JP2004168841A - 液晶性樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】難燃性、低ガス性、表面外観、および機械物性を改良した液晶性樹脂組成物の取得を課題とする。
【解決手段】(A)液晶性樹脂100重量部に対して、(B)発泡無機粒子を0.01〜1.9重量部を含有することを特徴とする液晶性樹脂組成物、(B)発泡無機粒子の長径の平均長が0.001〜20μmであることを特徴とする上記液晶性樹脂組成物、(B)発泡無機粒子が破砕状の発泡無機粒子を含む上記液晶性樹脂組成物、(B)発泡無機粒子が成分として珪酸を70重量%以上、酸化アルミニウムを10〜20重量%、および酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化鉄、酸化カルシウムおよび、酸化マグネシウムから選ばれる少なくとも1種以上の金属酸化物を0.1〜20重量%含有するものである上記液晶性樹脂組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】(A)液晶性樹脂100重量部に対して、(B)発泡無機粒子を0.01〜1.9重量部を含有することを特徴とする液晶性樹脂組成物、(B)発泡無機粒子の長径の平均長が0.001〜20μmであることを特徴とする上記液晶性樹脂組成物、(B)発泡無機粒子が破砕状の発泡無機粒子を含む上記液晶性樹脂組成物、(B)発泡無機粒子が成分として珪酸を70重量%以上、酸化アルミニウムを10〜20重量%、および酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化鉄、酸化カルシウムおよび、酸化マグネシウムから選ばれる少なくとも1種以上の金属酸化物を0.1〜20重量%含有するものである上記液晶性樹脂組成物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃性、低ガス性、表面外観、および機械物性を改良した液晶性樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、プラスチックの高性能化に対する要求がますます高まり、種々の新規性能を有するポリマが数多く開発され、市場に供されている。なかでも分子鎖の平行な配列を特徴とする光学異方性の液晶ポリエステルなどの液晶性樹脂が、優れた成形性と機械的性質を有する点で注目され、薄肉良流動性、耐熱性、寸法安定性を必要とするコネクターなどの電気・電子部品などの用途が拡大されつつある。これらの用途には通常、難燃性が要求される。
【0003】
液晶性樹脂は流動性に優れ、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルに比べて難燃性に優れることが知られており、近年の部品の小型化に伴い、0.5mm厚以下の薄肉部が大部分を占めるような成形品に用いられるようになり、より厳しい難燃性が要求されるようになってきている。
【0004】
液晶性樹脂の難燃性を改良する方法として、ハロゲン系の難燃剤(例えば、特許文献1参照。)、シリコーン(例えば、特許文献2参照。)、リン系化合物(例えば、特許文献3、4、5、6参照。)、赤燐(例えば、特許文献7、8、9、10、11参照。)を添加する方法などが開示されている。
【0005】
また、ハロゲン系難燃剤とリン酸塩との併用(例えば、特許文献12参照。)、ハロゲン系難燃剤とシラン含有化合物との併用(例えば、特許文献13参照。)、ハロゲン系難燃剤とハイドロタルサイト類との併用(例えば、特許文献14参照。)、ハロゲン系難燃剤と黒鉛との併用(例えば、特許文献15参照。)、およびハロゲン系難燃剤とホスホナイト化合物との併用(例えば、特許文献16参照。)の例がある。
【0006】
しかしながらハロゲン系難燃剤やリン系化合物を添加する方法では、難燃性が向上するが、ガス発生により金型を腐食するおそれがあることがわかった。また赤燐を添加する方法では白色が必要となる用途には使用できない。リン系化合物やシリコーンを添加する方法でも、金型汚れやガス発生の原因となる。
【0007】
ハロゲン系難燃剤にハイドロタルサイト、シラン含有化合物、リン酸塩、黒鉛、ホスホナイト化合物を助剤として併用する系では、物性低下を引き起こす問題があった。
【0008】
一方、液晶性樹脂に微小中空球体を添加することが、例えば、特許文献17、18、19、20、21に開示されているが、これらはガラスバルーンとわれるガラス球の中が中空になっているものを樹脂組成物の軽量化、異方性改善、低熱伝導性付与のために、液晶性樹脂100重量部に対して、2重量部以上配合しているものである。このような多量の配合は、剛性などの機械物性が大幅に低下してしまうだけでなく、燃焼中にドリップを起こし、UL94燃焼試験でも低い評価となる。
【0009】
【特許文献1】
特開平1−118567号公報(第1〜5頁)
【特許文献2】
特開2000−239503号公報(第1〜3頁)
【特許文献3】
特開平7−109406号公報(第1〜3頁)
【特許文献4】
特開2000−103972号公報(第1〜3頁)
【特許文献5】
特開2002−194188号公報(第1〜3頁)
【特許文献6】
特開2002−201344号公報(第1〜2頁)
【特許文献7】
特開2000−154314号公報(第1〜3頁)
【特許文献8】
特開2000−26743号公報(第1〜3頁)
【特許文献9】
特開2000−80290号公報(第1〜3頁)
【特許文献10】
特開平10−237276号公報(第1〜3頁)
【特許文献11】
WO98/49232(第1〜3頁)
【特許文献12】
特開平9−71718号公報(第1〜4頁)
【特許文献13】
特開平8−53607号公報(第1〜6頁)
【特許文献14】
特開平7−53849号公報(第1〜2頁)
【特許文献15】
特開平6−184414号公報(第1〜3頁)
【特許文献16】
特開平5−140421号公報(第1〜3頁)
【特許文献17】
特公昭64−7626号公報(第1頁)
【特許文献18】
特開2001−172479号公報(第1〜3頁)
【特許文献19】
特開2001−310323号公報(第1〜4頁)
【特許文献20】
特開2001−31848号公報(第1〜3頁)
【特許文献21】
特開平8−315392号公報(第1〜3頁)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題を解決し、難燃性、低ガス性、表面外観、および機械物性を改良した液晶性樹脂組成物の取得を課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、従来の難燃剤を添加する方法とは発想を異にして検討した結果、極少量の発泡無機粒子を液晶性樹脂中に微分散させることによって、難燃性が向上し、かつ更に低ガス性、表面外観、機械物性などが改良されることを見いだし、本発明に到達した。
【0012】
すなわち、本発明の液晶性樹脂組成物は(A)液晶性樹脂100重量部に対して、(B)発泡無機粒子を0.01〜1.9重量部を含有することを特徴とする。
【0013】
本発明の液晶性樹脂組成物は、前記(B)発泡無機粒子の粒子の長辺の平均長が0.001〜20μmであること、発泡無機粒子が破砕状の発泡無機粒子を含むものであること、また発泡無機粒子が球状発泡無機粒子を破砕した破砕物を含むものであること、発泡無機粒子が成分として珪酸を70重量%以上、酸化アルミニウムを10〜20重量%、および酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化鉄、酸化カルシウムおよび酸化マグネシウムから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を0.1〜20重量%含有すること、発泡無機粒子がシラスバルーンまたはその破砕物であること、更に(C)炭酸カルシウムを液晶性樹脂100重量部に対して0.01〜10重量部含有することや更に(A)液晶性樹脂100重量部に対して、(D)(B)成分、(C)成分以外の充填材を0.5〜300重量部を含有すること、(D)充填材が繊維状充填材を含むものであること、また前記(A)液晶性樹脂が下記構造単位(I) 、(II)、(III) および(IV)からなる液晶ポリエステルであることなどが、いずれも好ましい条件として挙げられる。
【0014】
【化5】
【0015】
(ただし式中のR1は
【0016】
【化6】
【0017】
から選ばれた1種以上の基を示し、R2 は
【0018】
【化7】
【0019】
から選ばれた1種以上の基を示し、R3 は
【0020】
【化8】
【0021】
から選ばれた1種以上の基を示す。また、式中Xは水素原子または塩素原子を示す。)
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳述する。なお本発明において「重量」とは、「質量」を意味する。
【0023】
本発明で用いられる(A)液晶性樹脂とは、異方性溶融相を形成する樹脂であり、例えば液晶ポリエステル、液晶ポリエステルアミドなどが挙げられる。液晶ポリエステルとは、異方性溶融相を形成するポリエステルであり、例えば芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族ジカルボニル単位、およびエチレンジオキシ単位などから選ばれた構造単位からなる異方性溶融相を形成するポリエステルが挙げられる。また、液晶ポリエステルアミドとは、異方性溶融相を形成するポリエステルアミドであり、例えば上記液晶ポリエステル構造単位と芳香族イミノカルボニル単位、芳香族ジイミノ単位、および芳香族イミノオキシ単位などから選ばれた構造単位からなるポリエステルアミドが挙げられる。
【0024】
上記芳香族オキシカルボニル単位の具体例としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸、および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸などから生成した構造単位が、芳香族ジオキシ単位の具体例としては、例えば、4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、3,3´,5,5´−テトラメチル−4,4´−ジヒドロキシビフェニル、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、および4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテルなどから生成した構造単位が、芳香族ジカルボニル単位の具体例としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4´−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4´−ジカルボン酸、および4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸などから生成した構造単位が、芳香族イミノオキシ単位の具体例としては、例えば、4−アミノフェノールなどから生成した構造単位が、それぞれ挙げられる。
【0025】
(A)液晶ポリエステルの具体例としては、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位からなる液晶ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、4,4´−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、テレフタル酸およびイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、4,4´−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、およびp−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、ハイドロキノンから生成した構造単位、4,4´−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、2,6−ナフタレンジカルボン酸から生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位からなる液晶ポリエステルなどが挙げられる。
【0026】
異方性溶融相を形成する液晶ポリエステルの好ましい例としては、下記(I)、(II)、(III) および(IV)の構造単位からなる液晶ポリエステル、または、下記(I)、(II) および(IV)の構造単位からなる異方性溶融相を形成する液晶ポリエステルなどがより好ましく挙げられる。なかでも特に下記(I)、(II)、(III) および(IV)の構造単位からなる液晶ポリエステルが好ましく使用される。
【0027】
【化9】
【0028】
(ただし式中のR1 は
【0029】
【化10】
【0030】
から選ばれた1種以上の基を示し、R2 は
【0031】
【化11】
【0032】
から選ばれた1種以上の基を示し、R3 は
【0033】
【化12】
【0034】
から選ばれた1種以上の基を示す。ただし式中Xは水素原子または塩素原子を示す。)。
【0035】
上記構造単位(I)はp−ヒドロキシ安息香酸および/または6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位であり、上記構造単位(II)は4,4´−ジヒドロキシビフェニル、3,3´,5,5´−テトラメチル−4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテルから選ばれた1種以上の芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位であり、上記構造単位(III) はエチレングリコールから生成した構造単位であり、上記構造単位(IV)はテレフタル酸、イソフタル酸、4,4´−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4´−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4´−ジカルボン酸および4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸から選ばれた1種以上の芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位である。これらのうちR1 が
【0036】
【化13】
【0037】
でR2が
【0038】
【化14】
【0039】
であり、R3 が
【0040】
【化15】
【0041】
であるものが特に好ましい。
【0042】
本発明において好ましく使用できる液晶ポリエステルは、上述のとおり構造単位(I) 、(II)、(IV)からなる共重合体および構造単位(I) 、(II)、(III) 、(IV)からなる共重合体であるが、上記構造単位(I) 、(II)、(III) および(IV)の共重合量は任意である。しかし、本発明の特性を発揮させるためには次の共重合量であることが好ましい。
【0043】
すなわち、上記構造単位(I) 、(II)、(III) 、(IV)からなる共重合体の場合は、上記構造単位(I) および(II)の合計は構造単位(I) 、(II)および(III) の合計に対して30〜95モル%が好ましく、40〜92モル%がより好ましい。また、構造単位(III) は構造単位(I) 、(II)および(III) の合計に対して70〜5モル%が好ましく、60〜8モル%がより好ましい。また、構造単位(I) と(II)のモル比[(I) /(II)]は好ましくは75/25〜95/5であり、より好ましくは78/22〜93/7である。また、構造単位(IV)は構造単位(II)および(III) の合計と実質的に等モルであることが好ましい。
【0044】
一方、上記構造単位(III) を含まない液晶ポリエステルの場合は、流動性の点から、上記構造単位(I) は構造単位(I) および(II)の合計に対して40〜90モル%であることが好ましく、60〜88モル%であることが特に好ましく、構造単位(IV)は構造単位(II)と実質的に等モルであることが好ましい。
【0045】
また、液晶ポリエステルアミドとしては、上記構造単位(I) 〜(IV)以外に4−アミノフェノールから生成した4−イミノフェノキシ単位を含有した異方性溶融相を形成するポリエステルアミドが好ましい。
【0046】
上記好ましく用いられる液晶ポリエステルおよび液晶ポリエステルアミドは、上記構造単位(I) 〜(IV)を構成する成分以外に、3,3´−ジフェニルジカルボン酸、2,2´−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸、クロルハイドロキノン、3,4´−ジヒドロキシビフェニル、4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4´−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4´−ジヒドロキシビフェニルなどの芳香族ジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂肪族、脂環式ジオールおよびm−ヒドロキシ安息香酸、p−アミノ安息香酸などを、液晶性を損なわない程度の範囲でさらに共重合せしめることができる。
【0047】
本発明において使用する上記(A)液晶性樹脂の製造方法には特に制限がなく、公知の重縮合法に準じて製造できる。
【0048】
例えば、上記液晶ポリエステルの製造においては、次の製造方法(1)〜(5)が好ましく挙げられる。
【0049】
(1)p−アセトキシ安息香酸および4,4´−ジアセトキシビフェニル、ジアセトキシベンゼンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物のジアシル化物と、2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸とから脱酢酸縮重合反応によって製造する方法。
【0050】
(2)p−ヒドロキシ安息香酸および4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物と、2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸とに無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって製造する方法。
【0051】
(3)p−ヒドロキシ安息香酸のフェニルエステルおよび4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物と、2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸とのジフェニルエステルから脱フェノール重縮合反応により製造する方法。
【0052】
(4)p−ヒドロキシ安息香酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に、所定量のジフェニルカーボネートを反応させて、それぞれジフェニルエステルとした後、4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物を加え、脱フェノール重縮合反応により製造する方法。
【0053】
(5)ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルのポリマー、オリゴマーまたはビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートなど芳香族ジカルボン酸のビス(β−ヒドロキシエチル)エステルの存在下で、(1)または(2)の方法により製造する方法。
【0054】
上記(A)液晶性樹脂の重縮合反応は無触媒でも進行するが、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、金属マグネシウムなどの金属化合物を使用することもできる。
【0055】
本発明に好ましく使用できる上記(A)液晶性樹脂は、ペンタフルオロフェノール中で対数粘度を測定することが可能であり、その際には0.1g/dlの濃度で60℃で測定した値で0.3以上が好ましく、上記構造単位(III) を含む場合は0.5〜3.0dl/g、上記構造単位(III) を含まない場合は1.0〜15.0dl/gが特に好ましい。
【0056】
また、本発明における(A)液晶性樹脂の溶融粘度は、0.5〜200Pa・sが好ましく、特に1〜100Pa・sがより好ましい。
【0057】
なお、この溶融粘度は、融点(Tm)+10℃の条件で、ずり速度1,000(1/秒)の条件下で高化式フローテスターによって測定した値である。
【0058】
ここで、融点(Tm)とは示差熱量測定において、重合を完了したポリマを室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1 )の観測後、Tm1 +20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した後、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2 )を意味する。
【0059】
本発明は、(A)液晶性樹脂100重量部に対して(B)発泡無機粒子を0.01〜1.9重量部配合したものである。
【0060】
本発明に用いられる(B)発泡無機粒子とは、無機粒子を加熱処理などによって発泡させたものである。ここでいう、加熱処理は人工的なものであってもよく、また自然環境下における処理、例えば火山熱などによって発泡することも含む。
【0061】
発泡方法は特に制限されず、上記した天然の発泡無機物質であっても、人工的に発泡処理をした無機物質であってもよい。発泡処理としては、例えばシラスといわれる珪酸と酸化アルミニウムを主成分とする無機物質は例えば1000℃で急熱した後急冷すると微細な発泡孔を形成させることが可能である。発泡無機粒子は、発泡によって表面が多孔質であったり、内部にも多数の空隙を有するものや、単一の気泡を有するものもあるが、本発明においては内部に多数の空隙を有するものが好ましい。
【0062】
本発明で用いる(B)発泡無機粒子の発泡孔は、その最大孔径が10μm以下であり、かつ最小孔径が0.1μm以下であることが好ましく、最大孔径が5μm以下であり、かつ最小孔径が0.08μm以下であることがより好ましく、
最大孔径が1μm以下であり、かつ最小孔径が0.05μm以下であることが最も好ましい。なお、ここでいう最大孔径と最小孔径は組成物塊の任意断面を切り出して透過型電子顕微鏡(TEM)により観察される任意の50個の粒子の断面に円形で存在する発泡孔を50個の粒子について測定して評価される最大孔径および最小孔径である。
【0063】
発泡孔の連結の程度や外部への開放の度合いは特に限定されるものではないが、気泡が独立気泡であり、閉塞された気泡を内部に多く有することが好ましい。
【0064】
本発明で用いる(B)発泡無機粒子の材質は、特に限定されるものではないが、ガラス質であることが好ましく、ガラスやシラス、フライアッシュといった含ケイ素無機物質であることがより好ましく、シラスが最も好ましい。
【0065】
具体的にはガラスバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーンなどが挙げられる。
【0066】
成分としては、珪酸と酸化アルミニウムを主成分とすることが好ましく、より好ましくは珪酸を70重量%以上、酸化アルミニウムを10〜20重量%含有することであり、最も好ましくは珪酸を75重量%以上、酸化アルミニウムを12〜20重量%有することである。珪酸と酸化アルミニウム以外の成分としては酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化鉄、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタンおよび酸化ホウ素から選ばれる1種以上の金属酸化物を0.0.1〜20重量%含有することが好ましく、より好ましくは酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化鉄、酸化カルシウム、酸化マグネシウムから選ばれる1種以上の金属酸化物を0.1〜20重量%含有することが好ましい。
【0067】
本発明の液晶性樹脂組成物においては、組成物中の(B)発泡無機粒子の長径の平均長が0.001〜20μmであることが好ましく、より好ましくは0.005〜10μmであり、0.01〜5μmが最も好ましい。ここでいう長径とは、粒子端から粒子端を結んだ直線の内最も長いものをいう。
【0068】
液晶性樹脂組成物中の発泡無機粒子の長径は、例えば、液晶性樹脂組成物を燃焼した後に残った灰分を光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡で観察することによって測定することができる。
【0069】
(B)発泡無機粒子としては、破砕状の発泡無機粒子を含むことが好ましい。このような破砕状の発泡無機粒子は、例えば、塊状、球状、板状、粒状などの発泡無機物質を粉砕や破砕することによって得ることができる。本発明においては全てが破砕されている必要はないが、元形状を維持しているものと破砕状の粒子との合計に対する破砕状の粒子の割合(破砕率)は50%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上であり、90%以上であることが最も好ましい。例えば球状の発泡無機物質を添加した際に、元形状のまま、すなわち球体で残存しているものが少ないと、機械物性の向上効果が高くなるので好ましい。
【0070】
破砕率は、例えば、液晶性樹脂組成物を灰化して得た灰分から得た発泡無機粒子を篩い分けし、その成分を光学顕微鏡もしくは走査型電子顕微鏡によって観察した後秤量し、下記式によって算出することができる。
【0071】
破砕率(%)=100×{1−B/(A+B)}
ただし、Aは破砕された発泡無機物質の重量であり、Bは残存している元形状を維持した発泡無機物質の重量である。
【0072】
発泡無機粒子を液晶性樹脂中に含有させて組成物とする場合には、予め発泡無機粒子を本発明の好ましい形態に調製しておいて、液晶性樹脂に添加してもよいが、例えば、発泡無機物質をある程度配合可能な大きさに粉砕したもの、球形に加工したもの、もしくは球形に加工してから発泡させたものなどを液晶性樹脂に添加し、例えば押出機などによって溶融混練する工程で、該発泡無機粒子を微粉砕して本発明の好ましい形態の発泡無機粒子とすることができる。好ましくは直径が10〜150μmの球状の発泡無機物質を、ニーディングを1つ以上組み込み、少なくとも1つ以上高圧縮部分を有するスクリューを用いた二軸押出機で押出混練することにより得ることができる。
【0073】
球状の発泡無機物質を添加し、押出混練時に破砕する方法は、発泡無機粒子を予め、本発明の好ましい形態に調製して液晶性樹脂に配合するのに比べて、粒子が凝集しにくく、本発明の効果である難燃性がより良く発揮されるので好ましい。
【0074】
本発明においては、発泡無機物質として、シラスバルーンを用い、組成物中に上記の如く破砕させて組成物中に含有させることが好ましい。上記発泡無機物質としては、市販のものを用いることができ、シラスバルーンとしては、例えば美瑛白土工業社製タイセツバルーンC、K、豊和直社製SYB−1000SS等が挙げられ、なかでもタイセツバルーンC、Kなどが成分組成が好ましく、また破砕した粒子中にも微細発泡孔が多く存在するために、本発明の効果である難燃性や低ガスの効果が高くなり好ましい。発泡孔の大きさは、市販のシラスバルーン、特にタイセツバルーンでは0.001〜30μm程度であり、破砕によって、1〜30μm程度の孔部で破断されることが多く、破砕された発泡無機粒子中には0.001〜1μm程度の微細発泡孔が多く存在することが観察される。このような微細発泡孔を持つ発泡無機粒子が好ましい。
【0075】
ガラスバルーンとしては住友スリーエム社製スコッチライトS38、S60や東海工業社製CEL−STAR PZ−6000、東芝バロティーニ社製HSC100、エマーソン・アンド・カミング社製ガラス・マイクロバルーンFTD202等が好ましく挙げられ、フライアッシュバルーンとしては、東海工業社製メタスフィアー#100等が好ましい。ガラスバルーンやフライアッシュバルーンは、その球体の内部に単一の、粒子径より壁厚を引いた径をもつ気泡を有する中空球体粒子であり、破砕物とした場合に、その粒子の内部には微細気泡があまり存在しないために、上記したシラスバルーンに比べると若干効果が少ない。
【0076】
発泡孔径の測定は、組成物の任意断面を、ダイヤモンドナイフによって切り出し、透過型電子顕微鏡(TEM)で発泡無機粒子断面を観察した。観察される任意の50個の粒子の断面に円形を保って存在する発泡孔について測定することができる。
【0077】
本発明の(B)発泡無機粒子の(A)液晶性樹脂100重量部に対する配合量は、0.01〜1.9重量部であり、より好ましくは0.1〜1.8重量部であり、0.5〜1.7重量部が最も好ましい。
【0078】
(B)発泡無機粒子の配合量が、この範囲において、難燃性、機械物性がともに高度に優れた組成物が得られる。
【0079】
発泡無機粒子の配合量は、例えば本発明の液晶性樹脂組成物を燃焼させた、その残分の重量を測定し、元の組成物の重量との比較により算出することができる。配合する際に球状の発泡無機物質として添加した際にも配合量の好ましい範囲は同じである。
【0080】
本発明で用いる発泡無機粒子は表面処理することが可能である。また、内部発泡孔への難燃剤、難燃助剤などの包含が可能である。更なる難燃性の向上のために、例えば、難燃剤を包含させた球状の発泡無機物質を混練配合した場合には、難燃剤が発泡無機粒子によって凝集することなく分散し、より高度な難燃性を得ることができる。
【0081】
上記発泡無機粒子に表面処理を施す場合や難燃剤等を包含させる場合における発泡無機粒子の配合量は、これら表面処理剤や難燃剤等を除いた、発泡無機粒子自体の量が上記範囲になるように配合する。例えば発泡無機粒子に等量の難燃剤を包含させた場合には、(A)液晶性樹脂100重量部に対して、発泡無機粒子と当量の難燃剤を発泡無機粒子内に包含する場合には、発泡無機粒子自体の配合量は0.01〜1.9重量部であるので、難燃剤包含発泡無機粒子の配合量は、液晶性樹脂100重量部に対して0.02〜3.8重量部の範囲で配合すれば本発明の組成物が得られる。
【0082】
本発明では更に、(C)炭酸カルシウムを(A)液晶性樹脂100重量部に対し、0.01〜10重量部を添加するとより本発明の効果である低ガス性や難燃性が向上する。添加量としては、より好ましくは、0.02〜6重量部、更に好ましくは0.05〜2重量部である。
【0083】
炭酸カルシウムは、市販のものを用いることができ、特に限定されるものではないが、平均粒子径は0.01〜5μmであることが好ましく、より好ましくは0.05〜3μmである。また、比表面積については、好ましくは0.1〜20m2/gであり、さらに好ましくは15〜15m2/gである。
【0084】
平均粒子径の測定は、例えば走査型電子顕微鏡により粒子径を測定し算出することが可能であり、比表面積は、N2ガス吸着法(1点法)によりBET比表面積を測定することができる。
【0085】
本発明の炭酸カルシウムは重質炭酸カルシウムが好ましく、形状は微粉状、球状、紡錘形、ウィスカー状など特に限定されないが、微粉状が好ましい。
【0086】
本発明の液晶性樹脂組成物に(C)炭酸カルシウムを更に配合した場合には、白色度が高くなり、溶融粘度低下も抑制されるだけでなく、難燃性がさらに向上し、0.4mm以下の薄肉の成形品でも極短い燃焼時間で消火する高い難燃性能が得られる。
【0087】
また、成形性もさらに向上し、成形機のシリンダーの温度を液晶性樹脂組成物の融点よりもさらに高い温度に設定しても、はな垂れしたりすることなく成形することが可能となる。
【0088】
はな垂れとは射出成形などの成形において、溶融樹脂をノズル内に計量し、金型の開閉動作が終了するのを待機している間に発生する待機時間(数秒〜数10秒)の間に、計量した樹脂の粘度が低いことや、ガスの発生によるシリンダー内圧の上昇によって、溶融樹脂がノズル先端の射出口から漏出する現象であり、ノズルを金型にタッチしたままで連続成形を行う場合には金型内に樹脂が流入して連続成形を妨げる原因となる。
【0089】
本発明においては、液晶性樹脂組成物の機械強度その他の特性を付与するために、さらに(D)(B)発泡無機粒子、(C)炭酸カルシウム以外の充填材を配合することが可能である。
【0090】
かかる(D)充填材としては、特に限定されるものではないが、繊維状、板状、粉末状、粒状などの充填材を使用することができる。具体的には、例えば、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、酸化アルミニウム繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカーなどの繊維状(ウィスカー状を含む)充填材、マイカ、タルク、カオリン、シリカ、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、リン酸カルシウムおよびグラファイトなどの粉状、粒状あるいは板状の充填材が挙げられるが、なかでもガラス系の充填材、炭素繊維などが好ましい。
【0091】
これら充填材として、少なくとも繊維状の充填材を用いることが好ましく、繊維状の充填剤単独でも非繊維状の充填剤との併用であってもよい。繊維状の充填剤として好ましくはガラス繊維、炭素繊維であり、なかでもガラス繊維が好ましく使用される。ガラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものならば特に限定はなく、例えば、長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランドおよびミルドファイバーなどから選択して用いることができる。
【0092】
なお、ガラス繊維は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆あるいは集束されていてもよい。
【0093】
また、上記(D)充填材は上記以外の組み合わせで2種以上を併用して使用することもできる。なお、本発明に使用する(D)充填材は、その表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)や、その他の表面処理剤で処理して用いることもできる。
【0094】
(D)充填材の配合量は(A)液晶性樹脂100重量部に対して、0.5〜300重量部が好ましく、より好ましくは10〜250重量部、より好ましくは20〜150重量部である。
【0095】
さらに、本発明の液晶性樹脂組成物には、酸化防止剤および熱安定剤(例えばヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体など)、紫外線吸収剤(例えばレゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなど)、滑剤および離型剤(モンタン酸およびその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびポリエチレンワックスなど)、染料(例えばニグロシンなど)および顔料(例えば硫化カドミウム、フタロシアニンなど)を含む着色剤、導電剤あるいは着色剤としてカーボンブラック、結晶核剤、可塑剤、難燃助剤、および帯電防止剤などの通常の添加剤を添加して、所定の特性をさらに付与することができる。
【0096】
また、さらなる特性改良の必要性に応じて、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなどのオレフィン系重合体、無水マレイン酸などによる酸変性オレフィン系重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/非共役ジエン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、ABSなどのオレフィン系共重合体、ポリエステルポリエーテルエラストマー、ポリエステルポリエステルエラストマーなどのエラストマーから選ばれる1種または2種以上の混合物を添加して所定の特性をさらに付与することができる。
【0097】
これらの添加剤や重合体を添加する方法は、溶融混練によることが好ましく、溶融混練には公知の方法を用いることができる。例えば、バンバリーミキサー、ゴムロール機、ニーダー、単軸もしくは二軸押出機などを用い、180〜400℃の温度で溶融混練して樹脂組成物とすることができる。
【0098】
その際には、(A)液晶性樹脂と(B)発泡無機粒子、任意成分である(C)炭酸カルシウム、(D)充填材およびその他の添加剤との一括混練法、まず(A)液晶性樹脂に(B)発泡無機粒子を高濃度に含む液晶性樹脂組成物を作成し、次いで規定の濃度になるように(A)液晶性樹脂、任意成分である(C)炭酸カルシウム、(D)充填材およびその他の添加剤を添加する方法(マスターペレット法)、および(A)液晶性樹脂と(B)発泡無機粒子を一度混練した組成物に、ついで任意成分である(C)炭酸カルシウム、(D)充填材およびその他の添加剤を添加する方法のどの方法を用いてもかまわない。
【0099】
かくして得られる本発明の液晶性樹脂組成物は、低ガス性、表面外観、難燃性が向上したものであり、さらには優れた溶融流動性、成形性および機械物性を有しており、通常の成形方法によって、優れた低ガス性、表面外観(色調)および機械的性質を有する三次元成形品、シート、容器、パイプ、フィルムおよび繊維などに加工することが可能である。そして、これらの成形品は、極めて優秀な難燃性を有していることから、0.8mm以下の薄肉部を少なくとも一ヶ所以上有し、厳しい難燃性が要求される機械機構部品や自動車部品、電気・電子部品などにも最適である。
【0100】
本発明の液晶性樹脂組成物からなる成形品の具体的用途としては、例えば、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶ディスプレー部品、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、HDD部品、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンショメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキバット磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケースなどの自動車・車両関連部品などが挙げられ、これらの各用途において有用な効果を発揮する。
【0101】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳述する。
【0102】
参考例
液晶性樹脂(A)
A−1
p−ヒドロキシ安息香酸994重量部、4,4´−ジヒドロキシビフェニル126重量部、テレフタル酸112重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレ−ト216重量部及び無水酢酸960重量部を撹拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、150℃で2時間、150℃から250℃まで3時間かけて昇温し、250℃から325℃まで2時間かけて昇温し、325℃で1.5時間反応させた後、325℃、1.5時間で0.5mmHgに減圧し、さらに10分間反応させ重縮合を行った結果、芳香族オキシカルボニル単位80モル当量、芳香族ジオキシ単位7.5モル当量、エチレンジオキシ単位12.5モル当量、芳香族ジカルボン酸単位20モル当量からなる融点314℃、液晶開始温度297℃、324℃の溶融粘度25Pa・s(オリフィス直径0.5mm×10mm、せん断速度1,000(1/秒))の液晶ポリエステル樹脂(A−1)を得た。液晶開始温度の測定は、剪断応力加熱装置(CSS−450)により剪断速度1,000(1/秒)、昇温速度5.0℃/分、対物レンズ60倍において測定し、視野全体が流動開始する温度を液晶開始温度とした。
【0103】
A−2
p−ヒドロキシ安息香酸907重量部と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸457重量部及び無水酢酸873重量部を攪拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、A−1と同じ条件で重合を行った結果、芳香族オキシカルボニル単位100モル等量からなる融点283℃、液晶開始温度244℃、293℃の溶融粘度42Pa・s(オリフィス直径0.5mm×10mm、せん断速度1,000(1/秒))の液晶ポリエステル樹脂(A−2)を得た。
【0104】
発泡無機粒子(B)
シラスバルーン タイセツバルーンK(平均粒子径28μm、球形、発泡シラスバルーン、珪酸76重量%、酸化アルミニウム14重量%、酸化ナトリウム3.5重量%、酸化カリウム4.5重量%、酸化鉄1.3重量%、酸化カルシウム0.6重量%、酸化マグネシウム0.1重量%含有:美瑛白土工業社製)
ガラスマイクロバルーン スコッチライトS60(平均粒子径30μm、球形、中空ガラスビーズ、珪酸81重量%、酸化ホウ素13重量%、酸化アルミニウム2.3重量%、酸化ナトリウム4重量%含有:住友3M社製)
フライアッシュバルーン メタスフィアー#100(平均粒子径72μm、球形、中空フライアッシュビーズ、珪酸54重量%、酸化アルミニウム38重量%、酸化鉄1.8重量%、酸化カルシウム1.8重量%、酸化チタン1.0重量%、酸化マグネシウム0.7重量%含有:東海工業社製)
また、比較として、シラス(シラスバルーンの未発泡無機原料)を用いた。
【0105】
白土 A (平均粒子径12μm、シラス、成分はシラスバルーンに同じ:美瑛白土工業社製)
炭酸カルシウム(C)
重質炭酸カルシウム マイクロパウダー3S(平均粒子径0.8μm、BET比表面積8.5m2/g、微粉状:備北粉化工業社製)
充填材(D)
ガラスチョップドストランド 790DE(直径6μm×3mm:日本電気ガラス社製)
マイカ A−21(平均粒径4.7μm:山口雲母工業社製)。
【0106】
実施例1〜15、比較例1〜12
表1〜3に示す液晶性樹脂(A−1、A−2)、発泡無機粒子およびその他の充填材をそれぞれ所定量秤量し、ドライブレンドし、池貝社製PCM−30型2軸押出機でニーディングを2ヶ所に設け、一ヶ所に高圧縮部を設けたスクリューを用い、シリンダー温度を330℃に設定し、スクリュー回転数150r.p.mの条件で溶融混練したのちストランドカッターによりペレットを得た。発泡無機粒子の破砕の度合いは樹脂の供給量(フィードスクリュー回転数)を調節、またはスクリューアレンジの変更により行った。 熱風乾燥後、ペレットを住友ネスタ−ル射出成形機プロマット40/25(住友重機械工業社製)に供し、シリンダ−温度を320℃に設定し、金型温度90℃に設定し、1速1圧の条件で以下に示す測定用テストピースを射出成形して得た。
【0107】
(1)発泡無機粒子の平均長径
上記ペレットを燃焼灰化させ、灰分を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察した。観察される発泡無機粒子50個の長径を測定し、数平均粒子長径を算出した。
【0108】
(2)発泡無機粒子の発泡孔径
上記ペレットの任意断面を、ダイヤモンドナイフによって切り出し、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した。観察される任意の50個の粒子の断面に円形で存在する発泡孔について測定し、最大孔径および最小孔径を評価した。
【0109】
シラスバルーンを用いた例はいずれも最小孔径0.001μm、最大孔径8μmであった。ガラスバルーンおよびフライアッシュバルーンは粒子に一部が開口した発泡孔や連続した気泡は観察されたが、独立気泡は観察されなかった。
【0110】
(3)燃焼時間
上記の成形条件にて、縦150mm×横12.7mm×厚み0.5mmの棒状試験片を成形し、UL94規格に従い燃焼試験を行い、試験片5本の第一燃焼と第二燃焼の燃焼時間の合計を全燃焼時間として評価した。
【0111】
(4)LOI(酸素指数)
上記の通常成形条件にて、縦127mm×横6.3mm×厚み3.2mmの棒状試験片を成形し、成形品を、予めある酸素濃度にセットした容器内に設けた支持具に取付け、(O2+N2)ガスを30秒流し、酸素濃度を安定させた。点火器により成形品上端に点火し、着火したろうそく状に炎を維持することを確認した後、燃焼時間の計測を行った。
【0112】
ASTM D2863に従い、燃焼時間が3分を超える場合には酸素濃度を下げ、燃焼時間が3分以下で消える場合には酸素濃度を上げる操作を繰り返し、成形品が50mm燃焼して消える場合の最小酸素濃度を求めた。
【0113】
LOIの値が高い程、難燃性が高いことを示す。
【0114】
(5)機械物性
上記の通常成形条件にて、縦127mm×横12.7mm×厚み3.2mmの棒状試験片を成形し、ASTM D790に従い曲げ試験を行い、曲げ強度、およびたわみを評価した。
【0115】
(6)発生ガス量(低ガス性)
上記ペレットを融点+10℃、窒素雰囲気下において30分間保持した際の重量減少率を評価した。
【0116】
(7)表面外観
(4)において成形した成形品10本の表面外観を評価した。評価はふくれ、荒れなどがなく良好:○、ふくれ、荒れなどが存在する:×で行った。
【0117】
(8)破砕率
ペレットを灰化して得た灰分から得た発泡無機粒子を篩い分けし、その成分を光学顕微鏡もしくは走査型電子顕微鏡によって観察した後秤量し、下記式によって算出した。
【0118】
破砕率(%)=100×{1−B/(A+B)}
ただし、Aは破砕された発泡無機物質の重量であり、Bは残存している元形状を維持した発泡無機物質の重量である。
【0119】
【表1】
【0120】
【表2】
【0121】
表1、2の結果から明らかなように、球状発泡無機物質であるシラスバルーンを混練により破砕状とした発泡無機粒子が分散した液晶性樹脂組成物(実施例1〜7,11)は、無添加品(比較例1、2)に比べ、難燃性の指標であるLOI(酸素指数)が増加して難燃性が高くなっており、たわみを減じることなく機械物性が向上している。中空ガラスビーズ(実施例8)、フライアッシュバルーン(実施例9、10)でも効果は得られるが、粒子中に微細発泡孔を多く有するシラスバルーンの方が効果が高いことがわかる。破砕率が低く、平均粒子長径が大きい(実施例10)よりも、破砕率の高い(実施例9)方が効果が高いことがわかる。
【0122】
しかし、本発明の範囲外の添加量である(比較例3〜7)と、効果が得られないことがわかる。
【0123】
また、発泡無機粒子でないがシラスバルーンと成分は類似している白土(シラス)(比較例8)では、本発明の効果が全く得られず、発泡の有無が重要であることがわかる。
【0124】
液晶性樹脂の構造としては、A−1(実施例1)の方が、A−2(実施例11)よりも効果が大きいことがわかる。
【0125】
また、炭酸カルシウムを併用(実施例12)した場合には、難燃性や低ガス性の向上効果が大きいことがわかる。炭酸カルシウムだけを添加しても(比較例9)これらの効果は得られない。
【0126】
【表3】
【0127】
また、表2から、(D)発泡無機粒子および炭酸カルシウム以外の充填材として繊維状の充填材(実施例13)や繊維状の充填材に加えて炭酸カルシウム(実施例14)、さらには繊維状の充填材、炭酸カルシウムに加えて板状の充填材(マイカ)を加えた(実施例15)場合には、良好な物性に加えて、難燃性ではUL94 V−0となり、その燃焼時間が極めて短いことがわかる。
【0128】
これらの効果は、(D)発泡無機粒子、炭酸カルシウム以外の充填材だけを加えて(比較例10〜12)も得られず、発泡無機粒子との併用効果であることがわかる。
【0129】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、難燃性、機械物性を向上させ、かつ低ガス性の液晶性樹脂組成物および成形品を得ることができ、本発明の組成物からなる成形品は、電気・電子関連機器、精密機械関連機器、事務用機器、自動車・車両関連部品などの各種用途に好適に使用することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃性、低ガス性、表面外観、および機械物性を改良した液晶性樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、プラスチックの高性能化に対する要求がますます高まり、種々の新規性能を有するポリマが数多く開発され、市場に供されている。なかでも分子鎖の平行な配列を特徴とする光学異方性の液晶ポリエステルなどの液晶性樹脂が、優れた成形性と機械的性質を有する点で注目され、薄肉良流動性、耐熱性、寸法安定性を必要とするコネクターなどの電気・電子部品などの用途が拡大されつつある。これらの用途には通常、難燃性が要求される。
【0003】
液晶性樹脂は流動性に優れ、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルに比べて難燃性に優れることが知られており、近年の部品の小型化に伴い、0.5mm厚以下の薄肉部が大部分を占めるような成形品に用いられるようになり、より厳しい難燃性が要求されるようになってきている。
【0004】
液晶性樹脂の難燃性を改良する方法として、ハロゲン系の難燃剤(例えば、特許文献1参照。)、シリコーン(例えば、特許文献2参照。)、リン系化合物(例えば、特許文献3、4、5、6参照。)、赤燐(例えば、特許文献7、8、9、10、11参照。)を添加する方法などが開示されている。
【0005】
また、ハロゲン系難燃剤とリン酸塩との併用(例えば、特許文献12参照。)、ハロゲン系難燃剤とシラン含有化合物との併用(例えば、特許文献13参照。)、ハロゲン系難燃剤とハイドロタルサイト類との併用(例えば、特許文献14参照。)、ハロゲン系難燃剤と黒鉛との併用(例えば、特許文献15参照。)、およびハロゲン系難燃剤とホスホナイト化合物との併用(例えば、特許文献16参照。)の例がある。
【0006】
しかしながらハロゲン系難燃剤やリン系化合物を添加する方法では、難燃性が向上するが、ガス発生により金型を腐食するおそれがあることがわかった。また赤燐を添加する方法では白色が必要となる用途には使用できない。リン系化合物やシリコーンを添加する方法でも、金型汚れやガス発生の原因となる。
【0007】
ハロゲン系難燃剤にハイドロタルサイト、シラン含有化合物、リン酸塩、黒鉛、ホスホナイト化合物を助剤として併用する系では、物性低下を引き起こす問題があった。
【0008】
一方、液晶性樹脂に微小中空球体を添加することが、例えば、特許文献17、18、19、20、21に開示されているが、これらはガラスバルーンとわれるガラス球の中が中空になっているものを樹脂組成物の軽量化、異方性改善、低熱伝導性付与のために、液晶性樹脂100重量部に対して、2重量部以上配合しているものである。このような多量の配合は、剛性などの機械物性が大幅に低下してしまうだけでなく、燃焼中にドリップを起こし、UL94燃焼試験でも低い評価となる。
【0009】
【特許文献1】
特開平1−118567号公報(第1〜5頁)
【特許文献2】
特開2000−239503号公報(第1〜3頁)
【特許文献3】
特開平7−109406号公報(第1〜3頁)
【特許文献4】
特開2000−103972号公報(第1〜3頁)
【特許文献5】
特開2002−194188号公報(第1〜3頁)
【特許文献6】
特開2002−201344号公報(第1〜2頁)
【特許文献7】
特開2000−154314号公報(第1〜3頁)
【特許文献8】
特開2000−26743号公報(第1〜3頁)
【特許文献9】
特開2000−80290号公報(第1〜3頁)
【特許文献10】
特開平10−237276号公報(第1〜3頁)
【特許文献11】
WO98/49232(第1〜3頁)
【特許文献12】
特開平9−71718号公報(第1〜4頁)
【特許文献13】
特開平8−53607号公報(第1〜6頁)
【特許文献14】
特開平7−53849号公報(第1〜2頁)
【特許文献15】
特開平6−184414号公報(第1〜3頁)
【特許文献16】
特開平5−140421号公報(第1〜3頁)
【特許文献17】
特公昭64−7626号公報(第1頁)
【特許文献18】
特開2001−172479号公報(第1〜3頁)
【特許文献19】
特開2001−310323号公報(第1〜4頁)
【特許文献20】
特開2001−31848号公報(第1〜3頁)
【特許文献21】
特開平8−315392号公報(第1〜3頁)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題を解決し、難燃性、低ガス性、表面外観、および機械物性を改良した液晶性樹脂組成物の取得を課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、従来の難燃剤を添加する方法とは発想を異にして検討した結果、極少量の発泡無機粒子を液晶性樹脂中に微分散させることによって、難燃性が向上し、かつ更に低ガス性、表面外観、機械物性などが改良されることを見いだし、本発明に到達した。
【0012】
すなわち、本発明の液晶性樹脂組成物は(A)液晶性樹脂100重量部に対して、(B)発泡無機粒子を0.01〜1.9重量部を含有することを特徴とする。
【0013】
本発明の液晶性樹脂組成物は、前記(B)発泡無機粒子の粒子の長辺の平均長が0.001〜20μmであること、発泡無機粒子が破砕状の発泡無機粒子を含むものであること、また発泡無機粒子が球状発泡無機粒子を破砕した破砕物を含むものであること、発泡無機粒子が成分として珪酸を70重量%以上、酸化アルミニウムを10〜20重量%、および酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化鉄、酸化カルシウムおよび酸化マグネシウムから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を0.1〜20重量%含有すること、発泡無機粒子がシラスバルーンまたはその破砕物であること、更に(C)炭酸カルシウムを液晶性樹脂100重量部に対して0.01〜10重量部含有することや更に(A)液晶性樹脂100重量部に対して、(D)(B)成分、(C)成分以外の充填材を0.5〜300重量部を含有すること、(D)充填材が繊維状充填材を含むものであること、また前記(A)液晶性樹脂が下記構造単位(I) 、(II)、(III) および(IV)からなる液晶ポリエステルであることなどが、いずれも好ましい条件として挙げられる。
【0014】
【化5】
【0015】
(ただし式中のR1は
【0016】
【化6】
【0017】
から選ばれた1種以上の基を示し、R2 は
【0018】
【化7】
【0019】
から選ばれた1種以上の基を示し、R3 は
【0020】
【化8】
【0021】
から選ばれた1種以上の基を示す。また、式中Xは水素原子または塩素原子を示す。)
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳述する。なお本発明において「重量」とは、「質量」を意味する。
【0023】
本発明で用いられる(A)液晶性樹脂とは、異方性溶融相を形成する樹脂であり、例えば液晶ポリエステル、液晶ポリエステルアミドなどが挙げられる。液晶ポリエステルとは、異方性溶融相を形成するポリエステルであり、例えば芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族ジカルボニル単位、およびエチレンジオキシ単位などから選ばれた構造単位からなる異方性溶融相を形成するポリエステルが挙げられる。また、液晶ポリエステルアミドとは、異方性溶融相を形成するポリエステルアミドであり、例えば上記液晶ポリエステル構造単位と芳香族イミノカルボニル単位、芳香族ジイミノ単位、および芳香族イミノオキシ単位などから選ばれた構造単位からなるポリエステルアミドが挙げられる。
【0024】
上記芳香族オキシカルボニル単位の具体例としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸、および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸などから生成した構造単位が、芳香族ジオキシ単位の具体例としては、例えば、4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、3,3´,5,5´−テトラメチル−4,4´−ジヒドロキシビフェニル、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、および4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテルなどから生成した構造単位が、芳香族ジカルボニル単位の具体例としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4´−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4´−ジカルボン酸、および4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸などから生成した構造単位が、芳香族イミノオキシ単位の具体例としては、例えば、4−アミノフェノールなどから生成した構造単位が、それぞれ挙げられる。
【0025】
(A)液晶ポリエステルの具体例としては、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位からなる液晶ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、4,4´−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、テレフタル酸およびイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、4,4´−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、およびp−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、ハイドロキノンから生成した構造単位、4,4´−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、2,6−ナフタレンジカルボン酸から生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位からなる液晶ポリエステルなどが挙げられる。
【0026】
異方性溶融相を形成する液晶ポリエステルの好ましい例としては、下記(I)、(II)、(III) および(IV)の構造単位からなる液晶ポリエステル、または、下記(I)、(II) および(IV)の構造単位からなる異方性溶融相を形成する液晶ポリエステルなどがより好ましく挙げられる。なかでも特に下記(I)、(II)、(III) および(IV)の構造単位からなる液晶ポリエステルが好ましく使用される。
【0027】
【化9】
【0028】
(ただし式中のR1 は
【0029】
【化10】
【0030】
から選ばれた1種以上の基を示し、R2 は
【0031】
【化11】
【0032】
から選ばれた1種以上の基を示し、R3 は
【0033】
【化12】
【0034】
から選ばれた1種以上の基を示す。ただし式中Xは水素原子または塩素原子を示す。)。
【0035】
上記構造単位(I)はp−ヒドロキシ安息香酸および/または6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位であり、上記構造単位(II)は4,4´−ジヒドロキシビフェニル、3,3´,5,5´−テトラメチル−4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテルから選ばれた1種以上の芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位であり、上記構造単位(III) はエチレングリコールから生成した構造単位であり、上記構造単位(IV)はテレフタル酸、イソフタル酸、4,4´−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4´−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4´−ジカルボン酸および4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸から選ばれた1種以上の芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位である。これらのうちR1 が
【0036】
【化13】
【0037】
でR2が
【0038】
【化14】
【0039】
であり、R3 が
【0040】
【化15】
【0041】
であるものが特に好ましい。
【0042】
本発明において好ましく使用できる液晶ポリエステルは、上述のとおり構造単位(I) 、(II)、(IV)からなる共重合体および構造単位(I) 、(II)、(III) 、(IV)からなる共重合体であるが、上記構造単位(I) 、(II)、(III) および(IV)の共重合量は任意である。しかし、本発明の特性を発揮させるためには次の共重合量であることが好ましい。
【0043】
すなわち、上記構造単位(I) 、(II)、(III) 、(IV)からなる共重合体の場合は、上記構造単位(I) および(II)の合計は構造単位(I) 、(II)および(III) の合計に対して30〜95モル%が好ましく、40〜92モル%がより好ましい。また、構造単位(III) は構造単位(I) 、(II)および(III) の合計に対して70〜5モル%が好ましく、60〜8モル%がより好ましい。また、構造単位(I) と(II)のモル比[(I) /(II)]は好ましくは75/25〜95/5であり、より好ましくは78/22〜93/7である。また、構造単位(IV)は構造単位(II)および(III) の合計と実質的に等モルであることが好ましい。
【0044】
一方、上記構造単位(III) を含まない液晶ポリエステルの場合は、流動性の点から、上記構造単位(I) は構造単位(I) および(II)の合計に対して40〜90モル%であることが好ましく、60〜88モル%であることが特に好ましく、構造単位(IV)は構造単位(II)と実質的に等モルであることが好ましい。
【0045】
また、液晶ポリエステルアミドとしては、上記構造単位(I) 〜(IV)以外に4−アミノフェノールから生成した4−イミノフェノキシ単位を含有した異方性溶融相を形成するポリエステルアミドが好ましい。
【0046】
上記好ましく用いられる液晶ポリエステルおよび液晶ポリエステルアミドは、上記構造単位(I) 〜(IV)を構成する成分以外に、3,3´−ジフェニルジカルボン酸、2,2´−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸、クロルハイドロキノン、3,4´−ジヒドロキシビフェニル、4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4´−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4´−ジヒドロキシビフェニルなどの芳香族ジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂肪族、脂環式ジオールおよびm−ヒドロキシ安息香酸、p−アミノ安息香酸などを、液晶性を損なわない程度の範囲でさらに共重合せしめることができる。
【0047】
本発明において使用する上記(A)液晶性樹脂の製造方法には特に制限がなく、公知の重縮合法に準じて製造できる。
【0048】
例えば、上記液晶ポリエステルの製造においては、次の製造方法(1)〜(5)が好ましく挙げられる。
【0049】
(1)p−アセトキシ安息香酸および4,4´−ジアセトキシビフェニル、ジアセトキシベンゼンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物のジアシル化物と、2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸とから脱酢酸縮重合反応によって製造する方法。
【0050】
(2)p−ヒドロキシ安息香酸および4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物と、2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸とに無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって製造する方法。
【0051】
(3)p−ヒドロキシ安息香酸のフェニルエステルおよび4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物と、2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸とのジフェニルエステルから脱フェノール重縮合反応により製造する方法。
【0052】
(4)p−ヒドロキシ安息香酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に、所定量のジフェニルカーボネートを反応させて、それぞれジフェニルエステルとした後、4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物を加え、脱フェノール重縮合反応により製造する方法。
【0053】
(5)ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルのポリマー、オリゴマーまたはビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートなど芳香族ジカルボン酸のビス(β−ヒドロキシエチル)エステルの存在下で、(1)または(2)の方法により製造する方法。
【0054】
上記(A)液晶性樹脂の重縮合反応は無触媒でも進行するが、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、金属マグネシウムなどの金属化合物を使用することもできる。
【0055】
本発明に好ましく使用できる上記(A)液晶性樹脂は、ペンタフルオロフェノール中で対数粘度を測定することが可能であり、その際には0.1g/dlの濃度で60℃で測定した値で0.3以上が好ましく、上記構造単位(III) を含む場合は0.5〜3.0dl/g、上記構造単位(III) を含まない場合は1.0〜15.0dl/gが特に好ましい。
【0056】
また、本発明における(A)液晶性樹脂の溶融粘度は、0.5〜200Pa・sが好ましく、特に1〜100Pa・sがより好ましい。
【0057】
なお、この溶融粘度は、融点(Tm)+10℃の条件で、ずり速度1,000(1/秒)の条件下で高化式フローテスターによって測定した値である。
【0058】
ここで、融点(Tm)とは示差熱量測定において、重合を完了したポリマを室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1 )の観測後、Tm1 +20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した後、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2 )を意味する。
【0059】
本発明は、(A)液晶性樹脂100重量部に対して(B)発泡無機粒子を0.01〜1.9重量部配合したものである。
【0060】
本発明に用いられる(B)発泡無機粒子とは、無機粒子を加熱処理などによって発泡させたものである。ここでいう、加熱処理は人工的なものであってもよく、また自然環境下における処理、例えば火山熱などによって発泡することも含む。
【0061】
発泡方法は特に制限されず、上記した天然の発泡無機物質であっても、人工的に発泡処理をした無機物質であってもよい。発泡処理としては、例えばシラスといわれる珪酸と酸化アルミニウムを主成分とする無機物質は例えば1000℃で急熱した後急冷すると微細な発泡孔を形成させることが可能である。発泡無機粒子は、発泡によって表面が多孔質であったり、内部にも多数の空隙を有するものや、単一の気泡を有するものもあるが、本発明においては内部に多数の空隙を有するものが好ましい。
【0062】
本発明で用いる(B)発泡無機粒子の発泡孔は、その最大孔径が10μm以下であり、かつ最小孔径が0.1μm以下であることが好ましく、最大孔径が5μm以下であり、かつ最小孔径が0.08μm以下であることがより好ましく、
最大孔径が1μm以下であり、かつ最小孔径が0.05μm以下であることが最も好ましい。なお、ここでいう最大孔径と最小孔径は組成物塊の任意断面を切り出して透過型電子顕微鏡(TEM)により観察される任意の50個の粒子の断面に円形で存在する発泡孔を50個の粒子について測定して評価される最大孔径および最小孔径である。
【0063】
発泡孔の連結の程度や外部への開放の度合いは特に限定されるものではないが、気泡が独立気泡であり、閉塞された気泡を内部に多く有することが好ましい。
【0064】
本発明で用いる(B)発泡無機粒子の材質は、特に限定されるものではないが、ガラス質であることが好ましく、ガラスやシラス、フライアッシュといった含ケイ素無機物質であることがより好ましく、シラスが最も好ましい。
【0065】
具体的にはガラスバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーンなどが挙げられる。
【0066】
成分としては、珪酸と酸化アルミニウムを主成分とすることが好ましく、より好ましくは珪酸を70重量%以上、酸化アルミニウムを10〜20重量%含有することであり、最も好ましくは珪酸を75重量%以上、酸化アルミニウムを12〜20重量%有することである。珪酸と酸化アルミニウム以外の成分としては酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化鉄、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタンおよび酸化ホウ素から選ばれる1種以上の金属酸化物を0.0.1〜20重量%含有することが好ましく、より好ましくは酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化鉄、酸化カルシウム、酸化マグネシウムから選ばれる1種以上の金属酸化物を0.1〜20重量%含有することが好ましい。
【0067】
本発明の液晶性樹脂組成物においては、組成物中の(B)発泡無機粒子の長径の平均長が0.001〜20μmであることが好ましく、より好ましくは0.005〜10μmであり、0.01〜5μmが最も好ましい。ここでいう長径とは、粒子端から粒子端を結んだ直線の内最も長いものをいう。
【0068】
液晶性樹脂組成物中の発泡無機粒子の長径は、例えば、液晶性樹脂組成物を燃焼した後に残った灰分を光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡で観察することによって測定することができる。
【0069】
(B)発泡無機粒子としては、破砕状の発泡無機粒子を含むことが好ましい。このような破砕状の発泡無機粒子は、例えば、塊状、球状、板状、粒状などの発泡無機物質を粉砕や破砕することによって得ることができる。本発明においては全てが破砕されている必要はないが、元形状を維持しているものと破砕状の粒子との合計に対する破砕状の粒子の割合(破砕率)は50%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上であり、90%以上であることが最も好ましい。例えば球状の発泡無機物質を添加した際に、元形状のまま、すなわち球体で残存しているものが少ないと、機械物性の向上効果が高くなるので好ましい。
【0070】
破砕率は、例えば、液晶性樹脂組成物を灰化して得た灰分から得た発泡無機粒子を篩い分けし、その成分を光学顕微鏡もしくは走査型電子顕微鏡によって観察した後秤量し、下記式によって算出することができる。
【0071】
破砕率(%)=100×{1−B/(A+B)}
ただし、Aは破砕された発泡無機物質の重量であり、Bは残存している元形状を維持した発泡無機物質の重量である。
【0072】
発泡無機粒子を液晶性樹脂中に含有させて組成物とする場合には、予め発泡無機粒子を本発明の好ましい形態に調製しておいて、液晶性樹脂に添加してもよいが、例えば、発泡無機物質をある程度配合可能な大きさに粉砕したもの、球形に加工したもの、もしくは球形に加工してから発泡させたものなどを液晶性樹脂に添加し、例えば押出機などによって溶融混練する工程で、該発泡無機粒子を微粉砕して本発明の好ましい形態の発泡無機粒子とすることができる。好ましくは直径が10〜150μmの球状の発泡無機物質を、ニーディングを1つ以上組み込み、少なくとも1つ以上高圧縮部分を有するスクリューを用いた二軸押出機で押出混練することにより得ることができる。
【0073】
球状の発泡無機物質を添加し、押出混練時に破砕する方法は、発泡無機粒子を予め、本発明の好ましい形態に調製して液晶性樹脂に配合するのに比べて、粒子が凝集しにくく、本発明の効果である難燃性がより良く発揮されるので好ましい。
【0074】
本発明においては、発泡無機物質として、シラスバルーンを用い、組成物中に上記の如く破砕させて組成物中に含有させることが好ましい。上記発泡無機物質としては、市販のものを用いることができ、シラスバルーンとしては、例えば美瑛白土工業社製タイセツバルーンC、K、豊和直社製SYB−1000SS等が挙げられ、なかでもタイセツバルーンC、Kなどが成分組成が好ましく、また破砕した粒子中にも微細発泡孔が多く存在するために、本発明の効果である難燃性や低ガスの効果が高くなり好ましい。発泡孔の大きさは、市販のシラスバルーン、特にタイセツバルーンでは0.001〜30μm程度であり、破砕によって、1〜30μm程度の孔部で破断されることが多く、破砕された発泡無機粒子中には0.001〜1μm程度の微細発泡孔が多く存在することが観察される。このような微細発泡孔を持つ発泡無機粒子が好ましい。
【0075】
ガラスバルーンとしては住友スリーエム社製スコッチライトS38、S60や東海工業社製CEL−STAR PZ−6000、東芝バロティーニ社製HSC100、エマーソン・アンド・カミング社製ガラス・マイクロバルーンFTD202等が好ましく挙げられ、フライアッシュバルーンとしては、東海工業社製メタスフィアー#100等が好ましい。ガラスバルーンやフライアッシュバルーンは、その球体の内部に単一の、粒子径より壁厚を引いた径をもつ気泡を有する中空球体粒子であり、破砕物とした場合に、その粒子の内部には微細気泡があまり存在しないために、上記したシラスバルーンに比べると若干効果が少ない。
【0076】
発泡孔径の測定は、組成物の任意断面を、ダイヤモンドナイフによって切り出し、透過型電子顕微鏡(TEM)で発泡無機粒子断面を観察した。観察される任意の50個の粒子の断面に円形を保って存在する発泡孔について測定することができる。
【0077】
本発明の(B)発泡無機粒子の(A)液晶性樹脂100重量部に対する配合量は、0.01〜1.9重量部であり、より好ましくは0.1〜1.8重量部であり、0.5〜1.7重量部が最も好ましい。
【0078】
(B)発泡無機粒子の配合量が、この範囲において、難燃性、機械物性がともに高度に優れた組成物が得られる。
【0079】
発泡無機粒子の配合量は、例えば本発明の液晶性樹脂組成物を燃焼させた、その残分の重量を測定し、元の組成物の重量との比較により算出することができる。配合する際に球状の発泡無機物質として添加した際にも配合量の好ましい範囲は同じである。
【0080】
本発明で用いる発泡無機粒子は表面処理することが可能である。また、内部発泡孔への難燃剤、難燃助剤などの包含が可能である。更なる難燃性の向上のために、例えば、難燃剤を包含させた球状の発泡無機物質を混練配合した場合には、難燃剤が発泡無機粒子によって凝集することなく分散し、より高度な難燃性を得ることができる。
【0081】
上記発泡無機粒子に表面処理を施す場合や難燃剤等を包含させる場合における発泡無機粒子の配合量は、これら表面処理剤や難燃剤等を除いた、発泡無機粒子自体の量が上記範囲になるように配合する。例えば発泡無機粒子に等量の難燃剤を包含させた場合には、(A)液晶性樹脂100重量部に対して、発泡無機粒子と当量の難燃剤を発泡無機粒子内に包含する場合には、発泡無機粒子自体の配合量は0.01〜1.9重量部であるので、難燃剤包含発泡無機粒子の配合量は、液晶性樹脂100重量部に対して0.02〜3.8重量部の範囲で配合すれば本発明の組成物が得られる。
【0082】
本発明では更に、(C)炭酸カルシウムを(A)液晶性樹脂100重量部に対し、0.01〜10重量部を添加するとより本発明の効果である低ガス性や難燃性が向上する。添加量としては、より好ましくは、0.02〜6重量部、更に好ましくは0.05〜2重量部である。
【0083】
炭酸カルシウムは、市販のものを用いることができ、特に限定されるものではないが、平均粒子径は0.01〜5μmであることが好ましく、より好ましくは0.05〜3μmである。また、比表面積については、好ましくは0.1〜20m2/gであり、さらに好ましくは15〜15m2/gである。
【0084】
平均粒子径の測定は、例えば走査型電子顕微鏡により粒子径を測定し算出することが可能であり、比表面積は、N2ガス吸着法(1点法)によりBET比表面積を測定することができる。
【0085】
本発明の炭酸カルシウムは重質炭酸カルシウムが好ましく、形状は微粉状、球状、紡錘形、ウィスカー状など特に限定されないが、微粉状が好ましい。
【0086】
本発明の液晶性樹脂組成物に(C)炭酸カルシウムを更に配合した場合には、白色度が高くなり、溶融粘度低下も抑制されるだけでなく、難燃性がさらに向上し、0.4mm以下の薄肉の成形品でも極短い燃焼時間で消火する高い難燃性能が得られる。
【0087】
また、成形性もさらに向上し、成形機のシリンダーの温度を液晶性樹脂組成物の融点よりもさらに高い温度に設定しても、はな垂れしたりすることなく成形することが可能となる。
【0088】
はな垂れとは射出成形などの成形において、溶融樹脂をノズル内に計量し、金型の開閉動作が終了するのを待機している間に発生する待機時間(数秒〜数10秒)の間に、計量した樹脂の粘度が低いことや、ガスの発生によるシリンダー内圧の上昇によって、溶融樹脂がノズル先端の射出口から漏出する現象であり、ノズルを金型にタッチしたままで連続成形を行う場合には金型内に樹脂が流入して連続成形を妨げる原因となる。
【0089】
本発明においては、液晶性樹脂組成物の機械強度その他の特性を付与するために、さらに(D)(B)発泡無機粒子、(C)炭酸カルシウム以外の充填材を配合することが可能である。
【0090】
かかる(D)充填材としては、特に限定されるものではないが、繊維状、板状、粉末状、粒状などの充填材を使用することができる。具体的には、例えば、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、酸化アルミニウム繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカーなどの繊維状(ウィスカー状を含む)充填材、マイカ、タルク、カオリン、シリカ、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、リン酸カルシウムおよびグラファイトなどの粉状、粒状あるいは板状の充填材が挙げられるが、なかでもガラス系の充填材、炭素繊維などが好ましい。
【0091】
これら充填材として、少なくとも繊維状の充填材を用いることが好ましく、繊維状の充填剤単独でも非繊維状の充填剤との併用であってもよい。繊維状の充填剤として好ましくはガラス繊維、炭素繊維であり、なかでもガラス繊維が好ましく使用される。ガラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものならば特に限定はなく、例えば、長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランドおよびミルドファイバーなどから選択して用いることができる。
【0092】
なお、ガラス繊維は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆あるいは集束されていてもよい。
【0093】
また、上記(D)充填材は上記以外の組み合わせで2種以上を併用して使用することもできる。なお、本発明に使用する(D)充填材は、その表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)や、その他の表面処理剤で処理して用いることもできる。
【0094】
(D)充填材の配合量は(A)液晶性樹脂100重量部に対して、0.5〜300重量部が好ましく、より好ましくは10〜250重量部、より好ましくは20〜150重量部である。
【0095】
さらに、本発明の液晶性樹脂組成物には、酸化防止剤および熱安定剤(例えばヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体など)、紫外線吸収剤(例えばレゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなど)、滑剤および離型剤(モンタン酸およびその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびポリエチレンワックスなど)、染料(例えばニグロシンなど)および顔料(例えば硫化カドミウム、フタロシアニンなど)を含む着色剤、導電剤あるいは着色剤としてカーボンブラック、結晶核剤、可塑剤、難燃助剤、および帯電防止剤などの通常の添加剤を添加して、所定の特性をさらに付与することができる。
【0096】
また、さらなる特性改良の必要性に応じて、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなどのオレフィン系重合体、無水マレイン酸などによる酸変性オレフィン系重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/非共役ジエン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、ABSなどのオレフィン系共重合体、ポリエステルポリエーテルエラストマー、ポリエステルポリエステルエラストマーなどのエラストマーから選ばれる1種または2種以上の混合物を添加して所定の特性をさらに付与することができる。
【0097】
これらの添加剤や重合体を添加する方法は、溶融混練によることが好ましく、溶融混練には公知の方法を用いることができる。例えば、バンバリーミキサー、ゴムロール機、ニーダー、単軸もしくは二軸押出機などを用い、180〜400℃の温度で溶融混練して樹脂組成物とすることができる。
【0098】
その際には、(A)液晶性樹脂と(B)発泡無機粒子、任意成分である(C)炭酸カルシウム、(D)充填材およびその他の添加剤との一括混練法、まず(A)液晶性樹脂に(B)発泡無機粒子を高濃度に含む液晶性樹脂組成物を作成し、次いで規定の濃度になるように(A)液晶性樹脂、任意成分である(C)炭酸カルシウム、(D)充填材およびその他の添加剤を添加する方法(マスターペレット法)、および(A)液晶性樹脂と(B)発泡無機粒子を一度混練した組成物に、ついで任意成分である(C)炭酸カルシウム、(D)充填材およびその他の添加剤を添加する方法のどの方法を用いてもかまわない。
【0099】
かくして得られる本発明の液晶性樹脂組成物は、低ガス性、表面外観、難燃性が向上したものであり、さらには優れた溶融流動性、成形性および機械物性を有しており、通常の成形方法によって、優れた低ガス性、表面外観(色調)および機械的性質を有する三次元成形品、シート、容器、パイプ、フィルムおよび繊維などに加工することが可能である。そして、これらの成形品は、極めて優秀な難燃性を有していることから、0.8mm以下の薄肉部を少なくとも一ヶ所以上有し、厳しい難燃性が要求される機械機構部品や自動車部品、電気・電子部品などにも最適である。
【0100】
本発明の液晶性樹脂組成物からなる成形品の具体的用途としては、例えば、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶ディスプレー部品、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、HDD部品、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンショメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキバット磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケースなどの自動車・車両関連部品などが挙げられ、これらの各用途において有用な効果を発揮する。
【0101】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳述する。
【0102】
参考例
液晶性樹脂(A)
A−1
p−ヒドロキシ安息香酸994重量部、4,4´−ジヒドロキシビフェニル126重量部、テレフタル酸112重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレ−ト216重量部及び無水酢酸960重量部を撹拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、150℃で2時間、150℃から250℃まで3時間かけて昇温し、250℃から325℃まで2時間かけて昇温し、325℃で1.5時間反応させた後、325℃、1.5時間で0.5mmHgに減圧し、さらに10分間反応させ重縮合を行った結果、芳香族オキシカルボニル単位80モル当量、芳香族ジオキシ単位7.5モル当量、エチレンジオキシ単位12.5モル当量、芳香族ジカルボン酸単位20モル当量からなる融点314℃、液晶開始温度297℃、324℃の溶融粘度25Pa・s(オリフィス直径0.5mm×10mm、せん断速度1,000(1/秒))の液晶ポリエステル樹脂(A−1)を得た。液晶開始温度の測定は、剪断応力加熱装置(CSS−450)により剪断速度1,000(1/秒)、昇温速度5.0℃/分、対物レンズ60倍において測定し、視野全体が流動開始する温度を液晶開始温度とした。
【0103】
A−2
p−ヒドロキシ安息香酸907重量部と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸457重量部及び無水酢酸873重量部を攪拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、A−1と同じ条件で重合を行った結果、芳香族オキシカルボニル単位100モル等量からなる融点283℃、液晶開始温度244℃、293℃の溶融粘度42Pa・s(オリフィス直径0.5mm×10mm、せん断速度1,000(1/秒))の液晶ポリエステル樹脂(A−2)を得た。
【0104】
発泡無機粒子(B)
シラスバルーン タイセツバルーンK(平均粒子径28μm、球形、発泡シラスバルーン、珪酸76重量%、酸化アルミニウム14重量%、酸化ナトリウム3.5重量%、酸化カリウム4.5重量%、酸化鉄1.3重量%、酸化カルシウム0.6重量%、酸化マグネシウム0.1重量%含有:美瑛白土工業社製)
ガラスマイクロバルーン スコッチライトS60(平均粒子径30μm、球形、中空ガラスビーズ、珪酸81重量%、酸化ホウ素13重量%、酸化アルミニウム2.3重量%、酸化ナトリウム4重量%含有:住友3M社製)
フライアッシュバルーン メタスフィアー#100(平均粒子径72μm、球形、中空フライアッシュビーズ、珪酸54重量%、酸化アルミニウム38重量%、酸化鉄1.8重量%、酸化カルシウム1.8重量%、酸化チタン1.0重量%、酸化マグネシウム0.7重量%含有:東海工業社製)
また、比較として、シラス(シラスバルーンの未発泡無機原料)を用いた。
【0105】
白土 A (平均粒子径12μm、シラス、成分はシラスバルーンに同じ:美瑛白土工業社製)
炭酸カルシウム(C)
重質炭酸カルシウム マイクロパウダー3S(平均粒子径0.8μm、BET比表面積8.5m2/g、微粉状:備北粉化工業社製)
充填材(D)
ガラスチョップドストランド 790DE(直径6μm×3mm:日本電気ガラス社製)
マイカ A−21(平均粒径4.7μm:山口雲母工業社製)。
【0106】
実施例1〜15、比較例1〜12
表1〜3に示す液晶性樹脂(A−1、A−2)、発泡無機粒子およびその他の充填材をそれぞれ所定量秤量し、ドライブレンドし、池貝社製PCM−30型2軸押出機でニーディングを2ヶ所に設け、一ヶ所に高圧縮部を設けたスクリューを用い、シリンダー温度を330℃に設定し、スクリュー回転数150r.p.mの条件で溶融混練したのちストランドカッターによりペレットを得た。発泡無機粒子の破砕の度合いは樹脂の供給量(フィードスクリュー回転数)を調節、またはスクリューアレンジの変更により行った。 熱風乾燥後、ペレットを住友ネスタ−ル射出成形機プロマット40/25(住友重機械工業社製)に供し、シリンダ−温度を320℃に設定し、金型温度90℃に設定し、1速1圧の条件で以下に示す測定用テストピースを射出成形して得た。
【0107】
(1)発泡無機粒子の平均長径
上記ペレットを燃焼灰化させ、灰分を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察した。観察される発泡無機粒子50個の長径を測定し、数平均粒子長径を算出した。
【0108】
(2)発泡無機粒子の発泡孔径
上記ペレットの任意断面を、ダイヤモンドナイフによって切り出し、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した。観察される任意の50個の粒子の断面に円形で存在する発泡孔について測定し、最大孔径および最小孔径を評価した。
【0109】
シラスバルーンを用いた例はいずれも最小孔径0.001μm、最大孔径8μmであった。ガラスバルーンおよびフライアッシュバルーンは粒子に一部が開口した発泡孔や連続した気泡は観察されたが、独立気泡は観察されなかった。
【0110】
(3)燃焼時間
上記の成形条件にて、縦150mm×横12.7mm×厚み0.5mmの棒状試験片を成形し、UL94規格に従い燃焼試験を行い、試験片5本の第一燃焼と第二燃焼の燃焼時間の合計を全燃焼時間として評価した。
【0111】
(4)LOI(酸素指数)
上記の通常成形条件にて、縦127mm×横6.3mm×厚み3.2mmの棒状試験片を成形し、成形品を、予めある酸素濃度にセットした容器内に設けた支持具に取付け、(O2+N2)ガスを30秒流し、酸素濃度を安定させた。点火器により成形品上端に点火し、着火したろうそく状に炎を維持することを確認した後、燃焼時間の計測を行った。
【0112】
ASTM D2863に従い、燃焼時間が3分を超える場合には酸素濃度を下げ、燃焼時間が3分以下で消える場合には酸素濃度を上げる操作を繰り返し、成形品が50mm燃焼して消える場合の最小酸素濃度を求めた。
【0113】
LOIの値が高い程、難燃性が高いことを示す。
【0114】
(5)機械物性
上記の通常成形条件にて、縦127mm×横12.7mm×厚み3.2mmの棒状試験片を成形し、ASTM D790に従い曲げ試験を行い、曲げ強度、およびたわみを評価した。
【0115】
(6)発生ガス量(低ガス性)
上記ペレットを融点+10℃、窒素雰囲気下において30分間保持した際の重量減少率を評価した。
【0116】
(7)表面外観
(4)において成形した成形品10本の表面外観を評価した。評価はふくれ、荒れなどがなく良好:○、ふくれ、荒れなどが存在する:×で行った。
【0117】
(8)破砕率
ペレットを灰化して得た灰分から得た発泡無機粒子を篩い分けし、その成分を光学顕微鏡もしくは走査型電子顕微鏡によって観察した後秤量し、下記式によって算出した。
【0118】
破砕率(%)=100×{1−B/(A+B)}
ただし、Aは破砕された発泡無機物質の重量であり、Bは残存している元形状を維持した発泡無機物質の重量である。
【0119】
【表1】
【0120】
【表2】
【0121】
表1、2の結果から明らかなように、球状発泡無機物質であるシラスバルーンを混練により破砕状とした発泡無機粒子が分散した液晶性樹脂組成物(実施例1〜7,11)は、無添加品(比較例1、2)に比べ、難燃性の指標であるLOI(酸素指数)が増加して難燃性が高くなっており、たわみを減じることなく機械物性が向上している。中空ガラスビーズ(実施例8)、フライアッシュバルーン(実施例9、10)でも効果は得られるが、粒子中に微細発泡孔を多く有するシラスバルーンの方が効果が高いことがわかる。破砕率が低く、平均粒子長径が大きい(実施例10)よりも、破砕率の高い(実施例9)方が効果が高いことがわかる。
【0122】
しかし、本発明の範囲外の添加量である(比較例3〜7)と、効果が得られないことがわかる。
【0123】
また、発泡無機粒子でないがシラスバルーンと成分は類似している白土(シラス)(比較例8)では、本発明の効果が全く得られず、発泡の有無が重要であることがわかる。
【0124】
液晶性樹脂の構造としては、A−1(実施例1)の方が、A−2(実施例11)よりも効果が大きいことがわかる。
【0125】
また、炭酸カルシウムを併用(実施例12)した場合には、難燃性や低ガス性の向上効果が大きいことがわかる。炭酸カルシウムだけを添加しても(比較例9)これらの効果は得られない。
【0126】
【表3】
【0127】
また、表2から、(D)発泡無機粒子および炭酸カルシウム以外の充填材として繊維状の充填材(実施例13)や繊維状の充填材に加えて炭酸カルシウム(実施例14)、さらには繊維状の充填材、炭酸カルシウムに加えて板状の充填材(マイカ)を加えた(実施例15)場合には、良好な物性に加えて、難燃性ではUL94 V−0となり、その燃焼時間が極めて短いことがわかる。
【0128】
これらの効果は、(D)発泡無機粒子、炭酸カルシウム以外の充填材だけを加えて(比較例10〜12)も得られず、発泡無機粒子との併用効果であることがわかる。
【0129】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、難燃性、機械物性を向上させ、かつ低ガス性の液晶性樹脂組成物および成形品を得ることができ、本発明の組成物からなる成形品は、電気・電子関連機器、精密機械関連機器、事務用機器、自動車・車両関連部品などの各種用途に好適に使用することができる。
Claims (10)
- (A)液晶性樹脂100重量部に対して、(B)発泡無機粒子を0.01〜1.9重量部を含有してなる液晶性樹脂組成物。
- 前記(B)発泡無機粒子の長径の平均長が0.001〜20μmであることを特徴とする請求項1記載の液晶性樹脂組成物。
- 前記(B)発泡無機粒子が破砕状の発泡無機粒子を含むものである請求項1または2記載の液晶性樹脂組成物。
- 前記(B)発泡無機粒子が球状発泡無機粒子を破砕した破砕物を含むものである請求項1〜3いずれかに記載の液晶性樹脂組成物。
- 前記(B)発泡無機粒子が成分として珪酸を70重量%以上、酸化アルミニウムを10〜20重量%、および酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化鉄、酸化カルシウムおよび酸化マグネシウムから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を0.1〜20重量%含有するものである請求項1〜4いずれかに記載の液晶性樹脂組成物。
- 前記(B)発泡無機粒子がシラスバルーンまたはその破砕物である請求項1〜5いずれかに記載の液晶性樹脂組成物。
- 更に(C)炭酸カルシウムを液晶性樹脂100重量部に対して0.01〜10重量部含有してなる請求項1〜6いずれかに記載の液晶性樹脂組成物。
- 更に、(A)液晶性樹脂100重量部に対して、(D)(B)成分、(C)成分以外の充填材0.5〜300重量部を含有してなる請求項1〜7いずれかに記載の液晶性樹脂組成物。
- 前記(D)充填材が、繊維状充填材を含むものである請求項8記載の液晶性樹脂組成物。
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