JP2020079390A - 油剤分散液の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】水、変性シリコーン、及び炭化水素系エステルを含有する油剤分散液を、一括で乳化して、油剤の平均粒子径及び油剤の粒子径分布が所望の範囲である油剤分散液が得られる、油剤分散液の製造方法に関する。【解決手段】水、変性シリコーン、及び炭化水素系エステルを含有する油剤分散液の製造方法であり、下記工程1及び工程2をこの順で有し、工程1で得られた油剤混合液の粘度が0.1Pa・s以上であり、工程2において、ローター及びステーターを有する分散機により付与される剪断速度が2.5×104/s以上であり、得られる油剤分散液中の油剤の平均粒子径が0.5μm以下である、油剤分散液の製造方法。工程1:水、変性シリコーン、及び炭化水素系エステルを含有する油剤混合液を調製する工程工程2:該油剤混合液をローター及びステーターを有する分散機にて分散し、油剤分散液を得る工程【選択図】なし

Description

本発明は、油剤分散液の製造方法に関する。
従来から、2種以上の油剤が分散している油剤分散液は、種々の分野で使用されており、その一例として、炭素繊維前駆体用油剤処理液が挙げられる。
炭素繊維束の製造方法として、アクリル繊維等からなる炭素繊維前駆体アクリル繊維束(以下、「前駆体繊維束」ともいう。)を200℃以上400℃以下の酸化性雰囲気下で加熱処理することにより耐炎化繊維束に転換し(耐炎化工程)、引き続いて1,000℃以上の不活性雰囲気下で炭素化し(炭素化工程)、更に、2,000℃以上の不活性雰囲気下で黒鉛化して(黒鉛化工程)、炭素繊維束を得る方法が知られている。この方法で得られた炭素繊維束は、優れた機械的物性を有することにより、例えば、複合材料用の強化繊維として工業的に広く利用されている。
炭素繊維束の製造方法において、前駆体繊維束を耐炎化繊維束に転換する耐炎化工程で単繊維間に融着が発生し、耐炎化工程及びそれに続く工程において、毛羽や束切れといった工程障害が発生する場合があった。この単繊維間の融着を防止する方法として、前駆体繊維束の表面に油剤処理液を付与する方法が知られており、多くの油剤処理液が検討されてきた。
例えば、特許文献1には、特定のヒドロキシ安息香酸エステル、特定のアミノ変性シリコーン、及び前記ヒドロキシ安息香酸エステルと相溶し、空気雰囲気下での熱質量分析で300℃における残質量率が70質量%以上100質量%以下であり、かつ100℃で液体である有機化合物(X)を含む炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤が記載されている。
更に、特許文献1には、当該油剤及び非イオン系界面活性剤を含有する炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤組成物が水中で分散している、炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤処理液が記載されている。
また、例えば、特許文献2には、処理剤が表面に付着したアクリル系繊維束であって、該処理剤が、特定のシリコーンである[A]成分と特定の分岐型エステルである[B]成分を該処理剤中に60〜100質量%含み、該処理剤中の[A]成分と[B]成分の合計の付着量が、該処理剤が付着される前のアクリル系繊維束100質量部に対し0.05〜3.0質量部であり、かつ、該処理剤中の[A]成分と[B]成分との質量比率が[A]:[B]=30:70〜70:30の範囲であることを特徴とする炭素繊維前駆体アクリル系繊維束が記載されている。
特開2016−56497号公報 特開2011−202336号公報
前述した炭素繊維前駆体用油剤処理液等は、油滴が水中に分散した水系乳化液(以下、「O/W型エマルション」ともいう。)の態様で用いられるが、水中で油剤が非常に小さな粒子径にまで微細化された状態で乳化(以下、「微細乳化」ともいう。)されている必要がある。
異なった種類の相溶しない油剤が一定の粒子径以下に微細乳化された炭素繊維前駆体用油剤処理液を製造するためには、例えば、前述した特許文献1及び2に開示されているように、所望の粒子径になるように、ホモミキサーで処理してから、更に高圧ホモジナイザーを用い、高機械力を加えながら、微細乳化する方法が用いられている。
これは、油剤同士が混合しないため、まず、各々の油剤を、ホモミキサーで乳化させておいてから、高圧ホモジナイザーで乳化液同士を均一化するためと考えられる。
しかしながら、従来の方法では、装置が限定されており、操作が煩雑であると共に、エネルギー的にも不利であり、改善の余地があった。
本発明は、水、変性シリコーン、及び炭化水素系エステルを含有する油剤分散液を、一括で乳化して、油剤の平均粒子径及び油剤の粒子径分布が所望の範囲である油剤分散液が得られる、油剤分散液の製造方法に関する。
本発明者らは、特定の粘度を有する油剤混合液を、特定の撹拌条件で撹拌することで、前記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、次の〔1〕に関する。
〔1〕 水、変性シリコーン、及び炭化水素系エステルを含有する油剤分散液の製造方法であり、下記工程1及び工程2をこの順で有し、工程1で得られた油剤混合液の粘度が0.1Pa・s以上であり、工程2において、ローター及びステーターを有する分散機により付与される剪断速度が2.5×10/s以上であり、得られる油剤分散液中の油剤の平均粒子径が0.5μm以下である、油剤分散液の製造方法。
工程1:水、変性シリコーン、及び炭化水素系エステルを含有する油剤混合液を調製する工程
工程2:該油剤混合液をローター及びステーターを有する分散機にて分散し、油剤分散液を得る工程
本発明によれば、水、変性シリコーン、及び炭化水素系エステルを含有する油剤分散液を、一括で乳化して、油剤の平均粒子径及び油剤の粒子径分布が所望の範囲である油剤分散液が得られる、油剤分散液の製造方法を提供することができる。
[油剤分散液の製造方法]
本発明の油剤分散液の製造法は、水、変性シリコーン、及び炭化水素系エステルを含有する油剤分散液の製造方法であり、下記工程1及び工程2をこの順で有し、工程1で得られた油剤混合液の粘度が0.1Pa・s以上であり、工程2において、ローター及びステーターを有する分散機により付与される剪断速度が2.5×10/s以上であり、得られる油剤分散液中の油剤の平均粒子径が0.5μm以下である。なお、以下の説明において、本発明の製造方法で得られた油剤分散液を、「本発明の油剤分散液」ともいう。本発明の油剤分散液は、種々の用途に使用可能であるが、これらの中でも、炭素繊維前駆体用油剤処理液に好適に使用される。本発明の油剤分散液は、油剤として、少なくとも変性シリコーン(以下、「成分(A)」ともいう。)及び炭化水素系エステル(以下、「成分(B)」ともいう。)を含有する。油剤とは、水への溶解性が低く、水系分散液とした場合に、水にО/W型エマルションで分散可能な成分を意味する。また、油剤を構成する各成分を油ともいう。
工程1:水、変性シリコーン、及び炭化水素系エステルを含有する油剤混合液を調製する工程
工程2:該油剤混合液をローター及びステーターを有する分散機にて分散し、油剤分散液を得る工程
一般に、2種以上の油剤を含有する油剤分散液を製造する過程でO/W型エマルションを製造する際には、それぞれの油剤を分散液として、これを混合することが行われている。これは、2種以上の油剤を最初に油剤混合液としてから分散機で分散すると、それぞれが異なる分散径に分散されてしまうためである。また、別々に分散してから混合する方法でも、別々に分散させた油剤の分散径を揃えることが困難であり、また、エネルギー効率及び生産効率の点でも問題があった。
しかし、本発明では、特定の粘度を有する油剤混合液を調製し、これを、特定の剪断速度を付与する分散機によって分散することで、驚くべきことに、油剤が所望の平均粒子径に微分散されていると共に、CV値が小さく、分散が均一である油剤分散液を得られることを見出した。
上記の効果が得られる詳細な機構は不明であるが、以下のように推定される。すなわち、異なる物性の油剤を乳化させると、いずれか一方の微細化が先に進行し、これにより、油剤を含有する液体組成物が増粘する。また、粘度の増加によって、同じ剪断速度であっても、処理液に加わる剪断応力が大きくなり、微細化しにくい油剤も微細化されやすくなると考えられる。そして、結果として、2種以上の油剤を分散していても、すべての油剤の微細化が同程度まで進行するものと推定される。
以下、本発明の製造方法で用いられる各成分、及び各工程等について順次説明する。
<変性シリコーン(成分(A))>
本発明において、油剤分散液は、油剤として、変性シリコーンを含有する。前記変性シリコーンとしては、例えば、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーンが挙げられ、耐熱性の観点から、好ましくはアミノ変性シリコーンである。
エポキシ変性シリコーンとしては、ポリジメチルシロキサンを基本構造とし、側鎖のメチル基の一部が変性されたものが好ましく用いられる。エポキシ変性基は、脂環式でもグリシジル型でもよいが、長期安定性の観点から、脂環式の化合物であることが好ましい。
ポリエーテル変性シリコーンとしては、例えば、ABn型ポリエーテル変性シリコーン(直鎖型にシリコーンとポリエーテル基が共重合されているタイプ)、側鎖型ポリエーテル変性シリコーン、両末端型ポリエーテル変性シリコーン、ポリエーテル基とアルキル基の両方が側鎖又は末端に導入されたアルキルポリエーテル変性シリコーン、側鎖型ポリエーテル変性シリコーンのポリエーテル鎖末端部分が脂肪族化合物又は脂肪酸化合物で封鎖されたもの、両末端型ポリエーテル変性シリコーンのポリエーテル鎖末端部分が脂肪族アルコール、又は脂肪酸で封鎖されたもの等が挙げられる。
アミノ変性シリコーンとしては、好ましくは25℃における動粘度が50mm/s以上500mm/s以下及び/又はアミノ当量が2,000g/mol以上8,000g/mol以下であるアミノ変性シリコーン(以下、成分(A−1)ともいう。)、又は下記式(1)で表されるアミノ変性シリコーン(以下、成分(A−2)ともいう。)が挙げられる。
成分(A−1)の25℃における動粘度が50mm/s以上であると、油剤分散液を炭素繊維前駆体用油剤処理液として使用した場合に、前駆体繊維束に十分な集束性を付与することができるため好ましい。また、該動粘度が500mm/s以下であると、油剤混合液の調製がし易く、より安定な油剤分散液が得られるため好ましい。
このような観点から、前記25℃における動粘度は、より好ましくは80mm/s以上、更に好ましくは120mm/s以上であり、そして、より好ましくは300mm/s以下、更に好ましくは200mm/s以下である。
当該動粘度は、JIS Z8803:2011に規定されている“液体の粘度測定方法”、又はASTM D 445−46Tに準拠して測定される値であり、例えば、ウベローデ粘度計を用いて測定できる。
また、成分(A−1)のアミノ当量が2,000g/mol以上であると、アミノ変性シリコーン1分子中のアミノ基の数が十分であり、アミノ変性シリコーンが十分な熱安定性を有し、油剤分散液を炭素繊維前駆体用油剤処理液として使用した場合に、紡糸工程及び焼成工程でトラブルを起こしにくいため好ましい。また、該アミノ当量が8,000g/mol以下であると、シリコーン1分子中のアミノ基の数が過剰とならず、油剤分散液を炭素繊維前駆体用油剤処理液として使用した場合に、アミノ変性シリコーンが前駆体繊維束と十分馴染み、油剤が均一に付着するため好ましい。したがって、前記アミノ当量が前記範囲内であれば、前駆体繊維束との馴染みやすさと、アミノ変性シリコーンの熱安定性を両立できるため好ましい。
このような観点から、前記アミノ当量は、より好ましくは2,500g/mol以上、更に好ましくは3,000g/mol以上であり、そして、より好ましくは7,000g/mol以下、更に好ましくは6,000g/mol以下である。
当該アミノ当量は、実施例に記載の方法により求められる。
成分(A−1)は、より好ましくは25℃における動粘度が50mm/s以上500mm/s以下であり、かつアミノ当量が2,000g/mol以上8,000g/mol以下であるアミノ変性シリコーンである。
成分(A−2)は、下記式(1)で表されるアミノ変性シリコーンである。
式(1)中、X及びYは、それぞれ独立に、メチル基、水酸基又はアミノ基を示す。
式(1)中、m及びnは、それぞれ独立に、1以上の任意の数であり、sは、1以上5以下の数であり、ジメチルシロキサンユニットとメチルアミノアルキルシロキサンユニットはランダムでもブロックでもよい。すなわち、式(1)で表されるアミノ変性シリコーンは、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。また、nが2以上の任意の数である場合、複数存在するsは、互いに同一でも異なっていてもよい。
式(1)中、mは1以上の任意の数であることが好ましく、より好ましくは10以上、更に好ましくは50以上であり、そして、好ましくは300以下、より好ましくは200以下である。
式(1)中、nは1以上の任意の数であることが好ましく、より好ましくは2以上であり、そして、好ましくは10以下、より好ましくは5以下である。
式(1)中のm及びnが前記範囲内であれば、前記成分(A−2)が十分な耐熱性を得ることができる。
また、mが10以上であると、前記成分(A−2)の十分な耐熱性が得られ、油剤分散液を炭素繊維前駆体用油剤処理液として使用した場合に、単繊維間の融着を効果的に防止することができるためより好ましい。そして、mが300以下であれば、油剤混合液の調製が容易となり、より安定な油剤分散液が得られるため好ましい。
また、nが2以上であると、油剤分散液を炭素繊維前駆体用油剤処理液として使用した場合に、前駆体繊維束と十分な親和性が得られ、単繊維間の融着を効果的に防止することができるため好ましい。そして、nが10以下であると、前記成分(A−2)が十分な耐熱性を有するため、単繊維間の融着を防止することができるため好ましい。
式(1)中、sは好ましくは2以上4以下であり、より好ましくは3である。すなわち、式(1)中のアミノ変性部(アミノアルキル基)がアミノプロピル基であることがより好ましい。
なお、式(1)で表されるアミノ変性シリコーンは、複数の化合物の混合物である場合もある。
また、式(1)中のm、n、及びsの値は、それぞれ、成分(A−2)の25℃における動粘度が50mm/s以上500mm/s以下であり、かつアミノ当量が2,000g/mol以上8,000g/mol以下となる値を取ることが更に好ましい。すなわち、式(1)で表されるアミノ変性シリコーン(成分(A−2))は、25℃における動粘度が50mm/s以上500mm/s以下、かつアミノ当量が2,000g/mol以上8,000g/mol以下であることが更に好ましい。
式(1)で表されるアミノ変性シリコーンの25℃における動粘度は、前述した理由と同様の観点から、より好ましくは80mm/s以上、更に好ましくは120mm/s以上であり、そして、より好ましくは300mm/s以下、更に好ましくは200mm/s以下である。
また、式(1)で表されるアミノ変性シリコーンのアミノ当量は、前述した理由と同様の観点から、より好ましくは2,500g/mol以上、更に好ましくは3,000g/mol以上であり、そして、より好ましくは7,000g/mol以下、更に好ましくは6,000g/mol以下である。
なお、式(1)で表されるアミノ変性シリコーン(成分(A−2))が、25℃における動粘度が50mm/s以上500mm/s以下、かつアミノ当量が2,000g/mol以上8,000g/mol以下であるアミノ変性シリコーンである場合、当該アミノ変性シリコーンは、前記成分(A−1)に含まれる。
式(1)中のm及びnは、アミノ変性シリコーンの動粘度及びアミノ当量からの推算値として概算することができる。
m及びnを求める手順は、まず、アミノ変性シリコーンの動粘度を測定し、測定された動粘度の値からA.J.Barryの式(logη=1.00+0.0123M0.5、(η:25℃における動粘度、M:分子量))により分子量を算出する。次いで、この分子量とアミノ当量から、1分子あたりの平均のアミノ基数nが求まる。分子量及びn及びsが定まることでmの値を決定することができる。
本発明の油剤分散液において、前記油剤中、あるいは、成分(A)と成分(B)の合計含有量中、変性シリコーン(成分(A))の含有量は、油剤分散液を炭素繊維前駆体用油剤処理液として使用した場合に、前駆体繊維束に十分な集束性を付与する観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、より更に好ましくは25質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下、より更に好ましくは75質量%以下であり、好ましくは5質量%以上95質量%以下、より好ましくは10質量%以上90質量%以下、更に好ましくは20質量%以上80質量%以下、より更に好ましくは25質量%以上75質量%以下である。
また、変性シリコーンは、単独で用いてもよく、又は2種以上を組合せて用いてもよいが、成分(A)中、アミノ変性シリコーンの含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下であり、そして、より更に好ましくは100質量%である。
<炭化水素系エステル(成分(B))>
本発明において、油剤分散液は、油剤として、炭化水素系エステル(成分(B))を含有する。
炭化水素系エステルとしては、前駆体繊維束に十分な集束性を付与する観点から、好ましくは炭素数8以上22以下の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を有する、置換基を有していてもよい、芳香族化合物、脂肪族化合物、又は脂環式化合物であり、シロキサン結合を有さない。
置換基としては、エーテル基、水酸基、アミド基、アミノ基等が挙げられる。エステル基は、1以上有し、好ましくは3以下である。
炭化水素基の炭素数は、前駆体繊維束に十分な集束性を付与する観点から、好ましくは10以上、より好ましくは11以上、更に好ましくは12以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは20以下、より好ましくは19以下、更に好ましくは18以下である。
炭化水素系エステルの分子量は、前駆体繊維束に十分な集束性を付与する観点から、好ましくは100以上、より好ましくは200以上であり、同様の観点から、好ましくは1,000以下、より好ましくは500以下である。
本発明の油剤分散液において、前記油剤中、あるいは、成分(A)と成分(B)の合計含有量中、炭化水素系エスエル(成分(B))の含有量は、油剤分散液を炭素繊維前駆体用油剤処理液として使用した場合に、前駆体繊維束に十分な集束性を付与する観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、より更に好ましくは25質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下、より更に好ましくは75質量%以下であり、好ましくは5質量%以上95質量%以下、より好ましくは10質量%以上90質量%以下、更に好ましくは20質量%以上80質量%以下、より更に好ましくは25質量%以上75質量%以下である。
本発明の前記炭化水素系エステルとしては、油剤分散液を炭素繊維前駆体用油剤処理液として使用した場合に、前駆体繊維束に十分な集束性を付与する観点から、好ましくはヒドロキシ安息香酸エステル及びシクロヘキサンジカルボン酸エステルからなる群より選ばれる1種以上である。他の好ましい炭化水素系エステルとしては、分岐脂肪酸のモノエステル又はジエステルであり、ネオペンタン酸と2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールから得られるジエステル、ネオペンタン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールから得られるジエステル、イソノナン酸とネオペンチルグリコールから得られるジエステル、ネオペンタン酸イソステアリルエステル、ネオペンタン酸オクチルドデシルエステル、イソノナン酸イソトリデシルエステル、イソノナン酸イソデシルエステル、イソノナン酸イソノニルエステル、イソノナン酸2−エチルヘキシルエステル等が挙げられる。
(ヒドロキシ安息香酸エステル)
前記ヒドロキシ安息香酸エステル(以下、「成分(B−1)」ともいう。)は、好ましくは下記式(2)で表されるヒドロキシ安息香酸エステルである。
式(2)中、Rは炭素数8以上20以下の炭化水素基を示す。
の炭素数が8以上であれば、成分(B−1)の熱的安定性を良好に維持することができ、油剤分散液を炭素繊維前駆体用油剤処理液として使用した場合に、耐炎化工程で前駆体繊維束中の各繊維同士が融着することを十分に防止することができるため好ましい。また、Rの炭素数が20以下であれば、成分(B−1)の粘度が高くなりすぎず、成分(B−1)の固形化が抑制されて、成分(B−1)を含む油剤を含有する油剤混合液が調製し易くなり、得られる油剤分散液が前駆体繊維束に均一に付着するため好ましい。
このような観点から、Rの炭素数は、好ましくは11以上、より好ましくは12以上、更に好ましくは14以上であり、そして、好ましくは19以下、より好ましくは18以下である。
が取り得る前記炭化水素基としては、好ましくは、炭素数8以上20以下のアルキル基、炭素数8以上20以下のアルケニル基、及び炭素数8以上20以下のアルキニル基からなる群より選ばれる1種、より好ましくは炭素数8以上20以下のアルキル基又は炭素数8以上20以下のアルケニル基、更に好ましくは炭素数8以上20以下のアルケニル基が挙げられ、これらの炭化水素基が有する炭素数の好適範囲も前述したとおりである。また、該炭化水素基は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよい。
が取り得る前記アルキル基としては、例えば、2−エチルヘキシル基、1−メチルヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ウンデシル基、各種ドデシル基、各種トリデシル基、各種テトラデシル基、各種ヘキサデシル基、各種ヘプタデシル基、各種オクタデシル基、各種ノナデシル基、及び各種イコシル基等が挙げられる。
が取り得る前記アルケニル基としては、例えば、各種オクテニル基、各種ノネニル基、各種デセニル基、各種ウンデセニル基、各種ドデセニル基、各種テトラデセニル基、各種ペンタデセニル基、各種ヘキサデセニル基、各種ヘプタデセニル基、各種オクタデセニル基、各種ノナデセニル基、及び各種イコセニル基等が挙げられる。
が取り得る前記アルキニル基としては、例えば、各種オクチニル基、各種ノニニル基、各種デシニル基、各種ウンデシニル基、各種ドデシニル基、各種トリデシニル基、各種テトラデシニル基、各種ヘキサデシニル基、各種オクタデシニル基、各種ノナデシニル基、及び各種イコシニル基等が挙げられる。
ここで、「各種・・・基(「・・・」には置換基名が入る。)」の記載は、直鎖状、分岐状、環状、及びこれらの異性体までを含めた所定の炭素数を有する官能基を含むことを意味する。例えば、「各種オクタデシル基」には、n−オクタデシル基、イソオクタデシル基等が含まれる。また、アルケニル基であれば、二重結合の位置、並びに、cis型、trans型のいずれの構造をも含み、アルキニル基についても同様である。以下、本明細書中で「各種・・・基(「・・・」には置換基名が入る。)」の記載について、特に言及しない限り、同様である。
が取り得る前記炭化水素基としては、前述した中では、好ましくは炭素数14以上20以下のアルケニル基であり、より好ましくは各種オクタデセニル基であり、更に好ましくはオレイル基である。
また、式(2)で表されるヒドロキシ安息香酸エステルは、単独で用いてもよく、又は2種以上を組合せて用いてもよい。
成分(B−1)は、例えば、ヒドロキシ安息香酸(以下、「成分(b−1)」ともいう。)と、1価の脂肪族アルコール(以下、「成分(b−2)」ともいう。)、好ましくは炭素数8以上20以下の1価の脂肪族アルコールとを、無触媒又は錫化合物、チタン化合物等のエステル化触媒の存在下で縮合反応させることで得ることができる。該縮合反応は、不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。該縮合反応時の反応温度は、好ましくは160℃以上、より好ましくは180℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは230℃以下である。
該縮合反応に供する成分(b−1)の量と成分(b−2)の量との比〔b−2/b−1〕は、モル比で、好ましくは0.9以上、より好ましくは1.0以上であり、そして、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下である。なお、エステル化触媒を用いる場合は、縮合反応後、触媒を不活性化して、吸着剤により除去することが好ましい。
前記油剤中、あるいは、成分(A)と成分(B)の合計含有量中、成分(B−1)の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、より更に好ましくは25質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下、より更に好ましくは75質量%以下である。
また、成分(B−1)中、式(2)で表されるヒドロキシ安息香酸エステルの含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下であり、そして、より更に好ましくは100質量%である。
(シクロヘキサンジカルボン酸エステル)
前記シクロヘキサンジカルボン酸エステル(以下、「成分(B−2)」ともいう。)は、好ましくは下記式(3)で表されるシクロヘキサンジカルボン酸エステル(以下、「成分(B−2−1)」ともいう。)及び下記式(4)で表されるシクロヘキサンジカルボン酸エステル(以下、「成分(B−2−2)」ともいう。)からなる群より選ばれる1種以上であり、油剤分散液を炭素繊維前駆体用油剤処理液として使用した場合に、耐炎化工程で気散せずに安定して前駆体繊維束の表面に残存しやすい点から、より好ましくは下記式(3)で表されるシクロヘキサンジカルボン酸エステルである。
式(3)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数8以上22以下の炭化水素基を示す。Rは、炭素数2以上4以下のオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレングリコールから2つのヒドロキシ基を除いた残基、又は炭素数2以上10以下の2価の炭化水素基を示す。
式(3)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数8以上22以下の炭化水素基を示す。
及びRの炭素数が8以上であれば、油剤分散液を炭素繊維前駆体用油剤処理液として使用した場合に、耐炎化工程で前駆体繊維束中の各繊維同士が融着することを十分に防止することができるため好ましい。また、R及びRの炭素数が22以下であれば、成分(B−2−1)の粘度が高くなりすぎず、成分(B−2−1)の固形化が抑制されて、成分(B−2−1)を含む油剤が微分散した油剤分散液が調製し易くなり、得られる油剤分散液が前駆体繊維束に均一に付着するため好ましい。
このような観点から、R及びRの炭素数は、それぞれ独立に、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、更に好ましくは15以上であり、そして、好ましくは20以下、より好ましくは18以下である。
及びRは、互いに同じ構造であってもよく、互いに異なる構造であってもよく、好ましくはR及びRは、互いに同じ構造である。
及びRが取り得る前記炭化水素基としては、それぞれ独立に、好ましくは、炭素数8以上22以下のアルキル基、炭素数8以上22以下のアルケニル基、及び炭素数8以上22以下のアルキニル基からなる群より選ばれる1種、より好ましくは炭素数8以上22以下のアルキル基又は炭素数8以上22以下のアルケニル基、更に好ましくは炭素数8以上22以下のアルケニル基が挙げられ、これらの炭化水素基が有する炭素数の好適範囲も前述したとおりである。また、該炭化水素基は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよい。
及びRが取り得る前記アルキル基としては、例えば、前述のRが取りうる各種アルキル基に加えて、更に、各種ヘンイコシル基、及び各種ドコシル基が挙げられる。
及びRが取り得る前記アルケニル基としては、例えば、前述のRが取りうる各種アルケニル基に加えて、更に、各種ヘンイコセニル基、及び各種ドコセニル基が挙げられる。
及びRが取り得る前記アルキニル基としては、例えば、前述のRが取りうる各種アルキニル基に加えて、更に、各種ヘンイコシニル基、及び各種ドコシニル基が挙げられる。
及びRが取り得る前記炭化水素基としては、前述した中では、それぞれ独立に、好ましくは炭素数15以上20以下のアルケニル基であり、より好ましくは各種オクタデセニル基であり、更に好ましくはオレイル基であり、より更に好ましくはR及びRが共にオレイル基である。
式(3)中、Rは、炭素数2以上4以下のオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレングリコールから2つのヒドロキシ基を除いた残基、又は炭素数2以上10以下の2価の炭化水素基を示す。
がポリオキシアルキレングリコールから2つのヒドロキシ基を除いた残基の場合は、その残基を構成するオキシアルキレン基の炭素数が2以上、又はRが炭化水素基の場合は、その炭素数が2以上であれば、シクロヘキシル環に付加されたカルボキシ基とエステル化し、2つのシクロヘキシル環の間を架橋し、熱的安定性の高い物質を得やすくなるため好ましい。
また、Rがポリオキシアルキレングリコールから2つのヒドロキシ基を除いた残基の場合は、その残基を構成するオキシアルキレン基の炭素数が4以下であれば、又はRが炭化水素基の場合は、その炭素数が10以下であれば、式(3)で表されるシクロヘキサンジカルボン酸エステルの粘度が高くなりすぎず、該シクロヘキサンジカルボン酸エステルの固形化が抑制されて、該シクロヘキサンジカルボン酸エステルを含む油剤が微分散した油剤分散液が調製し易くなり、油剤分散液を炭素繊維前駆体用油剤処理液として使用した場合に、油剤分散液が前駆体繊維束に均一に付着するため好ましい。
がポリアルキレングリコールから2つのヒドロキシ基を除いた残基の場合、その残基を構成するオキシアルキレン基の炭素数は好ましくは4である。
また、Rが炭化水素基の場合は、炭素数は好ましくは5以上、より好ましくは6以上であり、そして、好ましくは8以下、より好ましくは7以下である。
成分(B−2−1)は、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸(以下、「成分(b−3)」ともいう。)と、炭素数8以上22以下の1価の脂肪族アルコール(以下、「成分(b−4)」ともいう。)と、炭素数2以上10以下の多価アルコール及びオキシアルキレン基の炭素数が2以上4以下であるポリオキシアルキレングリコールからなる群より選ばれる1種以上(以下、「成分(b−5)」ともいう。)との縮合反応により得られる。
したがって、式(3)中のR及びRは、脂肪族アルコールに由来する。
式(3)中のRは、オキシアルキレン基の炭素数が2以上4以下であるポリオキシアルキレングリコール、又は炭素数2以上10以下の多価アルコールに由来する。
がポリオキシアルキレングリコールに由来する場合、Rは、ポリオキシアルキレングリコールから2つのヒドロキシ基を除いた残基であり、例えば、−(AO)pb−1−A−で表わされる2価の基である(ここで、AOは炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基、Aは炭素数2以上4以下のアルキレン基、pbはポリアルキレンオキシグリコール1分子中に含まれるアルキレンオキシ基の数を示す。)。pbは、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、そして、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは8以下である。
該アルキレンオキシ基としては、例えば、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、テトラメチレンオキシ基、ブチレンオキシ基が挙げられる。
が炭素数2以上10以下の多価アルコールに由来する場合、Rは、直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和の2価の炭化水素基が好ましく、例えば、アルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基の任意の炭素原子から水素原子を1つ取除いた2価の基が好ましく挙げられる。炭素数は、前述のとおり、好ましくは5以上、より好ましくは6以上であり、そして、好ましくは8以下、より好ましくは7以下である。
に係る前記アルキル基としては、例えば、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、2−エチルヘキシル基、各種ノニル基、各種デシル基が挙げられる。
に係る前記アルケニル基としては、例えば、各種エテニル基、各種プロペニル基、各種ブテニル基、各種ペンテニル基、各種ヘキセニル基、各種ヘプテニル基、各種オクテニル基、各種ノネニル基、各種デセニル基等が挙げられる。
に係る前記アルキニル基としては、例えば、各種エチニル基、各種プロピニル基、各種ブチニル基、各種ペンチニル基、各種ヘキシニル基、各種ヘプチニル基、各種オクチニル基、各種ノニニル基、各種デシニル基等が挙げられる。
成分(B−2−1)は、例えば、成分(b−3)と、成分(b−4)と、成分(b−5)とを、無触媒又は錫化合物、チタン化合物等のエステル化触媒の存在下で縮合反応させることで得ることができる。該縮合反応は、不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。該縮合反応時の反応温度は、好ましくは160℃以上、より好ましくは180℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは230℃以下である。
該縮合反応に供する成分(b−3)の量に対する成分(b−4)の量の比〔b−4/b−3〕は、副反応を抑制する観点から、モル比で、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上であり、そして、好ましくは1.6以下、より好ましくは1.4以下、更に好ましくは1.2以下である。
また、該縮合反応に供する成分(b−3)の量に対する成分(b−5)の量の比〔b−5/b−3〕は、副反応を抑制する観点から、モル比で、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.4以上であり、そして、好ましくは0.6以下、より好ましくは0.55以下である。
また、該縮合反応に供する前記各成分の量の組合せとしては、いずれもモル比で、前記比〔b−4/b−3〕が0.8以上1.6以下、かつ前記比〔b−5/b−3〕が0.2以上0.6以下が好ましく、前記比〔b−4/b−3〕が0.9以上1.4以下、かつ前記比〔b−5/b−3〕が0.3以上0.55以下がより好ましく、前記比〔b−4/b−3〕が0.9以上1.2以下、かつ前記比〔b−5/b−3〕が0.4以上0.55以下が更に好ましい。
また、縮合反応に供するアルコール成分中、成分(b−4)の量に対する、成分(b−5)の量の比〔b−5/b−4〕は、モル比で、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.4以上であり、そして、好ましくは0.6以下である。
成分(b−3)としては、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のいずれでもよいが、合成のし易さ、耐熱性の点で、好ましくは1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である。
成分(B−2−1)のシクロヘキサンジカルボン酸部分の原料はシクロヘキサンジカルボン酸であってもよく、シクロヘキサンジカルボン酸の無水物(酸無水物)であってもよく、また、シクロヘキサンジカルボン酸と炭素数1以上3以下の短鎖アルコールとのエステルであってもよい。炭素数1以上3以下の短鎖アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール又はイソプロパノールが挙げられる。
当該エステルとしては、好ましくは前述した各シクロヘキサンジカルボン酸と炭素数1以上3以下の短鎖アルコールとのエステルであり、より好ましくはメタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロパノールからなる群より選ばれる1種以上と1,4−シクロヘキサンジカルボン酸とのエステル、更に好ましくは1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のジメチルエステルである。
成分(b−4)の炭素数は8以上22以下である。炭素数が8以上であれば、成分(B−2−1)の熱的安定性を良好に維持できるため、油剤分散液を炭素繊維前駆体用油剤処理液として使用した場合に、耐炎化工程で前駆体繊維束中における各繊維同士の融着を防止する効果が得られる。また、炭素数が22以下であれば、成分(B−2−1)の粘度が高くなりすぎず、成分(B−2−1)の固形化が抑制されて、成分(B−2−1)を含む油剤が微分散した油剤分散液が調製し易くなり、得られる油剤処理液が前駆体繊維束に均一に付着するため好ましい。
成分(b−4)の炭素数は、同様の観点から、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、更に好ましくは15以上であり、そして、好ましくは20以下、より好ましくは18以下である。
成分(b−4)としては、例えば、オクタノール、2−エチルヘキサノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、ドコサノール等のアルキルアルコール;オクテニルアルコール、ノネニルアルコール、デセニルアルコール、ウンデセニルアルコール、ドデセニルアルコール、テトラデセニルアルコール、ペンタデセニルアルコール、ヘキサデセニルアルコール、ヘプタデセニルアルコール、オクタデセニルアルコール、ノナデセニルアルコール、イコセニルアルコール、ヘンイコセニルアルコール、ドコセニルアルコール、オレイルアルコール、ガドレイルアルコール、2−エチルデセニルアルコール等のアルケニルアルコール;オクチニルアルコール、ノニニルアルコール、デシニルアルコール、ウンデシニルアルコール、ドデシニルアルコール、トリデシニルアルコール、テトラデシニルアルコール、ヘキサデシニルアルコール、ステアリニルアルコール、ノナデシニルアルコール、エイコシニルアルコール、ヘンイコシニルアルコール、ドコシニルアルコール等のアルキニルアルコール;等が挙げられる。これらの中でも油剤を水中に分散させた油剤処理液の調製のし易さ、油剤分散液を炭素繊維前駆体用油剤処理液として使用した場合に、紡糸工程において繊維搬送ローラーへ付着した場合に搬送ローラーに繊維が巻き付くなどの工程障害が起こりにくく、かつ所望の耐熱性を有するという、ハンドリング・工程通過性・性能のバランスから、好ましくはオレイルアルコールである。
これら脂肪族アルコールは、単独で用いてもよく、又は2種以上を組合せて用いてもよい。
成分(b−5)としては、炭素数2以上10以下の多価アルコールが挙げられ、該多価アルコールは、脂肪族アルコールでもよく、芳香族アルコールでもよく、また、飽和アルコールであってもよく、不飽和アルコールであってもよい。
該多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−イソプロピル−1,4−ブタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の2価アルコール;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、グリセリン等の3価アルコール;等が挙げられる。油剤分散液を炭素繊維前駆体用油剤処理液として使用した場合に、均一に油剤を前駆体繊維束に付着させる観点から、好ましくは2価アルコールであり、より好ましくは3−メチル−1,5−ペンタンジオールである。
成分(b−5)としては、前記オキシアルキレン基の炭素数が2以上4以下であるポリオキシアルキレングリコールが例示され、該ポリオキシアルキレングリコールは、オキシアルキレン基の炭素数が2以上4以下の繰り返し単位を有し、2つのヒドロキシ基を有し、好ましくは分子の両末端にヒドロキシ基を有する。オキシアルキレン基の炭素数が2以上であれば、成分(B−2−1)の熱的安定性を良好に維持できるので、油剤分散液を炭素繊維前駆体用油剤処理液として使用した場合に、耐炎化工程で前駆体繊維束中の各繊維同士が融着することを十分に防止することができる。また、オキシアルキレン基の炭素数が4以下であれば、成分(B−2−1)の粘度が高くなりすぎず、成分(B−2−1)の固形化が抑制されて、成分(B−2−1)を含む油剤が微分散した油剤分散液が調製し易くなり、得られる油剤分散液が前駆体繊維束に均一に付着するため好ましい。
前記ポリオキシアルキレングリコールとしては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシブチレングリコール等が挙げられる。オキシアルキレン基の平均付加モル数は、均一に油剤を繊維に付着させる観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、そして、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは8以下である。
前記炭素数2以上10以下の多価アルコール及びオキシアルキレン基の炭素数が2以上4以下であるポリオキシアルキレングリコールは、両方用いてもよく、いずれか一方を用いてもよい。
また、成分(B−2−2)を下記に示す。
式(4)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数8以上22以下の炭化水素基を示す。
及びRの炭素数が8以上であれば、耐炎化工程で前駆体繊維束中の各繊維同士が融着することを十分に防止することができるため好ましい。また、R及びRの炭素数が22以下であれば、成分(B−2−2)の粘度が高くなりすぎず、成分(B−2−2)の固形化が抑制されて、成分(B−2−2)を含む油剤が微分散したエマルションが調製し易くなり、得られる油剤処理液が前駆体繊維束に均一に付着するため好ましい。
このような観点から、R及びRの炭素数は、それぞれ独立に、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、更に好ましくは15以上であり、そして、好ましくは20以下、より好ましくは18以下である。
及びRは、互いに同じ構造であってもよく、互いに異なる構造であってもよい。
及びRが取り得る前記炭化水素基としては、それぞれ独立に、好ましくは、炭素数8以上22以下のアルキル基、炭素数8以上22以下のアルケニル基、及び炭素数8以上22以下のアルキニル基からなる群より選ばれる1種が挙げられ、これらの炭化水素基が有する炭素数の好適範囲も前述したとおりである。また、該炭化水素基は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよい。
及びRが取り得る前記アルキル基、前記アルケニル基及び前記アルキニル基としては、それぞれ、例えば、前述のR及びRが取り得る前記アルキル基、前記アルケニル基及び前記アルキニル基について例示した各基と同様のものが挙げられる。
成分(B−2−2)は、例えば、成分(b−3)と、成分(b−4)とを、無触媒又は錫化合物、チタン化合物等のエステル化触媒の存在下で縮合反応させることで得ることができる。該縮合反応は、不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。該縮合反応時の反応温度は、好ましくは160℃以上、より好ましくは180℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは230℃以下である。
該縮合反応に供する成分(b−3)の量に対する成分(b−4)の量の比〔b−4/b−3〕は、モル比で、好ましくは1.8以上、より好ましくは1.9以上であり、そして、好ましくは2.2以下、より好ましくは2.1以下である。
なお、エステル化触媒を用いる場合は、縮合反応後に、触媒を不活性化して、吸着剤により除去することが好ましい。
成分(B−2−2)の原料となり得る成分(b−3)は、成分(B−2−1)の原料となり得る成分(b−3)として例示したものと同様であり、その好適な態様も同様である。
また、成分(B−2−2)の原料となり得る成分(b−4)は、成分(B−2−1)の原料となり得る成分(b−4)として例示したものと同様であり、その好適な態様も同様である。
なお、成分(B−2)1分子中のシクロヘキシル環の数は、得られる油剤の粘度が低く、水中に分散し易くなり、かつ、得られる油剤分散液(O/W型エマルション)の安定性が良好になるため、好ましくは1又は2である。
また、成分(B−2−1)及び成分(B−2−2)は、それぞれ独立に、単独で又は2種以上を組合せて用いてもよく、成分(B−2−1)の1種以上と成分(B−2−2)の1種以上とを組合せて用いてもよい。
前記油剤中、あるいは成分(A)と成分(B)の合計含有量中、成分(B−2)の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、より更に好ましくは25質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下、より更に好ましくは75質量%以下である。
また、成分(B−2)中、成分(B−2−1)及び成分(B−2−2)からなる群より選ばれる1種以上の合計含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下であり、そして、より更に好ましくは100質量%である。
また、前記油剤中、あるいは成分(A)と成分(B)の合計含有量中、成分(B−2−1)及び成分(B−2−2)からなる群より選ばれる1種以上の合計含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、より更に好ましくは25質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下、より更に好ましくは75質量%以下である。
本発明において、変性シリコーン及び炭化水素系エステルは、互いに相溶しないことが好ましい。互いに相溶しない2種以上の油を含有する油剤を使用することにより、本発明の効果がより奏されるので好ましい。
ここで、互いに相溶しないとは、変性シリコーン及び炭化水素系エステルを、25℃において、体積比1:1で混合し、撹拌した際に、2つの成分の界面が目視で観察されるか否かによって判定可能である。詳細には、実施例に記載の方法により評価される。
また、成分(A)の変性シリコーンと、成分(B)の炭化水素系エステルの粘度の差は、異なった種類の相溶しない油剤を、一定の粒子径以下に微細乳化された炭素繊維前駆体用油剤処理液を製造する観点から、好ましくは0.1Pa・s以上であり、そして、好ましくは5Pa・s以下、より好ましくは4Pa・s以下、更に好ましくは3Pa・s以下である。
ここで、変性シリコーンとして、2種以上の変性シリコーンを含有する場合には、変性シリコーンの粘度は、それぞれの変性シリコーンの粘度の加重平均である。炭化水素系エステルについても同様である。
また、それぞれの粘度は、実施例に記載の方法により測定される。
前記成分(B)は、成分(B−1)及び成分(B−2)以外の油を含有していてもよい。該油としては、例えば、脂肪族エステルが例示される。
前記油剤中、成分(A)、成分(B−1)及び成分(B−2)の合計含有量は、前記油剤中、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下である。また、当該合計含有量は、より更に好ましくは100質量%である。
前記油剤中、成分(A)の変性シリコーンに対する成分(B)の炭化水素系エステルの質量比(炭化水素系エステル/変性シリコーン)は、低CV値の油剤分散液を作製する観点から、好ましくは5/95以上、より好ましくは10/90以上、更に好ましくは20/80以上、より更に好ましくは30/70以上、そして、好ましくは95/5以下、より好ましくは90/10以下、更に好ましくは80/20以下、より更に好ましくは70/30以下であり、好ましくは5/95以上95/5以下、より好ましくは10/90以上90/10以下、更に好ましくは20/80以上80/20以下、より更に好ましくは30/70以上70/30以下である。
また、前記油剤中、成分(A)の含有量に対する成分(B−1)と(B−2)との合計含有量の比〔{成分(B−1)+成分(B−2)}/成分(A)〕は、質量比で、低CV値の油剤分散液を作製する観点から、好ましくは5/95以上、より好ましくは10/90以上、更に好ましくは20/80以上、より更に好ましくは30/70以上、そして、好ましくは95/5以下、より好ましくは90/10以下、更に好ましくは80/20以下、より更に好ましくは70/30以下であり、好ましくは5/95以上95/5以下、より好ましくは10/90以上90/10以下、更に好ましくは20/80以上80/20以下、より更に好ましくは30/70以上70/30以下である。
<水>
本発明の油剤分散液の製造方法に使用される水としては、例えば、イオン交換水及び蒸留水からなる群より選ばれる1種以上が好ましく用いられる。
工程1で調製される前記油剤混合液中、あるいは油剤分散液中、水の含有量は、分散時の粘度を減粘し、製造を容易にする観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、そして、0.1Pa・s以上の油剤混合液を作製する観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、より更に好ましくは47質量%以下、より更に好ましくは44質量%以下であり、これらの観点から、好ましくは20質量%以上80質量%以下、より好ましくは25質量%以上60質量%以下、更に好ましくは30質量%以上50質量%以下、より更に好ましくは30質量%以上47質量%以下、より更に好ましくは30質量%以上44質量%以下である。
油剤混合液中、あるいは油剤分散液中の、油剤と水との質量比(油剤/水)、あるいは[成分(A)+成分(B)]/水の質量比は、0.1Pa・s以上の油剤混合液を作製する観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.4以上、より更に好ましくは0.65以上、より更に好ましくは0.75以上、より更に好ましくは0.85以上であり、そして、分散時の粘度を減粘し、製造を容易にする観点から、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは1.5以下であり、これらの観点から、好ましくは0.1以上4以下、より好ましくは0.3以上3以下、更に好ましくは0.4以上1.5以下、より更に好ましくは0.65以上1.5以下、より更に好ましくは0.75以上1.5以下、より更に好ましくは0.85以上1.5以下である。
また、油剤混合液を調製する際、前記水系組成物への油剤組成物の添加速度は、前記水系組成物100質量部に対して、好ましくは9質量部/分以上、より好ましくは10質量部/分以上、更に好ましくは20質量部/分以上、より更に好ましくは25質量部/分以上であり、そして、好ましくは3,000質量部/分以下、より好ましくは2,000質量部/分以下、更に好ましくは1,000質量部/分以下、より更に好ましくは500質量部/分以下である。また、前記油剤組成物への水系組成物の添加速度は、前記油剤100質量部に対して、好ましくは9質量部/分以上、より好ましくは10質量部/分以上、更に好ましくは20質量部/分以上、より更に好ましくは25質量部/分以上であり、そして、好ましくは3,000質量部/分以下、より好ましくは2,000質量部/分以下、更に好ましくは1,000質量部/分以下、より更に好ましくは500質量部/分以下である。
また、前記油剤組成物に対して水系組成物を添加する際、あるいは水系組成物に油剤組成物を添加する際、無撹拌下で添加することもできる。撹拌しながら添加する場合は、撹拌は撹拌翼を用いて行うことが好ましく、該撹拌翼を用いる場合、撹拌時の撹拌翼の羽根先端速度が、製造の容易性の観点から、好ましくは0.1m/s以上、より好ましくは0.3m/s以上、更に好ましくは0.5m/s以上であり、そして、好ましくは700m/s以下、より好ましくは500m/s以下、更に好ましくは300m/s以下、より更に好ましくは100m/s以下である。
該撹拌時に用いる撹拌翼としては、例えば、パドル翼、タービン翼、アンカー翼、リボン翼、プロペラ等を用いることができる。
<界面活性剤>
前記油剤混合液は、微細乳化されたO/W型エマルションを得る観点から、更に、界面活性剤を含有することが好ましい。
油剤分散液及び油剤混合液中の変性シリコーン及び炭化水素系エステルの合計量[成分(A)+成分(B)]と界面活性剤の含有量の質量比(界面活性剤/[成分(A)+成分(B)])は、0.1Pa・s以上の油剤混合液を作製し、微細乳化されたO/W型エマルションである油剤分散液を得る観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上、より更に好ましくは0.2以上、より更に好ましくは0.3以上、より更に好ましくは0.4以上であり、そして、製造を容易にする観点から、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.7以下、更に好ましくは0.6以下であり、これらの観点から、好ましくは0.01以上0.8以下、より好ましくは0.05以上0.7以下、更に好ましくは0.1以上0.6以下、より更に好ましくは0.2以上0.6以下、より更に好ましくは0.3以上0.6以下、より更に好ましくは0.4以上0.6以下である。
前記油剤混合液は、0.1Pa・s以上の油剤混合液を作製し、微細乳化されたO/W型エマルションを得る観点から、当該界面活性剤として、より好ましくは非イオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤からなる群より選ばれる1種以上を含有する。
本発明において、油剤混合液中、あるいは油剤分散液中の水の含有量に対する、変性シリコーン、炭化水素系エステル、及び界面活性剤の合計量との質量比((成分(A)+成分(B)+界面活性剤)/水(質量比))は、所望の平均粒子径及びCV値を有する油剤分散液を得る観点から、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.15以上、更に好ましくは1.2以上であり、そして製造の容易性の観点から、好ましくは2以下、より好ましくは1.9以下、更に好ましくは1.8以下、より更に好ましくは1.7以下であり、同様の観点から、好ましくは1.1以上2以下、より好ましくは1.15以上1.9以下、更に好ましくは1.2以上1.8以下、より更に好ましくは1.2以上1.7以下である。
(非イオン性界面活性剤)
前記非イオン性界面活性剤としては、例えば、高級アルコールエチレンオキシド付加物、アルキルフェノールエチレンオキシド付加物、脂肪族エチレンオキシド付加物、多価アルコール脂肪族エステルエチレンオキシド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキシド付加物、脂肪族アミドエチレンオキシド付加物、油脂のエチレンオキシド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキシド付加物等のポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤;グリセロールの脂肪族エステル、ペンタエリストールの脂肪族エステル、ソルビトールの脂肪族エステル、ソルビタンの脂肪族エステル、ショ糖の脂肪族エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等の多価アルコール型非イオン性界面活性剤;等が挙げられる。
これらの非イオン性界面活性剤は、単独で用いてもよく、又は2種以上を組合せて用いてもよい。
前記非イオン性界面活性剤としては、好ましくは下記式(5)で表されるプロピレンオキシドユニットとエチレンオキシドユニットとを有するブロック共重合型ポリエーテル、及び下記式(6)で表されるエチレンオキシドユニットを有するポリオキシエチレンのアルキルエーテルからなる群より選ばれる1種以上、より好ましくは下記式(6)で表されるエチレンオキシドユニットを有するポリオキシエチレンのアルキルエーテルである。
式(5)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1以上24以下の炭化水素基を示す。該炭化水素基は直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
及びRは、エチレンオキシド、プロピレンオキシドとの均衡、油剤混合液が含むその他成分を考慮して決定されるが、好ましくは水素原子又は炭素数1以上5以下の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、より好ましくは水素原子である。
及びRが好ましい態様として取り得る前記炭素数1以上5以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基が挙げられる。
式(5)中、x及びzはエチレンオキシドの平均付加モル数を示し、yはプロピレンオキシドの平均付加モル数を示す。
x、y、zは、それぞれ独立して、1以上500以下であり、好ましくは20以上300以下である。また、x及びzの合計と、yとの比〔(x+z)/y〕が、好ましくは10/90以上90/10以下の範囲である。
また、前記ブロック共重合型ポリエーテルは、熱的安定性と水への分散性を共に有することが可能となる観点から、数平均分子量が、好ましくは3,000以上20,000以下である。
更に、前記ブロック共重合型ポリエーテルは、得られる油剤処理液の過剰な繊維内部への浸透を防ぎ、かつ前駆体繊維束に付与した後の乾燥工程において、得られる油剤処理液の粘度の影響で搬送ローラー等に単繊維が取られて巻きつくなどの工程障害が起こりにくくなる観点から、100℃における動粘度が、好ましくは300mm/s以上15,000mm/s以下である。
該動粘度は、JIS Z8803:2011に規定されている“液体の粘度測定方法”、又はASTM D 445−46Tに準拠して測定される値であり、例えば、ウベローデ粘度計を用いて測定できる。
式(6)中、Rは炭素数10以上30以下の炭化水素基を示す。
該炭素数が10以上であると、十分な熱的安定性を有すると共に、適切な親油性を発現しやすくなる。また、炭素数が30以下であると、非イオン性界面活性剤の粘度が高くなりすぎず、非イオン性界面活性剤が液体であるため、十分な作業性を維持できる。また、親水基とのバランスがよく、十分な乳化安定性が得られる。
が取り得る炭化水素基としては、好ましくは炭素数10以上30以下のアルキル基、炭素数10以上30以下のシクロアルキル基、又は炭素数10以上30以下のアリール基、より好ましくは炭素数10以上20以下のアルキル基又は炭素数10以上24以下のアリール基である。該炭化水素基がアルキル基の場合、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよく、好ましくは直鎖状である。
該炭化水素基がアリール基の場合、該アリール基は、更に置換基を有していてもよく、アリール基の炭素数は、置換基を含めた炭素数である。置換基としては、アルキル基、ベンジル基、フェネチル基、スチリル基、シンナミル基などが例示される。
が取り得る前記アルキル基としては、例えば、各種デシル基、各種ウンデシル基、各種ドデシル基、各種トリデシル基、各種テトラデシル基、各種ヘキサデシル基、各種ヘプタデシル基、各種オクタデシル基、各種ノナデシル基、及び各種イコシル基等が挙げられる。これらの中でも、前記油剤混合液を効率よく乳化するために、該非イオン性界面活性剤以外の成分と馴染みやすい適度な親油性を付与できる観点から、好ましくは各種ドデシル基、より好ましくはラウリル基である。
が取り得る前記アリール基としては、トリベンジルフェニル基、ジスチリルフェニル基(ジスチレン化フェニル基)等が例示され、これらの中でも、上記の観点から、好ましくはジスチリルフェニル基である。
式(6)中、tはエチレンオキシドの平均付加モル数を示し、3以上20以下である。tが3以上であると、水と十分に馴染みやすく、十分な乳化安定性が得られる。また、tが20以下であると、粘性が高くなりすぎず、油剤混合液の構成成分として用いた場合、得られる油剤処理液が付着した前駆体繊維束が十分に分繊し易くなる。
このような観点から、tは、好ましくは5以上、より好ましくは8以上であり、そして、好ましくは15以下である。
なお、Rは親油性に関与する要素であり、tは親水性に関与する要素である。したがって、tの値は、Rとの組合せにより適宜決定することができる。
前記非イオン性界面活性剤としては、市販品を用いることもでき、例えば、前記式(5)で表される非イオン性界面活性剤としては、三洋化成工業株式会社製の「ニューポール(登録商標)PE−128」、「ニューポール(登録商標)PE−68」、BASFジャパン株式会社製の「Pluronic(登録商標)PE6800」、株式会社ADEKA製の「アデカ(登録商標)プルロニック L−44」、「アデカ(登録商標)プルロニック P−75」、「アデカ(登録商標)プルロニック L−64」等が好ましい例として挙げられる。
また、前記式(6)で表される非イオン性界面活性剤としては、花王株式会社製の「エマルゲン(登録商標)105」、「エマルゲン(登録商標)109P」、「エマルゲン(登録商標)A−60」、「エマルゲン(登録商標)B−66」、日光ケミカルズ株式会社製の「NIKKOL(登録商標)BL−9EX」、「NIKKOL(登録商標)BS−20」、日本エマルジョン株式会社製の「EMALEX(登録商標)707」等が好ましい例として挙げられる。
前記非イオン性界面活性剤を用いる場合、予め前記油剤に添加して、前記油剤と該非イオン性界面活性剤とを含む油剤組成物を調製した後、前記水を添加して、該非イオン性界面活性剤を含有する油剤混合液を調製してもよい。
また、前記水に予め添加して該非イオン性界面活性剤を含む水溶液(水系組成物)を調製した後、該水系組成物を前記油剤に添加して、該非イオン性界面活性剤を含有する油剤混合液を調製してもよい。
これらの中でも、調製の容易性の観点から、非イオン界面活性剤を含む水系組成物を調製した後、該水系組成物を油剤に添加することが好ましい。
前記油剤混合液中、前記非イオン性界面活性剤の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、より好ましくは12質量%以上、更に好ましくは13質量%以上であり、そして、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。
また、前記非イオン性界面活性剤を前記油剤に予め添加して用いる場合、該油剤と該非イオン性界面活性剤とを含有する油剤組成物中、該非イオン性界面活性剤の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、より更に好ましくは35質量%以下である。
ある。
また、非イオン性界面活性剤を前記水に予め添加して用いる場合、該非イオン性界面活性剤を含有する水溶液中、該非イオン性界面活性剤の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。
(カチオン性界面活性剤)
カチオン性界面活性剤としては、好ましくはアミン塩型のカチオン性界面活性剤及び第4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤からなる群より選ばれる1種以上、より好ましくは下記式(7)で表される第4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤である。
式(7)中、R10は、炭素数8以上12以下のアルキル基を示す。R11〜R13は、それぞれ独立に、炭素数8以上12以下のアルキル基又はヒドロキシアルキル基、好ましくは炭素数1以上3以下のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示し、より好ましくはR11〜R13のうち少なくとも2つはヒドロキシアルキル基であり、更に好ましくはR11〜R13のうち2つはヒドロキシアルキル基であり、かつ残りの1つが炭素数1以上3以下のアルキル基であり、より更に好ましくはR11及びR12がそれぞれ独立にヒドロキシアルキル基であり、かつR13が炭素数1以上3以下のアルキル基である。Zは、陰イオンを示し、好ましくはハロゲンイオン又は炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオンを示す。
10が取り得る前記炭素数8以上12以下のアルキル基としては、例えば、2−エチルヘキシル基、1−メチルヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ウンデシル基、各種ドデシル基等が挙げられる。これらの中でも、R10が取り得る前記炭素数8以上12以下のアルキル基としては、前記油剤混合液を効率よく乳化するため、また、前記ヒドロキシ安息香酸エステルと馴染みやすい適度な親油性を付与できる観点から、好ましくは各種ドデシル基、より好ましくはラウリル基である。
11〜R13が取り得る前記炭素数8以上12以下のアルキル基としては、R10が取り得る炭素数8以上12以下のアルキル基と同様のものが挙げられる。
また、R11〜R13が好ましい態様として取り得る前記炭素数1以上3以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。
また、R11〜R13が取り得る前記ヒドロキシアルキル基としては、好ましくは炭素数1以上3以下のアルキル基を有するヒドロキシアルキル基が挙げられ、該炭素数1以上3以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。R11〜R13が取り得る前記ヒドロキシアルキル基としては、より好ましくは、ヒドロキシエチル基である。
また、Zが取りうるハロゲンイオンとしては、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等が挙げられる。また、Zが取りうる炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオンの炭素数1以上3以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が挙げられ、好ましくはエチル基である。
式(7)で表されるカチオン性界面活性剤としては、好ましくは、ラウリルエチルジエタノールアンモニウムエチル硫酸塩が挙げられる。
これらのカチオン性界面活性剤は、単独で用いてもよく、又は2種以上を組合せて用いてもよい。
前記油剤混合液が該カチオン性界面活性剤を含有する場合、油剤に予め添加して油剤組成物を調製してから水と混合してもよく、水にカチオン性界面活性剤を添加して水系組成物を調製してから、油剤と混合してもよく、特に限定されない。これらの中でも、水に添加して水系組成物を調製した後、該水系組成物に油剤を添加して油剤混合液を調製することが好ましい。
前記油剤混合液がカチオン性界面活性剤を含有する場合、前記油剤混合液中、該カチオン性界面活性剤の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは4質量%以下である。
また、該カチオン性界面活性剤を前記油剤に予め添加して用いる場合、該油剤と該カチオン性界面活性剤とを含有する油剤組成物中、該カチオン性界面活性剤の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
また、カチオン性界面活性剤を前記水に予め添加して用いる場合、該カチオン性界面活性剤を含有する水溶液中、該カチオン性界面活性剤の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは4質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは8質量%以下である。
<その他成分>
本発明の油剤分散液は、前述した各成分に加えて、必要に応じて、酸化防止剤、帯電防止剤、抗菌剤、pH調整剤、消泡剤、防腐剤、浸透剤等のその他成分を更に含有してもよい。
前記油剤分散液が、その他成分を含有する場合、その他成分は、前述の油剤に予め添加してもよく、前記油剤に対して工程1で用いる水と共に添加してもよく、前記油剤混合液に対して添加してもよく、工程2で得られる油剤分散液に対して、必要に応じて行われる工程3で用いる希釈水と共に添加してもよい。その他成分としては、好ましくは、工程2で得られるO/W型エマルションである油剤分散液に対して、工程3で用いる希釈水と共に添加する。
前記油剤分散液が、その他成分を含有する場合、その他成分の含有量は、それぞれ独立に、前記油剤分散液中、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、そして、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下である。
前記油剤分散液が、その他成分を含有する場合、その他成分の合計含有量は、前記油剤分散液中、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
<工程1>
本発明の製造方法は、工程1として、水、変性シリコーン、及び炭化水素系エステルを含有する油剤混合液を調製する工程を有する。
また、必要に応じて、工程1で、更に、前記界面活性剤等の成分を混合して油剤混合液を調製してもよい。
工程1において、油剤混合液を調製する方法は特に限定されないが、変性シリコーン及び炭化水素系エステルを、必要に応じて界面活性剤と共に混合し、油剤組成物を調製する工程と、水と界面活性剤とを混合して、水系組成物を得る工程とを有し、更に、油剤組成物と水系組成物とを混合することで、油剤混合液を調製することが好ましい。なお、本発明はこれに限定されず、界面活性剤を油剤組成物のみに添加してもよい。また、油剤組成物及び水系組成物を調製する際に、必要に応じて加熱及び冷却操作を行ってもよい。
なお、油剤混合液を調製するに際し、油剤組成物を水系組成物に添加してもよく、水系組成物を油剤組成物に添加してもよく、特に限定されないが、製造容易性の観点から、水系組成物に油剤組成物を添加することが好ましい。
(油剤混合液)
前記油剤混合液は、粘度が0.1Pa・s以上である。
本明細書中、該油剤混合液及び油剤分散液中の油滴の「平均粒子径」及び該油剤混合液の「粘度」は、それぞれ、例えば、実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
該油剤混合液の粘度が、上記範囲内であると、該油剤混合液に特定の剪断力を加えることにより、平均粒子径0.5μmのO/W型エマルションにすることができる。
このような観点から、該油剤混合液の粘度は、油剤分散液中の油剤を所望の平均粒子径に分散させる観点から、0.1Pa・s以上、好ましくは0.15Pa・s以上、より好ましくは0.20Pa・s以上、更に好ましくは0.25Pa・s以上であり、そして、工程2の分散工程を行う製造の容易性の観点から、好ましくは20Pa・s以下、より好ましくは15Pa・s以下、更に好ましくは10Pa・s以下、より更に好ましくは5Pa・s以下、より更に好ましくは1Pa・s以下、より更に好ましくは0.4Pa・s以下であり、これらの観点から、好ましくは0.1Pa・s以上20Pa・s以下、より好ましくは0.15Pa・s以上15Pa・s以下、更に好ましくは0.20Pa・s以上10Pa・s以下、より更に好ましくは0.20Pa・s以上5Pa・s以下、より更に好ましくは0.25Pa・s以上1Pa・s以下、より更に好ましくは0.25Pa・s以上0.4Pa・s以下ある。
油剤混合液の粘度を、0.1Pa・s以上にするには、上述したように、油剤と水との混合質量比率、油剤と界面活性剤との質量比、油剤中の変性シリコーンと炭化水素系エステルとの質量比等を適宜調整すればよい。
なお、前記油剤混合液の粘度としては、変性シリコーンと炭化水素系エステルを含む油剤と水とを含有する油剤混合液を測定すればよいが、粘度の測定誤差を低減する観点から、油剤混合液を構成する全成分を混合後、撹拌開始から10分撹拌後の粘度を用いることが好ましい。具体的には、実施例記載の方法による。
また、前記油剤混合液の製造のための撹拌は、撹拌翼を用いて行ってもよい。
前記撹拌翼としては、前記羽根先端速度範囲で撹拌可能であればよく、例えば、前述したパドル翼、タービン翼、アンカー翼、リボン翼、プロペラ等を用いることができる。
また、前記油剤混合液を撹拌する際の油剤混合液の温度は、O/W型エマルションを効率よく得る観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは15℃以上であり、そして、好ましくは50℃以下、より好ましくは45℃以下、更に好ましくは40℃以下である。
工程1の撹拌の終点は、工程1の油剤混合液の粘度が、0.1Pa・s以上になった時である。この範囲内であれば、いつ終了してもよい。
したがって、工程1の撹拌時間は、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上であり、上限は特にないが、作業効率の観点から、好ましくは3時間以下、より好ましくは1時間以下である。
<工程2>
工程2は、該油剤混合液をローターとステーターを有する分散機にて、分散し、油剤分散液を得る工程である。また、工程2においてローターとステーターを有する分散機により付与される剪断速度は、2.5×10/s以上である。本発明で得られる油剤分散液は、О/W型エマルションである。また、本発明の製造方法は、該工程2を有することで、油剤が水中に微細乳化した油剤分散液を製造することが可能となる。
ローターとステーターとを有する分散機とは、ローターとステーター間で生じる剪断場を利用する任意の分散機である。すなわち、ローター(回転部)とステーター(非回転部)とのクリアランスとローターの回転数を種々変化させることで剪断速度を変えることができる。
工程2で使用する分散機としては、所望の剪断速度が得られる限り特に限定されないが、具体的には、バッチ式分散機としては、T.K.ROBOMIX(株式会社プライミクス製)、アジホモミキサー(株式会社プライミクス製)等が例示され、インライン乳化分散機としては、キャビトロン(大平洋機工株式会社製)、マイルダー(大平洋機工株式会社製)等が例示される。
これらの中でも、インライン乳化分散機が好ましく、連続インライン乳化分散機がより好ましい。所望の剪断速度を付与できる観点から、キャビトロン(株式会社ユーロテック製)が特に好ましく例示される。
剪断速度は、混合装置の撹拌翼の先端速度をv(m/s)、該先端と混合装置の内面とのクリアランスをδ(m)とした場合にv/δ(sec−1)で算出される値である。
例えば、バッチ式混合装置における剪断速度は、撹拌翼の先端の先端速度と、先端と撹拌槽の内面とのクリアランスとから算出でき、連続式混合装置における剪断速度は、撹拌翼の先端の速度と、撹拌翼の先端とステーターの内面とのクリアランスとから算出できる。
剪断速度=撹拌翼先端の線速度/ローターとステーター間のクリアランス
(式中、撹拌翼先端の線速度は、πnd/60である(ここで、nは回転数[rpm]、dは撹拌翼直径[m]である。))
なお、当該剪断速度は、混合装置の撹拌翼の回転速度又は撹拌翼と内面とのクリアランスの調節により調整することができる。
工程2において、ローター及びステーターを有する分散機により付与される剪断速度は、油剤分散液中の油剤を所望の平均粒子径に分散させる観点から、2.5×10/s以上であり、好ましくは3×10/s以上、より好ましくは4×10/s以上、更に好ましくは5×10/s以上であり、そして、製造コストの観点から、好ましくは2×10/s以下であり、より好ましくは1.8×10/s以下であり、これらの観点から、好ましくは2.5×10/s以上2×10/s以下、より好ましくは3×10/s以上2×10/s以下、更に好ましくは4×10/s以上2×10/s以下、より更に好ましくは5×10/s以上2×10/s以下、より更に好ましくは5×10/s以上1.8×10/s以下である。
また、分散機のローターの周速は、上記の剪断速度を付与できれば特に限定されないが、所望の剪断速度を付与する観点から、好ましくは10m/s以上、より好ましくは15m/s以上、更に好ましくは20m/s以上であり、そして、製造の容易性の観点から、好ましくは50m/s以下、より好ましくは45m/s以下であり、これらの観点から、好ましくは10m/s以上50m/s以下、より好ましくは10m/s以上45m/s以下、更に好ましくは15m/s以上45m/s以下、より更に好ましくは20m/s以上45m/s以下ある。
パス回数(循環回数)は、好ましくは1以上、より好ましくは4以上であり、上限は特にないが、生産効率上、好ましくは100,000以下、より好ましくは10,000以下である。
パス回数は、内容物が撹拌羽根により受ける剪断回数を示すものであり、特開2013−23774号を参照することができる。
工程(2)における液温は、O/W型のエマルションを効率よく得る観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上であり、そして、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、更に好ましくは40℃以下である。
ここで、「油剤混合液」は、該油剤混合液自体がO/W型エマルションの状態である場合もあり得るが、「油剤混合液」の場合は、該油剤混合液中の油滴の平均粒子径は好ましくは0.5μmを超える。
一方、本発明で、工程2で得られる油剤分散液は、「O/W型エマルション」であり、後述する実施例に記載の方法で測定される液中の油滴(油剤)の平均粒子径が、0.5μm以下であり、かつ、好ましくはCV値が37%以下である水系乳化液を指す。そして、当該O/W型エマルションは、好適には、炭素繊維前駆体用油剤処理液に用いられるO/W型エマルションである。
(油剤分散液)
工程2で得られる本発明の油剤分散液は、平均粒子径が0.5μm以下である油剤(油滴)を含む。
該油滴は、少なくとも前述の油剤が、工程2を経て、水中に微分散したものである。なお、油滴には、油剤と共に、界面活性剤、その他の成分等が存在していてもよい。
該油滴の平均粒子径は、製造の容易性の観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.12μm以上であり、更に好ましくは0.15μm以上であり、そして、炭素繊維前駆体用油剤処理液として、均一に炭素性繊維に油剤を付着させる観点から、好ましくは0.48μm以下、より好ましくは0.45μm以下、更に好ましくは0.4μm以下、より更に好ましくは0.35μm以下であり、これらの観点から、好ましくは0.1μm以上0.5μm以下、より好ましくは0.1μm以上0.48μm以下、更に好ましくは0.12μm以上0.48μm以下であり、より更に好ましくは0.15μm以上0.48μm以下であり、より更に好ましくは0.15μm以上0.45μm以下、より更に好ましくは0.15μm以上0.40μm以下である。
油剤分散液の油滴の平均粒子径は、実施例に記載の方法により求められる。
また、本発明において、油剤分散液中の油剤のCV値(変動係数、Coefficient Variation)は、好ましくは37%以下である。CV値が37%以下であると、粒子径分布が狭いので好ましい。本発明において、油剤分散液は、油剤の粒子径分布がシングルピークであることが特に好ましい。
本発明の油剤分散液のCV値は、炭素繊維前駆体用油剤処理液として、均一に炭素性繊維に油剤を付着させる観点から、好ましくは37%以下、より好ましくは36%以下、更に好ましくは35%以下、より更に好ましくは30%以下である。また、下限値は特に限定されないが、製造容易性の観点から、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、更に好ましくは15%以上、より更に好ましくは20%以上である。
油剤分散液のCV値は、実施例に記載の方法により測定される。
本発明では、エネルギー的に不利であり、製造コストを低減する観点から、高圧式分散機を用いないことが好ましい。高圧式分散機としては、高圧ホモジナイザー、ナノマイザー、マイクロフルイダイザー、アルティマイザーシステム、音レス高圧乳化分散装置等が挙げられる。高圧式分散機を使用する際の操作圧力としては、通常、10MPa以上である。
<工程3>
また、本発明の製造方法は、炭素繊維前駆体用油剤処理液として用いる観点から、工程2の後に、更に、下記工程3を有していてもよい。
工程3:工程2で得られた油剤分散液に、更に水を配合し、前記変性シリコーン、炭化水素系エステル、及び界面活性剤の合計含有量が、0.5質量%以上50質量%以下となるように希釈する工程
[炭素繊維前駆体用油剤処理液]
本発明の油剤分散液は、炭素繊維前駆体用油剤処理液(以下、単に「油剤処理液」ともいう。)として好適に使用される。なお、前記工程2で得られた油剤分散液を、そのまま炭素繊維前駆体用油剤処理液として使用してもよく、上述した工程3を有する製造方法により、工程2で得られた油剤分散液を希釈して使用してもよく、特に限定されない。
該油剤処理液が含有する各成分及びその好適な態様、並びに各成分の含有量及びその好適範囲は、前述の炭素繊維前駆体用油剤処理液の製造方法で用いる各成分について説明した内容と同様である。
前記油剤処理液は、0.5μm以下の平均粒子径を有する油滴を含む。該油滴は、少なくとも前述の油剤が、工程2を経て、水中に微分散したものである。
該油滴の平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.12μm以上であり、更に好ましくは0.15μm以上であり、そして、炭素繊維前駆体用油剤処理液として、均一に炭素性繊維に油剤を付着させる観点から、好ましくは0.48μm以下、より好ましくは0.45μm以下、更に好ましくは0.4μm以下、より更に好ましくは0.35μm以下であり、これらの観点から、好ましくは0.1μm以上0.5μm以下、より好ましくは0.1μm以上0.48μm以下、更に好ましくは0.12μm以上0.48μm以下であり、より更に好ましくは0.15μm以上0.48μm以下であり、より更に好ましくは0.15μm以上0.45μm以下、より更に好ましくは0.15μm以上0.40μm以下である。
該平均粒子径の値は、実施例に記載の方法により求められる。
また、前記油剤処理液は、炭素繊維用前駆体を炭素繊維とするための製造過程で用いられる。例えば、炭素繊維前駆体用繊維の処理に用いることができ、好ましくはポリアクリロニトリル系繊維等の炭素繊維前駆体アクリル繊維を処理する用途で好適に用いることができる。そして、前記油剤処理液は、より好ましくは、前述の耐炎化工程及び炭素化工程を備える炭素繊維の製造装置で炭素繊維前駆体アクリル繊維を処理する場合に用いることができる。
次に示す実施例又は比較例中、用いた原料、及び得られた油剤、油剤組成物、油剤混合液及び油剤処理液等の各性状等については次の方法により測定、評価した。
[変性シリコーンと、炭化水素系エステルとの相溶性]
変性シリコーンと炭化水素系エステルを各10gサンプル瓶(30mL)に入れ、マグネチックスターラー(回転数800rpm、回転子10mm)を用いて撹拌し、25℃、24時間静置した。その後、目視にて2つの成分の界面が確認できるか否かで相溶性の有無を判断した。界面が確認できない場合に、相溶性であるとし、界面が確認できない場合には、相溶しない(相溶性がない)とした。
撹拌装置としては、マグネチックスターター「EYELA PS−1000」(東京理化器械株式会社製)を使用した。
[変性シリコーンの粘度と、炭化水素系エステルの粘度の測定]
実施例で用いた変性シリコーン及び炭化水素系エステルの粘度測定は以下のようにして行った。
・測定装置:レオメーター「MCR300」(Anton−Paar社製)
・測定温度:25℃
・剪断速度:29.2[1/s]
測定結果を以下の表1に示す。
[アミノ変性シリコーンの25℃における動粘度]
JIS Z8803:2011に規定されている“液体の粘度測定方法”に準拠し、ウベローデ粘度計を用いて測定した。
[アミノ変性シリコーンのアミノ当量]
次式により、算出される値を用いた。
アミノ当量(g/mol)=重量平均分子量(Mw)/1分子あたりの窒素原子数
なお、当該重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで、ポリスチレンを標準物質として求めたポリスチレン換算の値である。
また、1分子あたりの窒素原子数は、元素分析法により求められた値である。
[油剤混合液の粘度(初期粘度)及び油剤分散液の粘度(最終粘度)]
工程1で得られた油剤混合液の粘度(初期粘度)、及び工程2で得られた油剤分散液の粘度(最終粘度)は、次のように測定した。
油剤混合液又は油剤分散液を採取して、粘度測定用サンプルとした。粘度測定用サンプルは、次の装置及び条件で測定を行った。
・測定装置:レオメーター「MCR300」(Anton−Paar社製)
・測定温度:10℃
・剪断速度:29.2[1/s]
測定に用いた油剤混合液は、1,000mLのビーカーに、実施例記載の油剤組成物と水系組成物とを合計500gになるように混合した後、5cmのパドル翼で10分間(25℃、100rpm)撹拌した直後に採取した。
[油剤分散液中の油滴の最終粒子径(平均粒子径)及びCV値]
油剤分散液中の油滴の平均粒子径及びCV値は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(商品名「LA−920」、株式会社堀場製作所製、相対屈折率1.2又は1.05(比較例4−1)を用いて測定した。また、CV値は、下記式に基づき、算出した。
CV値(%)=(粒子径分布の標準偏差/体積中位粒子径(D50))×100
CV値が35以下のピークをシングルピークとし、35を超えたピークをブロードとした。
各実施例及び各比較例での油剤処理液の製造に際し使用した、前記各化合物の詳細は次のとおりである。
・アミノ変性シリコーン(成分(A)):25℃における動粘度が150mm/s、アミノ当量が5,000g/molであるアミノ変性シリコーン。
・ヒドロキシ安息香酸エステル(成分(B−1)):前記式(2)中、Rが、オクタデセニル基(オレイル基)であり、下記構造式で表されるヒドロキシ安息香酸エステル。
なお、該ヒドロキシ安息香酸エステルは、次に示す方法を用いて合成した。
1Lの四つ口フラスコに、4−ヒドロキシ安息香酸207g(1.5モル)と、オレイルアルコール486g(1.8モル)と、触媒としてオクチル酸スズ0.69g(0.1質量%)とを秤取り、窒素吹き込み下、200℃で6時間、更に220℃で5時間エステル化反応を行った。
その後、230℃、666.61Paの減圧下でスチームを吹き込みながら過剰のアルコール除去を行い、75℃程度まで冷却し、85質量%リン酸0.43gを加え30分撹拌を続けた後、濾過を行い、前記構造を有するヒドロキシ安息香酸エステルを得た。
・シクロヘキサンジカルボン酸エステル(成分(B−2−1)):前記式(3)中、R及びRが、共に、オクタデセニル基(オレイル基)であり、Rが、−CH−CH−CH(CH)−CH−CH−である、下記構造式で表されるシクロヘキサンジカルボン酸エステル。
なお、該シクロヘキサンジカルボン酸エステルは、次に示す方法を用いて合成した。
1Lの四つ口フラスコに、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のジメチルエステル(小倉合成工業株式会社製)240g(1.2モル)と、オレイルアルコール(新日本理化株式会社製、商品名:リカコール90B)324g(1.2モル)と、3−メチル−1,5−ペンタンジオール(和光純薬工業株式会社製)70.8g(0.6モル)と、触媒としてジブチルスズオキシド(和光純薬工業株式会社製)0.32gとを秤取り、窒素吹き込み下、200℃程度で脱メタノール反応を行った。このときのメタノール留出量は76gであった。
その後、75℃程度まで冷却し、85質量%リン酸(和光純薬工業株式会社製)0.33gを加え30分撹拌を続け、反応系が白濁したことを確認し、更に吸着剤(協和化学工業株式会社製、商品名:「キョーワード(登録商標)600S」)1.1gを加え30分間撹拌した後、濾過を行い、前記構造を有するシクロヘキサンジカルボン酸ジエステルを得た。
変性シリコーン及び炭化水素系エステルが、互いに相溶するかを評価したところ、実施例で使用したアミノ変性シリコーンとヒドロキシ安息香酸エステル、及びアミノ変性シリコーンとシクロヘキサンジカルボン酸エステルは、互いに相溶しなかった。
・非イオン性界面活性剤:下記エマルゲンA−60とプルロニックL−64とを50/50の質量比で混合したもの
エマルゲン(登録商標)A−60:商品名、花王株式会社製、式(6)中、Rがジスチレン化フェニル基、tが13である化合物
プルロニック(登録商標)L−64:商品名、株式会社ADEKA製、式(5)中、R及びRが水素原子、(x+z)/y=25/30である化合物。
・カチオン性界面活性剤:「エレクトロストリッパー(登録商標)KS−48」(商品名、花王株式会社製、式(7)中、R10がラウリル基、R11及びR12がヒドロキシエチル基、R13がエチル基、Zがエチル硫酸イオンである化合物。)
[油剤分散液の調製]
実施例1
(工程(1):油剤混合液の製造)
100Lの撹拌槽に、表2に示す割合となるように、水105質量部とノニオン性界面活性剤42質量部とカチオン性界面活性剤8質量部とを混合し、水系組成物31kgを得た。
25℃、パドル翼(半径400mm)を備えたアジホモミキサー(型番T.K.アヂホモミクサーS100型)を用い、羽根先端速度が8.4m/sとなるようにホモミキサーは作動させずパドル翼のみを用いて撹拌しながら、上記水系組成物に、表2に示す割合となるようにアミノ変性シリコーン50質量部とシクロヘキサンジカルボン酸エステル50質量部とを予め混合した油剤組成物20kgを、1分間で水系組成物に添加し、その後30分間撹拌し、油剤混合液を得た。得られた粘度は、表2記載のものと同じであった。
(工程(2):油剤分散液の製造)
工程(1)で得られた油剤混合液を、ミキサーに設置されているインラインミキサー(商品名「キャビトロン CD1000」、大平洋機工株式会社製、ローターの最外周周速:40m/s、剪断速度:1.6×10/s、パス回数:5回、25℃)で、分散を行い、油剤分散液を調製した。得られた油剤分散液の粘度、粒子径、CV値を測定した。結果を表2に示す。
(工程(3):炭素繊維前駆体用油剤処理液の製造)
その後、パドル翼を用いて撹拌しながら固形分濃度(水以外の成分)が30質量%となるように水を加えて、O/W型エマルションを得た。得られたエマルションの粒子径、CV値は、工程(2)と同じであった。
実施例2
工程(1)で、表2に示す割合となるように、アミノ変性シリコーンとヒドロキシ安息香酸エステルと界面活性剤とを混合した油剤組成物30kgを、パドル翼を用いて撹拌しながら、2分30秒間で水21kgに添加した以外は、実施例1と同様にして油剤分散液を調製し、評価を行った。結果を表2に示す。
実施例3及び4
工程(1)における水の添加量を、90質量部及び125質量部にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして油剤分散液を調製し、評価を行った。結果を表2に示す。
実施例5
工程(1)で、表2に示す割合となるように、アミノ変性シリコーンとヒドロキシ安息香酸エステルとを混合し油剤組成物に、表2に示す割合となるように、水とノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤とを混合した水系組成物を添加し、転相乳化した以外は、実施例1と同様にして油剤分散液を調製し、評価を行った。結果を表2に示す。
実施例6及び7
使用した変性シリコーン及び炭化水素系エステルの配合量を、表2に示したように変更した以外は、実施例1と同様にして油剤分散液を調製し、評価を行った。結果を表2に示す。
実施例8
使用したインラインミキサー(キャビトロン CD1000)の周速を30m/s、パス回数を10回に変更した以外は、実施例1と同様にして油剤分散液を調製し、評価を行った。結果を表2に示す。
実施例9
撹拌槽のサイズを1Lに変更し、羽根先端速度3.7m/sのディスパー翼(半径50mm)を用いた以外は、実施例1と同様にして油剤混合液を調製した。また、使用した分散機を、T.K.ROBOMIX(株式会社プライミクス製)に変更し、周速を15m/s、パス回数を8,030回に変更した以外は、実施例1と同様にして油剤分散液を調製し、評価を行った。結果を表2に示す。
実施例10
シクロヘキサンジカルボン酸エステルを、ヒドロキシ安息香酸エステルに変更し、周速を40m/s、パス回数を4,092回に変更した以外は、実施例9と同様にして油剤分散液を調製し、評価を行った。結果を表2に示す。
比較例1
工程1において使用する水の量を140質量部に変更し、パス回数を40回に変更した以外は実施例1と同様にして油剤分散液を調製し、評価を行った。結果を表2に示す。
比較例2
撹拌槽のサイズを変更し、工程2においてインラインミキサーの周速を5m/sとし、パス回数を8,030回に変更した以外は実施例1と同様にして油剤分散液を調製し、評価を行った。結果を表2に示す。
比較例3
使用した分散機を高圧ホモジナイザーであるナノヴェイタ(吉田機械興業株式会社製)にし、圧力20MPaで5パスした以外は実施例9と同様にして油剤分散液を調製した。この時ノズルを通液する際の剪断速度は下記の式より8.4×10/sであった。結果を表2に示す。
剪断速度=ノズル通液時の平均線速/ノズル径
比較例4−1
シクロヘキサンジカルボン酸エステル50質量部及び変性シリコーン50質量部の代わりに、変性シリコーン100質量部を使用し、界面活性剤及び水の使用量を表2に示すように変更し、周速を24.3m/s、パス回数を1,150回に変更した以外は、実施例9と同様にして油剤分散液を調製し、評価を行った。結果を表2に示す。
比較例4−2
シクロヘキサンジカルボン酸エステル50質量部及び変性シリコーン50質量部の代わりに、シクロヘキサンジカルボン酸エステル100質量部を使用し、界面活性剤及び水の使用量を表2に示すように変更し、周速を24.3m/s、パス回数を1,150回に変更した以外は、実施例9と同様にして油剤分散液を調製し、評価を行った。結果を表2に示す。
比較例4−3
比較例4−1で得られた油剤分散液と、比較例4−2で得られた油剤分散液とを、1:1(質量比)で混合して、油剤分散液を調製し、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
表2において使用したミキサーは、以下のとおりである。
・A:キャビトロンCD1000、大平洋機工株式会社製、ローター及びステーターを有する、連続インライン湿式乳化分散機
・B:T.K.ROBOMIX、株式会社プライミクス製、ローター及びステーターを有する、超高速乳化分散機
・C:ナノヴェイタ、吉田機械興業株式会社製、ローター及びステーターを有さない、高圧ホモジナイザー
表2に示すとおり、実施例1〜10に示す製造方法では、工程1により得られた油剤混合液の粘度が0.1Pa・s以上であり、分散機により特定の剪断速度が付与されることにより、油剤の平均粒子径が0.5μm以下であり、かつ、CV値が37%以下である油剤分散液が得られた。これにより、2種以上の油剤を含む油剤混合液を一括で分散した場合であっても、単分散であり、油剤が微分散された油剤分散液が得られることが示された。
一方、工程1により得られた油剤分散液の粘度が0.1Pa・s未満である比較例1では、油剤の平均粒子径が0.5μmを超え、また、CV値も37%を超え、更に、粒子径分布がブロードになり、油剤が均一に微分散している油剤分散液が得られなかった。
また、油剤分散液の粘度は、0.1Pa・s以上であっても、分散機により付与される剪断速度が2×10/sである比較例2では、油剤の平均粒子径が0.5μmを超え、また、CV値も37%を超え、更に、粒子径分布がブロードになり、油剤が均一に微分散している油剤分散液が得られなかった。
また、油剤分散液の粘度が0.1Pa・s以上であり、分散機により付与される剪断速度が8.4×10/sであっても、分散機がローター及びステーターを有さないナノヴェイタである比較例3では、平均粒子径が0.5μmを超え、更に、CV値も37%を超えて、粒子径分布がブロードになり、油剤が均一に微分散している油剤分散液が得られなかった。
更に、変性シリコーン及び炭化水素系エステルを、それぞれ別々に分散させた比較例4−1及び4−2では、シングルピークである分散液が得られたが、変性シリコーンのみを含有する比較例4−1では、油剤の平均粒子径が0.5μmを超えた。また、比較例4−1で得られた油剤分散液と、比較例4−2で得られた油剤分散液とを混合して作製した比較例4−3の油剤分散液では、最終粒子径が0.5μmを超え、また、CV値も37%を超え、更に、粒子径分布がブロードになり、油剤が均一に微分散している油剤分散液が得られなかった。
本発明の油剤分散液の製造方法により、変性シリコーン及び炭化水素系エステルという、2種以上の油剤を含有する油剤分散液であっても、一括して分散することによって、油剤が均一に微分散した油剤分散液が得られることが示された。
本発明の油剤分散液の製造方法は、炭素繊維前駆体用油剤処理液の製造方法又はその一部として、好適に使用可能である。

Claims (13)

  1. 水、変性シリコーン、及び炭化水素系エステルを含有する油剤分散液の製造方法であり、
    下記工程1及び工程2をこの順で有し、
    工程1:水、変性シリコーン、及び炭化水素系エステルを含有する油剤混合液を調製する工程
    工程2:該油剤混合液をローター及びステーターを有する分散機にて分散し、油剤分散液を得る工程
    工程1で得られた油剤混合液の粘度が0.1Pa・s以上であり、
    工程2において、ローター及びステーターを有する分散機により付与される剪断速度が2.5×10/s以上であり、
    得られる油剤分散液中の油剤の平均粒子径が0.5μm以下である、
    油剤分散液の製造方法。
  2. 変性シリコーン及び炭化水素系エステルが、互いに相溶しない、請求項1に記載の油剤分散液の製造方法。
  3. 変性シリコーンが、アミノ変性シリコーンである、請求項1又は2記載の油剤分散液の製造方法。
  4. 工程2におけるローターの周速が、10m/s以上50m/s以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の油剤分散液の製造方法。
  5. 変性シリコーンに対する炭化水素系エステルの質量比が、5/95以上95/5以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の油剤分散液の製造方法。
  6. 油剤混合液中の水の含有量が25質量%以上60質量%以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の油剤分散液の製造方法。
  7. 油剤混合液中の水の含有量に対する変性シリコーン及び炭化水素系エステルの合計量の比[(変性シリコーン+炭化水素系エステル)/水(質量比)]が、0.1以上4以下である、請求項1〜6のいずれかに記載の油剤分散液の製造方法。
  8. 油剤混合液が更に界面活性剤を含有する、請求項1〜7のいずれかに記載の油剤分散液の製造方法。
  9. 油剤混合液中の変性シリコーン及び炭化水素系エステルの合計量に対する界面活性剤の含有量比[界面活性剤/(変性シリコーン+炭化水素系エステル)]が0.01以上0.8以下である、請求項8に記載の油剤分散液の製造方法。
  10. 油剤混合液中の水の含有量に対する、変性シリコーン、炭化水素系エステル、及び界面活性剤の合計含有量の比[(変性シリコーン+炭化水素系エステル+界面活性剤)/水)]が、1.1以上2以下である、請求項8又は9に記載の油剤分散液の製造方法。
  11. 油剤分散液が炭素繊維前駆体用油剤処理液である、請求項1〜10のいずれかに記載の油剤分散液の製造方法。
  12. 油剤分散液中の油剤のCV値が37%以下である、請求項1〜11のいずれかに記載の油剤分散液の製造方法。
  13. 高圧式分散機を用いない、請求項1〜12のいずれかに記載の油剤分散液の製造方法。
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