JP2004207007A - 燃料電池セル及び燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】起動時間を大幅に短縮できる燃料電池セル及び燃料電池を提供する。
【解決手段】一方側が供給口とされ、他方側が排出口とされたガス流路29が軸長方向に形成されるとともに、固体電解質2cが燃料極2b及び空気極2dで挟持された発電部を有し、排出口側端部が、燃料ガス燃焼部として機能する柱状の燃料電池セル2であって、軸長方向の長さが120mm以下であり、軸長方向の熱伝導率が5W/m・k以上であることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は燃料電池セル及び燃料電池に関し、特に、起動を迅速に行うことができる燃料電池セル及び燃料電池に関するものである。
【0002】
【従来技術】
近年、次世代エネルギーとして、燃料電池セルのスタックを収納容器内に収容した燃料電池が種々提案されている。
【0003】
固体電解質型燃料電池は、複数の固体電解質型燃料電池セルからなるセルスタックを収納容器内に収容して構成されており、固体電解質を用いた燃料電池は作動温度が600〜1000℃と高いため、この温度まで燃料電池セルを加熱する必要がある。
【0004】
従来、円筒型の燃料電池セルが知られているが、この円筒型の燃料電池セルでは、その端部に非発電部が形成されているため、燃料電池セルが長くなるほど非発電部の割合が小さくなり、発電量が増大することや発電効率が高くなることなどから、燃料電池セルの長さは長い方がよいとされており、文献等では500mmを越える燃料電池セルや1000mm程度の燃料電池セルが紹介されている。
【0005】
このような長尺の円筒型燃料電池セルを用いた燃料電池においては、発電に関与しない余剰燃料(空気及び水素)を燃焼させる燃焼室を設け、この燃焼室内の燃焼ガスにより、燃料電池セルに導入される導入ガスを加熱するとともに、燃焼熱により間接的に燃料電池セルを加熱し、熱効率を高めることが行われている。
【0006】
また、この手法では燃料電池セル自体が熱伝導体となり、燃焼室で発生する燃焼熱を、燃料電池セルの排出口側端部から他端部に熱伝導させ、燃料電池セル全体が加熱されている(特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開平4−237963号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような長尺の燃料電池セルを用いる燃料電池では、燃料電池セル自体を熱伝導体として燃料電池セルを加熱する効果は小さくなっている。
【0009】
また、燃料電池セルが大きいために、急激に加熱すると燃料電池セル内部での温度差が大きくなり、破壊に至るため、徐々に昇温する必要がある。そのため、起動時間が非常に長くなり、加熱を開始してから燃料電池が発電を開始するまでに、長時間を要する。
【0010】
また、頻繁に起動停止を行うような運転の形態では、発電時間に対して、起動時間の割合が自ずと増えるため、発電が行えない昇温時間が長くなり、これにより格段に発電効率を低下させることになる。
【0011】
本発明は、起動時間を大幅に短縮できる燃料電池セル及び燃料電池を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の燃料電池セルは、一方側が供給口とされ、他方側が排出口とされたガス流路が軸長方向に形成されるとともに、固体電解質が燃料極及び空気極で挟持された発電部を有し、排出口側端部が、燃料ガス燃焼部として機能する柱状の燃料電池セルであって、軸長方向の長さが120mm以下であり、軸長方向の熱伝導率が5W/m・k以上であることを特徴とする。
【0013】
このような燃料電池セルでは、燃料電池セルの排出口側端部近傍で燃料ガスと酸素含有ガスとを混合させ、燃焼させることで、燃焼熱を発生させることができる。
【0014】
この燃焼熱を、燃料電池セル自身を熱伝導体として、燃料電池セルの排出口側端部と逆の端部にまで伝導する場合、燃料電池セルの長さが、燃焼熱を燃焼部と逆の端部に伝導する時間を決定する要素となる。本発明の燃料電池セルでは、燃料電池セルの長さを120mm以下とすることで、燃料電池の起動時間を大幅に短縮できる。
【0015】
また、燃料電池セルの熱伝導率も、熱伝導に要する時間を決定する要素であり、燃料電池セルの熱伝導率を高くすることで、燃料電池の起動時間を短くすることができる。具体的には燃料電池セルの燃料極を厚くする、あるいは、金属成分を多く含む支持体を用いることで、燃料電池セルの熱伝導率を高くすることができる。本発明の燃料電池セルでは、長さ方向の熱伝導率を5W/m・k以上とすることで、大幅に起動時間を短縮することができる。
【0016】
また、本発明の燃料電池セルは、扁平柱状であることを特徴とする。
【0017】
このような燃料電池セルでは、燃料電池セルの断面形状が扁平状になることにより、燃料電池セル1本当たりの発電面積を増加させることができるため、燃料電池セルの長さが短くなることによるセル一本当たりの発電量の低下を補うことができる。
【0018】
また、本発明の燃料電池セルは、排出口側端部に、ガス流路のガス流通量を抑制するガス排出抑制孔を有する蓋状部材が設けられていることを特徴とする。
【0019】
このような燃料電池セルは、仮に、燃料電池セル内に形成されたガス流路の断面積にばらつきがあったとしても、燃料電池セルのガス排出口側端部に、燃料電池セルの内部に設けられたガス流路のガス流通量を抑制し、流体抵抗を増大させるガス排出抑制孔を有する蓋状部材を設けることで、燃料電池セルに供給されるガス量は、燃料電池セルのガス流路の断面積に影響されず、ガス排出抑制孔を有する蓋状部材によって制御される。
【0020】
そのため、複数の燃料電池セルにそれぞれ供給されるガス量を容易に均一にすることができ、容易に各燃料電池セルの発電量のばらつきを抑制することができるため、発電量の低下や、発電効率の低下、燃料電池セルの破壊を防止できる。
【0021】
また、前記蓋状部材を、耐熱性、耐熱衝撃性、強度に優れ、酸化雰囲気、還元雰囲気で安定な部材とすることで、急激な加熱によっても燃料電池セルが破壊されることがなくなる。
【0022】
さらに、燃料電池セルが短いため、ガス流路を通過するガスの速度が速く、ガス利用率が低下する傾向があるが、蓋状部材のガス排出抑制孔により、ガスの流通量を抑制できるため、ガス利用率を向上できる。
【0023】
また、本発明の燃料電池は、収納容器内に、上記燃料電池セルを複数収納してなることを特徴とする。このような燃料電池では、燃料電池の起動時間を大幅に短縮できる。
【0024】
また、本発明の燃料電池は、収納容器内に燃料電池セルを加熱する加熱体を設けたことを特徴とする。
【0025】
このような燃料電池では、燃料電池セルの排出口側端部からの熱伝導による加熱に加え、収納容器内にも燃料電池セルを直接加熱する加熱体を設けることで、さらに、燃料電池セルが発電可能な温度に達するまでの時間が短縮され、起動時間を短縮することができる。
【0026】
また、本発明の燃料電池は、加熱体が面状加熱体であることを特徴とする。
【0027】
このような燃料電池では、加熱体を面状加熱体とし、燃料電池セルの側面に対向して配置することで、燃料電池セルの側面の大部分を同時に加熱することが可能となるため、燃料電池セルの温度差による破壊を防ぐことができると同時に、急速な加熱が可能となり、さらに、起動時間を短縮できる。
【0028】
また、このような加熱体による加熱の効果は、燃料電池の長さが短いほど大きくなり、また、熱伝導率が大きいほど大きくなる。
【0029】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の燃料電池の一形態を示すもので、符号1は断熱構造を有する収納容器を示している。
【0030】
収納容器1は、耐熱性金属からなる枠体(図示せず)と、この枠体の内面に設けられた断熱材(図示せず)とから構成されている。
【0031】
この収納容器1の内部には、複数の燃料電池セル2が集合した燃料電池セルスタック3が複数収納され、燃料電池セルスタック3を構成する燃料電池セル2の下端部は、燃料電池セル2の支持体を兼ねた燃料ガスタンク5の上蓋6に支持固定され、上端部は仕切り板7に支持固定されている。
【0032】
この仕切り板7により、収納容器1内に発電室9と燃焼室11が形成されている。また、この仕切り板7には酸素含有ガスを発電室9から燃焼室11に導入する酸素含有ガス排出孔13が形成されている。
【0033】
この燃焼室11に突出した燃料電池セル2の排出口側端部近傍で、余剰の燃料ガスを燃焼させ、発生した燃焼熱を燃料電池セル2の加熱に利用する。この燃焼室11に突出した燃料電池セル2の排出口側端部には、燃料電池セル2内のガス流通量を制御し、燃料電池セル2を急激な加熱から保護する蓋状部材14が設けられている。なお、燃焼室11には、起動時に着火するための着火源(図示せず)が設けられている。
【0034】
また、燃料ガスタンク5の上蓋6と底板並びに側板とで、燃料ガスタンク室15を構成しており、この燃料ガスタンク室15には燃料電池セル2の発電に要する燃料ガスを導入する燃料ガス導入管17が接合されている。
【0035】
燃料ガスタンク5の上蓋6にはガス通路(貫通孔)が形成され(図示せず)、このガス通路は燃料電池セル2のガス流路に連通しており、燃料ガスは、燃料ガス導入管17、燃料ガスタンク室15を介し、ガス通路、燃料電池セル2のガス流路を通過し、燃料電池セル2の排出口側端部に設けられた蓋状部材14のガス排出抑制孔から、燃焼室11へと導入される。
【0036】
そして、本発明の燃料電池では、例えば、燃料電池セル2の側方、すなわち、燃料電池セル2の側面と所定間隔をおいて燃料電池セル2を加熱する加熱体19が配置されている。加熱体19には、加熱体19に加熱用ガスを供給する加熱用ガス導入管21が接合されている。加熱体19に供給される加熱用ガスは、少なくとも燃料電池セル2に酸素を供給するために、酸素を含有し、さらに、加熱体19を燃焼バーナーとして用いる場合には可燃性ガスを含有する。発電や燃焼に用いられた排気ガスは燃焼室11の側方に設けられたガス排気管23より燃料電池外へ廃棄される。
【0037】
燃料電池セルスタック3は、例えば、図2に示すように、複数の燃料電池セル2を2列に整列させ、隣設した2列の最外部の燃料電池セル2の電極同士が導電部材25で接続され、これにより2列に整列した複数の燃料電池セル2が電気的に直列に接続されている。
【0038】
一方の燃料電池セル2と、他方の燃料電池セル2との間には、金属フェルト及び/又は金属板からなる集電部材27を介在させ、一方の燃料電池セル2の燃料極2bを、支持体2aに設けられたインターコネクタ2e、集電部材27を介して他方の燃料電池セル2の空気極2dに電気的に接続して、セルスタック3が構成されている。
【0039】
図3は燃料電池セル2の構造を具体的に説明するもので、燃料電池セル2は、断面が扁平状で、全体的に見て楕円柱状であり、弧状部mと、平坦部nがあり、その内部には複数のガス流路29が軸長方向に形成されている。
【0040】
この燃料電池セル2は、断面が扁平状で、全体的に見て楕円柱状の多孔質な支持体2aの外面に、金属を主成分とする多孔質な燃料極2b、緻密質な固体電解質2c、多孔質な導電性セラミックスからなる空気極2dを順次積層し、空気極2dと反対側の支持体2aの外面にインターコネクタ2eを形成して構成されている。
【0041】
この燃料電池セル2は、ガス流路29方向に長い形状であり、燃料電池セル2のガス流路29方向(軸長方向)の長さは、起動時間短縮のため、120mm以下であり、100mm以下が望ましく、さらに、80mm以下が望ましい。
【0042】
また、燃料電池セル2のガス流路29方向の熱伝導率は、起動時間短縮のため、5W/m・k以上であり、7.5W/m・k以上が望ましく、さらに、10W/m・k以上が望ましい。
【0043】
このように燃料電池セル2の軸長方向の熱伝導率を5W/m・k以上とするには、例えば、支持体2aに熱伝導率が大きいNi等を多く含有させることが有効である。また、同時に、支持体2aは多孔質であることが必要であり、また、支持体2aの熱膨張係数を固体電解質2cなどと合わせる必要があるため、Niと熱膨張係数の小さい無機粉末とを混合して支持体2aを作製する必要がある。
【0044】
従来、無機粉末としてY23を固溶したZrO2が用いられているが、例えば、これに変えて熱膨張係数の低いY23を無機粉末として用いることで、支持体2aのNi量を増加させることができ、支持体2aの熱伝導率を大きくすることができる。このように、燃料電池セル2の大部分を占める支持体2aの熱伝導率を大きくすることで燃料電池セル2の軸長方向の熱伝導率を大きくすることができる。また、高熱伝導率を有する支持体2aが燃料電池セル2で占める割合を増やすことで、燃料電池セル2の軸長方向の熱伝導率を大きくすることができる。
【0045】
燃料電池セル2において燃料極2b、固体電解質2c、空気極2dが重畳した部分が発電する部分である。
【0046】
燃料電池セル2の燃料極2b、固体電解質2c、空気極2dが重畳した部分は、発電室9の中央部に存在し、燃料電池セル2の両端部は、固体電解質2cの上面に空気極2dが形成されていない領域が形成されており、燃料電池セル2の両端部は発電に寄与していない。この空気極2dが形成されていない燃料電池セル2の両端部が燃料タンク上蓋6、仕切り板7に支持されている。また、緻密な固体電解質2cにより、発電室9内における固体電解質2cの内外のガス混合を防止している。
【0047】
図4は、排出口側端部に蓋状部材14を具備した燃料電池セル2を具体的に説明する斜視図である。蓋状部材14により、燃料電池セル2のガス流量を制御することができ、燃料電池セル2間のガス流量のばらつきを防止できる。また、燃料電池セル2を急激な加熱から保護できる。
【0048】
この蓋状部材14はキャップ形状をしており、ガス排出抑制孔31が形成された遮蔽板14a、燃料電池セル2に外嵌する環状体14bとから構成されている。
【0049】
この蓋状部材14を用いることで、仮に、燃料電池セル2内に形成されたガス流路29の形状が複数の燃料電池セル2間でばらついても、各燃料電池セル2に供給されるガス量を均一にすることができ、燃料電池の発電能力を向上させることができ、また、燃料枯れに伴い発生する金属成分の酸化による燃料電池セル2の電気的抵抗の増大や、空気枯れに伴い発生する固体電解質2cと、空気極2dとの剥離による燃料電池セル2の破壊を防止できる。
【0050】
図5は、排出口側端部に蓋状部材14を具備した燃料電池セル2を具体的に説明する断面図である。
【0051】
燃料電池セル2の排出口側端面33と、蓋状部材14のガス排出抑制孔31が設けられた遮蔽板14a間には共通ガス室35が形成されている。このように燃料電池セル2の排出口側端面33と遮蔽板14a間に共通ガス室35を設けることで、複数のガス流路29を通過するガスは一旦、共通ガス室35で合流するため、ガス排出抑制孔31は例えば一つだけでもよい。ガス排出抑制孔31の数は少ないほど蓋状部材14の生産性が向上し、また、部材としての強度も向上する。
【0052】
また、共通ガス室35を設けることで、燃料電池セル2と蓋状部材14との接点が減少するため、燃料電池セル2と蓋状部材14との取り付けが容易になる。
【0053】
燃料電池セル2内部に供給されるガスは、燃料電池セル2の排出口側端部とは逆側の端部からガス流路29に導入され、共通ガス室35を経て、蓋状部材14に設けられたガス排出抑制孔31を通過し、燃料電池セル2外に排出される。また、燃料電池セル2の外部には、他のガスが供給され、多孔質の燃料極2b、緻密質の固体電解質2c、多孔質の空気極2dが積層された発電部で、燃料極2bと空気極2d間の酸素濃度差に基づく発電が行われる。
【0054】
蓋状部材14は、余剰のガスの燃焼により急激に加熱される燃料電池セル2のの排出口側端部を保護する機能も併せ持つため、急激な加熱に伴う燃料電池セル2の破壊を防止することができる。
【0055】
また、燃料電池セル2はガス流路29が短いため、ガス利用率が低下する傾向にあるが、蓋状部材14を設けることで燃料電池セル2のガス流通量を抑制できるため、燃料利用率を高くすることができる。
【0056】
なお、この蓋状部材14は、耐熱性、耐熱衝撃性、強度に優れ、酸化雰囲気、還元雰囲気で安定なアルミナやジルコニア、安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニアなどが好適に用いられる。また、ガス排出抑制孔31は穴状であっても、スリット状であってもよいが、作製が容易であり、より精度よくガス量を制御できる点から、スリット状であることが望ましい。また、ガス排出抑制孔31は一つであっても、複数であってもよい。
【0057】
以上のように構成された燃料電池では、定常運転時には、外部からの酸素含有ガス(例えば空気)を加熱用ガス導入管21により、加熱体19を通じ、発電室9の燃料電池セル2間に噴出させるとともに、燃料ガス(例えば水素)を燃料ガス導入管17により、燃料ガスタンク室15を介し、燃料電池セル2のガス流路29内に供給し、発電室9における燃料電池セル2において発電させる。
【0058】
発電に用いられなかった余剰の燃料ガスは、ガス流路29の上端から蓋状部材14のガス排出抑制孔31を介して燃焼室11内に噴出し、発電に用いれらなかった余剰の酸素含有ガスは、酸素含有ガス排出孔13から燃焼室11内に噴出し、余剰の燃料ガスと余剰の酸素含有ガスを反応させて、燃料電池セル2の排出口側端部近傍で燃焼させ、燃焼ガスを発生させ、この燃焼ガスは燃焼室11の側方に設けられたガス排気管23から排出される。
【0059】
このような構造を有する燃料電池では、燃焼室11の燃料電池セル2の排出口側端部近傍で発生した燃焼熱が、燃料電池セル2自身を熱伝導媒体として、燃料電池セル2を加熱できる。
【0060】
また、起動時には外部からの酸素含有ガス(例えば空気)と可燃性ガスとを加熱用ガス導入管21により、加熱体19を通じ、発電室9の燃料電池セル2間に噴出させ、加熱体19の表面で燃焼させ、燃料電池セル2を燃料電池セル2の側面から直接加熱し、余剰の酸素含有ガスは、酸素含有ガス排出孔13から燃焼室11内に噴出する。さらに、燃料ガス導入管17により、燃料ガスタンク室15を介し、燃料電池セル2のガス流路29内を通過し、さらに、蓋状部材14に設けられたガス排出抑制孔31を通過し、燃焼室11に噴出した燃料ガスと、余剰の酸素含有ガスとは燃焼室11で燃焼し、燃料電池セル2を燃料電池セル2の燃焼室11側の排出口側端部から加熱し、さらに起動時間を短縮できる。
【0061】
従って、本発明では、燃料電池セル2のガス流路29方向の長さが120mm以下であるため、起動に要する時間を短縮することができる。また、燃料電池セル2のガス流路29方向の熱伝導率が5W/m・k以上であるため、起動に要する時間を短縮できる。
【0062】
さらに、このようなガス流路29方向の長さが120mm以下で、熱伝導率が5W/m・k以上の燃料電池セル2を、収納容器1内に設けた加熱体19により直接加熱することで、さらに、起動時間を短縮することができる。
【0063】
この加熱体19は、電気式のヒーターでも、ガス燃焼式のバーナーでもよい。エネルギー効率の点からはガス燃料式のバーナーが優れており、エネルギー効率を重視する場合、ガス燃焼式のバーナーを用いることが望ましい。また、電気式のヒーターは、制御が容易という点で望ましい。これらの加熱体19は、燃料電池セル2近傍に配置し、燃料電池セル2を直接加熱できるようにすることが望ましい。
【0064】
また、加熱体19は面状の加熱体19であることが望ましい。加熱体19を面状加熱体とし、燃料電池セル2の側面に対向して配置することで、燃料電池セル2の側面の大部分を同時に加熱することが可能となるため、燃料電池セルの温度差による破壊を防ぐことができると同時に、急速な加熱が可能となり、さらに、起動時間を短縮できる。
【0065】
また、発電に寄与しなかった余剰の燃料ガスと酸素含有ガスの燃焼熱を、熱交換器などを利用し、導入ガスの加熱に用いることも可能であり、これにより、さらに起動時間を短縮できる。例えば、収納容器1内の燃焼室11に熱交換器を設け、この熱交換器に加熱用ガス導入管21と、加熱体19を接続する。排出される燃焼ガスと、発電に用いられる酸素含有ガスと熱交換器でを熱交換し、酸素含有ガスを予熱する。予熱された酸素含有ガスを加熱体19に導入し、酸素含有ガスを燃料電池セル2に供給する。このような構造では、酸素含有ガスの予熱を行うためのバーナーを別途設ける必要がなく、小型にでき、しかも燃焼ガスを有効利用できる。
【0066】
なお、本発明は上記形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記形態では、図2に示したような楕円柱状で複数のガス流路29を有する燃料電池セル2を用いてセルスタック3を構成した例について説明したが、燃料電池セル2は円筒状で、ガス流路29が一つであっても良く、燃料電池セル2の形状は特に限定されるものではない。
【0067】
【実施例】
先ず、NiO粉末、8YSZ粉末(Y23を8モル含有するZrO2)とY23粉末とを混合し、この混合物に、ポアー剤と、PVAからなる有機バインダーと、水からなる溶媒とを加え、混合した支持体材料を押出成形して、内部にガス流路を有する扁平状の支持体成形体を作製し、これを乾燥した。
【0068】
この支持体成形体を用いて、焼成後に長さが50mm〜300mmとなるように支持体成形体を加工し、乾燥後、1000℃で仮焼した。
【0069】
次に、NiO粉末、Y23粉末を、NiOの金属Ni換算量とY23粉末との比が体積比で48:52となるように混合し、これにポアー剤を添加し、アクリル系バインダーとトルエンを加えて、燃料極材料スラリーを作製し、仮焼した支持体成形体表面に厚さが20μmになるよう印刷し、燃料極成形体を形成した。
【0070】
また、8YSZ粉末(Y23を8モル含有するZrO2)にアクリル系バインダーとトルエンを加えて得たスラリーからドクターブレード法にて厚み40〜60μmの固体電解質シート状成形体を作製した。
【0071】
次に、支持体成形体の仮焼体上に燃料極成形体を形成した表面に、上記固体電解質シート状成形体を、その両端間が平坦部で所定間隔をおいて離間するように巻き付け、乾燥し、1050℃で仮焼した。
【0072】
この後、LaCrO3系材料と、アクリル樹脂からなる有機バインダーと、トルエンからなる溶媒とを混合したインターコネクタ材料を用いてインターコネクタシート状成形体を作製し、先に作製した仮焼体の、露出した支持体成形体の仮焼体の平坦部外面に積層し、支持体成形体、燃料極成形体、固体電解質シート状成形体の仮焼体に、インターコネクタシート状成形体を積層した。次に、この積層体を脱バインダ処理し、大気中にて1500℃で同時焼成した。
【0073】
この積層体を、LaFeO3系材料粉末と、ノルマルパラフィンからなる溶媒を含有するペースト中に浸漬し、仮焼した固体電解質シート状成形体の表面に空気極成形体をディッピングにより形成し、また、上記ペーストを焼成したインターコネクタの外面に塗布し、1150℃で焼き付け、空気極を形成するとともに、インターコネクタの外面にP型半導体(図示せず)を形成し、図3に示すような本発明の燃料電池セル2を作製した。
【0074】
なお、支持体の長径(m−m間距離)は26mm、短径は3.5mm(n−n間距離)、固体電解質の厚みは40μm、空気極の厚みは50μm、燃料極の厚みは10μm、インターコネクタの厚みは50μm、P型半導体の厚みは50μmであった。また、それぞれの燃料電池セルの両端部にはそれぞれ15mmの非発電部を形成した。
【0075】
この燃料電池セル2の排出口側端部にZrO2製の蓋状部材14を外嵌した。
【0076】
蓋状部材14を外嵌した燃料電池セル2を用いて、起動試験を行った。燃料電池セル2のガス流路29に燃料ガスを流し、燃料電池セル2の排出口側に外嵌された蓋状部材14近傍で燃料ガスを燃焼させ、燃料電池セル2の他端部の温度を、熱電対を用いて測定し、800℃になるまでに要した時間を測定した。なお、燃料電池セル2の熱伝導率はJIS R1611に則り、測定した。
【0077】
表1に燃料電池セル2の熱伝導率が5W/m・kのとき、長さを50〜300mmの範囲で変化させ、燃料電池セル2の他端部の温度が800℃になるまでに要した時間を示す。
【0078】
【表1】
Figure 2004207007
【0079】
この表1の結果より、本発明の範囲外である燃料電池セル2の長さが120mmを超える試料No.5、6は、800℃に達するまでに約1時間程度かかっており、起動時間が長いことが判る。一方、本発明の燃料電池セル2の長さが120mm以下である試料No.1〜4では35分以下で800℃に達しており、十分、実用に耐えるものである。
【0080】
次に、燃料電池セルの長さを80〜120mmと変化させ、熱伝導率を2.5〜12.5W/m・kの範囲で変化させる以外は、上記と同様にし、燃料電池セル2の他端部が800℃になるまでに要した時間を測定し、その結果を表2に示す。
【0081】
【表2】
Figure 2004207007
【0082】
この表2から、本発明の範囲外である熱伝導率が5W/m・k未満である試料No.7、12、17では、800℃になるまでに要した時間がいずれも40分を超えており、起動時間が長いことが判る。
【0083】
一方、本発明の範囲である試料No.8〜11、13〜16、18〜21では、いずれも35分以内に、燃料電池セル2の他端部の温度が800℃に達しており、迅速な起動ができた。さらに、熱伝導率が7.5W/m・kの試料No.9、14、19では25分以内の起動が可能であり、より迅速な起動ができた。また、さらに、熱伝導率が10W/m・kの試料No.10、15、20では20分以内の起動が可能であり、さらに、迅速な起動ができた。
【0084】
以上の結果より、同じ熱伝導率で比較した場合、燃料電池セル2の長さが短い試料ほど短時間で昇温が可能であることから、燃料電池セル2の長さは120mm以下であることが必要である。また、さらに100mm以下であることが望ましく、特に燃料電池セル2の長さを80mm以下にすることで大幅に昇温時間を短縮できる。
【0085】
また、昇温時間を短縮するためには、燃料電池セル2の熱伝導係数を5W/m・k以上にすることが必要である。また、燃料電池セル2の熱伝導係数を7.5W/m・k以上にすることで、さらに昇温時間を短縮することができる。また、特に望ましくは、燃料電池セル2の熱伝導係数を10W/m・k以上にすることで、さらに大幅に昇温時間を短縮することができる。
【0086】
さらに、燃料電池セル2を加熱する加熱体19を設けることで、さらに起動時間を短縮することができることがわかる。
【0087】
【発明の効果】
本発明の燃料電池セルでは、片端に燃焼部を有する燃料電池セルの長さを120mm以下とし、熱伝導率を5W/m・k以上とすることで、燃料電池セルの加熱に要する時間を大幅に短縮することが可能となり、起動時間を大幅に短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の燃料電池を示す縦断面図である。
【図2】図1のセルスタックを示す横断面図である。
【図3】図1の燃料電池セルを示す横断面斜視図である。
【図4】本発明の燃料電池セルを示す斜視図である。
【図5】図4の燃料電池セルを示す断面図である。
【符号の説明】
1・・・収納容器
2・・・燃料電池セル
2b・・・燃料極
2c・・・固体電解質
2d・・・空気極
14・・・蓋状部材
19・・・加熱体
29・・・ガス流路
31・・・ガス排出抑制孔

Claims (6)

  1. 一方側が供給口とされ、他方側が排出口とされたガス流路が軸長方向に形成されるとともに、固体電解質が燃料極及び空気極で挟持された発電部を有し、排出口側端部が、燃料ガス燃焼部として機能する柱状の燃料電池セルであって、軸長方向の長さが120mm以下であり、軸長方向の熱伝導率が5W/m・k以上であることを特徴とする燃料電池セル。
  2. 扁平柱状であることを特徴とする請求項1記載の燃料電池セル。
  3. 排出口側端部に、ガス流路のガス流通量を抑制するガス排出抑制孔を有する蓋状部材が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の燃料電池セル。
  4. 収納容器内に請求項1乃至3のうちいずれかに記載の燃料電池セルを複数収納してなることを特徴とする燃料電池。
  5. 収納容器内に燃料電池セルを加熱する加熱体を設けたことを特徴とする請求項4記載の燃料電池。
  6. 加熱体は面状加熱体であることを特徴とする請求項5記載の燃料電池。
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