JP4461705B2 - 固体酸化物形燃料電池の運転方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体酸化物形燃料電池の運転方法であって、特に、運転開始時や運転停止時の予熱方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸化物イオン伝導体からなる固体電解質層を空気極層と燃料極層との間に挟んだ積層構造の発電セルを持つ固体電解質型燃料電池は、第三世代の発電用燃料電池として開発が進んでいる。発電セルでは、空気極側に酸化剤ガスとしての酸素(空気)が、燃料極側には燃料ガス(H2 、CO等)が供給される。空気極と燃料極は、ガスが固体電解質との界面に到達することができるように、いずれも多孔質とされている。
【0003】
空気極側に供給された酸素は、空気極層内の気孔を通って固体電解質層との界面近傍に到達し、この部分で、空気極から電子を受け取って酸化物イオン(O2-)にイオン化される。この酸化物イオンは、燃料極の方向に向かって固体電解質層内を拡散移動する。燃料極との界面近傍に到達した酸化物イオンは、この部分で、燃料ガスと反応して反応生成物(H2 O、CO2 等)を生じ、燃料極に電子を放出する。
【0004】
燃料に水素を用いた場合の電極反応は次のようになる。
空気極: 1/2 O2 + 2e- → O2-
燃料極: H2 + O2- → H2 O+2e-
全体 : H2 + 1/2 O2 → H2 O
【0005】
固体電解質層は、酸化物イオンの移動媒体であると同時に、燃料ガスと空気を直接接触させないための隔壁としても機能するので、ガス不透過性の緻密な構造となっている。この固体電解質層は、酸化物イオン伝導性が高く、空気極側の酸化性雰囲気から燃料極側の還元性雰囲気までの条件下で化学的に安定で、熱衝撃に強い材料から構成する必要があり、かかる要件を満たす材料として、イットリアを添加した安定化ジルコニア(YSZ)が一般的に使用されている。
【0006】
一方、電極である空気極(カソード)層と燃料極(アノード)層はいずれも電子伝導性の高い材料から構成する必要がある。空気極材料は、少なくとも700℃前後の高温の酸化性雰囲気中で化学的に安定でなければならないため、金属は不適当であり、電子伝導性を持つペロブスカイト型酸化物材料、具体的にはLaMnO3 もしくはLaCoO3 、または、これらのLaの一部をSr、Ca等に置換した固溶体が一般に使用されている。また、燃料極材料は、Ni、Coなどの金属、或いはNi−YSZ、Co−YSZなどのサーメットが一般的である。
【0007】
固体電解質型燃料電池には、1000℃前後の高温で作動させる高温作動型のものと、700℃前後の低温で作動させる低温作動型のものとがある。低温作動型の固体電解質型燃料電池は、例えば電解質であるイットリアを添加した安定化ジルコニア(YSZ)の厚さを10μm程度まで薄膜化して電解質の抵抗を低くすることにより、低温でも燃料電池として発電するように改良された固体電解質層を使用する。
【0008】
高温の固体電解質型燃料電池では、セパレータには、例えば、ランタンクロマイト(LaCrO3 )等の電子伝導性を有するセラミックスが用いられるが、低温作動型の固体電解質型燃料電池では、ステンレス等の金属材料を使用することができる。
【0009】
また、固体電解質型燃料電池の構造には、円筒型、モノリス型、及び平板積層型の3種類が提案されている。それらの構造のうち、低温作動型の固体酸化物型燃料電池には、金属のセパレータを使用できることから、金属のセパレータに形状付与しやすい平板積層型の構造が適している。
【0010】
平板積層型の固体電解質型燃料電池のスタックは、発電セル、集電体、セパレータを交互に積層した構造を持つ。一対のセパレータが発電セルを両面から挟んで、一方は空気極集電体を介して空気極と、他方は燃料極集電体を介して燃料極と接している。燃料極集電体には、Ni基合金等のスポンジ状の多孔質体を使用することができ、空気極集電体には、Ag基合金等の同じくスポンジ状の多孔質体を使用することができる。スポンジ状多孔質体は、集電機能、ガス透過機能、均一ガス拡散機能、クッション機能、熱膨脹差吸収機能等を兼ね備えるので、多機能の集電体材料として適している。
【0011】
セパレータは、発電セル間を電気接続すると共に、発電セルに対してガスを供給する機能を有するもので、燃料ガスをセパレータ外周面から導入してセパレータの燃料極層に対向する面から吐出させる燃料通路と、酸化剤ガスとしての空気をセパレータ外周面から導入してセパレータの空気極層に対向する面から吐出させる酸化剤通路とをそれぞれ有している。
【0012】
ところで、上記した固体電解質型燃料電池を運転する場合には、発電セルを作動温度(例えば、1000℃付近)まで予熱してから運転を開始する必要があり(特許文献1参照)、従来では、スタックの外周に配置したヒータで昇温させる方法や、外部より加熱したガスを燃料電池スタック内に導入する方法が採られている。これらは、何れも、発電セルを外周部より加熱するというものである。
【0013】
【特許文献】
特開平6−124721号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、発電セルの予熱を行う場合、燃料電池スタック全体の均熱性を保ちながら昇温させないと、発電セル内に温度分布が生じて熱応力が生まれ、発電セルの破損につながる恐れがある。このため、発電セルを外周部から加熱する方法では、均熱性を保ち難いがために非常に長い時間をかけて徐々に昇温させなくてはならず、運転開始までの待機時間が長くなるという問題がある。また、運転停止の際の降温動作においても、運転温度から一気に降温すると昇温時と同様に発電セルの破損等の問題が発生するため、適度に加熱しながら徐々に降温していくという過程を経ている。
【0015】
加えて、従来、燃料極層の材料として主にNiが用いられることから、起動時の昇温動作や、運転停止時の降温動作が繰り返えし行われることにより、燃料極層のNiが酸化し、発電時の還元による焼結収縮で電解質層との界面で剥離が生じるといった問題がある。このような燃料極層の剥離現象は、発電特性を悪化し、耐久性を著しく低下させる。このため、従来では、燃料極層のNiの酸化を防止するため、予熱時には不活性ガスボンベよりN2 等を導入するといった対策が採られている。
【0016】
本発明は、上記問題に鑑みて成されたもので、発電セルの破損や燃料極の酸化を防止しつつ、短時間で予熱を行うことができる好適な固体酸化物形燃料電池の運転方法を提供することを目的としている。
【0017】
【課題を解決するための手段】
すなわち、請求項1に記載の本発明は、固体電解質層の一方の面にNiを含む燃料極層を配し、他方の面に空気極層を配した発電セルとセパレータを交互に積層して燃料電池スタックを構成し、運転時に当該燃料電池スタックの内部に燃料ガスと酸化剤ガスを供給して発電反応を生じさせる固体酸化物形燃料電池の運転方法であって、運転開始時の予熱の際に、加熱手段により発電セルを外周部より加熱すると共に、昇温用ガス発生手段のバーナの燃焼熱によって水蒸気を発生させ、この水蒸気を用いた水蒸気改質法により炭化水素ガスを改質して、得られた爆発限界未満の水素を含む改質ガスと上記バーナの燃焼ガスとを前記セパレータの内部を通して前記発電セルの前記燃料極層側に供給することにより、当該発電セルを内部より加熱することを特徴としている。
【0018】
また、請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池の運転方法において、前記昇温用ガス発生手段は、炭化水素ガスを燃焼するバーナと、当該バーナの燃焼熱を利用して水蒸気を得る水蒸気発生器と、改質触媒を有し、炭化水素ガスと前記水蒸気発生器からの高温水蒸気より水素を得る改質器とで構成されることを特徴としている。
【0019】
上記運転方法によれば、昇温の際、発電セルを外周部と内部から同時に加熱するので、スタックの外周部と内部との温度差を小さく抑えながら、発電セルの昇温を促進することができる。従って、発電セルの割れを防ぎながら、発電セルを効率よく昇温させることができる。また、内部加熱用のガスとして水素が供給されるので、燃料極層のNiの酸化が防止できる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は本発明の予熱方法が適用された固体酸化物形燃料電池の全体構成を示す。図1において、符号1は固体酸化物形燃料電池(燃料電池モジュールとも呼ばれる)、符号2はハウジング、符号3は積層方向を縦にしてハウジング2内に配置された燃料電池スタックである。この燃料電池スタック3は、固体電解質層4の両面に燃料極層5および空気極層(酸化剤極層)6を配した発電セル7と、燃料極層5の外側の燃料極集電体8と、空気極層6の外側の空気極集電体(酸化剤極集電体)9と、各集電体8、9の外側のセパレータ10を順番に積層した構造を有する。
【0022】
ここで、固体電解質層4はイットリアを添加した安定化ジルコニア(YSZ)等で構成され、燃料極層5はNi、Co等の金属あるいはNi−YSZ、Co−YSZ等のサーメットで構成され、空気極層6はLaMnO3 、LaCoO3 等で構成され、燃料極集電体8はNi基合金等のスポンジ状の多孔質焼結金属板で構成され、空気極集電体9はAg基合金等のスポンジ状の多孔質焼結金属板で構成され、セパレータ10はステンレス等で構成されている。
【0023】
また、燃料電池スタック3の側方には、各セパレータ10の燃料通路26(図2参照)に接続管11を通して燃料ガスを供給する燃料用マニホールド13と、各セパレータ10の酸化剤通路25(図2参照)に接続管12を通して酸化剤ガスとしての空気を供給する酸化剤用マニホールド14とが、発電セル7の積層方向に延在して設けられている。
【0024】
また、マニホールド13、14の外周側には、各マニホールド13、14につながる燃料ガス予熱管15、酸化剤ガス予熱管16と、各予熱管15、16および燃料電池スタック3を予熱するための加熱手段としてヒータ20が周設されている。ヒータ20および予熱管15、16は、ハウジング2の内部に収容されており、ハウジング2内の各予熱管15、16に対して、外部の燃料ガス供給管17、酸化剤ガス供給管18がそれぞれ接続されている。
【0025】
また、この固体酸化物形燃料電池1は、発電セル7の外周部にガス漏れ防止シールを設けないシールレス構造とされており、運転時には、図2に示すように、燃料通路26および酸化剤通路25を通してセパレータ10の略中心部から発電セル7に向けて供給される燃料ガスおよび酸化剤ガス(空気)を、発電セル7の外周方向に拡散させながら燃料極層5および空気極層6の全面に良好な分布で行き渡らせて発電反応を生じさせると共に、発電反応で消費されなかった残余のガスを、発電セル7の外周部から外に自由に放出するようになっている。また、ハウジング2には、その内部空間21に放出された余剰ガスを、ハウジング2の外に排出するための排気管(排気穴)22a、22bが設けられている。
【0026】
次に、図3は予熱の際に用いる昇温用ガス発生器の構成を示す。本実施形態の昇温用ガス発生器30は、炭化水素ガス(CH4 )を燃焼するバーナ32と、バーナ32での燃焼熱を利用して水蒸気を得る水蒸気発生器33とを備えた燃焼部31と、水蒸気改質触媒(例えば、Pt、Rh、Ce、Ir等)を用いて炭化水素ガスと水蒸気発生器33からの高温水蒸気より水素リッチな混合ガスを得る改質器34とで構成されている。そして、改質器34からの改質ガスと燃焼部31からの燃焼ガスは、それぞれ配管35を通して燃料電池モジュール1に誘導され、燃料電池スタック3内に導入されるようになっている。
【0027】
次に、本実施形態による運転開始時の予熱方法を説明する。
【0028】
運転開始の際の予熱時に、まず、従来と同様、電池スタック3の周囲に配したヒータ20により発電セル7を外周部より加熱し発電セル7を昇温させる。これと並行して、昇温用ガス発生器30では、燃焼部31のバーナ32に燃焼用空気と炭化水素ガス(実施形態では、燃料電池発電用の燃料ガスを流用する)が供給されて、バーナ32の燃焼動作が開始し、その燃焼熱で水蒸気発生器33内の水を加熱して水蒸気を得る。一方、改質器34には、炭化水素ガスと共に水蒸気発生器33からの高温水蒸気が導入され、水蒸気改質法による炭化水素ガスの改質反応が行われ、改質ガス(H2 、CO、CO2 )を得る。この改質反応は吸熱反応であって、改質反応に必要な熱(例えば、650〜800℃)は、バーナ32での燃焼熱が供給される。
ここで、改質により得られる水素は安全性等より爆発限界未満とされ、改質ガス中の水素の量は3%以下程度とされる。従って、予熱時に改質器34に導入される炭化水素ガスは極めて少量である。尚、本発明では、この改質反応により得た水素は従来公知の内部改質のように発電のための燃料ガスとして使用されるものではない。
【0029】
改質器34からの改質ガス(H2 、CO、CO2 )およびバーナ32の燃焼により発生した燃焼ガス(H2 O、CO2 )は、それぞれ配管35を通して燃料電池モジュール1の内部に誘導され、例えば、配管35は図1の燃料ガス供給管17の適所に連結されて、燃料ガス予熱管15、燃料用マニホールド13、接続管11等を通してセパレータ10の側部に導入される。さらに、図2に示すように、この加熱用の高温ガスはセパレータ10の側面から燃料通路26を通して燃料極側に吐出し、燃料極集電体8内を拡散移動して燃料極層5に達する。配管35より供給された高温ガスは、セパレータ10の燃料通路26を通過する過程で金属製のセパレータ10と熱交換し、セパレータ10を内部より加熱する。
【0030】
上記運転方法によれば、昇温の際、ヒータ20によって発電セル7を外周部から加熱すると共に、昇温用ガス発生器30で得た爆発限界未満の水素や高温の燃焼ガスをセパレータ10に導入して発電セル7を内部からも加熱するので、燃料電池スタック3の外周部と内部との温度差を小さく抑えながら、発電セル7の昇温を促進することができる。これにより、発電セル7の割れを防ぎながら、発電セル7を効率良く昇温させることができる。尚、係る、予熱動作は、運転開始時の昇温時だけでなく運転停止時の降温時にも勿論適用できるものである。
【0031】
また、燃料極層5に水素を供給することにより燃料極層5を還元雰囲気とすることができ、燃料極層5の材料であるNiの酸化を防止することができる。従って、従来、予熱の際に必要とした不活性ガス(N2 等)ボンベを用いることなく起動・停止(即ち昇降温)を繰り返すことも可能である。
【0032】
以上、本実施形態では、上記構成の燃焼部31にあって、改質反応用の高温水蒸気を得るために水蒸気発生器33を備える構成としたが、バーナ32の燃焼反応で得られる水蒸気を改質用の水蒸気として用いることも勿論可能であり、この場合は水蒸気発生器33は不要となり、バーナ32の燃焼反応が水蒸気発生手段となる。
また、炭化水素ガスをバーナ32で燃焼するのではなく、直接燃焼触媒(例えば、Ni、Ru、Pt、Rh、Ce、Os 等)を用いて燃焼させるように構成ても良い。要は炭化水素ガスの改質反応に必要な高温と水蒸気が得られれば良い。
また、運転開始時の加熱手段として、実施形態のヒータ20を用いる以外に、外部より加熱したガスを燃料電池スタック3内に導入するようにしても良い。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、昇温の際、発電セルを外部と内部から同時に加熱するので、スタックの外周部と内部との温度差を小さく抑えながら、発電セルの昇温を促進することができる。従って、発電セルの割れを防ぎながら、発電セルを効率良く昇温させることができる。また、内部加熱用のガスとして爆発限界未満の水素が供給されるので、燃料極のNiの酸化が防止でき、耐久性や発電特性の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の予熱方法を実施する対象の固体酸化物形燃料電池の具体的構成を示す断面図。
【図2】本発明の実施形態の説明に用いる燃料電池スタックの要部概略構成図で、運転時のガスの流れを示す。
【図3】本発明の実施形態の説明に用いるガス発生器の構成を示す図。
【符号の説明】
1 固体酸化物形燃料電池(燃料電池モジュール)
3 燃料電池スタック
5 燃料電極層
7 発電セル
10 セパレータ
20 加熱手段(ヒータ)
30 昇温用ガス発生手段(昇温用ガス発生器)
32 バーナ
33 水蒸気発生器
34 改質器
Claims (2)
- 固体電解質層の一方の面にNiを含む燃料極層を配し、他方の面に空気極層を配した発電セルとセパレータを交互に積層して燃料電池スタックを構成し、運転時に当該燃料電池スタックの内部に燃料ガスと酸化剤ガスを供給して発電反応を生じさせる固体酸化物形燃料電池の運転方法であって、
運転開始時の予熱の際に、加熱手段により発電セルを外周部より加熱すると共に、昇温用ガス発生手段のバーナの燃焼熱によって水蒸気を発生させ、この水蒸気を用いた水蒸気改質法により炭化水素ガスを改質して、得られた爆発限界未満の水素を含む改質ガスと上記バーナの燃焼ガスとを前記セパレータの内部を通して前記発電セルの前記燃料極層側に供給することにより、当該発電セルを内部より加熱することを特徴とする固体酸化物形燃料電池の運転方法。 - 前記昇温用ガス発生手段は、炭化水素ガスを燃焼するバーナと、当該バーナの燃焼熱および/または燃焼反応を利用して水蒸気を得る水蒸気発生手段と、改質触媒を有し、炭化水素ガスと前記水蒸気発生手段からの水蒸気より水素を得る改質器とで構成されることを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池の運転方法。
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