JP2004083711A - 液状エポキシ樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】エポキシ樹脂と硬化剤からなる液状エポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂が、ビスフェノール型エポキシ化物40〜60wt%、2価芳香族アルコール型エポキシ化物0〜60wt%、3価脂肪族アルコール型エポキシ化物0〜60wt%(但し、2価芳香族アルコール型エポキシ化物と3価脂肪族アルコール型エポキシ化物の合計は40〜60wt%である)を含有し、且つ、水酸基濃度が1eq/kg以下で、全塩素量が900ppm以下であり、液状エポキシ樹脂組成物の25℃における粘度が5Pa・s以下であるエポキシ樹脂組成物又はこれにフィラーを配合したエポキシ樹脂組成物。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子材料用途の接着材及び半導体実装に適用するエポキシ樹脂組成物に関し、低粘度、高純度、硬化物の優れた機械物性に併せて速硬化性と高貯蔵安定性を具備することにより、ボイド、クラック等の無い優れた実装性及び高い信頼性と併せて高生産性を実現する液状封止材組成物用として適する液状エポキシ樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に液状封止材は、その取り扱い及び機械的物性の高さからエポキシ樹脂が多用されており、主に液状のビスフェノール型エポキシ樹脂を主剤とした構成となっている。しかし、線膨張係数の整合など機械的物性の向上が必要とされる場合においてはフィラー等のマトリックス部分を増加させる手法が一般であり、その作業性等を維持するためのバインダー部分の低粘度化が必要となる。
【0003】
硬化物の機械的物性の維持及び向上と低粘度化は一般に相反する関係にあり、エポキシ樹脂の検討において、ビスフェノール型エポキシ樹脂の低粘度化には限界があり、この解決にはさらなる低粘度のエポキシ樹脂の添加が行われている。例えば、エチレングリコールグリシジルエーテル、プロピレングリコールグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、グリセリングリシジルエーテル、トリメチロールプロパングリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、キシリレングリコールグリシジルエーテル(特開平4−53821号公報)等が用いられている。
【0004】
一方、硬化物性に影響する官能基数の観点からみると2官能以上の化合物か望ましく、また同時により低粘度を志向すると、望ましい低粘度エポキシ樹脂はアルコール性水酸基由来のグリシジルエーテル化物に収束されてくる。
【0005】
しかし、一般的にグリジルエーテル化物(エポキシ樹脂又はエポキシ化物ともいう)は水酸基とエピハロヒドリンとの反応によりなるが、アルコール性水酸基由来のグリシジルエーテル化は反応性が劣ることから未反応の残存水酸基量が多い傾向となる。残存水酸基の増加は組成物の吸湿性を増大させ、また酸無水物硬化剤やマイクロカプセル型潜在硬化剤に対して貯蔵安定性低下の原因となる。また、触媒添加等で反応性を上げると平行して副反応が増加して含有する全塩素量の高濃度化を招き電気的信頼性を著しく低下させる。
したがって、一般的なアルコール性水酸基由来のグリシジルエーテル化物は、そのままでは電子材料用途に適用することは難しく、残存水酸基及び全塩素量等について高純度化が必要となる。
【0006】
一方、近年のデジタル機器においては、データの大容量化、処理速度の高速化等の性能向上により、配線基板及び部品パッケージの高密度化及びパターン配線の微細化が進み、そこを充填する封止材等への応力増加によるクラック発生ならびにマイグレーションを誘発した信頼性の低下が顕著となっている。
【0007】
また、工業的要求から実装時の短時間硬化、低温度硬化となる処方が取られており、例えば従来、100℃で1時間程度予備硬化させた後に段階的に180℃程度まで温度を上昇させ、硬化にかかる全ての時間が10時間以上かかっていたものが、最近では150℃以下で30分以内に硬化を完了させる処方が取られており、従来のエポキシ樹脂組成物では硬化不良による硬化物の欠陥ならびに信頼性低下が懸念される。
【0008】
しかしながら、従来のエポキシ樹脂組成物は充填性等の作業性の制約から低粘度志向となり、その組成は単分子及び低分子量成分で構成されており、一般的に硬化物は脆く、機械物性に劣り、パターン配線の微細化に伴う応力増加、さらには速硬化性の処方においてクラックが発生しやすい傾向となる。したがって、上述のごとく、エポキシ樹脂組成の高純度化について対策がとられても、クラックなどの欠陥部位があると、配線間のマイグレーションが誘発され信頼性が著しく低下してしまうという問題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の課題は、上記観点から低粘度、速硬化性、高貯蔵安定性、高実装性、高信頼性、高機械物性等を同時に具備することにより、電子材料用途の液状封止材に適用可能な高性能の液状エポキシ樹脂組成物を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、先ず液状封止材の第一の課題である低粘度化について、一般的な樹脂の単分子及び低分子量組成による手法とは異なり、ビスフェノール型エポキシ化物のオリゴマーと、超低粘度の2価芳香族アルコール型エポキシ化物又は3価脂肪族アルコール型エポキシ化物を最適割合で配合することにより、低粘度化と高機械物性を実現することを見出した。また、エポキシ樹脂の含有塩素量と水酸基濃度を一定値以下に制御することにより、高貯蔵安定性、高実装性、高信頼性が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、エポキシ樹脂と硬化剤からなる液状エポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂が、ビスフェノール型エポキシ化物40〜60wt%、2価芳香族アルコール型エポキシ化物0〜60wt%、3価脂肪族アルコール型エポキシ化物0〜60wt%(但し、2価芳香族アルコール型エポキシ化物と3価脂肪族アルコール型エポキシ化物の合計は40〜60wt%である)を含有し、且つ、水酸基濃度が1eq/kg以下で、全塩素量が900ppm以下であり、液状エポキシ樹脂組成物の25℃における粘度が5Pa・s以下であることを特徴とする液状エポキシ樹脂組成物である。ここで、ビスフェノール型エポキシ化物が下記一般式(1)で表され、平均重合度nの値が0.5以上であり、全塩素量が900ppm以下であること、2価芳香族アルコール型エポキシ化物が下記式(2)で表され、水酸基濃度が0.5eq/kg以下で全塩素量が900ppm以下であること、又は、3価脂肪族アルコール型エポキシ化物が下記一般式(3)で表され、水酸基濃度が2.0eq/kg以下で全塩素量が900ppm以下であることは好ましい例である。
【0012】
【化4】
(式中、Rは独立に水素、メチル基、エチル基又はフェニル基を示し、nは平均重合度を示す)
【化5】
【化6】
(式中、Rは水素、メチル基又はエチル基を示す)
【0013】
また、本発明は、前記液状エポキシ樹脂組成物をバインダー成分とする半導体装置の製造に使用される封止剤用エポキシ樹脂組成物である。更に、本発明は、前記封止剤用エポキシ樹脂組成物で封止された半導体装置である。また、本発明は、前記液状エポキシ樹脂組成物に、更にフィラーを配合したフィラー入りエポキシ樹脂組成物である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられるエポキシ樹脂は、ビスフェノール型エポキシ化物と、2価芳香族アルコール型エポキシ化物と3価脂肪族アルコール型エポキシ化物の一方又は両方を必須成分として含有する。全エポキシ樹脂中のビスフェノール型エポキシ化物の含有量は40〜60wt%であり、2価芳香族アルコール型エポキシ化物の含有量は0〜60wt%であり、3価脂肪族アルコール型エポキシ化物の含有量は0〜60wt%であるが、2価芳香族アルコール型エポキシ化物と3価脂肪族アルコール型エポキシ化物の合計の含有量は40〜60wt%である。その他、本発明の効果を妨げない範囲で少量の他のエポキシ化物を配合することも可能である。
【0015】
ビスフェノール型エポキシ化物としては、前記一般式(1)で表されるものが好ましく挙げられ、その平均重合度nの値が0.5以上のオリゴマーで、全塩素量が900ppm以下であることが好ましい。なお、前記一般式(1)において、RはH、メチル基、エチル基又はフェニル基を示すが、一分子中にあるRは同一であっても、異なってもよい。また、nは上記のとおり平均重合度を示すが、その数値は0.5〜10の範囲にあることがよい。低粘度化という点では平均重合度nの値が0であることが望ましいが、低温度で短時間のいわゆる速硬化性の硬化処方や、材料への応力が増加する高密度かつ微細配線へ適用においては、クラック発生等の硬化物の欠陥を生じ信頼性が低下する。この点を解決するには平均重合度nの値が大きいほうが優位であり、好ましい平均重合度nの値は上記範囲となる。
【0016】
好ましいビスフェノール型エポキシ化物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等が例示され、これらを1種又は2種以上併用して使用することができる。
【0017】
なお、粘度の調整は後述する超低粘度の2価芳香族アルコール型エポキシ化物又は3価脂肪族アルコール型エポキシ化物の添加で行うことができ、本発明で用いるビスフェノール型エポキシ化物の室温での状態は液状に限定されず、固形であってもよい。
また、全塩素量については電子材料用途を考慮すると一般的な封止材用エポキシ樹脂と等しく全塩素量が900ppm(wtppm。以下同じ)以下、好ましくは500ppm以下のビスフェノール型エポキシ化物が望まれるが、その製造方法については何ら規定されない。
【0018】
例えば、本発明で使用するビスフェノール型エポキシ化物は、エピハロヒドリンとビスフェノール類の反応においてエピハロヒドリンの仕込みモル比を低減させ、結果として全塩素量が少なくなる、いわゆる一段法固形エポキシ化物の製造処方で可能である。また、別に蒸留等の精製により塩素量を低減した液状のビスフェノール型エポキシ化物と、固形のビスフェノール型エポキシ化物を併用し、上記に規定された平均重合度と全塩素量となるビスフェノール型エポキシ樹脂としてもよい。
また塩素量を低減した液状のビスフェノール型エポキシ化物とビスフェノールを重合反応させ、結果としてさらに全塩素量が少なくなる、いわゆる二段法固形エポキシ化物の製造処方でも可能である。
【0019】
本発明で用いる2価芳香族アルコール型エポキシ化物は、前記一般式(2)で表されるものが好ましいものとして挙げられ、その水酸基濃度が0.5eq/kg以下で全塩素量が900ppm以下であることが好ましい。また、水酸基量については、上記の通り貯蔵安定性と吸湿信頼性に関係し、出来るだけ少ないほうが望ましいが、合成方法の難易度と後述のエポキシ樹脂組成物全体の規定量を考慮すると、水酸基濃度は0.5eq/kg以下、好ましくは0.3eq/kg以下とすることがよい。また、全塩素量については電子材料用途を考慮すると一般的な封止材用エポキシ樹脂と等しく全塩素量が900ppm以下であり、好ましくは500ppm以下がよい。
【0020】
一般式(2)で表される2価芳香族アルコール型エポキシ化物は、パラキシリレングリコールのエポキシ化物であるが、アルコール性水酸基のグリシジルエーテル化は上述の通り一般的なエピハロヒドリンによる合成法では難しく、未反応の水酸基と全塩素量の少ないエポキシ化物は得難い。
本発明で使用する2価芳香族アルコール型エポキシ化物の合成方法については何ら制限はないが、高純度合成の一例を上げると、パラキシレングリコールをハロゲン化アリル等で一旦アリルエーテル化した後、過酢酸等でアリル基の酸化を行うことにより、目的とする水酸基濃度と全塩素量のエポキシ化物を有利に得ることができる。かかる高純度合成方法を用いると、水酸基濃度が0.1eq/kg未満で全塩素量が50ppm未満のエポキシ化物を得ることができる。
【0021】
本発明で用いる3価脂肪族アルコール型エポキシ化物は前記一般式(3)で表されものが好ましいものとして挙げられ、その水酸基濃度が2.0eq/kg以下で全塩素量が900ppm以下であることが好ましい。一般式(3)において、Rは水素又はメチル基又はエチル基を示す。水酸基量については前記パラキシレングリコールのエポキシ化物と同様な要因があり、合成方法の難易度とエポキシ樹脂組成物全体の規定量を考慮して、水酸基濃度が2.0eq/kg以下、好0.5eq/kg以下であることがよい。また、全塩素量についても電子材料用途を考慮すると一般的な封止材用エポキシ樹脂と等しく全塩素量が900ppm以下、好ましくは500ppm以下であることがよい。
【0022】
好ましい3価脂肪族アルコール型エポキシ化物としては、トリメチロールメタンのエポキシ化物、トリメチロールエタンのエポキシ化物、トリメチロールプロパンのエポキシ化物が例示され、これらを1種若しくは2種以上併用して使用することができる。
【0023】
このエポキシ化物についても、前記パラキシリレングリコールのエポキシ化物と同様に、アルコール性水酸基のグリシジルエーテル化における未反応の水酸基と全塩素量の問題があるが、合成方法については上記パラキシリレングリコールのエポキシ化において例示された手法を採ることができる。かかる高純度合成方法を用いると、水酸基濃度が0.1eq/kg未満で全塩素量が50ppm未満のエポキシ化物を得ることができる。
【0024】
本発明に用いられるエポキシ樹脂は、上記ビスフェノール型エポキシ化物と、2価芳香族アルコール型エポキシ化物と3価脂肪族アルコール型エポキシ化物の一方又は両方を必須成分として含有する。ビスフェノール型エポキシ化物については、40wt%未満では硬化物の機械物性が劣り、60wt%を超えると得られる液状エポキシ樹脂組成物の粘度が高くなり実装性に劣ることが顕著となる。また、2価芳香族アルコール型エポキシ化物と3価脂肪族アルコール型エポキシ化物の合計が40wt%未満では粘度が高くなり、60wt%を超えると硬化物の機械物性が劣ることになる。
【0025】
本発明に用いられるエポキシ樹脂は、全体として水酸基濃度が1eq/kg以下、好ましくは0.5eq/kg以下で、全塩素量が900ppm以下、好ましくは600ppm以下である。また、液状エポキシ樹脂組成物の成分となるため、常温で液状であり、25℃における粘度が5Pa・s以下であることが好ましい。
【0026】
本発明に用いられるエポキシ樹脂は、実装性向上に必要となる低粘度化のためと硬化物の機械物性を考慮して、2官能又は3官能の超低粘度エポキシ化物の配合によってなされている。ここで、一般的に低粘度化の効果については3官能より2官能のエポキシ化物が優位であるが、硬化物の機械物性の点では3官能のエポキシ化物が優位である。また、エポキシ化物の主骨格構造について芳香族と脂肪族で比較すると、芳香族骨格の方がエポキシ基の反応性及び硬化性と機械物性に優れている。更に、超低粘度の2官能エポキシ化物の中でも、パラキシリレングリコールのエポキシ化物が優れていること、3価脂肪族アルコールのエポキシ化物の中でも、トリメチロール化アルキル体のエポキシ化物が優れていることが認められた。しかし、これら2又は3官能エポキシ化物が60wt%を超えると、ビスフェノール型エポキシ化物の配合量が低下するため、硬化物の機械物性が劣ることが認められた。そこで、上記配合割合がトータルバランスの優れた樹脂組成物を与えることが判明した。
【0027】
本発明で使用する硬化剤は、一般的にエポキシ樹脂の硬化剤として用いられる化合物、例えば酸無水物、アミン系化合物、イミダゾール類や潜在性硬化剤が挙げられる。硬化剤は得られる組成物を液状にし、且つ、粘度を低減するために常温液状であるか、液状のエポキシ樹脂に溶解可能であるか、低分子量であることが好ましい。
【0028】
酸無水物を例示すると、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸又はエンドメチレンテトラヒドロフタル酸の酸無水物あるいはその炭化水素環上に置換基を有する誘導体、無水フタル酸又は無水フタル酸のベンゼン環上に置換基を有する誘導体、無水コハク酸又は無水コハク酸の炭化水素鎖上に置換基を有する誘導体からなる酸無水物等が挙げられる。
アミン系化合物を例示すると、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン等の液状アミン系化合物が挙げられる。イミダゾール類を例示すると、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メイルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等が挙げられる。潜在性硬化剤を例示すると、マイクロカプセル型、アミンアダクト型等の潜在性硬化剤又は潜在性硬化触媒が挙げられる。
【0029】
この中で潜在性硬化触媒は、エポキシ樹脂組成物の貯蔵時と実装工程における低温領域での安定性を保持し、硬化においては速やかに硬化が発現し半導体素子と配線基盤との実装工程における良好な作業性と速硬化性を実現することに有効である。
特に本発明においては、実装性や安定性の点からマイクロカプセル型の潜在性硬化触媒が好ましく用いられる。本発明においては、数種類の硬化剤ならびに潜在性硬化触媒を組合せて使用してもよい。
【0030】
エポキシ樹脂と硬化剤の配合割合については、エポキシ当量から算出される配合比、ならびに各硬化剤の配合規定に従うこととし、得られる組成物の粘度が5(Pa・s/25℃)以下でとなる割合であればよい。この配合比は概ね、酸無水物及びアミン系化合物ではエポキシ樹脂に対し約1:1の当量比であるが、イミダゾール系ではエポキシ樹脂に対し約1:9の当量比であり、この当量比の上下約30%の範囲内となるように硬化剤を配合することが好ましい。
【0031】
本発明の液状エポキシ樹脂組成物の水酸基量は、貯蔵安定性と実装後の吸湿による信頼性に大きく関係する。したがって、組成物中の水酸基濃度についても、1eq/kg以下とすることがよい。これが、1eq/kgを超えると、酸無水物やマイクロカプセル型潜在性硬化剤を使用した場合、これら硬化剤に影響を及ぼし、貯蔵安定性が著しく低下し、冷蔵及び冷凍での貯蔵が困難となる。1eq/kg以下であれば、上記硬化剤を使用した場合であっても、冷蔵及び冷凍での貯蔵安定性はもとより、本発明の実施例においては室温にて1ヶ月の貯蔵も可能であり、実使用における材料管理の負荷を低減させるため工業的に有意である。更に、水酸基濃度の低減は、硬化物の吸湿による信頼性低下を抑制しこの点も有意である。
【0032】
エポキシ樹脂組成物のイオン性不純物は半導体実装後の信頼性低下(イオンマイグレーション)の主原因であり、特に塩素イオンの低減が望まれる。また塩素量が多い配合はゲル化時間には大きな影響を及ぼさないが、その硬化において不均一に硬化する傾向が見られ、機械物性が劣る。塩素イオン及び結合性塩素も含めた全塩素量としてはできるだけ少ないほうが望ましいが、半導体封止材グレードに用いられるオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を目安とし、全塩素量を900ppm以下にであり、望ましくは500ppm以下とすることがよい。
これら水酸基や全塩素は、特種な硬化剤を使用しない限り、主としてエポキシ樹脂組成物の成分であるエポキシ樹脂から由来するので、エポキシ樹脂中のこれらの濃度を制御することによって制御可能である。
【0033】
本発明の液状エポキシ樹脂組成物には、上記組成範囲及び物性範囲にある限り、必要により各種添加剤を配合することができる。
【0034】
また、本発明の液状エポキシ樹脂組成物には、30wt%以上のフィラーを配合して、フィラー入りエポキシ樹脂組成物とすることもできる。このフィラー入りエポキシ樹脂組成物は、フィラーを除いた状態でのエポキシ樹脂組成物(液状エポキシ樹脂組成物)が、上記組成範囲及び物性範囲にあればよい。このフィラー入りエポキシ樹脂組成物は、半導体装置の封止剤として使用するに適し、封止剤として使用する場合は、30wt%以上、好ましくは50〜80wt%のフィラーを配合することがよい。しかし、フィラーが入ると粘度が増加して、5Pa・sを超えるが、フィラーを除いた状態でのエポキシ樹脂組成物の粘度が十分に低いので、自己流動性が重視されるアンダーフィル用途で、特に狭ギャップへの充填性を重視される用途にも使用可能である。
また、自己流動性が必要とされないNCP工法への適用では、アンダーフィルほど組成物の低粘度化は要求されず、むしろフィラーを高充填出来ることから、本発明のフィラー入りエポキシ樹脂組成物は大いに期待され、因みに実施例1の組成物+フィラー60wt%で30Pa・s/25℃くらいになるが、NCP用途では十分有用でかなり低粘度の部類である。
【0035】
また、ICチップへの密着性やフィラー系の機械物性向上を目的にシランカップリング剤の添加も可能であり、シランカップリング剤としては、末端がエポキシ基とメトキシシラン等の一般的なものが使用できる。この場合のシランカップリング剤の添加量はエポキシ樹脂組成物(フィラー入りの場合はフィラーを除く)100重量部に対して1重量部程度でよい。
【0036】
本発明の液状エポキシ樹脂組成物又はフィラー入りエポキシ樹脂組成物は、配線板に半導体チップを搭載する際に使用される、接着剤や封止剤として有用である。
本発明の液状エポキシ樹脂組成物又はフィラー入りエポキシ樹脂組成物は、これを硬化させることができる。本発明の半導体装置は、半導体又は半導体と配線板の接合部を、本発明の液状エポキシ樹脂組成物又はフィラー入りエポキシ樹脂組成物で封止したものがある。
【0037】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。
合成例1
2価芳香族アルコール型エポキシ化物としてパラキシリレングリコールエポキシ化物(エポキシ樹脂C)を以下の通り合成した。
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、滴下装置、冷却管を備えた内容量1Lの四つ口ガラス製フラスコに、パラキシリレングリコール83gを加え、反応装置系内を窒素置換した後、水酸化ナトリウム水溶液(25mol/l)352mlを加えて1時間攪拌した。その後、室温まで冷却し、テトラブチルアンモニウムブロマイド52gを添加した後、反応系内を冷却しながら、アリルクロライド122gを反応系内に1時間かけて滴下の後5時間反応させた。
続いて、反応液にトルエン500mlを加え分液処理し、トルエン層を塩化ナトリウム水溶液で中性になるまで洗浄した。その後、洗浄した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、濃縮した。この濃縮物をシリカゲル500g、トルエンで精製することによりパラキシリレングリコールアリルエーテル化物82gを得た。
【0038】
次に、攪拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、冷却管を備えた内容量3Lの四つ口ガラス製フラスコに、塩化メチレン1200mlを加え、反応装置系内を窒素置換した後、上記で得られたパラキシリレングリコールアリルエーテル化物65gを添加した。その後、反応系内を冷却しながら、m−クロロ過安息香酸202gを4回に分けて加え、室温にて8時間反応させた。
反応終了後に、反応液を氷浴にて冷却しながらチオ硫酸ナトリウム水溶液(1N)を加え、室温に戻した後、1時間攪拌した。その後、塩化メチレン1200mlを加え分液処理し、有機(塩化メチレン)層を先ず、水酸化ナトリウム水溶液(0.5N)で洗浄し、続いて塩化ナトリウム水溶液で中性になるまで洗浄した。その後、洗浄した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥た後、塩化メチレンを留去することでパラキシリレングリコールエポキシ化物85gを得た。
得られたエポキシ樹脂Cは無色透明の液状物質であり、エポキシ当量が130g/eq、水酸基濃度が0.1eq/kg未満、全塩素量が30ppmであった。
【0039】
合成例2
3価脂肪族アルコール型エポキシ化物としてトリメチロールプロパンエポキシ化物(エポキシ樹脂D)を以下の通り合成した。
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、滴下装置、冷却管を備えた内容量1Lの四つ口ガラス製フラスコに、トリメチロールプロパン54gを加え、反応装置系内を窒素置換した後、水酸化ナトリウム水溶液(25mol/l)352mlを加えて1時間攪拌した。その後、室温まで冷却し、テトラブチルアンモニウムブロマイド52gを添加した後、反応系内を冷却しながら、アリルクロライド122gを反応系内に1時間かけて滴下の後5時間反応させた。
続いて、反応液にトルエン500mlを加え分液処理し、トルエン層を塩化ナトリウム水溶液で中性になるまで洗浄した。その後、洗浄した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、濃縮した。この濃縮物をシリカゲル500g、トルエンで精製することによりトリメチロールプロパンアリルエーテル化物96gを得た。
【0040】
次に、攪拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、冷却管を備えた内容量3Lの四つ口ガラス製フラスコに、塩化メチレン1200mlを加え、反応装置系内を窒素置換した後、上記で得られたトリメチロールプロパンアリルエーテル化物76gを添加した。その後、反応系内を冷却しながら、m−クロロ過安息香酸202gを4回に分けて加え、室温にて8時間反応させた。
反応終了後に、反応液を氷浴にて冷却しながらチオ硫酸ナトリウム水溶液(1N)を加え、室温に戻した後、1時間攪拌した。その後、塩化メチレン1200mlを加え分液処理し、有機(塩化メチレン)層を先ず、水酸化ナトリウム水溶液(0.5N)で洗浄し、続いて塩化ナトリウム水溶液で中性になるまで洗浄した。その後、洗浄した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥た後、塩化メチレンを留去することでトリメチロールプロパンエポキシ化物100gを得た。
得られたエポキシ樹脂Dは無色透明の液状物質であり、エポキシ当量が106g/eq、水酸基濃度が0.1eq/kg未満、全塩素量が32ppmであった。
【0041】
上記合成例1〜2で得たエポキシ樹脂C及びDの他に、以下に示すエポキシ化物及び硬化剤を使用した。原料の略号を併せて示す。
エポキシ樹脂A: 液状、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量173g/eq、平均重合度n0.1未満、水酸基濃度0.1eq/kg未満、全塩素量800ppm(東都化成社製YD−8125)
エポキシ樹脂B: 固形、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量479g/eq、平均重合度n2.2、水酸基濃度2.2eq/kg、全塩素量800ppm (東都化成社製YD−011)
エポキシ樹脂E: 液状、トリメチロールプロパンエポキシ化物、エポキシ当量123g/eq、水酸基濃度3.0eq/kg、全塩素量800ppm (東都化成社製ZX−1542)
エポキシ樹脂F: 液状、トリメチロールプロパンエポキシ化物、エポキシ当量147g/eq、水酸基濃度0.1eq/kg未満、全塩素量70000ppm(東都化成社製YH−300)
エポキシ樹脂G: 液状、1,6−ヘキサンジオールエポキシ化物、エポキシ当量116g/eq、水酸基濃度0.1eq/kg未満、全塩素量800ppm (ジャパンエポキシレジン社製YL−6996)
潜在性硬化触媒:有効触媒成分35%、YD−8125相当ビスフェノールAエポキシ樹脂65%含有(旭化成エポキシ社製ノハ゛キュアHX−3722)
【0042】
実施例及び比較例における評価は以下の方法にて行った。
[水酸基濃度]
エポキシ樹脂に含まれる水酸基量に対して、当量以上のフェニルイソシアネートと、触媒としてジブチル錫マレーアートを加え、水酸基とイソシアネートを十分に反応させた後、用いたフェニルイソシアネートの当量に対してそれ以上のジブチルアミンを添加して余剰のフェニルイソシアネートを消費させ、最後に過塩素酸にて滴定を行い、各試薬の濃度と添加量ならびに滴定量から、エポキシ樹脂に含まれる水酸基量を測定した。
【0043】
[全塩素量]
エポキシ樹脂に含まれる塩素分に対して過剰の水酸化カリウムのプロピレングリコール溶液を加え十分に反応させ、生成した塩化カリウムを硝酸銀水溶液で電位差滴定を行い、エポキシ樹脂に含まれる全塩素量を測定した。
【0044】
[平均重合度]
ビスフェノール型エポキシ樹脂の一般式(1)において、各々の樹脂構造とエポキシ当量より平均重合度nを算出した。ビスフェノールA型エポキシ樹脂の場合、平均重合度n=(エポキシ当量×2−340.1)/284.4で算出される。
【0045】
[粘度]
エポキシ樹脂組成物について、ブルックフィールド社製 レオメータ DV−III を用いて、25℃での粘度を測定した。
[ゲル化時間]
エポキシ樹脂組成物について、ユーカリ技研社製 ゲル化試験器 GT−D−JIS を用いて、150℃でのゲル化時間を測定し、硬化性の指標とした。
【0046】
[曲げ強度]
エポキシ樹脂組成物を150℃にて30分間硬化させた後、JIS−K6911に準じて試験片を作成し、曲げ強度を測定した。
【0047】
[貯蔵安定性]
硬化剤を配合したエポキシ樹脂組成物を、25℃の恒温器に静置し、7日後の粘度変化を測定した。
◎:粘度の変化なし
○:粘度の変化が1.5倍未満
△:粘度の変化が2倍未満
×:粘度の変化が2倍以上
【0048】
[半導体実装性]
ポリイミドフィルム厚さ25μm、銅箔厚さ12μm、錫メッキ厚さ1μmのポリイミドフレキシブル配線基板と、最小ピッチ60μmで金スタッドバンプを周辺配置した一片が10mmの正方形のシリコンチップを接合し、最小スペース20μmに調整された評価用半導体装置を用い、実施例及び比較例のエポキシ樹脂組成物について、岩下エンジニアリング製ディスペンサーを用いて80℃で塗布を行い、いわゆるアンダーフィルの要領で充填を行い続いて150℃の硬化炉の中で硬化させた後、以下の項目について評価した。
【0049】
[ボイド]
内部ボイドを目視にて判断
◎:ボイドなし
○:外周部に若干ボイドあり
△:外周部に少数ボイドあり
×:ボイド多数発生あり
[クラック]
内部クラックを目視にて判断
◎:クラック無し
○:バンプ及び配線部に若干クラックあり
△:バンプ及び配線部に少数クラックあり
×:クラック多数発生あり
[フィレット]
フィレット形状を目視にて判断
◎:良好
○:フィレット形状が歪、
△:フィレットにボイドも発生、
×:不良
【0050】
半導体信頼性に付いては、作成した半導体装置を以下の項目で評価した。
[TCT]
温度サイクル試験(−55℃〜125℃)での接続不良発生時期
○:1000サイクル超
△:500〜1000サイクル
×:500サイクル未満
[PCT]
耐湿試験(121℃・2atm)での接続不良発生時期
○:100時間超
△:50〜100時間
×:50時間未満
【0051】
実施例1
エポキシ樹脂Bを28重量部、エポキシ樹脂Cを28重量部、エポキシ樹脂Dを22重量部及び潜在性硬化触媒を34重量部混合し、液状エポキシ樹脂組成物とした。得られたエポキシ樹脂組成物は、ビスフェノール型エポキシ樹脂としてビスフェノールAエポキシ化物を50重量部(潜在性硬化触媒中のビスフェノールAエポキシ樹脂は、これに算入。以下、同様。)含み、その平均重合度nは0.7である。
また、液状エポキシ樹脂組成物の粘度は1.9Pa・s/25℃であり、これを構成するエポキシ樹脂の全塩素量は415ppm、水酸基量は0.65eq/kgであった。
得られたエポキシ樹脂組成物を用いて、貯蔵安定性、半導体装置を作成した場合の実装性、及び信頼性に関する温度サイクル試験(TCT)と耐湿試験(PCT)を評価した。
【0052】
実施例2〜3
液状エポキシ樹脂組成物の組成を表1に示したように変化させたこと以外は、実施例1と同様に行った。
【0053】
比較例1〜4
液状エポキシ樹脂組成物の組成を表1に示したように変化させたこと以外は、実施例1と同様に行った。
【0054】
液状エポキシ樹脂組成物の配合組成ならびに組成物の特性及びそれを使用した半導体装置の評価結果をまとめて表1に示す。表1において、潜在性硬化触媒はエポキシ樹脂Aに相当する成分を65%含有するので、34×0.65=22がエポキシ樹脂Aに加算される。ビスフェノール型エポキシ化物は、エポキシ樹脂AとBの合計であるので、その平均重合度nは加重平均で計算される。nは比較例3が0.1未満であることを除き、他の実施例及び比較例では0.7と計算される。
【0055】
【表1】
【0056】
表1の実施例1〜3で使用した樹脂組成物は、本発明の要件全部を満たしていたことから、貯蔵安定性、実装性、TCT、PCTの評価における信頼性いずれも優れていた。
一方、比較例1で使用した樹脂組成物は、全塩素量が高濃度の低粘度エポキシ化物を用いたため、硬化性不良による実装性の不良と、PCTの信頼性に劣った。また、比較例2で使用した樹脂組成物は、水酸基量が1eq/kgを超えていたため、硬化に伴う粘度の増加が顕著で貯蔵安定性に劣り、また耐湿信頼性の観点からPCTの信頼性に劣った。比較例3で使用した樹脂組成物は、液状のビスフェノール型エポキシ樹脂のみで配合するも、粘度が5Pa・s/25℃を超えており、またビスフェノール型エポキシ樹脂の平均重合度nが0.5未満である為に実装性に劣り、そのために信頼性も劣った。更に、ビスフェノール型エポキシ樹脂の結晶化による貯蔵安定性の劣化も顕著であった。比較例4では、実施例1におけるエポキシ樹脂Cを二価脂肪族アルコールのエポキシ化物として1,6−ヘキサンジオールエポキシ化物に置き換えた結果、主にクラック発生による実装性不良と、信頼性に劣った。
【0057】
【発明の効果】
低粘度、速硬化性、高貯蔵安定性、高実装性、高信頼性、高機械物性を具備し、電子材料用途の液状封止材に適用可能な高性能の液状エポキシ樹脂組成物を提供することができる。
Claims (7)
- エポキシ樹脂と硬化剤からなる液状エポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂が、ビスフェノール型エポキシ化物40〜60wt%、2価芳香族アルコール型エポキシ化物0〜60wt%、3価脂肪族アルコール型エポキシ化物0〜60wt%(但し、2価芳香族アルコール型エポキシ化物と3価脂肪族アルコール型エポキシ化物の合計は40〜60wt%である)を含有し、且つ、水酸基濃度が1eq/kg以下で、全塩素量が900ppm以下であり、液状エポキシ樹脂組成物の25℃における粘度が5Pa・s以下であることを特徴とする液状エポキシ樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の液状エポキシ樹脂組成物をバインダー成分とする半導体装置の製造に使用される封止剤用エポキシ樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の液状エポキシ樹脂組成物に、更にフィラーを配合してなるフィラー入りエポキシ樹脂組成物。
- 請求項5に記載の封止剤用エポキシ樹脂組成物で封止された半導体装置。
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