JP5777940B2 - 炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤、炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤組成物、および炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤処理液 - Google Patents
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Description
しかし、シリコーン系油剤は加熱により架橋反応が進行して高粘度化し、その粘着物が前駆体繊維束の製造工程や、耐炎化工程で使用される繊維搬送ローラーやガイドなどの表面に堆積しやすかった。そのため、前駆体繊維束や耐炎化繊維束が、繊維搬送ローラーやガイドに巻き付いたり引っかかったりして断糸するなどの操業性低下を引き起こす原因になることがあった。
近年、炭素繊維の需要拡大により、生産設備の大型化、生産効率の向上の要望が高まる中、上記の焼成工程におけるケイ素化合物の生成による工業的な生産性の低下は解決しなければならない課題の1つである。
また、空気中250℃で2時間加熱した後の残存率が80質量%以上である耐熱樹脂とシリコーンとを組み合わせた油剤組成物が提案されている(特許文献2参照)。
さらに、ビスフェノールA系の芳香族化合物とアミノ変性シリコーンとを組み合わせた油剤組成物(特許文献3、4参照)や、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の脂肪酸エステルを主成分とする油剤組成物(特許文献5参照)が提案されている。
また、分子内に3個以上のエステル基を有するエステル化合物を用いることによりシリコーン含有量を低減させた油剤組成物が提案されている(特許文献6参照)。
さらに、反応性官能基を有する化合物を10質量%以上含み、シリコーン化合物を含有しない、またはシリコーン化合物を含有する場合はケイ素質量に換算して2質量%以下の範囲とする油剤組成物が提案されている(特許文献7参照)。
また、特許文献2に記載の油剤組成物は、耐熱樹脂としてビスフェノールA系の芳香族エステルを用いているので耐熱性は極めて高いものの、単繊維間の融着を防止する効果が十分ではなかった。さらに、機械的物性に優れた炭素繊維束が安定して得られにくいという問題があった。
さらに、特許文献6に記載の油剤組成物の場合、分子内に3個以上のエステル基を有するエステル化合物だけでは耐炎化工程における集束性を維持することが困難であった。そのため、シリコーン化合物が必須成分となっており、焼成工程において問題となるケイ素化合物の発生は避けられない。
また、特許文献7に記載の油剤組成物は、100〜145℃における油剤組成物の粘度を上げることで油剤付着性を高めることができるが、粘度が高いがために油剤処理後の前駆体繊維束が紡糸工程において繊維搬送ローラーに付着し、繊維束が巻き付くなどの工程障害を引き起こす問題があった。
一方、シリコーン系油剤では、上述したように、高粘度化による操業性の低下やケイ素化合物の生成による工業的な生産性の低下が問題であった。
つまり、シリコーン系油剤による操業性や工業的な生産性の低下の問題と、シリコーン含有量を低減した、あるいは非シリコーン成分のみの油剤組成物による融着防止性、前駆体繊維束の集束性、炭素繊維束の機械的物性の低下の問題は表裏一体の関係にあり、従来技術ではこの両者の課題を全て解決することはできない。
この炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤は、下記式(1)で示されることが好ましい。
この炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤は、下記式(2)で示されることが好ましい。
ここで、前記炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤100質量部に対して、前記非イオン系界面活性剤を20〜150質量部含有することが好ましい。
さらに、前記炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤100質量部に対して、酸化防止剤を1〜5質量部含有することが好ましい。
また、本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤処理液は、前記炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤組成物が水中で分散していることを特徴とする。
[炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤]
本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤(以下、単に「油剤」とも表記する。)は、特定のシクロヘキサンジカルボン酸エステルであり、アクリル繊維からなる油剤処理前の炭素繊維前駆体アクリル繊維束へ付与される。
以下、本明細書中において、油剤処理前の炭素繊維前駆体アクリル繊維束を「前駆体繊維束」という。
また、シクロヘキサンジカルボン酸エステルは、後述する界面活性剤を用い、乳化法によって水分中に分散しやすいため、前駆体繊維束に均一に付着しやすく、良好な機械的物性を有する炭素繊維束を得るための炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造に効果的である。
シクロヘキサンジカルボン酸は、酸無水物であってもよく、炭素数1〜3の短鎖アルコールとのエステルであってもよい。炭素数1〜3の短鎖アルコールとしては、メタノール、エタノール、ノルマル又はイソプロパノールが挙げられる。
1価の脂肪族アルコールの炭素数は8〜22である。炭素数が8以上であれば、シクロヘキサンジカルボン酸エステルの熱的安定性を良好に維持できるので、耐炎化工程において十分な融着防止効果が得られる。一方、炭素数が22以下であれば、シクロヘキサンジカルボン酸エステルの粘度が高くなりすぎず、固形化しにくいので、油剤であるシクロヘキサンジカルボン酸エステルを含む油剤組成物のエマルションを容易に調製でき、油剤が前駆体繊維束に均一に付着する。
1価の脂肪族アルコールの炭素数は、上記の観点から、12〜22が好ましく、15〜22がより好ましい。
これら脂肪族アルコールは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
多価アルコールの炭素数は、上記の観点から、5〜10が好ましく、5〜8がより好ましい。
このような多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−イソプロピル−1,4−ブタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の2価アルコール;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、グリセリン等の3価アルコールなどが挙げられるが、油剤組成物を低粘度下し、均一に油剤を前駆体繊維束に付着させる観点から、2価アルコールが好ましい。
オキシアルキレン基の炭素数が2以上であれば、シクロヘキサンジカルボン酸エステルの熱的安定性を良好に維持できるので、耐炎化工程において十分な融着防止効果が得られる。一方、オキシアルキレン基の炭素数が4以下であれば、シクロヘキサンジカルボン酸エステルの粘度が高くなりすぎず、固形化しにくいので、油剤であるシクロヘキサンジカルボン酸エステルを含む油剤組成物のエマルションを容易に調製でき、油剤が前駆体繊維束に均一に付着させることが可能となる。
炭素数2〜10の多価アルコールとオキシアルキレン基の炭素数が2〜4のポリオキシアルキレングリコールとは、両方用いてもよく、いずれか一方用いてもよい。
R1およびR2は、同じ構造であってもよいし、個々に独立した構造であってもよい。
アルキル基としては、例えばn−およびiso−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−およびiso−ノニル基、n−およびiso−デシル基、n−およびiso−ウンデシル基、n−およびiso−ドデシル基、n−およびiso−トリデシル基、n−およびiso−テトラデシル基、n−およびiso−ヘキサデシル基、n−およびiso−ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル、並びにドコシル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、例えばオクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、オレイル基、ガドレイル基、並びに2−エチルデセニル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、例えば1−および2−オクチニル基、1−および2−ノニニル基、1−および2−デシニル基、1−および2−ウンデシニル基、1−および2−ドデシニル基、1−および2−トリデシニル基、1−および2−テトラデシニル基、1−および2−ヘキサデシニル基、1−および2−ステアリニル基、1−および2−ノナデシニル基、1−および2−エイコシニル基、1−および2−ヘンイコシニル基、並びに1−および2−ドコシニル基等が挙げられる。
反応温度は、好ましくは160〜250℃、より好ましくは180〜230℃である。
縮合反応に供するカルボン酸成分とアルコール成分のモル比は、シクロヘキサンジカルボン酸1モルに対して、炭素数8〜22の1価の脂肪族アルコールが1.8〜2.2モルが好ましく、1.9〜2.1モルがより好ましい。
尚、エステル化触媒を用いる場合は、縮合反応後、触媒を不活性化して、吸着剤により除去することが、ストランド強度の観点から好ましい。
R3およびR5の場合、炭化水素基の炭素数が8以上であれば、シクロヘキサンジカルボン酸エステルの熱的安定性を良好に維持できるので、耐炎化工程において十分な融着防止効果が得られる。一方、炭化水素基の炭素数が22以下であれば、シクロヘキサンジカルボン酸エステルの粘度が高くなりすぎず、固形化しにくいので、油剤であるシクロヘキサンジカルボン酸エステルを含む油剤組成物のエマルションを容易に調製でき、油剤が前駆体繊維束に均一に付着する。R3およびR5の炭化水素基の炭素数は、それぞれ独立して、12〜22好ましく、15〜22が更に好ましい。
R3およびR5は、同じ構造であってもよいし、個々に独立した構造であってもよい。
R4が炭化水素基の場合、炭素数は5〜10が好ましく、ポリアルキレングリコールから2つの水酸基を除去した残基の場合、オキシアルキレン基の炭素数は4が好ましい。
R3およびR5は、同じ構造であってもよいし、個々に独立した構造であってもよい。
R4が炭素数2〜10の多価アルコールに由来する場合、R4は、直鎖状もしくは分岐鎖状の飽和又は不飽和の2価の炭化水素基が好ましく、具体的には、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基の任意の炭素原子から水素を1つ取除いた置換基が好ましく挙げられる。炭素数は、前述のとおり、5〜10が好ましく、5〜8がより好ましい。
アルキル基としては、例えばエチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、n−およびiso−ヘプチル基、n−およびiso−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−およびiso−ノニル基、n−およびiso−デシル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、例えばエテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、例えばエチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、へキシニル基、へプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基等が挙げられる。
一方、R4がポリオキシアルキレングリコールに由来する場合、R4は、ポリオキシアルキレングリコールから2つの水酸基を除去した二価の残基であり、具体的には、−(OA)p−1−A−で表わされる(ここで、OAは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基、pは平均モル数を示す。)。pは、1〜15が好ましく、1〜10がより好ましく、2〜8が更に好ましい。
オキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシテトラメチレン基、オキシブチレン基などが挙げられる。
縮合反応に供するカルボン酸成分とアルコール成分のモル比は、副反応を抑制する観点から、シクロヘキサンジカルボン酸1モルに対して、炭素数8〜22の1価の脂肪族アルコールを0.8〜1.6モル、且つ炭素数2〜10の多価アルコール及び/又はポリオキシアルキレングリコールを0.2〜0.6モル用いるのが好ましく、炭素数8〜22の1価の脂肪族アルコールが0.9〜1.4モル、且つ炭素数2〜10の多価アルコール及び/又はポリオキシアルキレングリコールを0.3〜0.55モル用いるのがより好ましく、炭素数8〜22の1価の脂肪族アルコールを0.9〜1.2モル、且つ炭素数2〜10の多価アルコール及び/又はポリオキシアルキレングリコールを0.4〜0.55モル用いるのが更に好ましい。
また、縮合反応に供するアルコール成分中、炭素数8〜22の1価の脂肪族アルコールと、炭素数2〜10の多価アルコールとポリオキシアルキレングリコールとの合計モル比は、炭素数8〜22の1価の脂肪族アルコール1モルに対して、炭素数2〜10の多価アルコールとポリオキシアルキレングリコールとの合計0.1〜0.6モルが好ましく、0.2〜0.6モルがより好ましく、0.4〜0.6モルが更に好ましい。
なお、1分子中のシクロヘキシル環の数は、油剤組成物としたときの粘度が低く、水中に分散し易くなるうえに、エマルションの安定性が良好なため、1または2が好ましい。
本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤組成物(以下、単に「油剤組成物」とも表記する。)は、上述した本発明の油剤と、非イオン系界面活性剤とを含有する。
非イオン系界面活性剤の含有量は、油剤100質量部に対し、20〜150質量部が好ましく、20〜100質量部がより好ましい。非イオン系界面活性剤の含有量が20質量部以上であれば乳化しやすく、乳化物の安定性が良好となる。一方、非イオン系界面活性剤の含有量が150質量部以下であれば、油剤組成物が付着した前駆体繊維束の集束性が低下するのを抑制できる。加えて、該前駆体繊維束を焼成して得られる炭素繊維束の機械的物性が低下しにくい。
これら非イオン系界面活性剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
R6およびR7は、EO、POとの均衡、その他の油剤組成物成分を考慮して決定されるが、水素原子、あるいは炭素数1〜5の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、より好ましくは水素原子である。
x、y、zはそれぞれ独立して、1〜500であり、20〜300が好ましい。
また、xおよびzの合計と、yとの比(x+z:y)が90:10〜60:40であることが好ましい。
さらに、ブロック共重合型ポリエーテルは、100℃における動粘度が300〜15000mm2/sであることが好ましい。動粘度が上記範囲内であれば、油剤組成物の過剰な繊維内部への浸透を防ぎ、かつ前駆体繊維束に付与した後の乾燥工程において、油剤組成物の粘性により搬送ローラー等に単繊維が取られて巻きつくなどの工程障害が起こりにくくなる。
これらの中でも、油剤組成物を効率よく乳化するために、その他の油剤組成物成分に馴染みやすい適度な親油性を付与できる点でドデシル基が特に好ましい。
なお、R8は油剤組成物の親油性に関与する要素であり、nは油剤組成物の親水性に関与する要素である。従って、nの値は、R8との組み合わせにより適宜決定される。
酸化防止剤の含有量は、油剤100質量部に対し、1〜5質量部が好ましく、1〜3質量部がより好ましい。酸化防止剤の含有量が1質量部以上であれば酸化防止効果が十分に得られる。一方、酸化防止剤の含有量が5質量部以下であれば、酸化防止剤が油剤組成物中に均一に分散しやすくなる。
フェノール系酸化防止剤の具体例としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、トリエチレングリコールビス〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート等が挙げられる。
硫黄系の酸化防止剤の具体例としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート等が挙げられる。
これら酸化防止剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
帯電防止剤としては公知の物質を用いることができる。帯電防止剤はイオン型と非イオン型に大別され、イオン型としてはアニオン系、カチオン系及び両性系があり、非イオン型ではポリエチレングリコール型、多価アルコール型がある。帯電防止の観点からイオン型が好ましく、中でも脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキシド付加物硫酸エステル塩、高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキシド付加物硫酸リン酸エステル塩、第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤、高級アルコールエチレンオキシド付加物ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステルなどが好ましく用いられる。
これら帯電防止剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
このように、本発明の油剤および油剤組成物によれば、従来のシリコーンを主成分とする油剤組成物の問題と、シリコーンの含有率を低減した、あるいは非シリコーン成分のみの油剤組成物の問題を共に解決できる。
以下、本発明の油剤組成物を用いて前駆体繊維束を油剤処理し、炭素繊維前駆体アクリル繊維束を製造する方法の一例について説明する。
炭素繊維前駆体アクリル繊維束は、例えば本発明の油剤組成物を、水膨潤状態の前駆体繊維束に付与し(油剤処理)、ついで油剤処理された前駆体繊維束を乾燥緻密化することで得られる。
アクリロニトリル系重合体は、アクリロニトリルを主な単量体とし、これを重合して得られる重合体である。アクリロニトリル系重合体は、アクリロニトリルのみから得られるホモポリマーであってもよく、主成分であるアクリロニトリルに加えて他の単量体を併用したアクリロニトリル系共重合体であってもよい。
アクリロニトリルと共重合可能なビニル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有ビニル系単量体がより好ましい。アクリロニトリル系共重合体におけるカルボキシル基含有ビニル系単量体単位の含有量は0.5〜2.0質量%が好ましい。
これらビニル系単量体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、紡糸原液は適正な粘度・流動性を必要とするため、重合体濃度は25質量%を超えない範囲が好ましい。
凝固浴として溶剤を含む水溶液を用いる場合、水溶液中の溶剤濃度は、ボイドがなく緻密な構造を形成させ高性能な炭素繊維束を得られ、かつ延伸性が確保でき生産性に優れる等の理由から、50〜85質量%、凝固浴の温度は10〜60℃が好ましい。
浴中延伸は、通常50〜98℃の水浴中で1回あるいは2回以上の多段に分割するなどして行い、空中延伸と浴中延伸の合計倍率が2〜10倍になるように凝固糸を延伸するのが、得られる炭素繊維束の性能の点から好ましい。
乳化粒子の平均粒子径が上記範囲内であれば、前駆体繊維束の表面に油剤をより均一に付与できる。
なお、油剤処理液中の乳化粒子の平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、「LA−910」)を用いて測定することができる。
本発明の油剤であるシクロヘキサンジカルボン酸エステルと非イオン系界面活性剤などを混合して油剤組成物とし、これを攪拌しながら水を加え、油剤組成物が水に分散したエマルション(水系乳化液)を得る。
酸化防止剤を含有させる場合は、酸化防止剤を予めシクロヘキサンジカルボン酸エステルに溶解しておくことが好ましい。
各成分の混合または水中分散は、プロペラ攪拌、ホモミキサー、ホモジナイザー等を使用して行うことができる。特に、高粘度の油剤組成物を用いて水系乳化液を調製する場合には、150MPa以上に加圧可能な超高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。
なお、「所定の濃度」は油剤処理時の前駆体繊維束の状態によって調整される。
浴中延伸の後に洗浄を行う場合は、浴中延伸および洗浄を行った後に得られる水膨潤状態にある繊維束に油剤処理液を付着することもできる。
これらの方法の中でも、均一付着の観点から、前駆体繊維束に十分に油剤処理液を浸透させ、余分な処理液を除去するディップ付着法が好ましい。より均一に付着するためには油剤処理の工程を2つ以上の多段にし、繰り返し付与することも有効である。
乾燥緻密化の温度は、繊維のガラス転移温度を超えた温度で行う必要があるが、実質的には含水状態から乾燥状態によって異なることもある。例えば温度が100〜200℃程度の加熱ローラーによる方法にて緻密乾燥化するのが好ましい。このとき加熱ローラーの個数は、1個でもよく、複数個でもよい。
ここで、加圧水蒸気延伸とは、加圧水蒸気雰囲気中で延伸を行う方法である。加圧水蒸気延伸は、高倍率の延伸が可能であることから、より高速で安定な紡糸が行えると同時に、得られる繊維の緻密性や配向度向上にも寄与する。
ここで、「乾燥繊維質量」とは、乾燥緻密化処理された後の前駆体繊維束の乾燥繊維質量のことである。
メチルエチルケトンによるソックスレー抽出法に準拠し、90℃のメチルエチルケトンに炭素繊維前駆体アクリル繊維束を8時間浸漬させて油剤組成物を抽出し、抽出前の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の質量W1、および抽出後の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の質量W2をそれぞれ測定し、下記式(i)により油剤組成物の付着量を求める。
油剤組成物の付着量(質量%)=(W1−W2)/W1×100 ・・・(i)
耐炎化工程では、炭素繊維前駆体アクリル繊維束を酸化性雰囲気下で加熱処理して耐炎化繊維束に転換する。
耐炎化条件としては、酸化性雰囲気中200〜300℃の緊張下、密度が好ましくは1.28〜1.42g/cm3、より好ましくは1.29〜1.40g/cm3になるまで加熱するのがよい。密度が1.28g/cm3未満であると、次の工程である炭素化工程の際に単繊維間接着が起こりやすく、炭素化工程で糸切れが発生する。また、密度が1.42g/cm3より大きくするためには、耐炎化工程が長くなり、経済性の面から好ましくない。雰囲気については、空気、酸素、二酸化窒素など公知の酸化性雰囲気を採用できるが、経済性の面から空気が好ましい。
炭素化工程では、耐炎化繊維束を不活性雰囲気下で炭素化して炭素繊維束を得る。
炭素化は最高温度が1000℃以上の不活性雰囲気で行う。不活性雰囲気を形成するガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウムなどのいずれの不活性ガスでも差し支えないが、経済面から窒素を用いることが好ましい。
炭素化工程の初期の段階、すなわち処理温度300〜400℃では、繊維の成分であるポリアクリロニトリル共重合体の切断および架橋反応が起きる。この温度領域においては300℃/分以下の昇温速度で緩やかに繊維の温度を上げることが、最終的に得られる炭素繊維束の機械的物性を向上させるために好ましい。
また、処理温度400〜900℃においてはポリアクリロニトリル共重合体の熱分解が起こり、次第に炭素構造が構築される。この炭素構造を構築する段階においては、炭素構造の規則配向が促されるため、緊張下で延伸をかけながら処理するのが好ましい。よって、900℃以下における温度勾配や延伸(張力)をコントロールするために、最終的な炭素化工程とは別に前工程(前炭素化工程)を設置することがより好ましい。
黒鉛化の条件としては、最高温度が2000℃以上の不活性雰囲気中、伸長率3〜15%の範囲で伸長しながら行うことが好ましい。伸長率が3%未満の場合は十分な機械的物性を有する高弾性の炭素繊維束(黒鉛化繊維束)が得らにくい。これは、所定の弾性率を有する炭素繊維束を得ようとする場合に、伸長率の低い条件ほどより高い処理温度が必要であるためである。一方、伸長率が15%を超える場合は、表層と内部において、伸長による炭素構造の成長促進効果の差が大きくなり、不均一な炭素繊維束を形成し、物性が低下する。
表面処理の方法に制限はないが、電解質溶液中で電解酸化する方法が好ましい。電解酸化は、炭素繊維束の表面で酸素を発生させることで表面に含酸素官能基を導入し、表面改質処理をするものである。
電解質としては、硫酸、塩酸、硝酸などの酸やそれらの塩類を用いることができる。
電解酸化の条件として、電解液の温度は室温以下、電解質濃度は1〜15質量%、電気量は100クーロン/g以下が好ましい。
また、この炭素繊維前駆体アクリル繊維束を焼成して得られる炭素繊維束は、機械的物性に優れ、高品質であり、様々な構造材料に用いられる繊維強化樹脂複合材料に用いる強化繊維として好適である。
本実施例に用いた各成分、および各種測定方法、評価方法は以下の通りである。
<シクロヘキサンジカルボン酸エステル>
・A―1:1,4−シクロヘキサンジカルボン酸とオレイルアルコール(モル比1.0:2.0)からなるエステル化合物(上記式(1)の構造で、R1およびR2が共にオレイル基であるエステル化合物)
・A―2:1,4−シクロヘキサンジカルボン酸とオレイルアルコールと3−メチル1,5−ペンタンジオール(モル比2.0:2.0:1.0)からなるエステル化合物(上記式(2)の構造で、R3およびR5が共にオレイル基であり、R4が−CH2CH2CHCH3CH2CH2−であるエステル化合物)
・A−3:1,4−シクロヘキサンジカルボン酸とオレイルアルコールとポリオキシテトラメチレングリコール(平均分子量250)(モル比2.0:2.0:1.0)からなるエステル化合物(上記式(2)の構造で、R3およびR5が共にオレイル基であり、R4が−(CH2CH2CH2CH2O)n−,n=3.5であるエステル化合物)
A−1;
1Lの四つ口フラスコに、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸メチル(小倉合成工業株式会社製)180g(0.9モル)と、オレイルアルコール(新日本理化株式会社製、商品名:リカコール90B)486g(1.8モル)と、触媒としてジブチルスズオキシド(和光純薬工業株式会社製)0.33gを秤取り、窒素吹き込み下、200〜205℃で脱メタノール反応を行った。このときのメタノール留出量は57gであった。
その後、70〜80℃まで冷却し、85質量%リン酸(和光純薬工業株式会社製)0.34gを加え30分攪拌を続け、反応系が白濁したことを確認し、さらに吸着剤(協和化学工業株式会社製、商品名:キョーワード600S)1.1gを加え30分間攪拌した後、濾過を行い、A−1のエステル化合物を得た。
1Lの四つ口フラスコに、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸メチル(小倉合成工業株式会社製)240g(1.2モル)と、オレイルアルコール(新日本理化株式会社製、商品名:リカコール90B)324g(1.2モル)と、3−メチル−1,5−ペンタンジオール(和光純薬工業株式会社製)70.8g(0.6モル)と、触媒としてジブチルスズオキシド(和光純薬工業株式会社製)0.32gを秤取り、窒素吹き込み下、200〜205℃で脱メタノール反応を行った。このときのメタノール留出量は76gであった。
その後、70〜80℃まで冷却し、85質量%リン酸(和光純薬工業株式会社製)0.33gを加え30分攪拌を続け、反応系が白濁した事を確認し、さらに吸着剤(協和化学工業株式会社製、商品名:キョーワード600S)1.1gを加え30分間攪拌した後、濾過を行い、A−2のエステル化合物を得た。
1Lの四つ口フラスコに、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸メチル(小倉合成工業株式会社製)240g(1.2モル)と、オレイルアルコール(新日本理化株式会社製、商品名:リカコール90B)324g(1.2モル)と、ポリオキシテトラメチレングリコール(BASF社製、平均分子量250)150g(0.6モル)と、触媒としてジブチルスズオキシド(和光純薬工業株式会社製)0.36gを秤取り、窒素吹き込み下、200〜205℃で脱メタノール反応を行った。このときのメタノール留出量は76gであった。
その後、70〜80℃まで冷却し、85質量%リン酸(和光純薬工業株式会社製)0.37gを加え30分攪拌を続け、反応系が白濁した事を確認し、さらに吸着剤(協和化学工業株式会社製、商品名:キョーワード600S)1.3gを加え30分間攪拌した後、濾過を行い、A−3のエステル化合物を得た。
なお、上述したエステル化合物A−1〜A−3は、脱メタノール反応によるエステル交換反応法で合成したが、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸とアルコールからのエステル化反応でも得ることができる。
・B−1:トリイソデシルトリメリテート(花王株式会社製、商品名:トリメックスT−10)
・B−2:ポリオキシエチレンビスフェノールAラウリン酸エステル(花王株式会社製、商品名:エキセパールBP−DL)
・C−1:トリイソオクタデカン酸トリメチロールプロパン(和光純薬工業株式会社製)
・C−2:ペンタエリトリトールテトラステアラート(東京化成工業株式会社製、製品コード:P0739)
・D−1:1級側鎖アミノ変性シリコーン(Gelest,Inc.社製、商品名:AMS−132)
・D−2:両末端アミノ変性シリコーン(Gelest,Inc.社製、商品名:DMS−A21)
・E−1:上記式(3)の構造で、x=75、y=30、z=75、R6およびR7が共に水素原子であるPO/EOブロック共重合型ポリエーテル(三洋化成工業株式会社、商品名:ニューポールPE−68)
・E−2:上記式(4)の構造で、n=9、R8がドデシル基であるポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル(花王株式会社、商品名:エマルゲン109P)
・n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(株式会社エーピーアイ コーポレーション製、商品名:トミノックスSS)
<油剤付着量の測定>
炭素繊維前駆体アクリル繊維束を105℃で1時間乾燥させた後、メチルエチルケトンによるソックスレー抽出法に準拠し、90℃のメチルエチルケトンに8時間浸漬して付着した油剤組成物を溶媒抽出した。抽出前の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の質量W1、および抽出後の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の質量W2をそれぞれ測定し、上記式(i)により油剤組成物の付着量を求めた。なお、油剤付着量の測定は、油剤組成物がその効力を発現する適正な範囲で前駆体繊維束に付与されていることを確認するものである。
炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造過程の最終ローラー、すなわち該繊維束をボビンに巻き取る直前のローラー上での炭素繊維前駆体アクリル繊維束の状態を目視にて観察し、以下の評価基準にて集束性を評価した。なお、集束性の評価は、炭素繊維前駆体アクリル繊維束の生産性、続く炭素化工程におけるハンドリング性を考慮した炭素繊維前駆体アクリル繊維束の品質を評価するものである。
A:集束しており、トウ幅が一定で、隣接する繊維束と接触しない。
B:集束しているが、トウ幅が一定ではない、あるいはトウ幅が広い。
C:繊維束中に空間があり、集束していない。
炭素繊維前駆体アクリル繊維束を24時間連続して製造したときに、搬送ローラーへ単繊維が巻き付き、除去した頻度により操業性を評価した。評価基準は以下の通りとした。なお、操業性の評価は、炭素繊維前駆体アクリル繊維束の安定生産の目安となる指標である。
A:除去回数(回/24時間)が1回以下。
B:除去回数(回/24時間)が2〜5回。
C:除去回数(回/24時間)が6回以上。
炭素繊維束を長さ3mmに切断し、アセトン中に分散させ、10分間攪拌した後の全単繊維数と、単繊維同士が融着している数(融着数)を計数し、単繊維100本当たりの融着数を算出し、以下の評価基準にて評価した。なお、単繊維間融着数の測定は、炭素繊維束の品質を評価するものである。
A:融着数(個/100本)が1個以下。
C:融着数(個/100本)が1個超。
炭素繊維束の製造を開始し、定常安定化した状態で炭素繊維束のサンプリングを行い、JIS−R−7608に規定されているエポキシ樹脂含浸ストランド法に準じて、炭素繊維束のストランド強度を測定した。なお、測定回数は10回とし、その平均値を評価の対象とした。
耐炎化工程におけるシリコーン由来のケイ素化合物飛散量は、炭素繊維前駆体アクリル繊維束と、それを耐炎化した耐炎化繊維束のケイ素(Si)含有量をICP発光分析法により測定し、それらの差から計算されるSi量の変化を耐炎化工程で飛散したSi量(Si飛散量)とし、評価の指標とした。
具体的には、炭素繊維前駆体アクリル繊維束および耐炎化繊維束をそれぞれ鋏で細かく粉砕した試料を密閉るつぼに50mg秤量し、粉末状としたNaOH、KOHを各0.25g加え、マッフル炉にて210℃で150分間加熱分解した。これを蒸留水で溶解し、100mLに定容したものを測定試料として用い、ICP発光分析法にて各測定試料のSi含有量を求め、下記式(ii)によりSi飛散量を求めた。ICP発光分析装置には、サーモエレクトロン株式会社製の「IRIS Advantage AP」を用いた。
Si飛散量(mg/kg)=炭素繊維前駆体アクリル繊維束のSi含有量−耐炎化繊維束のSi含有量 ・・・(ii)
<油剤組成物および油剤処理液の調製>
油剤としてシクロヘキサンジカルボン酸エステル(A−1)を用い、これに酸化防止剤を加熱混合して分散させた。この混合物に非イオン系界面活性剤(E−1、E−2)を加えて十分に混合攪拌し、油剤組成物を調製した。
ついで、油剤組成物の濃度が30質量%になるように、油剤組成物を攪拌しながらイオン交換水を加え、ホモミキサーで乳化した。この状態での乳化粒子の平均粒子径をレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、商品名:LA−910)を用いて測定したところ、1.0μm程度であった。
その後、さらに高圧ホモジナイザーにより、乳化粒子の平均粒子径が0.01〜0.2μmになるまで油剤組成物を分散させ、水系乳化液を得た。得られた水系乳化液をイオン交換水でさらに希釈し、油剤組成物の濃度が1.3質量%の油剤処理液を調製した。
油剤組成物中の各成分の種類と配合量(質量%)を表1に示す。
油剤を付着させる前駆体繊維束は、次の方法で調製した。アクリロニトリル系共重合体(組成比:アクリロニトリル/アクリルアミド/メタクリル酸=96.5/2.7/0.8(質量比))を21質量%の割合でジメチルアセトアミドに分散し、加熱溶解して紡糸原液を調製し、濃度67質量%のジメチルアセトアミド水溶液を満たした38℃の凝固浴中に孔径(直径)50μm、孔数50000の紡糸ノズルより吐出し凝固糸とした。凝固糸は水洗槽中で脱溶媒するとともに3倍に延伸して水膨潤状態の前駆体繊維束とした。
先に得られた油剤処理液を満たした油剤処理槽に水膨潤状態の前駆体繊維束を導き、油剤を付与させた。
その後、油剤が付与された前駆体繊維束を表面温度150℃のローラーにて乾燥緻密化した後に、圧力0.3MPaの水蒸気中で5倍延伸を施し、炭素繊維前駆体アクリル繊維束を得た。得られた炭素繊維前駆体アクリル繊維束のフィラメント数は50000本、単繊維繊度は1.3dTexであった。
製造工程における集束性および操業性を評価し、得られた炭素繊維前駆体アクリル繊維束の油剤付着量を測定した。結果を表1に示す。
得られた炭素繊維前駆体アクリル繊維束を、220〜260℃の温度勾配を有する耐炎化炉に40分かけて通して耐炎化し、耐炎化繊維束とした。
引き続き、該耐炎化繊維束を窒素雰囲気中で400〜1400℃の温度勾配を有する炭素化炉を3分間かけて通過させて焼成し、炭素繊維束とした。
耐炎化工程におけるSi飛散量を測定した。また、得られた炭素繊維束の単繊維間融着数、およびストランド強度を測定した。これらの結果を表1に示す。
油剤組成物を構成する各成分の種類と配合量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして油剤組成物および油剤処理液を調製し、炭素繊維前駆体アクリル繊維束および炭素繊維束を製造し、各測定および評価を実施した。結果を表1に示す。
油剤組成物を構成する各成分の種類と配合量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして油剤組成物および油剤処理液を調製した。
なお、酸化防止剤は、芳香族エステル、鎖状脂肪族エステル、またはアミノ変性シリコーンのいずれかに予め分散させた。また、アミノ変性シリコーンと芳香族エステルを併用する場合は、芳香族エステルに非イオン系界面活性剤を攪拌混合した後にアミノ変性シリコーンを加えた。また、アミノ変性シリコーンを用い、芳香族エステル、鎖状脂肪族エステルを用いない比較例7、8の場合は、予め酸化防止剤を分散させたアミノ変性シリコーンに非イオン系界面活性剤を入れ混合攪拌した後に、イオン交換水を加えた。
このようにして調製した油剤処理液を用いた以外は、実施例1と同様にして炭素繊維前駆体アクリル繊維束および炭素繊維束を製造し、各測定および評価を実施した。結果を表1に示す。
全ての実施例において、炭素繊維束を連続的に製造していく上で、工程上、何ら問題がない状況であった。
また、シクロヘキサンジカルボン酸エステル以外の成分とその配合量が同じで、シクロヘキサンジカルボン酸エステルの構造が異なる場合(実施例1〜3)、シクロヘキサンジカルボン酸とオレイルアルコール、および3メチル1,5ペンタジオール(モル比2.0:2.0:1.0)からなるシクロヘキサンジカルボン酸エステル(A−2)を油剤として用いた実施例2の方が、炭素繊維束のストランド強度が高かった。
中でも芳香族エステルを含有せずに、鎖状脂肪族エステルと非イオン系界面活性剤と酸化防止剤からなる場合(比較例3、4)は、集束性、操業性およびストランド強度が著しく劣る結果であった。
また、芳香族エステルを含有するものの、酸化防止剤の割合が多い場合(比較例9)は、ストランド強度が著しく劣る結果であった。
アミノ変性シリコーンを含有させた場合(比較例6、7、8)、集束性および操業性は良好で、製造された炭素繊維束の融着も無く良好であった。また、各実施例と同等のストランド強度であった。しかし、シリコーンを用いたことにより発生する耐炎化工程でのケイ素飛散量が多く、工業的に連続して生産するためには焼成工程への負荷が大きいという問題があった。
本発明の油剤が付着した炭素繊維前駆体アクリル繊維束から得られた炭素繊維束は、プリプレグ化した後、複合材料に成形することもできる。また、炭素繊維束を用いた複合材料は、ゴルフシャフトや釣り竿などのスポーツ用途、さらには構造材料として自動車や航空宇宙用途、また各種ガス貯蔵タンク用途などに好適に用いることができ、有用である。
Claims (8)
- カルボン酸成分として、シクロヘキサンジカルボン酸と、アルコール成分として、炭素数8〜22の1価の脂肪族アルコールとの縮合反応により得られる、炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤。
- カルボン酸成分として、シクロヘキサンジカルボン酸と、アルコール成分として、炭素数8〜22の1価の脂肪族アルコールと、炭素数2〜10の多価アルコール及び/又はオキシアルキレン基の炭素数が2〜4のポリオキシアルキレングリコールとの縮合反応により得られる、炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤と、非イオン系界面活性剤を含有する、炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤組成物。
- 前記炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤100質量部に対して、前記非イオン系界面活性剤を20〜150質量部含有する、請求項5に記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤組成物。
- 前記炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤100質量部に対して、酸化防止剤を1〜5質量部含有する、請求項5または6に記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤組成物。
- 請求項5〜7のいずれか一項に記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤組成物が水中で分散している、炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤処理液。
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