剤組成物中の各成分の種類と配合量(質量%)を表1に示す。
<炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造>
油剤組成物を付着させる前駆体繊維束は、次の方法で調製した。アクリロニトリル系共重合体(組成比:アクリロニトリル/アクリルアミド/メタクリル酸=96/3/1(質量比))をジメチルアセトアミドに溶解し、紡糸原液を調製し、ジメチルアセトアミド水溶液を満たした凝固浴中に孔径(直径)50μm、孔数12000の紡糸ノズルより吐出し凝固糸とした。凝固糸は水洗槽中で脱溶媒するとともに3倍に延伸して水膨潤状態の前駆体繊維束とした。
先に得られた油剤組成物の水系乳化溶液をイオン交換水で希釈して、油剤組成物の濃度が1.5質量%になるように調整した油剤処理液を満たした油剤処理槽に、水膨潤状態の前駆体繊維束を導き、水系乳化溶液を付与させた。
その後、水系乳化溶液が付与された前駆体繊維束を表面温度180℃のローラーにて乾燥緻密化した後に、圧力0.2MPaの水蒸気中で5倍延伸を施し、炭素繊維前駆体アクリル繊維束を得た。
製造工程における集束性を評価し、得られた炭素繊維前駆体アクリル繊維束の油剤付着量を測定した。また、油剤付着量の測定値と油剤組成物の組成から、各成分の付着量を求めた。これらの結果を表1に示す。さらに、炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造過程における操業安定性の評価を行った結果も合わせて表1に示す。
<炭素繊維束の製造>
得られた炭素繊維前駆体アクリル繊維束を、220〜260℃の温度勾配を有する耐炎化炉に通して耐炎化し、耐炎化繊維束とした。引き続き、該耐炎化繊維束を窒素雰囲気中で400〜1300℃の温度勾配を有する炭素化炉で焼成して炭素繊維束とした。
得られた炭素繊維束の単繊維間融着数、ストランド強度、および耐炎化工程におけるSi飛散量を測定した。結果を表1に示す。
[実施例2〜6]
油剤組成物を構成する各成分の種類と配合量を表1に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして油剤組成物を調製し、炭素繊維前駆体アクリル繊維束および炭素繊維束を製造し、各測定および評価を実施した。結果を表1に示す。
[比較例1〜10]
油剤組成物を構成する各成分の種類と配合量を表2に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして油剤組成物を調製し、炭素繊維前駆体アクリル繊維束および炭素繊維束を製造し、各測定および評価を実施した。結果を表2に示す。
Figure 2012251267
Figure 2012251267
表1から明らかなように、各実施例の場合、油剤付着量は適正な量であった。また、炭素繊維前駆体アクリル繊維束の集束性、その製造過程の操業性は良好であった。全ての実施例において、炭素繊維束を連続的に製造していく上で、工程上何ら問題が無い状況であった。
また、各実施例で得られた炭素繊維束は、単繊維間の融着数が実質的に無く、ストランド強度が高い数値を示し、機械的物性に優れていた。さらに、焼成工程におけるSi飛散量も少なく、焼成工程における工程負荷が少なく良好であった。
なお、油剤組成物中のアミノ変性シリコーン(D−1)の含有量が40質量%である実施例4、油剤組成物中のアミノ変性シリコーン(D−1)の含有量が35質量%である実施例6の場合、他の実施例に比べて、焼成工程においてケイ素化合物が多く飛散したが、問題となるレベルではなかった。
また、炭素繊維束のストランド強度は、油剤組成物の成分の種類や配合量により差が見られた。具体的には、1,4−シクロヘキサンジメタノールとオレイン酸とダイマー酸(モル比1.0:2.5:0.75)から成るエステル化合物(A−2)を用いた場合(実施例2)が、炭素繊維束のストランド強度が高かった。さらに、同じエステル化合物(A−2)を用い、アミノ変性シリコーン(D−1)の含有量を40質量%とした場合(実施例4)、炭素繊維束のストランド強度が高かった。
実施例6は、アミノ変性シリコーン(D−1)の含有量が比較的高いが、他の実施例と比較して同等の炭素繊維束のストランド強度であった。これは、酸化防止剤の添加量が他の実施例と比較して多かったことが、炭素繊維束のストランド強度発現の支障になったためと考えられる。
一方、表2から明らかなように、アミノ変性シリコーンを含有しない比較例1,2は、各実施例に比べて炭素繊維束のストランド強度が低かった。
エステル化合物(A)の代わりにポリオキシエチレンビスフェノールAラウリン酸エステル(B−1)を用いた比較例3の場合、得られた炭素繊維前駆体アクリル繊維束の油剤付着量は適正な量であり、集束性も良好で、焼成工程におけるSi飛散量が少なく良好であったが、操業性がやや悪かった。また、炭素繊維束は単繊維間の融着数が多く、ストランド強度が各実施例と比較して著しく劣っていた。
エステル化合物(A)の代わりにジオクチルフタレート(B−2)を用いた比較例4、ポリエチレングリコールジアクリレート(C−1)を用いた比較例5、ペンタエリストールテトラステアレート(C−2)を用いた比較例6の場合は、焼成工程におけるSi飛散量は少なく良好であったものの、得られた炭素繊維前駆体アクリル繊維束の集束性や、その製造過程における操業性が著しく悪く、工業的に連続製造することは困難であった。また、得られた炭素繊維束は単繊維間の融着数が多く、ストランド強度が各実施例と比較して著しく劣っていた。
エステル化合物(A)の代わりにポリオキシエチレンビスフェノールAラウリン酸エステル(B−1)を用い、アミノ変性シリコーンを含有しない比較例7の場合、得られた炭素繊維前駆体アクリル繊維束の集束性は良好で、焼成工程におけるSi飛散は無く良好であったが、得られた炭素繊維束は単繊維間の融着数が多く、ストランド強度は各実施例と比較して著しく低かった。
エステル化合物(A)の代わりにペンタエリストールテトラステアレート(C−2)を用い、アミノ変性シリコーンを含有しない比較例8の場合、焼成工程におけるSi飛散は無く良好であったが、得られた炭素繊維前駆体アクリル繊維束の集束性や、その製造過程における操業性が悪く、工業的に連続製造することは困難であった。また、得られた炭素繊維束は単繊維間の融着数が多く、ストランド強度が著しく低く、良質な炭素繊維束を得ることは困難であった。
アミノ変性シリコーンを主成分として用いた比較例9、10の場合、得られた炭素繊維前駆体アクリル繊維束の集束性、その製造過程の操業性、および炭素繊維束の融着数評価や、ストランド強度は各実施例と同等レベルで良好であったが、焼成工程におけるSi飛散量が極めて多く、工業的に連続して生産するためには焼成工程への負荷が大きいという問題があった。
本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維束は、焼成工程での単繊維間の接着を効果的に抑制できる。さらに、シリコーン系油剤を使用する場合に発生する操業性の低下を抑制でき、かつ機械的強度の高い炭素繊維束を得ることができる。すなわち、本発明は炭素繊維の高性能化と操業安定性とを共に向上させることができる炭素繊維前駆体アクリル繊維束を得ることができる。
この炭素繊維前駆体アクリル繊維束から得られた炭素繊維束は、プリプレグ化したのち複合材料に成形することもできる。また、この炭素繊維束を用いた複合材料は、ゴルフシャフトや釣り竿などのスポーツ用途、さらには構造材料として自動車や航空宇宙用途、また各種ガス貯蔵タンク用途などに好適に用いることができ、有用である。

Claims (8)

  1. 下記式(1)で示されるエステル化合物(A1)および/または下記式(2)で示されるエステル化合物(A2)と、アミノ変性シリコーンとが付着した、炭素繊維前駆体アクリル繊維束。
    Figure 2012251267
    (式(1)中、R〜Rはそれぞれ独立して、炭素数7〜21の炭化水素基であり、nは0または1である。)
    Figure 2012251267
    (式(2)中、RおよびRはそれぞれ独立して、炭素数7〜21の炭化水素基であり、Rは炭素数30〜38の炭化水素基であり、mは0または1である。)
  2. 乾燥繊維質量に対して、前記エステル化合物(A1)および/またはエステル化合物(A2)が0.4〜1.5質量%付着し、前記アミノ変性シリコーンが0.01〜0.5質量%付着した、請求項1に記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維束。
  3. 前記アミノ変性シリコーンが、下記式(3)で示されるアミノ変性シリコーンであり、かつ、25℃における動粘度が50〜500mm/s、アミノ当量が2000〜6000g/molである、請求項1または2に記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維束。
    Figure 2012251267
    (式(3)中、oおよびpは1以上の任意の数であり、qは1〜5である。)
  4. 非イオン系界面活性剤がさらに付着した、請求項1〜3のいずれか一項に記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維束。
  5. 前記非イオン系界面活性剤が、乾燥繊維質量に対して0.1〜0.3質量%付着した、請求項4に記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維束。
  6. 前記非イオン系界面活性剤の乾燥繊維質量に対する付着量が、前記エステル化合物(A1)および/または前記エステル化合物(A2)と、前記アミノ変性シリコーンの乾燥繊維質量に対する付着量の合計100質量部に対して、10〜30質量部である、請求項4に記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維束。
  7. 前記非イオン系界面活性剤が、下記式(4)で示されるブロック共重合型ポリエーテルおよび/または下記式(5)で示されるポリオキシエチレンアルキルエーテルである、請求項4〜6のいずれか一項に記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維束。
    Figure 2012251267
    (式(4)中、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜24の炭化水素基であり、x、y、zはそれぞれ独立して、1〜500である。)
    Figure 2012251267
    (式(5)中、Rは炭素数10〜20の炭化水素基であり、rは3〜20である。)
  8. 酸化防止剤が、乾燥繊維質量に対して0.01〜0.1質量%さらに付着した、請求項1〜7のいずれか一項に記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維束。
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